(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】胎児体重推定を実施するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2021500461
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019067505
(87)【国際公開番号】W WO2020011569
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルート ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】レイノー カロライン デニス フランソワーズ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-136860(JP,A)
【文献】国際公開第2017/153301(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/042808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児体重推定を実行するための方法であって、該方法が、
撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像を取得するステップであって、前記複数の異なる三次元超音波画像が、
胎児の頭部のビューを含む頭部画像、
前記胎児の胴体のビューを含む腹部画像、及び
前記胎児の脚のビューを含む大腿骨画像
を有するステップと、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々に対してセグメント化を実行するステップと、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメント化に基づいて胎児体重推定を実行するステップと
を有し、
前記腹部画像が前記胎児の胴体の部分的ビューを含む場合、前記腹部画像のセグメント化を実行するステップが、
モデル胴体画像を生成するステップと、
前記モデル胴体画像を、セグメント化された腹部画像と比較するステップと、
前記比較に基づいて
、前記胎児の胴体の前記部分的ビューで欠落している部分の情報を補償するために、前記モデル胴体画像と前記セグメント化された腹部画像
との体積比率を計算するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記複数の異なる三次元超音波画像が、上腕骨画像を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大腿骨画像のセグメント化を実行するステップが、
深層学習ネットワークに基づいて四肢分類を行うことにより大腿骨を検出するステップと、
前記大腿骨を囲む組織を分類するステップと
を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記大腿骨を囲む組織を分類するステップが、専用の機械学習アルゴリズムに基づいて前記大腿骨画像をセグメント化するステップを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記大腿骨画像のセグメント化を実行するステップが、ユーザ入力を受信するステップを有する、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメンテーションをユーザに表示するステップを更に有する、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
当該方法が、前記表示されたセグメンテーションに基づくユーザ入力を受信するステップを更に有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記胎児体重推定が全体的な均一組織密度に基づくものである、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記胎児体重推定を実行するステップが、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各セグメンテーションに対して、
当該セグメンテーションの内部ボリュームを抽出し、
前記内部ボリューム内の複数の信号強度を分析し、
前記信号強度に基づいて前記内部ボリューム内の複数の組織タイプを分類し、及び
前記複数の組織タイプに基づいて組織情報を抽出するステップと、
各セグメンテーションから抽出された前記組織情報を結合するステップと、
前記組織情報に基づいて胎児体重を推定するステップと
を有する、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の組織タイプが、軟組織、骨及び流体を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組織情報が、前記内部ボリューム内の前記複数の組織タイプの組織体積を有する、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記胎児体重推定を実行するステップが、
関連する組織密度係数を前記複数の組織タイプの各々に適用するステップと、
前記複数の組織タイプの各々の組織体積及び前記関連する組織密度係数に基づいて胎児体重推定値を計算するステップと
を有する、請求項9から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ上で実行された場合に、請求項1から12の何れか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
撮像領域の三次元超音波画像を取得する超音波プローブ、ディスプレイ及びプロセッサを有する超音波撮像システムであって、前記プロセッサが、
胎児の頭部のビューを含む頭部画像、
前記胎児の胴体のビューを含む腹部画像、及び
前記胎児の脚のビューを含む大腿骨画像
を有する、前記撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像を取得し、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々に対してセグメント化を実行し、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメント化に基づいて胎児体重推定を実行し、
前記腹部画像が前記胎児の胴体の部分的ビューを含む場合、前記プロセッサが、前記腹部画像をセグメント化するために、
モデル胴体画像を生成し、
前記モデル胴体画像を、セグメント化された腹部画像と比較し、
前記比較に基づいて
、前記胎児の胴体の前記部分的ビューで欠落している部分の情報を補償するために、前記モデル胴体画像と前記セグメント化された腹部画像
との体積比率を計算する、超音波撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波イメージングの分野に関し、特に胎児超音波イメージングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の臨床診療では、胎児の体重が典型的には2D超音波画像から抽出された2D測定値の組合せを使用して推定される。いくつかのより進歩したアプローチは、胎児体重方程式における追加のパラメータとして大腿および腕の部分体積のような四肢体積を使用し、該アプローチは、8.5%から6.6%への体重推定誤差の減少を可能にする。
【0003】
胎児が小さすぎたり大きすぎたりすると、妊娠中の胎児の体重推定に誤差が生じ、妊娠中や出産後幼児へのケアが不十分になる可能性がある。胎児の実際の体重に応じて、現在のモデルで使用される相対係数間のバランスは、推定される胎児体重の精度に影響を及ぼす。例えば、>3500gの胎児体重の場合、計算において腹囲および大腿骨長に一層依存する式は、出生体重のより正確な予測を提供する。
【0004】
胎児体重推定に使用される現在の方程式は、母集団分析に基づく統計的回帰および推定に基づいている。異なる方程式の数は非常に大きく、このことは、選択したモデルに応じて様々な可能な推定を導き、どのモデルが適用されるかの不確実性を生じる。さらに、四肢体積の使用は推定される胎児重量の精度を改善したが、典型的に、胎児の軟組織に関する少量の情報しか使用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、個々の場合にわたって著しく変化せず、大きな追加のハードウェアを必要としない、胎児体重推定を実行するためのロバストな方法を提供する必要がある。
【0006】
米国特許第6,375,616号は、子宮内の胎児を撮像するように動作する超音波撮像装置を含む、胎児の体重を決定するための装置を開示している。
【0007】
米国特許出願公開第2012/232394号明細書には、被験者の推定体重を計算する測定計算ユニットを含む超音波診断装置が開示されている。
【0008】
米国特許第6,575,907号は、少なくとも1つの超音波画像を提供する超音波イメージャを含む、子宮内の胎児の体重を測定するための装置を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、請求項によって規定される。
【0010】
本発明の一態様による例によれば、胎児体重推定を実行するための方法が提供され、該方法は:
撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像を取得するステップであって、前記複数の異なる三次元超音波画像が、
頭部画像、
腹部画像、及び
大腿骨画像、
を有するステップと;
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々に対してセグメント化を実行するステップと;
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメント化に基づいて胎児体重推定を実行するステップと;
を有する。
【0011】
この方法は、頭部、腹部、および大腿骨のような胎児の異なる領域のいくつかの3D超音波画像を取得し、当該画像領域内の重要な構造を識別するために各画像に対して個別の画像セグメント化を実行する。例えば、胎児の頭部を含む画像に対して実行される画像セグメント化は、頭蓋骨を識別するためのものである。同様に、腹部画像および大腿骨画像に対して実行される画像セグメント化は、それぞれ胴体および脚を識別するために使用される。
【0012】
それによって目標ボリューム内の重要構造を識別する異なる画像の別々のセグメント化に続いて、胎児の体重の完全かつ正確な推定を行うことが可能である。
【0013】
一実施形態において、前記複数の異なる三次元超音波画像は上腕骨画像をさらに含む。
【0014】
胎児の標準的な視野に嵌まらない比較的大きな骨格構造を含むさらなる画像を含めることによって、胎児体重推定の精度をさらに高めることが可能である。
【0015】
一実施形態において、前記腹部画像のセグメント化は:
モデル胴体画像を生成するステップ;
該モデル胴体画像を前記セグメント化された腹部画像と比較するステップ;及び
前記比較に基づいて前記セグメント化された腹部画像に対する調整係数を生成するステップ;
を有する。
【0016】
このようにして、視野の制限のために胎児の胴体全体を捉えることができない腹部画像を考慮することが可能であり、これによって胎児体重推定の精度を高めることができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記大腿骨画像のセグメント化は:
深層学習ネットワークに基づいて四肢分類を実行することにより大腿骨を検出するステップ;及び
前記大腿骨を囲む組織を分類するステップ;
を有する。
【0018】
大腿骨を検出すると共に周囲組織を分類することによって、胎児組織を大腿骨画像に含まれるであろう他の組織から正確にセグメント化することが可能であり、これによって胎児体重推定の精度を高めることができる。
【0019】
さらなる実施形態において、前記大腿骨を囲む組織の分類は、専用の機械学習アルゴリズムに基づいて前記大腿骨画像をセグメント化するステップを含む。
【0020】
このようにして、単に大腿骨画像内の組織構造を認識するように訓練され得る機械学習アルゴリズムに基づいて大腿骨画像をセグメント化することが可能であり、これによって大腿骨画像のセグメント化の精度を高めることができる。
【0021】
さらなる実施形態において、前記大腿骨画像のセグメント化はユーザ入力を受信するステップを含む。
【0022】
このようにして、ユーザはセグメント化に対して補正を供給することが可能であり、次いで、これを使用して、機械学習アルゴリズムをさらに訓練し、胎児体重推定の精度を改善することができる。
【0023】
一構成例において、当該方法は、前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメント化をユーザに表示するステップをさらに含む。
【0024】
このようにして、ユーザは、セグメント化された画像を見て、正しい領域が識別されたことを確認することができる。このことは、撮像過程における如何なる潜在的な誤りもユーザに警告するのに役立ち、これによって、胎児の体重推定の精度を高めることができる。
【0025】
さらなる構成例において、当該方法は、表示されたセグメント化に基づいてユーザ入力を受信するステップをさらに含む。
【0026】
ユーザは、セグメント化された画像の表示ビューを変更するための入力を供給することができ、これにより、画像をより詳細に検査することができる。また、ユーザは、画像セグメント化過程で観察されたエラーを補正し、これによって胎児体重推定の精度を向上させることができる。
【0027】
一実施形態において、当該胎児体重推定は、全体的な均一な組織密度に基づくものである。
【0028】
全体的な均一な組織密度を使用して、簡単な方法で胎児体重推定値を計算することができ、これにより、胎児体重推定値を計算するのに必要な処理能力が低減される。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記胎児体重推定は:
前記複数の異なる三次元超音波画像の各区分(セグメンテーション)に対して、
当該区分の内部ボリュームを抽出し、
前記内部ボリューム内の複数の信号強度を分析し、
該信号強度に基づいて、前記内部ボリューム内の複数の組織タイプを分類し、及び
該複数の組織タイプに基づいて組織情報を抽出するステップと;
各区分から抽出された前記組織情報を結合するステップと;
該組織情報に基づいて胎児の体重を推定するステップと;
を有する。
【0030】
前記3D画像の各区分について、内部ボリュームを分析することができる。該内部ボリュームは、頭蓋骨などの全体のセグメント化された構造であってもよく、または当該3D構造内のより小さいボリュームであってもよい。この場合、当該内部ボリューム内に存在する組織に関する情報を生成するために、該内部ボリューム内の信号強度が分析され、分類される。
【0031】
この情報は、次いで、取得された3D超音波画像の画像区分の全てにわたって組み合わされ、胎児の体重を推定するために使用することができる。このようにして各々の別個にセグメント化された画像を分析することによって、胎児組成のより正確なプロファイル(輪郭)を構築することが可能であり、したがって、胎児体重推定の精度が向上される。
【0032】
さらなる実施形態において、前記複数の組織タイプは:
軟部組織;
骨;及び
液体;
を含む。
【0033】
胎児組成のこれらの重要な要素を識別することによって、3D超音波画像内に存在する組織タイプの大部分を考慮することが可能であり、これによって胎児体重推定の精度を向上させる。
【0034】
さらなる実施形態において、前記組織情報は前記内部ボリューム内の複数の組織タイプの組織体積を含む。
【0035】
このようにして、各セグメント化画像に存在する各組織タイプの量を胎児体重推定に使用することができ、これによって該推定の精度を高めることができる。
【0036】
さらなる実施形態において、前記胎児体重を推定するステップは:
関連する組織密度係数を前記複数の組織タイプのそれぞれに適用するステップと;
前記組織体積および前記複数の組織タイプの各々の関連する組織密度係数に基づいて胎児体重推定値を計算するステップと;
を含む。
【0037】
セグメント化された画像に存在する様々な胎児組織の密度を考慮することによって、胎児体重推定の精度がさらに向上する。
【0038】
本発明の一態様に従う例によれば、コンピュータ上で実行されたときに、上述の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0039】
本発明の一態様に従う例によれば、超音波撮像システムが提供され、該システムは:
撮像領域の三次元超音波画像を取得するように構成された超音波プローブ;
ディスプレイ;及び
プロセッサ;
を有し、該プロセッサは:
頭部画像、腹部画像及び大腿骨画像を含む前記撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像を取得し、
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々に対してセグメント化を実行し、及び
前記複数の異なる三次元超音波画像の各々の区分に基づいて胎児体重推定を実行するように構成される。
【0040】
本発明のこれらおよび他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、一般的な動作を説明するための超音波診断撮像システムを示す。
【
図3】
図3は、部分的な胴体有効範囲の画像に対する従来のセグメント化と、モデル当てはめとの比較を示す。
【
図5】
図5は、頭部、腹部および大腿骨の画像のセグメント化を示す。
【
図6】
図6は、提案された方法と既存の推定方法との間の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明をより良く理解し、本発明をどのように実施することができるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面を参照する。
【0043】
本発明を、図面を参照して説明する。
【0044】
詳細な説明および特定の例は、装置、システム、および方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム、および方法のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、同じ参照番号は同じまたは類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることを理解されたい。
【0045】
本発明は、胎児の体重を推定する方法を提供する。撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像が取得され、該複数の異なる三次元超音波画像は、頭部画像と、腹部画像と、大腿骨画像とを含む。該複数の異なる三次元超音波画像の各々はセグメント化を受け、胎児体重推定は結果として得られるセグメント化に基づいて実行される。
【0046】
例示的な超音波システムの一般的な動作がまず、
図1を参照して説明され、本発明はトランスデューサアレイによって測定される信号の処理に関するものであるので、該システムの信号処理機能に重点を置いて説明される。
【0047】
このシステムは、超音波を送信し、エコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ6を有するアレイトランスデューサプローブ4を備える。トランスデューサアレイ6は、CMUTトランスデューサ、PZT若しくはPVDFなどの材料で形成された圧電トランスデューサ、または任意の他の適切なトランスデューサ技術を備えることができる。この例において、トランスデューサアレイ6は、関心領域の2D平面または三次元ボリュームのいずれかを走査するトランスデューサ8の2次元アレイである。別の例では、該トランスデューサアレイが1Dアレイであってもよい。
【0048】
トランスデューサアレイ6は、トランスデューサ素子による信号の受信を制御するマイクロビーム形成器12に結合されている。マイクロビーム形成器は、米国特許第5,997,479号(Savord他)、同第6,013,032号(Savord)、および同第6,623,432号(Powers他)に記載されているように、一般にトランスデューサの「グループ」または「パッチ」と呼ばれるサブアレイによって受信される信号の少なくとも部分的なビーム形成が可能である。
【0049】
上記マイクロビーム形成器は、完全にオプションであることに注意する必要がある。さらに、当該システムは送信/受信(T/R)スイッチ16を含み、該スイッチは、マイクロビーム形成器12に結合することができ、前記アレイを送信モードと受信モードとの間で切り替えて、マイクロビーム形成器が使用されず、当該トランスデューサアレイが主システムビーム形成器によって直接作動される場合に主ビーム形成器20を高エネルギー送信信号から保護する。トランスデューサアレイ6からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16および主送信ビーム形成器(図示せず)によって前記マイクロビーム形成器に結合されたトランスデューサコントローラ18により指示され、前記主送信ビーム形成器はユーザインターフェースまたは制御パネル38のユーザ操作から入力を受け取る。コントローラ18は、送信モード中にアレイ6のトランスデューサ素子を駆動する(直接にまたはマイクロビーム形成器を介して)ように構成された送信回路を含む。
【0050】
典型的なライン・バイ・ライン撮像シーケンスにおいて、プローブ内のビーム形成システムは以下のように動作し得る。送信の間において、前記ビーム形成器(実装に応じて、マイクロビーム形成器または主システムビーム形成器であり得る)は、前記トランスデューサアレイまたは該トランスデューサアレイのサブアパーチャを駆動する。サブアパーチャは、トランスデューサの一次元ラインでもよいし、より大きなアレイ内のトランスデューサの二次元パッチでもよい。送信モードにおいて、当該アレイまたは該アレイのサブアパーチャによって生成される超音波ビームの収束およびステアリングは、以下に説明するように制御される。
【0051】
被検体から後方散乱エコー信号を受信すると、受信信号は該受信信号を位置合わせするために(以下に説明するように)受信ビーム形成処理を受け、サブアパーチャが使用されている場合にはサブアパーチャが例えば1つのトランスデューサ素子だけシフトされる。次いで、シフトされたサブアパーチャが駆動され、このプロセスは、当該トランスデューサアレイのトランスデューサ素子の全てが駆動されるまで繰り返される。
【0052】
各ライン(またはサブアパーチャ)について、最終的な超音波画像の関連するラインを形成するために使用される全受信信号は、受信期間中に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子によって測定された電圧信号の合計である。以下のビーム形成処理に続いて得られるライン信号は、通常、無線周波数(RF)データと呼ばれる。種々のサブアパーチャによって生成される各ライン信号(RFデータセット)は、次いで、最終的な超音波画像のラインを生成するために付加的な処理を受ける。時間に伴うライン信号の振幅の変化は深度に伴う超音波画像の輝度の変化に寄与し、高振幅ピークは、最終画像における明るいピクセル(またはピクセルの集合)に対応する。ライン信号の開始付近に現れるピークは浅い構造からのエコーを表す一方、該ライン信号において次第に遅く現れるピークは、被検体内の深さが増大する構造からのエコーを表す。
【0053】
トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームがステアリングされ、収束される方向である。ビームは、当該トランスデューサアレイから真っ直ぐ(直交して)前方に、またはより広い視野のために異なる角度でステアリングすることができる。送信ビームのステアリング及び収束は、トランスデューサ素子駆動時間の関数として制御できる。
【0054】
一般的な超音波データ収集では、平面波イメージングと「ビームステアリング」イメージングとの2つの方法を区別する。これら2つの方法は、送信モード(「ビームステアリング」イメージング)および/または受信モード(平面波イメージングおよび「ビームステアリング」イメージング)におけるビーム形成の存在によって区別される。
【0055】
最初に収束(フォーカシング)機能を見ると、全てのトランスデューサ素子を同時に作動させることによって、トランスデューサアレイは対象物を通過することにつれて発散する平面波を生成する。この場合、超音波のビームは未収束のままである。トランスデューサの駆動に位置依存時間遅延を導入することによって、ビームの波面を焦点ゾーンと呼ばれる所望の点に収束させることが可能である。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分未満である点として定義される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向解像度が改善される。
【0056】
例えば、前記時間遅延によって、トランスデューサ素子が当該トランスデューサアレイの中心素子(複数可)から始まり最外側素子で終了するようにして順次に活性化される場合、焦点ゾーンは上記中心素子(複数可)に整列して当該プローブから所与の距離に形成されるであろう。プローブからの焦点ゾーンの距離は、各後続回のトランスデューサ素子活性化の間の時間遅延に応じて変化する。ビームは、焦点ゾーンを通過した後発散し始め、遠視野撮像領域を形成する。トランスデューサアレイに近接して位置する焦点ゾーンについては、超音波ビームが遠視野において急速に発散し、最終的な画像においてビーム幅アーチファクトをもたらすことに留意されたい。典型的に、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に位置する近接場は、超音波ビームの大きな重複のために、僅かな詳細しか示さない。したがって、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終画像の品質に著しい変化をもたらす可能性がある。
【0057】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーン(それぞれが異なる送信焦点を有し得る)に分割されない限り、1つの焦点のみが定義され得ることに留意されたい。
【0058】
さらに、被検体内部からのエコー信号を受信する際に、受信収束を行うために上述した処理の逆を行うことができる。換言すれば、到来信号は、トランスデューサ素子によって受信することができ、信号処理のために当該システムに渡される前に電子的な時間遅延を受けることができる。この最も単純な例は、遅延和ビーム形成と呼ばれる。トランスデューサアレイの受信収束処理を時間の関数として動的に調整することが可能である。
【0059】
ここで、ビームステアリングの機能を見ると、トランスデューサ素子に時間遅延を正しく適用することによって、トランスデューサアレイを離れるときに、超音波ビームに所望の角度を付与することが可能である。例えば、トランスデューサアレイの第1の側のトランスデューサを駆動し、続いて、残りのトランスデューサを該アレイの反対側で終了するようなシーケンスで駆動することによって、ビームの波面は、第2の側に向かって角度が付けられることになる。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、連続するトランスデューサ素子の駆動の間の時間遅延の大きさに依存する。
【0060】
さらに、ステアリングされるビームを収束させることが可能であり、その場合、各トランスデューサ素子に適用される総時間遅延は、収束時間遅延とステアリング時間遅延の両方の和である。この場合、該トランスデューサアレイは、フェーズドアレイと呼ばれる。
【0061】
活性化のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ18は、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御部45を制御するために結合することができる。DCバイアス制御部45は、CMUTトランスデューサ素子に印加されるDCバイアス電圧(又は複数の電圧)を設定する。
【0062】
当該トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子に対して、典型的にはチャネルデータと呼ばれるアナログ超音波信号が、受信チャネルを介して当該システムに入る。受信チャネルでは、部分的にビーム形成された信号が、マイクロビーム形成器12によってチャネルデータから生成され、次いで、主受信ビーム成形器20に渡され、そこで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム成形された信号は無線周波数(RF)データと呼ばれる完全にビーム形成された信号に結合される。各ステージで実行されるビーム形成処理は、上述のように実行されてもよく、または追加の機能を含んでもよい。例えば、主ビーム形成器20は128のチャネルを有してもよく、その各チャネルは数十個又は数百個のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千のトランスデューサによって受信される信号は、単一のビーム形成された信号に効率的に寄与することができる。
【0063】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、受信したエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、及び高調波信号分離のような種々のやり方で処理することができ、これは、組織及びマイクロバブルから戻る非線形(基本周波数の高次高調波)エコー信号の識別を可能にするために線形及び非線形信号を分離するように作用する。該号プロセッサは、スペックル低減、信号複合化、およびノイズ除去などの追加の信号強化を行ってもよい。該信号プロセッサ内の帯域通過フィルタは、追跡フィルタとすることができ、その通過帯域はエコー信号が増加する深度から受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域へとスライドし、それによって、典型的に解剖学的情報を欠くより大きな深度からのより高い周波数のノイズを排除する。
【0064】
送信および受信のための前記ビーム形成器は、異なるハードウェアで実施され、異なる機能を有することができる。もちろん、受信機ビーム成形器は、送信ビーム成形器の特性を考慮に入れて設計される。
図1では、単純化のために、受信機ビーム成形器12、20のみが示されている。完全なシステムでは、送信マイクロビーム形成器を備えた送信チェーン、および主送信ビーム形成器も存在するであろう。
【0065】
マイクロビーム形成器12の機能は、アナログ信号経路の数を減少させるために信号の初期の組合せを提供することである。これは、典型的にはアナログ領域で実行される。
【0066】
最終的なビーム形成は、主ビーム形成器20で行われ、典型的にはデジタル化後である。
【0067】
送信および受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ6を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に応じて変化し得る。受信チャネルは、トランスデューサ帯域幅全体を捕捉することができ(これは古典的なアプローチである)、または帯域通過処理を使用することによって、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅のみを抽出することができる。
【0068】
次いで、前記RF信号はBモード(すなわち、輝度モード、または2Dイメージングモード)プロセッサ26およびドップラプロセッサ28に結合され得る。Bモードプロセッサ26は、器官組織及び血管のような身体内の構造の撮像のために、受信された超音波信号に対して振幅検出を実行する。ライン・バイ・ライン撮像の場合、各ライン(ビーム)は関連するRF信号によって表され、その振幅はBモード画像内のピクセルに割り当てられるべき輝度値を生成するために使用される。画像内のピクセルの正確な位置は、RF信号に沿った関連する振幅測定の位置と、該RF信号のライン(ビーム)番号によって決まる。このような構造のBモード画像は、米国特許第6,283,919号(Roundhill他)および米国特許第6,458,083号(Jago他)に記載されているように、高調波若しくは基本波画像モード、又は両方の組合せで形成することができる。ドップラプロセッサ28は、画像フィールド内の血球の流れのような動く物質の検出のために、組織の動き及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラプロセッサ28は、典型的には体内の選択された種類の材料から戻るエコーを通過させるか又は拒絶するように設定されたパラメータを有するウォールフィルタを含む。
【0069】
前記Bモード及びドップラプロセッサによって生成された構造及び動き信号は、走査変換器32及び多平面再フォーマット装置44に結合される。走査変換器32は、受信された空間関係のエコー信号を、所望の画像フォーマットに配列する。換言すれば、該走査変換器は、RFデータを、円筒座標系から超音波画像を画像ディスプレイ40上に表示するのに適した直交座標系に変換するように作用する。Bモード撮像の場合、所与の座標における画素の明るさは、その位置から受信されるRF信号の振幅に比例する。例えば、該走査変換器は、エコー信号を二次元(2D)扇形フォーマットに又は角錐状三次元(3D)画像に配置することができる。該走査変換器は、Bモード構造画像に画像フィールド内の各点における動きに対応するカラーをオーバレイすることができ、そこでは、ドップラ推定された速度が所与のカラーを生成する。組み合わされたBモード構造画像およびカラードップラ画像は、構造画像フィールド内に組織および血流の動きを描写する。前記多平面再フォーマット装置は、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されているように、身体のボリューム領域内の共通平面内の点から受信されたエコーを該平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42は、米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0070】
上記2D又は3D画像は、走査変換器32、多平面再フォーマット装置44、及びボリュームレンダラ42から画像プロセッサ30に結合され、画像ディスプレイ40上に表示するために、更に強調、バッファリング、及び一時記憶される。該画像プロセッサは、例えば強い減衰部または屈折によって引き起こされる音響シャドーイング;例えば弱い減衰部によって引き起こされる後方強調;例えば高反射性組織界面が近接して位置する場合の残響アーチファクト等のような、特定の撮像アーチファクトを最終的な超音波画像から除去するように構成することができる。さらに、該画像プロセッサは、最終的な超音波画像のコントラストを改善するために、特定のスペックル低減機能を処理するように構成することもできる。
【0071】
画像化に使用されることに加えて、ドップラプロセッサ28によって生成された血流値およびBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34にも結合される。該定量化プロセッサは、器官のサイズおよび妊娠期間などの構造的測定値に加えて、血流の体積速度などの異なる流動状態の測定値を生成する。該定量化プロセッサは、測定が行われるべき画像の解剖学的構造内の点のような、ユーザ制御パネル38からの入力を受け取る。
【0072】
上記定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40上に画像と共に測定グラフィックスおよび値を再生するため、並びにディスプレイ40からのオーディオ出力のために、グラフィックスプロセッサ36に結合される。グラフィックスプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成する。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等の標準的な識別情報を含む。これらの目的のために、該グラフィックスプロセッサは、患者名のような入力をユーザインターフェース38から受け取る。該ユーザインターフェースは、トランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成、したがって、該トランスデューサアレイおよび超音波システムによって生成される画像の生成を制御するために、送信コントローラ18にも結合される。コントローラ18の該送信制御機能は、実行される機能のうちの1つに過ぎない。該コントローラ18は、動作モード(ユーザによって与えられる)並びに対応する必要な送信機構成および受信機アナログ/デジタル変換器における帯域通過構成も考慮する。コントローラ18は、固定状態を有するステートマシンとすることができる。
【0073】
前記ユーザインターフェースは、多平面再フォーマット(MPR)画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を実行するために使用され得る該MPR画像の面の選択および制御のために、多平面再フォーマット装置44にも結合される。
【0074】
図2は、胎児体重推定を実行するための方法100を示す。
【0075】
この方法は、胎児の所望の撮像領域の複数の異なる三次元超音波画像を取得するステップ110によって開始する。
【0076】
該複数の異なる三次元超音波画像は、別々に取得された三次元超音波画像であってもよい。例えば、該複数の異なる三次元超音波画像は、各画像における解剖学的構造の視覚化及び/又はカバレージを最適化するように、異なる時点で、異なる取得位置から、異なる撮像パラメータを使用して、等々で、それぞれ取得することができる。換言すれば、該複数の異なる三次元超音波画像の各々は、異なる超音波取得に対応し得る。解剖学的構造の視覚化および/またはカバレージ(有効範囲)の向上は、改善されたセグメント化となり、これは、より正確な体重推定につながる。
【0077】
ステップ120において、胎児の頭部を含む頭部画像が取得される。該頭部画像は、胎児の頭蓋全体および頸部の基部を含む最適な有効範囲でキャプチャされる。
【0078】
ステップ130において、胎児の胴体を含む腹部画像が取得される。
【0079】
いくつかの超音波プローブの視野の制限のために、胎児の胴体全体をキャプチャすることは不可能であり得、その場合、該腹部画像は、胎児の部分的な胴体を含むであろう。このような場合、取得設定は、可能な限り最大の視野を得るように選択できる。
【0080】
ステップ140において、胎児の脚を含む大腿骨画像が取得される。
【0081】
該大腿骨画像の取得の間において、視野は大腿骨に中心を合わせられ、骨に加えて周囲の軟大腿組織をキャプチャするように調整される。
【0082】
ステップ150では、胎児の腕を含む上腕骨画像を取得する。
【0083】
前記大腿骨画像の取得と同様に、視野は、取得過程の間において上腕骨に中心を合わせられ、周囲の軟上腕組織をキャプチャするように調整される。
【0084】
ステップ160では、上記の取得された複数の異なる三次元超音波画像の各々がセグメント化処理を受ける。
【0085】
前記頭部画像のセグメント化は、頭部の質量の大部分が位置する場所であるため、胎児の頭蓋骨を識別するために使用できる。頭部画像のセグメント化は、R Cuingnet 他の文献“Where is my baby? A fast fetal head auto-alignment in 3D-ultrasound”、Biomedical Imaging(ISBI)、2013 IEEE 10th International Symposium on、768-771に記載されているように実行される。
【0086】
胴体全体が前記腹部画像の視野内に含まれ得る場合、胴体のセグメント化は、閾処理のような既知のセグメント化方法によって実行され得る。
【0087】
例えば、腹部画像のセグメント化は、以下のように実行される。
【0088】
セグメント化における最初のステップは、当該腹部画像内の胎児の脊柱を検出し、本明細書ではn軸として示される第1の基準(向き)軸を導出することである。
【0089】
脊柱は、細長い明るい構造を検出する形態学的フィルタと、深層学習(DL)ベースの椎骨検出器とを、両方法の強みを利用するために組み合わせることによって、3D超音波腹部画像において自動的に検出される。
【0090】
形態学的フィルタは、所与の球近傍における腹部画像ボリューム内の各ボクセルxに関して、方向uに沿う当該ボクセルの強度を他のボクセルの強度と比較するために使用される。フィルタ応答は、様々な近傍半径および方向uについて計算され、グローバル応答を得るために組み合わされる。隣接するボクセルのグローバル応答は、最良のフィルタ応答に対応する連結成分を定義するために集合される。
【0091】
応答のいくつかはこのアプローチを使用して脊柱上に正確に位置決めされるが、外れ値である他の応答も存在し得、これは、例えば、肋骨または長骨などの他の細長い構造上に位置し得る。
【0092】
深層学習ベースの椎骨検出器は、その入力が画像ベースのz軸に直交して抽出された2Dスライスから形成される2D完全畳み込みネットワークである。ボリュームスライシングは類似の特徴を有する大量のデータを生成し、これは深層学習方法に適している。当該ネットワークの出力は、脊柱が位置する可能性がある1に近い値を有するダウンサンプリングされた確率マップである。3D深層学習ベースの椎骨検出器は、1つのボリュームについて全ての得られた2D確率マップを積み重ねることによって形成される。この出力ヒートマップは、形態学的フィルタ出力よりも粗いが、椎骨の周りによりロバストに配置される。
【0093】
上記深層学習椎骨検出器と形態学的フィルタ応答とを組み合わせることによって、ネットワーク出力が精緻化され、脊柱の外側にあるフィルタ応答が拒絶され、その結果、腹部画像に対してロバストな脊柱バイナリマスクが最終的に得られる。
【0094】
これは脊柱場所を識別する1つの方法であるが、任意の他の適切な画像処理技法を、固有の脊柱形状を検出するために使用することもできる。
【0095】
胴体セグメント化の脊柱検出ステップは、基本的に、脊柱を識別し、脊柱バイナリマスクの質量中心を使用して基準座標系の原点を定義することを含む。検出された脊柱が非常に湾曲している場合、その質量中心はバイナリマスクに属さない可能性がある。これは、脊柱のいわゆる重心が脊柱自体の外側にあり、したがってマスクと整列しない可能性があるからである。この場合、質量中心に最も近いバイナリマスク点が使用される。次いで、当該脊柱バイナリマスクの末端を使用して、垂直n軸を定義する。代わりに、脊柱の中心点に接する法線方向を使用することもできる。
【0096】
n軸を規定することによって、例えば、当該画像を回転させて、規定された(例えば、垂直の)向きにn軸を位置決めすることにより該画像を、n軸情報を含むように更新する。
【0097】
当該腹部画像のセグメント化の2番目のステップは、第2の直交する基準(方位)軸を検出することである。これは、横軸を規定するための腹部の検出に基づくものである。
【0098】
各々が前記第1の基準n軸に直交する(または脊柱に局所的に直交する)一群の平面が探索される。方位軸の探索は、局所的な原点を脊柱に沿って均等に離間された点として、各々が局所的な原点を通るxy平面の集合において行われる。
【0099】
これらのxy平面の各々の中で、例えば、円形または楕円形の検出に合わせて調整されたハフ変換の変形を使用して、腹部検出が行われる。実際には、所望の境界輪郭を有する円盤をモデル化する放射対称的なカーネルによる画像の最良の畳み込みが、ある範囲の半径の中で探索される。結果として生じる腹部の凸包、すなわちセグメント化された胴体が画定される。
【0100】
腹部画像が胴体の部分的ビューのみを含む胴体のセグメント化を実行する方法を、
図3を参照して以下に説明する。
【0101】
大腿骨画像のセグメント化は、深層学習ネットワークに基づく四肢分類を使用して実行することができ、該ネットワークは入力大腿骨画像に基づいて大腿骨端点の座標を識別し、出力するように訓練される。該深層学習ネットワークは、大腿骨画像のセグメント化を助けるために胎児大腿骨の構造を認識するように訓練された専用の機械学習アルゴリズムを含む。
【0102】
当該セグメント化は、筋肉および脂肪のような大腿骨を取り囲む組織を分類するステップをさらに含み得、これによって、最終的な体重推定に使用されるべき胎児の脚の一層正確なモデルを生成する。該周囲組織の分類は、強度等級分別(組織が局所信号強度に基づいて分別される)などの任意の適切なセグメント化方法によって、または専用の機械学習アルゴリズムを用いて実行される。
【0103】
場合によって、大腿骨画像のセグメント化は、軟組織境界を正確に描くためにユーザ入力を必要とすることがある。この場合、大腿骨画像のセグメント化は、ユーザが監視するために表示される。ユーザは、セグメント化処理中または処理が完了した後に、当該大腿骨画像のセグメント化を補正するための入力を供給する。ユーザは、マウスクリック若しくはタッチスクリーン上のタップを介して軟組織境界の正しい位置を示す、またはマウス若しくはタッチスクリーンを使用して正しい軟組織境界を描く等の、任意の適切な手段を介して入力を供給する。次いで、境界補正などのユーザ入力を、組織分類に使用される機械学習アルゴリズムを訓練するために使用されるデータセットに追加する。
【0104】
さらに、セグメント化された画像に対するユーザ入力を受信するために、前記複数の異なる三次元超音波画像の各々のセグメント化をユーザに表示することが可能である。このように、ユーザは当該方法が胎児体重推定を実行するステップに進む前にセグメント化を評価でき、これによって最終的推定の精度を保証する。セグメント化の補正を実行するための対話型ツールを、各セグメント化画像に対して提供する。
【0105】
ステップ170において、セグメント化された画像は、胎児体重推定を実行するために使用される。
【0106】
該胎児体重推定は、全体的な均一な組織密度を使用して実行することができる。換言すれば、最小の計算コストで胎児体重推定を実行するために、胎児の全ての異なる組織の密度を平均化し(これによって、固有の密度係数を生成し)、画像セグメント化から識別された胎児体積に乗算することができる。胎児の平均密度は、関連文献に基づいて定義される。
【0107】
他の例として、セグメント化された画像は、胎児体重推定を実行するために、さらなる処理を受けてもよく、これを、
図4を参照して以下に説明する。
【0108】
図3は、胎児の胴体の部分ビューを含む腹部画像200を示す。この胴体の部分的な撮像は、撮像プローブの限られた視野に起因する腹部撮像における一般的問題である。
【0109】
上述の方法のような通常のセグメント化処理の下では胎児の胴体は実線の輪郭210によって示されるように識別される。しかしながら、該胴体の部分的に不完全なビューのために、該セグメント化は、さもなければ胎児の胴体の残りの部分を形成することになる欠落情報220を除外している。この欠落した情報は、最終的な胎児体重推定の精度を低下させる。
【0110】
上記胴体の部分的な撮像は、モデル胴体画像によって補償される。この場合は楕円当てはめによるモデル230である該モデル胴体画像を、当該腹部画像の初期セグメント化に基づく胎児の胴体に当てはめる。次いで、2つの体積の比率を得るために、モデル230とセグメント化された胴体210とを比較する。最後に、上記セグメント化された胴体は、欠落情報を補償するために、上記の得られた比率によって乗算される。
【0111】
推定される胎児重量の精度は、セグメント化された画像内に存在する様々な組織の体積を識別することによって改善される。
【0112】
一例として、
図4は組織分類を受けた頭部画像250を示すが、以下の方法は、腹部、大腿骨、および上腕骨画像に適用され得る。
【0113】
当該画像は、頭部画像のセグメンテーション(区分)260の、内部ボリュームとも呼ばれる部分を示す。この内部ボリューム内で、信号強度が分析され、該内部ボリューム内に存在する種々の組織型を分類するために使用される。該組織分類に基づいて、当該画像から組織情報を抽出することが可能である。例えば、
図4に示される内部ボリューム内には、胎児の頭蓋骨に対応する骨組織270と、胎児の脳に対応し得る軟組織280と、流体290とが存在する。
【0114】
この方法を各セグメント化された画像にわたって実行することにより、画像化された胎児全体の組織情報を組み合わせて、胎児体重推定に使用される。例えば、該組み合わされた組織情報は、セグメント化された画像のすべてにわたって存在する、骨などの各組織タイプの総体積を示す。次いで、各組み合わされた組織体積は、胎児の体重推定値に到達するために、各組織タイプについて異なる関連する組織密度係数によって乗算する。
【0115】
図5は、脚セグメンテーション(区分)350を含む大腿骨画像300と、胴体区分450を含む腹部画像400と、頭蓋骨区分550を含む頭部画像500とを示す。
【0116】
これは、セグメント化された画像がユーザに表示される形態とすることができ、ユーザは当該画像を所望の向きから見るために操作する。このようにして、ユーザは最終的な胎児体重推定の精度を保証するために、セグメント化された画像のすべての部分に入力および/または補正を供給できる。
【0117】
図6は、33人の患者のデータセットについて、既存の胎児体重推定方法(ハドロックIとして知られる)に対する、上述の方法(腹部および頭部画像に基づく)を使用して計算された推定胎児体重のプロット600を示す。
【0118】
得られた相関係数は0.91で、傾きは0.55、切片は-15gである。この強い相関は、提案した方法の精度が少なくとも既存の工業標準と同程度に正確であることを示している。さらに、提案されたアプローチは胎児の体重推定値を補完するために、既存の方法と組み合わせることができる。
【0119】
開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、および添付の特許請求の技術分野の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施することができる。特許請求の範囲において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用することができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、またはその一部として供給される光記憶媒体またはソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布することができるが、インターネットまたは他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して、他の形態で配布することもできる。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。