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特許7292420ペリクルのデマウント方法、及び、ペリクルのデマウント前処理装置
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  • 特許-ペリクルのデマウント方法、及び、ペリクルのデマウント前処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ペリクルのデマウント方法、及び、ペリクルのデマウント前処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20230609BHJP
【FI】
G03F1/62
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021564031
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046071
(87)【国際公開番号】W WO2021117816
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019225699
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 彰
(72)【発明者】
【氏名】高村 一夫
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206527(JP,A)
【文献】特開平07-120931(JP,A)
【文献】特開2011-095453(JP,A)
【文献】特開平04-237055(JP,A)
【文献】特開2007-304491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体を準備する工程と、
前記積層体における前記ペリクル膜上に、粘着層を形成する工程と、
前記粘着層が形成された前記積層体における前記フォトマスクから、少なくとも前記ペリクル膜及び前記粘着層をデマウントするデマウント工程と、
を含
前記粘着層を形成する工程は、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、又はディップコーティング法により、前記粘着層を形成する、ペリクルのデマウント方法。
【請求項2】
前記粘着層を形成する工程は、スプレーコーティング法により、前記粘着層を形成する、請求項1に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項3】
前記粘着層が、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エチレン酢酸ビニル共重合体、オレフィン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ゴム系粘着剤、及び、スチレン系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤を含む、請求項1又は請求項2に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項4】
前記積層体が、前記フォトマスクと前記ペリクル枠との間に、マスク接着層を更に備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項5】
前記積層体を第1積層体とした場合に、
前記デマウント工程が、
前記粘着層が形成された前記第1積層体における前記フォトマスク側に前記ペリクル枠を残したまま、前記ペリクル膜及び前記粘着層をデマウントすることにより、前記フォトマスク、前記マスク接着層、及び前記ペリクル枠を含む第2積層体を得ることと、
前記第2積層体を熱処理することと、
前記第2積層体における前記フォトマスクから前記ペリクル枠をデマウントすることと、
を含む、請求項4に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項6】
前記デマウント工程の前に、前記積層体を熱処理する工程を更に含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項7】
前記ペリクル枠の外周面に、凹部及び切り欠きの少なくとも一方が設けられている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項8】
前記積層体に、前記ペリクル膜及び前記ペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項9】
前記粘着層を形成する工程の後であって前記デマウント工程の前に、前記粘着層が形成された前記積層体における前記粘着層上に保護フィルムを粘着させる工程を更に含み、
前記デマウント工程は、前記保護フィルムが粘着された前記積層体における前記フォトマスクから、少なくとも、前記保護フィルム、前記粘着層、及び前記ペリクル膜をデマウントする、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のペリクルのデマウント方法。
【請求項10】
フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体を準備する工程と、
前記積層体における前記ペリクル膜上に、粘着層を形成する工程と、
前記粘着層が形成された前記積層体における前記フォトマスクから、少なくとも前記ペリクル膜及び前記粘着層をデマウントするデマウント工程と、
を含む、ペリクルのデマウント方法における前記粘着層を形成する工程を実施するためのペリクルのデマウント前処理装置であって、
前記積層体が、前記ペリクル膜が上側となり前記フォトマスクが下側となる向きに載置される載置部と、
前記載置部に載置された前記積層体における前記ペリクル膜上に、粘着剤溶液を吐出するための吐出部と、
を備える、
ペリクルのデマウント前処理装置。
【請求項11】
前記吐出部における吐出方式が、スプレー方式であり、
スプレーコーティング法によって前記粘着剤溶液を塗布して前記粘着層を形成する、請求項10に記載のペリクルのデマウント前処理装置。
【請求項12】
前記載置部が、載置された前記積層体を回転させる回転機能を有し、
スピンコーティング法によって前記粘着剤溶液を塗布して前記粘着層を形成する、請求項10に記載のペリクルのデマウント前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペリクルのデマウント方法、及び、ペリクルのデマウント前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化及び微細化は、年々加速している。
例えば、現在では、エキシマ露光にて線幅45nm程度のパターンが形成されているが、近年では、半導体デバイスのさらなる微細化に伴い、線幅32nm以下のパターンの形成が求められている。このような微細加工は、従来のエキシマ露光では対応が難しい。そこで、露光光をより短波長のEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光に替えることが検討されている。
【0003】
EUV光は、あらゆる物質に吸収されやすい特性を有する。露光光としてEUV光を用いるフォトリソグラフィー(以下、「EUVリソグラフィー」ともいう)では、反射光学系を用いて露光を行う。具体的には、露光パターンが反映されたフォトマスク(例えばレチクル等)によってEUV光を反射させ、反射光としてのEUV光によってレジストを露光する。
フォトリソグラフィー工程において、フォトマスクに異物が付着していると、EUV光が異物に吸収されることにより、EUV光が散乱するため、所望のパターンに露光されない場合がある。そのため、フォトマスクのEUV光照射面側にペリクルをマウント(即ち、装着)させてフォトマスクを保護している。
上記ペリクルの構成は、フォトマスクのEUV光照射面を保護するためのペリクル膜と、このペリクル膜を支持するペリクル枠と、を含む構成となっている。
【0004】
フォトマスクにマウントされているペリクルは、塵埃等による汚染、光による劣化等を被る場合がある。この場合、ペリクルの張り替えを行う必要を生じる場合があり、そのために、フォトマスクにマウントされているペリクルをデマウントする(即ち、脱着する)必要を生じる場合がある。
フォトマスクからペリクルをデマウントする従来の方法として、例えば、特許文献1に記載のペリクルのデマウント方法が知られている。
特許文献1には、フォトマスクに配置されたペリクルの少なくともペリクル膜をシートと密着させ、上記ペリクルを上記フォトマスクからデマウントする、ペリクルのデマウント方法が開示されている。
【0005】
特許文献1:特開2016-206527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、フォトマスクの汚染の抑制に優れるペリクルのデマウント方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
<1> フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体を準備する工程と、
前記積層体における前記ペリクル膜上に、粘着層を形成する工程と、
前記粘着層が形成された前記積層体における前記フォトマスクから、少なくとも前記ペリクル膜及び前記粘着層をデマウントするデマウント工程と、
を含む、ペリクルのデマウント方法。
<2> 前記粘着層を形成する工程は、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、又はディップコーティング法により、前記粘着層を形成する、<1>に記載のペリクルのデマウント方法。
<3> 前記粘着層を形成する工程は、スプレーコーティング法により、前記粘着層を形成する、<1>に記載のペリクルのデマウント方法。
<4> 前記粘着層が、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エチレン酢酸ビニル共重合体、オレフィン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ゴム系粘着剤、及び、スチレン系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<5> 前記積層体が、前記フォトマスクと前記ペリクル枠との間に、マスク接着層を更に備える、<1>~<4>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<6>前記積層体を第1積層体とした場合に、
前記デマウント工程が、
前記粘着層が形成された前記第1積層体における前記フォトマスク側に前記ペリクル枠を残したまま、前記ペリクル膜及び前記粘着層をデマウントすることにより、前記フォトマスク、前記マスク接着層、及び前記ペリクル枠を含む第2積層体を得ることと、
前記第2積層体を熱処理することと、
前記第2積層体における前記フォトマスクから前記ペリクル枠をデマウントすることと、
を含む、
<5>に記載のペリクルのデマウント方法。
<7> 前記デマウント工程の前に、前記積層体を熱処理する工程を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<8> 前記ペリクル枠の外周面に、凹部及び切り欠きの少なくとも一方が設けられている、<1>~<7>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<9> 前記積層体に、前記ペリクル膜及び前記ペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている、<1>~<8>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<10> 前記粘着層を形成する工程の後であって前記デマウント工程の前に、前記粘着層が形成された前記積層体における前記粘着層上に保護フィルムを粘着させる工程を更に含み、
前記デマウント工程は、前記保護フィルムが粘着された前記積層体における前記フォトマスクから、少なくとも、前記保護フィルム、粘着層、及び前記ペリクル膜をデマウントする、
<1>~<9>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載のペリクルのデマウント方法における前記粘着層を形成する工程を実施するためのペリクルのデマウント前処理装置であって、
前記積層体が、前記ペリクル膜が上側となり前記フォトマスクが下側となる向きに載置される載置部と、
前記載置部に載置された前記積層体における前記ペリクル膜上に粘着剤を吐出するための吐出部と、
を備える、
ペリクルのデマウント前処理装置。
<12> 前記吐出部における吐出方式が、スプレー方式であり、
スプレーコーティング法によって前記粘着剤を塗布して前記粘着層を形成する、
<11>に記載のペリクルのデマウント前処理装置。
<13> 前記載置部が回転機能を有し、
スピンコーティング法によって前記粘着剤を塗布して前記粘着層を形成する、
<11>に記載のペリクルのデマウント前処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、フォトマスクの汚染の抑制に優れるペリクルのデマウント方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2A】本開示のペリクルのデマウント方法において、粘着層を形成する工程により、積層体におけるペリクル膜上に、粘着層が形成された様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2B図2Aに示される粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、ペリクル膜及び粘着層をデマウントした様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3】本開示のペリクルのデマウント方法において、粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、デマウント工程により、ペリクル枠、ペリクル膜、及び粘着層をデマウントした様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4A】ペリクル膜及びペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている態様の積層体の一例を示す概略平面図である。
図4B】ペリクル膜及びペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている態様の積層体の一例を示す概略断面図である。
図5A】外周面に凹部が設けられている態様のペリクル枠を含む積層体の一例を示す概略平面図である。
図5B】外周面に凹部が設けられている態様のペリクル枠を含む積層体の一例を示す概略断面図である。
図5C】外周面に切り欠きが設けられている態様のペリクル枠を含む積層体の一例を示す概略断面図である。
図6】本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の別の一例を模式的に示す概略断面図である。
図7】本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の更に別の一例を模式的に示す概略断面図である。
図8】本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の更に別の一例を模式的に示す概略断面図である。
図9】本開示の実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置の一例を概念的に示す概略断面図である。
図10】本開示の実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置の別の一例を概念的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本明細書において、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光とは、波長5nm~30nmの光を指す。EUV光の波長は、波長5nm~13.5nmが好ましい。
本明細書において、EUV光、及び、EUV光よりも波長が短い光を総称し、「EUV光等」ということがある。
【0012】
本明細書において、「ペリクル」とは、
ペリクル枠と、
ペリクル枠の厚さ方向の一端面側に支持されたペリクル膜と、
を含む部材を意味する。
「ペリクル」の態様は、
ペリクル膜がペリクル枠の厚さ方向の一端面側に直接(即ち、他の要素を介さずに)支持されている態様(図1参照)であってもよいし、
ペリクル膜がペリクル枠の厚さ方向の一端面側に、他の要素(例えば、ペリクル膜接着層、ペリクル膜支持枠、支持枠接着層、等)を介して支持されている態様であってもよい。
本明細書において、「ペリクルのデマウント方法」とは、ペリクルがマウントされたフォトマスクから、少なくともペリクル膜をデマウントする(即ち、脱着する)方法を意味する。
「ペリクルのデマウント方法」の概念には、
ペリクルがマウントされたフォトマスクにペリクル枠を残したまま、ペリクル膜をデマウントする方法と、
ペリクルがマウントされたフォトマスクから、ペリクル膜及びペリクル枠の両方(即ち、ペリクル全体)をデマウントする方法と、
の両方が包含される。
また、「ペリクルのデマウント方法」の概念には、ペリクル膜のみ又はペリクル膜及びペリクル枠の両方と、その他の要素(例えば、粘着層、保護フィルム等)と、をデマウントする方法も包含される。
また、「ペリクルのデマウント方法」の概念には、ペリクルを破壊しながらフォトマスクから脱着する方法も包含される。
【0013】
〔ペリクルのデマウント方法〕
本開示のペリクルのデマウント方法は、
フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体を準備する工程と、
積層体におけるペリクル膜上に、粘着層を形成する工程と、
粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、少なくともペリクル膜及び粘着層をデマウントするデマウント工程と、
を含む。
【0014】
ペリクル膜は、厚さが極めて薄い膜である。例えば、EUVリソグラフィーにおいて使用されるペリクル膜は、厚さがナノメートルオーダーの値となる。このため、フォトマスクからペリクルをデマウントする際、ペリクル膜の破損(破壊の概念を含む。以下同じ。)が生じやすく、ペリクル膜の破損によって生じたペリクル膜片により、フォトマスクが汚染される場合がある。特に、ペリクル膜の自立部分(即ち、ペリクル枠の内周面によって形成される開口部上に位置し、ペリクル枠によって支持されていない部分)は破損しやすい。
かかる問題に関し、本開示のペリクルのデマウント方法では、フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体におけるフォトマスクからペリクル膜をデマウントする前に、積層体におけるペリクル膜上に粘着層を形成し、次いで、粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、少なくともペリクル膜及び粘着層をデマウントする。これにより、デマウントの際にペリクル膜が破損した場合においても、ペリクル膜の破損によって生じたペリクル膜片が粘着層に粘着することで結着され、これにより、ペリクル膜片の飛散が抑制される。その結果、ペリクル膜片の飛散に起因する、フォトマスクの汚染が抑制される。
本開示のペリクルのデマウント方法では、デマウントの前に、予め、ペリクル膜上に粘着層を形成する点で、特許文献1に記載のペリクルのデマウント方法(即ち、フォトマスクに装着されたペリクルの少なくともペリクル膜をシートと密着させ、上記ペリクルを上記フォトマスクからデマウントする方法)と相違する。本開示のペリクルのデマウント方法では、上記相違点により、特許文献1に記載のペリクルのデマウント方法と比較して、ペリクル膜片の飛散、及び、ペリクル膜片の飛散に起因するフォトマスクの汚染を抑制できる。
【0015】
以下、本開示の一例について、適宜、図面を参照しながら説明する。
但し、本開示は、以下の図面等の具体例に限定されることはない。
各図面に共通の要素については、同一の符号を付し、重複した説明を省略することがある。
また、図面では、構造を見やすくするために、隠れ線の一部を省略することがある。
【0016】
図1は、本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図1に示されるように、本一例に係る積層体は、フォトマスク105と、ペリクル枠103と、ペリクル膜102と、をこの順の配置で備える。
本一例に係る積層体は、フォトマスク105に対し、ペリクル膜102及びペリクル枠103を含むペリクル101をマウントすることによって得られる。
ペリクル枠103は、その厚さ方向の一端面の側にペリクル膜102を支持している。言い換えれば、ペリクル膜102のうち、平面視でペリクル枠103に重なる部分は、ペリクル枠103によって支持されている。ペリクル膜102のうち、平面視で、ペリクル枠103の内周面によって確定される開口部に重なる部分は支持されておらず、自立部分(即ち、膜が下地上に形成されているのではなく、膜単独で存在している部分)となっている。
【0017】
図2Aは、本開示のペリクルのデマウント方法において、粘着層を形成する工程により、積層体におけるペリクル膜上に、粘着層が形成された様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2Aに示される、フォトマスク205、ペリクル枠203、及びペリクル膜202の各々は、図1に示される、フォトマスク105、ペリクル枠103、及びペリクル膜102の各々と実質的に同一である。
図2Aに示されるように、粘着層を形成する工程では、積層体のペリクル膜202上に、粘着層200が形成される。
図2Bは、図2Aに示される粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、ペリクル膜及び粘着層をデマウントした様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2Bに示されるように、この一例に係るデマウント工程では、図2Aに示される粘着層が形成された積層体におけるフォトマスク205から、ペリクル膜202及び粘着層200がデマウントされる。その後、必要に応じ、フォトマスク205からペリクル枠203もデマウントされる。
【0018】
図3は、本開示のペリクルのデマウント方法において、粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、デマウント工程により、ペリクル枠、ペリクル膜、及び粘着層をデマウントした様子の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3に示す一例は、図2Bに示す一例に対する変形例である。
図3に示される、フォトマスク305、ペリクル枠303、及びペリクル膜302の各々は、図2Bに示される、フォトマスク205、ペリクル枠203、及びペリクル膜202の各々と実質的に同一である。
図3に示されるように、この一例に係るデマウント工程では、粘着層300が形成された積層体におけるフォトマスク305から、ペリクル枠303、ペリクル膜302、及び粘着層300がデマウントされる。
【0019】
以下、本開示のペリクルのデマウント方法に含まれ得る各工程について、より詳細に説明する。
【0020】
<積層体を準備する工程>
積層体を準備する工程は、フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体を準備する工程である。
積層体を準備する工程は、上記積層体を製造する工程であってもよいし、予め製造された上記積層体を単に準備するだけの工程であってもよい。
積層体は、例えば、フォトマスク上に、ペリクル枠及びペリクル膜を含むペリクル(詳細には、ペリクル枠と、ペリクル枠の厚さ方向の一端面側に支持されたペリクル膜と、を含むペリクル)をマウント(即ち、装着)することにより、製造できる。
【0021】
(ペリクル膜)
本工程で準備する積層体は、ペリクル膜を備える。
ペリクル膜としては、公知のペリクル膜を用いることができる。
ペリクル膜に含まれる材料としては特に制限はなく、有機系材料であっても、無機系材料であっても、有機系材料と無機系材料との混合材料であってもよい。
有機系材料としては、フッ素系ポリマー等が挙げられる。
無機系材料としては、結晶シリコン(例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、等)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
ペリクル膜は、上記材料を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0022】
ペリクル膜の構成は、単層構成であっても、二層以上からなる構成であってもよい。
ペリクル膜の厚さ(二層以上からなる場合には総厚)は、2nm~200nmであることが好ましく、2nm~100nmであることがより好ましく、2nm~70nmであることが更に好ましく、2nm~50nmであることが特に好ましい。ペリクル膜の厚さの下限は、5nm又は10nmであってもよい。
ペリクル膜の構成については、例えば、特開2014-021217号公報、国際公開第2015/174412号等の公知のペリクル膜の構成を適宜参照することができる。
【0023】
(ペリクル枠)
本工程で準備する積層体は、ペリクル枠を備える。
ペリクル枠としては、枠形状を有する部材である公知のペリクル枠を用いることができる。
ペリクル枠の材質としては、ペリクル枠に用いられる通常の材質を適用することができる。
ペリクル枠の材質として、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、ステンレス、シリコン、シリコン合金、鉄、鉄系合金、炭素鋼、工具鋼、セラミックス、金属-セラミックス複合材料、樹脂等が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が、軽量かつ剛性の面からより好ましい。
【0024】
また、ペリクル枠は、その表面に保護膜を有していてもよい。
保護膜としては、露光雰囲気中に存在する水素ラジカルおよびEUV光に対して耐性を有する保護膜が好ましい。
保護膜としては、例えば、酸化被膜が挙げられる。酸化被膜は、陽極酸化等の公知の方法によって形成することができる。また、酸化被膜は、黒色系染料によって着色されていてもよい。ペリクル枠が黒色系染料によって着色された酸化被膜を有する場合には、ペリクル枠上の異物の検出がより容易となる。
ペリクル枠の構成については、例えば、特開2014-021217号公報、特開2010-146027号公報等の公知のペリクル枠の構成を適宜参照することができる。
【0025】
ペリクル枠の外周面には、凹部及び切り欠きの少なくとも一方が設けられていることが好ましい。これにより、フォトマスクからペリクル枠をよりデマウントしやすい。例えば、凹部又は切り欠きにペリクル枠ハンドリング用の把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、フォトマスクからペリクル枠を容易にデマウントすることができる。
ペリクル枠の外周面における凹部又は切り欠きは、それぞれ、1つのみ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。凹部が複数設けられている場合、複数の凹部の各々の形状は同一であってもよいし異なっていてもよい(切り欠きについても同様である)。
【0026】
図5Aは、外周面に凹部が設けられている態様のペリクル枠を含む積層体の一例を示す概略平面図であり、図5Bはこの一例を示す概略断面図である。
図5A及び図5Bに示されるように、この一例に係る積層体は、フォトマスク505と、ペリクル枠503及びペリクル膜502を含むペリクル501と、を備える。この積層体では、フォトマスク505、ペリクル枠503、及びペリクル膜502が、この順に配置されている。この積層体には、更に、ペリクル膜502上に、粘着層500が形成されている。
ペリクル枠503の外周面のうち、ペリクル枠503を平面視した場合の四隅のそれぞれの近傍には、凹部509が設けられている。凹部509は、ペリクル枠の外周面を起点とし、ペリクル膜502の面に対して平行方向に延びている。
この一例における積層体では、例えば、凹部509にペリクル枠ハンドリング用の把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、フォトマスク505からペリクル枠503を容易にデマウントすることができる。
【0027】
図5Cは、図5Bに示される積層体の変形例であり、外周面に切り欠きが設けられている態様のペリクル枠を含む積層体の一例を示す概略断面図である。
図5Cに示す積層体の構造は、凹部509が切り欠き510に変更されていること以外は、図5Bに示す積層体の構造と同様である。
この一例における積層体では、例えば、切り欠き510にペリクル枠ハンドリング用の把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、フォトマスク505からペリクル枠503を容易にデマウントすることができる。
【0028】
また、ペリクル枠には、ペリクル枠の外周面から内周面までを貫通する貫通孔が設けられていてもよい。この貫通孔は、例えば、積層体の外部と、積層体の内部(即ち、ペリクル枠の内周面、ペリクル膜、及びフォトマスクによって囲まれた空間)と、を通気する通気口として機能する。
【0029】
また、ペリクル枠には、ペリクル枠の厚さ方向を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。これにより、フォトマスクからペリクル枠をよりデマウントしやすい。例えば、貫通孔にペリクル枠ハンドリング用の把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、フォトマスクからペリクル枠を容易にデマウントすることができる。
【0030】
また、積層体には、ペリクル膜及びペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。これにより、フォトマスクからペリクル膜及びペリクル枠をよりデマウントしやすい。例えば、貫通孔にペリクル枠ハンドリング用の把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、フォトマスクからペリクル膜及びペリクル枠を容易にデマウントすることができる。
【0031】
図4Aは、ペリクル膜及びペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている態様の積層体の一例を示す概略平面図であり、図4Bはこの一例を示す概略断面図である。
図4A及び図4Bに示されるように、この一例に係る積層体は、フォトマスク405と、ペリクル枠403及びペリクル膜402を含むペリクル401と、を備える。この積層体では、フォトマスク405、ペリクル枠403、及びペリクル膜402が、この順で配置されている。
この積層体には、ペリクル膜402及びペリクル枠403を厚さ方向に貫通する貫通孔409が設けられている。
この積層体には、更に、ペリクル膜402上(詳細には、貫通孔409以外の領域)に、粘着層400が形成されている。
【0032】
(ペリクル膜接着層)
本工程で準備する積層体は、ペリクル膜とペリクル枠との間に、ペリクル膜接着層を更に備えてもよい。
かかる態様における積層体は、例えば、ペリクル膜、ペリクル膜接着層、及びペリクル枠を含むペリクルを、フォトマスクにマウントすることによって作製することができる。
ここで、ペリクル膜接着層とは、ペリクル膜とペリクル枠との間に介在し、ペリクル膜とペリクル枠とを接着させるための層を意味する。
ペリクル膜接着層は、公知の接着剤を含むことができる。
ペリクル膜接着層に含まれ得る接着剤としては、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、フッ素含有シリコーン系接着剤、フッ素含有エーテル系接着剤等が挙げられる。
【0033】
(フォトマスク)
本工程で準備する積層体は、フォトマスクを備える。
フォトマスクとしては、光が照射される光照射面を有するものであれば特に制限はない。
フォトマスクとしては、例えば、支持基板と、この支持基板上に積層された反射層と、反射層上に形成された吸収体層と、を含むフォトマスクを用いることができる。
フォトマスクでは、反射層及び吸収体層が設けられた側の面が、光照射面となる。光照射面に対しEUV光等の光が照射された場合、光照射面における吸収体層が、照射された光の少なくとも一部を吸収し、光の残部が反射層によって反射される。反射された光が、感応基板(例えば、フォトレジスト膜付き半導体基板)に照射される。これにより、感応基板上に、所望の像が形成される。
反射層としては、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との多層膜が好適に挙げられる。
吸収体層は、クロム(Cr)、窒化タンタル等、EUV光等の吸収性の高い材料であることが好ましい。
【0034】
(マスク接着層)
本工程で準備する積層体は、フォトマスクとペリクル枠との間に、マスク接着層を更に備えてもよい。
かかる態様の積層体は、例えば、ペリクル膜、ペリクル枠、及びマスク接着層をこの順の配置で備えるペリクルを、マスク接着層とフォトマスクとが接する向きで、フォトマスクにマウントすることによって作製できる。
ここで、マスク接着層とは、フォトマスクとペリクル枠との間に介在し、フォトマスクとペリクル枠とを接着させるための層を意味する。
マスク接着層は、公知の接着剤を含むことができる。
マスク接着層に含まれ得る接着剤としては、例えば、両面粘着テープ、シリコーン樹脂系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0035】
本工程で準備する積層体は、上記マスク接着層と上記ペリクル膜接着層とを両方備えていてもよい。
【0036】
図6は、本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の別の一例(即ち、図1に示した一例とは別の一例)を模式的に示す概略断面図である。
図6に示されるように、本一例に係る積層体は、フォトマスク605と、マスク接着層607と、ペリクル枠603と、ペリクル膜接着層606と、ペリクル膜602と、をこの順の配置で備える。
本一例における積層体は、例えば、マスク接着層607、ペリクル枠603、ペリクル膜接着層606、及びペリクル膜602をこの順の配置で備えるペリクル601を用いて作製できる。
【0037】
図7は、本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の更に別の一例を模式的に示す概略断面図である。
図7に示す一例に係る積層体は、ペリクル膜接着層606とペリクル枠603との間にペリクル膜支持枠608及び支持枠接着層609(ここで、ペリクル膜支持枠608はペリクル膜接着層606に接し、支持枠接着層609はペリクル枠603に接する)が介在していること以外は、図6に示した一例に係る積層体の構成と同様である。
本一例における積層体は、例えば、マスク接着層607、ペリクル枠603、支持枠接着層609、ペリクル膜支持枠608、ペリクル膜接着層606、及びペリクル膜602をこの順の配置で備えるペリクル611を用いて作製できる。
【0038】
図8は、本開示のペリクルのデマウント方法において、積層体を準備する工程で準備する積層体の更に別の一例を模式的に示す概略断面図である。
図8に示す一例に係る積層体の構成は、ペリクル膜接着層606が存在しないこと以外は、図7に示した一例に係る積層体の構成と同様である。
本一例における積層体は、例えば、マスク接着層607、ペリクル枠603、支持枠接着層609、ペリクル膜支持枠608、及びペリクル膜602をこの順の配置で備えるペリクル612を用いて作製できる。
【0039】
以上の図6図8に示すように、本開示におけるペリクルの範囲には、
ペリクル膜がペリクル枠の厚さ方向の一端面側に直接(即ち、他の要素を介さずに)支持されている態様(図1参照)だけでなく、
ペリクル膜がペリクル枠の厚さ方向の一端面側に、他の要素(例えば、ペリクル膜接着層、ペリクル膜支持枠、支持枠接着層、等)を介して支持されている態様(図6図8)も包含される。
【0040】
<粘着層を形成する工程>
粘着層を形成する工程は、上記積層体におけるペリクル膜上に、粘着層を形成する工程である。
粘着層を形成する工程は、粘着層の形成の際にペリクル膜に加わる負荷をより低減する観点から、
スプレーコーティング法、スピンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、又はディップコーティング法により、粘着層を形成する工程であることが好ましく、
スプレーコーティング法又はスピンコーティング法により、粘着層を形成する工程であることがより好ましく、
スプレーコーティング法により、粘着層を形成する工程であることが特に好ましい。
【0041】
スプレーコーティング法による粘着層の形成は、公知のスプレーコーティング装置を用いて行うことができる。
スプレーコーティング装置としては、例えば、スプレーガン、超音波スプレーコーティング装置、二流体スプレーコーティング装置、一流体スプレーコーティング装置等が挙げられる。
【0042】
粘着層は、粘着剤を少なくとも1種含むことが好ましい。
フォトマスクの汚染の抑制性の観点から、粘着層は、
シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エチレン酢酸ビニル共重合体、オレフィン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びスチレン系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤を含むことが好ましく、
アクリル系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、及びゴム系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤を含むことがより好ましい。
粘着剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
シリコーン系粘着剤としては、シリコーン樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。シリコーン系粘着剤としては、特に制限はなく、付加反応型シリコーン系粘着剤、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤、縮合型シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
これらの中でも、ペリクル膜を粘着剤で保持する観点から、保持力の大きい付加硬化型シリコーン系粘着剤が好ましい。
本開示において、粘着剤の主成分とは、粘着剤の全質量に対して、50質量%以上を占める成分を意味する。
【0044】
アクリル系粘着剤は、アクリル樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。アクリル系粘着剤に含まれるアクリル樹脂としては、特に制限はなく、例えば、アルキル(メタ)アクリレート系粘着剤、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、アクリル系粘着剤は、アクリル系ゴム樹脂を主成分とする粘着剤であってもよい。アクリル系ゴム樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体が挙げられる。
【0045】
ウレタン系粘着剤としては、ポリウレタン樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。ウレタン系粘着剤に含まれるポリウレタンとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン等が挙げられる
【0046】
ポリアミド系粘着剤は、ポリアミド樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。ポリアミド系粘着剤に含まれるポリアミド樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)等が挙げられる。
【0047】
ポリエステル系粘着剤としては、ポリエステル樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。
上記ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0048】
オレフィン系粘着剤は、オレフィン樹脂を主成分とする粘着剤であることが好ましい。 上記オレフィンとしては、特に制限はなく、オレフィンを単独重合してなる重合体、又はオレフィンと他の単量体とを重合してなる共重合体であってもよい。オレフィンとしては、炭素数が2~6のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン、ヘキセンが挙げられる。共重合体に用いる他の単量体としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
【0049】
ゴム系粘着剤はゴムを主成分として含む粘着剤であることが好ましく、例えば、天然ゴム系粘着剤、及び、合成ゴム系粘着剤が好適に挙げられる。合成ゴム系粘着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR、SBS)、スチレン-イソプレン共重合体(SIS)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、クロロプレン重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体(ブチルゴム)などが挙げられる。
これらの中でも、ゴム系粘着剤としては、粘着層を形成しやすく、かつ、ペリクル膜を保持しやすい観点から、合成ゴム系粘着剤であることが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体を主成分とする粘着剤であることがより好ましい。
【0050】
ポリブタジエン系粘着剤は、上記ゴム系粘着剤以外の粘着剤であり、ポリブタジエンを主成分とする粘着剤であることが好ましい。ポリブタジエンとしては、ブタジエンより形成される構造単位含むものであれば、特に制限はなく、ホモポリマーであってもよいし、ブタジエン以外の単量体との共重合体であってもよい。
【0051】
スチレン系粘着剤は、上記ゴム系粘着剤以外の粘着剤であり、ポリスチレン樹脂を主成分とする粘着剤である。ポリスチレン樹脂としては特に制限はなく、スチレン系単量体(例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン)の単独重合体、及び、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な単量体と、の共重合体が挙げられる。
スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、ビニル単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ブタジエン)が挙げられる。
【0052】
フォトマスクの汚染の抑制性の観点から、粘着剤のガラス転移温度としては、-60℃~-20℃であることが好ましく、-60℃~-40℃であることがより好ましい。
【0053】
フォトマスクの汚染の抑制性の観点から、粘着剤のベースポリマーの重量平均分子量としては、10,000~1,500,000であることが好ましく、50,000~1,000,000であることがより好ましい。また、重合平均分子量の異なるベースポリマーを混合してもよい。
【0054】
ペリクル膜上に粘着剤を付与して粘着層を形成する際の粘着剤の付与量(例えば、スプレーコーティング法により粘着剤を塗布する際の塗布量)は、乾燥後の付与量で、1g/m~1,000g/mであることが好ましく、50g/m~1,000g/mであることがより好ましい。
【0055】
粘着層は、ペリクル膜上に、粘着剤及び溶剤を含む粘着剤溶液を付与して形成してもよい。
粘着剤溶液における溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。
粘着剤溶液における溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
粘着剤溶液における溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
粘着剤溶液中の固形分濃度(即ち、粘着剤溶液の全量に対する粘着剤の含有量)は、好ましくは1質量%~50質量%程度である。
【0057】
粘着剤溶液の粘度(25℃)としては、ペリクル膜と粘着剤との密着性をより向上させる観点から、1mPa・s~1,000mPs・sであることが好ましく、100mPa・s~800mPs・sであることがより好ましい。
粘着剤溶液の粘度は、上記溶剤の種類及び/又は量により適宜調整することができる。
【0058】
粘着層の厚さとしては、1μm以上1mm以下であることがより好ましく、50μm以上1mm以下であることが更に好ましい。
上記粘着層の厚みは、公知の方法によって調整できる。
例えば、スプレーコーティング法によって粘着層を形成する場合、スプレーコーティング装置(例えばスプレーガン)から噴射される粘着剤溶液の噴射量を調整することにより、粘着層の厚さを調整することができる。
粘着層の厚さは、積層体を垂直方向に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡により確認することで求められる。
【0059】
粘着層は、格子構造の溝を有していてもよい。粘着層が格子構造の溝を有することで、例えば、後述する保護フィルムを粘着層上に積層させた場合、ペリクル膜と保護フィルムとを貼り合わせる時に、ペリクル膜と保護フィルムとの間に入り込んだ気体が、格子構造から外部へ排出されやすくなり、ペリクル膜の破裂を防ぐことができる。
【0060】
粘着層を形成する工程を実施するための装置(例えば、後述のペリクルのデマウント前処理装置)は、ペリクル膜上に吐出された粘着剤がペリクル膜以外の部分に付着することを防止するためのカバーを備えてもよい。
【0061】
<デマウント工程>
デマウント工程は、粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、少なくともペリクル膜及び粘着層をデマウントする工程である。
ペリクル膜及び粘着層をデマウントする方法には、特に制限はない。デマウントは、把持具を用いて行ってよいし、後述の保護フィルムを用いて行ってもよい。
【0062】
デマウント工程では、ペリクル膜をデマウントする際、ペリクル膜が破損してもよい。ペリクル膜が破損した場合においても、破損によって生じたペリクル膜片が粘着層に粘着して結着されるので、ペリクル膜片の飛散、ひいてはペリクル膜片の飛散に起因するフォトマスクの汚染が抑制される。
【0063】
デマウント工程では、
粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、ペリクル枠、ペリクル膜、及び粘着層をデマウントしてもよいし、
ペリクル枠をフォトマスク側に残したまま、ペリクル膜及び粘着層をデマウントしてもよい。
デマウント工程において、粘着層が形成された積層体におけるフォトマスクから、ペリクル枠、ペリクル膜、及び粘着層をデマウントする場合、
ペリクル枠、ペリクル膜、及び粘着層を、一度にまとめてデマウントしてもよいし、
まず、ペリクル枠をフォトマスク側に残したままペリクル膜及び粘着層をデマウントし、次いでペリクル枠をデマウントしてもよい。
【0064】
(デマウント工程中の熱処理)
積層体が、フォトマスクとペリクル枠との間に、マスク接着層を更に備える場合において、この積層体(即ち、フォトマスクと、マスク接着層と、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体)を第1積層体とした場合、
デマウント工程は、
粘着層が形成された第1積層体におけるフォトマスク側にペリクル枠を残したまま、ペリクル膜及び粘着層をデマウントすることにより、フォトマスク、マスク接着層、及びペリクル枠を含む第2積層体を得ることと、
第2積層体を熱処理することと、
第2積層体におけるフォトマスクからペリクル枠をデマウントすることと、
を含んでもよい。
この態様によれば、第2積層体を熱処理することにより、マスク接着層における接着力を低下させることができるので、ペリクル枠のデマウントをより容易に行うことができる。
上記熱処理の際、第2積層体全体を熱処理してもよいし、第2積層体の一部(例えば接着層を含む部分)を熱処理してもよい。
熱処理のための装置には、特に制限はなく、ヒーター、ホットプレート、オーブン等を用いることができる。
熱処理の温度としては、例えば50℃~140℃が挙げられる。
熱処理の時間としては、例えば10秒~300秒が挙げられる。
【0065】
<保護フィルムを粘着させる工程>
本開示の一実施形態に係るペリクルのデマウント方法は、粘着層を形成する工程の後であってデマウント工程の前に、粘着層が形成された積層体における粘着層上に保護フィルムを粘着させる工程を更に含んでもよい。
この場合、上記デマウント工程は、保護フィルムが粘着された積層体におけるフォトマスクから、少なくとも、保護フィルム、粘着層、及びペリクル膜をデマウントする工程であることが好ましい。この態様のデマウント工程は、保護フィルム、粘着層、ペリクル膜、及びペリクル枠をまとめてデマウントする工程であるか、又は、まず、保護フィルム、粘着層、及びペリクル膜をデマウントし、次いでペリクル枠をデマウントする工程であることがより好ましい。
ペリクルのデマウント方法が保護フィルムを粘着させる工程を含む場合には、ペリクル膜が破損した場合においても、破損によって生じたペリクル膜片が粘着層によって結着され、かつ、粘着層を介して保護フィルムに保持される。これにより、ペリクル膜片の飛散及びペリクル膜片の飛散に起因するフォトマスクの汚染がより抑制される。
【0066】
本工程において、「粘着層が形成された積層体における粘着層上に保護フィルムを粘着させる」とは、粘着層が形成された積層体における粘着層と、保護フィルムと、を粘着させることを意味する。この際、粘着層に対して保護フィルムを押し付けて両者を粘着させてもよいし、保護フィルムに対して粘着層を押し付けて両者を粘着させてもよいし、粘着層と保護フィルムとを互いに押し付けて両者を粘着させてもよい。
【0067】
保護フィルムとしては、特に制限はないが、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、等が好適に挙げられる。
保護フィルムは、透明または半透明であると粘着層とペリクル膜間の気泡の有無を確認しながら張り付けやすくなるため、透明または半透明な保護フィルムであることが好ましいが、上記保護フィルムは、透明または半透明な保護フィルムに限られるものではない。
保護フィルムの厚みとしては、特に制限はないが、適度な強度を有する観点から、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0068】
保護フィルムは、粘着剤と貼り合わせたときに入り込んだ気体を外部へ排出しやすくする観点から、格子状の凹構造を有していてもよい。
【0069】
保護フィルムを粘着させる工程は、保護フィルムと基板とを含む保護フィルム付き基板を用い、粘着層が形成された積層体における粘着層上に保護フィルム付き基板における保護フィルムを粘着させる工程であってもよい。
保護フィルム付き基板における基板としては、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0070】
保護フィルムを粘着させる工程において、粘着層上に保護フィルムを粘着させる方法には特に制限はないが、例えば;
保護フィルムに外力を加えて粘着させる方法;
保護フィルムに外力を加えず、自重、分子間力、静電気力等の引力によって粘着させる方法;
保護フィルムと粘着層とを近接させた状態で減圧環境下に配置することにより粘着させる方法;
積層体における、ペリクル膜、ペリクル枠の内周面、及びフォトマスクによって囲まれた空間内に空気を送り込んでこの空間の圧力を陽圧にし、これにより、粘着層付きのペリクル膜を保護フィルムの方向に膨らませて粘着させる方法;
等が挙げられる。
【0071】
粘着層付きのペリクル膜を保護フィルムの方向に膨らませて粘着させる場合、粘着層付きのペリクル膜を膨らませることにより、ペリクル膜を意図的に破損させてもよい。ペリクル膜を意図的に破損させた場合においても、破損によって生じたペリクル膜片は、粘着層によって結着され、かつ、粘着層を介して保護フィルムに保持される。このため、ペリクル膜片の飛散及びペリクル膜片の飛散に起因するフォトマスクの汚染がより抑制される。
【0072】
また、粘着層、ペリクル膜、及びペリクル枠を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられている積層体(例えば、前述の図4A及び図4Bにおける積層体)における粘着層上に保護フィルムを粘着させる場合、保護フィルム中、上記貫通孔と重なる位置には、保護フィルムを貫通する貫通孔が設けられていてもよい。これにより、保護フィルムが粘着された積層体において、保護フィルム、粘着層、ペリクル膜、及びペリクル枠を貫通する貫通孔(以下、「貫通孔X」ともいう)が形成される。貫通孔Xに把持具を差し込むか又は引っ掛けることにより、保護フィルムが粘着された積層体から、保護フィルム、粘着層、ペリクル膜、及びペリクル枠を容易にデマウントすることができる。
【0073】
<積層体を熱処理する工程>
本開示のペリクルのデマウント方法は、デマウント工程の前(より好ましくは、積層体を準備する工程であって粘着層を形成する工程の前)に、積層体(即ち、フォトマスク、ペリクル枠、及びペリクル膜を含む積層体)を熱処理する工程を更に含んでもよい。
積層体を熱処理する工程を含む態様は、積層体が、ペリクル膜接着層及びマスク接着層の少なくとも一方を含む場合に特に効果的である。この場合、積層体を熱処理することにより、ペリクル膜接着層及びマスク接着層の少なくとも一方による接着力を低下させることができるので、ペリクル膜の破損を抑制しつつ、デマウントをより容易に行うことができる。
上記熱処理の際、積層体全体を熱処理してもよいし、積層体の一部(例えば、ペリクル膜接着層及びマスク接着層の少なくとも一方を含む部分)を熱処理してもよい。
熱処理のための装置には、特に制限はなく、ヒーター、ホットプレート、オーブン等を用いることができる。
熱処理の温度としては、例えば50℃~140℃が挙げられる。
熱処理の時間としては、例えば10秒~300秒が挙げられる。
【0074】
本開示のペリクルのデマウント方法は、必要に応じて、上述した工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
【0075】
以下、本開示のペリクルのデマウント方法の具体的な実施形態である実施形態1~3を示す。但し、本開示のペリクルのデマウント方法は、以下の実施形態には限定されない。
【0076】
<実施形態1>
実施形態1について、図6を参照しながら説明する。
図6については前述のとおりである。
実施形態1では、まず、積層体を準備する工程により図6に示した積層体と同様の構成を有する積層体を準備し、この積層体に対し粘着層を形成する工程を実施してペリクル膜602上に粘着層を形成し、粘着層付きの積層体を得る(不図示)。
次に、粘着層付きの積層体を熱処理する工程を実施する(不図示)。これにより、積層体における、マスク接着層及びペリクル膜接着層における接着力を低下させる。
次に、デマウント工程により、まず、熱処理後の粘着層付き積層体から粘着層(不図示)及びペリクル膜602をデマウントし、次いで、マスク接着層607、ペリクル枠603、及びペリクル膜接着層606をデマウントする。
実施形態1において、粘着層を形成する工程と、積層体を熱処理する工程と、の順序は上述した順序に対し逆の順序であってもよい。
【0077】
<実施形態2>
実施形態2は、以下の点以外は実施形態1と同様である。
実施形態2は、粘着層を形成する工程の後であってデマウント工程の前に、粘着層付きの積層体における粘着層上に保護フィルムを粘着させる工程を更に含む。
実施形態2におけるデマウント工程は、保護フィルムが粘着された積層体におけるフォトマスクから、まず、保護フィルム、粘着層、及びペリクル膜をデマウントし、次いで、マスク接着層、ペリクル枠、及びペリクル膜接着層をデマウントする。
実施形態2において、積層体を熱処理する工程は、省略されていてもよい。
【0078】
<実施形態3>
実施形態3は、以下の点以外は実施形態1と同様である。
実施形態3では、積層体を熱処理する工程は実施せず、その代わりに、後述するデマウント工程中の熱処理を実施する。
実施形態3は、粘着層を形成する工程の後であってデマウント工程の前に、粘着層が形成された第1積層体(即ち、フォトマスクと、マスク接着層と、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える第1積層体のペリクル膜上に粘着層が形成されてなる積層体)における粘着層上に保護フィルムを粘着させる工程を更に含む。
実施形態3におけるデマウント工程は、
まず、保護フィルムが粘着された第1積層体におけるフォトマスクから、保護フィルム、粘着層、及びペリクル膜をデマウントして、フォトマスク、マスク接着層、ペリクル枠、及びペリクル膜接着層を含む第2積層体を得、
次いで、前述したデマウント工程中の熱処理を実施し(即ち、第2積層体の熱処理を実施し)、
次いで、第2積層体におけるフォトマスクから、マスク接着層、ペリクル枠、及びペリクル膜接着層をデマウントする。
【0079】
〔ペリクルのデマウント前処理装置〕
次に、上述した本開示のペリクルのデマウント方法における粘着層を形成する工程を実施するために好適な、ペリクルのデマウント前処理装置の実施形態について説明する。
ここで、
「ペリクルのデマウント前処理」とは、上述した本開示のペリクルのデマウント方法における粘着層を形成する操作を意味し、
「ペリクルのデマウント前処理装置」とは、上述した「ペリクルのデマウント前処理」を行うための装置を意味する。
【0080】
本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置は、
本開示のペリクルのデマウント方法における積層体(即ち、フォトマスクと、ペリクル枠と、ペリクル膜と、をこの順の配置で備える積層体)が、ペリクル膜が上側となりフォトマスクが下側となる向きに載置される載置部と、
載置部に載置された積層体におけるペリクル膜上に粘着剤溶液を吐出するための吐出部と、
を備える。
【0081】
本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置により、上述した本開示のペリクルのデマウント方法における粘着層を形成する工程を実施することができる。詳細には、ペリクル膜上に粘着剤溶液を吐出して塗布することにより、粘着層を形成することができる。
従って、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置によれば、上述した本開示のペリクルのデマウント方法と同様に、ペリクル膜片によるフォトマスクの汚染を抑制できるという効果が奏される。
【0082】
本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置では、ペリクル膜が上側となりフォトマスクが下側となる向きに載置された積層体のペリクル膜上に粘着剤溶液を吐出して粘着層を形成するので、液だれ等に起因する粘着層のムラが抑制される。かかる効果をより効果的に得る観点から、載置部には、ペリクル膜の膜面が水平となるように、積層体が載置されることが好ましい。
【0083】
本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置は、必要に応じ、その他の要素を備えていてもよい。
その他の要素としては、例えば、粘着剤溶液の飛散防止用のカバーが挙げられる。
粘着剤溶液の飛散防止用のカバーとしては、例えば、ペリクル膜におけるペリクル枠上の部分を覆い、かつ、ペリクル膜における自立部分を露出する形態のカバーを用いることができる。かかる形態のカバーによれば、粘着剤溶液の飛散を防止しつつ、ペリクル膜の自立部分に粘着層を形成させることができる。
また、その他の要素として、ペリクルのデマウント用部材(例えば、ペリクル枠ハンドリング用の把持具、梃子、等)も挙げられる。この場合、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置により、ペリクルのデマウント前処理(即ち、粘着層の形成)と、ペリクルのデマウントと、の両方を行うことができる。
【0084】
以下、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置の具体例を2例示すが、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置は以下の2例には限定されない。
【0085】
図9は、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置の一例を概念的に示す概略断面図である。
詳細には、図9に示す一例は、スプレーコーティング法によって粘着剤溶液を塗布して粘着層を形成する装置の一例である。
図9に示されるように、本一例に係るペリクルのデマウント前処理装置800は、
チャンバー804中に、
前述した積層体101(図1参照)が、ペリクル膜が上側(即ち、重力方向Gとは反対側)となりフォトマスクが下側(即ち、重力方向G側)となる向きに載置される載置部802と、
載置部に載置された積層体におけるペリクル膜上に粘着剤溶液を吐出するための、スプレーノズル806(スプレー方式の吐出部)と、
を備える。
【0086】
載置部802は、積層体を固定するための固定機能(例えば、真空チャック等)を有していてもよい。
この一例では、チャンバー804外の粘着剤供給源(不図示)から矢印X1の方向に粘着剤溶液が供給され、チャンバー804内に導入されたスプレーノズル806の吐出孔から粘着剤溶液がスプレー方式によって吐出される。吐出された粘着剤溶液が、載置部802に載置された積層体におけるペリクル膜上に塗布される(スプレーコーティング)。これにより、ペリクル膜上に粘着層が形成される。
この一例では、スプレーノズル806からの粘着剤溶液の吐出方向が水平方向となっている。このように吐出方向が水平方向であるか、又は、水平方向よりも上向きである場合には、粘着剤溶液の吐出によるペリクル膜の損傷がより抑制される。
【0087】
図10は、本実施形態に係るペリクルのデマウント前処理装置の別の一例を概念的に示す概略断面図である。
詳細には、図10に示す一例は、スピンコーティング法によって粘着剤溶液を塗布して粘着層を形成する装置の一例である。
図10に示されるように、本一例に係るペリクルのデマウント前処理装置900は、
チャンバー904中に、
前述した積層体101(図1参照)が、ペリクル膜が上側(即ち、重力方向Gとは反対側)となりフォトマスクが下側(即ち、重力方向G側)となる向きに載置される載置部902と、
載置部に載置された積層体におけるペリクル膜上に粘着剤溶液を吐出するための吐出部906と、
を備える。
【0088】
載置部902は、積層体を固定するための固定機能(例えば、真空チャック等)を有していてもよい。
この一例では、載置部902が回転機能を有している。この回転機能により、積層体がペリクル膜の膜面に対して水平な平面で回転することにより、ペリクル膜上に吐出された粘着剤溶液がペリクル膜上に塗布される(スピンコーティング)。
【0089】
この一例における吐出部906の吐出方向は、下向きとなっている。吐出部906の吐出位置は、ペリクル膜の中央付近となっている。
但し、吐出部906の吐出方向及び吐出位置は、この一例には限定されない。
【実施例
【0090】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
〔実施例1〕
以下の各工程を実施することにより、ペリクルのデマウントを行った。以下、詳細を示す。
【0092】
<積層体を準備する工程>
SiN膜ペリクル膜と、
一端面の側でSiN膜ペリクル膜を支持するペリクル枠と、
SiN膜ペリクル膜とペリクル枠との間に介在するペリクル膜接着層と、
ペリクル枠の、SiN膜ペリクル膜を支持している端面とは反対側の端面に設けられたマスク接着層と、
を含むペリクルを準備した。
ペリクル枠の外周面には、凹部としてのハンドリング穴が設けられている。このハンドリング穴は、梃子を用いたデマウントの際の作用点として機能する。
ペリクル枠には、外周面から内周面までを貫通する、通気用の貫通孔も設けられている。
上記ペリクルを、遮光膜層を含むフォトマスクの遮光膜層側に、フォトマスクの遮光膜層側とペリクルにおけるマスク接着層とが接する向きで、98Nの荷重で30秒間押しつけた。これにより、フォトマスクにペリクルをマウントさせ、積層体を得た。
【0093】
<粘着層を形成する工程>
上記積層体のペリクル膜の自立部分(即ち、ペリクル枠の内周面によって囲まれる開口部上の部分)上に、スチレンブタジエンゴムを主成分とするゴム系粘着剤溶液(3M社製、製品名:3Mスプレーのり77)をスプレーコーティングし、厚さ約100μmの粘着層を形成し、粘着層付きの積層体を得た。
粘着層の形成の際、ペリクル膜の自立部分以外に粘着剤が付着しないようにするために、ペリクル膜の自立部分とほぼ同じ大きさの開口部を有するPETフィルムによって、ペリクル膜の自立部分以外をマスキングした。
粘着層の形成後、マスキング用のPETフィルムを除去した。
【0094】
<保護フィルムを粘着させる工程>
保護フィルムとしての厚さ100μmの透明PETフィルムをガラス平板の上に重ねて固定し、保護フィルム付き基板としてのPETフィルム付きガラス平板を準備した。
次に、粘着層付きの積層体を、粘着層が最上層となる配置にて、Z軸駆動する精密ステージ(以下、「Z駆動ステージ」ともいう。)の上に載せた。
次に、Z駆動ステージに載せた粘着層付きの積層体の上方(即ち、粘着層の更に上方)にPETフィルム付きガラス平板を、PETフィルム付きガラス平板におけるPETフィルムが下側となるように(即ち、粘着層とPETフィルムとが対向するように)固定した。この際、粘着層とPETフィルムとが平行となるように調整した。
次に、Z駆動ステージを動かして粘着層付きの積層体を上方に垂直移動させ、粘着層付きの積層体における粘着層を、PETフィルム付きガラス平板におけるPETフィルムに接触させた。この際、PETフィルムと粘着剤層との界面に気泡の巻き込みがないことを、PETフィルム付きガラス平板のガラス平板側から目視で確認した。
次に、積層体におけるペリクル枠の上記貫通孔(即ち、通気口)に、窒素ガス導入用の配管を接続した。この配管を通じ、ペリクル枠の内周面とペリクル膜とフォトマスクとによって囲まれた閉空間内に、窒素ガスを導入し、閉空間の圧力を約5kPaの陽圧にした。これにより、粘着層付きの積層体におけるペリクル膜を上方に膨らませ、このペリクル膜上の粘着層と、PETフィルム付きガラス平板におけるPETフィルムと、を粘着させた。
【0095】
<デマウント工程>
次に、Z駆動ステージを動かして粘着層付きの積層体を下方に垂直移動させ、PETフィルム付きガラス平板におけるPETフィルムから、粘着層付きの積層体におけるフォトマスク側を引き離し、これにより、粘着層付きの積層体におけるペリクル膜を強制的に破膜させた。この操作により、粘着層付きの積層体から、ペリクル膜及び粘着層をデマウントした。
次に、ペリクル膜及び粘着層のデマウントによって残った第2積層体(即ち、フォトマスクとマスク接着層とペリクル枠とを含む積層体)をホットプレート上に、フォトマスクとホットプレートとが接触する向きに載置し、第2積層体を約70℃で5分間加熱した。これにより、マスク接着層の接着力を低下させた。
次に、ペリクル枠の外周面に設けられたハンドリング穴を作用点とし、梃子を用いて、第2積層体からペリクル枠をデマウントした。
【0096】
以上により、粘着層付きの積層体におけるフォトマスクからペリクル(即ち、ペリクル膜及びペリクル枠を含むペリクル)をデマウントした。
【0097】
<フォトマスクの汚染の確認>
次に、ペリクルがデマウントされたフォトマスクの表現を目視で観察したところ、異物の付着(即ち、汚染)は確認されなかった。
【0098】
〔比較例1〕
実施例1における積層体を準備する工程と同様の操作を行い、実施例1における積層体と同様の積層体(即ち、フォトマスクと、マスク接着層と、ペリクル枠と、ペリクル膜接着層と、ペリクル膜と、をこの順の配置で含む積層体)を準備した。粘着層を形成する工程及び保護フィルムを粘着させる工程は実施しなかった。
次に、上記積層体をホットプレート上に、フォトマスクとホットプレートとが接触する向きに載置し、積層体を約70℃で5分間加熱した。これにより、マスク接着層の接着力を低下させた。
次に、ペリクル枠の外周面に設けられたハンドリング穴を作用点とし、梃子を用いて、積層体からペリクル(即ち、ペリクル枠及びペリクル膜を含むペリクル)をデマウントした。このデマウントの操作において、ペリクル膜の自立部分が破壊されたことが確認された。
ペリクルのデマウント後のフォトマスクの表面を目視で観察したところ、フォトマスクの表面に、ペリクル膜の破壊によりペリクル膜片が付着していること(即ち、フォトマスクが汚染されていること)が確認された。
【0099】
2019年12月13日に出願された日本国特許出願2019-225699号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10