(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ガラス板梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/48 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
B65D85/48
(21)【出願番号】P 2020553775
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040905
(87)【国際公開番号】W WO2020090501
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2018207386
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518390549
【氏名又は名称】電気硝子(広州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】内田 勢津夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 広
(72)【発明者】
【氏名】西川 佳範
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】李 明浩
(72)【発明者】
【氏名】崔 洪国
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207483(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115109(WO,A1)
【文献】特開2006-264786(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217035(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/48
B65D 19/28
B65D 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のガラス板と前記ガラス板の端部から食み出す食出部を有する保護シートとが平置き姿勢で積層されてなる積層体と、前記積層体を積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、
前記パレットが、前記積層体に含まれた複数の保護シートの前記食出部を下方から支持する支持部を備え、
前記支持部が、少なくとも、前記積層体に含まれた最下方のガラス板のコーナー部に沿って配置されており、
前記パレットが、前記積層体を下方から支持する台座部を有し、
前記支持部の上端部が、前記台座部における前記積層体を支持する上面よりも下方に位置していることを特徴とす
るガラス板梱包体。
【請求項2】
矩形状のガラス板と前記ガラス板の端部から食み出す食出部を有する保護シートとが平置き姿勢で積層されてなる積層体と、前記積層体を積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、
前記パレットが、前記積層体に含まれた複数の保護シートの前記食出部を下方から支持する支持部を備え、
前記支持部が、前記
積層体に含まれた最下方のガラス板のコーナー部に沿ってのみ配置され、
前記パレットが、前記積層体に含まれた複数のガラス板の水平方向の移動を規制する規制部材を備え、
前記規制部材が、前記積層体に含まれた各ガラス板の隣り合うコーナー部の相互間に位置するように配置されていることを特徴とす
るガラス板梱包体。
【請求項3】
前記パレットが、前記積層体を下方から支持する台座部を有し、
前記支持部の上端部が、前記台座部における前記積層体を支持する上面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項2に記載のガラス板梱包体。
【請求項4】
前記支持部が、前記最下方のガラス板のコーナー部を形作る一方の辺の端部と他方の辺の端部とのうち、少なくとも、前記食出部の食み出し長さが長い方の端部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のガラス板梱包体。
【請求項5】
前記支持部が、前記最下方のガラス板のコーナー部を形作る一方の辺の端部と他方の辺の端部とのうち、片方の端部に沿ってのみ配置されていることを特徴とする請求項1
~4のいずれかに記載のガラス板梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板として、ガラス板が用いられる。ガラス板は破損しやすいので、保管や輸送を行う際のガラス板の梱包形態が極めて重要になる。
【0003】
ここで、特許文献1には、上記のようなガラス板の梱包に適したガラス板梱包体が開示されている。この梱包体では、矩形状のガラス板と保護シートとを平置き姿勢で交互に積層して積層体とし、この積層体をパレットに積載した状態で梱包している。なお、保護シートとしては、例えば合紙が採用される。保護シートは、ガラス板の端部から食み出す食出部を有する。このような梱包形態によれば、ガラス板の重量が主としてガラス板の主面で支持されることに加え、食出部でガラス板の端部を覆うことが可能となるため、強度の弱いガラス板の端部を好適に保護できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のガラス板梱包体を開梱して積層体からガラス板を取り出すにあたっては、例えば、
図11および
図12に示すような取り出しの形態を採用することがある。
【0006】
同形態においては、
図11に示すような、積層体100から最上層のガラス板200を吸着して取り出すロボット300と、
図12に示すような、積層体100から最上層の保護シート400を吸着して取り出すバー状のロボット500とを交互に動作させる。このようにして、ガラス板200と保護シート400とを交互に積層体100から取り出していく。なお、積層体100は、台座部600aにより下方から支持された状態でパレット600に積載されている。
【0007】
両ロボット300,500を動作させる際には、それぞれガラス板200および保護シート400の取り出しを容易にするための補助を行う。
【0008】
図11に示すように、ロボット300を動作させる際には、押え部材700により、積層体100を構成するガラス板200の端部から食み出した保護シート400の食出部400aを押える。これにより、ロボット300が吸着した最上層のガラス板200と共に、これに引っ付いた直下の保護シート400まで取り出されることを防止する。一方、
図12に示すように、ロボット500を動作させる際には、当該ロボット500が吸着した最上層の保護シート400と、これの直下のガラス板200とが引っ付かないように、両者を剥離させるべく、噴射ノズル800からガス800a(例えば空気等)を噴射する。
【0009】
しかしながら、ガラス板梱包体の開梱に際して上記の形態を採用した場合には、下記のような解決すべき問題が発生していた。
【0010】
保護シート400が食出部400aを有する場合、
図13に示すように、下層に配置された保護シート400の食出部400aが下方に折れ曲る。そして、この食出部400aの折れ曲りが、以下のような不具合を生じさせる。すなわち、開梱前に最下層付近に位置していた保護シート400をロボット500で取り出す際に、取出し対象の保護シート400の折れ曲った食出部400aが、取出し対象でない保護シート400やガラス板200のコーナー部に引っ掛かってしまう場合がある。加えて、
図13に示すように、保護シート400の位置がより下層になるに従い、折れ曲がる部分の曲率半径が小さくなる。このため、保護シート400の位置がより下層になる程、上述の引っ掛かりが発生しやすくなる。その結果、ロボット500に対して保護シート400が滑ってずれる等して、保護シート400の取り出し不良が起きる問題があった。なお、一旦取り出し不良が発生してしまうと、開梱のための作業を長時間(例えば0.5時間程度)に亘って中断する必要が生じ、製品の製造効率が著しく悪化してしまう。
【0011】
上述の事情に鑑みなされた本発明は、ガラス板梱包体を開梱して積層体からガラス板と保護シートとを取り出すに際し、食出部の折れ曲りに起因した保護シートの取り出し不良の発生を回避できる技術を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明は、矩形状のガラス板とガラス板の端部から食み出す食出部を有する保護シートとが平置き姿勢で積層されてなる積層体と、積層体を積載するパレットとを備えたガラス板梱包体であって、パレットが、積層体に含まれた複数の保護シートの食出部を下方から支持する支持部を備え、支持部が、少なくとも、積層体に含まれた最下方のガラス板のコーナー部に沿って配置されていることを特徴とする。
【0013】
本構成では、積層体に含まれた複数の保護シートについて、これら保護シートにおけるガラス板のコーナー部からそれぞれ食み出した食出部が、支持部によって下方から支持され、各食出部の下方への折れ曲りが回避される。つまり、ガラス板のコーナー部の周辺における食出部の折れ曲りが回避される。これにより、ガラス板梱包体の開梱前に最下層付近に位置していた保護シートをロボット等で取り出す際においても、食出部の折れ曲りが回避されていることで、取出し対象の保護シートの食出部が、取出し対象でない保護シートやガラス板のコーナー部に引っ掛かることが防止される。その結果、保護シートの取り出し不良の発生を回避できる。
【0014】
上記の構成において、支持部が、最下方のガラス板のコーナー部を形作る一方の辺の端部と他方の辺の端部とのうち、少なくとも、食出部の食み出し長さが長い方の端部に沿って配置されていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、各保護シートについて、積層体に含まれたガラス板のコーナー部を形作る一方の辺の端部から食み出した食出部と、他方の辺の端部から食み出した食出部とのうち、相対的に折れ曲りやすい状態にある食み出し長さが長い方の食出部が、支持部によって確実に支持される。これにより、ガラス板のコーナー部の周辺における食出部の折れ曲りを効率的に回避することが可能となる。
【0016】
上記の構成において、支持部が、最下方のガラス板のコーナー部を形作る一方の辺の端部と他方の辺の端部とのうち、片方の端部に沿ってのみ配置されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、支持部が、片方の端部に沿ってのみ配置されていることで、支持部の個数の増加に起因したパレット構造の複雑化を防止できる。また、支持部の個数が抑制されることで、支持部の上に塵埃等が堆積するような虞を可及的に排除できる。なお、片方の端部に沿ってのみの支持部の配置であっても、下記のとおり、コーナー部の周辺における食出部の折れ曲りは的確に回避が可能である。まず、片方の端部から食み出した食出部を支持部が支持することにより、当該食出部の下方への折れ曲りが回避される。そして、片方の端部から食み出した食出部の折れ曲りが回避されたことに伴い、当該食出部と連なった残りの片方の端部から食み出した食出部についても、自然に下方への折れ曲がりが回避される。このようにして、コーナー部の周辺における食出部の折れ曲りが回避される。
【0018】
上記の構成において、パレットが、積層体を下方から支持する台座部を有し、支持部の上端部が、台座部における積層体を支持する上面よりも下方に位置していることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、折れ曲らない程度に食出部を下方に撓ませることができ、撓んだ食出部によってガラス板の端部を覆うことが可能となる。これにより、端部を起点とした破損や傷の発生からガラス板を好適に保護できる。さらに、支持部の上端部と台座部の上面との間に段差が存在することで、仮に積層体に含まれたガラス板が振動等に起因して横ずれ(水平方向の移動)を起こした場合でも、支持部とガラス板との衝突を回避することが可能となる。
【0020】
上記の構成において、支持部が、最下方のガラス板のコーナー部に沿ってのみ配置され、パレットが、積層体に含まれた複数のガラス板の水平方向の移動を規制する規制部材を備え、規制部材が、積層体に含まれた各ガラス板の隣り合うコーナー部の相互間に位置するように配置されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、支持部が存在しない位置に規制部材が配置されるため、ガラス板のコーナー部の周辺における食出部の折れ曲りの回避と、ガラス板における水平方向の移動の規制とを効率よく両立させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガラス板梱包体を開梱して積層体からガラス板と保護シートとを取り出すに際し、食出部の折れ曲りに起因した保護シートの取り出し不良の発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第一実施形態に係るガラス板梱包体を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係るガラス板梱包体に備わったパレットを示す斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係るガラス板梱包体に備わったパレットを示す平面図である。
【
図4】第一実施形態に係るガラス板梱包体における台座部の側面周辺を拡大して示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係るガラス板梱包体に備わった積層体に含まれるガラス板と保護シートとを示す平面図である。
【
図6】第一実施形態に係るガラス板梱包体に備わったパレットの変形例を示す平面図である。
【
図7】第一実施形態に係るガラス板梱包体に備わったパレットの別の変形例を示す平面図である。
【
図8】第二実施形態に係るガラス板梱包体における台座部の側面周辺を拡大して示す断面図である。
【
図9】第三実施形態に係るガラス板梱包体における台座部の側面周辺を拡大して示す断面図である。
【
図10】第三実施形態に係るガラス板梱包体に備わったパレットの変形例を示す平面図である。
【
図11】従来技術の課題を説明するための正面図である。
【
図12】従来技術の課題を説明するための正面図である。
【
図13】従来技術の課題を説明するために、
図12の丸で囲ったZ部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板梱包体について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
<第一実施形態>
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るガラス板梱包体1は、最下層に保護シート2x(以下、最下層シート2xと表記)を配した状態で、ガラス板3と保護シート2とが平置き姿勢で交互に積層されてなる積層体4と、積層体4を積載するパレット5とを備えている。
【0026】
ここで、
図1においては、説明の便宜上、最下層シート2xを除く他の保護シート2の端部が、ガラス板3の端部から食み出ることなく面一に図示されている。しかしながら、保護シート2はガラス板3に比べて大きい面積を有しており、実際には保護シート2の端部がガラス板3の端部から食み出している(
図4及び
図5を参照)。ガラス板3の端部から食み出した保護シート2の端部は、食出部2aを構成する。
【0027】
積層体4を構成するガラス板3の厚みは、0.2mm~1.8mmであることが好ましく、0.2mm~0.5mmであることがより好ましい。ガラス板3は矩形状をなし、一辺の長さがG5サイズ(1100mm~1300mm)以上であることが好ましく、G8.5サイズ(2200mm~2500mm)以上であることがより好ましい。ガラス板3の密度は、2.0g/cm3~3.0g/cm3であることが好ましい。
【0028】
積層体4を構成する保護シート2の厚みは、0.05mm~0.2mmであることが好ましく、0.05mm~0.1mmであることがより好ましい。保護シート2はガラス板3よりも面積の大きい矩形状をなし、一辺の長さがG5サイズ(1100mm~1300mm)以上であることが好ましく、G8.5サイズ(2200mm~2500mm)以上であることがより好ましい。本実施形態では、保護シート2として合紙を用いている。しかしながら、この限りではなく、合紙の代わりに発泡樹脂シート等を用いてもよい。
【0029】
パレット5は、工場の床面や輸送車の荷台等に載置される基台部6と、基台部6の上に配置され、且つ積層体4を下方から支持する台座部7とを有する。後に詳述するが、この台座部7に最下層シート2xが固定されている。基台部6と台座部7との両者は、例えば、溶接等の手段により一体化されている。本実施形態では、平面視で基台部6と台座部7との双方が矩形状をなす(
図3を参照)と共に、台座部7は基台部6に比べて小さく形成されている。なお、本実施形態では、ガラス板3がなす矩形状と、台座部7がなす矩形状とが略同一の面積を有する。また、本実施形態では、基台部6の上に台座部7が積み重なっているが、この限りではない。台座部7を取り除いて、基台部6に台座部としての機能を持たせてもよい。
【0030】
基台部6の四隅の各々には、支柱(図示省略)を挿入して取り付けることが可能な挿入口8が設けられている。各挿入口8に取り付けられた支柱は、ガラス板梱包体1を上下複数段に積み重ねる際に、上段のガラス板梱包体1を下方から支持する機能を有する。また、基台部6の四側面の各々には、フォークリフトのフォークを挿入することが可能なフォーク用穴9が形成されている。
【0031】
台座部7の四側面7aの各々には、積層体4に含まれた複数のガラス板3の横ずれ(水平方向の移動)を規制する規制部材としての規制板10が取り付けられている。規制板10の枚数は特に限定されるものではないが、本実施形態では、一側面7aにつき二枚(合計で八枚)の規制板10が配置されている。各規制板10は、その下端部が止め具(例えばボルト等)により台座部7の側面7aに固定されている。この規制板10は、ガラス板梱包体1を開梱して積層体4からガラス板3を取り出す際には、取り外される。
【0032】
積層体4の上面には押え板(図示省略)が配置されており、この押え板をベルト等の締結具(図示省略)を介して基台部6に固定することで、積層体4が台座部7の上に保持される。なお、押え板としては、保護シート2よりも厚みが大きく、硬度の高い発泡樹脂製の緩衝板等が用いられる。また、積層体4を構成するガラス板3に塵埃が付着するのを防止するため、必要に応じて積層体4の周囲は樹脂シート(図示省略)で覆われる。
【0033】
図2に示すように、台座部7は、アルミニウム合金等の金属からなる格子状に形成されたベース7xと、ゴムや発泡樹脂等からなる緩衝板7yとを重ね合わせた構造を有する。これにより、緩衝板7yの上面が、積層体4を支持する台座部7の上面7bを構成すると共に、ベース7xおよび緩衝板7yの側面が、上面7bに連なる台座部7の側面7aを構成している。上記の規制板10(同図では取り外されており図示省略)、及び、後述する最下層シート2xのみを台座部7に固定する保持具11は、いずれもベース7xに取り付けられている。
【0034】
ここで、本実施形態においては、ベース7xの上に直接に緩衝板7yを重ね合わせているが、ベース7xと緩衝板7yとの相互間にアルミニウム合金製やステンレス製の板を介在させてもよい。また、緩衝板7yは、単一の板からなる必要はなく、複数の小板に分割されていてもよい。
【0035】
図3に示すように、台座部7の四側面7aのうち、平行な二側面7aの各々には、保持具11が配置されている。
図4に示すように、保持具11は、第一の機能として、最下層シート2x(同図では図示省略)を挟み込んで保持することで、最下層シート2xを台座部7に固定する固定部としての機能を有する。さらに、第二の機能として、積層体4に含まれた複数の保護シート2(最下層シート2xを除く)の食出部2aを下方から支持する支持部としての機能を有する。この第二の機能により、ガラス板3のコーナー部の周辺における食出部2aの下方への折れ曲りが回避される。
【0036】
以下、保持具11の配置について詳述する。
【0037】
図3に示すように、保持具11は、上記の第二の機能(支持部としての機能)を発揮するべく、積層体4に含まれた最下方のガラス板3(同図に二点鎖線で示す)における四つのコーナー部の外側に位置し、各コーナー部に沿って配置されている。各コーナー部は、ガラス板3の辺3aの端部3aaと辺3bの端部3baとで形作られる。本実施形態では、保持具11が、二つの端部3aa,3baのうち、端部3aaに沿ってのみ配置されている。なお、上記の規制板10(同図に二点鎖線で示す)は、ガラス板3の隣り合うコーナー部の相互間に位置するように配置されている。
【0038】
ここで、積層体4に含まれるガラス板3と保護シート2との関係を
図5に示す。同図に示すように、本実施形態では、保護シート2の食出部2aについて、辺3aからの食み出し長さXと、辺3bからの食み出し長さYとを比較すると、食み出し長さXの方が長くなっている。従って、二つの端部3aa,3baの両者間で食み出し長さを比較すると、端部3aaからの食み出し長さ(食み出し長さXに等しい)の方が長くなる。この食み出し長さが長い方の端部3aaに沿ってのみ保持具11を配置している。このような配置としているのは、第一の目的として、食み出し長さが長いほど折れ曲りやすいので、折れ曲りを効率的に回避するためである。また、第二の目的としては、可及的に保持具11の個数を抑制してパレット5の構造の複雑化を回避すると共に、保持具11の上に塵埃等が堆積する虞を可及的に排除するためである。
【0039】
上記の第一の目的および第二の目的に鑑みて、食み出し長さYの方が食み出し長さXよりも長い場合には、本実施形態の変形例として、
図6に示すように、保持具11が、二つの端部3aa,3baのうち、端部3baに沿ってのみ配置されることが好ましい。また、食み出し長さXと食み出し長さYとの双方が過度に長い場合には、本実施形態の別の変形例として、
図7に示すように、保持具11が、二つの端部3aa,3baの双方に沿って配置されていてもよい。
【0040】
図4に示すように、保持具11は、上記の第一の機能(固定部としての機能)を発揮するべく、積層体4に含まれた最下方のガラス板3の端部から食み出した最下層シート2xの端部を、その厚み方向に挟み込むことが可能である。これにより、最下層シート2xの端部が、保持具11により台座部7の側面7a上に固定されている。
【0041】
保持具11は、最下層シート2xの端部を表裏から挟み込む一対の挟み部11a,11bを有し、一対の挟み部11a,11bにより最下層シート2xの端部を折り曲げた状態で挟み込むことが可能である。
【0042】
一対の挟み部11a,11bは、蝶番12を介して相互に連結されている。最下層シート2xの裏側に配置された挟み部11bは、台座部7の側面7aに固定されている。一方、最下層シート2xの表側に配置された挟み部11aは、
図4に矢印A‐Aで示すように、蝶番12に備わった軸12aの周りを旋回することが可能である。
【0043】
旋回に伴って挟み部11aが
図4に実線で示す位置(以下、挟み位置と表記)に移動すると、一対の挟み部11a,11bが協働して最下層シート2xの端部を挟み込む。なお、後に詳述するが、本実施形態では、マグネット(マグネットシート)の磁力を利用して最下層シート2xの端部を挟み込んでいる。一方、旋回に伴って挟み部11aが挟み位置から離反すると、最下層シート2xの端部の挟み込みが解除される。挟み込みを解除した状態にある挟み部11aは、例えば、
図4に二点鎖線で示す位置(以下、待機位置と表記)で待機させることが可能である。待機位置は、マグネットの磁力で挟み部11aが移動しないように、挟み位置から十分に距離が離れている。
【0044】
挟み部11bは、台座部7の側面7aに対して直接に固定された側板13と、側板13の下端部に連なって水平に延びる底板14と、側板13および底板14に沿って取り付けられた樹脂材15と、樹脂材15の上方で側板13に取り付けられたマグネットシート16とを備えている。
【0045】
側板13および底板14は、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属からなる。底板14の一端には台座部7の側面7aと平行に延びる軸12aが備わっている。樹脂材15の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を採用している。樹脂材15は、台座部7の側面7a側に向かって漸次に厚みが大きくなるように形成されており、樹脂材15における最下層シート2xの端部との接触部15aが水平面に対して傾斜している。マグネットシート16は、挟み部11aの後述するマグネットシート17と対向するように配置されている。
【0046】
挟み部11aは、蝶番12に備わった軸12aを中心として旋回が可能な旋回板18と、旋回板18に沿って取り付けられた樹脂材19と、樹脂材19に固定された状態で、磁力によりマグネットシート16に引き寄せることが可能なマグネットシート17とを備えている。
【0047】
旋回板18は、上記の側板13および底板14と同様に、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属からなる。樹脂材19の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、上記の樹脂材15と同様に、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を採用している。樹脂材19における最下層シート2xの端部との接触部19aは、上記の樹脂材15における接触部15aに倣って水平面に対して傾斜している。樹脂材19の上端部には窪み部19bが形成されている。これにより、例えば、窪み部19bに人間の指等を引っ掛けることで、磁力に逆らってマグネットシート17をマグネットシート16から離反させるための力を付与しやすくなっている。
【0048】
最下層シート2xの端部は、一対の挟み部11a,11bに対するずれが許容された状態で挟み込まれている。つまり、最下層シート2xの端部は、自身に付与される外力(例えば、ガラス板梱包体1の輸送時の振動に伴って付与される外力)に応じ、一対の挟み部11a,11bに対して任意の方向に摺動することが可能な程度の力で挟み込まれている。これにより、最下層シート2xが破れたりして破損することを防止できる。一対の挟み部11a,11bが最下層シート2xの端部を挟み込む力の大きさは、例えば、両マグネットシート16,17の厚みを変更して、磁力の大きさを変化させることで調節が可能である。この他、樹脂材19におけるマグネットシート17との界面に凹凸を設け、凹凸に倣って変形したマグネットシート17と最下層シート2xの端部との接触面積を調節することで、挟み込む力の大きさを調節してもよい。また、両樹脂材15,19の材質を変更し、摩擦係数を変化させることで、最下層シート2xが摺動し始める際の力の大きさを調節してもよい。
【0049】
保持具11の上端部は、保持具11の上で重なり合った複数の食出部2aを支持するにあたり、最下方の食出部2aの下面を支えている。なお、各食出部2aは、ガラス板3の端部から食み出して自重により下方に撓んだ状態にある。保持具11の上端部は、台座部7の上面7bよりも下方に位置させており、両者間には上下方向の段差が存在している。これにより、食出部2aが折れ曲らない程度に下方に撓み、食出部2aにより側方からガラス板3の端部が覆われる。これにより、ガラス板3が端部を起点とした破損や傷の発生から保護される。また、上記の段差の存在により、仮にガラス板3が横ずれを起こした場合でも、保持具11と最下方のガラス板3との衝突(最下層シート2xを介した衝突)が回避されるようになっている。
【0050】
ここで、食出部2aを保持具11により確実に支持するため、保持具11の厚み(台座部7の側面7aに対して鉛直な方向の厚み)は、例えば10~30mmとすることが好ましい。保持具11の上端部と支持台7の上面7bとの段差は、例えば10~20mmに設定することができる。
【0051】
以下、上記のガラス板梱包体1による主たる作用・効果について説明する。
【0052】
上記のガラス板梱包体1では、積層体4に含まれた複数の保護シート2について、ガラス板3の辺3aの端部3aaからそれぞれ食み出した食出部2aが、支持部として機能する保持具11によってまとめて下方から支持され、各食出部2aの下方への折れ曲りが回避される。これにより、ガラス板3のコーナー部の周辺における食出部2aの折れ曲りが回避される。そのため、ガラス板梱包体1の開梱前に最下層付近に位置していた保護シート2をロボット等で取り出す際においても、食出部2aの折れ曲りが回避されていることで、取出し対象の保護シート2の食出部2aが、取出し対象でない保護シート2やガラス板3のコーナー部に引っ掛かることが防止される。その結果、保護シート2の取り出し不良の発生を回避できる。
【0053】
ここで、第一実施形態に係るガラス板梱包体1について、食出部2aの折れ曲りに起因した保護シート2の取り出し不良の発生率を検証した。検証は、ガラス板梱包体1を15体準備し、このうちの何体に取り出し不良が発生するかを調査して行った。なお、
図5に示した食み出し長さX,Yはそれぞれ40mm、20mmである。また、保持具11の厚みは20mmである。検証の結果、取り出し不良が発生したガラス板梱包体1は、15体中の0体であり、全く取り出し不良が発生しなかった。一方、比較のため、保持具11を取り除いた状態で同様の検証を行った所、15体中の3体に取り出し不良が発生した。
【0054】
以下、本発明の他の実施形態に係るガラス板梱包体について説明する。なお、他の実施形態の説明において、上記の第一実施形態で説明済みの要素と実質的に同一の要素については、他の実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0055】
<第二実施形態>
図8に示すように、第二実施形態が、上記の第一実施形態と相違している点は、最下層シート2xの台座部7への固定が解除されている点と、保持具11に代えてケース20が配置されている点である。本実施形態では、ケース20が支持部として機能する。
【0056】
ケース20は、台座部7の側面7aに固定された直方体状のケース本体20aと、ケース本体20aの開口部20aaを塞ぐケース蓋20bと、ケース本体20aの内部に充填された充填材20cとを有する。本実施形態においては、ケース本体20aの上面およびケース蓋20bの上面によって複数の食出部2aが支持され、各食出部2aの下方への折れ曲りが回避される。なお、ケース20に代えて、例えば箱体やブロックを用いてもよい。箱体は、例えば複数の金属板や樹脂板を接合して直方体状とすることで構成でき、ブロックは、例えば直方体状の金属塊や樹脂塊で構成できる。
【0057】
<第三実施形態>
図9に示すように、第三実施形態が、上記の第一実施形態と相違している点は、最下層シート2xの台座部7への固定が解除されている点と、保持具11に代えて支持板21が配置されている点である。本実施形態では、支持板21が支持部として機能する。
【0058】
支持板21は、L字状の断面形状をなし、台座部7の側面7aに固定された固定板部21aと、固定板部21aの上端から水平に延びた水平板部21bとを有する。本実施形態においては、水平板部21bによって複数の食出部2aが支持され、各食出部2aの下方への折れ曲りが回避される。ここで、本実施形態の変形例として、
図10に示すように、ガラス板3のコーナー部の屈曲に沿って支持板21を配置してもよい。
【0059】
第二実施形態及び第三実施形態では、粘着テープやマグネットシートにより最下層シート2xの端部が台座部7(台座部7の側面7a)に固定されている。マグネットシートにより最下層シート2xの端部が台座部7(台座部7の側面7a)に固定される場合、支持台7の側面7aは、鉄、コバルト、ニッケル等といった強磁性体で構成される。
【0060】
以上に説明した第二および第三実施形態によっても、上記の第一実施形態と同様の主たる作用・効果を得ることが可能である。
【0061】
ここで、本発明に係るガラス板梱包体は、上記の各実施形態で説明した構成に限定されるものではない。例えば、上記の第一~第三実施形態から保持具11、ケース20、支持板21をそれぞれ取り除き、代わりに台座部7の上面7bの面積をガラス板3の面積よりも大きくし、上面7bにおけるガラス板3の端部から食み出した領域を支持部として機能させてもよい。
【0062】
また、上記の各実施形態では、支持部として機能する保持具11、ケース20、支持板21をガラス板3のコーナー部に沿ってのみ配置しているが、これら支持部として機能する部材をコーナー部に沿った位置以外にも配置してよい。例えば、これらの部材を隣り合う規制板10の相互間に位置するように配置してもよい。
【0063】
また、上記の各実施形態では、矩形状の保護シート2が有する四辺の端部の全てにガラス板3の端部から食み出す食出部2aが形成されているが、一部の辺の端部のみに食出部2aを形成してもよい。ガラス板3の端部を保護する観点では、保護シート2が有する四辺の端部の全てに食出部2aが形成されていることが好ましい。ガラス板3の端部を食出部2aにより的確に覆う観点では、食出部2aの食み出し長さ(
図5に示した食み出し長さX,Y)は、10mm以上とすることが好ましい。また、保持具11で食出部2aを確実に保持する観点では、食出部2aの食み出し長さは、30mm以上とすることが好ましい。コスト削減の観点から、食出部2aの食み出し長さの上限は、80mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、40mm以下が最も好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 ガラス板梱包体
2 保護シート
2a 食出部
3 ガラス板
3a 辺
3aa 辺の端部
3b 辺
3ba 辺の端部
4 積層体
5 パレット
7 台座部
7b 台座部の上面
10 規制板
11 保持具(支持部)
20 ケース(支持部)
21 支持板(支持部)
X 食み出し長さ
Y 食み出し長さ