(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】子局装置および親局装置
(51)【国際特許分類】
H04W 72/1268 20230101AFI20230609BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20230609BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20230609BHJP
【FI】
H04W72/1268
H04W4/38
H04W72/0446
(21)【出願番号】P 2021111985
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391040788
【氏名又は名称】三菱電機システムサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 淳一
(72)【発明者】
【氏名】猪嶋 誉一
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019200(JP,A)
【文献】特開2020-098952(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118622(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/085058(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/133213(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/073578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置にデータを送信する子局装置において、
自らの識別情報を含むタイミング要求情報を前記親局装置に送信し、
前記親局装置が前記タイミング要求情報に応じて送信したタイミング設定情報を受信し、
前記タイミング設定情報に含まれる時刻情報および順序情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、
前記順序情報は、前記子局装置と、前記子局装置とは異なる他の子局装置とに対して定められた送信順序を示し、
前記子局装置は、前記送信スロットを送信タイミングの基準として、所定の送信周期で前記データを送信
し、
前記他の子局装置の中継を介して、または直接、前記親局装置に前記データを送信し、
前記タイミング設定情報は、前記子局装置に対して定められた中継段数上限値を含み、
前記子局装置は、
前記中継段数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする子局装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の子局装置において、
前記
タイミング設定情報は、
前記子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、
前記子局装置は、
前記送信リトライ回数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする子局装置。
【請求項3】
親局装置にデータを送信する子局装置において、
自らの識別情報を含むタイミング要求情報を前記親局装置に送信し、
前記親局装置が前記タイミング要求情報に応じて送信したタイミング設定情報を受信し、
前記タイミング設定情報に含まれる時刻情報および順序情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、
前記順序情報は、前記子局装置と、前記子局装置とは異なる他の子局装置とに対して定められた送信順序を示し、
前記子局装置は、前記送信スロットを送信タイミングの基準として、所定の送信周期で前記データを送信し、
前記タイミング設定情報は、前記子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、
前記子局装置は、
前記送信リトライ回数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする子局装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の子局装置において、
先に前記データを送信してから次に前記データを送信するまでの間にスリープ状態となることを特徴とする子局装置。
【請求項5】
親局装置であって
、
複数の子局装置のうちの1つから送信され、送信元の子局装置の識別情報を含むタイミング要求情報を受信したときに、
時刻情報と、前記識別情報に割り当てられた順序情報と、を含むタイミング設定情報を前記タイミング要求情報を送信した子局装置に送信し、
前記順序情報は、前記複数の子局装置のそれぞれに対して定められた送信順序を示し、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、
前記タイミング設定情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定
し、
前記複数の子局装置のそれぞれは、他の子局装置の中継を介して、または直接、前記親局装置にデータを送信し、
前記タイミング設定情報は、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた中継段数上限値を含み、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、
前記中継段数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする親局装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の親局装置において、
前記タイミング設定情報は、
前記
タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた
送信リトライ回数上限値を含み、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記
送信リトライ回数上限値に基づいて前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする親局装置。
【請求項7】
親局装置であって、
複数の子局装置のうちの1つから送信され、送信元の子局装置の識別情報を含むタイミング要求情報を受信したときに、
時刻情報と、前記識別情報に割り当てられた順序情報と、を含むタイミング設定情報を前記タイミング要求情報を送信した子局装置に送信し、
前記順序情報は、前記複数の子局装置のそれぞれに対して定められた送信順序を示し、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、
前記タイミング設定情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、
前記タイミング設定情報は、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、
前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、
前記送信リトライ回数上限値に基づいて前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする親局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子局装置および親局装置に関し、特に、子局装置から親局装置にデータを送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
親局装置と、複数の子局装置を備え、各子局装置が親局装置にデータを無線送信する通信システムにつき研究開発が行われている。このような通信システムには、以下の特許文献1~4に示されているように、ある物理量を検出するセンサを各子局装置が備え、センサの検出値を示すセンサデータが親局装置に無線送信されるデータ収集システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-140823号公報
【文献】特開2014-107762号公報
【文献】特開2015-26949号公報
【文献】国際公開第2016/170607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データ収集システムでは、複数の子局装置から時間帯を重ねてセンサデータが親局装置にされる可能性がある。そこで、特許文献1~4に記載されているシステムでは、このようなデータの衝突が生じないように、各子局装置のデータ送信時間帯が決定される。しかし、特許文献1、2および4に記載のシステムでは、親局装置が複数の子局装置に対してデータ送信時間帯を割り当てる等、親局装置の処理が複雑になってしまうことが考えられる。特許文献3に記載のシステムでは、子局装置の通信可能時間を決定する通信初期化が、親局装置の処理をきっかけとして開始されており、子局装置が実行する処理の自由度が制限されることが考えられる。
【0005】
本発明は、複数の子局装置から親局装置にデータを送信するシステムについて、データの衝突を簡単な処理で回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、親局装置にデータを送信する子局装置において、自らの識別情報を含むタイミング要求情報を前記親局装置に送信し、前記親局装置が前記タイミング要求情報に応じて送信したタイミング設定情報を受信し、前記タイミング設定情報に含まれる時刻情報および順序情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、前記順序情報は、前記子局装置と、前記子局装置とは異なる他の子局装置とに対して定められた送信順序を示し、前記子局装置は、前記送信スロットを送信タイミングの基準として、所定の送信周期で前記データを送信し、前記他の子局装置の中継を介して、または直接、前記親局装置に前記データを送信し、前記タイミング設定情報は、前記子局装置に対して定められた中継段数上限値を含み、前記子局装置は、前記中継段数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする。
【0007】
望ましくは、前記タイミング設定情報は、前記子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、前記子局装置は、前記送信リトライ回数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定する。
【0009】
また、本発明は、親局装置にデータを送信する子局装置において、自らの識別情報を含むタイミング要求情報を前記親局装置に送信し、前記親局装置が前記タイミング要求情報に応じて送信したタイミング設定情報を受信し、前記タイミング設定情報に含まれる時刻情報および順序情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、前記順序情報は、前記子局装置と、前記子局装置とは異なる他の子局装置とに対して定められた送信順序を示し、前記子局装置は、前記送信スロットを送信タイミングの基準として、所定の送信周期で前記データを送信し、前記タイミング設定情報は、前記子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、前記子局装置は、前記送信リトライ回数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、先に前記データを送信してから次に前記データを送信するまでの間にスリープ状態となる。
【0011】
また、本発明は、親局装置であって、複数の子局装置のうちの1つから送信され、送信元の子局装置の識別情報を含むタイミング要求情報を受信したときに、時刻情報と、前記識別情報に割り当てられた順序情報と、を含むタイミング設定情報を前記タイミング要求情報を送信した子局装置に送信し、前記順序情報は、前記複数の子局装置のそれぞれに対して定められた送信順序を示し、前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記タイミング設定情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、前記複数の子局装置のそれぞれは、他の子局装置の中継を介して、または直接、前記親局装置にデータを送信し、前記タイミング設定情報は、前記タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた中継段数上限値を含み、前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記中継段数上限値に基づいて、前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記タイミング設定情報は、前記タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記送信リトライ回数上限値に基づいて前記送信スロットの時間長を決定する。また、本発明は、親局装置であって、複数の子局装置のうちの1つから送信され、送信元の子局装置の識別情報を含むタイミング要求情報を受信したときに、時刻情報と、前記識別情報に割り当てられた順序情報と、を含むタイミング設定情報を前記タイミング要求情報を送信した子局装置に送信し、前記順序情報は、前記複数の子局装置のそれぞれに対して定められた送信順序を示し、前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記タイミング設定情報に基づいて、自らの送信スロットを時間軸上に設定し、前記タイミング設定情報は、前記タイミング設定情報を受信した子局装置に対して定められた送信リトライ回数上限値を含み、前記タイミング設定情報を受信した子局装置は、前記送信リトライ回数上限値に基づいて前記送信スロットの時間長を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の子局装置から親局装置にデータを送信するシステムについて、データの衝突を簡単な処理で回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】親局装置および子局装置が実行する通信処理のシーケンスチャートである。
【
図4】子局装置がセンサデータを送信する処理のタイミングチャートである。
【
図5】子局装置がセンサデータを送信する処理のタイミングチャートである。
【
図6】中継経路が構築される場合のタイミング設定情報の例を示す図である。
【
図7】子局装置がセンサデータを送信する処理のタイミングチャートである。
【
図8】子局装置のハードウエアの構成例を示す図である。
【
図9】親局装置のハードウエアの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係るデータ収集システム100の構成が示されている。データ収集システム100は、親局装置10および複数の子局装置12-1~12-Nを備えている。複数の子局装置12-1~12-Nのそれぞれは(以下、子局装置12ということがある)、センサ14を備えている。センサ14は、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサ、水位センサ等であってよい。各子局装置12はセンサ14から検出値を取得し、検出値を含むデータ(センサデータ)を親局装置10に無線送信する。親局装置10は、各子局装置12から送信されたセンサデータを受信して、各子局装置12が備えるセンサ14の検出値を取得する。
【0017】
子局装置12-1~12-Nは、工場、倉庫、植物栽培用の温室等に配置される。子局装置12が工場や倉庫に配置される場合には、センサ14として温度センサ、湿度センサ、振動センサ等が用いられてよい。この場合、各子局装置12が配置された位置における温度、湿度、振動等を示すセンサデータが親局装置10で収集され、製品の監視等が行われる。子局装置12が温室に配置された場合には、センサ14として温度センサ、湿度センサ、照度センサ等が用いられてよい。この場合、各子局装置12が配置された位置における温度、湿度、照度等を示すセンサデータが親局装置10で収集され、農作物の環境の監視等が行われる。各子局装置12はバッテリを備えており、バッテリが出力する電力によって動作する。
【0018】
親局装置10は、データ収集システム100における基準時刻をカウントする基準時計を備えている。子局装置12は、自らが実行する処理のタイミングを規定するためのローカル時計を備えている。親局装置10および各子局装置12は後述の同期処理を実行し、基準時計のカウント値と、ローカル時計のカウント値とを同期させる。基準時計およびローカル時計のカウント値は、時刻のカウントを開始した時を基準とした時刻情報である。各子局装置12は、データ収集システム100で設定された複数の送信スロットのうち、自らに割り当てられた送信スロットを自らのローカル時計に従って認識し、その送信スロットの時間帯にセンサデータを親局装置10に送信する。
【0019】
子局装置12-1~12-Nに対しては、センサデータを送信する送信周期T0が予め定められている。各子局装置12は、自らに割り当てられた最初の送信スロットの時間帯でセンサデータを送信した後は、自らのローカル時計のカウント値に従って、送信周期T0が経過するごとにセンサデータを送信する。
【0020】
図2には、親局装置10および各子局装置12が実行する通信処理のシーケンスチャートが概念的に示されている。ここでは説明を単純化するため、親局装置10と2つの子局装置12-1および12-2との間で実行される処理が示される。親局装置10、子局装置12-1および12-2の表記のそれぞれから下方に伸びた直線は時間軸である。通信処理には、同期処理およびデータ収集処理が含まれており、データ収集処理に先立って同期処理が実行される。
【0021】
同期処理について説明する。親局装置10には、各子局装置12を識別する識別情報として子局ID(IDentification)が記憶されている。親局装置10には、さらに、各子局IDに対応する送信順序番号が記憶されている。送信順序番号は、各子局装置12に割り当てる送信スロットが時間軸上で配列される順序を示し、各子局装置12がセンサデータを送信する順序を示す順序情報である。送信順序番号は、各子局装置12の子局IDが記憶された順序に従って定められてよい。送信順序番号に代えて、各子局装置12の送信順序を示すアルファベット等の符号が用いられてもよい。
【0022】
また、親局装置10には、各子局装置12に対して共通に定められた通信制限情報として、送信リトライ回数上限値が記憶されている。送信リトライ回数上限値とは、子局装置12が親局装置10にセンサデータを送信する処理が失敗したときに、再びセンサデータを送信する場合において、許されるセンサデータの再送回数を示す数値をいう。送信リトライ回数に上限を設けて通信制限を行うことで、1つの子局装置12がセンサデータを送信できないがために、他の子局装置12の処理が滞ってしまうことが回避される。子局装置12から親局装置10にセンサデータを送信する処理が成功したか失敗したかの判断は、アクノリッジ情報を子局装置12が受信したか否かに基づいて行われてよい。アクノリッジ情報は、親局装置10がセンサデータを受信した場合に親局装置10から子局装置12に送信される。
【0023】
子局装置12-1は、送信元の識別情報として自らの子局IDを含むタイミング要求情報を親局装置10に送信する(T1)。親局装置10はタイミング要求情報を受信し、タイミング要求情報から子局IDを抽出する。親局装置10は、基準時計のカウント値(基準カウント値)、送信リトライ回数上限値、および子局IDに対応付けられた送信順序番号を含むタイミング設定情報を子局装置12-1に送信する(R1)。子局装置12-1は、基準カウント値、送信リトライ回数上限値、および自らの送信順序番号をタイミング設定情報から抽出する。
【0024】
図3には、タイミング設定情報の例が概念的に示されている。タイミング設定情報は、コマンド、基準カウント値、送信リトライ回数上限値、および送信順序番号が1~Nである子局IDが含まれている。コマンドには、タイミング設定情報を他の情報から識別するための情報、送信元の子局ID、宛先の親局装置10のID等、子局装置12から親局装置10にタイミング設定情報を送信するために必要な情報が含まれている。
【0025】
図2に示されているように、子局装置12-2と親局装置10との間でも、子局装置12-1と親局装置10との間で実行された処理と同様の処理が実行される。子局装置12-2はタイミング要求情報を親局装置10に送信し(T2)、タイミング要求情報を受信した親局装置10はタイミング設定情報を子局装置12-2に送信する(R2)。子局装置12-2は、基準カウント値、送信リトライ回数上限値、および送信順序番号をタイミング設定情報から抽出する。
【0026】
同期処理において子局装置12-j(jは1または2)は、自らが備えるローカル時計のカウント値を基準カウント値に合わせる。また、子局装置12-jは、送信リトライ回数上限値に基づいて送信スロットの時間長を決定する。送信スロットの時間長は、送信リトライ回数上限値が大きい程、大きい値に決定される。子局装置12-jは、さらに、送信順序番号に基づいて、時間軸上に自らの送信スロットを設定する。例えば、基準カウント値に対応する時刻から送信周期T0が経過した時刻を基準時刻t0とし、送信スロットの時間長をTS、送信順序番号をMとして、子局装置12-jは次のように自らの送信スロット時間帯を求める。
【0027】
送信スロット時間帯の開始時刻ts=t0+(M-1)・TS
送信スロット時間帯の終了時刻te=t0+M・TS
【0028】
子局装置12-jは、このような処理によって、センサデータを次に送信するための送信スロットを設定する。送信順序番号Mは、1つの子局装置12と、その子局装置12とは異なる他の子局装置12とに対して定められた送信順序を示す。そのため、子局装置12-jに対しては、送信順序番号に従った順序で送信スロットが設定される。
【0029】
子局装置12-jは、自らが備えるローカル時計のカウント値が、自らの送信スロット時間帯に対応する値となったときに、センサデータを親局装置10に送信する。子局装置12-jは、最初に設定した送信スロットを送信タイミングの基準として、所定の送信周期T0でセンサデータを送信する。すなわち、最初に設定した送信スロット時間帯にセンサデータを送信した後は、子局装置12-jは、自らのローカル時計のカウント値に従って、送信周期T0でセンサデータを繰り返し送信する。
【0030】
図2の下段には、子局装置12-1~12-Nが設定した送信スロットS1~SNから構成されるフレームFR1およびFR2が概念的に示されている。フレームFR1およびFR2は、送信周期T0を隔てて時間軸上に配置されている。フレームFR2より後には、同様のフレームが送信周期T0の時間間隔で連なる。フレームFR1に含まれる送信スロットS1~SNは、親局装置10および子局装置12-1~12-Nが同期処理を実行することで設定される。一方、フレームFR2以降のフレームは、子局装置12-1~12-Nのそれぞれが、ローカル時計のカウント値に従って、親局装置10の処理から独立して認識する。
【0031】
各フレームには、子局装置12-1~12-Nによって設定された送信スロットS1~SNのうち、子局装置12-1によって設定された送信スロットSpと、子局装置12-2によって設定された送信スロットSqが含まれている。pは1~Nのうちいずれかの整数であり、qは1~Nのうちpとは異なるいずれかの整数である。子局装置12-1は、送信スロットSpでセンサデータを親局装置10に送信し、子局装置12-2は、送信スロットSqでセンサデータを親局装置10に送信する。親局装置10は、各子局装置12から送信されたセンサデータを受信し、各センサデータからセンサ14による検出値を取得する。
【0032】
ここでは、2つの子局装置12-1および12-2が親局装置10との間で同期処理を実行し、親局装置10にセンサデータを送信する実施形態が示された。子局装置12が3つ以上ある場合においても、各子局装置12は、子局装置12-1および12-2と同様の同期処理を実行し、センサデータを送信する。
【0033】
図4には、子局装置12-1~12-Nがセンサデータを送信する処理のタイミングチャートが概念的に示されている。ただし、この例では、子局装置12-1~12-Nにそれぞれ、送信順序番号1~Nが対応付けられている。子局装置12-1~12-Nは、同期処理によって設定したフレームFR1に含まれる送信スロットS1~SNの時間帯でセンサデータを親局装置10に送信する。フレームFR2以降では、各子局装置12が、自らのローカル時計のカウント値に従って、送信周期T0でセンサデータを送信することで、各子局装置12が各送信スロットの時間帯でセンサデータを送信する。
【0034】
同期処理は、所定の時間間隔で行われてよい。例えば、6時間~12時間ごとに同期処理が実行されてもよい。この場合、子局装置12は、自らに割り当てられた送信スロットにおいてタイミング要求情報を送信し、タイミング設定情報を受信してもよい。また、子局装置12は、隣接するフレーム間の時間帯でタイミング要求情報を送信し、タイミング設定情報を受信してもよい。
【0035】
各子局装置12は、センサデータの送信を完了してから、次にセンサデータを送信するまでの間、スリープ状態となってもよい。ここで、スリープ状態とは、子局装置12を構成する一部の構成要素への電源電力が遮断された状態をいう。ここでいう一部の構成要素は、次にセンサデータを送信するときの起動動作に必要ないものである。例えば、ローカル時計と、ローカル時計によるカウント値を認識する電子回路は、次にセンサデータを送信するときの起動動作に必要な構成要素であり、電源電力が遮断される構成要素から除かれる。
【0036】
図5には、時間軸上で連なるフレームFR1、FR2、FR3・・・・・、のそれぞれに設定された送信スロット時間帯で、子局装置12がセンサデータを送信するときのタイミングチャートが示されている。子局装置12がセンサデータの送信を行う時間帯ACTでは、センサデータの送信に必要な構成要素に電源電力が供給され、子局装置12はアクティブ状態となる。センサデータの送信が完了してから、次にセンサデータを送信するまでの時間帯SLPでは、子局装置12はスリープ状態となる。子局装置12がスリープ状態となることで消費電力が削減され、バッテリの充電頻度または交換頻度が低くなる。
【0037】
このようなデータ収集システム100によれば、複数の子局装置12が時間帯を重ねてセンサデータを送信することが回避される。同期処理が実行された後は、親局装置10の処理から独立して各子局装置12がセンサデータの送信時間帯を認識する。そのため、データ収集システム100全体で実行される処理が単純化される。同期処理は、子局装置12がタイミング要求情報を送信することをきっかけとして開始される。そのため、各子局装置12が認識するタイミングに従って、同期処理を定期的に実行することが可能となり、同期処理を定期的に実行することが容易になる。
【0038】
さらに、送信スロットの時間長は、送信リトライ回数上限値が大きい程、大きい値に設定される。したがって、送信リトライ回数上限値以下の回数で子局装置12がセンサデータを再送するという条件の下で、複数の子局装置12が時間帯を重ねてセンサデータを送信することが回避される。
【0039】
上記では、各子局装置12が親局装置10に直接、センサデータを送信する実施形態が示された。各子局装置12は、他の1つまたは複数の子局装置12の中継送信を介して、親局装置10にセンサデータを送信してもよい。この場合、データ収集システム100では、通信制限情報として中継段数上限値が定められ、中継段数上限値を超えないように中継経路が構築される。例えば、中継段数上限値がKである場合、ある子局装置12が親局装置10にセンサデータを送信する際に、他の子局装置12によるK回までの中継送信が許される。
【0040】
図6には、中継経路が構築される場合のタイミング設定情報が示されている。
図3に示されたタイミング設定情報に対して、中継段数上限値が追加されている。子局装置12は、自らの送信スロットを設定するときに、送信リトライ回数上限値のみならず、中継段数上限値にも基づいて、送信スロットの時間長を決定する。送信スロットの時間長は、送信リトライ回数上限値が大きい程、大きい値に決定され、さらに、中継段数上限値が大きい程、大きい値に決定される。
【0041】
図7には、子局装置12-1~12-Nがセンサデータを送信する処理のタイミングチャートが概念的に示されている。この例では、子局装置12-3が、子局装置12-1の中継送信を介して、センサデータを親局装置10に送信する。また、子局装置12-Nが、子局装置12-3および12-1の中継送信を介して、センサデータを親局装置10に送信する。送信スロットの時間長は、中継段数上限値が大きい程、大きい値に決定される。したがって、ある子局装置12が、他の子局装置12の中継送信を介して、センサデータを親局装置10に送信する場合であっても、複数の子局装置12が時間帯を重ねてセンサデータを送信することが回避される。
【0042】
データ収集システム100において中継経路が構築される場合、中継送信を行う子局装置12は、自らがセンサデータを送信する時間帯の他、他の子局装置12から送信されたセンサデータを中継送信する時間帯にもアクティブ状態となる。アクティブ状態となる時間帯でない時間帯で子局装置12はスリープ状態となってよい。また、各子局装置12は、子局装置12-1~12-Nに対するフレームの時間帯にアクティブ状態となり、その他の時間帯でスリープ状態となってもよい。子局装置12は、自らがセンサデータを送信する時間帯にアクティブ状態となり、他の子局装置12から送信されたセンサデータを中継送信する時間帯に中継状態となり、その他の時間帯でスリープ状態となってもよい。ここで中継状態は、中継送信に必要な構成要素にのみ電源電力が供給される状態である。これらの状態の切り替えは、ローカル時計のカウント値に従うタイミングで行われる。
【0043】
図8には、子局装置12のハードウエアの構成例が示されている。子局装置12は、子局制御部20、子局無線部22、センサ14、ローカル時計24、記憶部26、バッテリ30および電源回路32を備えている。センサ14は、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサ、水位センサ等であってよい。センサ14は検出値を子局制御部20に出力する。
【0044】
子局制御部20は、予め自らに記憶されたプログラム、または、記憶部26に記憶されたプログラムを実行するプロセッサであってよい。子局制御部20は、演算処理の途中で得られたデータを記憶部26に一時的に記憶させてもよい。子局制御部20および子局無線部22は、上記の同期処理およびデータ収集処理を実行する。同期処理において、子局制御部20はタイミング要求情報を子局無線部22に出力し、子局無線部22はタイミング要求情報を送信する。また、子局無線部22は、タイミング設定情報を受信して子局制御部20に出力する。
【0045】
データ収集処理において、子局制御部20はセンサデータを子局無線部22に出力し、子局無線部22はセンサデータを送信する。ローカル時計24は時刻をカウントし、カウント値を子局制御部20に出力する。同期処理およびデータ収集処理において、子局制御部20は、ローカル時計24から出力されたカウント値を用いる。記憶部26には、親局装置10との間の通信に必要なルーティング情報等が記憶されてよい。
【0046】
バッテリ30は使い切りの一次電池であってもよいし、繰り返し充放電が可能な二次電池であってもよい。子局装置12がアクティブ状態であるときに、電源回路32は、バッテリ30から供給される電源電力を子局制御部20、子局無線部22、ローカル時計24および記憶部26に供給する。センサ14に電源電力が要される場合には、電源回路32は、電源電力をセンサ14にも供給する。子局装置12がスリープ状態であるときに、電源回路32は一部の構成要素へ供給される電力を遮断する。
【0047】
図9には、親局装置10のハードウエアの構成例が示されている。親局装置10は、親局制御部40、親局無線部42、基準時計44および記憶部46を備えている。親局制御部40は、予め自らに記憶されたプログラム、または、記憶部46に記憶されたプログラムを実行するプロセッサであってよい。親局制御部40は、演算処理の途中で得られたデータを記憶部46に一時的に記憶させてもよい。親局制御部40および親局無線部42は、上記の同期処理およびデータ収集処理を実行する。同期処理において、親局無線部42は、タイミング要求情報を受信して親局制御部40に出力する。親局制御部40はタイミング設定情報を親局無線部42に出力し、親局無線部42はタイミング設定情報を送信する。データ収集処理において、親局無線部42はセンサデータを受信し、親局制御部40に出力する。
【0048】
基準時計44は時刻をカウントし、カウント値を親局制御部40に出力する。親局制御部40は、同期処理において、基準時計44から出力されたカウント値を用いる。なお、基準時計44は、親局装置10の外部に設けられた時計に置き換えられてもよい。記憶部46には、子局装置12との間の通信に必要なルーティング情報、送信リトライ回数上限値や中継段数上限値等の通信制限情報、各子局ID、各子局IDに対応付けられた送信順序番号等が記憶されてよい。
【符号の説明】
【0049】
10 親局装置、12,12-1~12-N 子局装置、14 センサ、20 子局制御部、22 子局無線部、24 ローカル時計、26,46 記憶部、40 親局制御部、42 親局無線部、44 基準時計、100 データ収集システム。