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特許7292412アルミニウム部品と、ケイ素、鉄、亜鉛及びマグネシウムを含み、残余がアルミニウムである合金化コーティングを有するプレス硬化鋼部品との組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】アルミニウム部品と、ケイ素、鉄、亜鉛及びマグネシウムを含み、残余がアルミニウムである合金化コーティングを有するプレス硬化鋼部品との組立体
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20230609BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20230609BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20230609BHJP
   C22C 21/08 20060101ALI20230609BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20230609BHJP
   B23K 11/20 20060101ALI20230609BHJP
   B21D 22/26 20060101ALN20230609BHJP
【FI】
C23C2/12
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/08
C22C21/10
B23K11/20
B21D22/26 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021559802
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 IB2020053192
(87)【国際公開番号】W WO2020208489
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/052899
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシャド・アモラン,ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】モレル,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドダ,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】グレゴワール,アストリッド
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532677(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180853(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/030424(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/158165(WO,A1)
【文献】特表2018-527462(JP,A)
【文献】特表2018-527461(JP,A)
【文献】特表2018-528324(JP,A)
【文献】特表2015-520679(JP,A)
【文献】特開2005-319481(JP,A)
【文献】特開平01-202383(JP,A)
【文献】特開2018-070973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0142294(US,A1)
【文献】国際公開第2002/103073(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
C22C 21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルミニウムをベースとする要素(2)及びプレス硬化鋼部品(3)の組立体(1)であって、該硬化鋼部品はその表面の少なくとも一方の上に、重量パーセントで0.1~15.0%のケイ素、15.0~70%の鉄、0.1~20.0%の亜鉛、0.1~4.0%のマグネシウムを含み、残余が、アルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Sr、Cr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素をそれぞれ0.3%未満で含む合金化コーティングを備え、該硬化鋼部品は該アルミニウムをベースとする要素(2)に結合された組立体。
【請求項2】
合金化コーティングが、金属間化合物層FeAl及び相互拡散層Fe-Si-Alを含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
金属コーティングの微細組織が、ZnMg相若しくはMgSi相又はその両方を含む、請求項1又は2に記載の組立体。
【請求項4】
前記プレス硬化鋼部品(3)が、接着結合、溶接、密封、クリンピング、クリンチング、又はリベットによる固定の中から選択される少なくとも1つの手段によって、前記アルミニウムをベースとする要素(2)と結合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項5】
以下の工程、
A. 表面の少なくとも一方の上に、重量パーセントで0.1~20.0%のケイ素、0~10%の鉄、0.1~25.0%の亜鉛、0.1~6.0%のマグネシウムを含み、残余は、アルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Sr、Cr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素をそれぞれ0.3%未満で含むプレコーティングでプレコートされた鋼板を提供し、
B. プレコート鋼板を切断してブランクを得、
C. ブランクをオーステナイト化処理して鋼中に完全オーステナイト系微細組織を得、
D. ブランクをプレスツール内に移し、
E. ブランクを熱間成形し、
F. ブランクを冷却して、表面の少なくとも一方の上に、0.1~15.0%のケイ素、15.0~70%の鉄、0.1~20.0%の亜鉛、0.1~4.0%のマグネシウムを含み、残余は、アルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Sr、Cr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素を含む合金化コーティングを備えたプレス硬化鋼部品(3)を得、
G. 表面の少なくとも一方の上に該合金化コーティングを備えたプレス硬化部品をアルミニウムをベースとする要素と組み立てること
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体の製造方法。
【請求項6】
工程C)において、オーステナイト化処理が800~1100℃の間で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程E)において、熱間成形がホットスタンピング又は圧延成形によって行われる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工程G)において、前記プレス硬化鋼部品(3)が、接着結合、溶接、密封、クリンピング、クリンチング、又はリベットによる固定によって、前記アルミニウムをベースとする要素(2)と結合される、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の又は請求項5~8のいずれか一項に記載の方法から得ることができる少なくとも1つの組立体(1)を含む車両用部品。
【請求項10】
フロントビーム、リアバンパービーム、ドア補強材、防風縦型補強材、Bピラー補強材、床及び屋根補強材、屋根又はダッシュパネル横材である、請求項9に記載の部品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の少なくとも1つの部品を含む車両。
【請求項12】
請求項9又は10のいずれか一項に記載の部品又は請求項11に記載の車両の製造のための請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムをベースとする部品と、アルミニウムをベースとする部品と接触するように配置されたその表面の少なくとも一方の上に、ケイ素、鉄、亜鉛、任意にマグネシウムを含み、残余がアルミニウムである合金化コーティングを備えた、プレス硬化鋼部品との組立体に関する。
【0002】
これらの組立体は、例えば、ドア開口部などの自動車の車体部品(ただし、それらに限定されない)の製造に使用することを意図したものである。
【背景技術】
【0003】
バンパービーム前部/後部、ドア補強材、ビーム量補強材、ミドルフット(middle foot)補強材、床補強材、トンネル補強材、デッキレール、屋根クロスバーのような車両の複雑な部品については、合金化アルミニウムをベースとするコーティングで被覆されたプレス硬化鋼部品を使用することが知られている。実際、このような被覆プレス硬化鋼部品は、コーティングの障壁効果のおかげで、安全性及び良好な耐食性を保証する。
【0004】
CO排出量を削減するために軽量化を追求することへの恒常的な必要性は、特にアルミニウムと合金化アルミニウムをベースとするコーティングで被覆したプレス硬化鋼部品とを組み合わせたハイブリッドの解決策を追求することへの必要性につながる。しかし、このような組み合わせは、これら2つの材料の腐食という複雑かつ進展する現象を発生させる。
【0005】
特許出願EP1669153号は、
- 3~12重量%のSi、0.5~5重量%のFe、及び不可避の不純物を除いて残余がAlであるコーティング層、並びに鋼基材とコーティング層との間の界面に形成されたAl-Fe-Si三元合金層を有する溶融Al被覆鋼板、
- Alコーティング鋼板にスポット溶接されたアルミニウム又はアルミニウム合金板を含み、
- Al/Fe結合境界の全体に対するAl-Fe二元合金層の面積比が90%以下に制御され、Al-Fe二元合金層とAl-Fe-Si三元合金層との間にAl-Fe合金を含まない領域が存在する、
鋼/アルミニウム溶接構造を開示する。
【0006】
しかし、この溶融Al被覆鋼板は、冷間圧延鋼板を含み、すなわち、プレス硬化鋼部品ではなく、それを用いて複雑な部品を製造することができない。また、この組立体の耐食性は、時間の経過と共にあまりにも低いままであり続け、したがってその改良の必要性が存在する。
【0007】
また、アルミニウムパネルとのプレス硬化鋼部品の組立体は、鋼がアルミニウムパネルの動的腐食を加速するので、劣った耐食性を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第1669153号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、従来技術の組立体に比べて優れた耐食性を有する、アルミニウムをベースとする部品とのプレス硬化鋼部品の組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体に関する。
【0011】
本発明は、請求項5~8のいずれか一項に記載のこの組立体の製造方法に関する。
【0012】
本発明はまた、請求項9又は10に記載の部品、請求項11に記載の車両に関する。
【0013】
最後に、本発明は、請求項12に記載の組立体の使用に関する。
【0014】
本発明は、添付の図を参照しながら、以下、情報目的のみのために与えられ、限定することのない指示的な例によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による組立体を概略的に表す。
図2図2は、従来技術による組立体と比較して、本発明による組立体内のアルミニウムパネルの最大腐食深さの進展を表す測定曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「プレス硬化鋼部品」という名称は、2500MPaまで、より好ましくは2000MPaまでの引張強さを有する熱間成形又はホットスタンピングされた鋼板を意味する。例えば、引張強度は500MPa以上であり、有利には1200MPa以上、好ましくは1500MPa以上である。例えば、鋼は、Usibor(R) 1000、Usibor(R) 1500、Ductibor(R) 1000、及びUsibor(R) 2000から選択される。
【0017】
アルミニウムをベースとする要素の名称は、純アルミニウム及び少なくとも85重量%のアルミニウムを含むその合金の全てを意味し、合金化添加元素を一切含まないアルミニウム、及び種々の組成の合金を含む、1000~7000シリーズを含む。
- 合金化元素を含まないアルミニウム:1000、
- アルミニウム+銅:2000、
- アルミニウム+マンガン:3000、
- アルミニウム+ケイ素:4000、
- アルミニウム+マグネシウム:5000、
- アルミニウム+マグネシウム+ケイ素:6000、及び
- アルミニウム+亜鉛+マグネシウム:7000。
【0018】
本発明は、少なくともアルミニウムをベースとする要素2と、その表面の少なくとも一方の上にケイ素、鉄、亜鉛、任意にマグネシウムを含み、残余がアルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Sr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素を含む合金化コーティングを備えたプレス硬化鋼部品3との組立体であって、プレス硬化鋼部品3はアルミニウムをベースとする要素2に接合された組立体1に関する。
【0019】
被覆プレス硬化鋼部品単独の電気化学電位は、飽和カロメル電極(SCE)に対して-0.68~-0.75Vの間、すなわち、-0.6と-0.78Vという鋼の電気化学電位に非常に近く、不十分な犠牲保護をもたらすが、本発明による組立体は、従来技術の組立体と比較して高い耐食性を有する。本発明者らは、アルミニウムをベースとする要素と、ケイ素、鉄、亜鉛、任意にマグネシウムを含み、残余がアルミニウムである合金化コーティングで被覆されたプレス硬化鋼部品との間に相乗作用があることを見出した。実際、プレス硬化鋼部品の合金被覆の表面に酸化物層が存在すると考えられる。この酸化物層は、腐食動力学の減少と、アルミニウム部品とプレス硬化鋼部品との間の電気ガルバニック結合の減少をもたらす障壁効果を有する。したがって、あらゆる予想を覆して、耐食性は組立体域で著しく改善される。
【0020】
本発明によれば、アルミニウムをベースとする第1の要素はパネル2の形態をとることができる。このパネル2は、本発明による組立体のその後の使用に適応した適切な寸法を有する。好ましい実施形態では、当該の組立体1はBピラーである。有利には、アルミニウムをベースとするパネルは、車両の外側に配置される。
【0021】
アルミニウムをベースとするパネル2は、さらに、その表面の少なくとも一方の部分上に、例えば、車両用ホワイトボディ上に通常塗布されるもののような、リン酸化及び/又は電気泳動型コーティングのような1つ以上の保護コーティングを含むことができる。リン酸化及び/又は電気泳動型コーティングのようなコーティング種類を含む浴槽内でのホワイトボディの通過前に、第2のプレス硬化鋼被覆部品3との組立が一般的に行われる。組立体域の外側にある部品は被覆される。組立体域は、組立体域内部のコーティングの低い浸透性のために、部分的にのみ被覆され得る。
【0022】
したがって、本発明による組立体の第2の要素は、その表面の少なくとも一方の上に、重量パーセントで0.1~15.0%のケイ素、15.0~70%の鉄、0.1~20.0%の亜鉛、0.1~4.0%のマグネシウムを含み、残余がアルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Sr又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素を含む合金化コーティングを備えたプレス硬化鋼部品3である。
【0023】
各追加の元素の重量含有率は、一般に0.3%未満である。この追加の元素は、とりわけ、鋼要素に対するコーティングの延性又は接着性を改善する能力を提供し得る。コーティングの特性に対するそれらの効果を知っている当業者は、追加の又は相補的な所望の目標に従ってそれらを使用することを知るであろう。
【0024】
コーティングは、例えば、溶融めっき方法で使用する場合、被覆浴に由来する残留元素を最終的に含有する可能性がある。コーティングは、供給されたインゴット由来の不純物、又は被覆浴中の鋼要素の通過に起因する不純物で汚染されている可能性がある。
【0025】
好ましくは、プレス硬化鋼部品の合金化コーティングは、5.0~14重量%の間、例えば、7.0~12.0重量%の間の亜鉛を含む。
【0026】
好ましくは、プレス硬化鋼部品の合金化コーティングは、0.1~6.0重量%のケイ素、例えば、2.0~6.0重量%の間のケイ素を含む。
【0027】
好ましくは、プレス硬化鋼部品の合金化コーティングは、1.0~4.0重量%のマグネシウムを含む。
【0028】
有利には、プレス硬化鋼部品の合金化コーティングは、40~60重量%の間の鉄を含む。鉄は、供給されたインゴットから、又は、被覆浴中の鋼要素の通過及びオーステナイト化処理中の鋼から生じる。
【0029】
好ましくは、合金化コーティングは、金属間化合物層FeAl及び相互拡散層Fe-Si-Alを含む。
【0030】
有利には、金属コーティングの微細組織は、ZnMg相若しくはMgSi相又はその両方を含む。
【0031】
金属コーティングは一般に、30μm以下又はさらには25μm以下であり、3μm又はさらには5μm以上である厚さを有する。
【0032】
前述したように、2つの要素2、3は、プレス硬化鋼部品3の被覆面がアルミニウムをベースとする要素2と少なくとも部分的に接触するように組み立てられる。好ましい実施形態では、組立は、特に、図1に示される例に位置する組立体域4における2つの要素の接着結合、溶接、密封、クリンピング、クリンチング(clinching)又はリベットによる固定によって行うことができる。
【0033】
例えば、溶接は、スポット溶接、レーザアブレーション溶接又はアーク溶接によって行うことができる。
【0034】
このようなクリンピングは、要素2が要素3を包むように配置されている図1に示されるように、他方の周囲に要素の1つを単純に折り畳むことからなることができる。当業者に知られている任意の他の種類の機械的組立を行うことはもちろん可能である。
【0035】
また、接着剤又は構造シーラントを利用して、要素2、3の一方又は他方が受ける機械的応力が他方の要素3、2に移されるような組立を可能にする構造接着によって、本発明によるパネルを組み立てることも可能である。接着剤及び/又はシーラントの層は非常に薄く(一般に5mm未満、又は1mm未満でさえ、200μm未満でさえある)、このような接着した組立は、単純な機械的組立と同様に2つの要素2、3に接触することになると考えられる。
【0036】
組立体の頑健性を高めるために、構造接着及び機械的組立を組み合わせることは非常に明らかに可能である。
【0037】
本発明はまた、以下の工程、
A. 表面の少なくとも一方の上に、重量パーセントで0.1~20.0%のケイ素、0~10%の鉄、0.1~25.0%の亜鉛、0.1~6.0%のマグネシウムを含み、残余は、アルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素を含むプレコーティングでプレコートされた鋼板を提供し、
B. プレコート鋼板を切断してブランクを得、
C. ブランクをオーステナイト化処理して鋼中に完全オーステナイト系微細組織を得、
D. ブランクをプレスツール内に移し、
E. ブランクを熱間成形し、
F. ブランクを冷却して、表面の少なくとも一方の上に、ケイ素、鉄、亜鉛、任意にマグネシウムを含み、残余は、アルミニウム、不可避の不純物であり、及び場合によりSb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni又はBiの中から選択される1種以上の追加の元素を含む合金化コーティングを備えたプレス硬化鋼部品(3)を得、
G. 表面の少なくとも一方の上に該合金化コーティングを備えたプレス硬化部品をアルミニウムをベースとする要素と組み立てること、
を含む、本発明による組立体の製造方法に関する。
【0038】
例えば、工程A)において、鋼板は、溶融めっきによって、物理蒸着によって、又は電着によって、プレコートされ得る。好ましくは、鋼板は、溶融めっきによってプレコートされる。
【0039】
その後、工程B)において本発明によるプレコーティングでプレコートされた鋼板を切断し、ブランクを得る。
【0040】
好ましくは、工程C)において、オーステナイト化処理は、800~1100℃の間、より好ましくは800~1000℃の間、有利には880~930℃の間のオーステナイト化温度で、非保護雰囲気下で、炉内のブランクに施される。有利には、前記ブランクは、1~12分間、好ましくは3~9分間の滞留時間tmの間維持される。熱間成形前の熱処理中に、コーティングは、ケイ素、鉄、亜鉛、任意にはマグネシウムを含み、残余はアルミニウムであり、腐食、摩耗、摩損及び疲労に対して高い耐性を有する合金層を形成する。鋼はプレコーティングに鉄を拡散させる。
【0041】
工程E)では、例えば、600~900℃の間の温度で、ブランクを熱間成形ツール内に移し、熱間成形する。熱間成形は、ホットスタンピング又は圧延成形である。好ましくは、ブランクはホットスタンピングされる。
【0042】
工程F)では、次いで、部品は、熱間成形ツール内で、又は特定の冷却ツール内への移動後に冷却される。
【0043】
好ましくは、工程G)において、プレス硬化鋼部品(3)を、前記アルミニウムをベースとする要素(2)に、接着結合によって、溶接によって、密封によって、クリンピングによって、クリンチングによって、又はリベットによる固定によって結合させる。
【0044】
自動車用途の場合は、リン酸処理後、部品をe-コーティング浴に浸す。通常、リン酸塩層の厚さは1~2μmの間であり、e-コーティング層の厚さは15~25μmの間であり、好ましくは20μm以下である。電気泳動層は、腐食に対するさらなる保護を保証する。
【0045】
e-コーティング工程の後、他の塗料層、例えば、塗料のプライマーコート、ベースコート層及びトップコート層を堆積させることができる。
【0046】
部品にe-コーティングを施す前に、部品を予め脱脂し、リン酸処理して、電気泳動の接着性を保証する。
【0047】
本発明は、本発明による少なくとも1つの組立体1を含む車両用のプレス硬化鋼部品に関する。
【0048】
本発明によるプレス硬化鋼部品に関する発明は、フロントビーム、リアバンパービーム、ドア補強材、防風縦型補強材、Bピラー補強材、床及び屋根補強材、屋根又はダッシュパネル横材である。
【0049】
本発明は、少なくとも前記プレス硬化鋼部品を含む車両に関する。
【0050】
最後に、本発明は、プレス硬化鋼部品又は車両の製造のための本発明による組立体の使用に関する。
【0051】
本発明による組立体の使用を通して得られる性能の向上を強調する観点から、実施形態のいくつかの具体例を、従来技術に基づく組立体と比較して詳述する。
【実施例
【0052】
表1にまとめたように、Usibor(R)製の鋼板を、様々な組成の亜鉛又はアルミニウム合金で被覆し、両側とも20μmの均一な厚さとした。次にこのような鋼板を5分間900℃でプレス硬化し、表2に記載の合金化組成を有する部品を得た。次に、アルミニウムAA6061製のパネル及びそれらの被覆プレス硬化部品を用いて、組立体試料を作成した。
【0053】
アルミニウムA6061製のパネル及び被覆プレス硬化鋼部品を、規格SEP1160に従い、組立域に120μmの間隙を残して、粘着テープで接合した。次いで、パネルの縁部を電気ワイヤで一緒に結合して、電気-ガルバニック結合を作成した。組立域にはコーティングは存在しなかった。
【0054】
アルミニウムパネル及びプレス硬化鋼部品の組立体試料をVDA233-102試験に供した。この試験は、試料を一連の処理サイクルに供し、各サイクルを1週間継続し、サブサイクルA、B及びCを各24時間ずつ連続させるものである。
- サイクルA:35℃で塩水噴霧ミストの存在下に置くことによる3時間の処理を含むサイクル、
- サイクルB:25~50℃の間で変化する温度、70~95%の間で変化する相対湿度で、塩水噴霧ミストによる処理のない24時間のサイクル、
- サイクルC:-15~50℃の間で変化する温度、70~95%の間で変化する相対湿度で、塩水噴霧ミストによる処理のないサイクル。
【0055】
使用した生理食塩液は1重量%の塩化ナトリウムを含む水溶液である。
【0056】
各サイクルの終了時に、第1の試料を、試料の全表面にわたるレーザ三角測量マッピングによってアルミニウム元素の腐食エッチングの深さの測定に供し、続いて、マイクロメートル単位の最大観測値を抜き出した。
【0057】
6サイクル目と12サイクル目の結果を要約して表3に示し、サイクル毎の詳細な結果を図2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
5分間、900℃でプレス硬化後、以下の表2にまとめた組成の合金化コーティングにより鋼部品を被覆した。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
本発明による試験例3は、試験例1及び2と比較して、耐食性の高い改善を示す。
図1
図2