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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】格子アレイを有するバイオセンサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230609BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20230609BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
H01L31/02 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021166778
(22)【出願日】2021-10-11
(65)【公開番号】P2022182946
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】17/333,870
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507296388
【氏名又は名称】采▲ぎょく▼科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VisEra Technologies Company Limited
【住所又は居所原語表記】No.12,Dusing Rd.1, Hsinchu Science Park,Hsin-Chu City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】謝 馨儀
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0322157(US,A1)
【文献】特開2021-063792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/197960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/320363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/232910(US,A1)
【文献】Hsin-Yi Hsieh,Nanowell-Based Orthogonal Submicropolarizer Array Biochip for Multiple Throughput of Fluorescence Sequencing,APPLIED NANO MATERIALS,Vol.4,2021年10月06日,pp.10409-10418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサーユニットを含み、
各前記センサーユニットは、
1つ以上のフォトダイオード、
前記フォトダイオードの上方に配置された第1の開口機能部、
前記第1の開口機能部の上に配置された中間層、
前記中間層の上に配置された第2の開口機能部、および
前記第2の開口機能部の上方に配置された導波路を含み、
前記第2の開口機能部は、上部格子素子を含み、前記第1の開口機能部は、1つ以上の下部格子素子を含み、前記上部格子素子の格子周期は、前記1つ以上の下部格子素子の格子周期以下であり、且つ
前記センサーユニットのうちの1つの前記上部格子素子と前記下部格子素子の第1の偏光角と、前記センサーユニットのうちの1つに隣接する、前記センサーユニットのうちの他の1つの前記上部格子素子と前記下部格子素子の第2の偏光角との間の絶対値の差は90°であるバイオセンサー。
【請求項2】
各前記センサーユニットは、前記導波路の上方に配置されたプラテン層をさらに含み、前記プラテン層は、前記プラテン層にバイオサンプルを固定するように修飾される請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
格子アレイは、2つ以上の前記下部格子素子によって定義され、前記格子アレイの前記2つ以上の下部格子素子のそれぞれの格子周期は、徐々に増加される請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記プラテン層にナノウェルが形成され、バイオサンプルを収容する請求項2に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
格子アレイは、2つ以上の前記下部格子素子によって定義され、前記ナノウェルは前記格子アレイの対称中心に配置される請求項4に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
格子アレイは、2つ以上の前記下部格子素子によって定義され、前記ナノウェルは、前記格子アレイの対称中心からオフセットされており、前記中間層は、入射光の入射角の大きさに応じて前記入射光のスペクトルにブルーシフトを生じさせる角度高感度フィルタを含む請求項4に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記下部格子素子のそれぞれの前記格子周期は、前記下部格子素子と前記ナノウェルとの間の横方向の距離が増加するにつれて、減少する請求項4に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記1つ以上の下部格子素子のそれぞれは、前記1つ以上のフォトダイオードのうちの1つに対応し、
前記第1の開口機能部または前記第2の開口機能部は、金属層、絶縁体層、金属層のスタックを含み、且つ
少なくとも1つのレンズが前記中間層に配置される請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
前記中間層はカラーフィルターを含み、前記カラーフィルターは単層構造または多層構造を有する請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
前記上部格子素子は、上面から見て、円形状、長方形状、正方形状、または六角形状を有し、前記1つ以上の下部格子素子は、上面から見て、円形状、長方形状、正方形状、または六角形状を合わせて有する請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
複数のセンサーユニットを含み、
各前記センサーユニットは、
1つ以上のフォトダイオード、
前記フォトダイオードの上方に配置された第1の開口機能部、
前記第1の開口機能部の上に配置され、入射光の入射角の大きさに応じて前記入射光のスペクトルにブルーシフトを生じさせる角度高感度フィルタを含む中間層、
前記中間層の上に配置された第2の開口機能部、および
前記第2の開口機能部の上方に配置された導波路を含み、
前記第2の開口機能部は、上部格子素子を含み、前記第1の開口機能部は、1つ以上の下部格子素子を含み、前記上部格子素子の格子周期は、前記1つ以上の下部格子素子の格子周期以下であるバイオセンサー。
【請求項12】
前記センサーユニットのうちの1つの前記上部格子素子と前記下部格子素子の第1の偏光角と、前記センサーユニットのうちの1つに隣接する、前記センサーユニットの他の1つの前記上部格子素子と前記下部格子素子の第2の偏光角との間の絶対値の差は90°であり、前記センサーユニットのそれぞれは、前記導波路の上に配置されたプラテン層をさらに含み、ナノウェルは、前記プラテン層に形成され、バイオサンプルを収容する請求項11に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
格子アレイは、第1の下部格子素子および第2の下部格子素子によって定義され、
前記第1の下部格子素子は、第1の格子周期を有し、前記第2の下部格子素子は、前記第1の格子周期よりも大きい第2の格子周期を有し、
前記ナノウェルは、前記格子アレイの対称中心からオフセットされており、且つ
前記ナノウェルは、前記第1の下部格子素子よりも前記第2の下部格子素子に近い請求項12に記載のバイオセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサーに関するものであり、特に、格子アレイを有するバイオセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、統合型の感知装置が生物学的分析に用いられてきた。この用途では、バイオメトリックオブジェクト(biometric object)またはバイオサンプルをバイオセンサー上に配置し、バイオメトリックオブジェクトまたはバイオサンプルから反射または放出された光をバイオセンサーのフォトダイオードに導くことができる。従って、バイオメトリックオブジェクトのプロファイルまたはバイオサンプルの生物学的特性を判定し、さらなる分析のために識別することができる。
【0003】
バイオセンサーの進化の過程では、バイオセンサーのアレイ密度は、より低いコストを追求し、より高いスループットを達成するために、空間幅またはウェルピッチの減少によって一般的に増加してきた。しかしながら、このようなアレイサイズの縮小は、動作中の隣接するウェル間でクロストークが発生する可能性があり、個々の蛍光信号が正確に検出されず、不正確な分析結果となる可能性がある。
【0004】
既存のバイオセンサーは、それらの意図された目的には十分であったが、それらは全ての点において完全に満足できるものではない。従って、クロストークが低減された新しいバイオセンサーが依然として必要とされている。さらに、様々な生物学的特徴および生体反応を正確に識別できるバイオセンサーを製造することも期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
格子アレイを有するバイオセンサーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサーが提供される。バイオセンサーは、複数のセンサーユニットを含む。各センサーユニットは、1つ以上のフォトダイオード、フォトダイオードの上方に配置された第1の開口部、第1の開口部の上に配置された中間層、中間層の上に配置された第2の開口部、および第2の開口部の上方に配置された導波路を含む。第2の開口部は、上部格子素子を含み、第1の開口部は、1つ以上の下部格子素子を含み、上部格子素子の格子周期は、1つ以上の下部格子素子の格子周期以下である。センサーユニットのうちの1つの上部格子素子と下部格子素子の第1の偏光角と、センサーユニットのうちの1つに隣接し、センサーユニットのうちの他の1つの上部格子素子と下部格子素子の第2の偏光角との間の絶対値の差は90°である。
【0007】
本開示のもう1つの実施形態によるバイオセンサーが提供される。バイオセンサーは、複数のセンサーユニットを含む。各センサーユニットは、1つ以上のフォトダイオード、フォトダイオードの上方に配置された第1の開口部、第1の開口部の上に配置され、角度高感度フィルタを含む中間層、中間層の上に配置された第2の開口部、および第2の開口部の上方に配置された導波路を含む。第2の開口部は、上部格子素子を含み、第1の開口部は、1つ以上の下部格子素子を含み、上部格子素子の格子周期は、1つ以上の下部格子素子の格子周期以下である。
【0008】
以下、添付の図面と併せて本開示の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明から、より完全に理解することができる。
図1A図1Aは、本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサーの断面図である。
図1B図1Bは、本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサーの断面図である。
図1C図1Cは、本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサーの上面図である。
図2図2は、本開示のさまざまな実施形態によるセンサーユニットの上面図を示している。
図3A図3Aは、さまざまな材料で作製され、さまざまな格子周期を有する上部または下部格子素子を通過する光の透過スペクトルである。
図3B図3Bは、さまざまな材料で作製され、さまざまな格子周期を有する上部または下部格子素子を通過する光の透過スペクトルである。
図3C図3Cは、さまざまな材料で作製され、さまざまな格子周期を有する上部または下部格子素子を通過する光の透過スペクトルである。
図3D図3Dは、さまざまな材料で作製され、さまざまな格子周期を有する上部または下部格子素子を通過する光の透過スペクトルである。
図4A図4Aは、本開示の他の実施形態によるバイオセンサーの断面図を示している。
図4B図4Bは、本開示の他の実施形態によるバイオセンサーの上面図を示している。
図4C図4Cは、本開示の他の実施形態による、オフセットナノウェルを有するバイオセンサーの断面図を示している。
図4D図4Dは、本開示の他の実施形態による、オフセットナノウェルを有するバイオセンサーの上面図を示している。
図4E図4Eは、図4Cおよび図4Dに示された実施形態によって提供されたバイオセンサーを用いたバイオサンプルの検出を示している。
図4F図4Fは、さまざまな配置の下部格子素子を含むセンサーユニットを示す上面図である。
図4G図4Gは、さまざまな配置の下部格子素子を含むセンサーユニットを示す上面図である。
図4H図4Hは、さまざまな配置の下部格子素子を含むセンサーユニットを示す上面図である。
図5A図5Aは、本開示の他の実施形態による、バイオセンサーの断面図を示している。
図5B図5Bは、本開示の他の実施形態による、バイオセンサーの上面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のバイオセンサーは、以下の説明において詳細に説明される。以下の詳細な説明では、説明のために、多数の特定の詳細および実施形態が本開示の完全な理解を提供するために明記されている。以下の発明を実施するための形態で説明された特定の構成要素および構造は、本開示を明瞭に説明するために記述されている。しかしながら、本明細書で記述される例示的な実施形態は、単に説明のために用いられることは明らかであり、発明の概念は、これらの例示的な実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0011】
また、異なる実施形態の図面では、本開示を明瞭に説明するために、類似の番号および/または対応の番号を用いて、類似の構成要素および/または対応の構成要素を示すことができる。しかしながら、異なる実施形態の図面では、類似の番号および/または対応の番号の使用は、異なる実施形態間の相関関係を示唆するものではない。例示的な実施形態の説明では、本発明の実施形態の一部として見なされる添付図面と合わせて検討すれば、より理解されるであろう。図面は、縮尺通りに描かれているものではない。また、構造および装置は、図を簡素化するために概略的に示されている。
【0012】
また、「層はもう1つの層の上方(above)に配置される」、「層はもう1つの層上(on)に配置される」、および「層はもう1つの層の上方(over)に配置される」などの表現は、層がもう1つの層と直接接触していることを示しているか、または層がもう1つの層と直接接触しておらず、層ともう1つの層との間に配置された1つ以上の中間層があることを指すことができる。
【0013】
また、この明細書では、関連する表現が用いられる。例えば、「より低い(lower)」、または「より高い(upper)」は、もう1つに対する1つの構成要素の位置を説明するのに用いられる。仮に装置が上下反転された場合、「より低い」側の構成要素は、「より高い」側の構成要素となる、ということが了解されるべきである。
【0014】
第1、第2、第3などの用語は、ここでは各種の素子、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するのに用いられることができるが、これらの素子、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって制限されてはならない。これらの用語は単に一つの素子、構成要素、領域、層、および/または部分を他の素子、構成要素、領域、層、および/または部分から識別するのに用いられることは理解される。従って、第1の素子、構成要素、領域、層、および/または部分は、例示的な実施形態の技術から逸脱しない限りにおいては、第2の素子、構成要素、領域、層、および/または部分と呼ばれてもよい。
【0015】
「約」という用語は、一般的に、記載されている値の+/-10%を意味し、より一般的に、記載されている値の+/-5%を意味し、より一般的に、記載されている値の+/-3%を意味し、より一般的に、記載されている値の+/-2%を意味し、より一般的に、記載されている値の+/-1%を意味し、さらにより一般的に、記載されている値の+/-0.5%を意味する。本開示の記載値は概算値である。具体的な説明がないとき、記載されている値は、「約」、および「実質的に」の意味を含む。
【0016】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、いずれの場合も、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、本開示の関連技術および本開示の背景または文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態によれば、バイオセンサーは、複数のセンサーユニットを含み、各センサーユニットは、第1の開口機能部(feature)に1つ以上の下部格子素子および第2の開口機能部に上部格子素子を含み得る。センサーユニットの1つにおける上部および下部格子素子の第1の偏光角は、隣接するセンサーユニットにおける上部および下部格子素子の第2の偏光角と異なる。従って、隣接するセンサーユニット間のクロストークは低減されることができる。また、上部格子素子の格子周期は、下部格子素子の格子周期以下であり、下部格子素子のそれぞれの格子周期は、徐々に増加されることができる。下部格子素子を通過した後、バイオサンプルから放出または反射された光は、スペクトル分布が異なるいくつかの光に分割されることができ、従って、バイオセンサーは、バイオサンプルのより詳細な情報を得ることができ、さまざまなバイオサンプル間の違いが容易に区別されることができる。さらに、励起光がバイオサンプルを照射するように用いられるとき(例えば、導波路を介して)、特定の格子周期を有する上部格子素子は、励起光を部分的にブロックし、検出時の干渉を回避する。
【0018】
図1A図1Bは、本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサー10の断面図であり、図1Cは、本開示のいくつかの実施形態によるバイオセンサー10の上面図である。図1Aに示すように、バイオセンサー10は、複数のセンサーユニット100Aおよび100Bを含む。センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれは、1つ以上のフォトダイオード104、第1の開口機能部108、中間層106、第2の開口機能部110、および導波路112を含む。図1A図1Bに示されるように、1つのフォトダイオード104のみがセンサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれに含まれるが、各センサーユニットにおけるフォトダイオード104の数はそれに限定されない。次の図に示される他の実施形態では、各センサーユニットは、1つ以上のフォトダイオード104を含み得る。
【0019】
フォトダイオード104は、基板102内に配置される。いくつかの実施形態では、基板102は、半導体基板、例えば、シリコン基板であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、半導体基板は、ゲルマニウムを含む元素半導体、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、および/またはアンチモン化インジウム(InSb)を含む化合物半導体、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金、ガリウム砒素リン酸塩(GaAsP)合金、アルミニウムインジウム砒素(AlInAs)合金、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)合金、ガリウムインジウム砒素(GaInAs)合金、ガリウムインジウムリン酸塩(GaInP)合金、および/またはガリウムインジウム砒素リン酸塩(GaInAsP)合金、またはそれらの組み合わせを含む合金半導体であってもよい。
【0020】
フォトダイオード104は、対象物またはバイオサンプルから反射または放出された光を検出するように構成され得る。フォトダイオード104は、測定された光を電流信号に変換することができ、電流を他のMOSトランジスタなどの他の構成要素に伝送することができる、金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ(図示せず)のソースおよびドレインに接続されることができる。その他の構成要素は、リセットトランジスタ、電流源フォロワー(current source follower)、または電流をデジタル信号に変換するためのローセレクタ(row selector)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、中間層106は、基板102およびフォトダイオード104上に配置される。中間層106は、誘電体材料、半導体材料、任意の他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、誘電体材料は、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸炭化ケイ素(SiCO)、炭窒化ケイ素(SiCN)、オキシ炭化ケイ素窒化物(SiOCN)、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、半導体材料は、シリコン、炭化ケイ素、任意の適切な半導体材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。他の実施形態では、中間層106は、有機材料またはポリマー材料を含み得る。例えば、有機材料またはポリマー材料は、フォトレジスト、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、中間層106は、透明であり得る。より具体的には、中間層106の材料は、200nm~1100nmの範囲の波長の光に対して、90%以上、または好ましくは95%以上の光透過率を有し得る。中間層106は、スピンオンコーティングプロセス、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)、その他の適切な堆積方法、またはそれらの組み合わせなどの適切な堆積技術を用いて形成されてもよい。
【0023】
第1の開口機能部108は、フォトダイオード104の上方に配置され、中間層106上に配置される。センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれの第1の開口機能部108は、1つ以上の下部格子素子108Aおよび108Bをそれぞれ含む。図1Aに示されるように、下部格子素子108Aおよび108Bのそれぞれは、1つのフォトダイオード104に対応する。センサーユニット100Aまたはセンサーユニット100Bが、1つ以上の下部格子素子108Aまたは108Bおよび1つ以上のフォトダイオード104を含む実施形態では、下部格子素子108Aおよび下部格子素子108Bのそれぞれも1つのフォトダイオード104に対応し得る。
【0024】
中間層106は、第1の開口機能部108上にも配置され、第2の開口機能部110は、中間層106の一部が第1の開口機能部108と第2の開口機能部110との間に挟設されるように中間層106上に配置される。センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれの第2の開口機能部110は、上部格子素子110Aおよび上部格子素子110Bをそれぞれ含む。同様に、センサーユニット100Aの上部格子素子110Aおよびセンサーユニット100Bの上部格子素子110Bは、1つのフォトダイオード104にそれぞれ対応する。センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bが、2つ以上のフォトダイオード104、例えば2つ、4つ、またはそれ以上のフォトダイオード104を含む実施形態では、センサーユニット100Aの上部格子素子110Aおよびセンサーユニット100Bの上部格子素子110Bは、センサーユニット100Aおよび100Bの2つ、4つ、またはそれ以上のフォトダイオード104にそれぞれ対応し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、下部格子素子108Aの格子周期は、下部格子素子108Bの格子周期と同じであり、上部格子素子110Aの格子周期は、上部格子素子110Bの格子周期と同じである。しかしながら、他の実施形態では、下部格子素子108Aの格子周期は、下部格子素子108Bの格子周期とは異なり、上部格子素子110Aの格子周期は、上部格子素子110Bの格子周期とは異なる。
【0026】
さらに、上部格子素子110Aおよび110Bの格子周期は、下部格子素子108Aおよび108Bの格子周期以下である。センサーユニット100Aおよび100Bが1つ以上の下部格子素子108Aおよび108Bをそれぞれ有する実施形態では、上部格子素子110Aおよび110Bの格子周期は、全ての下部格子素子108Aおよび108Bの格子周期以下である。しかしながら、センサーユニット100Aおよび100Bのそれぞれでは、それぞれの下部格子素子は、同じ格子周期または異なる格子周期を有してもよい。
【0027】
上部格子素子110Aおよび110Bは、特定の格子周期を有し、特定の波長を有する光を通過させることができる。サンプルが励起光を用いて照射されるとき、上部格子素子110Aおよび110Bは、上部格子素子110Aおよび110Bを通過する励起光を部分的にブロックすることができる。さらに、下部格子素子108Aおよび108Bは、上部格子素子110Aおよび110Bの格子周期以上の格子周期を有して、残りの励起光をさらにブロックし、サンプルから放出または反射された光の特定のスペクトルを排除(screen)することができる。
【0028】
一般に、下部格子素子108Aおよび108Bが、上部格子素子110Aおよび110Bよりも大きい格子周期を有するように設計されているとき、より長い波長の入射光のみが、下部格子素子108Aおよび108Bを通過することができる。従って、スペクトル選択性を得ることができる。
【0029】
更に、センサーユニット100Aの下部格子素子108Aおよび上部格子素子110Aの両方は、第1の偏光角を有し、センサーユニット100Aに隣接するセンサーユニット100Bの下部格子素子108Bおよび上部格子素子110Bの両方は、第2の偏光角を有する。図1Aに示されるように、下部格子素子108Aと上部格子素子110Aの第1の偏光角および下部格子素子108Bと上部格子素子110Bの第2の偏光角は互いに異なる。より具体的には、任意の隣接する2つのセンサーユニット(図1Cの上面図に示されるセンサーユニット100Aおよび100Bなど)の下部格子素子および上部格子素子は、異なる偏光角を有する。
【0030】
本明細書で用いられる「偏光角」という用語は、偏光角に対して90°または270°シフトする角度で偏光する光が、この偏光角を有する上部格子素子または下部格子素子を通過できないことを意味する。第1の偏光角と第2の偏光角との絶対値の差は、0°以上および180°以下、例えば0°、45°、90°、135°、または180°であることができる。いくつかの特定の実施形態では、第1の偏光角と第2の偏光角との絶対値の差は90°である。この場合、センサーユニット100Aの下部格子素子108Aおよび上部格子素子110Aを通過する光の偏光方向は、センサーユニット100Bの下部格子素子108Bおよび上部格子素子110Bを通過する光の偏光配向に垂直である。任意の隣接する2つのセンサーユニットの下部格子素子と上部格子素子の偏光角が異なるため、隣接するセンサーユニット間のクロストークは低減され、各センサーユニットは、それに応じて、対象物またはバイオサンプルからの光信号を高忠実度で検出することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、下部格子素子108Aおよび108Bは、センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bの上面から見て、円形状、長方形状、正方形状、または六角形状を有し得る。いくつかの実施形態では、上部格子素子110Aおよび110Bは、センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bの上面から見て、円形状、長方形状、正方形状、または六角形状を有し得る。1つ以上の下部格子素子108Aおよび1つ以上の下部格子素子108Bをそれぞれ有するセンサーユニット100Aおよび100Bの実施形態では、下部格子素子108Aおよび108Bは、センサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bの上面から見て、円形状、長方形状、正方形状、または六角形状を合わせて有し得る。さらに、いくつかの実施形態では、バイオセンサー10の上面図において、下部格子素子108Aおよび108Bは、ナノスリットアレイを形成することができ、上部格子素子110Aおよび110Bも、ナノスリットアレイを形成することができる(図示せず)。
【0032】
第1の開口機能部108および第2の開口機能部110の材料は、金属材料、半導体材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、金属材料は、Al、Cu、Au、Ag、W、Ti、またはそれらの合金を含むことができ、半導体材料は、SiCを含むことができる。第1の開口機能部108および第2の開口機能部110の材料は、互いに同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第1の開口機能部108の厚さは、約25nm~約500nmの間、好ましくは約50nm~約250nmの間の範囲にある。いくつかの実施形態では、第2の開口機能部110の厚さは、約25nm~約500nmの間、好ましくは約50nm~約250nmの間の範囲にある。
【0033】
本開示のもう1つの実施形態によれば、第1の開口機能部108および第2の開口機能部110は、金属層、絶縁体層、金属層のスタックをそれぞれ含み得る。金属層は、前述の任意の金属を含むことができ、絶縁体層は、SiO、Al、またはそれらの組み合わせを含むことができる。金属層、絶縁体層、金属層のスタックの各金属層は、約20nm~約150nm、例えば約40nmの厚さを有し得る。金属-絶縁体-金属層のスタックの絶縁体層は、約60nm~約200nm、例えば約100nmの厚さを有し得る。金属層、絶縁体層、金属層のスタックの全体的な厚さは、約100nm~約500nmの間、好ましくは約100nm~約300nmの間の範囲である。
【0034】
パターニングプロセスは、第1の開口機能部108および第2の開口機能部110に対してそれぞれ行なわれ、所望の格子周期および偏光角を有する格子素子を形成することができる。パターニングプロセスは、フォトリソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスを含み得る。いくつかの実施形態では、フォトリソグラフィプロセスは、フォトレジストコーティング、ソフトベーキング、ハードベーキング、マスクアラインメント、露光、露光後ベーキング、フォトレジストの現像、リンス、乾燥、または他の適切なプロセスを含み得る。いくつかの実施形態では、エッチングプロセスは、プラズマエッチング(PE)、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)、またはそれらの組み合わせなどのドライエッチングプロセスを含み得る。上記のように、下部格子素子108A、108Bおよび上部格子素子110A、110Bは、設計要件に応じて特定の格子周期をそれぞれ有することができるが、下部格子素子108Aおよび108Bの格子周期は、上部格子素子110Aおよび110Bの格子周期以上である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の開口機能部108と第2の開口機能部110の間に配置された中間層106は、カラーフィルターを含み得る。例えば、カラーフィルターは、フォトダイオード104に入射する励起光をさらにフィルタリングすることができる除去フィルタであり得る。もう1つの実施形態では、カラーフィルターは、吸収フィルタ、干渉フィルタ、プラズモンメタ表面構造、誘電体メタ表面構造、またはそれらの組み合わせも含み得る。カラーフィルターは、単層構造でも多層構造でもよい。
【0036】
いくつかの特定の実施形態では、カラーフィルターは角度高感度(angle-sensitive)フィルタである。入射光がより大きな入射角で角度高感度フィルタに入射すると、角度高感度フィルタに垂直な入射光の等価波長が短くなり、それにより入射光のスペクトルにブルーシフトが生じる。角度高感度フィルタは、高屈折率と低屈折率の誘電体材料を交互に堆積することによって形成された誘電体干渉フィルタであり得る。屈折率が可視光の波長範囲で約1.7より大きい場合、屈折率は高屈折率と見なされる。高屈折率を有する誘電体材料は、Nb、Ta、TiO、Si、Al、SiH、またはそれらの組み合わせを含み得る。屈折率が可視光の波長範囲で約1.7より小さい場合、屈折率は低屈折率と見なされる。低屈折率の誘電体材料は、SiO2、Al、有機ポリマー、空気、またはそれらの組み合わせを含み得る。あるいは、角度高感度フィルタは、プラズモンフィルターまたは誘電体メタ表面構造であり得る。
【0037】
さらに、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのレンズが、第1の開口機能部108と第2の開口機能部110との間にある中間層106に配置され得る。サンプルからの放出光または反射光は、いくつかの層を通過した後の放出光または反射光が依然として検出に十分な光強度を保持できるように、レンズによって集束される。
【0038】
図1Aに示すように、中間層106は、第2の開口機能部110上に配置され、導波路112は、第2の開口機能部110および中間層106の上方に配置されてもよい。光源(図示せず)から放出された光は、導波路112を介して、サンプルが配置または固定される位置に向かって伝播することができる。導波路112は、線形導波路または平面導波路であり得る。
【0039】
図1Aに示されるように、本開示のいくつかの実施形態によれば、バイオセンサー10のセンサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれは、導波路112の上方に配置されたプラテン層114をさらに含み得る。プラテン層114は、指紋または対象物の輪郭の検出などの生体認証のための平坦な表面を提供することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、プラテン層114は、透明または半透明であり得る。より具体的には、プラテン層114が透明である実施形態では、プラテン層114の材料は、400nm~750nmの範囲の波長の光に対して、85%以上、または好ましくは92%以上の光透過率を有し得る。プラテン層114が半透明である実施形態では、プラテン層114の材料は、400nm~750nmの範囲の波長の光に対して25%以上85%以下の光透過率を有し得る。
【0041】
プラテン層114の材料は、酸化ケイ素(SiO)、アモルファスシリコン(a-Si)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ポリマーは、ビスベンゾシクロブテン(BCB)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、その他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。プラテン層114は、スパッタリング、蒸着、スピンコーティング、化学蒸着(CVD)、分子線蒸着、任意のその他の適切なプロセス、またはそれらの組み合わせを用いて形成されることができる。例えば化学蒸着プロセスには、低圧化学蒸着(LPCVD)、低温化学蒸着(LTCVD)、急速熱化学蒸着(RTCVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)、原子層蒸着(ALD)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、プラテン層114の表面の一部は、修飾(modified)された部分のみが所望のバイオサンプルを捕捉することができるように修飾され得る。例えば、いくつかの所望のバイオサンプルは、プラテン層114の表面上のいくつかの官能基を修飾することによって捕捉され得る。さらに、プラテン層114の表面の上述の修飾された部分は、バイオサンプルの固定化を強化するためにさらに修飾され得る。例えば、いくつかの実施形態では、プラテン層114は、自己組織化単分子膜(SAM)、機能性ポリマー、またはヒドロゲルでコーティングまたは処理されて、バイオサンプルを特定の位置に固定化して検出することができる。バイオサンプルは、その重量、サイズ、表面電荷、またはファンデルワールス力などに応じて、プラテン層114上に固定化され得る。
【0043】
図1Bに示すように、バイオセンサー10のセンサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bのそれぞれは、プラテン層114に形成されたナノウェル116を有する。検出されるバイオサンプルは、ナノウェル116に収容され得る。ナノウェル116は、プラテン層114を堆積させた後、プラテン層114に開口機能部を形成することによって形成されることができる。同様に、ナノウェル116の表面は、上述と同様の方法を用いて修飾され、バイオサンプルの固定化を強化することができる。
【0044】
次に、図1Cに示すように、図1Cは、図1Bに示されるバイオセンサー10の上面図を示している。図1Bおよび次の図の上面図では、単に簡単にするために、ナノウェル116を除いて、第1の開口機能部108の上の層または構成要素が省略されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、ナノウェル116は、センサーユニット100Aおよび100Bのそれぞれの対称中心に配置され得る。しかしながら、他の実施形態では、ナノウェルは、センサーユニット100Aおよび100Bのそれぞれの対称中心からオフセットされ得る。
【0045】
図2は、本開示のもう1つの実施形態による、1つ以上の下部格子素子108Aを有するセンサーユニット100Aの上面図を示している。上記のように、センサーユニット100Aの第1の開口機能部108は、m×n個の格子アレイを定義する1つ以上の下部格子素子108Aを含み得る。例えば、図2の左側では、センサーユニット100Aの第1の開口機能部108は、3×3の格子アレイを定義する9つの下部格子素子108Aを含む。図2の右側では、センサーユニット100Aの第1の開口機能部108は、4×4の格子アレイを定義する16個の下部格子素子108Aを含む。さらに、ナノウェル116は、下部格子素子108Aによって定義された格子アレイの対称中心に配置され得る。図2では、全ての下部格子素子108Aが同じ格子周期を有するように示されているが、各センサーユニット100Aは、異なる格子周期を有するいくつかのより低い格子素子を含んでもよいことが理解され得る。
【0046】
下部格子素子108Aは、図2において同じ格子周期を有するように示されているが、下部格子素子108Aは、同じまたは異なることができるそれぞれの格子周期を有し得ることに留意されたい。これについては、詳細に説明する。
【0047】
図3A図3Dは、それぞれAl、Cu、Au、およびAgからなり、さまざまな格子周期を有する下部格子素子または上部格子素子を通過する光の透過スペクトルである。図3A図3Dに示されるように、より大きな格子周期を有する上部または下部格子素子は、より長い波長の入射光を通過させ、より短い波長の入射光を遮断することができる。例えば、図3Aでは、500nmを超える波長を有する入射光は、80%を超える光透過率を有することができ、250nmの格子周期を有する下部または上部格子素子を通過することができる。400nmの格子周期を有する下部または上部格子素子を用いるとき、600nmを超える波長の入射光のみが下部または上部格子素子を通過できる。また、異なる材料は、スペクトル選択性も異なる可能性がある。従って、所望のスペクトル選択性は、適切な材料を選択し、且つ下部および上部格子素子の格子周期を調整することによって達成することができる。
【0048】
図4Aおよび図4Bは、本開示の他の実施形態によるバイオセンサー20の断面図および上面図をそれぞれ示している。図4Aおよび図4Bに示されるように、センサーユニット100Aおよび100Bは、2つの下部格子素子108A1、108A2および108B1、108B2をそれぞれ有する。2つの下部格子素子は、1つのセンサーユニットに1×2の格子アレイを定義する。例えば、下部格子素子108A1および108A2は、センサーユニット100A内に1×2の格子アレイを定義し、下部格子素子108B1および108B2は、センサーユニット100B内に1×2の格子アレイを定義する。
【0049】
これらの実施形態では、下部格子素子108A1の格子周期は、下部格子素子108A2の格子周期以下であり、下部格子素子108B1の格子周期は、下部格子素子108B2の格子周期以下である。上部格子素子110Aの格子周期は、下部格子素子108A1の格子周期以下であり、上部格子素子110Bの格子周期は、下部格子素子108B1の格子周期以下である。各下部格子素子は、1つのフォトダイオード104に対応する。センサーユニット100Aおよび100Bのそれぞれの2つの下部格子素子108A1、108A2または108B1、108B2を通過するバイオサンプルからの放出光または反射光は、Bは、2つのタイプのスペクトル分布を有する2つの部分に分割されることができ、各部分は、1つのフォトダイオード104によって検出されることができる。従って、より多くの情報が個々のセンサーユニット内を移動する放出光または反射光から得られることができる。
【0050】
また、センサーユニット100Aの上部格子素子110Aおよび下部格子素子108A1、108A2は、センサーユニット100Bの上部格子素子110Bおよび下部格子素子108B1、108B2の第2の偏光角とは異なる第1の偏光角を有する。隣接するセンサーユニット100Aと100B間のクロストークは、それに応じて低減され得る。いくつかの特定の実施形態では、第1の偏光角と第2の偏光角間の絶対値の差は90°である。
【0051】
図4Cおよび図4Dに示すように、図4Cおよび図4Dは、本開示の他の実施形態による、オフセットナノウェル116を有するバイオセンサー20の断面図および上面図をそれぞれ示している。図4Cおよび図4Dに示された実施形態では、第1の開口機能部108と第2の開口機能部との間の中間層106は、角度高感度フィルタを含む。センサーユニット100Aおよび100Bのそれぞれのナノウェル116は、下部格子素子108A1、108A2および108B1、108B2によって定義されたそれぞれの格子アレイの対称中心からオフセットされている。さらに、ナノウェル116は、下部格子素子108A1または108B1よりも小さい格子周期を有する下部格子素子108A2または108B2の近くに配置される。
【0052】
図4Eは、図4Cおよび図4Dに示されたバイオセンサー20を用いたバイオサンプル118の検出を示している。導波路112を透過した光をバイオサンプル118に照射することにより、バイオサンプル118は、放出光を生成するか、または光を反射することができる。放出光または反射光の第1の部分L1は、第1の角度θ1で上部格子素子110Aに入射し(即ち、第1の角度θ1で下部格子素子108A1に入射する)、放出光または反射光の第2の部分L2は、第2の角度θ2で上部格子素子110Aに入射し(即ち、第2の角度θ2で下部格子素子108A2に入射する)。ナノウェル116がセンサーユニット100Aの格子アレイの対称中心からオフセットされており、下部格子素子108A2に近いため、第1の角度θ1は、第2の角度θ2よりも大きい。
【0053】
第1の開口機能部108と第2の開口機能部110との間の中間層106の角度高感度フィルタを通過した後、放出光または反射光の第1の部分L1は、角度高感度フィルタにより引き起こされたブルーシフト現象により、より短い波長を有する。その結果、センサーユニット100Aの下部格子素子108A1およびセンサーユニット100Bの下部格子素子108B1などのスペクトル選択には、より小さな格子周期を有する下部格子素子が必要とされる。一方、角度高感度フィルタを通過した後、放出光または反射光の第2の部分L2は、第1の部分L1よりも長い波長を有する。従って、センサーユニット100Aの下部格子素子108A2およびセンサーユニット100Bの下部格子素子108B2など、より大きな格子周期を有する下部格子素子が必要とされる。
【0054】
図4F図4Hは、さまざまな配置の下部格子素子を含むセンサーユニット100Aを示す上面図である。図4F図4Hのセンサーユニット100Aは、図4Fのセンサーユニット100Aが2×2の格子アレイを定義する4つの下部格子素子を有することを除いて、図4Dに示された実施形態のセンサーユニット100Aと同様であり、図4Gおよび図4Hのセンサーユニット100Aは、3×3の格子アレイを定義する9つの下部格子素子を有する。
【0055】
センサーユニット100Aが1つ以上の下部格子素子を含む実施形態では、各下部格子素子の格子周期は、下部格子素子とナノウェル116との間の横方向の距離が増加するにつれて、減少する。本明細書で用いられる横方向の距離は、X方向またはY方向に沿った下部格子素子とナノウェル116との間の水平距離であり得る。図4Fでは、センサーユニット100Aは、1つの下部格子素子108A1、2つの下部格子素子108A2、および1つの下部格子素子108A3を有する。下部格子素子108A3の格子周期は、下部格子素子108A2の格子周期以下であり、下部格子素子108A2の回折周期は、下部格子素子108A1の回折周期以下である。
【0056】
より大きな入射角で下部格子素子に入射する放出光または反射光は、より弱い光強度を有し得る。従って、下部格子素子とナノウェル116との間の横方向の距離が増加するにつれて、より小さな格子周期を有するより多くの低部格子素子が必要とされ、分析に十分な光強度を得る。全ての下部格子素子の中で、下部格子素子108A4は、ナノウェル116から最も遠く、従って、最小の格子周期を有する。対照的に、下部格子素子108A1は、ナノウェル116に最も近く、従って、最大の格子周期を有する。
【0057】
図4Hでは、センサーユニット100Aは、3つの下部格子素子108A6、2つの下部格子素子108A5、1つの下部格子素子108A4、1つの下部格子素子108A3、1つの下部格子素子108A2、および1つの下部格子素子108A4を含む。図4Hに示される実施形態では、ナノウェル116は、下部格子素子108A1、108A2、108A3、および108A4によって定義された格子アレイの中心に配置される。下部格子素子108A1~108A4は、互いに異なるそれぞれの格子周期を有する。同様に、ナノウェル116から最も遠い下部格子素子108A6は、最小の格子周期を有し、下部格子素子108A6よりもナノウェル116に近い下部格子素子108A5は、下部格子素子108A6以上の格子周期を有する。下部格子素子108A1~108A4は、異なる格子周期を有し、より多様なスペクトル選択を可能にするように形成され得る。さらに、下部格子素子108A1~108A4の配置は、図4Hに示されたものに限定されない。下部格子素子108A1~108A4は、それらが2×2に配置され、ナノウェル116の真下に配置されている限り、任意に配置され得る。
【0058】
図5Aおよび図5Bに示すように、図5Aおよび図5Bは、本開示の他の実施形態によるバイオセンサー30の断面図および上面図をそれぞれ示している。図5Aおよび図5Bに示されたバイオセンサー30は、各センサーユニット100Aおよび100Bが、2×2に配置された4つの下部格子素子を有すること以外は、図4Aおよび図4Bに示されたバイオセンサー20と同様である。バイオセンサー30のセンサーユニット100Aおよびセンサーユニット100Bの断面は、それぞれ、線A-A’およびB-B’に沿って取られている。図5Bは、センサーユニット100Aおよび100BがX方向に沿って交互のパターンでどのように配置されるかを示しているが、センサーユニット100Aおよび100Bも同じ方法であるが、Y方向に沿って配置され得ることに留意されたい。
【0059】
いくつかの実施形態では、下部格子素子108A1~108A4は、徐々に増加するそれぞれの格子周期を有ることができ、下部格子素子108A1~108A4のそれぞれの格子周期は、上部格子素子110Aの格子周期以下である。もう1つの実施形態では、1つ以上の下部格子素子108A1~108A4は、上部格子素子110Aと同じ格子周期を有し得る。上述のように、センサーユニット100Aにおける下部格子素子108A1~108A4および上部格子素子110Aの第1の偏光角は、センサーユニット100Bにおける下部格子素子108B1~108B4および上部格子素子110Bの第2の偏光角と異なる。さらに、図5Aおよび図5Bに示される実施形態では、ナノウェル116は、下部格子素子108A1~108A4または108B1~108B4によって定義された2×2の格子アレイの対称中心に配置される。
【0060】
1つ、2つ、および4つの下部格子素子は、前述の図に示されているが、各センサーユニットの下部格子素子の数はそれに限定されないことを理解されたい。もう1つの実施形態では、各センサーユニットは、m×n個の格子アレイを定義する複数の下部格子素子を有することができ、mおよびnは正の整数であり、同じまたは異なってもよい。
【0061】
要約すると、本開示のいくつかの実施形態によれば、バイオセンサーの各センサーユニットは、1つの上部格子素子および1つ以上の下部格子素子を有することができる。センサーユニットのうちの1つにおける上部および下部格子素子の第1の偏光角は、隣接するセンサーユニットにおける上部および下部格子素子の第2の偏光角と異なる。従って、隣接するセンサーユニット間のクロストークは、低減され得る。さらに、下部格子素子は、徐々に増加され、上部格子素子の格子周期以上であるそれぞれの格子周期を有し得る。このような下部格子素子を用いれば、バイオセンサーは、対象物またはバイオサンプルを正確な方法で検出することができ、さまざまな対象物またはバイオサンプル間の違いを容易に区別することができる。
【0062】
本開示およびそれらの利点の一部の実施形態が詳細に説明されてきたが、添付の請求の範囲によって定義されるように、本開示の精神および範囲を逸脱せずに、本明細書において種々の変更、置換、および代替をすることができることを理解すべきである。例えば、本明細書で述べられる特徴、機能、プロセス、および材料の多くが本開示の範囲を逸脱することなく変更できることが当業者にとっては容易に理解されるだろう。また、本出願の範囲は、本明細書中に述べられたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者が本開示の開示から容易に理解するように、本明細書で述べられた対応する実施形態と、実質的に同様の機能を実行するか、または実質的に同様の結果を達成する、現存の、または後に開発される、開示、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップが本開示に従って利用され得る。よって、添付の特許請求の範囲は、上述のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むように意図される。
【符号の説明】
【0063】
10、20、30 バイオセンサー
100A、100B センサーユニット
102 基板
104 フォトダイオード
106 中間層
108 第1の開口機能部
108A、108A1、108A2、108A3、108A4、108A5、108A6、108B、108B1、108B2、108B3、108B4 下部格子素子
110 第2の開口機能部
110A、110B 上部格子素子
112 導波路
114 プラテン層
116 ナノウェル
118 バイオサンプル
A-A’、B-B’ 線
L1 第1の部分
L2 第2の部分
θ1 第1の角度
θ2 第2の角度
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B