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特許7292543ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20230609BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20230609BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B29B17/02
C11D1/66
B32B27/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023016796
(22)【出願日】2023-02-07
【審査請求日】2023-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】大内 将郁
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-122860(JP,A)
【文献】特許第7215625(JP,B1)
【文献】特開2021-098295(JP,A)
【文献】国際公開第2022/044941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00
C08J11/00
B32B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ層を含むラミネートフィルムに脱離液を接触させて前記インキ層を脱離させる工程を有する、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法であって、
前記ラミネートフィルムが、基材フィルム、前記インキ層、接着層、及びシーラントフィルムがこの順に配置された積層構造を含み、
前記脱離液が、ノニオン性界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有し、
前記ノニオン性界面活性剤が、ラウリルグリコシド及びアルコールエトキシ化物であり、
前記インキ層が、バインダーを含有するインキ組成物で形成された層であるとともに、前記バインダーが、ポリウレタン樹脂を含み、
前記接着層が、一液型の水性接着剤で形成された層である、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【請求項2】
前記水性接着剤が、ポリエチレンイミン系接着剤及びポリブタジエン系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【請求項3】
前記脱離液中、前記ノニオン性界面活性剤の含有量が0.1~15質量%であり、前記アルコール系溶剤の含有量が40~99質量%である請求項1又は2に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【請求項4】
前記バインダーが、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、塩素化ポリプロピレン、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂をさらに含む請求項1又は2に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【請求項5】
前記基材フィルムが、PETフィルムであり、
前記シーラントフィルムが、ポリエチレンフィルムである請求項1又は2に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への対応等の観点から、ラミネートフィルムをはじめとするフィルム状の印刷物から印刷層を除去してプラスチックフィルムを回収してリサイクルする方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、プラスチック製の基材及び印刷インキで形成した皮膜を含む積層体を、温水又は水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液で処理し、皮膜を脱離させて基材を回収する方法が提案されている(特許文献1)。また、プラスチック基材、インキ膜、及び接着剤層を含むラミネートフィルムを、界面活性剤を含有する加熱した脱離液で処理し、インキ膜等を除去してプラスチック基材を回収する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2022/137914号
【文献】特許第7004124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2で提案された方法では、熱水や水酸化ナトリウム等の強アルカリの水溶液等の脱離液を用いる必要がある。このため、これらの脱離液の取扱いに細心の注意を払う必要があり、必ずしも汎用性の高い方法であるとはいえなかった。また、これらの脱離液でラミネートフィルム等を処理すると、プラスチック製の基材フィルムが変形したり、透明性が損なわれたりすることがあり、高品位な基材フィルムを回収することが困難な場合があった。さらに、従来の方法でラミネート強度の高いラミネートフィルムを処理しても、接着剤層を十分に除去することが困難な場合があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ラミネート強度の高いラミネートフィルムを簡易かつ比較的温和な条件で処理した場合であっても、ラミネートフィルムからインキ層を容易に脱離させて基材フィルムを回収することが可能な、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示すラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法が提供される。
[1]インキ層を含むラミネートフィルムに脱離液を接触させて前記インキ層を脱離させる工程を有する、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法であって、前記ラミネートフィルムが、基材フィルム、前記インキ層、接着層、及びシーラントフィルムがこの順に配置された積層構造を含み、前記脱離液が、ノニオン性界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有し、前記インキ層が、バインダーを含有するインキ組成物で形成された層であるとともに、前記バインダーが、ポリウレタン樹脂を含み、前記接着層が、一液型の水性接着剤で形成された層である、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
[2]前記ノニオン性界面活性剤が、ラウリルグリコシド及びアルコールエトキシ化物である前記[1]に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
[3]前記脱離液中、前記ノニオン性界面活性剤の含有量が0.1~15質量%であり、前記アルコール系溶剤の含有量が40~99質量%である前記[1]又は[2]に記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
[4]前記水性接着剤が、ポリエチレンイミン系接着剤及びポリブタジエン系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[3]のいずれかに記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
[5]前記バインダーが、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、塩素化ポリプロピレン、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂をさらに含む前記[1]~[4]のいずれかに記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
[6]前記基材フィルムが、PETフィルムであり、前記シーラントフィルムが、ポリエチレンフィルムである前記[1]~[5]のいずれかに記載のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラミネート強度の高いラミネートフィルムを簡易かつ比較的温和な条件で処理した場合であっても、ラミネートフィルムからインキ層を容易に脱離させて基材フィルムを回収することが可能な、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法(以下、単に「脱離方法」とも記す)の一実施形態は、インキ層を含むラミネートフィルムに脱離液を接触させてインキ層を脱離させる工程を有する、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法である。脱離液を接触させて処理する対象物であるラミネートフィルムは、基材フィルム、インキ層、接着層、及びシーラントフィルムがこの順に配置された積層構造を含む。使用する脱離液は、ノニオン性界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有する。ラミネートフィルムの構成層の一つであるインキ層は、バインダーを含有するインキ組成物で形成された層であるとともに、このバインダーは、ポリウレタン樹脂を含む。そして、ラミネートフィルムの構成層の一つである接着層は、一液型の水性接着剤(アンカーコート剤)で形成された層である。以下、本実施形態の脱離方法の詳細について説明する。
【0010】
(脱離工程)
脱離工程では、インキ層を含むラミネートフィルムに脱離液を接触させる。ラミネートフィルムに脱離液を接触させることにより、ラミネートフィルムの構成層の一つであるインキ層を脱離させることができる。ラミネートフィルムに脱離液を接触させる方法としては、ラミネートフィルムを脱離液に含浸させる方法;ラミネートフィルムに脱離液を吹き付ける方法;等を挙げることができる。なかでも、より簡便かつ効率的にインキ層を脱離させることができることから、ラミネートフィルムを脱離液に含浸させることが好ましい。
【0011】
ラミネートフィルムを脱離液に含浸させる際の温度及び時間は特に限定されず、インキ層を構成するインキ組成物の種類や、接着層を構成する水性接着剤の種類等に応じて適宜設定することができる。ラミネートフィルムを含浸させる脱離液を加熱してもよいが、操作が煩雑になりやすい。このため、脱離液の温度は30℃以下であることが好ましく、いわゆる室温(25℃)以下であることがさらに好ましい。また、ラミネートフィルムを脱離液に含浸させる時間は、例えば、12時間~2週間程度とすればよく、24時間~10日間程度とすることが好ましい。
【0012】
脱離液に含浸させる等してラミネートフィルムに脱離液を接触させると、時間経過に伴ってインキ層が脱離液中に溶出又は剥離等して脱離するとともに、接着層も脱離液中に溶出又は剥離等して脱離する。その後、残った基材フィルム及びシーラントフィルムを取り出し、必要に応じて水洗及び乾燥等することで、基材フィルム及びシーラントフィルムを回収することができる。
【0013】
(脱離液)
脱離液は、ノニオン性界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有する液状組成物である。ノニオン性界面活性剤としては、ラウリルグリコシド、アルコールエトキシ化物、アラキルグリコシド、及びデシルグリコシド等を挙げることができる。ノニオン性界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ラウリルグリコシド及びアルコールエトキシ化物を併用することが好ましい。
【0014】
脱離液中のノニオン性界面活性剤の含有量は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましく、0.8~5質量%であることが特に好ましい。また、ラウリルグリコシド及びアルコールエトキシ化物をノニオン性界面活性剤として含有する場合、脱離液中のラウリルグリコシドの含有量は、0.5~10質量%であることが好ましい。また、脱離液中のアルコールエトキシ化物の含有量は、0.3~10質量%であることが好ましい。
【0015】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びn-ヘキサノール等を挙げることができる。脱離液中のアルコール系溶剤の含有量は、40~99質量%であることが好ましく、60~97質量%であることがさらに好ましく、80~95質量%であることが特に好ましい。また、脱離液中の水の含有量は、0~40質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがさらに好ましく、2~10質量%であることが特に好ましい。
【0016】
上記組成の脱離液を用いることで、熱水や水酸化ナトリウム等のアルカリ成分を用いなくとも、比較的温和な条件でインキ層及び接着層をセパレートフィルムから脱離させることができる。したがって、脱離液は、アルカリ成分を実質的に含有しないことが好ましい。
【0017】
(ラミネートフィルム)
ラミネートフィルムは、基材フィルム、インキ層、接着層、及びシーラントフィルムがこの順に配置された積層構造を含む。なお、ラミネートフィルムは、これらの層(基材フィルム、インキ層、接着層、及びシーラントフィルム)以外のその他の層をさらに含んでいてもよい。また、これらの層(基材フィルム、インキ層、接着層、及びシーラントフィルム)は、それぞれ2層以上含んでいてもよい。
【0018】
[基材フィルム]
基材フィルムは、通常、各種の樹脂で形成されている。基材フィルムを形成する樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及びポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、及びABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;セロハン;等を挙げることができる。
【0019】
基材フィルムは、コロナ処理されていてもよいし、未処理であってもよい。また、基材フィルムは延伸されていてもよいし、未延伸であってもよい。基材フィルムは、シリカ、アルミナ、及びアルミニウム等の金属又は金属酸化物等が蒸着されていてもよく、蒸着面がポリビニルアルコール等の塗料でコーティングされていてもよい。
【0020】
[インキ層]
インキ層は、バインダーを含有するインキ組成物で形成された層である。インキ層は、例えば、基材フィルムにインキ組成物を付与して印刷した後、溶剤等の揮発成分を蒸発させることによって形成される。
【0021】
インキ組成物中のバインダーは、ポリウレタン樹脂を含む。インキ層が、ポリウレタン樹脂をバインダーとして含有しないインキ組成物で形成された層である場合、このインキ層を含むラミネートフィルムを脱離液に接触させて処理しても、インキ層を脱離させてラミネートフィルムを剥離させることが困難である。
【0022】
ポリウレタン樹脂としては、通常、ポリオールとポリイソシアネートとを重合して得られる、有機溶剤に可溶な熱可塑性のポリウレタン樹脂を用いる。ポリウレタン樹脂は、従来公知の方法によって製造することができる。ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させることによって得られるポリウレタン樹脂が好ましい。
【0023】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水添ひまし油ポリオール、ダイマーポリオール、及び水添ダイマーポリオール等を挙げることができる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、200~5,000であることが好ましい。数平均分子量は、末端を水酸基とした場合の水酸基価から算出される値である。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸等の多塩基酸とジオールとのエステル化反応により得られる縮合物等を挙げることができる。多塩基酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、及び重合脂肪酸等を挙げることができる。ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、及び水添ダイマージオール等を挙げることができる。ポリエステルポリオールの数平均分子量は、200~5,000であることが好ましい。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート、並びにこれらのイソシアヌレート体、アダクト体、アロファネート体、及びビュレット体等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネート(XDI)等を挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水素添加キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、及びノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0027】
鎖伸長剤としては、ジオール系鎖伸長剤、ジアミン系鎖伸長剤、及び多官能系鎖伸長剤等を挙げることができる。ジオール系鎖伸長剤としては、エチレンジオール、1,3-プロピレンジオール、及び1,4-ブタンジオール等を挙げることができる。ジアミン系鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、及びp-フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0028】
ポリウレタン樹脂のアミン価は、0.1~3mgKOH/gであることが好ましく、0.2~2mgKOH/gであることがさらに好ましく、0.3~1mgKOH/gであることが特に好ましく、0.4~0.7mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0029】
インキ組成物中のポリウレタン樹脂の含有量は、インキ組成物中の固形分を基準として、4~90質量%であることが好ましく、10~85質量%であることがさらに好ましく、15~80質量%であることが特に好ましい。また、インキ組成物中のポリウレタン樹脂の含有量は、バインダーの合計質量を基準として、5~100質量%であることが好ましく、20~98質量%であることがさらに好ましく、30~95質量%であることが特に好ましく、60~90質量%であることが最も好ましい。
【0030】
バインダーは、ポリウレタン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。バインダーとして使用しうるポリウレタン樹脂以外の樹脂としては、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等を挙げることができる。なかでも、バインダーは、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、塩素化ポリプロピレン、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0031】
インキ組成物は、溶剤、顔料、顔料誘導体、分散剤、可塑剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、脂肪酸アミド、架橋剤、及びシランカップリング剤等のその他の成分をさらに含有してもよい。
【0032】
[接着層]
接着層は、一液型の水性接着剤で形成された層である。接着層が、例えば、二液硬化型のイソシアネート系接着剤で形成された層である場合、この接着層を含むラミネートフィルムを脱離液に接触させて処理しても、インキ層を脱離させてラミネートフィルムを剥離させることが困難である。
【0033】
一液型の水性接着剤としては、ポリエチレンイミン系接着剤、ポリブタジエン系接着剤、シランカップリング剤系接着剤、及び変性ポリエチレンイミン系接着剤等を挙げることができる。なかでも、一液型の水性接着剤は、ポリエチレンイミン系接着剤及びポリブタンジエン系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。なお、ポリエチレンイミン系接着剤は、チタン変性されていてもよい。
【0034】
[シーラントフィルム]
基材フィルムは、通常、各種の樹脂で形成されている。基材フィルムを形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、並びにこれらの複合材料等を挙げることができる。なかでも、シーラントフィルムは、ポリエチレンフィルムであることが好ましい。
【0035】
(ラミネートフィルムの製造方法)
ラミネートフィルムは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。ラミネートフィルムを製造する方法としては、例えば、基材フィルム上に設けられたインキ層上に、接着層を介してシーラントフィルムを貼り合わせて積層するドライラミネート法;基材フィルム上に設けられたインキ層上に、接着層を介して溶融樹脂を押し出し、シーラントフィルムを形成して積層する溶融押出ラミネート法;溶融押出ラミネート法によって溶融樹脂を押し出して形成した層の上に、シーラントフィルムを貼り合わせて積層する方法(いわゆる、溶融押出サンドイッチラミネート法やタンデムラミネート法);等を挙げることができる。
【0036】
具体的には、まず、基材フィルムの表面上にグラビア印刷によってインキ組成物を付与してインキ層を形成する。なお、コロナ放電処理された基材フィルムを用いる場合には、処理面上にインキ組成物を付与してインキ層を形成する。次いで、形成したインキ層上に接着剤を塗布して接着層を形成する。その後、接着層上に溶融樹脂を押し出して層を形成するとともに、形成した層にシーラントフィルムを貼り合わせることで、ラミネートフィルムを得ることができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0038】
<材料の用意>
以下に示す各種の材料を用意した。
・ポリウレタン樹脂(1):商品名「サンプレンIB-974」、三洋化成工業社製、アミン価0.5mgKOH/g
・ポリウレタン樹脂(2):商品名「TA24-527C」、昭和電工マテリアルズ社製、アミン価0.6mgKOH/g
・アクリル樹脂:商品名「アクリット1LO-696」、大成ファインケミカル社製
・ニトロセルロース:商品名「DHX3-5」、ノーベルエヌシー社製
・セルロースアセテートプロピオネート:商品名「CAP482-0.5」、イーストマンケミカル社製
・塩素化ポリプロピレン:商品名「ハードレン15-LP」、東洋紡社製
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:商品名「ソルバインTA5R」、日信化学工業社製
・酸化チタン:商品名「チタニックスJR-806」、テイカ社製
・フタロシアニン:商品名「銅フタロシアニンブルーC.I.Name『PB-15:3』」、大日精化工業社製
・炭化水素ワックス:商品名「MPP-635VF」、MICRO POWDERS社製
・脂肪酸アミド:商品名「脂肪酸アマイドS」、花王ケミカル社製
・シリカ:商品名「ニップシールSS-50B」、東ソーシリカ社製
【0039】
<インキ組成物の調製>
(調製例1)
ポリウレタン樹脂(1)7.4部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体1.9部、フタロシアニン10.0部、酢酸エチル32.5部、及びイソプロパノール17.9部をペイントシェイカーに入れた。1時間撹拌した後、脂肪酸アミド0.2部、及び酢酸n-プロピル30.1部を添加して混合し、インキ組成物1を得た。
【0040】
(調製例2~33)
表1-1~1-3に示す配合としたこと以外は、前述の調製例1と同様にして、インキ組成物2~33を得た。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
<ラミネートフィルムの製造>
(製造例1)
インキ組成物1を溶剤で希釈して印刷用インキを調製した(ザーンカップ#3:16秒)。バーコーター#5を使用し、調製した印刷用インキを基材フィルム(PETフィルム、商品名「東洋紡エステルフィルム」、東洋紡社製、厚さ12μm)に、乾燥後の厚さが1μmとなるように塗布した後、乾燥させて、基材フィルム上にインキ層を形成した。グラビア印刷により、形成したインキ層の表面に、アンカーコート剤(チタン変性したポリエチレンイミン系一液型水性接着剤、商品名「オルガチックスWS-680A」、マツモトファインケミカル社製)を、乾燥後の塗布量が0.01g/mとなるように塗布した後、乾燥炉を使用して80℃で乾燥させて、インキ層上に接着層を形成した。溶融状態のLLDPE(商品名「ウルトゼックス 15100C」、プライムポリマー社製)を形成した接着層の表面上に押し出した後、LLDPEフィルム(商品名「ウルトゼックス 15100C」、プライムポリマー社製)を張り合わせた。これにより、接着層とLLDPEフィルムの間に厚さ50μmのLLDPE層が設けられたラミネートフィルム1を得た。
【0045】
(製造例2~33)
インキ組成物とアンカーコート剤を表2に示す組み合わせで用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、ラミネートフィルム2~33を得た。使用したアンカーコート剤の種類を以下に示す。なお、製造例28~33では、商品名「セイカダイン2710A」と商品名「セイカダイン2710B」が1:2の質量比となるように配合したアンカーコート剤を用いた。
・ポリエチレンイミン系(1):チタン変性したポリエチレンイミン系一液型水性接着剤、商品名「オルガチックスWS-680A」、マツモトファインケミカル社製
・ポリエチレンイミン系(2):ポリエチレンイミン系一液型水性接着剤、商品名「エポミンP-1000」、日本触媒社製
・ポリブタジエン系:ポリブタンジエン系一液型水性接着剤、商品名「チタボンドT-180E」、日本曹達社製
・イソシアネート系:イソシアネート系二液型接着剤、商品名「セイカダイン2710A」+商品名「セイカダイン2710B」、大日精化工業社製
【0046】
【0047】
<評価>
(ラミネート強度)
ラミネートフィルムを幅15mm、長さ100mmに切断して試料を作製した。作製した試料を用い、引張試験機(装置名「テンシロン RTG-1225」、エー・アンド・デイ社製)を使用して、引張速度300mm/minの条件でT型剥離試験を実施してラミネート強度を測定しに、以下に示す評価基準にしたがってラミネートフィルムのラミネート強度を評価した。結果を表3に示す。なお、以下に示す評価基準のうち、「2」~「5」を実用可能と判断した。
5:2.0N/15mm以上
4:1.5N/15mm以上2.0N/15mm未満
3:1.0N/15mm以上1.5N/15mm未満
2:0.5N/15mm以上1.0N/15mm未満
1:0.5N/15mm未満
【0048】
(脱離試験)
ラミネートフィルムを4つに切断し、脱離液(商品名「SKYクリーン」、エス・ケイ・ワイ社製)に含浸させて室温条件下で静置した。含浸開始から2日後及び1週間後のラミネートフィルムの状態を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって「剥離状態」、「インキ層の状態」、及び「フィルムの外観」を評価した。結果を表3に示す。なお、使用した脱離液(商品名「SKYクリーン」、エス・ケイ・ワイ社製)の組成は、アルコール系溶剤90~91%、水0~8%、ラウリルグルコシド(ノニオン性界面活性剤)<0.5%、及びアルコールエトキシ化物(ノニオン性界面活性剤)<0.3%である。なお、以下に示す評価基準のうち、「剥離状態」及び「インキ層の状態」については「3」~「5」を実用可能と判断し、「フィルムの外観」については「○」を実用可能と判断した。
【0049】
[剥離状態]
5:ラミネートフィルムが完全に剥離していた。
4:ラミネートフィルムがほとんど剥離していた。
3:ラミネートフィルムが半分程度剥離していた。
2:ラミネートフィルムが一部剥離していた。
1:ラミネートフィルムが剥離していなかった。
【0050】
[インキ層の状態]
5:インキ層が基材フィルムから100%脱離していた。
4:インキ層が基材フィルムから75%程度脱離していた。
3:インキ層が基材フィルムから50%程度脱離していた。
2:インキ層が基材フィルムから25%程度脱離していた。
1:インキ層が基材フィルムからほとんど脱離していなかった。
【0051】
[フィルムの外観]
○:基材フィルムの寸法に変化がなく、透明であった。
△:基材フィルムの一部が変形又は不透明になっていた。
×:基材フィルムが大きく変形又は不透明になっていた。
【0052】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法は、例えば、包材等として用いられるラミネートフィルムから基材フィルム等の構成材料を良好な状態で容易に回収するための方法として有用である。
【要約】
【課題】ラミネート強度の高いラミネートフィルムを簡易かつ比較的温和な条件で処理した場合であっても、ラミネートフィルムからインキ層を容易に脱離させて基材フィルムを回収することが可能な、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法を提供する。
【解決手段】インキ層を含むラミネートフィルムに脱離液を接触させてインキ層を脱離させる工程を有する、ラミネートフィルムからインキ層を脱離させる方法である。ラミネートフィルムが、基材フィルム、インキ層、接着層、及びシーラントフィルムがこの順に配置された積層構造を含み、脱離液が、ノニオン性界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有し、インキ層が、バインダーを含有するインキ組成物で形成された層であるとともに、バインダーが、ポリウレタン樹脂を含み、接着層が、一液型の水性接着剤で形成された層である。
【選択図】なし