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特許7292390目の虹彩角膜角内における治療のための一体型手術システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】目の虹彩角膜角内における治療のための一体型手術システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20230609BHJP
   A61F 9/01 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61F9/008 130
A61F9/01
A61F9/008 151
A61F9/008 120F
A61F9/008 120Z
A61F9/008 120D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021526191
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019039033
(87)【国際公開番号】W WO2020018242
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】16/036,833
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521025603
【氏名又は名称】ヴィアレーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラクシ, フェレンツ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/049246(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/031570(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283557(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0103011(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0149734(US,A1)
【文献】特表2016-511118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
A61F 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減する一体型手術システムであって、
角膜に結合されるように構成された窓と、窓に結合されるように構成された出射レンズとを含み、窓が凹面および凸面を備え、出射レンズが凹面および凸面を備え、出射レンズの凹面が窓の凸面に結合するように構成された、第1の光学サブシステムと、
光干渉断層撮影(OCT)ビームを出力するように構成されたOCT画像診断装置と、レーザービームを出力するように構成されたレーザー源と、OCTビームおよびレーザービームの1つまたは複数の調整、スキャン、合成、および方向付けのうち1つまたは複数を行うように構成された複数の構成要素とを含む、第1の光学サブシステムと光学的に結合された第2の光学サブシステムと、
第2の光学サブシステムに結合された制御系と、を備え、制御系が、
第1の光学サブシステムを通して、OCTビームを出力するようにOCT画像診断装置に、またレーザービームを出力するようにレーザー源に命令し、第1の光学サブシステムは、OCTビームとレーザービームを受信し、OCTビームとレーザービームを角度付き光路に沿って角膜、前眼房及び線維柱帯を通して、シュレム管に方向付けるように構成され、
体積を規定する眼組織にレーザービームを適用することによって、線維柱帯、シュレム管、および1つまたは複数の集水チャネルのうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減し、それにより眼組織との光破壊的相互作用で経路抵抗を低減させるかまたは新しい流出経路を作成させるため、流出経路内の眼組織の体積を修正するように、レーザー源に命令するように構成された、一体型手術システム。
【請求項2】
第2の光学サブシステムが、OCTビームおよびレーザービームを第1の光学サブシステムに向かって方向付けるように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
目が視野方向を備え、
第1の光学サブシステムが第1の光軸を備え、
第1の光学サブシステムが、第1の光軸が視野方向と実質的に整列されるようにして、目に結合されるように適合され、
OCTビームおよびレーザービームが、第1の光軸から角度αでオフセットされた第2の光軸に沿って、第1の光学サブシステムに向かって方向付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
CTビームおよびレーザービームが、凸面に対する面法線に対して角度βで、出射レンズの凸面内へと方向付けられる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
OCTビームおよびレーザービームが共線的に方向付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
OCTビームおよびレーザービームが非共線的に方向付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
レーザー源が、レーザービームをスキャンして体積を規定する眼組織と相互作用させることによって、眼組織の体積を修正するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
レーザー源が、眼組織との光破壊的相互作用によって眼組織の体積を修正して、前眼房およびシュレム管を接続する線維柱帯を通って開いているチャネルを作成するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
レーザービームの波長が330ナノメートルから2000ナノメートルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
レーザービームが、20フェムト秒から1ナノ秒のパルス持続時間を有する複数のレーザーパルスで構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
レーザービームおよびOCTビームがそれぞれ実質的に等しい分解能を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
分解能が約5マイクロメートル以下である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
制御系が、眼組織修正の前に、
虹彩角膜角の一部分の診断用OCT画像を獲得するように、OCT画像診断装置に命令し、
OCT画像に基づいて修正する眼組織の体積を決定するように、更に構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
OCT画像が二次元断面画像を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
制御系がOCT画像を表示画面上に提示するように構成された、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減する一体型手術システムであって、シュレム管は円周によって特徴付けられ、システムは、
角膜に結合されるように構成された窓と、窓に結合されるように構成された出射レンズとを含む、第1の光学サブシステムと、
光干渉断層撮影(OCT)ビームを出力するように構成されたOCT画像診断装置と、レーザービームを出力するように構成されたレーザー源と、OCTビームおよびレーザービームの1つまたは複数の調整、スキャン、合成、および方向付けのうち1つまたは複数を行うように構成された複数の構成要素とを含む、第2の光学サブシステムと、
第2の光学サブシステムに結合された制御系と、を備え、制御系が、
第1の光学サブシステムを通して、OCTビームを出力するようにOCT画像診断装置に、またレーザービームを出力するようにレーザー源に命令し、第1の光学サブシステムは、OCTビームとレーザービームを受信し、OCTビームとレーザービームを角度付き光路に沿って角膜、前眼房及び線維柱帯を通して、シュレム管に方向付けるように構成され、
眼組織修正の前に、虹彩角膜角の一部分の診断用OCT画像を獲得し、OCT画像に基づいて修正する眼組織の体積を決定するように、OCT画像診断装置に命令し、その際、
シュレム管の円周の少なくとも一部分の周りにおける集水チャネルの密度分布を決定し、
閾値基準を上回る集水チャネルの密度を有するシュレム管の領域を同定し、
同定された領域の近傍を修正する眼組織の体積に含めるように、更に構成されることにより、修正する眼組織の体積を決定し、
体積を規定する眼組織にレーザービームを適用することによって、線維柱帯、シュレム管、および1つまたは複数の集水チャネルのうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減し、それにより眼組織との光破壊的相互作用で経路抵抗を低減させるかまたは新しい流出経路を作成させるため、流出経路内の眼組織の体積を修正するように、レーザー源に命令するように構成された、一体型手術システム。
【請求項17】
第2の光学サブシステムが、目視観察信号を虹彩角膜角から獲得するように構成された目視観察デバイスを更に備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
制御系が、診断用OCT画像および目視観察信号を重ねて表示画面上に提示するように更に構成された、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
制御系が、診断用OCT画像および目視観察信号を位置合わせして表示画面上に提示するように更に構成された、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、医療用デバイスおよび眼科疾患の治療の分野に関し、より詳細には、緑内障のレーザー手術治療向けの、組織、特に目の虹彩角膜角内における眼組織構造の治療のためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの緑内障ならびに現在の診断および治療の選択肢について説明する前に、目の解剖学的構造について簡単に概説する。
【0003】
目の解剖学的構造
【0004】
図1~3を参照すると、目1の外側組織層は、目の形状の構造をもたらす強膜2を含む。強膜2の前は、光が目の内部に入ることを可能にする、組織の透明層で構成された角膜3である。目1の中は、小帯線維5によって目に接続された水晶体4であり、小帯線維は毛様体6に接続されている。水晶体4と角膜3との間は、眼房水8と呼ばれる流動する透明液体を含んだ前眼房7である。水晶体4の周囲を取り囲んでいるのは、水晶体のほぼ中心の周りに瞳孔を形成する虹彩9である。後眼房10は水晶体4と網膜11との間に位置する。角膜3を通って入る光は、水晶体4を通して光学的に焦点を合わせられる。
【0005】
図2を参照すると、目の強膜角膜接合部は、虹彩9と強膜2との交点にある前眼房7の部分である。強膜角膜接合部における目1の解剖学的構造は、線維柱帯12を含む。線維柱帯12は、目1の中の虹彩9を取り囲む組織の線維網である。線維柱帯12の基部および虹彩9の縁部は、強膜岬14でともに付着されている。線維柱帯12を構成する組織層の網状構造は多孔質であり、したがって、前眼房7から流れる眼房水8の放出経路となる。この経路は、本明細書では、眼房水流出経路、水流出経路、または単に流出経路と呼ばれることがある。
【0006】
図3を参照すると、線維柱帯12の孔によって形成される経路は、ブドウ膜15と呼ばれる薄い多孔質組織層、強角膜線維柱帯16、および傍小管組織17の組に接続している。傍小管組織17は次いで、シュレム管18と呼ばれる組織に当接している。シュレム管18は、眼房水8と周囲組織からの血液との混合物を、集水チャネル(collector channel)19の系統を通って流れ出て静脈系に入る。図2に示されるように、脈絡膜20と呼ばれる目の血管膜が強膜2の隣にある。上脈絡膜腔21と呼ばれる空間が、脈絡膜20と上脈絡膜腔21との間に存在してもよい。角膜3と虹彩9との間のくさびの周囲付近における、円周方向に続いている全体的領域は、虹彩角膜角13と呼ばれる。虹彩角膜角13は、目の角膜角度、または単に目の角度と呼ばれることもある。図3に示される眼組織は全て角膜角度13内にあるものと見なされる。
【0007】
図4を参照すると、眼房水8が移動する2つの可能な流出経路として、線維柱帯流出経路40およびブドウ膜強膜流出経路42が挙げられる。眼房水8は、毛様体6によって生成され、後眼房10から瞳孔を通って前眼房7に流れ込み、次に2つの異なる流出経路40、42のうち1つまたは複数を通って目の外に出る。眼房水8の約90%は、線維柱帯12を通過してシュレム管18に入り、集水チャネル19の1つまたは複数の神経叢を通った後、排水路41を通って流れ出て静脈系に入ることによって、線維柱帯流出経路40を介して外に出る。残っている眼房水8がある場合は主に、ブドウ膜強膜流出経路42を通って外に出る。ブドウ膜強膜流出経路42は、毛様体6の面および虹彩基部を通過して、上脈絡膜腔21(図2に図示)に入る。眼房水8は上脈絡膜腔21から流れ出て、強膜2を通って上脈絡膜腔から外に出すことができる。
【0008】
線維柱帯流出経路40を通る眼房水8の流出は、眼内圧が増加するにつれて流出が増加するという点で、圧力に依存するが、ブドウ膜強膜流出経路42を通る眼房水8の流出は圧力に依存しない。線維柱帯流出経路40を通る眼房水8の流出に対する抵抗は、目の眼内圧の上昇に結び付くことがあり、これは広く知られている緑内障のリスク因子である。線維柱帯流出経路40による抵抗は、シュレム管18の虚脱または集水チャネル19が高密度で存在することによって、増加することがある。
【0009】
図5を参照すると、光学系として、目1は、理想化された中心にある回転対称面、入射瞳および射出瞳、ならびに6つの基点(物体焦点および像空間焦点、第1および第2の主平面、第1および第2の節点)によって説明される、光学モデルによって表される。人間の目に対する角度方向は、目の光軸24、視軸26、瞳孔軸28、および視線29に対して定義される場合が多い。光軸24は対称軸であり、線は目の理想化された表面の頂点を接続する。視軸26は、中心窩22を第1および第2の節点によって物体に接続する。視線29は、窩を射出瞳および入射瞳を通して物体に接続する。瞳孔軸28は、角膜3の後面に対して垂直であり、入射瞳の中心に方向付けられる。これらの目の軸は互いに数度しか違わず、視野方向と一般に呼ばれる範囲内にある。
【0010】
緑内障
【0011】
緑内障は、視神経を害し、視力低下または失明の原因となり得る疾患群である。これは不可逆的な失明の主な原因である。世界中で約8000万人に緑内障があると推定され、そのうち約6700万人が両目を失明している。40歳超の米国人の2700万人超が緑内障である。症状は周辺視野の喪失から始まり、失明に進行する可能性がある。
【0012】
緑内障には2つの形態があり、1つは閉塞隅角緑内障、もう1つは開放隅角緑内障と呼ばれる。図1~4を参照すると、閉塞隅角緑内障の場合、虚脱した前眼房7内の虹彩9が、眼房水8の流れを妨げ塞ぐことがある。より一般的な緑内障の形態である開放隅角緑内障の場合、線維柱帯流出経路40に沿った虹彩角膜角13における組織の妨害によって、またはシュレム管18もしくは修水チャネル19の虚脱によって、眼組織の透過性が影響を受けることがある。
【0013】
上述したように、目の眼内圧(IOP)の上昇は、視神経にダメージを与えるものであり、広く認識されている緑内障のリスク因子である。しかしながら、眼圧が増加した人が必ずしも全員緑内障を発症するわけではなく、また眼圧が増加しなくても緑内障を発症する場合がある。それでもなお、緑内障のリスクを低減するため、目のIOPの上昇を低減することが望ましい。
【0014】
緑内障患者の目の状態を診断する方法としては、視力検査および視野検査、散瞳検査、眼圧検査、即ち目の眼内圧の測定、ならびに角膜厚測定、即ち角膜の厚さの測定が挙げられる。視力の低下は、視野の狭窄から始まり、全盲へと進行する。画像診断方法としては、細隙灯検査、隅角レンズによる虹彩角膜角の観察、ならびに前眼房および網膜の光干渉断層撮影(OCT)による画像診断が挙げられる。
【0015】
診断されると、目の眼内圧を制御するかまたは低下させて、緑内障の進行を遅らせるかまたは止める、いくつかの臨床的に実証されている治療が利用可能である。最も一般的な治療としては、1)点眼薬または丸薬などの薬物治療、2)レーザー手術、および3)従来の手術が挙げられる。治療は通常、薬物治療から始まる。しかしながら、薬物治療の有効性は患者のノンコンプライアンスによって妨げられる場合が多い。薬物治療が患者にとって効き目がない場合、一般的に、次に試される治療はレーザー手術である。従来の手術は侵襲性であり、薬物治療およびレーザー手術よりもリスクが高く、効果の時間窓が限られている。したがって、従来の手術は通常、薬物治療またはレーザー手術によって眼圧を制御することができない患者のための、最後の選択肢として残して置かれる。
【0016】
レーザー手術
【0017】
図2を参照すると、緑内障のレーザー手術は、線維柱帯12を標的として、眼房水8の流動抵抗を減少させ、眼房水の流出を増加させる。一般的なレーザー治療としては、アルゴンレーザー線維柱帯形成術(ALT)、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)、およびエキシマレーザー線維柱帯切開術(ELT)が挙げられる。
【0018】
ALTは、第1のレーザー線維柱帯形成処置である。処置の間、514nm波長のアルゴンレーザーが、虹彩角膜角13の周囲のうち180°の線維柱帯12に適用される。アルゴンレーザーは、眼組織との熱的相互作用を誘発し、それによって線維柱帯12に開口部を生成する。しかしながら、ALTは眼組織の瘢痕を生じさせ、その後に炎症反応および組織治癒が起こり、それによって、ALT治療によって形成された線維柱帯12の開口部が最終的に閉じることがあり、結果として治療の有効性が低減される。更に、この瘢痕のため、ALT療法は一般的には繰り返すことができない。
【0019】
SLTは、線維柱帯12の色素を選択的に標的にし、周囲の眼組織に送達される熱の量を低減することによって、瘢痕作用を低減させるように設計されている。処置の間、532nm波長の固体レーザーが、虹彩角膜角13の周囲のうち180~360°の線維柱帯12に適用されて、線維柱帯12に開口部が生成される。SLT治療は繰り返すことができるが、後続の治療はIOPの低減に対する効果が低い。
【0020】
ELTは、308nm波長の紫外(UV)エキシマレーザーと、眼組織との非熱的相互作用とを使用して、治癒反応を起こさないようにして線維柱帯12を治療する。したがって、IOP低下の効果はより長続きする。しかしながら、レーザーのUV光は目の奥深くまで浸透することができないので、レーザー光は、開口部を通して目1に挿入された光ファイバーを介して線維柱帯12に送達され、ファイバーが線維柱帯と接触させられる。この処置は高侵襲性であり、一般に、目が既に外科的に開かれているときに白内障処置と同時に実施される。ALTおよびSLTと同じく、ELTも、IOP低減の量を制御することはできない。
【0021】
これらの既存のレーザー治療はいずれも、緑内障の理想的な治療ではない。したがって、組織の著しい瘢痕をもたらすことなくIOPを有効に低減することで、単一の処置で治療を完了させることができ、必要であれば後で繰り返すことができる、緑内障のレーザー外科治療のシステム、装置、および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0022】
本開示は、角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減する方法に関する。方法は、角膜および前眼房を通して虹彩角膜角内へと、光干渉断層撮影(OCT)ビームおよびレーザービームそれぞれを送達することを含む。方法は更に、レーザービームを眼組織に適用して体積を規定することによって、眼組織との光破壊的相互作用で経路抵抗を低減させるかまたは新しい流出経路を作成させることにより、線維柱帯、シュレム管、および1つまたは複数の集水チャネルのうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減するため、流出経路内の眼組織の体積を修正することを含む。
【0023】
この方法の一態様では、OCTビームおよびレーザービームはそれぞれ、各ビームを、角膜に結合された窓と窓に結合された出射レンズとを含む第1の光学サブシステムへと方向付けることによって、虹彩角膜角に送達される。目は、本来、視野方向を備え、第1の光学サブシステムは、第1の光学系が目に結合されたときに視野方向と実質的に整列される第1の光軸によって特徴付けられる。虹彩角膜角に至る途中のビームの歪みおよび屈折は、各ビームを、第1の光軸から角度αでオフセットされた第2の光軸に沿って、第1の光学サブシステム内へと方向付けることによって相殺される。出射レンズは凸面を備え、歪みおよび屈折は、各ビームを、凸面に対する面法線に対して角度βで出射レンズの凸面内へと方向付けることによって、更に相殺される。
【0024】
方法の更なる態様では、OCTビームおよびレーザービームは、第1の光学サブシステムへと共線的に方向付けられるかまたは非共線的に方向付けられてもよい。OCTビームは、高分解能画像を提供するように構成され、レーザービームは、正確な組織修正をもたらすように構成される。この目的のため、各ビームは、約5マイクロメートル程度の実質的に等しい分解能を有してもよい。レーザービームは、眼組織との破壊的相互作用を開始して、前眼房およびシュレム管につながる線維柱帯を通って開いているチャネルを作成するように構成される。この目的のため、レーザービームは、330ナノメートル~2000ナノメートルの波長を有してもよく、20フェムト秒~1ナノ秒のパルス持続時間を有する複数のレーザーパルスとして送達されてもよい。
【0025】
本開示はまた、角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減するための一体型手術システムに関する。システムは、第1の光学サブシステムと、第2の光学サブシステムと、制御系とを含む。第1の光学サブシステムは、角膜に結合されるように構成された窓と、窓に結合されるように構成された出射レンズとを含む。第2の光学サブシステムは、OCTビームを出力するように構成されたOCT画像診断装置と、レーザービームを出力するように構成されたレーザー源と、OCTビームおよびレーザービームの1つまたは複数の調整、スキャン、合成、および方向付けのうち1つまたは複数を行うように構成された複数の構成要素とを含む。
【0026】
制御系は、第2の光学サブシステムに結合され、角膜および前眼房を通して虹彩角膜角内へと送達するため、OCTビームを出力するようにOCT画像診断装置に、またレーザービームを出力するようにレーザー源に命令するように構成される。制御系はまた、レーザービームを眼組織に適用して体積を規定することによって、眼組織との光破壊的相互作用で経路抵抗を低減させるかまたは新しい流出経路を作成させることにより、線維柱帯、シュレム管、および1つまたは複数の集水チャネルのうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減するため、流出経路内の眼組織の体積を修正するように、レーザー源に命令するように構成される。
【0027】
システムの一態様では、第2の光学サブシステムは、OCTビームおよびレーザービームを第1の光学サブシステムに向かって方向付けるように構成される。更なる態様では、目は視野方向によって、第1の光学サブシステムは第1の光軸によって特徴付けられ、第1の光学サブシステムは、第1の光軸が視野方向と実質的に整列されるようにして、目に結合されるように適合される。OCTビームおよびレーザービームは、第1の光軸から角度αでオフセットされた第2の光軸に沿って、第1の光学サブシステムに向かって方向付けられる。更なる態様では、出射レンズは凸面を有し、OCTビームおよびレーザービームは、凸面に対する面法線に対して角度βで、出射レンズの凸面内へと方向付けられる。
【0028】
更なる態様では、制御系は更に、眼組織修正の前に虹彩角膜角の一部分の診断用OCT画像を獲得するように、OCT画像診断装置に命令するように構成される。この画像に基づいて、制御系は、OCT画像に基づいて修正する眼組織の体積を決定する。詳細な態様では、制御系は、シュレム管の円周の少なくとも一部分の周りにおける集水チャネルの密度分布を決定し、閾値基準を上回る密度を有するシュレム管の領域を同定し、同定された領域の近傍を修正する眼組織の体積に含めることによって、修正する眼組織の体積を決定するように構成される。
【0029】
装置および方法の他の態様は、装置および方法の様々な態様が例証によって図示され説明される以下の詳細な説明から、当業者には明白となるであろうことが理解される。理解されるように、これらの態様は他の異なる形態で実現されてもよく、そのいくつかの詳細は他の様々な態様では修正することができる。したがって、図面および詳細な説明は、限定ではなく本質的に例証と見なされるものとする。
【0030】
以下、システム、装置、および方法の様々な態様について、限定としてではなく例として、添付図面を参照して詳細な説明で提示する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】人間の目およびその内部の解剖学的構造を示す概略断面図である。
図2図1の目の虹彩角膜角を示す概略断面図である。
図3】線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルを含む、図2の虹彩角膜角の解剖学的構造を詳細に示す概略断面図である。
図4図3の線維柱帯、シュレム管、および集水チャネルを通る眼房水の様々な流出経路を示す概略断面図である。
図5】目と関連付けられた様々な軸を示す人間の目の概略断面図である。
図6】1つまたは複数の光線がそこに沿って目の虹彩角膜角にアクセスしてもよい、角度付き光路を示す概略断面図である。
図7】制御系、フェムト秒レーザー源、OCT画像診断装置、顕微鏡、ビーム調整器およびスキャナ、ビームコンバイナ、集光対物レンズ、および患者接触面を含む、非侵襲性緑内障手術のための一体型手術システムを示すブロック図である。
図8図7の一体型手術システムを示す詳細ブロック図である。
図9a図7の一体型手術システムの患者接触面に結合された、図7の一体型手術システムの集光対物レンズを示す概略図である。
図9b図7の一体型手術システムの患者接触面から分離された、図7の一体型手術システムの集光対物レンズを示す概略図である。
図9c図9aおよび9bに含まれる集光対物レンズおよび患者接触面の構成要素を示す概略図である。
図10a図6の角度付き光路に沿って虹彩角膜角にアクセスできるようにする第1の光学系および第2の光学サブシステムを形成するように機能的に配置された、図7および8の一体型手術システムの構成要素を示す概略図である。
図10b図6の角度付き光路に沿って虹彩角膜角にアクセスできるようにする第1の光学系および第2の光学サブシステムを形成するように機能的に配置された、図7および8の一体型手術システムの構成要素を示す概略図である。
図10c図10aおよび10bの第1の光学サブシステムを通過して目に入るビームを示す概略図である。
図11a図7の一体型手術システムによって決定される手術体積(surgical volume)を示す概略図である。
図11b】一体型手術システムによって手術体積に形成される流出経路を示す概略図である。
図12】目の虹彩角膜角における眼組織を修正する方法を示すフローチャートである。
図13図6の角度付き光路に沿って目の虹彩角膜角に光線を送達する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に開示するのは、緑内障を治療するかまたはそのリスクを低減するため、目の眼内圧(IOP)を安全に効果的に低減する、システム、装置、および方法である。システム、装置、および方法は、目の虹彩角膜角にアクセスできるようにし、レーザー手術の技術を高分解能の画像診断と統合して、IOPの上昇を引き起こすことがある虹彩角膜角内の異常な眼組織の状態を正確に診断し、位置決めし、治療する。
【0033】
本明細書に開示する一体型手術システムは、角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減するように構成される。一体型手術システムはまた、第1の光学サブシステムと第2の光学サブシステムとを含む。第1の光学サブシステムは、角膜に結合されるように構成された窓と、窓に結合されるように構成された出射レンズとを含む。第2の光学サブシステムは、OCTビームを出力するように構成された光干渉断層撮影(OCT)画像診断装置と、レーザービームを出力するように構成されたレーザー源と、OCTビームおよびレーザービームを調整し、合成し、第1の光学サブシステムに向かって方向付けるように構成された複数の構成要素、例えばレンズおよびミラーと、を含む。
【0034】
一体型手術システムはまた、OCT画像診断装置、レーザー源、および第2の光学サブシステムに結合された制御系を含む。コントローラは、角膜および前眼房を通して虹彩角膜角内へと送達するため、OCTビームを出力するようにOCT画像診断装置に、またレーザービームを出力するようにレーザー源に命令するように構成される。1つの構成では、制御系は第2の光学サブシステムを制御するので、OCTビームおよびレーザービームが、第1の光軸からオフセットされるとともに角度付き経路30に沿って虹彩角膜角内へと延在する第2の光軸に沿って、第1の光学サブシステム内へと方向付けられる。
【0035】
OCTビームおよびレーザービームを同じ第2の光軸に沿って目の虹彩角膜角内へと方向付けることは、1つの臨床セッティングで状態の評価結果を正確に治療計画および手術に直接適用できるようになるという点で有益である。更に、OCT画像診断およびレーザー治療を組み合わせることによって、いずれの既存の手術システムおよび方法でも利用可能でなかった、眼組織の正確な標的設定が可能になる。一体型手術システムによって提供される手術精度によって、顕微鏡サイズの標的組織のみに影響を与えることが可能になり、周囲組織は無傷のまま残される。目の虹彩角膜角における治療すべき患部眼組織の顕微鏡サイズ規模は、数マイクロメートル~数百マイクロメートルの範囲である。例えば、図2および3を参照すると、正常なシュレム管18の断面サイズは、数十マイクロメートル×数百マイクロメートルの楕円形である。集水チャネル19および静脈の直径は数十マイクロメートルである。傍小管組織17の厚さは数マイクロメートル、線維柱帯12の厚さは約100マイクロメートルである。
【0036】
一体型手術システムの制御系は更に、レーザービームを眼組織に適用して体積を規定することによって、眼組織との光破壊的相互作用(photo-disruptive interaction)で経路抵抗を低減させるかまたは新しい流出経路を作成させることにより、線維柱帯、シュレム管、および1つまたは複数の集水チャネルのうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減するため、流出経路内の眼組織の体積を修正するように、レーザー源に命令するように構成される。
【0037】
レーザー源はフェムト秒レーザーであってもよい。フェムト秒レーザーは、眼組織との非熱的光破壊的相互作用を提供して、周囲組織への熱的損傷を回避する。更に、他の外科的方法とは異なり、フェムト秒レーザー治療では、目の中を通る開口面切開を回避することができ、非侵襲性治療ができるようになる。滅菌手術室で治療を実施する代わりに、非侵襲性治療を非滅菌外来患者施設で実施することができる。
【0038】
目視観察角度に沿った虹彩角膜角の直接目視観察を提供する、追加の画像診断構成要素が、一体型手術システムに含まれてもよい。例えば、目を患者接触面または不動化デバイスにドッキングし、目の眼組織を位置決めし、手術の進行を観察するプロセスにおいて外科医を支援するため、顕微鏡または画像診断カメラが含まれてもよい。目視観察角度はまた、角度付き光路30に沿って虹彩角膜角13まで角膜3および前眼房7を通ることができる。
【0039】
目視観察を提供するOCT画像診断装置および追加の画像診断構成要素、例えば顕微鏡からの画像は、コンピュータモニタなどの表示デバイス上で組み合わされる。様々な画像を登録し、単一の窓上で重ね合わせ、より簡単に理解するため、拡張し、処理し、偽色によって区別することができる。特定の特徴がコンピュータプロセッサによって計算的に認識され、画像認識およびセグメント化アルゴリズムを、表示のために拡張し、強調し、印付けすることができる。治療計画の幾何学も、表示デバイス上の画像診断情報と組み合わせ登録し、幾何学、数値、および文字情報で印付けすることができる。同じ表示を、キーボード、マウス、カーソル、タッチ画面、音声、または他のユーザインターフェースデバイスによる、特徴の選択、強調、および印付け、位置情報の入力のための、数値、文字、および幾何学的性質のユーザ入力に使用することもできる。
【0040】
OCT画像診断
【0041】
本明細書に開示する一体型手術システムの主要画像診断構成要素は、OCT画像診断装置である。OCT技術は、目の虹彩角膜角に方向付けられるレーザー手術の診断、位置決め、およびガイドに使用されてもよい。例えば、図1~3を参照すると、OCT画像診断は、前眼房7の構造的および幾何学的状態を判定して、線維柱帯流出経路40の妨害の可能性を評価し、治療のための眼組織のアクセス性を判定するのに使用されてもよい。上述したように、虚脱した前眼房7の虹彩9は、眼房水8の流れを妨げ塞いで、閉塞隅角緑内障をもたらすことがある。角度の巨視的幾何学形状が正常である開放隅角緑内障の場合、線維柱帯流出経路40に沿った組織の閉塞によって、またはシュレム管18もしくは集水チャネル19の虚脱によって、眼組織の透過性が影響を受けることがある。
【0042】
OCT画像診断は、眼組織の微視的詳細を分解するのに必要な空間分解能、組織浸透、およびコントラストを提供することができる。スキャンされると、OCT画像診断は眼組織の二次元(2D)断面画像を提供することができる。一体型手術システムの別の態様として、2D断面画像は、外科的標的設定のために目の構造のサイズ、形状、および位置を決定するのに、処理され分析されてもよい。また、複数の2D断面画像から三次元(3D)画像を再構築することが可能であるが、これは不要な場合が多い。2D画像の獲得、分析、および表示の方が高速であり、依然として正確な外科的標的設定に必要な全ての情報を提供することができる。
【0043】
OCTは、物質および組織の高分解能画像を提供することができる画像診断モダリティである。画像診断は、試料内からの散乱光のスペクトル情報からの、試料の空間情報の再構築に基づく。スペクトル情報は、試料に入る光のスペクトルを試料から散乱した光のスペクトルと比較する、干渉計側法を使用することによって抽出される。光が試料内で伝播する方向に沿ったスペクトル情報は、次に、フーリエ変換、によって同じ軸に沿った空間情報に変換される。OCTビーム伝播の横の情報は、通常、ビームを横方向にスキャンし、スキャン中に繰返し軸方向に探査することによって収集される。試料の2Dおよび3D画像をこのように獲得することができる。画像獲得は、干渉計が時間領域OCTで機械的にスキャンされないときの方が高速であるが、広い光のスペクトルからの干渉が同時に記録され、この実現例はスペクトル領域OCTと呼ばれる。より高速な画像獲得はまた、波長掃引型OCTと呼ばれる構成において、波長スキャニングレーザーから光の波長を迅速にスキャンすることによって得られてもよい。
【0044】
OCTの軸方向空間分解能限界は、使用される探査光の帯域幅に反比例する。スペクトル領域および波長掃引型OCTは両方とも、100ナノメートル(nm)以上の十分に広い帯域幅を有する5マイクロメートル(μm)未満の軸方向空間分解能が可能である。スペクトル領域OCTでは、スペクトル干渉パターンが、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラなどの多チャネル検出器に同時に記録され、波長掃引型OCTでは、高速光学検出器および電子デジタイザを用いて、連続時間ステップで干渉パターンが記録される。波長掃引型OCTには獲得速度の利点があるが、両方のタイプのシステムは迅速に進化し向上し、分解能および速度は、本明細書に開示する一体型手術システムの目的には十分である。スタンドアロン型OCTシステムおよびOEM構成要素は、現在は、Optovue Inc.,Fremont,CA.、Topcon Medical Systems,Oakland,NJ、Carl Zeiss Meditec AG,Germany、Nidek,Aichi,Japan、Thorlabs,Newton,NJ、Santec,Aichi,Japan、Axsun,Billercia,MA、および他の専門業者など、複数の専門業者から市販されている。
【0045】
フェムト秒レーザー源
【0046】
本明細書に開示する一体型手術システムの好ましい外科用構成要素は、フェムト秒レーザーである。フェムト秒レーザーは、周囲の眼組織への付随的損傷が最小限である、高度に局所化された非熱的光破壊的レーザー・組織相互作用を提供する。レーザーの光破壊的相互作用は光学的に透明な組織で利用される。眼組織内へのレーザーエネルギー蓄積の主なメカニズムは、吸収によってではなく、高度に非線形的な多光子過程による。この過程は、ピーク強度が高いパルス化レーザーの焦点のみで有効である。ビームが横断するが焦点ではない領域は、レーザーによって影響されない。したがって、眼組織との相互作用領域は、レーザービームによって横断方向および軸方向の両方で高度に局所化される。過程はまた、弱吸収または弱散乱組織で使用することができる。光破壊的相互作用を有するフェムト秒レーザーは、眼科手術システムで成功裏に使用され、他の眼科レーザー処置で商業化されてきたが、いずれも虹彩角膜角にアクセスする一体型手術システムでは使用されてこなかった。
【0047】
知られている屈折処置では、フェムト秒レーザーは、角膜形成術のため、角膜フラップ、ポケット、トンネル、弧状切開、レンチキュラー状切開、部分層または全層角膜切開を作成するのに使用される。白内障処置の場合、レーザーは、嚢切開術のために目の水晶体嚢に円形の切れ目を作成し、水晶体の内部を破壊してより小さい断片にして抽出を容易にする、レンズの様々なパターンの切開を作成する。角膜を通る侵入切開は、手動外科用デバイスによるアクセスのため、および水晶体乳化デバイスおよび眼内レンズ挿入デバイスの挿入のために目を開く。いくつかの会社がかかる外科用デバイスを、中でも特に、Johnson & Johnson Vision,Santa Ana,CAから現在入手可能なIntralaseシステム、Alcon,Fort Worth,TXからのThe LenSx and Wavelightシステム、Bausch and Lomb,Rochester,NY、Carl Zeiss Meditec AG,Germany,Ziemer,Port,Switzerland、およびLensAR,Orlando,FLからの他の外科用システムを商業化している。
【0048】
これらの既存のシステムは、それらの特定の用途向け、角膜の手術、ならびに水晶体およびその水晶体嚢用に開発されており、いくつかの理由により、虹彩角膜角13の手術を実施することはできない。第一に、虹彩角膜角は周囲において遠くに離れすぎており、これらのシステムの手術範囲外なので、虹彩角膜角13は、これらの外科用レーザーシステムではアクセス不能である。第二に、目への光軸24に沿った、これらのシステムからのレーザービームの角度は、適用される波長において著しい散乱および光学歪みがある、虹彩角膜角13に達するのに適切ではない。第三に、これらのシステムが有し得るいずれの画像診断能力も、線維柱帯流出経路40に沿って十分な詳細およびコントラストで組織を画像診断するためのアクセス可能性、侵入深度、および分解能を有さない。
【0049】
本明細書に開示する一体型手術システムによれば、虹彩角膜角13への明瞭なアクセスが角度付き光路30に沿って提供される。組織、例えば角膜3、および前眼房7内の眼房水8は、この角度付き光路30に沿って、約400nm~2500nmの波長に対して透明であり、この領域で動作するフェムト秒レーザーを使用することができる。かかるモード同期レーザーは、それらの基本波長で、チタン、ネオジム、またはイッテルビウム活性材料によって働く。当該分野で知られている非線形周波数変換技術、周波数二倍化、三倍化、合計、および差周波数混合技術、光学パラメータ変換は、これらのレーザーの基本波長を、事実上、上述した角膜の透明波長範囲内のいずれの波長にも変換することができる。
【0050】
1nsよりも長いパルス持続時間を有するレーザーを適用する既存の眼科手術システムは、より高い光破壊閾値エネルギーを有し、より高いパルスエネルギーを要し、光破壊的相互作用範囲の寸法がより大きく、結果として外科治療の精度が損なわれる。しかしながら、虹彩角膜角13を治療する場合、より高い手術精度が求められる。この目的のため、一体型手術システムは、レーザービームと虹彩角膜角13の眼組織との光破壊的相互作用を発生させるため、10フェムト秒(fs)~1ナノ秒(ns)のパルス持続時間を有するレーザーを適用するように構成されてもよい。パルス持続時間が10fsよりも短いレーザーが利用可能であるが、かかるレーザー源は、より複雑であってより高価である。記載した望ましい特性、例えば、10フェムト秒(fs)~1ナノ秒(ns)のパルス持続時間を有するレーザーは、Newport,Irvine,CA、Coherent,Santa Clara,CA、Amplitude Systems,Pessac,France、NKT Photonics,Birkerod,Denmark、および他の専門業者など、複数の専門業者から市販されている。
【0051】
虹彩角膜角のアクセス
【0052】
一体型手術システムによって提供される重要な特徴は、虹彩角膜角13の標的眼組織へのアクセスである。図6を参照すると、目の虹彩角膜角13は、一体型手術システムを介して、角膜3を通過し前眼房7内の眼房水8を通る、角度付き光路30に沿ってアクセスされてもよい。例えば、画像診断ビーム、例えばOCTビームおよび/または目視観察ビーム、ならびにレーザービームのうち1つまたは複数は、角度付き光路30に沿って目の虹彩角膜角13にアクセスしてもよい。
【0053】
本明細書に開示する光学系は、光線を角度付き光路30に沿って目の虹彩角膜角13に方向付けるように構成される。光学系は、第1の光学サブシステムと第2の光学サブシステムとを含む。第1の光学サブシステムは、屈折率nの材料で形成された窓を含み、対向する凹面および凸面を有する。第1の光学サブシステムはまた、屈折率nを有する材料で形成された出射レンズを含む。出射レンズも対向する凹面および凸面を有する。出射レンズの凹面は、窓の凸面に結合して、窓および出射レンズを通って延在する第1の光軸を規定するように構成される。窓の凹面は、目に結合されたとき、第1の光軸が目の視野方向とほぼ整列されるようにして、屈折率nを有する目の角膜に分離可能に結合するように構成される。
【0054】
第2の光学サブシステムは、光線、例えばOCTビームまたはレーザービームを出力するように構成される。光学系は、第1の光軸からオフセットされた角度αで、第2の光軸に沿って出射レンズの凸面に入射するように光線が方向付けられるように構成される。出射レンズおよび窓のそれぞれの幾何学形状ならびにそれぞれの屈折率nおよびnは、目の角膜3を通って虹彩角膜角13に向かって方向付けられるように光線を曲げることによって、光線の屈折および歪みを相殺するように構成される。より具体的には、第1の光学系は、光線が角度付き光路30に沿った方向で虹彩角膜角13に向かって、角膜および眼房水8を通って進行する適切な角度で、光線が第1の光学サブシステムから出て角膜3に入るように光線を曲げる。
【0055】
角度付き光路30に沿って虹彩角膜角13にアクセスすることは、いくつかの利点を提供する。虹彩角膜角13へのこの角度付き光路30の利点は、OCTビームおよびレーザービームがほぼ透明な組織を、例えば角膜3および前眼房7内の眼房水8を通過することである。そのため、組織によるこれらのビームの散乱は顕著ではない。OCT画像診断に関しては、これにより、OCTがより高い空間分解能を達成するために、約1マイクロメートル未満のより短い波長を使用することができるようになる。角膜3および前眼房7を通る虹彩角膜角13への角度付き光路30の更なる利点は、直接のレーザービームまたはOCTビーム光が網膜11を照射するのが回避されることである。結果として、より高い平均出力のレーザー光およびOCT光を、画像診断および手術に使用することができ、結果として処置がより高速になり、処置中の組織の移動が少なくなる。
【0056】
一体型手術システムによって提供される別の重要な特徴は、ビームの不連続性を低減する形での、虹彩角膜角13内の標的眼組織へのアクセスである。この目的のため、第1の光学サブシステムの窓および出射レンズ構成要素は、角膜3と隣接する物質との間の光学屈折率の不連続性を低減し、角膜を通して光が鋭角で入ることを容易にするように構成される。
【0057】
このように一体型手術システムおよびその特徴および利点のいくつかを記載してきたが、システムおよびその構成部品の更に詳細な説明を以下に示す。
【0058】
一体型手術システム
【0059】
図7を参照すると、非侵襲性緑内障手術のための一体型手術システム1000は、制御系100と、外科用構成要素200と、第1の画像診断構成要素300と、任意の第2の画像診断構成要素400とを含む。図7の実施形態では、外科用構成要素200はフェムト秒レーザー源であり、第1の画像診断構成要素300はOCT画像診断装置であり、任意の第2の画像診断構成要素400は、直視またはカメラを用いた目視のための目視観察装置、例えば顕微鏡である。一体型手術システム1000の他の構成要素としては、ビーム調整器およびスキャナ500、ビームコンバイナ600、集光対物レンズ700、ならびに患者接触面800が挙げられる。
【0060】
制御系100は、一体型手術システム1000の他の構成要素のハードウェアおよびソフトウェア構成要素を制御するように構成された、単一のコンピュータおよび/または複数の相互接続されたコンピュータであってもよい。制御系100のユーザ接触面110は、ユーザからの命令を受け入れ、ユーザによる観察のための情報を表示する。ユーザから入力される情報およびコマンドとしては、システムコマンド、患者の目をシステムにドッキングさせるモーションコントロール、予めプログラムされるかまたはライブで生成される手術計画の選択、メニュー選択によるナビゲート、手術パラメータの設定、システムメッセージに対する応答、手術計画の決定および受入れ、ならびに手術計画を実行するコマンドが挙げられるが、それらに限定されない。システムからユーザに対する出力としては、システムパラメータおよびメッセージの表示、目の画像の表示、手術計画の図形、数値、および文字表示、ならびに手術の進行が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
制御系100は、一体型手術システム1000の他の構成要素200、300、400、500に接続される。制御系100からフェムト秒レーザー源200への制御信号は、例えば、出力、繰返し率、およびビームシャッターを含む、レーザー源の内部および外部動作パラメータを制御するように機能する。制御系100からOCT画像診断装置300への制御信号は、OCTビームスキャンパラメータ、ならびにOCT画像の獲得、分析、および表示を制御するように機能する。
【0062】
フェムト秒レーザー源200からのレーザービーム201、およびOCT画像診断装置300からのOCTビーム301は、ビーム調整器およびスキャナ500のユニットに向かって方向付けられる。異なる種類のスキャナを、レーザービーム201およびOCTビーム301をスキャンする目的で使用することができる。ビーム201、301に対して横断方向でスキャンする場合、角度スキャン用のガルバノスキャナが、例えば、Cambridge Technology,Bedford,MA、Scanlab,Munich,Germanyから入手可能である。スキャン速度を最適化するため、スキャナミラーは一般的に、標的位置における必要なスキャン角度およびビームの開口数に依然として対応する、最小サイズにサイズ決めされる。スキャナにおける理想的なビームサイズは、一般的に、レーザービーム201またはOCTビーム301のビームサイズと異なり、集光対物レンズ700の入口において必要とされるサイズと異なる。したがって、ビーム調整器は、個々のスキャナの前、後、または間に適用される。ビーム調整器およびスキャナ500は、ビームを横断方向および軸方向でスキャンするスキャナを含む。軸方向スキャンは、標的領域における焦点の深度を変更する。軸方向スキャンは、サーボまたはステッピングモータを用いて、光路内で軸方向にレンズを移動させることによって実施することができる。
【0063】
レーザービーム201およびOCTビーム301は、目の共通の標的体積または手術体積に達するのに、二色、偏光、または他の種類のビームコンバイナ600を用いて合成される。フェムト秒レーザー源200、OCT画像診断装置300、および目視観察デバイス400を有する一体型手術システム1000では、これらの構成要素それぞれに対する個々のビーム201、301、401は、個々に最適化されてもよく、互いに対して共線または非共線であってもよい。ビームコンバイナ600は、二色または偏光ビームスプリッタを使用して、異なる波長および/または偏光の光を分割し再合成する。ビームコンバイナ600はまた、ビームサイズ、ビーム角度、および拡散など、個々のビーム201、301、401の特定のパラメータを変化させる光学部品を含んでもよい。統合された視覚的照明、観察、または画像診断デバイスは、外科医が目をシステムにドッキングさせ、手術位置を同定するのを支援する。
【0064】
目の眼組織構造を十分に詳細に分解するため、一体型手術システム1000の画像診断構成要素300、400は、数マイクロメートルの空間分解能を有するOCTビームおよび目視観察ビームを提供してもよい。OCTビームの分解能は、OCT画像で認識することができる最小の特徴の空間寸法である。それは主に、OCT源の波長およびスペクトル帯域幅、OCTビームを目の標的位置に送達する光学部品の品質、OCTビームの開口数、ならびに標的位置におけるOCT画像診断装置の空間分解能によって決定される。一実施形態では、一体型手術システムのOCTビームは、5μm以下の分解能を有する。
【0065】
同様に、フェムト秒レーザー源200によって提供される外科用レーザービームは、数マイクロメートルの精度で標的位置に送達されてもよい。レーザービームの分解能は、周囲の眼組織に著しく影響を及ぼすことなくレーザービームによって修正することができる、標的位置における最小の特徴の空間寸法である。それは主に、レーザービームの波長、レーザービームを目の標的位置に送達する光学部品の品質、レーザービームの開口数、レーザービームにおけるレーザーパルスのエネルギー、ならびに標的位置におけるレーザースキャニングシステムの空間分解能によって決定される。それに加えて、光破壊的相互作用のためのレーザーの閾値エネルギーを最小限に抑えるため、レーザースポットのサイズは約5μm以下であるべきである。
【0066】
目視観察ビーム401は、固定の非スキャニング光学部品を使用して目視観察デバイス400によって獲得されるが、OCT画像診断装置300のOCTビーム301は、2つの横断方向で横方向にスキャンされる。フェムト秒レーザー源200のレーザービーム201は、2つの横方向でスキャンされ、焦点の深度は軸方向にスキャンされる。
【0067】
実際の実施形態の場合、ビーム調整、スキャン、および光路の結合は、レーザー、OCT、および目視観察光学ビームに対して実施される特定の機能である。それらの機能の実現は、図7に示されるのとは異なる順序で行われてもよい。それらの機能を実現するのにビームを操作する特定の光学ハードウェアは、光学ハードウェアがどのように配置されるかに関して複数の構成を有することができる。それらは、個々の光学ビームを別個に操作する形で配置することができ、別の実施形態では、1つの構成要素が機能を組み合わせてもよく、異なるビームを操作する。例えば、スキャナの単一の組が、レーザービーム201およびOCTビーム301の両方をスキャンすることができる。この場合、別個のビーム調整器が、レーザービーム201およびOCTビーム301に対するビームパラメータを設定し、次にビームコンバイナが、スキャナの単一の組に対する2つのビームを合成してビームをスキャンする。光学ハードウェア構成の多くの組み合わせが一体型手術システムのために可能であるが、以下のセクションは例示の構成について詳細に記載する。
【0068】
ビーム送達
【0069】
以下の説明では、ビームという用語は、文脈に応じて、レーザービーム、OCTビーム、または目視観察ビームのうち1つを指してもよい。合成ビームは、共線的に合成されるかまたは非線形的に合成された、レーザービーム、OCTビーム、または目視観察ビームのうち2つ以上を指す。例示の合成ビームとしては、OCTビームとレーザービームとの共線的または非共線的組み合わせである、合成OCT/レーザービーム、ならびにOCTビーム、レーザービーム、および目視ビームの共線的または非共線的組み合わせである、合成OCT/レーザー/目視ビームが挙げられる。共線的に合成されたビームの場合、異なるビームが二色または偏光ビームスプリッタによって合成され、異なるビームの多重送達によって同じ光路に沿って送達されてもよい。非共線的に合成されたビームの場合、異なるビームが、空間的にまたは間にある角度を置いて分離された異なる光路に沿って、同時に送達される。以下の説明では、上述のビームまたは合成ビームのいずれかが、包括的に光線と呼ばれることがある。遠位および近位という用語は、ビームの移動方向、または一体型手術システム内における構成要素の互いに対する物理的位置を指定するのに使用されることがある。遠位方向は目に向かう方向を指し、したがって、OCTビーム画像診断装置によって出力されるOCTビームは、目に向かって遠位方向に移動する。近位方向は目から離れる方向を指し、したがって、目からのOCT戻りビームは、OCT画像診断装置に向かって近位方向に移動する。
【0070】
図8を参照すると、一例の一体型手術システムは、レーザービーム201およびOCTビーム301それぞれを目1に向かって遠位方向で送達し、目1から戻るOCT戻りビームおよび目視観察ビーム401それぞれを受け取るように構成される。レーザービームの送達に関して、フェムト秒レーザー源200によって出力されたレーザービーム201は、基本ビームパラメータ、ビームサイズ、拡散が設定される、ビーム調整器510を通過する。ビーム調整器510はまた、ビーム出力またはパルスエネルギーを設定する追加の機能を含み、ビームを遮断してその機能をオンオフしてもよい。ビーム調整器510を出た後、レーザービーム210は軸方向スキャンレンズ520に入る。軸方向スキャンレンズ520は、単一のレンズまたはレンズ群を含んでもよく、サーボモータ、ステッピングモータ、または他の制御メカニズムによって軸方向522で移動可能である。軸方向スキャンレンズ520の軸方向522の移動によって、焦点におけるレーザービーム210の焦点の軸方向距離が変化する。
【0071】
一体型手術システムの特定の実施形態によれば、中間焦点722は、集光対物レンズ700によって決定される、手術体積720の画像共役である共役手術体積721内にあるように設定され、その中でスキャン可能である。手術体積720は、画像診断および手術が実施される、目の中の関心領域の空間的範囲である。緑内障手術の場合、手術体積720は目の虹彩角膜角13の近傍である。
【0072】
ガルバノスキャナによって回転させられる一対の横断方向スキャンミラー530、532は、2つの本質的に直交する横断方向で、例えばxおよびy方向で、レーザービーム201をスキャンする。次に、レーザービーム201は、二色または偏光ビームスプリッタ540に向かって方向付けられ、そこで、レーザービーム201をOCTビームビーム301と合成するように構成された、ビーム合成ミラー601に向かって反射される。
【0073】
OCTビームの送達に関して、OCT画像診断装置300によって出力されたOCTビーム301は、ビーム調整器511、軸方向に移動可能な集光レンズ521、ならびにスキャンミラー531および533による横断方向スキャナを通過する。集光レンズ521は、共役手術体積721および実際の手術体積720におけるOCTビームの焦点位置を設定するのに使用される。集光レンズ521は、OCT軸方向スキャンを得るためにスキャンされない。OCT画像の軸方向空間情報は、干渉法によって再合成されたOCT戻りビーム301および参照ビーム302のスペクトルをフーリエ変換することによって得られる。しかしながら、手術体積720がいくつかの軸方向セグメントに分割された場合、集光レンズ521を使用して、焦点を再調節することができる。このように、OCTビーム画像の最適な画像診断空間分解能を、複数範囲でのスキャニングに費やされる時間を犠牲にして、OCT信号ビームのレイリー範囲を超えて拡張することができる。
【0074】
目1に向かって遠位方向に進み、スキャンミラー531および533の後、OCTビーム301は、ビームコンバイナミラー601によってレーザービーム201と合成される。合成レーザー/OCTビーム550のOCTビーム301およびレーザービーム201成分は、多重化され、同じ方向に移動して、共役手術体積721内の中間焦点722で集光される。共役手術体積721において集光された後、合成レーザー/OCTビーム550は第2のビーム合成ミラー602へと伝播し、そこで目視観察ビーム401と合成されて合成レーザー/OCT/目視ビーム701を形成する。
【0075】
遠位方向に移動する合成レーザー/OCT/目視ビーム701は次に、集光対物レンズ700、および患者接触面の窓801を通過し、その窓で、共役手術体積721内のレーザービームの中間焦点722が、手術体積720の焦点へと改めて結像される。集光対物レンズ700は、患者接触面の窓801を通して、中間焦点722を手術体積720内の眼組織へと改めて結像する。
【0076】
眼組織からの散乱OCT戻りビーム301は、上述したのと同じ経路に沿って逆の順序で、近位方向に移動してOCT画像診断装置300に戻る。OCT画像診断装置300の参照ビーム302は、参照遅延光路を通過し、可動ミラー330からOCT画像診断装置に戻る。参照ビーム302は、OCT画像診断装置300内で戻る際に干渉法によってOCT戻りビーム301と合成される。参照遅延光路の遅延量は、可動ミラー330を移動させて、OCT戻りビーム301および参照ビーム302の光路を均等化することによって、調節可能である。軸方向OCT分解能を最良にするため、OCT戻りビーム301および参照ビーム302はまた、OCT干渉計の2つのアーム内の群速度分散を均等化するように分散補償される。
【0077】
合成レーザー/OCT/目視ビーム701が角膜3および前眼房7を通して送達されるとき、合成ビームは、垂直入射から外れた鋭角で角膜の後面および前面を通過する。合成レーザー/OCT/目視ビーム701の経路におけるこれらの表面は、過度の非点収差およびコマ収差を作り出し、それらを相殺する必要がある。
【0078】
図9aおよび9bを参照すると、一体型手術システム1000の一実施形態では、集光対物レンズ700および患者接触面800の光学構成要素は、空間および色収差ならびに空間および色歪みを最小限に抑えるように構成される。図9aは、両目1、患者接触面800、および集光対物レンズ700が全て互いに結合されたときの構成を示している。図9bは、両目1、患者接触面800、および集光対物レンズ700が全て互いから分離されたときの構成を示している。
【0079】
患者接触面800は、目1を集光対物レンズ700に光学的および物理的に結合し、対物レンズは次いで、一体型手術システム1000の他の光学構成要素に光学的に結合する。患者接触面800は複数の機能を果たす。目を一体型手術システムの構成要素に対して不動化し、構成要素と患者との間に滅菌バリアを作り出し、目と機器との間の光アクセスを提供する。患者接触面800は、滅菌された一回使用の使い捨てデバイスであり、目1および一体型手術システム1000の集光対物レンズ700に分離可能に結合される。
【0080】
患者接触面800は、目に面する凹面812と、凹面とは反対側の対物レンズに面する凸面813とを有する、窓801を含む。したがって、窓801はメニスカス形態を有する。図9cを参照すると、凹面812は曲率半径rによって特徴付けられ、凸面813は曲率半径rによって特徴付けられる。凹面812は、直接接触によって、または凹面812と目1との間に配置された屈折率が整合する材料、液体、もしくはゲルによって、目に結合するように構成される。窓801はガラスで形成されてもよく、屈折率nを有する。一実施形態では、窓801は溶融シリカで形成され、1.45の屈折率nを有する。溶融シリカは、一般の安価なガラスのうち最も低い屈折率を有する。テフロンAFなどのフルオロポリマーは、溶融シリカよりも低い屈折率を有する別の種類の低屈折率材料であるが、それらの光学品質はガラスよりも低く、大量生産のためには比較的高価である。別の実施形態では、窓801は一般的なガラスBK7で形成され、1.50の屈折率nを有する。このガラスの耐放射線性の種類である、Schott AG,Mainz,GermanyによるBK7G18によって、γ線照射によって窓801の光学特性を変えることなく、患者接触面800のγ線滅菌が可能になる。
【0081】
図9aおよび9bに戻ると、窓801は、患者接触面800の壁803、および吸引リング804などの不動化デバイスによって取り囲まれる。吸引リング804が目1と接触していると、環状キャビティ805が吸引リングと目との間に形成される。真空が真空チューブまたは真空ポンプ(図9aおよび9bには図示なし)を介して吸引リング804およびキャビティに適用されると、手術の間、目と吸引リングとの間の真空力によって目が患者接触面800に付着される。真空を除去することによって目1が解放されるかまたは分離される。
【0082】
患者接触面800の目1とは反対側の端部は、集光対物レンズ700のハウジング702に付着させることによって、一体型手術システム100の他の構成要素に対する目の位置を固定するように構成された、アタッチメント接触面806を含む。アタッチメント接触面806は、機械的、真空、磁気、または他の原理で働き、また、一体型手術システムから分離可能である。
【0083】
集光対物レンズ700は、目に面する凹面711と凹面とは反対側の凸面712とを有する、非球面出射レンズ710を含む。したがって、出射レンズ710はメニスカス形態を有する。図9aおよび9bに示される出射レンズ710は、設計自由度がより高い非球面レンズであるが、他の構成では、出射レンズは球面レンズであってもよい。あるいは、出射レンズ710を単レンズではなく複合レンズとして構築することによって、ここで提示される光学系の主な特性を保存しながら光学部品を最適化する、より高い設計自由度が可能になる。図9cを参照すると、凹面711は曲率半径rによって特徴付けられ、凸面712は非球面形状によって特徴付けられる。非球面の凸面712は、球面の凹面711と組み合わせて、可変の厚さを有する出射レンズ710となり、レンズの外縁部715はレンズの中央の頂点領域717よりも薄い。凹面711は、窓801の凸面813に結合するように構成される。一実施形態では、出射レンズ710は溶融シリカで形成され、1.45の屈折率nを有する。
【0084】
図10aおよび10bは、虹彩角膜角の手術体積720にアクセスできるようにする、第1の光学サブシステム1001および第2の光学サブシステム1002を有する光学系1010を形成するように機能的に配置された、図7および8の一体型手術システムの構成要素の概略図である。図10aおよび10bはそれぞれ、図9aの集光対物レンズ700および患者接触面800の構成要素を含む。しかしながら、単純にするため、集光対物レンズおよび患者接触面の全体を図10aおよび図10bに含んでいない。また、図10aを更に単純にするため、図9aおよび9bの平面のビーム折返しミラー740は含まれず、図9aに示される合成レーザー/OCT/目視ビーム701は、折り返されないかまたは伸ばされない。平面のビーム折返しミラーを追加または除去することでは、第1の光学サブシステムおよび第2の光学サブシステムによって形成される光学系の原則的な作業は変更されないことが、当業者には理解される。図10cは、図10aおよび10bの第1の光学サブシステムを通過するビームの概略図である。
【0085】
図10aを参照すると、一体型手術システム1000の第1の光学サブシステム1001は、集光対物レンズ700の出射レンズ710と、患者接触面800の窓801とを含む。出射レンズ710および窓801は、第1の光軸705を規定するように、互いに対して配置される。第1の光学サブシステム1001は、第2の光軸706に沿って出射レンズ710の凸面712に入射するビーム、例えば合成レーザー/OCT/目視ビーム701を受け取り、そのビームを目の虹彩角膜角13の手術体積720に向かって方向付けるように構成される。
【0086】
外科手技中に、第1の光学サブシステム1001は、窓801の凸面813を出射レンズ710の凹面711とインターフェース接続することによって組み立てられてもよい。この目的のため、集光対物レンズ700は患者接触面800とドッキングされる。結果として、出射レンズ710の凹面711が窓801の凸面813に結合される。結合は、直接接触によるもの、または屈折率整合流体の層によるものであってもよい。例えば、患者接触面800を集光対物レンズ700にドッキングするとき、屈折率整合流体の液滴を接触表面の間に適用して、2つの表面711、813の間に空隙があればそれを排除することによって、最小限のフレネル反射および歪みで合成レーザー/OCT/目視ビーム701が間隙を通過するのを助けることができる。
【0087】
ビームを目の虹彩角膜角13の手術体積720に向かって方向付けるために、第1の光学サブシステム1001は、ビーム701が、出射レンズ710、窓801、および角膜3を通過する際の屈折を計算に入れるように設計される。この目的のため、図10cを参照すると、出射レンズ710の屈折率nおよび窓801の屈折率nは、角膜3の屈折率nを考慮して選択されて、ビーム701がサブシステムを出て角膜3を通過するとき、光路が虹彩角膜角13内にあるようにほぼ整列されるように、第1の光学サブシステム1001を通してビームが適切に曲げられる。
【0088】
引き続き図10cを参照し、窓801と角膜3との間の接触面から始める。合成レーザー/OCT/目視ビーム701が窓801から出て角膜3に入る接触面において、即ち窓の凹面812と角膜3の凸面との間の接触面において、入射角が鋭角過ぎると、過度の屈折および歪みが生じる。この接触面における屈折および歪みを最小限に抑えるため、第1の光学サブシステム1001の一実施形態では、窓801の屈折率は角膜3の屈折率と緊密に整合される。例えば、図9aおよび9bを参照して上述したように、窓801は、1.36の屈折率を有する角膜3と緊密に整合するように、1.42未満の屈折率を有してもよい。
【0089】
合成レーザー/OCT/目視ビーム701が窓801から出て角膜3に入る接触面における過度の屈折および歪みは、ビーム701が出射レンズ710および窓801を通過する際の曲げを制御することによって、更に相殺されてもよい。この目的のため、第1の光学サブシステム1001の一実施形態では、窓801の屈折率nは、出射レンズ710の屈折率nおよび角膜3の屈折率nそれぞれよりも高い。結果として、合成レーザー/OCT/目視ビーム701が出射レンズ710から出て窓801に入る接触面、即ち出射レンズの凹面711と窓の凸面813との間の接触面において、ビームは、高い方から低い方への屈折率変化を通り抜け、それによってビームが第1の方向に曲がる。次に、合成レーザー/OCT/目視ビーム701が窓801から出て角膜3に入る接触面、即ち出射レンズの凹面812と角膜の凸面との間の接触面において、ビームは、低い方から高い方への屈折率変化を通り抜け、それによってビームが第1の方向とは反対の第2の方向に曲がる。
【0090】
窓801の形状はメニスカスレンズであるように選択される。そのため、光の入射角は、窓801の両方の表面812、813上において類似の値を有する。全体的な作用として、凸面813では、光は面法線から離れる方向に曲がり、凹面812では、光は面法線に向かって曲がる。この作用は、光が平面平行プレートを通過するときのようなものである。プレートの一方の表面における屈折は、他方の表面における屈折によって相殺され、プレートを通過する光の方向は変化しない。入光面における光701の入射角βが交点708における入光面に対する面法線707に近くなるように、入光面における曲率を設定することによって、目の遠位側にある出射レンズ710の入光側の凸面712における屈折は最小限に抑えられる。
【0091】
ここで、出射レンズ710、窓801、および目1は、第1の光軸705との軸対称系として配置される。実際には、光学構成要素の製造および位置合わせの誤差、目の対称性からの自然な偏差、ならびに臨床セッティングでの窓801および出射レンズ710に対する目の位置合わせの誤差があるため、軸対称性は近似値である。ただし、設計および実践上の目的のため、目1、窓801、および出射レンズ710は、軸対称の第1の光学サブシステム1001と見なされる。
【0092】
引き続き図10aを参照すると、第2の光学サブシステム1002は、第1の光学サブシステム1001の第1の光軸705に対して角度αで、第1の光学サブシステム1001に光学的に結合される。この配置の利点は、両方の光学サブシステム1001、1002を、全ての光学構成要素が共通の光軸を有する光軸上に設計されるシステムと比較して、はるかに低い開口数で設計できる点である。
【0093】
第2の光学サブシステム1002は、図8を参照して上述したように、目の中で手術体積720の共役手術体積721を生成する、リレーレンズ750を含む。第2の光学サブシステム1002は、光学サブシステムブロック1003として集合的に示される、他の様々な構成要素を含む。図8を参照すると、これらの構成要素は、フェムト秒レーザー源200と、OCT画像診断装置300と、目視観察デバイス400と、ビーム調整器およびスキャナ500と、ビームコンバイナ600とを含んでもよい。
【0094】
第2の光学サブシステム1002は、第1の光学サブシステム1001の第1の光軸705を中心にしてサブシステム全体を回転させるように構成された、機械的部品(図示なし)を含んでもよい。これによって、目1の虹彩角膜角13の360°の円周全体への光アクセスが可能になる。
【0095】
図10bを参照すると、第1および第2の光学サブシステム1001、1002のそれぞれに対する配置の柔軟性は、第2の光学サブシステム1002の光出力と第1の光学サブシステム1001の光入力との間に、光学アセンブリ1004が挟み込まれることによってもたらされてもよい。一実施形態では、光学アセンブリ1004は、第2の光学サブシステム1002の光出力、例えば合成レーザー/OCT/目視ビーム701を受け取り、合成レーザー/OCT/目視ビームの方向を変更または調節し、第1の光学軸705と第2の光学軸706との間の角度αを保存しながら、ビームを第1の光学サブシステム1001の光入力へと方向付けるように構成された、1つもしくは複数の平面ビーム折返しミラー740、プリズム(図示なし)、または光学格子(図示なし)を含んでもよい。
【0096】
別の構成では、平面ビーム折返しミラー740の光学アセンブリ1004は更に、第2の光学サブシステム1002を静止させたまま、第1の光学サブシステム1001の第1の光軸705を中心にしてアセンブリを回転させるように構成された、機械的部品(図示なし)を含む。したがって、第2の光学サブシステム1002の第2の光軸706を、第1の光学サブシステム1001の第1の光軸705を中心にして回転させることができる。これによって、目1の虹彩角膜角13の360°の円周全体への光アクセスが可能になる。
【0097】
図9a、9b、および9cを参照にして上述した考察により、第1の光学サブシステム1001の設計は、第1の光学サブシステム1001の第1の光軸705に対する角度αでの角度付き光アクセスのために最適化される。角度αでの光アクセスは、第1の光学サブシステム1001の光学収差を相殺する。表1は、Zemax光学設計ソフトウェアパッケージを用いて、アクセス角度α=72°で最適化した結果を示している。この設計は、画像誘導フェムト秒緑内障手術に関する実践的な実施形態である。
【0098】
この設計は、開口数(NA)0.2以下で、1030nm波長のレーザービームおよび850nm波長のOCTビームの回折限界集光を作り出す。1つの設計では、第1の光学サブシステムの光学収差は、虹彩角膜角における開口数0.15超のビームに対する第1の光学サブシステムのストレール比が0.9超になる程度まで相殺される。別の設計では、第1の光学サブシステムの光学収差は部分的に相殺され、第1の光学系の残りの相殺されない収差は、第2の光学サブシステムによって、虹彩角膜角における開口数0.15超のビームに対する第1および第2の光学サブシステムの組み合わせのストレール比が0.9超になる程度まで相殺される。
【0099】
校正
【0100】
一体型手術システム1000のフェムト秒レーザー源200、OCT画像診断装置300、および目視観察デバイス400は、最初に、それらの内部の整合性を担保するように個々に校正され、次にシステム整合性に関して相互校正される。システム校正の必須部分は、レーザービーム201の外科的焦点が、OCT画像診断装置および/または目視観察デバイス400によって同定されるような、手術体積720の位置に集められたとき、達成された焦点位置が、特定の公差以内、一般的には5~10μm以内で、集められた焦点位置と整合するように担保することである。また、コンピュータモニタなどのユーザインターフェース110に表示される、グラフィックおよびカーソル出力、画像、オーバーレイ、ならびにユーザインターフェース110から受け入れられる眼組織手術体積720の位置のユーザ入力は、類似の精度の所定の公差内で組織における実際の位置に対応すべきである。
【0101】
この空間校正手順の一実施形態は、ディスプレイ上のスケール値が校正標的の実際のスケールと整合するような形での、OCTビーム画像診断装置300および/または目視観察デバイス400ならびにそれらのディスプレイの校正済みスケールおよびスケーリング倍率の撮像から始まる。次に、レーザー校正パターンが透明校正標的に露光または焼き付けられ、続いて校正パターンが撮像される。次に、意図されたパターンおよび実際の焼き付けられたパターンが、一体型手術システム1000の画像診断システムを用いて、または別個の顕微鏡によって比較される。それらが指定の公差内で整合しない場合、レーザービームスキャナのスケーリングを調節することによって、手術パターンのスケーリングパラメータが改めてスケーリングされる。この手順は、全ての空間校正が公差内になるまで、必要に応じて反復される。
【0102】
眼組織修正を用いたレーザー手術
【0103】
本明細書に開示する一体型手術システム1000によって可能にされる、外科治療に関連する目の解剖学的構造が、図1~4に示されている。IOPを低減するため、レーザー治療は、線維柱帯流出経路40に影響を及ぼす眼組織を標的とする。これらの眼組織は、虹彩角膜角13内の線維柱帯12、強膜岬14、ブドウ膜15、強膜角膜線維柱帯16、傍小管組織17、シュレム管18、集水チャネル19を含んでもよい。
【0104】
本明細書に開示するのは、線維柱帯流出経路40に影響を与えるのに特に有効なレーザーパターンである。レーザー相互作用体積は小さく、数マイクロメートル(μm)程度なので、眼組織と繰返しレーザーの各レーザーショットとの相互作用は、レーザーの焦点で局所的に眼組織を破壊する。眼組織における光破壊的相互作用に関するレーザーのパルス持続時間は数フェムト秒から数ナノ秒、パルスエネルギーは数ナノジュールから数十マイクロジュールの範囲であることができる。焦点におけるレーザーパルスは、多光子過程を経て、分子の化学結合を破壊し、組織物質を局所的に光分解し、湿組織中に気泡を作り出す。組織物質の破壊、および気泡形成による機械的応力によって、組織が細分化され、レーザーパルスを幾何学的線および表面に沿って互いに近接させた場合、明確な連続した切り口が作られる。
【0105】
以下の説明のため、基本的な相互作用体積をセルと呼ぶ。セルのサイズは、レーザー・組織間相互作用の影響の程度によって決定される。レーザースポット、即ちセルが、線に沿って緊密であるとき、レーザーは狭い微視的チャネルを作成する。より幅広のチャネルは、チャネルの断面内で多数のレーザースポットを近接させることによって作成することができる。例えば、円筒全体の位置およびサイズの座標を最初に計算することによって、円筒状チャネルを作成することができる。次に、セルのサイズをパラメータとして使用して、円筒の体積内の稠密なセル配置における各セルの座標を計算する。セルの配置は、結晶構造における原子の配置を模したものである。
【0106】
最も簡単なのは立方格子構造を計算することであり、この場合、個々のセルは規則的な間隔の行、列、および面に配置され、セルの座標は、行、列、および面の順序でセルからセルへと順に計算することができる。レーザースキャナハードウェアも、この規則的シーケンスに従って、余計なジャンプなしにレーザービームをスキャンすることができる。チャネルは、異なる断面で、楕円形、長方形、正方形、または他の規則的もしくは不規則な断面で、作成することができる。眼組織に切られたチャネルは眼房水8を伝導することができ、その伝導度はチャネルの断面積に伴って増加する。
【0107】
図11aおよび11bは、外科用レーザーが手術体積900に影響を及ぼすようにスキャンを行って(図11a)、チャネル開口部920を形成する(図11b)、虹彩角膜角の断面図を示している。線維柱帯内の手術体積900は、前眼房7からシュレム管18の内壁を通って延在する。レーザースキャンは、手術体積900内の眼組織を修正してチャネル開口部920を作り出す。チャネル開口部920は、眼組織内の流動抵抗を低減させて、前眼房7からシュレム管18内への水流を増加させることによって、目のIOPを低減する。チャネル開口部920のサイズによって、流出路抵抗の低減および有効性の寿命が決まる。
【0108】
画像ガイダンスは、構造を正確に位置決めし、治療の成功をモニタリングするのに、この処置では必須である。治療される眼組織のサイズおよび体積を最小限に抑えることは、作成されるガスの量およびガスが誘導する組織移動の量を最小限に抑える助けにもなる。膨張性ガスによって組織が拡張するにつれて、ガスが閉鎖体積から逃げ、ガスが充満した空隙が虚脱すると、突然の組織移動が起こる可能性がある。かかる突然の組織移動は、外科的切開の不連続性をもたらす恐れがあり、回避するかまたは最小限に抑えるべきである。
【0109】
眼組織に手術パターンを作り出すための別の考慮点は、切開が進行するにつれて気泡が影効果をもたらす可能性があることである。一般に、切開の進行は、影効果を最小限に抑えるため、レーザーから離れたある位置から進み、レーザーにより近い位置に向かって進むべきである。レーザーが回折限界焦点に厳密に集光され、光破壊的相互作用に対する閾値パルスエネルギーが低下したときは、ガスの量も少ない。レーザーが低閾値で操作されると、局所的相互作用体積のサイズおよび気泡のサイズは小さくなる。これは、手術体積を埋めているセルが緊密であるべきということを意味する。
【0110】
表2は、異なるサイズの複数の切開に対する外科用レーザーおよび治療パターンのパラメータを示している。パラメータセットの範囲は、目に入るレーザー光の最大許容露光量(MPE)限界、ならびにレーザーの繰返し率およびスキャナのスキャン速度の実際の範囲によって限定される。
【0111】
MPEに関して、図6の角度付き光路30は、フェムト秒レーザー源200またはOCT画像診断装置300から組織を通して伝達される光線が網膜に直接達しないので、最も有利である。これは、組織を通して伝達される直接レーザー光またはOCT光が網膜に達する、知られている角膜および白内障手術とは対照的である。したがって、図6の角度付き光路30はより高いビーム平均出力を使用することができる。外科用レーザーのより高い平均出力によって、処置時間がより早くなる。OCTビームのより高い平均出力によって、同じ画像品質でOCT画像獲得時間がより早くなるか、または同じ画像獲得時間で画像品質がより良くなる。セルサイズおよびレーザーパルスエネルギーに関して、組織中で作られるガスの量を最小限に抑えるため、より小さいセルサイズおよびパルスエネルギーが好ましい。
【0112】
ELT処置による線形灌流モデルの実験的所見(Liu et al.,2005)および臨床所見は、0.24mm~0.4mmのチャネル断面が十分なIOP低減を達成できることを示している。表2から分かるように、本明細書に開示する一体型手術システムによってできる外科用レーザー処置は、Liu et al.と同様のチャネル断面を生成することができ、10秒未満で完了することができる。
【0113】
図12は、本明細書に開示する一体型手術システムは、角膜と、前眼房と、線維柱帯、シュレム管、およびシュレム管から分岐する1つまたは複数の集水チャネルで形成された眼房水流出経路を備える虹彩角膜角とを有する、目の眼内圧を低減する方法のフローチャートである。方法は、図7~10bの一体型手術システム1000によって実施されてもよい。
【0114】
工程1202で、角膜3および前眼房7を通って虹彩角膜角13内へとOCTビーム301が送達される。一実施形態では、OCTビーム301は、約5マイクロメートル以下の分解能を有し、角膜3に結合された窓801と窓に結合された出射レンズ710とを含む第1の光学サブシステム1001にOCTビームを方向付けることによって、虹彩角膜角13に送達される。
【0115】
工程1204で、第1の光学サブシステム1001を通して虹彩角膜角に送達されたOCTビーム301に基づいて、虹彩角膜角13の一部分のOCT画像が獲得される。この目的のため、OCT戻りビーム301が、第1の光学サブシステム1001を通して受け取られ、知られているOCT画像診断技術を使用してOCT画像診断装置300で処理される。
【0116】
工程1206で、修正されるべき眼組織の手術体積900が、OCT画像に基づいて決定される。手術体積900は、一体型手術システム1000の制御系100に表示される、2D断面OCT画像に基づいて決定されてもよい。目視観察ビーム401も、手術体積900を決定するのに使用されてもよい。この目的のため、目視観察ビーム401は、顕微鏡400によって第1の光学サブシステム1001を通して虹彩角膜角13から獲得されてもよく、修正する眼組織の体積900は、OCT画像および目視観察信号を制御系100の表示画面上に重ねて提示することによって決定されてもよい。あるいは、OCT画像および目視観察信号は表示画面上で登録されてもよい。
【0117】
一実施形態では、シュレム管18は円周によって特徴付けられ、修正する眼組織の手術体積900は、円周の周りにおける集水チャネル19の密度に基づいて決定される。この場合、シュレム管18の円周の少なくとも一部分における集水チャネル19の密度分布は、OCT画像に基づいて決定される。閾値基準を上回る密度を有するシュレム管18の領域が同定され、同定された領域の近傍が、修正する眼組織の体積に含まれる。基準は、分布の50百分位、75百分位、または75百分位超であってもよい。別の実施形態では、修正されるべき眼組織の体積900は、集水チャネル19の1つまたは複数の近傍にある。
【0118】
工程1208で、角膜3および前眼房7を通って虹彩角膜角13内へとOCTビーム301およびレーザービーム201がそれぞれ送達される。一実施形態では、OCTビーム301およびレーザービーム201は、例えば約5マイクロメートル以下の、実質的に等しい分解能を有し、各ビームは、角膜3に結合された窓801と窓に結合された出射レンズ710とを含む第1の光学サブシステム1001に各ビームを方向付けることによって、虹彩角膜角に送達される。OCTビーム301およびレーザービーム201は、例えばビームの多重化によって、同じ光路に沿って第1の光学サブシステム1001へと共線的に方向付けられてもよい。あるいは、OCTビーム301およびレーザービーム201は、空間的に分離されるかまたは角度を付けられた光路に沿って、同時に第1の光学サブシステムへと非共線的に方向付けられてもよい。
【0119】
斜角で目に入ることによるビーム201、301の歪みおよび収差は、各ビームをある角度で第1の光学サブシステム1001内へと方向付けることによって相殺される。この目的のため、目1は視野方向を含み、第1の光学サブシステム1001は、目の視野方向と実質的に整列される第1の光軸705を含むように、目に対して位置付けられる。ビーム201、301は、各ビームを、第1の光軸705から角度αオフセットされた第2の光軸706に沿って、出射レンズ710の凸面713内へと方向付けることによって、第1の光学サブシステム1001に入力される。それに加えて、各ビーム201、301は、凸面に対する面法線707に対する角度βで、出射レンズ710の凸面713内へと方向付けられてもよい。
【0120】
工程1210で、線維柱帯流出経路40内の眼組織の体積900は、体積を規定する眼組織にレーザービーム201を適用することによって、線維柱帯12、シュレム管18、および1つまたは複数の集水チャネル19のうち1つまたは複数に存在する経路抵抗を低減するように修正される。この目的のため、330ナノメートル~2000ナノメートルの波長を有するレーザービーム201が、手術体積900を規定する眼組織と相互作用するように、複数方向でスキャンされてもよい。レーザービーム201は、連続的に、または20フェムト秒~1ナノ秒のパルス持続時間を有する複数のレーザーパルスとして適用されてもよい。レーザービーム201は、眼組織との光破壊的相互作用をもたらして、経路抵抗を低減するか、または新しい流出経路40を作成する。一実施形態では、眼組織との光破壊的相互作用によって、前眼房およびシュレム管を接続する線維柱帯を通って開いているチャネル902が作成される。
【0121】
虹彩角膜角のアクセス
【0122】
図13は、光線を、視野方向および屈折率nの角膜を有する目の虹彩角膜角に方向付ける方法のフローチャートである。方法は、図7~10bの一体型手術システム1000によって実施されてもよい。
【0123】
工程1302で、第1の光学サブシステム1001および第2の光学サブシステム1002が互いに対して配置される。第1の光学サブシステムは、屈折率nを有する材料で形成された窓801を含む。窓801は、凹面812と凹面とは反対側の凸面813とを有する。第1の光学サブシステムはまた、屈折率nを有する材料で形成された出射レンズ710を含む。出射レンズ710は、凹面711と凹面とは反対側の凸面712とを有する。出射レンズ710の凹面711は、窓801の凸面813に結合して、窓および出射レンズを通って延在する第1の光軸705を規定するように構成される。窓801の凹面812は、第1の光軸705が目の視野方向とほぼ整列されるようにして、目の角膜3に分離可能に結合するように構成される。
【0124】
工程1304で、第2の光学サブシステム1002によって出力される光線は、第2の光軸706に沿って、第1の光軸705からオフセットされた角度αで、出射レンズ710の凸面712に入射するように方向付けられる。この目的のため、第2の光学サブシステム1002または別の中間光学アセンブリ1004は、第1の光軸と第2の光軸との間の角度分離の基準を決定し、分離の角度が角度αになるまで第2の光軸の配向を調節するように構成されてもよい。角度αは、一般的に30°超である。より具体的には、角度αは60°~80°であってもよい。更により具体的には、角度αは約72°である。
【0125】
工程1306で、第2の光学サブシステム1002から出力される光線はまた、第2の光軸706と出射レンズの凸面に対する面法線707との間の角度βで、交点において出射レンズ710の凸面712と交差するように方向付けられてもよい。再度、第2の光学サブシステム1002または別の中間光学アセンブリ1004は、第2の光軸と面法線707との間の角度分離の基準を決定し、分離の角度が角度βになるまで第2の光軸の配向を調節するように構成されてもよい。
【0126】
いくつかの構成では、例えば図10bに示されるように、第2の光学サブシステム1002は、光線701が第2の光軸706からオフセットされた軸に沿って第2の光学サブシステムによって出力されるようにして、第1の光学サブシステム1001に対して配置するように構成されてもよい。これらの場合、ブロック1304の方向付けプロセスでは、光線701は、第1の光学サブシステム1001と第2の光学サブシステム1002との間に挟み込まれた光学アセンブリ1004で受け取られ、第2の光軸706とほぼ整列するように再度方向付けられる。第2の光軸706は、角度αに実質的に等しい角度で第1の光軸からオフセットされた第2の光軸を維持しながら、第1の光軸705を中心にして回転させられてもよい。それにより、虹彩角膜角13の円周の周りの治療が可能になる。第2の光軸と出射レンズの凸面に対する面法線707との間の角度βで、交点708において第2の光軸706が出射レンズ710の凸面712と交差する構成では、ブロック1306の方向付けプロセスは、やはり角度βに実質的に等しい第2の光軸と面法線との間の角度を維持したまま、第1の光軸を中心にして第2の光軸を回転させることを伴う。
【0127】
本開示の様々な態様は、当業者が本発明を実施できるようにするために提供される。本開示全体を通して提示される例示的実施形態に対する様々な修正が、当業者には明白となるであろう。したがって、特許請求の範囲は本開示の様々な態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言と合致する全範囲に一致するものとする。当業者に知られているかまたは後に知られることになる、本開示全体を通して記載される例示的実施形態の様々な構成要素に対する全ての構造的および機能的等価物は、参照によって本明細書に明確に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されるものとする。更に、本明細書に開示される内容はいずれも、かかる開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているか否かにかかわらず、公衆に捧げられることを意図しない。クレーム要素はいずれも、「~のための手段」という語句を使用して明確に列挙されていない限り、または方法クレームの場合、要素が「~のための工程」という語句を使用して列挙されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定に基づいて解釈されるべきものではない。
【0128】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、本発明の原理の適用についての単なる例証であることが理解されるべきである。例証される実施形態の詳細に対する本明細書での言及は、本発明に必須のものと見なされる特徴を列挙する、特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図12
図13