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  • 特許-低GWPカスケード冷却システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】低GWPカスケード冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230609BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
F25B1/00 397A
F25B7/00 D
F25B1/00 331Z
F25B1/00 396Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206765
(22)【出願日】2021-12-21
(62)【分割の表示】P 2018549961の分割
【原出願日】2017-03-24
(65)【公開番号】P2022034000
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】15/468,292
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/313,177
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ・モッタ,サミュエル・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】セシ,アンキット
(72)【発明者】
【氏名】ポッチケ,グスタヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ベラ・ベセラ,エリザベト・デル・カルメン
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/071967(WO,A1)
【文献】特開2015-218910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャを含み、エンクロージャの内容物を冷却するための熱伝達システムであって、前記システムはさらに、
(a)ループ内で流体連絡している圧縮機、膨張器、及び蒸発器、並びに第1の冷媒及び圧縮機のための潤滑剤を含むループ内の第1の熱伝達組成物を含む相対的に低い温度の蒸気圧縮ループ、ここで蒸発器はエンクロージャ内に配置されて、かかる相対的に低い温度においてエンクロージャ内の流体から熱を吸収することができ、第1の冷媒は実質的に二酸化炭素からなる;
(b)ループ内で流体連絡している圧縮機、凝縮器、膨張器、及び吸入ライン熱交換器、並びに第2の冷媒を含むループ内の第2の熱伝達組成物を含む相対的に高い温度の蒸気圧縮ループ、ここで凝縮器はエンクロージャの外側に配置されているヒートシンクに熱を移動させることができ、第2の冷媒はCOの燃焼性よりも大きい燃焼性を有する;並びに
(c)第1と第2の冷媒の間の熱交換によって第1の冷媒を凝縮させて第2の冷媒を蒸発させるためのカスケード熱交換器;
を含み;
吸入ライン熱交換器は、カスケード熱交換器から排出される第2の熱伝達組成物の少なくとも一部を受容するためにカスケード熱交換器と流体連絡していて、凝縮器から排出される第2の熱伝達組成物から熱を吸収することによってその温度を上昇させ、それによって第2の熱伝達組成物が相対的に高い温度の蒸気圧縮ループ膨張器に導入される前に第2の熱伝達組成物の温度を低下させ、
システムの能力が30kW未満であり、及び、
第2の冷媒がR-1234ze(E)から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は1.2以上であり;又は、
第2の冷媒がR-1234ze(E)及びR-32から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は、1.0以上であり;又は、
第2の冷媒がR-32から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は、0.9以上であり;又は、
第2の冷媒が、70重量%~90重量%のHFO-1234yf、及び10重量%~30重量%のR32を含む、熱伝達システム。
【請求項2】
圧縮機及び膨張器並びに凝縮器のそれぞれがエンクロージャ内に配置されていない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
エンクロージャはエンクロージャ内の空気を冷却することによって物品を低温状態に保つために用いられ、ウォークイン容器、保冷容器、及び輸送用冷却容器から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
システムの能力が15kW未満である、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
システムの能力が10kW未満である、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
第2の冷媒がR-1234ze(E)から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は1.2以上である、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
第2の冷媒がR-1234ze(E)及びR-32から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は、1.0以上である、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
第2の冷媒がR-32から実質的に構成され、低温ループ内の第1の冷媒の第2の冷媒に対する装填量の重量比は、0.9以上である、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
第2の冷媒が、70重量%~90重量%のHFO-1234yf、及び10重量%~30重量%のR32を含む、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
第2の熱伝達組成物がさらに圧縮機のための潤滑剤を含む、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年3月25日出願の仮出願62/313,177(その全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
本出願はまた、2017年3月24日出願の米国出願15/468,292(その全部を参照として本明細書中に包含する)の継続出願でもあり、それに対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本出願はまた、2016年1月6日出願の仮出願62/275,382の優先権の利益を主張する2017年1月6日出願の現在係属中の米国出願15/400,891(これらのそれぞれはその全部を参照として本明細書中に包含する)の一部継続出願でもある。
【0003】
本出願はまた、2016年2月16日出願の62/295,731の優先権の利益を主張する2017年2月16日出願の現在係属中の米国出願15/434,400(これらのそれぞれの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)の一部継続出願でもある。
【0004】
本発明は、高効率で低地球温暖化係数(低GWP)の空調及び/又は冷却システム、並びに安全で有効な冷却を与える方法に関する。
【背景技術】
【0005】
通常の空調及び冷媒システムにおいては、熱伝達蒸気をより低い圧力からより高い圧力に圧縮して、それによって蒸気に熱を加えるために圧縮機を用いる。この加えられた熱は、一般的には、通常は凝縮器と呼ばれる熱交換器内に排出される。凝縮器に導入される熱伝達蒸気は凝縮されて、比較的高い圧力の液体熱伝達流体が生成する。通常は、凝縮器は、周囲外気のような周囲環境において大量に入手できる流体をヒートシンクとして用いる。凝縮したら、高圧の熱伝達流体を、膨張装置又は弁を通して流体を通過させることによって起こる実質的に等エンタルピーの膨張にかけて、そこでより低い圧力に膨張させ、それによって流体に温度低下を起こさせる。膨張運転からのより低い圧力でより低い温度の熱伝達流体は、通常は次に蒸発器に送り、ここで熱を吸収してその際に蒸発させる。この蒸発プロセスによって、冷却することを意図する流体又は物体の冷却が行われる。多くの通常の空調及び冷却用途においては、冷却される流体は、空調される居住空間内の空気、或いはウォークインクーラー又はスーパーマーケット用クーラー若しくはフリーザーの内側の空気のような冷却する領域内に含まれる空気である。熱伝達流体が蒸発器内において低圧で蒸発した後、それを圧縮機に戻して、そこでサイクルを再度開始する。
【0006】
同時に環境に優しく、即ち低いGWP効果及び低いオゾン層破壊(ODP)効果の両方を有する、効率的で有効で且つ安全な空調システムの形成には、複数のファクター及び要件の複雑で相互に関連する組合せが関係する。効率性及び有効性に関しては、熱伝達流体を高いレベルの効率及び高い相対能力を有する空調及び冷却システム内で運転することが重要である。同時に、熱伝達流体は時間と共に大気中に漏出する可能性があるので、流体がGWP及びODPの両方に関して低い値を有することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人らは、幾つかの流体は、高いレベルの効率性及び有効性の両方を達成し、同時に低いレベルのGWP及びODPの両方を達成することができるが、この複数の要件の組合せを満足する多くの流体は、安全性に関して不備を有するという欠点を有することを認識するに至った。例えば、そうでなければ許容できる可能性がある流体は、燃焼特性及び
/又は毒性の問題のために好ましくない可能性がある。本出願人らは、かかる燃焼性及び/又は毒性の流体が、冷却する居住空間、ウォークインクーラー、保冷容器、チラー、フリーザー、又は輸送用冷却容器中に不注意に放出されて、それによってその占有者を危険な状態に曝すか又は曝す可能性があるので、かかる特性を有する流体を用いることは、通常の空調システム及び多くの冷却システムにおいて特に望ましくないことを認識するに至った。本出願人らはまた、この問題は更に、比較的小さなシステム、例えば30kW未満の能力を有するシステムに関してより重大な問題であることも認識するに至った。これは、かかるシステムに関しては、防火システムのような有効な安全保護システムのコストがしばしば経済的に実現可能でないからである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、通常の使用中に人間又は他の動物によって占有されるか又はそれに曝露されるエンクロージャ(enclosure)内に配置される空気に、直接的又は間接的
、しかしながら好ましくは直接的に冷却を与えるためのカスケード冷媒システムが提供される。本明細書において用いる「エンクロージャ」という用語は、少なくとも部分的に限定されており(例えば、エンクロージャは1以上の側部が開放されていてよく、或いは閉止されていてよい)、冷却する空気を含む空間を意味する。
【0009】
本システムの好ましい態様は、少なくとも、エンクロージャ内に配置され、第1の相対的に低い温度の熱伝達回路の一部である第1の蒸発器を含む。低温の熱伝達回路は、好ましくは、少なくとも、第1の熱伝達組成物の圧力を上昇させるための圧縮機;比較的高い圧力の圧縮機からの第1の熱伝達組成物の少なくとも一部を凝縮させるための熱交換器;凝縮器からの熱伝達組成物の圧力を低下させるための膨張装置;及び冷却されるエンクロージャからの熱を熱伝達組成物中に吸収させるための蒸発器;を含む蒸気圧縮循環ループ内に第1の熱伝達流体を含む。好ましくはかかる圧縮機、凝縮器、及び膨張弁の1以上、最も好ましくはこれらの全部はエンクロージャの外側に配置し、蒸発器はエンクロージャ内に配置する。
【0010】
本発明のシステムはまた、好ましくは、実質的にエンクロージャの外側に配置される第2の熱伝達回路(本明細書において時には便宜上「高温」ループと呼ぶ)も含む。高温ループは、好ましくは、少なくとも圧縮機、高温ループ内の熱伝達流体を、好ましくはエンクロージャの外側の周囲空気との熱交換によって凝縮させるように働く熱交換器、及び圧縮機からの第2の熱伝達流体の圧力を低下させるための膨張装置を含む蒸気圧縮循環ループ内に第2の熱伝達流体を含む。
【0011】
本発明の好ましい態様の重要な特徴は、好ましくは第2の熱伝達流体の少なくとも相当部分を蒸発させることによって熱を第2の熱伝達流体中に排出するために、低温回路における凝縮器として働く熱交換器が高温回路と熱的に結合していることである。このように、低温回路の凝縮器と高温回路の蒸発器がこの熱交換器内で熱的に結合しており、これは時には本発明のシステム及び方法において便宜上「カスケード熱交換器」と呼ぶ。
【0012】
好ましい態様における本発明の他の重要な特徴は、高温凝縮器から排出される第2の熱伝達流体から、第2の熱伝達流体の圧縮機の吸入側に送られる部分へ熱を移動させることによって、システム性能を有利に且つ予期しなかったほどに向上させることが見出された熱交換器を高温ループ内に存在させることを含む。この熱交換器は、本明細書において時には便宜上「吸入ライン熱交換器」と呼ぶ。
【0013】
好ましいシステムの他の重要な特徴は、低温ループ内で循環する第1の熱伝達流体が、約500以下、より好ましくは約400以下、更により好ましくは約150以下のGWPを有する冷媒を含むこと、及び更には第1の熱伝達流体が、第2の熱伝達流体の燃焼性よ
りも相当に低い燃焼性を有することである。好ましくは、高温ループ内で循環する第2の熱伝達流体も、約500以下、より好ましくは約400以下、更により好ましくは約150以下のGWPを有する冷媒を含むが、通常運転においてはこの熱伝達流体は決してエンクロージャに導入されないので、本出願人らは、エンクロージャ内で循環させた場合に不利であると考えられる1つ又は複数の特性、例えば燃焼性、毒性などを有する流体をこの高温ループ内で用いることが有利であることを見出した。このように、下記に詳細に説明するように、本システムによって、第1の熱伝達組成物のみ又は第2の熱伝達組成物のみに依拠するシステムを凌ぐ更なる可能な予期しなかった有利性が可能になる。
【0014】
幾つかの好ましい態様においては、第2の冷媒は、少なくとも約50重量%、更により好ましくは少なくとも約75重量%のトランス-1,3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及び/又はHFO-1234yfを含み、より好ましくはこれらを含み、第2の冷媒はほぼCOの燃焼性よりも大きく、好ましくは相当に大きい燃焼性を有する。他の態様においては、第2の冷媒は、少なくとも約75重量%、更により好ましくは少なくとも約80重量%のトランス-1,3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及び/又はHFO-1234yfを含み、より好ましくはこれらを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による空調システムの1つの好ましい態様の一般化したプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい熱伝達組成物:
本明細書に記載する好ましい態様のそれぞれにおいて、本システムは、
(a)ループ内で流体連絡している圧縮機、膨張器、及び蒸発器、並びに第1の冷媒及び好ましくは圧縮機のための潤滑剤を含むループ内の第1の熱伝達組成物を含む相対的に低い温度の蒸気圧縮ループ(蒸発器は冷却する空気を含むエンクロージャ内に配置されて、ほぼかかる相対的に低い温度において空気から熱を吸収することができる);
(b)ループ内で流体連絡している圧縮機、凝縮器、膨張器、及び吸入ライン熱交換器、並びに第2の冷媒及び好ましくは圧縮機のための潤滑剤を含むループ内の第2の熱伝達組成物を含む相対的に高い温度の蒸気圧縮ループ(凝縮器はエンクロージャの外側に配置されているヒートシンクに熱を移動させることができる);並びに
(c)第1と第2の冷媒の間の熱交換によって第1の冷媒を凝縮させて第2の冷媒を蒸発させるためのカスケード熱交換器;
を含み;
吸入ライン熱交換器は、カスケード熱交換器から排出される第2の熱伝達組成物の少なくとも一部を受容するためにカスケード熱交換器と流体連絡していて、凝縮器から排出される第1の熱伝達組成物から熱を吸収することによってその温度を上昇させ、それによって第1の熱伝達組成物が第1ループ膨張器に導入される前に第1の熱伝達組成物の温度を低下させる。
【0017】
本明細書において用いる「相対的に低い温度」及び「相対的に高い温度」の用語は、第1及び第2の熱伝達ループに関して一緒に用いる場合には、他に示していない限りにおいて、示されている熱伝達組成物の相対的な温度(ここではこれらの差は少なくとも約5℃である)を示すために相対的な意味で用いられる。
【0018】
好ましくは、第1の冷媒は第2の冷媒の燃焼性よりも相当に低い燃焼性を有する。好ましい態様においては、第1の冷媒は、ASHRAE標準規格34(ASTM-E681による測定法を規定している)にしたがってA1と分類される燃焼性を有し、第2の冷媒は
、ASHRAE標準規格34にしたがってA2Lと分類される燃焼性、又はA2Lよりも高い燃焼性を有するが、第2の冷媒に関してはA2Lの分類が好ましい。また、第1及び第2の冷媒はそれぞれ約150未満の地球温暖化係数(GWP)を有することも好ましい。
【0019】
好ましい態様においては、低温ループ内で循環する第1の冷媒は、二酸化炭素を含み、好ましくは二酸化炭素から実質的に構成され、より好ましくは幾つかの態様においては二酸化炭素から構成される。
【0020】
第2の冷媒は、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、R-227ea、及びR-32、並びにこれらの2以上の組合せの1以上を含むことが好ましい。好ましい態様においては、第2の冷媒は、少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含む。他の好ましい態様においては、第2の冷媒は、少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%又は少なくとも約75重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を含む。非常に好ましい態様においては、第2の冷媒は、少なくとも約95重量%のHFO-1234ze(E)、HFO-1234yf、又はこれらの2以上の組合せを含み、幾つかの態様においてはこれから実質的に構成され、或いはこれから構成される。
【0021】
他の非常に好ましい態様においては、第2の冷媒は、約70重量%~約90重量%のHFO-1234yf、好ましくは約80重量%のHFO-1234yf、及び約10重量%~約30重量%のR32、好ましくは約20重量%のR-32を含む。
【0022】
他の非常に好ましい態様においては、第2の冷媒は、約70重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)、好ましくは約80重量%のHFO-1234ze(E)、及び約10重量%~約30重量%のR32、好ましくは約20重量%のR-32を含む。
【0023】
他の非常に好ましい態様においては、第2の冷媒は、約85重量%~約90重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及び約10重量%~約15重量%の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、更により好ましくは幾つかの態様においては約88重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及び約12重量%の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)を含む。
【0024】
当業者であれば、本明細書に含まれる開示事項を考慮して、本発明の好ましい態様は、冷却するエンクロージャ内では安全(比較的低毒性で低燃焼性)な低GWP冷媒のみを用い、エンクロージャの完全に外側に配置されている高温ループ内で安全性が相対的により低いが好ましくは低GWPの冷媒を用いる有利性を与えることを認識するであろう。
【0025】
本明細書において用いる「安全」及び「安全性が相対的により低い」という用語は、第1及び第2の熱伝達ループに関して一緒に用いる場合には、他に示していない限りにおいて、示されている熱伝達組成物の相対的安全性を示すために相対的な意味で用いる。かかる構成により、特に高温システムが好ましい吸入ライン熱交換器を含む場合には、本発明のシステム及び方法は、ウォークインフリーザー、スーパーマーケット用クーラーなどにおいて通常的に遭遇するエンクロージャを占有するか又はそれを使用する人間又は他の動物に近接する位置において用いるのに非常に好ましい。
【0026】
第2の冷媒の好ましい態様を下表に開示する。
【0027】
【表1-1】
【0028】
【表1-2】
【0029】
第1の熱伝達組成物及び第2の熱伝達組成物はまた、それぞれ一般に、一般に熱伝達組成物の約30~約50重量%の量の潤滑剤を含み、残りは冷媒及び存在させることができる他の随意的な成分である。また、米国特許6,516,837(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)によって開示されているように、油溶性を促進させるために界面活性剤と可溶化剤の組み合わせを本組成物に加えることもできる。ヒドロフルオロカーボン(HFC)冷媒と共に冷却機内で用いられるポリオールエステル(POE)及びポリアルキレングリコール(PAG)、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼン類(AB)、及びポリ(α-オレフィン)(PAO)のような通常用いられる冷却潤滑剤を、本発明の冷媒組成物と共に用いることができる。好ましい潤滑剤はPOEである。
【0030】
本発明の一形態による第1の冷媒、第2の冷媒、及び潤滑剤の好ましい組合せを下記に与える。
【0031】
【表2-1】
【0032】
【表2-2】
【0033】
【表2-3】
【0034】
【表2-4】
【0035】
【表2-5】
【0036】
【表2-6】
【0037】
【表2-7】
【0038】
システム運転条件:
一般に、本システム及び方法において用いる運転条件は、本明細書に含まれる開示事項を考慮して具体的な用途に応じて広く変化させることができると意図される。しかしながら、多くの好ましい用途においては下表に示す範囲内の運転パラメーターが有利に用いられる。これらの量は全て「約」によって修飾されていると理解される。
【0039】
【表3】
【0040】
本発明によるプロセス条件内で運転した場合に、本明細書に記載する吸入ライン熱交換器を用いることによって、同じであるが本発明による吸入ライン熱交換器を用いないシステムと比べて好ましくは少なくとも2%のCOPの向上、より好ましくは少なくとも約3%のCOPの向上、更により好ましくは4%のCOPの向上が得られる。
【0041】
以下の記載において、異なる態様において概して同じか又は同様であるか、或いはその可能性があるシステムの構成要素又は部材は、同じ数字又は記号を用いて示す。
1つの好ましい冷却システムを図1に示す。この冷却システムは概して10として示されている。概して100として示される境界は、エンクロージャを図式的に示す。低温ループは、圧縮機11、カスケード熱交換器12の凝縮側12A、膨張弁14、及び蒸発器15を含む。示されているように、蒸発器15は、第1の熱伝達組成物をエンクロージャ境界に、及びそれから移送する任意の関連する導管及び他の接続装置並びに関連する装置と共にエンクロージャ100内に配置される。蒸発器14は好ましくはエンクロージャの内側に配置され、示されている図面においてはエンクロージャ100の内側に配置されているように開示されているが、幾つかの態様においてはエンクロージャの外側に膨張器14を与えることが望ましく及び/又は必要である可能性があることが認識される。高温ループは、圧縮機21、カスケード熱交換器12の蒸発側12B、膨張弁24、及び凝縮器25を含み、これらは全て、任意の関連する導管及び他の接続装置並びに関連する装置と共にエンクロージャ100の外側に配置される。高温回路はまた、凝縮器25から排出される第2の熱伝達組成物流30と、カスケード熱交換器12の蒸発側12Bから排出される第2の熱伝達組成物流31の間での熱の交換を可能にする吸入ライン熱交換器50も含む。
【0042】
本発明による第1及び第2の冷却ループの相対寸法はその範囲内で広く変化させることができると意図されるが、本出願人らは、非常に有利な結果は、幾つかの態様においては冷却ループの相対寸法を慎重に選択することによって達成することができることを見出した。より具体的には、通常の運転条件下においては第1の冷却ループと第2の冷却ループ
の中に含まれる熱伝達組成物は決して混合又は混ざり合わないと意図され且つ理解される。しかしながら、本出願人らは、例えばカスケード熱交換器における漏出の場合に、第1及び第2の冷媒のかかる混ざり合いの可能性が生じる可能性があることを認識するに至った。この混合された冷媒流は次に、冷却されるエンクロージャ内における漏出の場合には、エンクロージャ内又はその付近にいる人間又は他の動物に曝露されるようになる可能性がある。したがって、かかる漏出の場合においても継続した安全な運転を確保するために、本出願人らは、相対的な冷却ループの寸法を注意深く且つ慎重に選択することによって、かかる漏出の場合においても安全なシステムを得ることができることを認識するに至った。
【0043】
本出願人らは、本発明のシステム及び組成物は多くの冷却用途において有用であろうと考えるが、好ましい用途には、住宅の居住空間、事務所スペース、倉庫などのようなエンクロージャにおける、並びにウォークイン容器、保冷容器、輸送用冷却容器などのようなエンクロージャ内の空気を冷却することによって物品を低温状態に保つために用いるエンクロージャに関連する冷却及び/又は加熱などの空気の処理のような用途において用いる冷却システム及び方法が含まれる。本明細書において用いる「輸送用冷却容器」という用語は、貨物トレーラーの一部又は実質的に全部の上に配置されているか又はそれを構成する低温/断熱容器を示すように用いる。更に、好ましい用途においては、本発明によるシステムの能力は約30kW未満である。好ましい用途においては本発明によるシステムの能力は約15kW未満であり、更なる用途においては本発明によるシステムの能力は約10kw未満である。
【0044】
幾つかの好ましいシステム、方法、及び組成物の例を下記に記載する。
A.第1の冷媒がCOで、第2の冷媒がR-1234ze(E):
例として、本出願人らは、第1の冷媒がCOから構成され、第2の冷媒がR01234ze(E)から構成される本発明によるカスケード冷却システムを考察した。第1の冷媒と第2の冷媒の間の混ざり合いが起こる場合であっても安全な本発明による冷却システムを達成するために、本出願人らは、これらの成分の種々の混合物(蒸気及び液体を含む)の燃焼性を以下のように求めた。
【0045】
【表4】
【0046】
上記の考察及び分析、並びに第1の冷媒がCOから実質的に構成され、第2の冷媒がR-1234ze(E)から実質的に構成される本発明の好ましい形態に基づくと、低温
ループ内の第1の冷媒(例えばCO)の第2の冷媒(例えばR-1234ze(E))に対する装填量の重量比は、約1.2以上であることが好ましい。かかる態様においては、本発明のシステムは、第1及び第2の冷媒組成物の間の完全な混ざり合いが起こった場合であっても、安全な状態を保ち、即ち不燃性の冷媒しか含まない。
【0047】
B.第1の冷媒がCOで、第2の冷媒がSR26:
更なる例として、本出願人らは、第1の冷媒がCOから構成され、第2の冷媒がSR26(R-1234ze(E):R-32の重量比80:20の組合せ)から構成される本発明によるカスケード冷却システムを考察した。第1の冷媒と第2の冷媒の間の混ざり合いが起こる場合であっても安全な本発明による冷却システムを達成するために、本出願人らは、これらの成分の種々の混合物(蒸気及び液体を含む)の燃焼性を以下のように求めた。
【0048】
【表5】
【0049】
上記の考察及び分析、並びに第1の冷媒がCOから実質的に構成され、第2の冷媒がSR26から実質的に構成される本発明の好ましい形態に基づくと、低温ループ内の第1の冷媒(例えばCO)の第2の冷媒(例えばSR26)に対する装填量の重量比は、約1.0以上であることが好ましい。かかる態様においては、本発明のシステムは、第1及び第2の冷媒組成物の間の完全な混ざり合いが起こった場合であっても、安全な状態を保ち、即ち不燃性の冷媒しか含まない。
【0050】
C.第1の冷媒がCOで、第2の冷媒がR-32:
更なる例として、本出願人らは、第1の冷媒がCOから構成され、第2の冷媒がR-32から構成される本発明によるカスケード冷却システムを考察した。第1の冷媒と第2の冷媒の間の混ざり合いが起こる場合であっても安全な本発明による冷却システムを達成するために、本出願人らは、これらの成分の種々の混合物(蒸気及び液体を含む)の燃焼性を以下のように求めた。
【0051】
【表6】
【0052】
上記の考察及び分析、並びに第1の冷媒がCOから実質的に構成され、第2の冷媒がSR26から実質的に構成される本発明の好ましい形態に基づくと、低温ループ内の第1の冷媒(例えばCO)の第2の冷媒(例えばSR26)に対する装填量の重量比は、約0.9以上であることが好ましい。かかる態様においては、本発明のシステムは、第1及び第2の冷媒組成物の間の完全な混ざり合いが起こった場合であっても、安全な状態を保ち、即ち不燃性の冷媒しか含まない。
【0053】
D.第1の冷媒がCOで、第2の冷媒がエタン:
更なる例として、本出願人らは、第1の冷媒がCOから構成され、第2の冷媒がエタンから構成される本発明によるカスケード冷却システムを考察した。第1の冷媒と第2の冷媒の間の混ざり合いが起こる場合であっても安全な本発明による冷却システムを達成するために、本出願人らは、これらの成分の種々の混合物(蒸気及び液体を含む)の燃焼性を以下のように求めた。
【0054】
【表7】
【0055】
上記の考察及び分析、並びに第1の冷媒がCOから実質的に構成され、第2の冷媒がエタンから実質的に構成される本発明の好ましい形態に基づくと、低温ループ内の第1の冷媒(例えばCO)の第2の冷媒(例えばSR26)に対する装填量の重量比は、約1.7以上であることが好ましい。かかる態様においては、本発明のシステムは、第1及び第2の冷媒組成物の間の完全な混ざり合いが起こった場合であっても、安全な状態を保ち、即ち不燃性の冷媒しか含まない。
【0056】
E.第1の冷媒がCOで、第2の冷媒がプロパン:
更なる例として、本出願人らは、第1の冷媒がCOから構成され、第2の冷媒がプロパンから構成される本発明によるカスケード冷却システムを考察した。第1の冷媒と第2の冷媒の間の混ざり合いが起こる場合であっても安全な本発明による冷却システムを達成するために、本出願人らは、これらの成分の種々の混合物(蒸気及び液体を含む)の燃焼性を以下のように求めた。
【0057】
【表8】
【0058】
上記の考察及び分析、並びに第1の冷媒がCOから実質的に構成され、第2の冷媒がプロパンから実質的に構成される本発明の好ましい形態に基づくと、低温ループ内の第1の冷媒(例えばCO)の第2の冷媒(例えばプロパン)に対する装填量の重量比は、4より大きいことが好ましい。かかる態様においては、本発明のシステムは、第1及び第2の冷媒組成物の間の完全な混ざり合いが起こった場合であっても、安全な状態を保ち、即ち不燃性の冷媒しか含まない。
【実施例
【0059】
比較例C1:
下記に記載する比較例C1は、以下の図面に示す通常のウォークインクーラー冷却システムに基づく。
【0060】
【化1】
【0061】
上記図面において、クーラーの境界を長方形100によって図式的に示す。クーラー容器内には、蒸発器15及び膨張器14が収容されている。圧縮機11及び凝縮器20が、クーラー容器100の外側に配置されている。この冷却ループ内を循環している冷媒は、冷媒のR-404A(52重量%のR-143a、44重量%のR-125、及び4重量
%のR-134a)である。
【0062】
以下の運転パラメータを用いた。
・蒸発器15の蒸発温度=-35℃;
・凝縮器200の凝縮温度=45℃;
・膨張器14の等エントロピー効率=63%;
・蒸発器過熱=5℃;
・圧縮機吸入ラインにおける温度上昇=20℃;
・膨張装置過冷却=0℃。
【0063】
この通常のシステムの運転によって、108.3℃の圧縮機吐出温度が生成した。
複合実施例H1A~H1D:
実施例1に示した通常の冷却システムに基づくが、吸入ライン熱交換器を挿入して、蒸発器から排出されるR-404A中に熱を吸収させ、それによって流れが膨張器に導入される前に凝縮器から排出されるR-404Aから熱を吸収することによって、圧縮機に導入されるR-404Aの温度を上昇させる複合システムを形成した。35%~85%で変化する効率(Effectiveness)の値を有する吸入ライン熱交換器を用いた運転を評価した。結果を、比較のために比較例C1の結果と一緒に下表H1に報告する。
【0064】
【表9】
【0065】
上記に報告する結果から分かるように、通常のシステムを修正して吸入ライン熱交換器を含ませることは、全ての場合において、かかる複合システムの運転の結果として圧縮機吐出温度の相当な不要且つ望ましくない上昇があるので実現性がない。
【0066】
実施例1A~1E、2A~2E、3A~3E、4A~4E、及び5A~5E:
低温ループにおいて次の冷媒:HFO-1234ze(E);HFO-1234yf;SR21(80重量%のHFO-1234yf及び20重量%のR-32);SR26(80重量%のHFO-1234ze(E)及び20重量%のR-32);並びにSR31(88重量%のHFO-1234ze(E)及び12重量%のR-32)のそれぞれ(第2の冷媒)を用いて、図1に示す吸入ライン熱交換器を有するカスケード冷却システムを運転した。高温ループにおける冷媒はCOであった。これらの冷媒を用いて、以下のパラメータにしたがって本発明のカスケードシステムを運転した。
【0067】
・低温段階の蒸発温度(蒸発器15)=-35℃;
・低温段階の凝縮温度=(カスケード凝縮器12A)=0℃;
・高温段階の蒸発温度(蒸発器25)=-5℃;
・高温段階の凝縮温度(カスケード凝縮器12B)=45℃;
・低温段階膨張器(膨張器14)の等エントロピー効率=65%;
・高温段階膨張器(膨張器24)の等エントロピー効率=63%;
・蒸発器過熱(両方の蒸発器)=5℃;
・低温段階の吸入ラインにおける温度上昇=15℃;
・高温段階の吸入ラインにおける温度上昇=5℃;
・高温及び低温段階の両方の膨張装置における過冷却=0℃;
・吸入ライン液体ライン熱交換器効率=0%~85%で変動。
【0068】
下表1/5-DTは、それぞれの実施例に関する吐出温度の観点での結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0069】
【表10】
【0070】
上表によって示されるように、本発明の全ての実施例は本発明の好ましい圧縮機吐出温度を満足し、全ての場合において、吐出温度は通常のシステム及び更には複合システムの性能よりも実質的に優れていた。
【0071】
下表1/5-COPは、それぞれの実施例に関するCOPの観点での結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0072】
【表11】
【0073】
上表によって示されるように、本発明の全ての実施例は、比較例1のシステムと比べて少なくとも121%の向上したCOPを与えた。更に、吸入ライン熱交換器を含む本発明の全てのシステムは、熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上を示し、吸入ライン熱交換器に関して55%以上の熱交換器効率を有するシステムは、熱交換器を有しないシステムに対して少なくとも更に3%の向上を示した。
【0074】
実施例6A~6E、7A~7E、8A~8E、9A~9E:
低温ループにおいて次の冷媒のそれぞれ(第2の冷媒)及び高温ループにおいてCOを用いて、図1に示す吸入ライン熱交換器を有しないカスケード冷却システム及び吸入ライン熱交換器を有するカスケード冷却システムを運転した(それぞれの冷媒のGWPを示す)。
【0075】
【表12】
【0076】
実施例1~5において示したものと同じ運転条件を用いて、冷媒EX6~EX9のそれぞれを用いて図1のシステムを運転した-下表6/9-DTはそれぞれの実施例に関する吐出温度の観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0077】
【表13】
【0078】
上表によって示されるように、冷媒のEX6~EX9を用いると、吸入ライン熱交換器を有しないカスケードシステム(効率=0)に関して許容し得る吐出温度(好ましい吐出温度範囲の範囲内)が生成した。しかしながら、冷媒のいずれも、35%~85%のいずれの効率の値に関するカスケードシステムに関しても許容し得る吐出温度(好ましい吐出温度範囲の範囲内)を生成しなかった。
【0079】
実施例10A~10E、11A~11E、12A~12E、13A~13E、14A~14E、15A~15E:
低温ループにおいて次の冷媒のそれぞれ(第2の冷媒)及び高温ループにおいてCOを用いて、図1に示す吸入ライン熱交換器を有しないカスケード冷却システム及び吸入ライン熱交換器を有するカスケード冷却システムを運転した。
【0080】
【表14】
【0081】
実施例1~5において示したものと同じ運転条件を用いて、冷媒EX10~EX15のそれぞれを用いて図1のシステムを運転した-下表10/15-DTはそれぞれの実施例に関する吐出温度の観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0082】
【表15】
【0083】
上表によって示されるように、冷媒のEX10~EX15を用いると500より低いGWP値を有する第2の冷媒が得られたが、それぞれの冷媒は許容し得る吐出温度(即ち、好ましい吐出温度範囲の範囲内)を生成しなかった。吸入ライン熱交換器を有しないカスケードシステム(効率=0)に関しては、吐出温度は許容し得るものであった。しかしながら、吸入ライン熱交換器を有するシステムに関しては、EX10~EX13冷媒のそれぞれは、85%以上の望ましい効率の値に関して許容できない吐出温度を生成した。EX14及びEX15冷媒のみが、試験した効率の値のいずれを有する吸入ライン熱交換器に関しても許容し得る吐出温度を与えた。これらの知見を下記に要約する。
【0084】
・35%の効率においては、30%より多いR1234ze(E)が必要であった。
・55%の効率においては:50%より多いR1234ze(E)が必要であった。
・75%の効率においては:60%より多いR1234ze(E)が必要であった。
【0085】
・85%の効率においては:70%より多いR1234ze(E)が必要であった。
・少なくとも約78%のR-1234ze(E)を含む組成物は、吸入ライン熱交換器の全ての効率の値に関して許容することができ、約150以下のGWP値を生成した。
【0086】
下表11/15-COPはそれぞれの実施例に関するCOPの観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0087】
【表16】
【0088】
上表によって示されるように、本発明の実施例は全て、比較例1のシステムと比べて少なくとも121%のCOPを与えた。更に、吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムの全部において、実施例15の冷媒を用いると、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示された。少なくとも55%の効率を有する吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムにおいて実施例14の冷媒を用いると、(表11/15-DTにおいて示されるように)吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示され、許容し得る吐出温度を有していた。少なくとも55%であるが約85%未満の効率を有する吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムにおいて実施例13の冷媒を用いると、(表11/15-DTにおいて示されるように)吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示され、許容し得る吐出温度を有していた。
【0089】
これとは対照的に、少なくとも75%の効率を有する吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムにおいて実施例12の冷媒を用いると、表11/15-DTにおいて示されるように、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示されたが、この冷媒はこの条件に関して許容しうる吐出温度を与えなかった。
【0090】
実施例16A~16E、17A~17E、18A~18E、19A~19E:
高温ループにおいて次の冷媒のそれぞれ(第2の冷媒)及び低温ループにおいてCOを用いて、図1に示す吸入ライン熱交換器を有しないカスケード冷却システム及び吸入ライン熱交換器を有するカスケード冷却システムを運転した(それぞれの冷媒のGWPを示す)。
【0091】
【表17】
【0092】
実施例1~5において示したものと同じ運転条件を用いて、冷媒EX16~EX19のそれぞれを用いて図1のシステムを運転した-下表16/19-DTはそれぞれの実施例に関する吐出温度の観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0093】
【表18】
【0094】
上表によって示されるように、冷媒のEX16~EX19を用いると、吸入ライン熱交換器を有しないカスケードシステム(効率=0)に関しては許容しうる吐出温度(好ましい吐出温度範囲の範囲内)を生成した。しかしながら、冷媒のいずれも、35%~85%のいずれの効率の値に関するカスケードシステムに関しても許容し得る吐出温度(好ましい吐出温度範囲の範囲内)を生成しなかった。
【0095】
実施例20A~20E、21A~21E、22A~22E、23A~23E、24A~24E、25A~25E:
低温ループにおいて次の冷媒のそれぞれ(第2の冷媒)及び高温ループにおいてCOを用いて、図1に示す吸入ライン熱交換器を有しないカスケード冷却システム及び吸入ライン熱交換器を有するカスケード冷却システムを運転した。
【0096】
【表19】
【0097】
実施例1~5において示したものと同じ運転条件を用いて、冷媒EX20~EX25のそれぞれを用いて図1のシステムを運転した-下表20/25-DTはそれぞれの実施例に関する吐出温度の観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0098】
【表20】
【0099】
上表によって示されるように、冷媒のEX21~EX25を用いると500より低いGWP値を有する第2の冷媒が得られたが、それぞれの冷媒は許容し得る吐出温度(即ち、好ましい吐出温度範囲の範囲内)を生成しなかった。吸入ライン熱交換器を有しないカスケードシステム(効率=0)に関しては、吐出温度は許容し得るものであった。しかしながら、吸入ライン熱交換器を有するシステムに関しては、冷媒のEX20~EX22のそれぞれは、85%以上の望ましい効率の値に関して許容できない吐出温度を生成した。EX23、EX24、及びEX25のみが、試験した効率の値の全部に関する吸入ライン熱交換器に関して許容し得る吐出温度を与えた。これらの知見を下記に要約する。
【0100】
・35%の効率においては、30%より多いR1234yfが必要であった。
・55%の効率においては:40%より多いR1234yfが必要であった。
・75%及び85%の効率においては:60%より多いR1234yfが必要であった
【0101】
下表20/25-COPはそれぞれの実施例に関するCOPの観点からの結果を示し、比較例1からの結果を比較のために示す。
【0102】
【表21】
【0103】
上表によって示されるように、本発明の実施例は全て、比較例1のシステムと比べて少なくとも121%のCOPを与えた。更に、吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムの全部において、実施例24及び25の冷媒を用いると、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示され、実施例22及び23の冷媒は、55%以上の効率を有する熱交換器に関して、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上を示した。少なくとも75%の効率を有する吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムにおいて実施例22の冷媒を用いると、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上が示された。
【0104】
重要なことに、吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムの全部において実施例24及び25の冷媒を用いると、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上を示しただけでなく、かかる冷媒は、(表21/25-DTにおいて示されるように)試験した吸入ライン熱交換器効率の全てのレベルに関して許容しうる吐出温度を与えた。55%の効率を有する吸入ライン熱交換器を含む本発明の試験したシステムにおいて実施例22及び23の冷媒を用いると、吸入ライン熱交換器を有しない本発明のシステムに対して少なくとも更に2%の向上を示しただけでなく、(表21/25-DTにおいて示されるように)許容しうる吐出温度も与えた。
【0105】
これとは対照的に、実施例20の冷媒を用いると熱交換器効率のいずれの値に関しても少なくとも2%の向上は示されず、実施例21及び22は75%及び85%の熱交換器効率の値に関して少なくとも2%の向上を示したが、これらの熱交換器効率の値は、表20/25-DTにおいて示されるように許容しうる吐出を与えず、この冷媒はこの条件に関しては満足しなかった。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)(a)ループ内で流体連絡している圧縮機、膨張器、及び蒸発器、並びに第1の冷媒及び圧縮機のための潤滑剤を含むループ内の第1の熱伝達組成物を含む相対的に低い温度の蒸気圧縮ループ(蒸発器はエンクロージャ内に配置されて、ほぼかかる相対的に低い温度においてエンクロージャ内の流体から熱を吸収することができる);
(b)ループ内で流体連絡している圧縮機、凝縮器、膨張器、及び吸入ライン熱交換器、並びに第2の冷媒及び好ましくは圧縮機のための潤滑剤を含むループ内の第2の熱伝達組成物を含む相対的に高い温度の蒸気圧縮ループ(凝縮器はエンクロージャの外側に配置されているヒートシンクに熱を移動させることができる);並びに
(c)第1と第2の冷媒の間の熱交換によって第1の冷媒を凝縮させて第2の冷媒を蒸発させるためのカスケード熱交換器;
を含み;
吸入ライン熱交換器は、カスケード熱交換器から排出される第2の熱伝達組成物の少なくとも一部を受容するためにカスケード熱交換器と流体連絡していて、凝縮器から排出される第1の熱伝達組成物から熱を吸収することによってその温度を上昇させ、それによって第1の熱伝達組成物が第1ループ膨張器に導入される前に第1の熱伝達組成物の温度を低下させる、エンクロージャの内容物を冷却するための熱伝達システム。
(2)第1の冷媒がASHRAE-34下で(ASTM-E681によって測定して)A1と分類される燃焼性を有し、第2の冷媒がASHRAE-34下で(ASTM-E681によって測定して)A2Lと分類される燃焼性、又はA2Lよりも高い燃焼性を有する、(1)に記載のシステム。
(3)圧縮機及び膨張器並びに凝縮器のそれぞれがエンクロージャ内に配置されていない、(1)に記載のシステム。
(4)吸入ライン熱交換器がエンクロージャ内に配置されていない、(5)に記載のシステム。
(5)第2の冷媒が、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、R-227ea、R-32、及びこれらの2以上の組合せの1以上を含む、(1)に記載のシステム。
(6)第2の冷媒が少なくとも約80重量%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-12304yf)を含む、(1)に記載のシステム。
(7)第2の冷媒が、HFO-1234ze(E)、HFO-1234yf、又はこれらの組合せから実質的に構成される、(1)に記載のシステム。
(8)第2の冷媒が、約70重量%~約90重量%のHFO-1234yf、及び約10重量%~約30重量%のR32を含む、(1)に記載のシステム。
(9)第2の冷媒が、約70重量%~約90重量%のHFO-1234yze(E)、及び約10重量%~約30重量%のR32を含む、(1)に記載のシステム。
(10)第2の冷媒が、約85重量%~約90重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び約10重量%~約15重量%の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)を含む、(1)に記載のシステム。
図1