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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230609BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
G06F3/041 460
G06F3/041 640
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022042227
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】堀内 茂浩
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3893093(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207141(US,A1)
【文献】国際公開第2017/131331(WO,A1)
【文献】特開2021-179804(JP,A)
【文献】特開2021-131812(JP,A)
【文献】国際公開第2021/036787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体と、
前記第1筐体と隣接し、前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、
前記ディスプレイの裏面を覆うように該裏面に固定された可撓性を有するシート状部材と、
を備え、
前記シート状部材には、第1方向に沿って等間隔で配置された複数の第1スリットからなる第1スリット列、および前記第1方向に直交する第2方向に沿って等間隔で配置された複数の第2スリットからなる第2スリット列が設けられ、
前記第1スリット列は複数列が前記第2方向に沿って等間隔で設けられており、
前記第2スリット列は複数列が前記第1方向に沿って等間隔で設けられており、
複数列の前記第1スリット列と複数列の前記第2スリット列とによって形成されるパターンは、前記第1スリットおよび前記第2スリットが間欠的な格子形状をなしている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記パターンは前記折曲領域を覆う箇所を除く箇所に設けられており、
前記折曲領域を覆う箇所には、前記第1筐体と前記第2筐体とが対面する縁に沿う第3方向に沿って等間隔で配置された第3スリットからなる第3スリット列が複数列設けられており、
前記第3スリット列同士の間隔は、前記第1スリット列同士の間隔および前記第2スリット列同士の間隔より狭い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記第1スリットと前記第2スリットとは交差して十字スリットを形成している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1スリットと前記第2スリットとは等しい長さであり、
複数の前記第1スリット列の間隔と複数の前記第2スリット列の間隔は等しい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
隣接する前記第1スリット列同士は前記第1スリットの配置が互い違いになっており、
隣接する前記第2スリット列同士は前記第2スリットの配置が互い違いになっている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折曲可能なディスプレイを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないタブレット型PCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、携帯時には小型化されることが望まれている。そこで、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り畳み可能に構成した電子機器が実用化されている。
【0003】
フレキシブルディスプレイは単体では強度が不足しているためにシート状部材を張り合わせることが望ましい。シート状部材は折り曲げやすくするため、および軽量化を目的として多数の孔を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-131812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなフレキシブルディスプレイはペン入力に対応したタッチパネル式である場合がある。ペン入力ではフレキシブルディスプレイとペン先との間に適度な抵抗感があると紙に筆記する場合と同様の感触が得られて好適である。また、このような抵抗感はペン先の移動方向によらず均一に得られることが望ましい。
【0006】
ところで、上記のようにシート状部材に孔が設けられている場合に、シート状部材を覆うフレキシブルディスプレイの表面をペン先で摺動させると、孔の縁の箇所を通過するときに僅かな段差を乗り越える感触がユーザに伝わり得る。シート状部材には多数の孔が設けられているが、軽量化などを目的としたものであって大きさ、形状、配置などはペンの抵抗感を実現するものにはなっていなく、不均一な段差感となってユーザに違和感を与える懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ペン入力においてユーザに好適な感触を与えることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施態様に係る電子機器は、電子機器であって、第1筐体と、前記第1筐体と隣接し、前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、前記ディスプレイの裏面を覆うように該裏面に固定された可撓性を有するシート状部材と、を備え、前記シート状部材には、第1方向に沿って等間隔で配置された複数の第1スリットからなる第1スリット列、および前記第1方向に直交する第2方向に沿って等間隔で配置された複数の第2スリットからなる第2スリット列が設けられ、前記第1スリット列は複数列が前記第2方向に沿って等間隔で設けられており、前記第2スリット列は複数列が前記第1方向に沿って等間隔で設けられており、複数列の前記第1スリット列と複数列の前記第2スリット列とによって形成されるパターンは、前記第1スリットおよび前記第2スリットが間欠的な格子形状をなしている。これにより、ペン入力においてユーザに好適な感触を与えることができる。
【0009】
前記パターンは前記折曲領域を覆う箇所を除く箇所に設けられており、前記折曲領域を覆う箇所には、前記第1筐体と前記第2筐体とが対面する縁に沿う第3方向に沿って等間隔で配置された第3スリットからなる第3スリット列が複数列設けられており、前記第3スリット列同士の間隔は、前記第1スリット列同士の間隔および前記第2スリット列同士の間隔より狭くてもよい。これにより、ディスプレイを適正方向に曲げやすくなる。
【0010】
前記第1スリットと前記第2スリットとは交差して十字スリットを形成していてもよい。
【0011】
前記第1スリットと前記第2スリットとは等しい長さであり、複数の前記第1スリット列の間隔と複数の前記第2スリット列の間隔は等しくてもよい。これにより、ペン先の移動方向によらず一層均一な間隔が得られる。
【0012】
隣接する前記第1スリット列同士は前記第1スリットの配置が互い違いになっており、隣接する前記第2スリット列同士は前記第2スリットの配置が互い違いになっていてもよい。このように、第1スリットおよび第2スリットが互い違いの配置になっていると、第1スリット列および第2スリット列の間隔を狭めて密にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、ペン先が第1向に沿う軌跡、第2方向に沿う軌跡、および第1方向と第2方向に対する斜め方向に沿う軌跡のいずれの場合であっても、第1スリットおよび第2スリットを乗り越える頻度がほぼ等しく、移動方向の違いに拘わらず均一かつ適度な抵抗感が得られる。また、このような抵抗感は紙に筆記する場合と似ており、違和感のないペン入力が可能となり、ユーザに対して好適な感触を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて積層形態とした状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器を開いて平板形態とした状態を模式的に示す平面図である。
図3A図3Aは、積層形態での電子機器の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図3B図3Bは、図3Aに示す状態から筐体間を平板形態に向かって回動させている途中の状態を示す側面断面図である。
図3C図3Cは、図3Aに示す電子機器を平板形態として状態での側面断面図である。
図4図4は、ディスプレイアセンブリの模式的な側面断面図である。
図5図5は、平板形態でのシート状部材の状態を模式的に示す平面図である。
図6図6は、シート状部材におけるディスプレイの折曲領域を覆う箇所の一部拡大平面図である。
図7図7は、シート状部材におけるディスプレイの領域RA,RBを覆う箇所に形成される第1パターンを示す図である。
図8図8は、第2パターンを示す図である。
図9図9は、第3パターンを示す図である。
図10図10は、第4パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて積層形態とした状態を示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器10を開いて平板形態とした状態を模式的に示す平面図である。図1及び図2に示すように、電子機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイアセンブリ16とを備える。本実施形態では、電子機器10として本のように折り畳み可能なタブレット型PCを例示する。電子機器10は携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0016】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、それぞれ背表紙部材14に対応する辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。背表紙部材14は、図1に示す積層形態で形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す部材である。ディスプレイアセンブリ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0017】
以下、図1及び図2に示すように、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、と呼んで説明する。
【0018】
図3Aは、積層形態での電子機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。図3Bは、図3Aに示す状態から筐体12A,12B間を平板形態に向かって回動させている途中の状態を示す側面断面図である。図3Cは、図3Aに示す電子機器10を平板形態として状態での側面断面図である。
【0019】
図1図3Cに示すように、筐体12A,12B間は、互いの隣接端部12Aa,12Ba間がY方向両端部に設けられた一対のヒンジ機構18で連結されている。図3A図3Cに示すように、ヒンジ機構18は、筐体12A,12B間を図1に示す積層形態と図2に示す平板形態とに相対的に回動可能に連結している。
【0020】
積層形態において、筐体12A,12Bは、互いに重ねて配置される。この際、ディスプレイアセンブリ16は、第1筐体12A側の領域RAと、第2筐体12B側の領域RBとが対向するように配置され、領域RA,RBの中間領域である折曲領域R1が折り曲げられた状態となる(図3A参照)。つまり折曲領域R1は、矩形シート状のディスプレイアセンブリ16の左右端部の間となる位置に設けられている。平板形態において、筐体12A,12Bは、互いに面内方向に並んで配置される。この際、ディスプレイアセンブリ16は、領域RA,RB及び折曲領域R1が面内方向に並んで配置され、全体として1枚の平板形状となる(図2及び図3C参照)。
【0021】
図3A図3Cに示すように、ディスプレイアセンブリ16は、ディスプレイ20と、シート状部材22と、を積層した構造である。
【0022】
ディスプレイアセンブリ16は、領域RAが第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域RBが第2筐体12Bに対して相対的に固定される。本実施形態の場合、領域RAは、裏面16aが第1プレート24Aで支持され、第1プレート24Aを介して第1筐体12Aと固定される。領域RBは、裏面16aが第2プレート24Bで支持され、第2プレート24Bを介して第2筐体12Bと固定される。各プレート24A,24Bは、筐体12A,12Bに対してねじ等で固定される。折曲領域R1は、筐体12A,12Bに対して相対的に移動可能な状態とされている。
【0023】
図3A図3Cに示すように、本実施形態のヒンジ機構18は、ヒンジ本体26と、第1補助プレート27Aと、第2補助プレート27Bと、を有する。
【0024】
ヒンジ本体26は、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ(図3C参照)、Y方向に延在した棒状部材である。背表紙部材14は、ヒンジ本体26の外面を覆うように配置されている。ヒンジ本体26が、そのまま背表紙部材14として機能してもよい。ヒンジ本体26には、平板形態でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸18A,18Bが支持されている。ヒンジ軸18Aは、図示しないリンク部材等を介して第1筐体12Aと連結されている。ヒンジ軸18Bは、図示しないリンク部材等を介して第2筐体12Bと連結されている。第1補助プレート27Aは、隣接端部12Aa側の端部がヒンジ本体26と回転軸で回転可能に連結されている。第2補助プレート27Bは、隣接端部12Ba側の端部がヒンジ本体26と回転軸で回転可能に連結されている。
【0025】
ヒンジ機構18は、上記構成により、筐体12A,12B間を図3Aに示す積層形態と図3Cに示す平板形態との間で回動可能に連結している。ヒンジ機構18の回動中心は、ディスプレイアセンブリ16の表面16bに一致する。ヒンジ機構18の構成は適宜変更してもよい。
【0026】
従って、図3Aに示す積層形態時、ディスプレイアセンブリ16は、領域RA,RBがプレート24A,24Bで支持される。この際、折曲領域R1は、ヒンジ本体26及び補助プレート27A,27Bで内包された状態で側面視で略ベル形状(略電球形状)となる。一方、図3Cに示す平板形態時、プレート24A,24B、ヒンジ本体26及び補助プレート27A,27Bが面内方向に並んで、それぞれの表面が面一に配置されて全体として平板となる。このため、ディスプレイアセンブリ16は、この平板上で裏面16aが支持され、1枚の平板状の大画面を形成する。なお、図2中の参照符号28は、ベゼル部材であり、ディスプレイアセンブリ16の表面16bの周縁部にある非アクティブ領域を枠状にカバー部材である。
【0027】
次に、ディスプレイアセンブリ16の具体的な構成例を説明する。図4は、ディスプレイアセンブリ16の模式的な側面断面図である。
【0028】
図4に示すように、ディスプレイアセンブリ16は、表面16b側に位置するディスプレイ20の裏面20aにシート状部材22を積層した構造である。
【0029】
ディスプレイ20は、例えば、表面16bを形成する透明な表面保護フィルムと、タッチパネル30と、液晶部材32と、裏面20aを形成する背面フィルムと、を積層した構造である。タッチパネル30は、例えばデジタイザペン等のペン入力装置によるタッチ操作と、人の指先によるタッチ操作とに対応した静電容量方式である。液晶部材32は、例えば有機ELである。ディスプレイ20は、全体として柔軟性の高いペーパー構造である。
【0030】
シート状部材22は、ディスプレイ20の裏面20aを覆うように、裏面20aに両面テープや粘着剤等で固定された可撓性を有する薄いシートであり、例えばステンレス等の金属シートに多数の第3スリット34、および多数の十字スリット36を形成したものである。シート状部材22はある程度張力を有し、ディスプレイアセンブリ16が折り曲げされた際の曲率半径を設計仕様と同様に確保するためのものである。つまり、ディスプレイアセンブリ16全体が、柔軟性を持った構造となっている。
【0031】
図5は、平板形態でのシート状部材22の状態を模式的に示す平面図である。第3スリット34は折曲領域R1に形成されており、十字スリット36はそれ以外の領域RA,RBに形成されている。第3スリット34および十字スリット36はエッチングまたはパンチングなどによって形成される。第3スリット34および十字スリット36の幅は、少なくとも電子機器10に使用するペン入力装置37のペン先の外径(例えば1mm程度)よりも小さいことが好ましい。なお、ペン入力装置37によって入力をする対象はディスプレイ20であるが、図5では理解を容易にするため該ペン入力装置37をシート状部材22上に図示している。
【0032】
図6は、シート状部材22におけるディスプレイ20の折曲領域R1を覆う箇所の一部拡大平面図である。この箇所には第3スリット34が形成されている。第3スリット34はY方向(第3方向)に沿う細いスリットであり、Y方向に沿って複数の第3スリット34が等間隔で配置されることによって第3スリット列38を形成する。各第3スリット列38における第3スリット34同士のY方向間隔は狭い。
【0033】
第3スリット列38はX方向に沿って複数列設けられている。各第3スリット列38同士のX方向間隔Xaは十分に狭く、後述する間隔Xbより狭く設定されている。隣接する第3スリット列38同士は第3スリット34の配置が互い違いになっている。第3スリット34のうち、1つおきの第3スリット列38におけるY方向両端の端部スリット34aはY方向端部まで達している。つまり、端部スリット34aは孔ではなくて切欠形状となっている。
【0034】
このように、複数の第3スリット34からなる第3スリット列38は、Y方向(つまり、第1筐体12Aと第2筐体12Bとが対面する隣接端部12Aa,12Baに沿う方向)に沿って狭い間隔で多数形成されており、しかも端部スリット34aがY方向端部まで達していることから、ディスプレイアセンブリ16を折曲領域R1で折り曲げやすくなっている。
【0035】
図7は、シート状部材22におけるディスプレイ20の領域RA,RBを覆う箇所の一部拡大平面図である。この箇所には十字スリット36による第1パターン44Aが形成されている。十字スリット36は、Y方向(第1方向)に沿う第1スリット40とX方向(第2方向)に沿う第2スリット42とが交差して十字孔を形成している。領域RA,RBにおいて多数の十字スリット36が形成するパターンを第1パターン44Aとする。第1パターン44Aは折曲領域R1を除く箇所、つまり領域RA,RBのほぼ全面に設けられている(図5参照)。第1パターン44Aは、ベゼル部材28(図2参照)に対面する縁部分には設けられてなく、シート状部材22の強度が担保されている。第1パターン44Aが設けられるのは折曲領域R1を除く箇所の全面である必要はなく、設計条件によりその一部(例えば領域RA及び領域RBのいずれか一方)に設けられていてもよい。
【0036】
第1スリット40はY方向に沿う細いスリットであり、Y方向に沿って複数の第1スリット40が等間隔で配置されることによって第1スリット列46を形成する。各第1スリット列46における第1スリット40同士のY方向間隔は狭い。第1スリット列46はX方向に沿って複数列設けられている。各第1スリット列46同士のX方向間隔Xbは、上記の間隔Xaより広く、例えば第2スリット42の長さの半分よりやや長い程度となっている。間隔Xbは設計条件によって任意に設定すればよい。隣接する第1スリット列46同士は第1スリット40の配置が互い違いになっている。
【0037】
第2スリット42はX方向に沿う細いスリットであり、X方向に沿って複数の第2スリット42が等間隔で配置されることによって第2スリット列48を形成する。第2スリット42は第1スリット40と長さおよび幅が等しい。第2スリット列48はY方向に沿って複数列設けられている。各第2スリット列48同士のY方向間隔Ybは、上記の間隔Xbと等しい。隣接する第2スリット列48同士は第2スリット42の配置が互い違いになっている。つまり、群をなす複数の第1スリット列46と複数の第2スリット列48とは向きが90度異なるだけである。このような複数列の第1スリット列46と複数列の第2スリット列48からなる第1パターン44Aでは、各第1スリット40および各第2スリット42が間欠的な格子形状をなしている。
【0038】
このようなシート状部材22によれば、図5に示すようにペン入力装置37のペン先がX方向に沿う軌跡T1、Y方向に沿う軌跡T2、斜め方向に沿う軌跡T3,T4のいずれの場合であっても、第1スリット40および第2スリット42を乗り越える頻度がほぼ等しく、移動方向の違いに拘わらず均一かつ適度な抵抗感が得られる。また、このような抵抗感は紙に筆記する場合と似ており、違和感のないペン入力が可能となり、ユーザに対して好適な感触を与えることができる。
【0039】
また、シート状部材22の第1パターン44Aでは、隣接する第1スリット列46同士は第1スリット40の配置が互い違いであり、かつ隣接する第2スリット列48同士は第2スリット42の配置が互い違いになっていることから、十字スリット36同士の間隔が狭く密になっており、各軌跡T1~T4での第1スリット40および第2スリット42を乗り越える頻度が高くなることから、粗さを感じにくくなり、ユーザに対して一層好適な感触を与えることができる。
【0040】
なお、第1パターン44AではなくY方向に沿う多数の第3スリット34が設けられていてX方向に沿うスリットは存在しないが、第3スリット34からなる第3スリット列38同士のX方向間隔Xaは狭くなっていることから、ユーザはペンの移動方向による不均一を感じにくくなっている。
【0041】
次に、上記の第1パターン44Aに代わるパターンについて説明する。以下に説明する第2パターン44B、第3パターン44C、第4パターン44Dは上記と同様の第1スリット40および第2スリット42からなり、シート状部材22における第1パターン44Aと同様の範囲に形成される。
【0042】
図8は、第2パターン44Bを示す図である。第2パターン44Bは上記の第1パターン44Aと同様に多数の十字スリット36によって構成されている。ただし、隣接する第1スリット列46同士は第1スリット40の配置がX方向に揃っており、かつ隣接する第2スリット列48同士は第2スリット42の配置がY方向に揃っている。そのため、十字スリット36同士もX方向およびY方向に整列している。
【0043】
図9は、第3パターン44Cを示す図である。第3パターン44Cは上記の第1パターン44Aと同様に、隣接する第1スリット列46同士は第1スリット40の配置が互い違いであり、かつ隣接する第2スリット列48同士は第2スリット42の配置が互い違いになっていが、第1スリット40と第2スリット42とは交差していない。すなわち、第1スリット40はY方向に隣接する2つの第2スリット42の間に配置され、第2スリット42はX方向に隣接する2つの第1スリット40の間に配置されている。
【0044】
図10は、第4パターン44Dを示す図である。第4パターン44Dでは、隣接する第1スリット列46同士は第1スリット40の配置がX方向に揃っており、かつ隣接する第2スリット列48同士は第2スリット42の配置がY方向に揃っている。また、第1スリット40と第2スリット42とは交差していない。
【0045】
このようなパターン44B,44C,44Dにおいても第1パターン44Aと同様に、ペンの移動方向の違いに拘わらず均一かつ適度な抵抗感が得られる。なお、パターン44A~44Cにおいて第1スリット40および各第2スリット42が構成する間欠的な格子形状の大きさは、第1スリット40および第2スリット42の長さによって決まるため、好適な抵抗感が得られるように調整可能である。
【0046】
上記の各実施例では、第1スリット列46がY方向に沿い、第2スリット列48がX方向に沿っているものとしたが、これに限らず、例えば第1スリット列46および第2スリット列48がそれぞれX方向およびY方向に対して45度の傾きとなっていてもよい。
【0047】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
16 ディスプレイアセンブリ
18 ヒンジ機構
20 ディスプレイ
22 シート状部材
30 タッチパネル
32 液晶部材
34 第3スリット
34a 端部スリット
36 十字スリット
37 ペン入力装置
38 第3スリット列
40 第1スリット
42 第2スリット
44A 第1パターン
44B 第2パターン
44C 第3パターン
44D 第4パターン
46 第1スリット列
48 第2スリット列
R1 折曲領域
【要約】
【課題】ペン入力においてユーザに好適な感触を与えることのできる電子機器を提供する。
【解決手段】
電子機器10は、第1筐体12Aと第2筐体12Bが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域R1を有するディスプレイ20と、ディスプレイ20の裏面を覆うように固定されたシート状部材22とを備える。シート状部材22には、Y方向に沿って等間隔で配置された複数の第1スリット40からなる第1スリット列46、およびX方向に沿って等間隔で配置された複数の第2スリット42からなる第2スリット列48が設けられている。第1スリット列46および第2スリット列48は複数列がX方向、Y方向に沿って等間隔で設けられている。第1スリット列46と第2スリット列48とによって形成される第1パターン44Aは、第1スリット40および第2スリット42が間欠的な格子形状をなしている。
【選択図】図5
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10