(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】コーティング組成物、および積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20230612BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230612BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20230612BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20230612BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230612BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/00 D
C09D7/62
C09D175/14
B32B9/00 A
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2022194157
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2023-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江草 直樹
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181572(WO,A1)
【文献】特開2013-035274(JP,A)
【文献】特開2018-058234(JP,A)
【文献】特開2019-131664(JP,A)
【文献】特開2014-162889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 9/00
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、
前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、
前記重合性化合物(A)が
、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して155~500質量部であり、
基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下であることを特徴とする、
コーティング組成物。
【請求項2】
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの含有率が、前記重合性化合物(A)100質量%中、50~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが、脂環構造を有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
少なくとも、基材、請求項1~3いずれか1項に記載のコーティング組成物により形成されたプライマー層、無機酸化物層がこの順に配置されている積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸化物層との密着性に優れたプライマー層の形成に最適なコーティング組成物および、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂等のプラスチックからなる基材は、透明性や耐衝撃性に優れ、軽量であり加工が容易であるため、ガラス基材に変えて種々の用途に用いられている。
【0003】
しかし、プラスチック基材はガラス基材と比較して硬度および耐擦傷性等の表面特性に劣ることがある。このため、活性エネルギー線硬化性組成物をプラスチック基材表面に塗装してプライマー層を形成し、さらにその上に無機物質層を積層させるなどして積層体を形成し(特許文献1 参照)、プラスチック基材の表面特性を改良することが検討されている。
【0004】
このように、プライマー層の上に無機物質層を積層させることで、硬度および耐擦傷性等の表面特性を改良することが行われており、無機物質層との密着性を向上させるためにプライマー層にシリカ粒子を用いることが提案されているが(特許文献2、3 参照)、プライマー層と無機物質層との密着性はいまだ満足のいくものではない。また、特許文献2では、フマル酸ジエステル系樹脂を含むフィルム基板の両側に厚さ10μmのハードコート層を形成してフィルムの反りを抑えているが、より薄い基材の片面にハードコート層を形成した際はフィルムの反りが生じやすくなるため、反りが小さい積層体が求められている。
【0005】
また、特許文献4では、プライマー層中のシリカナノ粒子含有量を増やす組成が提案されているが、含有量が増えすぎるとシリカナノ粒子が凝集してプライマー層の光透過性が低下することが指摘されている。
【0006】
プライマー層の上に無機物質層を積層させた積層体は、携帯電話やノート型パソコンなどのタッチパネル部材に用いられるが、近年屋外や自動車内装部材などで使用される機会が多くなっている。そのため、高温や高湿度などの過酷な環境下に長時間曝されても積層体の光透過性を低下させないことが求められる。
【0007】
また近年では浴室など高温高湿下において使用される場面もあり、より過酷な条件である沸騰水(100℃)で煮沸した後においても、積層体の光透過性を低下させない耐煮沸性が求められてきている。
【0008】
しかしながら、従来のコーティング組成物では煮沸試験後の光透過性の低下を抑制することが困難であり、基材の片面のみにハードコート層を形成した場合の反りにも課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-035274号公報
【文献】特開2018-058234号公報
【文献】特開2019-131664号公報
【文献】特開2014-162889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、プライマー層と無機酸化物層との密着性および表面の耐擦傷性に優れ、かつPETフィルムにコーティング組成物を塗工したプライマー層を有する基材の光透過性が高く(ヘイズが低い)、さらには反りが小さく、煮沸試験後もヘイズ値の変化が少ないプライマー層を形成するためのコーティング組成物および該コーティング組成物を用いた積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明[1]~[4]に至った。
【0012】
[1]基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、 前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、前記重合性化合物(A)が、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくとも一種を含み、前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して155~500質量部であり、基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下であることを特徴とする、コーティング組成物。
【0013】
[2]3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの含有率が、前記重合性化合物(A)100質量%中、50~100質量%であることを特徴とする[1]に記載のコーティング組成物。
【0014】
[3]前記3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが、脂環構造を有することを特徴とする[1]または[2]記載のコーティング組成物。
【0015】
[4]少なくとも、基材、[1]~[3]いずれか記載のコーティング組成物により形成されたプライマー層、無機酸化物層がこの順に配置されている積層体。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、プライマー層と無機酸化物層との密着性および表面の耐擦傷性に優れ、かつPETフィルムにコーティング組成物を塗工したプライマー層を有する基材の光透過性が高く(ヘイズが低い)、さらには反りが小さく、煮沸試験後もヘイズ値の変化が少ないプライマー層を形成するためのコーティング組成物および該コーティング組成物を用いた積層体の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0018】
初めに本明細書で用いられる用語について説明する。
尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、および「(メタ)アクリレート」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、および「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
また、「重合性化合物(A)」を「化合物(A)」、「シリカ粒子(B)」を「粒子(B)」と、それぞれ称することがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
≪コーティング組成物≫
本発明のコーティング組成物は、重合性化合物(A)と、特定量の平均粒径2~150nmかつ(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含む。また、基材上に本発明のコーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値は、1%以下である。ヘイズ値の測定方法は、実施例の欄に詳細を記載する。
前記化合物(A)は、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび/ または3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
このようなコーティング組成物であることで、プライマー層と無機酸化物層との密着性および表面の耐擦傷性に優れ、かつPETフィルムにコーティング組成物を塗工したプライマー層を有する基材の光透過性が高く(ヘイズが低い)、さらには反りが小さく、煮沸試験後もヘイズ値の変化が少ないプライマー層を形成することが可能となる。
【0020】
<重合性化合物(A)>
重合性化合物(A)は、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれか一種を含む。3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれか一種を含むことで、プライマー層表面の耐擦傷性に優れ、さらに光透過性が高い(ヘイズが低い)プライマー層を得ることができる。また、後述する粒子(B)と混合しても粒子(B)の凝集を抑制し、プライマー層の光透過性が低下しない。
【0021】
<3官能以上の(メタ)アクリレート>
3官能以上の(メタ)アクリレートとして、具体的には、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
3官能以上の(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M300等)、グリセリントリ(メタ)アクリレート(東亜合成社製 アロニックス M―930等)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(サートマー社製 SR399等)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M600等)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(MIWON社製 Miramer M340等)、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(共栄社化学社製 ライトアクリレート PE-4A等)、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物:等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
<3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート>
3官能以上のウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0024】
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、および2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライド等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびダイマー酸のカルボキシ基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0026】
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートは、脂環構造を有することが好ましい。脂環構造を有することで、無機酸化物層との密着性に優れたプライマー層が形成できる。
【0027】
<その他重合性化合物>
重合性化合物(A)は形成するプライマー層に付与すべき性能に応じて、その他活性エネルギー線硬化型化合物を含むことができる。
その他重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、2官能以下の(メタ)アクリレート、2官能以下のウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
2官能以下の(メタ)アクリレートとして、具体的には
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロオキシエチルアシッドホスフェートなどのエステル化合物、スチレン、α-メチレンなどのスチレン系化合物、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン化合物、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-ε-カプロラクタム、アクリロイルモルホリンなどの窒素含有化合物、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有化合物、ポリマーの主鎖がシリコーン成分であり片末端が(メタ)アクリレート基で修飾された重合性シリコーン化合物等の単官能(メタ)アクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
<2官能以下のウレタンアクリレート>
2官能以下のウレタンアクリレートは、前記3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートと同様にして得られる(メタ)アクリレート基が2個以下のものである。
【0030】
<ポリエステルアクリレート>
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、酸無水物の誘導体も利用できる。
【0031】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類を挙げることができる。
【0032】
また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3つ以上の水酸基を含有するポリオールを一部使用しても良い。
【0033】
上記、多価アルコールのうち、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、などの、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入されたものが、オリゴマーの、接着性、耐熱性等の点で好ましい。
【0034】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、上記と同様のものが挙げられ、中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0035】
<エポキシアクリレート>
ポリエポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられる。
【0036】
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの含有率は、活性エネルギー線硬化型化合物(A)中50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがさらに好ましい。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの含有率が50質量%以上であることで、表面の耐擦傷性に優れたプライマー層が形成できる。
【0037】
<シリカ粒子(B)>
シリカ粒子(B)は、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカナノ粒子である。コーティング組成物が、シリカ粒子(B)を所定量含有することで、形成されるプライマー層は、無機酸化物層との密着性に優れ、かつ光透過性が低下せず、ヘイズが低いプライマー層を得ることができる。
【0038】
シリカナノ粒子の平均粒径が2nm未満であると、形成されるコート層の表面に表出するシリカナノ粒子の面積が小さく、無機酸化物層との密着性向上効果が得られない。一方、シリカナノ粒子の平均粒径が150nmを超えると、プライマー層の表面積が十分に大きくならず、無機酸化物層との密着性向上効果が得られない。また、光透過性が低下して、形成されるプライマー層が白濁する。シリカナノ粒子の平均粒径は2~90nmであることが好ましく、2~50nmであることが特に好ましい。
【0039】
シリカ粒子(B)の含有量は、重合性化合物(A)100質量部に対して155~500質量部であり、好ましくは250~400質量部であり、さらに好ましくは280~350質量部である。
シリカ粒子(B)の含有量が155質量部未満であると、無機酸化物層との密着性向上効果が得られず、また重合性化合物(A)の割合が高くなるため煮沸後のヘイズ値が高くなる。一方、シリカナノ粒子の含有量が500質量部を超えると、シリカナノ粒子が凝集し、得られるプライマー層の光透過性が低下しヘイズが高くなる。
【0040】
<光重合開始剤>
本発明のコーティング組成物は光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、例えば、モノカルボニル系光重合開始剤、ジカルボニル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、アミノカルボニル系光重合開始剤等が使用できる。
光重合開始剤は、増感剤と併用してもよい。
【0041】
例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のモノカルボニル系光重合開始剤;
2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、及びメチル-α-オキソベンゼンアセテート等のジカルボニル系光重合開始剤;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、及び1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、及びベンゾインノルマルブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;
並びに、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、及び2,5’-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等のアミノカルボニル系光重合開始剤;
等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤の市販品としては、IGM-Resins B.V.社製のOmnirad184、651、500、907、127、369、784、2959、エサキュアワン、BASF(株)社製ルシリンTPO等が挙げられる。特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0043】
光重合開始剤の含有率は、プライマー層が紫外線により所定の物性になるように硬化できる量さえ含まれていれば制限されないが、硬化速度、並びに、プライマー層の硬度及び耐擦傷性の観点から、コーティング組成物の不揮発分100質量%中、1~15質量%含むことが好ましく、3~10質量%含むことがより好ましい。
【0044】
<その他成分>
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、有機溶剤(D)、添加剤等のその他成分を含有してもよい。
添加剤としては、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、レベリング剤(C)、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0045】
<レベリング剤(C)>
コーティング組成物は形成するプライマー層に付与すべき性能に応じて、レベリング剤(C)を含むことができる。
レベリング剤としては、所望のレベリング効果、すなわち、コーティング時におけるハジキ等の塗布欠点抑制効果や、形成されるコート層の表面平滑化効果が得られるものであれば、特に限定されるものではない。
かかるレベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、シロキサン変性アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤等が挙げられる。
【0046】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体等を用いることができる。シリコーン系レベリング剤の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のFZ-2118、FZ-77、FZ-2161等、信越化学工業社製のKP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341等、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460等、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-3510、BYK-UV3570 等のポリエステル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0047】
フッ素系レベリング剤としては、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合
体等を用いることができる。フッ素系レベリング剤の市販品としては、例えば、DIC社
製のメガファックシリーズ、住友スリーエム社製のFCシリーズ等が挙げられる。
【0048】
アクリル系レベリング剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-380N、BYK-381、BYK-392等が挙げられる。
【0049】
シロキサン変性アクリル系レベリング剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-3550等が挙げられる。
【0050】
上記のレベリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、無機酸化物層との密着性の観点から、アクリル系レベリング剤が好ましい。
【0051】
<有機溶剤(D)>
本発明のコーティング組成物は、有機溶剤(D)を含んでもよい。
有機溶剤(D)としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。
【0052】
有機溶剤(D)を含む場合、有機溶剤(D)の含有率は、塗工性及び成膜性の観点から、本発明のコーティング組成物の不揮発分濃度が1~60質量%となる範囲であることが好ましい。
【0053】
<プライマー層>
プライマー層は本発明のコーティング組成物を活性エネルギー線により硬化させて得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の供給源としては例えば高圧水銀灯やメタルハライドランプ等が挙げられ、その照射エネルギーは通常100~2,000mJ/cm2程度である。電子線の供給方式としては例えばスキャン式電子線照射、カーテン式電子線照射法等が挙げられ、その照射エネルギーは通常10~200kGy程度である。
【0054】
<無機酸化物層>
本発明のコーティング組成物で形成したプライマー層は、無機酸化物膜との密着性に優れるため、プライマー層と無機酸化物膜が直接積層した場合の無機酸化物膜の剥がれを抑制することができる。
なお、必要に応じて、基材とプライマー層の間に、他の樹脂層等を更に有していてもよい。他の樹脂層としては例えば製造工程での帯電を防止するための帯電防止樹脂層、本発明の積層体の硬度をより上げるためのハードコート樹脂層、基材と本発明のプライマー層との密着性を向上させるためのアンカー樹脂層等が挙げられるがこの限りではない。
【0055】
無機酸化物膜は、乾式成膜工法によって形成されたものであり、例えば、無機酸化物蒸着膜、無機酸化物スパッタ膜及び無機酸化物CVD膜が挙げられるが、無機酸化物蒸着膜又は無機酸化物スパッタ膜であることが好ましい。
【0056】
無機酸化物膜層の厚みは、物理的特性、光学的特性、電気的特性を満たせば特に限定されないが、通常、0.01~0.5μmである。
【0057】
無機酸化物膜を構成する元素としては、Si、Ti、Zn、Al、Ga、In、Ce、Bi、Sb、Zr、Sn及びTa等が挙げられるが、これらに限らない。本発明のコーティング組成物は無機酸化物膜に酸化ケイ素を使用した場合に特に効果を発揮する。
【0058】
<積層体>
本発明の積層体は、基材、コーティング組成物を活性エネルギー線により硬化させて得られるプライマー層、無機酸化物層がこの順に配置されている構成を有する。
基材(支持体とも言う)としては、特に限定はなく、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の成型物が挙げられる。
【0059】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。
【0060】
基材上に、本発明のコーティング組成物を塗布し、活性エネルギー線により硬化させたプライマー層を形成し、後述する方法で無機酸化物層を形成することで積層体を得ることができる。基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)にコーティング組成物を塗布する条件は、特に限定されず、塗布手段としては、例えば、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター及びドットコーター等が挙げられる。プライマー層の厚みは特に限定されないが、1~30μmが好ましく、5~25μmがより好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0062】
<ウレタン(メタ)アクリレートの製造>
(合成例1)(A1): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,6-ヘキサンジオール (UBE社製、1,6-ヘキサンジオール、水酸基価:950mgKOH/g)355質量部、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル574質量部を配合して50℃にした後、デスモジュールW(住化コベストロンウレタン社製、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシネート(水素化MDI)、イソシアネート含有率:31.8質量%)1057質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/4になったことを確認した。次に、アロニックス M-306(東亞合成社製、ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物)884質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が2,000、1分子中のアクリロイル基数が6個のウレタンアクリレート(A1)87.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(A7)12.5質量%の混合物の樹脂溶液1(固形分:80質量%)を得た。
【0063】
(合成例2)(A2):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,4-シクロヘキサンジメタノール(UBE社製、水酸基価:950mgKOH/g)、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル593質量部を配合して50℃にした後、デスモジュールW(住化コベストロンウレタン社製、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシネート(水素化MDI)、イソシアネート含有率:31.8質量%)1057質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/4になったことを確認した。次に、アロニックス M-306(東亞合成社製、ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物)884質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が2,100、1分子中のアクリロイル基数が6個のウレタンアクリレート(A2)87.9質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(A7)12.1質量%の混合物の樹脂溶液2(固形分:80質量%)を得た。
【0064】
(合成例3)(A3):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,6-ヘキサンジオール (UBE社製、1,6-ヘキサンジオール、水酸基価:950mgKOH/g)827質量部、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル876質量部を配合して50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロンウレタン社製、イソホロンジイソシアネート、イソシアネート含有率:37.5質量%)1793質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/8になったことを確認した。次に、アロニックス M-306(東亞合成社製、ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物、水酸基価:127mgKOH/g )884質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が3200、1分子中のアクリロイル基数が6個のウレタンアクリレート(A3)91.8質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(A7)8.2質量%の混合物の樹脂溶液3(固形分:80質量%)を得た。
【0065】
(合成例4)(A4):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,4-シクロヘキシルジメタノール(三菱ケミカル製、水酸基価:779mgKOH/g)1009質量部、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル921質量部を配合して50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロンウレタン社製、イソホロンジイソシアネート、イソシアネート含有率:37.5質量%)1793質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/8になったことを確認した。次に、アロニックス M-306(東亞合成社製、ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物)884質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が3,400、1分子中のアクリロイル基数が6個のウレタンアクリレート(A4)92.2質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(A7)7.8質量%の混合物の樹脂溶液4(固形分:80質量%)を得た。
【0066】
(合成例5)(A5):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,6-ヘキサンジオール、水酸基価:950mgKOH/g)1064質量部、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル907質量部を配合して50℃にした後、デスモジュール50M-HDI(住化コベストロンウレタン社製、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソシアネート含有率:50.0質量%)1681質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/10になったことを確認した。次に、アロニックス M-306(東亞合成社製、ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物、水酸基価:127mgKOH/g )884質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が3400、1分子中のアクリロイル基数が6個のウレタンアクリレート(A5)92.1質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(A7)7.9質量%の混合物の樹脂溶液5(固形分:80質量%)を得た。
【0067】
(合成例6)(A6):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、1,4-シクロヘキシルジメタノール(三菱ケミカル製、水酸基価:779mgKOH/g)721質量部、及びネオスタンU-810(錫触媒、日東化成(株)社製):0.1質量部、酢酸ブチル574質量部を配合して50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロンウレタン社製、イソホロンジイソシアネート、イソシアネート含有率:37.5質量%)1345質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが1/6になったことを確認した。次に、2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒社製、水酸基価:483mgKOH/g)232質量部を80℃で3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認し、冷却しながら希釈溶剤を加え固形分を調整して、重量平均分子量が2300、1分子中のアクリロイル基数が2個のウレタンアクリレート(A6)の樹脂溶液6(固形分:80質量%)を得た。
【0068】
表1、2の略号の詳細は、以下のとおりである。
<化合物(A)>
A7:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(官能基数:4個、アクリロイル基当量:88)
A8:アロニックス M-306(ぺンタエリスリトールトリアクリレート:67.5質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート:32.5質量%の混合物;東亞合成(株)社製)
A9:アロニックスM-403(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:40~50%とジペンタエリスリトールペンタアクリレート:50~60%との混合物;東亞合成(株)社製)
A10:ビスコート#230(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;大阪有機化学工業(株)社製)
【0069】
<シリカ粒子(B)>
B1:PGM-AC-2140Y(表面がアクリレートで修飾されたシリカ微粒子、平均粒径12nm;日産化学(株)社製)
B2:PGM-AC-4130Y(表面がアクリレートで修飾されたシリカ微粒子、平均粒径45nm;日産化学(株)社製)
B3:MEK-AC-5140Z(表面がアクリレートで修飾されたシリカ微粒子、平均粒径80nm;日産化学(株)社製)
【0070】
<その他シリカ粒子>
B’1:MSD-57(表面がアクリレートで修飾されたシリカ微粒子、平均粒径200nm;堺化学工業(株)社製)
B’2:PGM-ST(表面が修飾されていないシリカ微粒子、平均粒径12nm;日産化学(株)社製)
【0071】
≪コーティング組成物の調製≫
[実施例1]
攪拌機付きフラスコに、不揮発分換算でウレタンアクリレート(A1)が80部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)が11.4部となるように、合成例1で得られた溶液を加え、さらに化合物(A8)としてアロニックスM-306(東亞合成社製)を8.6部、粒子(B1)としてPGM-AC-2140Y(日産化学社製)290部、レベリング剤(C)としてBYK-355(ビックケミー・ジャパン社製)0.36部、及び光重合開始剤としてEsacure One(DKSHジャパン(株)社製)10部をよく混合し、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度50%となるように調整してコーティング組成物を得た。
【0072】
≪プライマー層を有する基材の製造≫
実施例および比較例で得られたコーティング組成物を、それぞれ50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーU403」)上に、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が5.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cm2の紫外線を照射し、プライマー層を有する基材を作製した。
【0073】
[実施例2~21、比較例1~7]
各成分を表1、2に示す組成および配合量(不揮発分換算質量部)としたこと以外は、
実施例1と同様にして、不揮発分濃度50%のコーティング組成物をそれぞれ得た。
また、実施例1と同様にして、プライマー層を有する基材を作製した。
但し、実施例15は参考例である。
【0074】
≪HZ[%];ヘイズ値の測定≫
上記作製したプライマー層を有する基材について、日本電色工業社製「ヘイズメーターSH7000」によりプライマー層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。1.0%未満であれば実用上問題はない。
[評価基準]
・3:0.8%未満:非常に良好
・2:0.8~1%:実用上問題なし
・1:1%を超える:実用不可
【0075】
≪外観≫
上記作製したプライマー層を有する基材について、目視で塗工欠陥の有無を評価した。
[評価基準]
・2:塗工欠陥なし:実用上問題なし
・1:塗工欠陥あり:実用不可
【0076】
≪耐擦傷性≫
作製したプライマー層を有する基材について、テスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重1000gを取り付けた摩擦子(表面積1cm2)にスチールウール#0000を取り付け、プライマー層の表面(1cm×15cm)を10往復させた。その後、プライマー層の表面のキズの本数を数え、下記基準で評価した。傷の数は少ないほうが良好であり、3本以下であれば実用上問題なく使用できる。
[評価基準]
・3:傷なし(0本):非常に良好
・2:傷1本以上3本以下:実用上問題なし
・1:傷4本以上:実用不可
【0077】
≪反り≫
作製したプライマー層を有する基材について、100mm角の基材を平面に置き基材の角4点について平面からの高さを測定し、その平均値を反りとして評価した。
[評価基準]
・3:反りの平均値が10mm未満:非常に良好
・2:反りの平均値が10mm以上20mm未満:実用上問題なし
・1:反りの平均値が20mm以上:実用不可
【0078】
<積層体の作製>
上記で作製した実施例1~21、比較例1~7のプライマー層を有する基材のプライマー層上に、真空デバイス社製「マグトロンスパッタMSP-30T」により酸化ケイ素を厚さ0.1μmになるようにスパッタリングして酸化ケイ素膜を形成し、積層体をそれぞれ作製した。
【0079】
≪初期密着性≫
酸化ケイ素膜とプライマー層との密着性は、作製した積層体の酸化ケイ素膜に1mmの間隔で碁盤目状にカッターで傷を付け、100マスの格子パターンを形成した後、碁盤目状の傷全体を覆うようにセロハンテープを付着させ、引きはがし、酸化ケイ素膜の剥離状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。剥がれがないほど良好であり、評価基準の3以上であれば実用上問題なく使用できる。
[評価基準]
・4:傷の線の周囲が完全に滑らかで、どの格子にも剥がれがない。:非常に良好
・3:傷の交点周囲に酸化ケイ素膜の小さな剥がれが観察されるが、剥がれた面積の合計は碁盤目の5%未満。:良好
・2:傷の縁方向に沿って酸化ケイ素膜が剥がれたり、傷の交差点で酸化ケイ素膜が剥がれたりしており、剥がれた面積の合計が碁盤目の5%以上15%未満。:実用上問題なし
・1:剥がれた面積の合計が碁盤目の15%以上。:実用不可
【0080】
≪煮沸後密着性≫
作製した積層体を純水にて6時間煮沸した。上記「初期密着性」と同様に密着性試験を行った。
【0081】
≪煮沸後のヘイズ値≫
上記煮沸後の積層体を、上記「ヘイズ値の測定」と同様にプライマー層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。1.0%未満であれば実用上問題はない。
[評価基準]
・3:0.8%未満:非常に良好
・2:0.8~1%:実用上問題なし
・1:1%を超える:実用不可
【0082】
【0083】
【0084】
表1、2に示す通り、本発明のコーティング組成物を用いることで、形成したプライマー層と無機酸化物膜との密着性に優れ、かつ表面の耐擦傷性に優れ、さらにPETフィルムにコーティング組成物を塗工した積層体の光透過性が高く(ヘイズが低い)かつ反りも小さく、さらには煮沸試験後もヘイズ値の変化が少ないことが確認された。
【要約】
【課題】プライマー層と無機酸化物層との密着性および表面の耐擦傷性に優れ、かつPETフィルムにコーティング組成物を塗工したプライマー層を有する基材の光透過性が高く、さらには反りが小さく、煮沸試験後もヘイズ値の変化が少ないプライマー層を形成するためのコーティング組成物および該コーティング組成物を用いた積層体の提供。
【解決手段】本発明の課題は、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートのうち少なくとも一種を含む重合性化合物(A)と、特定量の平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物であって、基材上に前記コーティング組成物を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工、硬化されたプレイマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下であることを特徴とするコーティング組成物によって解決される。
【選択図】なし