(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】集合基板及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230609BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H05K1/02 S
H05K3/00 X
H05K3/00 P
(21)【出願番号】P 2022034819
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】行政 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長岡 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勇人
(72)【発明者】
【氏名】石倉 広大
(72)【発明者】
【氏名】水谷 勇太
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3105790(JP,U)
【文献】特開2007-294640(JP,A)
【文献】特開2000-208898(JP,A)
【文献】特開平09-214136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に絶縁層を介して回路パターンを有
し前記回路パターンの表面に白色系のめっきが施されている複数の回路基板を集合した集合基板であって、
前記複数の回路基板の前記ベースを構成する板状のベース材と、
前記ベース材上に設けられ前記複数の回路基板の前記絶縁層を構成する
白色の絶縁層材と、
前記絶縁層材上に設けられ前記複数の回路基板の複数の前記回路パターンが集合した集合回路パターンと、
前記回路パターン上に設けられ
二値化により前記絶縁層に対して画像認識可能な色調を有する着色保護材により形成された着色保護膜と、
前記絶縁層材上に
前記回路パターンと同材質の導電材で設けられた画像認識用のターゲットマークと、
前記ターゲットマーク上に設けられ前記着色保護材で形成されて前記絶縁層材に対して画像認識を可能とする色調を有する着色膜と、
を備えた集合基板。
【請求項2】
請求項1の集合基板であって、
前記着色膜は、前記ターゲットマークの表面に設けられ、該表面と同一の平面形状を有する、
集合基板。
【請求項3】
請求項1又は2の集合基板であって、
前記着色保護材は、ソルダーレジストである、
集合基板。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項の集合基板
を製造するための製造方法であって、
前記回路パターンの着色保護膜及び前記ターゲットマークの着色膜を前記着色保護材により共に形成する着色膜形成工程を含む、
集合基板
の製造方法。
【請求項5】
請求項
4の集合基板を製造するための製造方法であって、
金属板材に前記絶縁層材を介して前記集合回路パターン及び複数のターゲットマークを導電材により共に形成する回路形成工程を含む、
集合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース上に絶縁層を介して回路パターンを有する複数の回路基板を集合した集合基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の集合基板としては、特許文献1に記載された金属ベース基板がある。この金属ベース基板は、複数の回路基板を集合させて形成されると共に、回路基板を分割するためのV字溝を備えている。
【0003】
V字溝は、例えば金属ベース基板の両面からVカット加工により形成され、金属ベース基板から回路基板を人手により容易に折り曲げて分割できるようにしている。
【0004】
このV字溝は、品質の高い回路基板を得るために正確に形成することが肝要である。このため、集合基板は、V字溝の形成位置を画像認識により検出するターゲットマークを備えることがある。
【0005】
このターゲットマークの画像認識により、V字溝の形成位置を検出して、V字溝を正確に形成することが可能となる。
【0006】
しかし、ターゲットマークは、集合基板の捨て板部等において絶縁層上に設けているため、色調によっては絶縁層に対して画像認識性が低下するという問題があった。
【0007】
かかる問題は、絶縁層上に設けられる他のターゲットマークにおいても同様に生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、絶縁層に対するターゲットマークの画像認識性が低下する点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベース上に絶縁層を介して回路パターンを有し前記回路パターンの表面に白色系のめっきが施されている複数の回路基板を集合した集合基板であって、前記複数の回路基板の前記ベースを構成する板状のベース材と、前記ベース材上に設けられ前記複数の回路基板の前記絶縁層を構成する白色の絶縁層材と、前記絶縁層材上に設けられ前記複数の回路基板の複数の前記回路パターンが集合した集合回路パターンと、前記回路パターン上に設けられ二値化により前記絶縁層に対して画像認識可能な色調を有する着色保護材により形成された着色保護膜と、前記絶縁層材上に前記回路パターンと同材質の導電材で設けられた画像認識用のターゲットマークと、前記ターゲットマーク上に設けられ前記着色保護材で形成されて前記絶縁層材に対して画像認識を可能とする色調を有する着色膜と、を備えた集合基板を提供する。
【0011】
本発明は、前記集合基板を製造するための製造方法であって、前記回路パターンの着色保護膜及び前記ターゲットマークの着色膜を前記着色保護材により共に形成する着色膜形成工程を含む集合基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の集合基板は、着色膜により絶縁層を構成する白色の絶縁層材に対するターゲットマークの画像認識性を向上させることができる。しかも、着色膜は、回路パターンの着色保護膜と同材質の着色保護材で備えられたため、構造を簡単にすることができる。
【0013】
本発明の集合基板の製造方法は、ターゲットマークに回路パターンの着色保護膜と同材質の着色保護材により着色膜を簡単に形成することができる。しかも、ターゲットマークに対する着色膜のずれにより、共に形成される着色保護膜の回路パターンに対するずれを認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る集合基板の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の集合基板の一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1の集合基板のターゲットマークを拡大して示す概略平面図、
図3(B)は、比較例に係る集合基板のターゲットマークを拡大して示す概略平面図である。
【
図4】
図4は、実施例に係る回路基板の概略断面図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る集合基板の製造工程を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に続く集合基板の製造工程のフローチャートである。
【
図7】
図7(A)~
図7(E)は、
図5の製造工程を示す概略断面図であり、それぞれパターン形成、エッチング、アルカリ剥離、ソルダーレジスト形成、及びシルク印刷を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、絶縁層に対するターゲットマークの画像認識性を、簡単な構造の集合基板により実現した。
【0016】
集合基板1は、ベース11a上に絶縁層13aを介して回路パターン17を有する複数の回路基板5を集合したものである。この集合基板1は、ベース材11と、絶縁層材13と、集合回路パターン17と、着色保護膜19と、ターゲットマーク23と、着色膜9とを備える。
【0017】
ベース材11は、複数の回路基板5のベース11aを構成する。絶縁層材13は、ベース材11上に設けられ、複数の回路基板5の絶縁層13aを構成する。集合回路パターン17は、絶縁層材13上に設けられ、複数の回路基板5の複数の回路パターン17が集合したものである。着色保護膜19は、回路パターン17上に設けられ着色保護材により形成される。ターゲットマーク23は、絶縁層材13上に設けられた画像認識用のものである。着色膜9は、ターゲットマーク23上に設けられ着色保護材で形成されて、絶縁層材13に対して画像認識を可能とする色調を有している。
【0018】
ターゲットマーク23は、回路パターン17と同材質の導電材で共に形成されたものであってもよい。
【0019】
着色膜9は、ターゲットマーク23の表面に設けられ、この表面と同一の平面形状を有してもよい。
【0020】
着色保護材は、ソルダーレジストとしてもよい。
【0021】
集合基板1の製造方法は、回路パターン17の着色保護膜19及びターゲットマーク23の着色膜9を着色保護材により形成する着色膜形成工程を含む。
【0022】
また、集合基板1の製造方法では、ベース材11に絶縁層材13を介して集合回路パターン17及び複数のターゲットマーク23を導電材により形成する回路形成工程を含んでもよい。
【実施例】
【0023】
[集合基板]
図1は、本発明の実施例に係る集合基板の平面図である。
図2は、
図1の集合基板の一部を拡大して示す概略断面図である。
図3(A)は、
図1の集合基板のターゲットマークを拡大して示す概略平面図、
図3(B)は、比較例に係る集合基板のターゲットマークを拡大して示す概略平面図である。
図4は、実施例に係る回路基板の概略断面図である。
【0024】
なお、以下の説明において、層方向とは、集合基板の積層方向を意味する。層交差方向とは、集合基板の面に沿った方向(面方向)を意味する。上とは、集合基板を水平に置いた時の重力方向の上を意味する。下とは、集合基板を水平に置いた時の重力方向の下を意味する。
【0025】
図1及び
図2のように、集合基板1は、周囲の捨て板部Waの内側に集合した複数の回路基板5を備えている。集合基板1の回路基板5は、V字溝からなる分割ライン3により格子状に区画されており、分割ライン3で人手等により折り曲げることで分割可能となっている。
【0026】
本実施例では、一つのワークW上に二つの集合基板1が形成されている。ただし、ワークWに対して形成される集合基板1の数は任意である。集合基板1内の複数の回路基板5は、同一の種類だけでなく異なる種類としてもよい。
【0027】
なお、分割ライン3は、回路基板5を分割することができればよく、異なる断面形状の溝、断続的に設けたV字溝、隣接する回路基板5を部分的に切り離すスリット等で形成することも可能である。
【0028】
各集合基板1は、ベース材11上に絶縁層材13を介して集合回路パターン15が積層されて構成されている。
【0029】
ベース材11は、複数の回路基板5のベース11aを形成するためのものであり、ベース11aの個数分の大きさに、捨て板部Waを含めた大きさを有している。本実施例のベース材11は、ワークW内の二つの集合基板1のベース11aの個数分の大きさ並びに捨て板部Waの大きさの合計となっている。
【0030】
ベース材11の平面形状は、ワークWに応じて矩形形状を呈している。ただし、ワークW及びベース材11の平面形状は、円形等の他の形状にすることもできる。
【0031】
ベース材11は、金属や樹脂等によって形成することができる。ベース材11を金属で形成する場合は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、アルミニウム合金、又はステンレス等を用いることができる。この場合、ベース材11は、炭素などの非金属を更に含んでいてもよい。また、ベース材11は、クラッド材等であってもよい。
【0032】
ベース材11の層方向の厚さは、例えば1.0~3.0mmの範囲内で設定されている。
【0033】
絶縁層材13は、ベース材11の表面に積層されることで、ベース材11上に設けられている。絶縁層材13の平面形状は、ベース材11と同一である。この絶縁層材13は、複数の回路基板5の絶縁層13aを構成するものである。集合基板1において、絶縁層材13は、集合回路パターン15をベース材11から電気的に絶縁する役割を果たし、且つそれらを互いに張り合わせる接着剤としての役割も果たしている。
【0034】
絶縁層材13の層方向の厚みは、例えば100~150μmに設定されている。この絶縁層材13は、樹脂製であり、本実施例において白色を有している。ただし、材質によっては、絶縁層材13が他の色調を有することもある。絶縁層材13を構成する樹脂は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂等によって構成することができる。
【0035】
エポキシ樹脂には、例えばアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が組み合わされる。シアネート樹脂には、例えばジシアンジアミドやフェノール樹脂が硬化剤として組み合わされる。また、絶縁層材13は、熱可塑性樹脂である全芳香族ポリエステル等の液晶ポリマーやその他の熱可塑性樹脂によって構成してもよい。
【0036】
また、絶縁層材13は、無機充填材を更に含有することが好ましい。無機充填材としては、電気絶縁性に優れかつ熱伝導率の高いものが好ましく、例えば、アルミナ、シリカ、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いる。
【0037】
絶縁層材13における無機充填材の充填率は、無機充填剤の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、絶縁層材13に含有されるマトリクス樹脂の全体積を基準として85体積%以下であることが好ましく、30~85体積%がより好ましい。
【0038】
絶縁層材13は、上述したマトリックス樹脂及び無機充填材以外に、例えば、カップリング剤、分散剤等を更に含有してもよい。
【0039】
なお、絶縁層材13の材質等は、回路基板5の仕様に応じて設定でき、半硬化状態の絶縁シートを用いることもできる。
【0040】
集合回路パターン15は、絶縁層材13上に設けられ、複数の回路基板5用の後述する回路パターン17が格子状に集合して形成されている。各回路パターン17は、絶縁層材13の表面に形成されている。
【0041】
この回路パターン17は、導電材の複数の回路導体17aによるパターンを備えている。導電材は、銅箔等の回路用のものであればよい。各回路パターン17の複数の回路導体17aによるパターン構成は、回路基板5の仕様に応じて設定できる。
【0042】
回路導体17aの層方向の厚みは、例えば1.0~3.0mmの範囲で選択している。ただし、回路導体17aの層方向の厚み、材質等は、回路基板5の仕様により上記範囲外での選択も可能である。
【0043】
回路パターン17には、表面に白色系のNiめっきが施されており、絶縁層材13に対する画像処理が困難な色調を有する。この回路パターン17には、着色保護膜19が備えられている。
【0044】
着色保護膜25は、回路パターン17上に着色保護材により形成されている。このソルダーレジストによる着色保護膜25は、緑色の絶縁性の膜であり、回路パターン17を保護する。
【0045】
つまり、着色保護膜25は、回路パターン17を保護して絶縁性を保つ、ほこり、熱、湿気などから回路パターン17を守る、電子部品の実装時に不要な部分に半田が付いてショートするのを防ぐ、といった機能を奏する。
【0046】
なお、着色保護膜25は、黒色等の他の色調を有してもよく、またソルダーレジストに限らず、他の樹脂によって形成してもよい。
【0047】
着色保護膜19には、シルク印刷20が施されている。シルク印刷20は、型名、メーカー名、電子部品の位置などの情報を表示している。
【0048】
図1のように、回路パターン17毎の回路基板5は、上記のように集合基板1上で分割ライン3により格子状に区切られている。
【0049】
分割ライン3は、格子状に形成された場合において、一方向(以下、「X方向」という。)に沿った複数のX分割ライン3a及び一方向に直交する他方向(以下、「Y方向」と言う。)に沿った複数のY分割ライン3bを有する。複数のX分割ライン3aは、直線状に形成され、相互に平行であり、複数のY分割ライン3bは、直線状に形成され、相互に平行である。
【0050】
分割ライン3の端部となる位置に対応して、加工用マーク21が備えられている。なお、加工用マーク21は省略することもできる。
【0051】
分割ライン3の端部となる位置は、X方向において、X分割ライン3aの端部に直列的に隣接する位置である。Y方向においては、Y分割ライン3bの端部に直列的に隣接する位置である。この位置は、X分割ライン3aの端部のY分割ライン3b、Y分割ライン3bの端部のX分割ライン3aに接する位置又は僅かに間隔を有する位置となる。
【0052】
加工用マーク21は、ワークWの捨て板部Wa上の絶縁層材13の表面に形成されている。この加工用マーク21は、2本の短い平行線で表示され、直線状の分割ライン3が平行線の間に位置するようにV字溝の加工がなされている。加工用マーク21は、分割ライン3の位置を認識するためのものであり、加工された分割ライン3のずれ等を確認可能とする。
【0053】
加工用マーク21に対応して画像認識用のターゲットマーク23がそれぞれ備えられている。ターゲットマーク23は、絶縁層材13上に設けられている。本実施例では、ターゲットマーク23がワークWの捨て板部Wa上に位置する。ただし、ターゲットマーク23は、所定の回路基板5上に位置させることも可能である。
【0054】
このターゲットマーク23は、板部Waの絶縁層材13の表面に回路パターン17と同材質、同厚の導電材で形成されている。ただし、ターゲットマーク23の表面には、Niメッキは施されていない。また、ターゲットマーク23は、回路パターン17とは別材質で別の厚みを有することも可能である。
【0055】
かかるターゲットマーク23は、集合基板1の製造時において、画像認識により分割ライン3を形成するための位置を確定する基準となる。ターゲットマーク23の平面形状は、円形であるが、画像認識により分割ライン3を形成する際の基準となるものであればよい。この限りにおいて、ターゲットマーク23の形状や大きさは、任意に設定できる。
【0056】
ターゲットマーク23の位置も、任意に設定可能であるが、分割ライン3の形成箇所や加工用マーク21等との関係で相対的に決められている。このターゲットマーク23は、加工用マーク21の近傍に配置されるのが好ましい。加工用マーク21の近傍の位置は、分割ライン3の端部に隣接する領域である。
【0057】
ターゲットマーク23上には、
図3(A)のように、着色保護材で形成されて、絶縁層材13に対して画像認識可能な色調を有する着色膜9が設けられている。なお、
図3(B)は、比較例であり、ターゲットマーク23に回路パターン17と同様にNiメッキが施され、着色膜は備えていない。
【0058】
着色膜9は、回路基板5のソルダーレジストによる着色保護膜19と共に形成されている。つまり、着色膜9は、着色保護膜19と同材質の着色保護材で形成され、着色保護膜19と共に形成されている。これにより、着色膜9は、着色保護膜19と同一色調の緑色で、ターゲットマーク23の表面を着色している。
【0059】
なお、着色膜9は、絶縁層材13に対してターゲットマーク23の画像認識を可能とする色調であればよく、色調の設定は任意である。本実施例において、ターゲットマーク23を二値化処理による画像認識を行うため、絶縁層材13とターゲットマーク23とは、明度が離れた色調であることが好ましい。
【0060】
また、着色膜9は、ターゲットマーク23の表面全体に設けられている。つまり、着色9膜は、ターゲットマーク23の表面に設けられ、この表面と同一の平面形状を有する。ただし、着色膜9は、画像認識によりターゲットマーク23を絶縁層材13の表面に対して区別できればよいので、ターゲットマーク23の周面を囲む形状やターゲットマーク23よりも小さい形状、例えばターゲットマーク23の中心部にのみ位置する形状等にすることもできる。また、着色膜9の平面形状は、ターゲットマーク23と同一の円形であるが、他の幾何学形状としてもよい。
【0061】
本実施例では、かかるターゲットマーク23に対する予備のマーク7が絶縁層材13の表面に設定されている。予備のマーク7は、ターゲットマーク23を認識できない場合に使用されるものである。予備のマーク7は、ターゲットマーク23とは別に形成されるものであり、例えばシルク印刷20によって形成することが可能である。
【0062】
その他、捨て板部Waには、集合基板1相互間で分割するための分割マーク24、挿入方向を示す△マーク25等、各種マークが形成されている。
【0063】
かかるワークWにおいて、分割マーク24を基準に分割して各集合基板1を得ることができる。集合基板1は、上記のようにベース材11及び絶縁層材13を分割ライン3に沿って折り曲げ、分割した回路基板5を得ることができる。
【0064】
分割された回路基板5は、
図4のように、分割されたベース材11からなるベース11a上に、分割された絶縁層材13からなる絶縁層13aを介して回路パターン17を有する。
【0065】
[集合基板の製造方法]
図5は、実施例に係る集合基板の製造工程を示すフローチャートである。
図6は、
図5に続く集合基板の製造工程のフローチャートである。
図7(A)~
図7(E)は、
図5の製造工程を示す概略断面図であり、それぞれパターン形成、エッチング、アルカリ剥離、ソルダーレジスト形成、及びシルク印刷を示す。
【0066】
集合基板1の製造は、
図5、
図6の積層板製造工程S1、回路形成工程S2、成形工程S3、及び検査工程S4により実行される。
【0067】
積層板製造工程S1では、ベース材11に絶縁層材13を介して銅箔等の導電材27を積層し、それらベース材11、絶縁層材13及び導電材27を熱プレスにより一体にする。
【0068】
回路形成工程S2は、ベース材11に絶縁層材13を介して集合回路パターン15及び複数のターゲットマーク23を導電材27である回路用銅材料により形成する。本実施例の回路形成工程S2では、パターン形成S21、エッチングS22、アルカリ剥離S23、回路検査S24、ソルダーレジスト形成S25、シルク印刷S26が実行される。このうち、ソルダーレジスト形成S25は、着色膜形成工程を構成する。
【0069】
着色膜形成工程は、集合回路パターン15の着色保護膜19及びターゲットマーク23の着色膜9を着色保護材により形成する。
【0070】
パターン形成S21では、積層板製造工程S1から受けたワークWをローラー等に通し、ドライフィルム29を
図7(A)の導電材27に貼り付ける。なお、
図7(A)のドライフィルム29は、露光・現像後の状態であり、回路パターン17及びターゲットマーク23の対応部分を覆っている。
【0071】
エッチングS22では、
図7(A)の回路パターン17及びターゲットマーク23の対応部分以外で露出した導電材27が薬液等によって
図7(B)のように除去される。
【0072】
アルカリ剥離S23では、
図7(B)の回路パターン17上のドライフィルム29をアルカリ系薬液により
図7(C)のように除去する。このアルカリ剥離後には、回路パターン17及びターゲットマーク23として残った導電材27を研磨する。
【0073】
回路検査S24では、自動光学検査(AOI)によりワークWの回路のショート、オープン、傷、汚れ等の検査を行なう。
【0074】
ソルダーレジスト形成S25では、着色保護材である緑色のソルダーレジストインクで着色保護膜19の形成と共に着色膜9が形成される。つまり、ソルダーレジストインクをワークWの全面に塗布した後に露光により硬化させ、不要部分を現像して除去する。従って、着色膜9は、着色保護膜19と同材質のインクにより
図7(D)のように形成される。
【0075】
このとき、回路パターン17及びターゲットマーク23は、絶縁層材13に対して画像認識が可能な十分な色調を有するため、画像認識等を通じて正確に着色保護膜19を形成することができる。
【0076】
ただし、着色保護膜19は、画像認識精度、露光精度、ターゲットマーク23の形成精度等によりずれが生じることもある。この着色保護膜19のずれは、着色膜9のターゲットマーク23の表面に対するずれにより作業者に視認させることが可能となる。
【0077】
このように、着色膜9は、回路パターン17の着色保護膜19と同材質の着色保護材であるソルダーレジストにより設けるため、着色膜9形成の工数がかからず、生産性を大幅に向上させることができると共に構造が簡単となる。
【0078】
つまり、ターゲットマーク23を集合回路パターン15と共に形成し、着色膜9を着色保護膜1と共に形成することができ、特別な工程を設けることなく、ソルダーレジスト本来の色調を利用して絶縁層材13とは異なる色の着色膜9を簡単に形成することができる。
【0079】
シルク印刷S26では、ソルダーレジストの着色保護膜19で覆われた部分に、型名などの情報が
図7(E)のように印刷される。
【0080】
図6の成形工程S3では、回路メッキ処理S31、VカットS32、形状検査S33、分割S34が実行される。
【0081】
回路メッキ処理S31では、回路パターン17にNiメッキ等が行われる。この処理により、回路パターン17の酸化を防ぎ、半田濡れ性を高める。
【0082】
VカットS32では、
図1及び
図2のワークWのように分割ライン3をマトリクス状に形成する。このとき、ターゲットマーク23を画像認識することで分割ライン3を正確に形成することができる。特に、
図3(A)のようにターゲットマーク23は、白色系の絶縁層材13とは明確に区別可能な色調の緑色の着色膜9を表面に有している。
【0083】
このため、ターゲットマーク23は、画像認識性が向上する。本実施例では、ターゲットマーク23の二値化による画像認識において、絶縁層材13に対するコントラストを明確にできる。このため、ターゲットマーク23を確実に認識して、分割ライン3の正確な形成を行うことができる。なお、画像認識は、二値化に限れられず、他の画像認識とすることも可能である。
【0084】
一方、
図3(B)の比較例のように、ターゲットマーク23にNiメッキが施された状態では、ターゲットマーク23と絶縁層材13との色調が近似する。結果として、二値化でのターゲットマーク23の認識が困難となり、分割ライン3の形成ができなくなる。
【0085】
形状検査S33では、ワークWの回路基板5にスルーホール等の異常がないか、回路基板1の表面と外観にキズや汚れがないか等を検査し、異常があるワークWは除去される。
このとき、分割ライン3のずれ等も検査される。分割ライン3のずれは、加工用マーク21によって認識することが可能である。
【0086】
分割S34では、ワークWが分割マーク24において切断され、集合基板1毎に分割される。
【0087】
検査工程S4では、電気検査により回路導通検査や耐電圧検査等が行われ、外観検査により集合基板1の表面及び裏面の検査が行われる。外観検査後には、出荷検査が行われて出荷される。
【符号の説明】
【0088】
1 集合基板
3 V字溝
5 回路基板
9 着色膜
11 金属板材
11a 金属ベース
13 集合基板の絶縁層材
13a 回路基板の絶縁層
15 集合回路パターン
17 回路パターン
19 着色保護膜
23 ターゲットマーク
S2 回路形成工程
S21 パターン形成(回路形成工程)
S22 エッチング(回路形成工程)
S23 アルカリ剥離(回路形成工程)
S25 ソルダーレジスト形成(着色膜形成工程、回路形成工程)
S26 シルク印刷(回路形成工程)
【要約】
【課題】ターゲットマークの画像の認識性を簡単な構造により向上させることを可能にする集合基板及び製造方法を得る。
【解決手段】ベースの複数を集合して形成するためのベース材11と、ベース材11上に設けられた絶縁層材13と、絶縁層材13上に設けられ複数の回路パターン17が集合した集合回路パターン15と、回路パターン17に着色保護材により設けられた着色保護膜19と、絶縁層材13上に設けられた画像認識用のターゲットマーク23と、ターゲットマーク23上に着色保護材で設けられ絶縁層材13に対して画像認識を可能とする色調の着色膜9とを備える。
【選択図】
図2