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特許7292488液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンク
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20230609BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20230609BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20230609BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01F27/02 D
H01F27/02 A
H01F27/06
H01F30/10 G
H01F30/10 T
H01F37/00 G
H01F37/00 T
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022500907
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019082001
(87)【国際公開番号】W WO2021004649
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】19382581.7
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アギルレ,ミゲル
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-105307(JP,A)
【文献】実開昭61-015713(JP,U)
【文献】特開平08-111319(JP,A)
【文献】特開2010-192805(JP,A)
【文献】実開昭55-132925(JP,U)
【文献】特開昭60-200506(JP,A)
【文献】特開平08-017643(JP,A)
【文献】特開平05-029155(JP,A)
【文献】特開昭61-030015(JP,A)
【文献】実開昭50-067315(JP,U)
【文献】実開昭53-152128(JP,U)
【文献】特開2007-067108(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02434003(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 27/00-27/22
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンクであって、
底板および下側側壁を備える下側タンク部分と、上側タンク部分とを備え、前記上側タンク部分は、内側側壁を有する内側タンク部分と、外側側壁を有する外側タンク部分とを備え、前記外側側壁は、前記外側タンク部分が前記内側タンク部分を囲むように、前記内側側壁に対して半径方向外向きに配置され、前記下側側壁は実質的に垂直であり、第1の水平フランジにおいて終端し、前記内側側壁は実質的に垂直であり、第2の水平フランジにおいて終端し、前記外側側壁は実質的に垂直であり、第3の水平フランジにおいて終端し、
前記タンクは、短絡ビームをさらに備え、前記短絡ビームは、前記内側タンク部分の前記内側側壁の上部内側部分の内側に取り付けられ、前記内側側壁の前記上部内側部分に接合されて一体構造を形成しており、
前記タンクは、タンクカバーをさらに備え、前記タンクカバーは前記外側タンク部分の前記外側側壁の上端に接合されるように構成され、
前記下側タンク部分および前記内側タンク部分は、前記第1の水平フランジと前記第2の水平フランジによって形成される、実質的に水平な第1の周縁接合線に沿ってともに接合され、
前記下側タンク部分および前記内側タンク部分は、前記液体充填外鉄型変圧器または前記外鉄型リアクトルの能動部品および絶縁液を収容するための内部空間を画定し、
前記内側側壁と前記外側側壁との間に空間が形成され、前記空間は、前記液体充填外鉄型変圧器または前記外鉄型リアクトルの前記能動部品および絶縁液を収容するための前記内部空間と流体連通し、
前記外側タンク部分および前記内側タンク部分は、前記第2の水平フランジと前記第3の水平フランジによって形成される、実質的に水平な第2の周縁接合線に沿ってともに接合される、タンク。
【請求項2】
前記外側タンク部分の前記外側側壁は、前記内側タンク部分の前記内側側壁から少なくとも15ミリメートルの距離をおいて配置されている、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記外側タンク部分の前記外側側壁は、前記内側タンク部分の前記内側側壁から20~60ミリメートルの距離をおいて配置されている、請求項1に記載のタンク。
【請求項4】
記下側タンク部分は、溶接によって前記第1の水平フランジおよび前記第2の水平フランジを介して前記内側タンク部分に接合される、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項5】
記外側タンク部分および前記内側タンク部分は、溶接によって前記第3の水平フランジおよび前記第2の水平フランジを介してともに接合される、請求項4に記載のタンク。
【請求項6】
前記タンクは、前記下側タンク部分の前記下側側壁および前記外側タンク部分の前記外側側壁を囲み、接合され、前記下側タンク部分と前記内側タンク部分との間の前記第1の周縁接合線、および前記外側タンク部分と前記内側タンク部分との間の前記第2の周縁接合線を封止する密閉チャンバを形成する補強帯をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項7】
前記補強帯は、溶接によって、前記下側タンク部分の前記下側側壁の前記第1の水平フランジに接合され、前記外側タンク部分の前記外側側壁の一部に接合されている、請求項6に記載のタンク。
【請求項8】
前記補強帯は、前記第1の水平フランジまたは前記下側タンク部分の前記下側側壁の一部を囲み、接合される下側補強リングと、前記外側タンク部分の前記外側側壁の一部を囲み、接合される上側補強リングとを備える、請求項6または7に記載のタンク。
【請求項9】
前記補強帯が、前記下側補強リングおよび前記上側補強リングに接合されたベルトまたは閉鎖プレートを含む、請求項8に記載のタンク。
【請求項10】
前記タンクカバーの少なくとも一部の可撓性は、前記外側タンク部分の前記外側側壁の可撓性と同じである、請求項1に記載のタンク。
【請求項11】
前記タンクが、前記外側側壁のうちの少なくとも2つの外面上に1つまたは複数の補強リブをさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項12】
液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンクであって、
底板および下側側壁を備える下側タンク部分と、上側タンク部分とを備え、前記上側タンク部分は、内側側壁を有する内側タンク部分と、外側側壁を有する外側タンク部分とを備え、前記外側側壁は、前記外側タンク部分が前記内側タンク部分を囲むように、前記内側側壁に対して半径方向外向きに配置され、
前記下側タンク部分および前記内側タンク部分は、実質的に水平な第1の周縁接合線に沿ってともに接合され、前記液体充填外鉄型変圧器または前記外鉄型リアクトルの能動部品および絶縁液を収容するための内部空間を画定し、前記内側側壁と前記外側側壁との間に空間が形成され、前記空間は、前記液体充填外鉄型変圧器または前記外鉄型リアクトルの前記能動部品および絶縁液を収容するための前記内部空間と流体連通し、
前記外側タンク部分および前記内側タンク部分は、実質的に水平な第2の周縁接合線に沿ってともに接合され、前記タンクは、前記外側タンク部分の前記外側側壁の上端に接合されるように構成されたタンクカバーをさらに備え、
前記外側側壁は、
複数の開口と、
内側に結合された調整可能パッドであって、
前記内側タンク部分の前記内側側壁と前記外側タンク部分の前記外側側壁との間に配置される平板と、
前記平板に取り付けられた複数のスタッドであって、各スタッドは、前記外側側壁の前記複数の開口のうちの1つの開口に対応するように配置されている、スタッドと
を備える、調整可能パッドと、
前記平板を前記外側側壁に結合するための複数の締結要素であって、前記複数の締結要素は、前記平板と前記外側側壁との間の距離を調整することを可能にする、複数の締結要素と
を備え、
以て、前記調整可能パッドは、過圧負荷下で外側パネルの自由な偏向を可能にし、前記内側側壁と前記外側側壁との間の機械的協働を可能にする、タンク。
【請求項13】
前記タンクは、前記内側タンク部分の前記内側側壁の上部内側部分の内側に取り付けられ、前記内側側壁の前記上部内側部分に接合されて一体構造を形成する短絡ビームをさらに備え、
前記調整可能パッドは、前記短絡ビームの中央領域に実質的に対応する領域において前記外側側壁に結合される、請求項12に記載のタンク。
【請求項14】
前記外側側壁に取り付けられ、以て、動作中の冷却流体の漏れを回避するために前記複数の開口を囲む封止チャンバを形成する封止パネルをさらに備える、請求項12または13に記載のタンク。
【請求項15】
前記調整可能パッドが、前記平板と前記外側側壁との間に配置される圧縮性ストリップをさらに備える、請求項12~14のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項16】
前記圧縮性ストリップが穿孔を備え、各孔がスタッドに対応して配置される、請求項15に記載のタンク。
【請求項17】
前記圧縮性ストリップがエラストマーまたはゴムから作成されている、請求項15または16に記載のタンク。
【請求項18】
前記平板が軟鋼またはステンレス鋼から作成されている、請求項12~17のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項19】
前記複数の締結要素がナットである、請求項12~18のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のタンクを備える液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトル。
【請求項21】
請求項20に記載の液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルを組み立てるための方法であって、
実質的に水平な周縁接合線に沿って互いに接合されるように構成された外側タンク部分および内側タンク部分を提供することであって、前記内側タンク部分は、前記内側タンク部分の内側側壁の内面に取り付けられた短絡ビームを備える、提供することと、
前記外側タンク部分を前記内側タンク部分上に取り付け、前記周縁接合線に沿って前記外側タンク部分および前記内側タンク部分をともに溶接し、以て、上側タンク部分を形成することと、
実質的に水平なさらなる周縁接合線に沿って前記内側タンク部分に接合されるように構成された下側タンク部分を提供することと、
前記下側タンク部分の内側に前記液体充填外鉄型変圧器または前記外鉄型リアクトルの能動部品を取り付けることと、
前記内側タンク部分を前記下側タンク部分上に取り付け、前記さらなる周縁接合線に沿って前記内側タンク部分および前記下側タンク部分をともに溶接することと、
タンクカバーを提供することと、
前記タンクカバーを前記外側タンク部分の上部に取り付け、前記タンクカバーおよび前記外側タンク部分をともに溶接することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記外側タンク部分を前記内側タンク部分に取り付け、前記周縁接合線に沿って前記外側タンク部分および前記内側タンク部分をともに溶接する前に、前記方法は、
前記外側タンク部分の前記外側側壁に複数の開口を設けることと、
前記外側側壁に調整可能パッドを結合することであって、前記調整可能パッドは、平板を備え、前記平板は、前記平板に取り付けられた複数のスタッドと、締め付けプレート間の距離を調整するための複数の締結要素とを備える、結合することと、
前記複数の締結要素を締め付け、以て前記平板と前記外側側壁との間の距離を減少させることと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記外側タンク部分を前記内側タンク部分上に取り付け、前記周縁接合線に沿って前記外側タンク部分および前記内側タンク部分をともに溶接し、以て上側タンク部分を形成した後に、前記方法は、
前記複数の締結要素を解放し、以て、前記平板が前記内側タンク部分の前記内側側壁に接触するまで、前記平板と前記外側側壁との間の前記距離を増加させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の締結要素を解放し、以て、前記平板が前記内側タンク部分の前記内側側壁に接触するまで、前記平板と前記外側側壁との間の前記距離を増加させた後、前記方法は、
前記複数の開口に対応して前記外側側壁の外側に封止パネルを取り付け、以て、前記複数の開口を囲むための密閉区画を形成することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
変圧器タンクに結合するための調整可能パッドであって、前記変圧器タンクは、下側タンク部分および上側タンク部分を備え、前記上側タンク部分は、内側側壁を有する内側タンク部分および外側側壁を有する外側タンク部分を備え、前記外側側壁のうちの少なくとも1つは、複数の開口を備え、前記外側側壁の前記1つに隣接する前記内側側壁は、前記内側側壁に取り付けられたU字形ビームを備え、前記調整可能パッドは、
前記U字形ビームの中央部分に対応して前記変圧器タンクの前記内側側壁と前記外側側壁との間に配置される平板と、
前記平板に取り付けられた複数のスタッドであって、各スタッドが前記外側側壁の開口に対応するように配置されている、複数のスタッドと、
前記平板を前記外側側壁に結合するための複数の締結要素であって、前記複数の締結要素は、前記平板と前記外側側壁との間の距離を調整することを可能にする、複数の締結要素と
を備え、前記調整可能パッドは、過圧負荷による外側パネルの自由な偏向を可能にし、動作負荷を伴う/動作負荷中の外側側壁と内側側壁との間の機械的協働を可能にする、調整可能パッド。
【請求項26】
前記平板と前記外側側壁との間に配置される圧縮性ストリップとをさらに備え、
前記圧縮性ストリップは、複数の開口を備え、各開口はスタッドに対応している、請求項25に記載の調整可能パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月1日に出願された欧州特許第19382581.7号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本開示は、油などの絶縁液で充填された外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンクに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
電力変圧器またはリアクトルは、内部故障が発生する場合に内部アークエネルギーを受ける可能性がある。例えば、変圧器巻線の内部短絡または他の故障は、例えば20MJのエネルギーを生成する内部アークを引き起こす可能性がある。次いで、変圧器またはリアクトルの能動部品を取り巻く絶縁流体が気化して膨張する気泡を生成し、変圧器の能動部品を損傷し、変圧器またはリアクトルタンクを破壊する可能性もある過剰圧力を引き起こす。タンクの破断は、油漏れおよび火災発生の危険性を引き起こす可能性があり、したがって、そのような破断の発生を防止することが重要である。
【0004】
このようなアーク故障は、変圧器/リアクトルの能動部品の周りに機械的に嵌合する形状嵌合タンクを有し、内鉄形技術のタンクよりも剛性が高い外鉄形変圧器または外鉄形リアクトルにおいてより重要である。
【0005】
実際、外鉄形変圧器のタンクは、通常動作中の短絡負荷に耐えるために強固で剛性である必要があり、変圧器の電気回路に外部または内部短絡が発生すると、巻線内の電流が劇的に増加し、これは巻線とタンクとの間に非常に高い機械的負荷を引き起こす。タンクは、塑性変形を受けることなく機械的負荷に耐えるのに十分な強度および剛性を有し、そのため、短絡後に通常動作を再開することが可能である必要がある。
【0006】
したがって、外鉄型変圧器またはリアクトルのタンクは、可撓性がより低く、高い引張応力を受けたときに破損することなく変形する能力が低い。内部アークの場合、結果として生じる過圧は、タンクの少なくとも特定の領域または部分の最大抗張力を超える可能性がある機械的応力をタンク内に生じ、したがって、比較的低いレベルのエネルギーを有する内部アークが発生する場合であっても、許容できない歪みおよび破損を被る可能性がある。
【0007】
特に内鉄形変圧器の内部アーク故障が発生する場合のタンクの破断の問題に対処するために、いくつかの解決策が開発されている。既知の解決策は、例えば、圧力逃がし装置、(外鉄型技術の)タンクの異なる部分間の溶接継手を補強してそれらの破損を防止するために別個の位置に設けられたC字形クランプ、またはタンクの側壁上の補強リブ、および、にある程度のアークエネルギーに耐えることができるようなタンク自体の機械的特性の増大を含む。
【0008】
しかしながら、場合によっては、既知の解決策は、内部アーク故障が発生する場合に外鉄式変圧器またはリアクトルのタンクの破断を防止するのに適していないか、または十分ではない可能性があり、そのため、より安全であり、破断のリスクが低減されたタンクを提供することが望ましい。
【0009】
DE2434003は、油充填変圧器のためのノイズ減衰二重壁タンクを開示している。
【0010】
JP S55105397には、変圧器タンクを構成する上側タンクおよび下側タンクを各フランジ面において溶接し、このフランジ部がクランプされる方法が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
第1の態様によれば、液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルのためのタンクが提供される。タンクは、底板および下側側壁を備える下側タンク部分と、上側タンク部分とを備える。上側タンク部分は、内側側壁を有する内側タンク部分と、外側側壁を有する外側タンク部分とを備え、外側側壁は、外側タンク部分が内側タンク部分を囲むように、内側側壁に対して半径方向外向きに配置される。タンクは、実質的に水平な第1の周縁接合線に沿ってともに接合され、外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルの能動部品および絶縁液を収容するための内部空間を画定する下側タンク部分および内側タンク部分をさらに備え、内側側壁と外側側壁との間に空間が形成され、空間は、外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルの能動部品および絶縁液を収容するための内部空間と流体連通し、外側タンク部分および内側タンク部分は、実質的に水平な第2の周縁接合線に沿ってともに接合され、タンクは、外側タンク部分の外側側壁の上端に接合されるように構成されたタンクカバーをさらに備える。
【0012】
外側タンク部分は、アーク故障が発生した後も動作可能なままである必要はなく、したがって、破断に達することなく外向きに変形することによって内部アークエネルギーを吸収するのに十分な可撓性を有して設計することができる。この点で、変圧器またはリアクトル内の内部アークによって過圧が引き起こされる場合、外側タンク部分の変形は内側タンク部分の保護を提供し、変形によって引き起こされる内部容積の増加がまた、タンク内の過圧を減少させる。
【0013】
要約すると、内側タンク部分を囲む外側タンク部分を備える上側タンク部分を含むタンク構成は、より安全なタンクを提供し、アーク故障が発生した場合の油漏れおよび火災の危険性がより低くなり、同時に、通常動作中の短絡に耐えるのに適した強固で剛性の構造の利点を維持する。
【0014】
いくつかの例では、外側タンク部分は、内側タンク部分から距離をおいて、例えば少なくとも15ミリメートルの距離をおいて配置される。タンクの外側側壁と内側側壁との間のこのような距離は、内部アークによって絶縁液内に生成される圧力波が外側側壁の下側にも到達することを可能にし、その結果、外側側壁の実質的にすべての延伸範囲が変形し、アークエネルギーを吸収することができる。
【0015】
いくつかの例では、タンクは、下側タンク部分の下側側壁および外側タンク部分の外側側壁を囲み、これらに接合され、下側タンク部分と内側タンク部分との間の第1の周縁接合線、および外側タンク部分と内側タンク部分との間の第2の周縁接合線を封止する密閉チャンバを形成する補強帯をさらに備える。
【0016】
補強帯は、下側タンク部分と内側タンク部分との間、および外側タンク部分と内側タンク部分との間の接合部の保護を提供し、タンクの最も脆弱な点を、例えば外側タンク部分などの、過圧により容易に対応することができる他の領域に変位させる。
【0017】
さらに、下側タンク部分と内側タンク部分との間の接合部および内側タンク部分と外側タンク部分との間の接合部を囲む密閉チャンバを形成するように構成された補強帯は、非常に高い過圧および応力に起因して一次溶接メイルが1つまたは複数の点において故障または破損した場合でも、例えば油などの絶縁液がチャンバ内に閉じ込められ、追加の保護によってタンクから漏れないことを意味する。したがって、補強帯は、環境を油漏れおよびそのような油漏れに関連する火災のリスクから保護するという追加の利点を有する。
【0018】
本開示はまた、本明細書に開示されるタンクを有する液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルを提供する。
【0019】
本開示に提示されるタンクの実施形態は、単相外鉄型変圧器およびリアクトルに適しているが、三相変圧器およびリアクトルなどの多相外鉄型システムにも適用することができる。
【0020】
第2の態様によれば、本開示は、液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルを組み立てるための方法であって、
実質的に水平な周縁接合線に沿って互いに接合されるように構成された外側タンク部分および内側タンク部分を提供することであって、内側タンク部分は、上側タンク部分の内側側壁の内面に取り付けられた短絡ビームを備える、提供することと、
外側タンク部分を内側タンク部分上に取り付け、周縁接合線に沿ってそれらをともに溶接し、それによって、上側タンク部分を形成することと、
実質的に水平なさらなる周縁接合線に沿って内側タンク部分に接合されるように構成された下側タンク部分を提供することと、
下側タンク部分の内側に外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルの能動部品を取り付けることと、
内側タンク部分を下側タンク部分上に取り付け、さらなる周縁線に沿ってそれらをともに溶接することと、
タンクカバーを提供することと、
タンクカバーを外側タンク部分の上部に取り付け、それらをともに溶接することと
を含む、方法を提供する。
【0021】
本装置の特定の実施形態を、添付の図面を参照して、非限定的な例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一例によるタンクの下側タンク部分、内側タンク部分、および外側タンク部分の概略断面図である。
図2図1に示すものと同じまたは同様であり得るタンクの短絡ビーム形成部分を示す概略斜視図である。
図3】内側タンク部分と下側タンク部分との間の接合部、および内側タンク部分と外側タンク部分との間の接合部に適用される補強帯をさらに備える、図1に示すものと同じまたは同様であり得るタンクの下側タンク部分、内側タンク部分、および外側タンク部分の概略断面図である。
図4】内部アークが発生した場合の、本開示の一例によるタンクの変形を示す図である。
図5図4の拡大詳細図である。
図6】液体充填外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルを組み立てるための方法の一例を示す流れ図である。
図7】一例による調整可能パッドを備える変圧器タンクを概略的に示す図である。
図8A】一例による調整可能パッドを備える変圧器タンクを組み立てるための方法の2つの異なる段階のうちの1つを示す図である。
図8B】一例による調整可能パッドを備える変圧器タンクを組み立てるための方法の2つの異なる段階のうちの1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本開示において、上側、下側、垂直、水平などの表現は、使用時の変圧器およびタンクの意図されている位置を参照して与えられる。
【0024】
本開示において、「変圧器」という表現はまた、単巻変圧器を包含するように意図されている。
【0025】
図1は、本開示の一例による、下側タンク部分および上側タンク部分1の概略断面図であり、上側タンク部分は、内側タンク部分および外側タンク部分を備えることができる。
【0026】
本出願で採用されている用語は、本開示の主題を変更することなく、単にタンクの各部分に使用される用語の正確度を高めるために、優先権出願の用語とわずかに異なる。すなわち、本開示では、優先権出願の「上側タンク部分10」を指すために「内側タンク部分10」という用語が導入されており、一方で、「上側タンク部分1」という用語は、本明細書では「内側タンク部分10」および「外側タンク部分40」からなる組み立てを指すために使用される。したがって、優先権出願の「上側側壁11」は、本明細書では「内側側壁11」である。
【0027】
特に、内側タンク部分10が提供される。上記内側タンク部分10は、例えば、角柱形タンクであってもよい。内側タンク部分10は、実質的に垂直であり、内側側壁11の下端の水平フランジ12において終端し、内側タンク部分10の周縁全体にわたって延在する内側側壁11を備えることができる。フランジは、内側側壁11の端部を曲げることによって形成されてもよい(したがって、フランジは内側側壁11と一体的に形成されてもよい)。いくつかの他の例では、フランジ12は、例えば溶接線によって内側側壁11の下端にまたはその付近に溶接することができる。
【0028】
本開示および添付の特許請求の範囲において、「内側タンク部分」および「内側側壁」という用語は、変圧器またはリアクトルの能動部品を囲み、それと接触する構造要素を示すために採用されている。これらの用語は、連続壁を有する従来のタンク構造だけでなく、バー、ケージ、開口部を有する壁などを含む構造など、変圧器の能動部品を囲む内側側壁が連続していない構造も包含する。
【0029】
また、下側タンク部分20が提供される。下側タンク部分20もまた、例えば角柱形タンクであってもよい。下側タンク部分20は、内側タンク部分10の形状と一致するように構成され、その結果、両方の部分10、20を接合して、例えば外鉄型変圧器または外鉄型リアクトル(図示せず)の能動部品を収容するためのタンクを形成することができる。
【0030】
下側タンク部分20は、底板23と、下側側壁21とを備え、下側側壁21は、実質的に垂直であり、下側側壁21の上端にまたはその付近に位置する水平フランジ22内で終端する。フランジ22は、下側タンク部分20の周囲全体にわたって延在する。下側タンク部分20は、内側タンク部分10に対してより小さい内部水平および垂直寸法を有することができるが、内側タンク部分10のフランジ12および下側タンク部分20のフランジ22の寸法は、一致して、内側タンク部分10と下側タンク部分20との間の水平周縁接合線をそれらの間に形成するように構成することができる。
【0031】
この点において、内側タンク部分10および下側タンク部分20は、タンクの一部を形成するように組み立てられる。水平フランジ12は、水平フランジ22上に重ねることができ、2つのフランジは、例えば、実質的に水平な周縁接合線の周り全体にわたってタンクの2つの部分10、20を接合して封止する溶接線によってともに溶接することができる。
【0032】
外鉄型技術のためのタンクでは、下側タンク部分20の内部に配置された巻線パッケージ(図示せず、典型的には、積み重ねられて直列に接続された複数のパンケーキによって形成される)が提供される。次に、変圧器鉄心(図示せず)が、タンクの底板上で巻線パッケージの周りに積み重ねられる。次いで、内側タンク部分10は、下側タンク部分20上に設置され、鉄心を囲み、下側タンク部分に溶接される。タンク内の空間は、油などの絶縁液で充填される。この例の変圧器は三相変圧器に対応することができるが、例えば単相変圧器などの他の変圧器構成も可能であることに留意されたい。
【0033】
要約すると、下側タンク部分および内側タンク部分は、それらの間に外鉄形能動部品(巻線、鉄心など)および絶縁液のための内部空間を画定する。上述したように、タンク、したがって内側タンク部分および下側タンク部分は、角柱形であってもよい。典型的には、これは直方体であってもよい。
【0034】
いくつかの例では、タンクには、後述する短絡ビームも提供され得る。
外側タンク部分40がさらに提供される。外側タンク部分40は、外側側壁41を備え、外側側壁41は、実質的に垂直であり、外側側壁41の下端に位置する水平フランジ42内で終端する。前述と同様に、フランジ42は、外側側壁41の下側部分を曲げることによって形成されてもよい。いくつかの他の例では、フランジ42は、外側側壁41の下端に溶接することができる。
【0035】
内側タンク部分10のフランジ12および外側タンク部分40のフランジ42の寸法は、一致して、内側タンク部分10と外側タンク部分40との間の水平周縁接合線をそれらの間に形成するように構成することができる。
【0036】
この点において、内側タンク部分10および外側タンク部分40は、タンクの上側部分1を完成させるように組み立てられる。水平フランジ42は、水平フランジ12上に重ねることができ、2つのフランジは、例えば、実質的に水平な周縁接合線の周り全体にわたってタンクの2つの部分40、20を接合して封止する溶接線によってともに溶接することができる。
【0037】
この点で、外側タンク部分40の外側側壁41は、すべての内側タンク部分10を囲むことができる。特に、外側側壁41は、内側タンク部分の内側側壁11から少なくとも15ミリメートルの距離、好ましくは20~60ミリメートルの距離、より好ましくは20~30ミリメートルの距離をおいて、内側タンク部分の内側側壁11に対して半径方向外向きに配置することができる。
【0038】
場合によっては、外側タンク部分の外側側壁41は、上側タンク部分1の内側側壁11および/または下側タンク部分の下側側壁21の最大抗張力に対してより高い最大抗張力を有することができる。しかしながら、材料はまた、すべてのタンクについて同じとすることもでき、内側タンク部分に対する外側タンク部分の可撓性の増加は、幾何学的形状に依存し得、例えば、外側タンク部分は、内側タンク部分よりも薄くてもよく、および/または強化もしくは補強されていてもよい。
【0039】
外側タンク部分40は、破損することなく、内部アークによって引き起こされる過圧に対応するように変形することができるように設計することができる。
【0040】
外側タンク部分40の外側側壁41には、リブ、例えば垂直および/または水平リブをさらに設けることができる。リブは、例えば外側側壁の外面上に配置されてもよい。例えば、2つのより大きい側面および2つのより小さい側面を有する角柱形タンクの場合、リブは、少なくとも2つのより大きい側面に設けられてもよい。強度と可撓性との間の適切な妥協点を提供するためのリブの数、位置、および構成は、各特定の場合によって異なる。
【0041】
タンクカバー60がさらに提供される。組み立てられると、タンクカバー60は、外側タンク部分40の上部、すなわち外側側壁41の上端に溶接することができる。カバー60は、図に示すように側壁を有してもよいが、平坦であってもよく、または他の構成を有してもよく、導管、補強リブなどのような他の通常の要素を備えてもよい。
【0042】
図1に見られるように、内側タンク部分10の内側側壁11と外側タンク部分40の外側側壁41との間に空間43が形成される。この空間43は、外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルの能動部品および絶縁液を収容するための上記の内部空間と流体連通している。したがって、空間43も絶縁液で充填され、圧力波がこの空間内を進行し得る。
【0043】
内部アークが発生した場合、アークエネルギーが、絶縁液の圧力の高い増加を引き起こし、外側タンクを破損することなく外側へと変形させ、したがって、タンク内の全体的な圧力を低下させることができる。その結果、内側タンク部分と下側タンク部分との間、および外側タンク部分と内側タンク部分との間の付着点が破断するリスクも低減される。
【0044】
内側タンク部分は、実際には、変形をほとんどまたはまったく受けないほど剛性であり得、いずれにせよ、アークエネルギーの大部分を吸収し、油漏れを引き起こす可能性があるタンクの破断を防止するように設計されているのは外側タンクであるため、内部アークが発生した場合の内側タンク部分の挙動はそれほど重要ではない。
【0045】
タンクカバー60の少なくとも一部、例えばその少なくとも側壁は、外側タンク部分40と同じ程度の可撓性を有することができ、すなわち、これも破損することなく同様に変形することができる。これにより、カバー60と外側タンク部分40との間の接合部に対する応力の程度を低減したままにすることができる。
【0046】
変圧器はまた、場合によって外部短絡を被る可能性があることに留意されたい。そのような故障が発生すると、膨大であり得る熱および応力が、例えば、巻線パッケージ上に発生する可能性がある。これらの理由から、いくつかの例では図1にも見られるように、内側タンク部分10は、そのような応力に耐えるように内側タンク部分を強化する短絡ビーム50を装備することができる。
【0047】
図2に示すように、短絡ビーム50は、実質的に連続し、内側タンク部分10の角柱形状と実質的に一致する抵抗構造を形成するようにともに溶接された2つのU字形プロファイル51、53および2つのU字形ビーム52、54を含む。プロファイルおよびビームはまた、任意の他の形状および寸法を有する断面を有してもよい。他の例では、短絡ビーム50は一体的に形成されてもよい。
【0048】
各U字形プロファイル51、53は、内側タンク部分10の内側側壁のうちの2つの内面に取り付けるための上側分岐部および下側分岐部を含む。同様に、各ビーム52、54は、内側タンク部分10の内側側壁のうちの他の2つの内面に取り付けるための上側分岐部および下側分岐部を含む。
【0049】
短絡ビーム5は、2つの相間要素55、56をさらに備える。相間要素の機能は、変圧器の各相形成部分を分離することである。単相変圧器の場合、相間要素55、56は、短絡ビーム50から省略されてもよいことに留意されたい。
【0050】
再び図1において、使用時に、短絡ビーム50は、内側タンク部分10の内側側壁11の上部内側部分13の内側に取り付けることができ、内側側壁11によって完全に囲まれ、例えば溶接によって内側タンク部分の内側側壁の内側部分13に接合されて一体構造を形成することができる。
【0051】
短絡ビーム50の存在は、内側タンク部分10を強化し、永久変形を受けることなく、例えば外部短絡または内部短絡によって発生する応力に耐えることを可能にし、同時に、内側タンク部分10の高い強度は、外側タンク40が破損することなく結果として生じる過圧に対応することを可能にするため、内部アーク故障が発生した場合にタンクの安全性を損なわない。
【0052】
図3は、内側タンク部分10と下側タンク部分20との間の接合部、および内側タンク部分10と外側タンク部分40との間の接合部に適用される補強帯100をさらに備える、図1に記載するものと同じまたは同様であり得るタンクの下側タンク部分20、内側タンク部分10、および外側タンク部分40の概略断面図である。すなわち、内側タンク部分は、上側タンク部分の両方の部分、すなわち内側タンク部分および外側タンク部分だけでなく、上側タンク部分および下側タンク部分もともに接合するために使用することができる。図3に示すタンクは、補強帯100が設けられている点でのみ、図1に示すタンクと異なり得る。
【0053】
外側タンク部分40の外側側壁41に接合された上側補強リング110が示されており、これは中空であってもよく、例えば図示のようにU字形の断面を有してもよいが、長方形であるか、または任意の他の形状もしくは寸法を有する断面も有してもよい。
【0054】
上側補強リング110は、連続片を形成する外側タンク部分40の全体を囲むように設けることができ、溶接によって外側タンク部分40の外側側壁41に接合することができる。
【0055】
下側タンク部分20のフランジ22に接合された下側補強リング120が示されており、これは中空であってもよく、例えば図示のようにG字形の断面を有してもよいが、長方形であるか、または任意の他の形状もしくは寸法を有する断面も有してもよい。下側補強リング120は、水平フランジ22よりも垂直側壁21からさらに水平に突出してもよく、加えてまたは代替的に下側側壁21に取り付けられてもよい。
【0056】
下側補強リング120は、連続片を形成する下側タンク部分20の全体を囲むことができ、例えば溶接によって下側タンク部分20に接合することができる。
【0057】
閉鎖プレートまたはベルト130が、上側補強リング110および下側補強リング120に当てて適用され、両方に接合されてもよい。例えば、これは、リング110および120に溶接されてもよい。いくつかの他の例では、ベルト130と補強リング110、120との間の接合部は、溶接の代わりにボルト締めによって形成されてもよい。ベルト130は、連続的に封止するように、タンク全体を囲むように適用されてもよい。
【0058】
上側補強リング110、下側補強リング120、およびベルト130からなる組み立ては、それぞれ、外側タンク部分と内側タンク部分との間の周縁接合線、および内側タンク部分と下側タンク部分との間の周縁接合線のレベルにおいて、外側タンク部分40および下側タンク部分20の外側側壁41および下側側壁21を囲む補強帯100を形成する。結果として、補強帯100は、内側タンク部分と外側タンク部分との間のすべての周縁接合線および内側タンク部分と下側タンク部分との間のすべての周縁接合線を囲む密閉チャンバ140を形成することができる。
【0059】
チャンバは、タンクの全周にわたる、単一の実質的にトロイダル状のチャンバであってもよく、または例えば垂直プレート(図示せず)によって複数の別個の区画に分割されてもよい。
【0060】
補強帯100は、外側タンク部分40と内側タンク部分10との間の接合、および、内側タンク部分10と下側タンク部分20との接合を強化および保護する。
【0061】
タンクの外側タンク部分と内側タンク部分との間の接合部は脆弱点であり、内部アークによる過圧に耐えられず、破断しやすい。内側タンク部分と下側タンク部分との間の接合部についても同様である。
【0062】
一方において、上述したように、破損することなく変形することができる外側タンク部分を設けることにより、タンク構造はより柔軟であり、内部アーク故障によって発生する過圧に耐えることができる。他方、補強帯は、タンクの内側タンク部分と下側タンク部分との間の接合部およびタンクの内側タンク部分と下側タンク部分との間の接合部に特定の保護を提供する。特に、補強帯は、最も脆弱な点を、接合部から、タンク壁に対する過圧およびその結果生じる応力により容易に対応することができる、タンクの他の領域(例えば、外側タンク部分)に変位させることができる。
【0063】
さらに、下側タンク部分と内側タンク部分との間の接合部および内側タンク部分と外側タンク部分との間の接合部を囲む密閉チャンバ140は、非常に高い過圧および応力に起因して接合部(例えば、溶接部)メイルが1つまたは複数の点において故障または破損した場合でも、例えば油などの絶縁液がチャンバ内に閉じ込められ、タンクから漏れないため、さらなる安全性をタンクに提供する。
【0064】
図4は、本開示の一例によるタンク、例えば図3のタンクなどのタンク内で、内部アークが発生した場合に生じる変形のシミュレーションを示し、特に、内側タンク部分10の内側側壁11を囲む外側側壁41を有する外側タンク部分40を有するタンク構造の利点を示す。短絡ビーム50および補強帯100の効果も示されている。
【0065】
図4に見られるように、内部アークに起因して内圧が突然上昇した場合、短絡ビーム50によって補強され、したがって非常に剛性である内側タンク部分10の内側側壁11は、それらの形状を実質的に維持するか、またはわずかな変形しか受けない。
【0066】
反対に、外側タンク部分40および取り付けられたカバー60の外側側壁41は、外向きに膨出し、破損することなく変形し、結果、変圧器からの油漏れはない。この変形はまた、タンクの内部容積の増加、したがってタンクの他の部分に対する内圧および応力の減少をもたらす。
【0067】
したがって、変圧器は、各々が特定の状態または変圧器の故障に対応する異なる機械的設計を有する2つの構造によって、両方のタイプの重大な負荷、すなわち、短絡およびアーク故障から同時に保護される。
【0068】
図5は、内側タンク10の内側側壁11、下側タンク20の下側側壁21、および外側タンク40の外側側壁41の間の、それぞれのフランジ12、22および42ならびに溶接部を通じた接合領域における変形、ならびに、上側および下側補強リング110および120ならびに閉鎖プレート130を有する補強帯100を示す、図4の拡大詳細図を示す。
【0069】
特に、図5は、内側側壁11の小さい変形および外側側壁41のはるかに大きい変形を示し、また、溶接された接合部の領域が補強帯100によってどのように保護されるかを示している。
【0070】
動作負荷下で、かつU字形ビーム51、53の長さに起因して、中央領域57(図2)参照は、端部よりも変形しやすい可能性がある。「中央領域」 57とは、図2の斜線に示すように、U字形ビームの長手方向中間点だけでなく、この点の周りのU字形ビームの全長の30%~50%の領域も意味する。
【0071】
U字形ビームの中央領域57を補強するために、いくつかの例では、タンクは、外側タンク部分40の外側側壁41に取り付けられた調整可能パッド300を備えることができる。調整可能パッド300は、U字形ビーム51、53の中央領域57に対応して配置されてもよい。
【0072】
いくつかの例では、タンクは、2つ以上の変圧器相、例えば3つの変圧器相を含むように設計されてもよい。そのような場合、U字形ビームは、各変圧器相または巻線に対応する調整可能パッドを含むことができる。さらに、そのような例では、各U字形ビームは、各相に対応する調整可能パッドを含むことができる。
【0073】
図7は、内側タンク部分10の内側側壁11および外側タンク部分40の外側側壁41の最上部の側面利用図を示す。この図はまた、例えば溶接または任意の他の適切な方法によって内側タンク部分に取り付けられるU字形ビーム51、53、および、複数の細長いスタッド330を介して外側側壁41に結合された調整可能パッド300も示す。
【0074】
タンクが調整可能パッド300を備える例では、外側側壁41は、細長いスタッド330が通過することを可能にするための複数の開口(図示せず)を備えることができる。したがって、複数の締結点を作成することができる。そのような開口は、スタッド330の挿入および/または取り外しを容易にするために、スタッドの幅よりもわずかに大きい直径を有することができる。一例では、直径は例えば_mmであってもよい。開口の数および配置は、スタッドの数および配置にそれぞれ依存し得る。
【0075】
調整可能パッド300は、内側側壁11と外側側壁41との間に、外側側壁からの可変の距離をおいて配置される平板310を含むことができ、すなわち、平板と外側側壁との間の間隙は変化させることができる。平板310は、任意の材料、例えば軟鋼またはステンレス鋼から作成されてもよく、これは、動作負荷に耐えるのに十分な剛性を提供するが、同時に軽量でコスト効率的であり得る。平板310の寸法は、例えばタンクの寸法および/またはサイズに応じて変化してもよい。一例では、平板の寸法は、例えば70×70×1 cmであってもよい。
【0076】
平板310は、それに取り付けられた、例えば溶接された複数の細長いスタッド330を含むことができる。スタッドは、平板と同じ材料、例えば軟鋼もしくはステンレス鋼から作成されてもよく、または異なる材料、例えばステンレス鋼もしくは青鋼から作成されてもよい。スタッド330の寸法、すなわち長さおよび直径は、例えばタンクのサイズに依存し得る。一例では、スタッド330は、約10 cmの長さ、および例えば1.6~3 cmの直径を有することができる。
【0077】
調整可能パッド300は、スタッド、したがって調整可能パッド自体を外側側壁41に固定するための締結要素340をさらに備えることができる。締結要素340の数は、調整可能パッド300の外側側壁41への緊密な固定を確実にするために、スタッドの数に等しくてもよい。
【0078】
締結要素340は、異なる程度のトルクにおいて調整可能パッドを外側側壁41に締結することを可能にすることができる。一例では、トルクの程度が異なることは、平板310と外側側壁41との間の距離または間隙が異なることを意味し得る。例えば、より高い程度のトルクは、より低い程度のトルクよりも、平板310と外壁41との間の距離または間隙がより小さいことを含むことができ、すなわち、平板と外側側壁とが互いにより近くなり得る。
【0079】
バランスのとれた均一な平板を有するために、すべての締結要素340は、同じまたは実質的に同じ程度のトルクで締め付けられてもよく、したがって、平板310と外側側壁41との間の距離は、すべての締結点において同じまたは実質的に同じであってもよい。
【0080】
一例では、締結要素340は、ねじ付き内面を備えてもよく、スタッド330は、締結要素340をねじ込むことができる一致するねじ部分(図示せず)を備えてもよい。したがって、締結要素を螺合および螺合解除することによって、異なる程度のトルク、したがって平板と外側側壁との間の異なる距離を達成することができる。一例では、締結要素はナットであってもよい。
【0081】
調整可能パッド300は、平板と外側パネルとの間に配置することができる圧縮性ストリップ320をさらに備えることができる。圧縮性ストリップ320は、その容積を平板と外側側壁との間の可変間隙に適合させる任意の材料、例えば、エラストマー、バイトン、ニトリルなどのゴムなどから作成することができる。すなわち、締結要素を締め付けたときに圧縮することができ、トルクの程度が小さくなると膨張して平板と外側側壁との間の空間を充填することができる材料である。
【0082】
いくつかの例では、締結要素が締め付けられると、圧縮の結果として、圧縮性ストリップ320は、平板から横方向にわずかに突出するように構成され、それによってさらなる圧縮を可能にすることができる。
【0083】
圧縮性ストリップ320は、スタッドが通過することを可能にする複数の穿孔(図示せず)を含むことができる。穿孔の配置、数、およびサイズは、スタッドの配置、数、およびサイズに依存し得る。
【0084】
動作中、内側側壁11と外側側壁41との間の空間は、絶縁液で充填されるタンクの内部空間と流体連通する。外側側壁は、スタッドの幅よりもわずかに大きい直径を有する開口部を含むことができるため、絶縁液が漏れる可能性がある。
【0085】
絶縁液の漏れを防止するために、外側側壁41は、例えば接着剤、溶接または任意の他の適切な方法によってその外面に取り付けられ得る封止パネル44を含むことができ、パネルは、外側側壁の複数の開口を覆うか、または囲むことができる。したがって、封止チャンバ150を、外側側壁と封止パネルとの間に形成することができ、ここに開口から漏れる絶縁液を閉じ込めることができる。
【0086】
封止パネル44は、上壁および4つの側壁を有するU字形断面を含むことができ、例えば軟鋼から作成することができる。
【0087】
上側タンク部分1の外側部分および内側部分がともに取り付けられると、調整可能パッドが内側側壁に接触するまで、調整可能パッド300と外側側壁との間の間隙を増大させるために、締結要素の締結度、すなわちトルクの程度を調整する、すなわち緩めることができる。したがって、通常の動作中、調整可能パッドは、短絡負荷などの通常の動作力を内側タンク部分から外側タンク部分に伝達することができる。内側タンク部分および外側タンク部分の両方が動作負荷の一部を吸収することができるため、タンクの構造を補強することができ、したがってタンクはより大きい負荷に耐えることができ、U字形ビームの偏向を防止することができる。
【0088】
さらに、内部アークによって引き起こされるような過圧が生じた場合、および調整可能パッド300が内側側壁に取り付けられていないため、外側パネルは、圧力波のエネルギーの少なくとも一部を吸収するために自由に偏向することができる。したがって、タンクの破断のリスクを大幅に低減することができ、より安全なタンクが提供される。
【0089】
一例(図示せず)では、各U字形ビーム51、53は、その中央部分に配置された調整可能パッド300を含むことができ、それによってタンクの構造全体がさらに強化される。
【0090】
本開示によるタンクを有する変圧器またはリアクトルは、図6に示すように、方法200の実施形態によって組み立てることができ、方法は、例えば、
ブロック201において、実質的に水平な周縁接合線に沿って互いに接合されるように構成された外側タンク部分および内側タンク部分を提供することであって、内側タンク部分は、内側タンク部分の内側側壁の内面に取り付けられた短絡ビームを備える、提供することと、
ブロック202において、外側タンク部分を内側タンク部分上に取り付け、周縁接合線に沿ってそれらをともに溶接し、それによって、上側タンク部分を形成することと、
ブロック203において、実質的に水平なさらなる周縁接合線に沿って内側タンク部分に接合されるように構成された下側タンク部分を提供することと、
ブロック204において、下側タンク部分の内側に外鉄型変圧器または外鉄型リアクトルの能動部品を取り付けることと、
ブロック205において、内側タンク部分を下側タンク部分上に取り付け、さらなる周縁線に沿ってそれらをともに溶接することと、
ブロック206において、タンクカバーを提供することと、
ブロック207において、タンクカバーを外側タンク部分の上部に取り付け、それらをともに溶接することと
を含む。
【0091】
当然ながら、外側タンク部分と内側タンク部分との組み立ては、組み立てが下側タンク部分に取り付けられる前にいつでも実行されてもよい。
【0092】
変圧器またはリアクトルタンクが上述のような補強帯100を備える場合、上記の方法では、内側タンク部分および外側タンク部分が下側タンク部分に取り付けられる前に、外側タンク部分に上側補強リングを設けることができ、下側タンク部分に下側補強リングを設けることができる。内側タンク部分および下側タンク部分が互いに取り付けられて溶接された後に、補強帯の閉鎖プレートまたはベルトが適用されて溶接される。閉鎖プレートまたはベルトは、例えば、タンクカバーを取り付けた後に、プロセスの最後のステップとして取り付けることができる。
【0093】
タンクが調整可能パッド300を備える例では、組み立て方法200は、複数の開口を有する外側タンク部分を提供することを含むことができる。
【0094】
加えて、ブロック202において、外側タンク部分を内側タンク部分に取り付ける前に、開示された例のいずれかによる調整可能パッド300を提供することができ、その後、外側タンク部分が内側タンク部分に取り付けられると、例えばU字形ビームの中央領域57に対応するように外側側壁41に結合することができる。
【0095】
調整可能パッドを提供するために、最初に、複数のスタッドを、開示されている例のいずれかによる平板に取り付ける、例えば溶接することができる。次いで、圧縮性ストリップを平板に結合することができ、複数の穿孔を含む圧縮性ストリップ320を設けることができ、次いでストリップを平板の近くに置いて穿孔をスタッドと位置合わせし、最後にスタッドを孔に導入することができる。したがって、ストリップとフラットとを一緒にすることができる。
【0096】
その後、スタッドおよび圧縮性ストリップを備える平板を、外側タンク部分の外側側壁に隣接して配置することができる。次いで、スタッドを外側側壁の複数の開口部と位置合わせし、次いで開口に導入することができる。次いで、複数の締結要素340をスタッドに結合することができ、その後、締結要素を固定することができる。したがって、調整可能パッド300は、外側側壁41に結合することができる。
【0097】
次に、外側タンク部分を内側タンク部分に取り付ける前に、ブロック202において、締結要素340のトルク度は、例えばねじ込みによって増加させることができる。平板と外側側壁との間の距離D2(図8Aを参照)を短くすることができ、それによって、外側タンク部分が取り付けられるときに調整可能パッドが内側側壁と衝突するのを防止する。平板を側壁に近づける、すなわち、両方の要素間の距離を短くすることによって、組み立てプロセスを容易にすることができる。
【0098】
外側タンク部分および内側タンク部分をともに取り付けて溶接した後、ブロック202において、平板が内側タンク部分10の内側側壁11に接触するまで、締結要素のトルクの程度を減少させることができる。次いで、封止パネルを外側側壁に取り付ける、例えば溶接することができる。
【0099】
したがって、外側タンク部分10および内側タンク部分40は、機械的に連結されてもよく、および/またはU字形ビーム51、53の中央領域57において協働することができる。結果として、U字形ビームが耐える動作負荷の少なくとも一部を外側側壁に伝達することができ、したがってタンクの構造全体を強化することができ、すなわちより大きい動作負荷に耐えることができる。したがって、外側側壁と内側側壁とを機械的に連結する調整可能パッドを使用することによって、U字形ビームが、その最も脆弱な点、すなわち中央領域において偏向することを防止することができる。
【0100】
さらに、例えば内部アークの結果などの過圧が発生した場合、調整可能パッドは内側側壁に結合されなくてもよいため、外側側壁は外側に自由に偏向することができる。外側側壁は、過圧負荷の一部を吸収することができ、したがって、タンクの破断が防止され、爆発リスクが低減する。
【0101】
図8Aおよび図8Bは、2つの異なる取り付け段階にある内側側壁および外側側壁を示す。図はまた、各段における平板310と外側側壁41との間の間隙または距離D1、D2を示している。
【0102】
図8Aは、外側タンク部分が内側タンク部分に取り付けられているところを示している(矢印を参照)。この例では、内側側壁11は、それに取り付けられたU字形ビームを備え、外側側壁41は、調整可能パッドと、それに結合された封止パネル44とを備える。
【0103】
図では、締結要素は、調整可能パッドと外側側壁との間の距離D2を減少させるために、高度のトルクを含むことができる。したがって、調整可能パッドが内壁と衝突することを防止することができ、これにより、取り付けプロセスが容易になる。この図はまた、平板310と外側側壁41との間の隙間にそのサイズを適合させる圧縮ストリップ320を示しており、例えば、ストリップはまた、圧縮された結果として横方向に突出してもよい。
【0104】
図8Bは、内側タンク部分に既に取り付けられた外側タンク部分を示す。図では、内側側壁11および外側側壁41は、調整可能パッドによって機械的に連結されて示されている。図8Aに関して、締結要素のトルクの程度は、(図8Aに対して)漸進的に小さくすることができ、平板と外側側壁との間の距離は、平板が内側側壁に接触するまで増加する。図8Bはまた、増加した距離D1に適合された圧縮性ストリップも示す。
【0105】
調整可能パッドが内側側壁に接触すると、外側側壁と内側側壁とが協働し、それにより、より大きい動作負荷に耐えることができ、より堅牢なタンクがもたらされる。
【0106】
さらに、調整可能パッドが内側側壁に取り付けられないことにより、例えば内部アークに起因する過圧が生じた場合に外側側壁が自由に偏向することが可能になり、タンク爆発の危険性が防止される。したがって、より安全なタンクを達成することができる。
【0107】
いくつかの特定の実施形態および例のみが本明細書に開示されているが、開示された技術革新の他の代替の実施形態および/または使用、ならびにそれらの明白な修正および均等物が可能であることが当業者には理解されよう。さらに、本開示は、記載された特定の実施形態のすべての可能な組み合わせを網羅する。本開示の範囲は、特定の実施形態によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲を公正に読解することによってのみ決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B