(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】洗浄タンク及びトレイシステム
(51)【国際特許分類】
E03D 1/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
E03D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021147195
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2022-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397522
【氏名又は名称】楠本 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】楠本 潤一郎
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-144097(JP,A)
【文献】特開平09-013436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-1/38
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される上水を便器の洗浄用水としてタンク内部に貯留可能な洗浄タンクであって、
前記タンク内部に連通する取付部と、
前記取付部に装着された状態で開操作することで、前記タンク内部の洗浄用水を排出可能な水栓
と、
地震による振動を検知する振動検知手段からの検知信号に基づき、前記タンク内部から前記便器への洗浄用水の流れを遮断する経路遮断手段と、を備えた、洗浄タンク。
【請求項2】
供給される上水を便器の洗浄用水としてタンク内部に貯留可能な洗浄タンクであって、
前記タンク内部に連通する取付部と、
前記取付部に装着された状態で開操作することで、前記タンク内部の洗浄用水を排出可能な水栓と、を備え
前記洗浄タンクは、前記タンク内部を密閉可能に構成されていて、
地震による振動を検知する振動検知手段からの検知信号に基づき
作動する真空ポンプにより前記タンク内部が真空とされる、洗浄タンク。
【請求項4】
地震による振動を検知する振動検知手段からの検知信号に基づき
、前記タンク内部への上水の供給を遮断する上水遮断手段を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の洗浄タンク。
【請求項5】
洗浄タンク及び便器を備えたトレイシステムであって、
前記洗浄タンクが請求項1に記載の洗浄タンクである、トレイシステム。
【請求項6】
洗浄タンク及び便器を備えたトレイシステムであって、
前記洗浄タンクが請求項2に記載の洗浄タンクである、トレイシステム。
【請求項8】
地震による振動を検知する振動検知手段からの検知信号に基づき
、前記タンク内部への上水の供給を遮断する上水遮断手段を有する、請求項5乃至7の何れか一項に記載のトレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄タンク及びそれを備えたトレイシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害時に飲み水、生活用水などを確保するために、貯水タンクを設置することが知られている。例えば特許文献1では、トレイの洗浄タンクとは個別に備蓄タンクを設置し、災害時に使用可能にした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、洗浄タンクと個別に備蓄タンクを備えているが、タンク同士を接続しなければならず、施工が煩雑になる点で課題がある。
本発明が解決しようとする課題は、施工性が良く、災害時に使用可能な洗浄タンク及びトレイシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、供給される上水を便器用の洗浄用水としてタンク内部に貯留可能な洗浄タンクであって、前記タンク内部に連通する取付部と、前記取付部に装着された状態で開操作されることで、前記タンク内部の洗浄用水を排出可能な水栓とを備えた、洗浄タンクである。
本発明は、洗浄タンク及び便器を備えたトレイシステムであって、洗浄タンクが、供給される上水を便器用の洗浄用水としてタンク内部に貯留可能な洗浄タンクであり、前記タンク内部に連通する取付部と、前記取付部に装着された状態で開操作されることで、前記タンク内部の洗浄用水を排出可能な水栓とを備えた、トレイシステムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄タンク及びトレイシステムによれば、洗浄タンクがタンク内部の洗浄用水を排出可能な水栓を備えているので、従来構成のように、貯水タンクと洗浄タンクを接続する必要がなく、施工性が良く、災害時に水栓を開くことでタンク内部の洗浄用水を、飲み水、生活用水に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する正面視図である。
【
図2】本発明の実施形態1にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する側面視図である。
【
図3】水栓からの洗浄用水の排出状態を説明する部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態2にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する側面視図である。
【
図5】実施形態2にかかる制御系の構成を説明するブロック図である。
【
図6】経路遮断手段の別な実施形態を説明する拡大断面図である。
【
図7】経路遮断手段の別な実施形態を説明する拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施形態3にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する正面視図である。
【
図9】実施形態3にかかる制御系の構成を説明するブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態4にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する正面視図である。
【
図11】実施形態4にかかる制御系の構成を説明するブロック図である。
【
図12】断熱材を表面に備えた洗浄タンクの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
図1は、発明の実施形態1にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する正面視図、
図2は、実施形態1にかかる洗浄タンク及びトレイシステムの概略構成を説明する側面視図である。トレイシステム100は、洗浄タンク1と便器40を備えている。
図1に示すように、洗浄タンク1は、上水W1を洗浄用水W2としてタンク内部に貯留するものである。洗浄タンク1は、タンク上部を開放部3とされた有底で略直方体のタンク本体2と、開放部3を塞ぐ蓋11を備えている。蓋11はタンク本体2に対して着脱自在であって、開放部3を開閉可能としている。開放部3はメンテナンス口を兼ねている。本実施形態において、洗浄タンク1は、トレイ室30の床面30Aに設置された架台31の上に載置されてトレイ室30内に配設されている。洗浄タンク1は、取付金具32を介してトレイ室30内の壁面30Bに固定されて設置されている。取付金具32は、洗浄タンク1の転倒防止金具としても機能する。
【0009】
本実施形態において、洗浄タンク1は、着脱式の蓋11が上部の開放部3を塞ぐ形態とされているが、洗浄タンクの形態はこのようなものに限定されるものではない。例えばタンク正面やタンク側面に開放部3を形成し、当該開放部3を蓋で塞ぐ形態であってもよい。タンク本体2の形状は、直方体に限定されるものではなく、立方体、角柱形状であってもよい。
【0010】
タンク本体2の底部2Aには、排水口4がタンク内部と連通するように形成されている。タンク本体2の上部には、吐水口6が形成された給水接続部5が配置されている。給水接続部5には、上水W1が供給される給水管15が連結されている。給水管15には、止水栓71が設けられている。給水管15は、止水栓71を閉じることで給水接続部5への上水W1の流れが遮断可能とされている。
タンク本体2の外部には、操作レバー12が露呈して配されている。タンク本体2の内部には、操作レバー12に鎖で接続されたフロート弁7と、水位の変化によって上下動することで、吐水口6を介してタンク本体内へ供給される上水W1の給水量を調整するボールタップ8と、排水口4と連通して設けられたオーバーフロー管9が配設されている。
フロート弁7は、操作レバー12の操作に応じて排水口4を開閉して一定量の洗浄用水W2を排水する周知の構成のものである。ボールタップ8及びオーバーフロー菅9も周知の構成のものである。操作レバー12の操作によってタンク内から排出される洗浄用水量は、タンク容量よりも少ない量であり、例えば8リットル~10リットルの間で調整されている。
【0011】
洗浄タンク1の下方には、便器40が設置されている。便器40は、排水口4から排出された洗浄用水W2が供給可能とされている。便器40には、用水導入口41が形成されている。用水導入口41は、排水口4と排水管42を介して連通するように接続されている。便器40の形状や種類、洗浄タンク1の容量(大きさ)によっては、排水管42を用いず、排水口4と用水導入口41の位置を合わせてシールリングなどの止水部材を介して洗浄タンク1の一部を便器40の背面側に載置した形態であってもよい。
【0012】
実施形態1にかかる洗浄タンク1は、給水用の水栓20を備えていることを特徴としている。水栓20は所謂、蛇口であって、内部に流路が形成された蛇口本体と、蛇口本体内の流路を開閉する弁(コマとも言う)と、弁を開閉操作する蛇口ハンドル21と、弁よりも流路下流側で蛇口本体21と接続される蛇口スパウト22を備えた周知のものである。水栓20は、弁よりも流路上流側に取付部23が形成されている。取付部23は、パイプ形状であって、その外周面に雄ねじが形成されている。給水用の水栓としては、水栓20の形態に限定するものではなく、洗浄タンク1に取り付け可能であり、必要に応じて開閉可能なものであれば、その形態は問わない。
【0013】
タンク本体2には、
図2に示すように、水栓取付部26が形成されている。水栓取付部26には、水栓20の取付部23の雄ネジが螺合する雌ネジが形成されている。水栓取付部26は、少なくとも吐水口6よりも下方に位置するように配置されている。水栓取付部26は、具体的には底部2A寄りに配置されている。水栓取付部26は、
図1に示すように排水口4の中心位置線Aに対し、矢印Dで示すタンク幅方向にオフセットするようにタンク正面2Cに配設されている。このため、水栓20は、取付部23を水栓取付部26にタンク本体2の外側から螺合させることで、タンク本体2の外部に露呈した状態で取り付けられて配置されるとともに、タンク本体2の内部と連通可能となる。
【0014】
洗浄タンク1(タンク本体2)の容量は、一回の操作レバー12の操作で排水される最大排水量が少なくとも4回以上、好ましくは10回以上、より好ましくは20回以上行える容量であるのが好ましい。例えば、一回の操作レバー12で排水される最大排水量を8リットルとしたとき、少なくとも32リットル、好ましくは50リットル以上、より好ましくは160リットル以上であるのが好ましい。
別な表現をすると、災害時に備蓄が必要な、大人一人当たり/1日の必要な水を3リットルで4人家族を想定した場合、1日の必要水量は12リットル。最低3日分の水を備蓄することを想定すると、洗浄タンク1(タンク本体2)の容量は36リットル以上とするのが好ましい。
1日の必要水量を20リットルとし、最低3日分の水を備蓄することを想定すると、洗浄タンク1(タンク本体2)の容量は60リットル以上とするのが好ましい。1日の必要水量を60リットルとし、最低3日分の水を備蓄することを想定すると、洗浄タンク1(タンク本体2)の容量は180リットル以上とするのが好ましい。
【0015】
このように、洗浄タンク1に水栓20を取付けると、トレイ使用時以外の任意のとき、例えば
図3に示すように、災害時などに水栓20を開栓することで、洗浄タンク1に貯留されている洗浄用水W2をトレイの洗浄だけではなく、水栓20から排出することができ、洗浄以外の用途に使用することができる。
水栓20の配置をタンク本体2の底部2A寄りとすることで、タンク本体2内に貯留されている水の圧力を利用することができるので、タンク内の洗浄用水W2を効率よく水栓20から排出して使用することができる。
水栓20は、排水口4の中心位置線Aに対し、タンク幅方向Dにオフセットした部位に配置されるので、洗浄タンク1の下方に、その幅方向中心位置を中心位置線Aと合わせて便器40を配した場合でも、給水の妨げになることがなく、使い勝手が良い。
水栓20の設置位置は、タンク正面2Cに限定されるものではなく、
図1に示すタンク本体2の左右の側面に設置した形態であってもよい。
【0016】
従来の洗浄タンクの種類としては、手洗金具を備え、上水W1を手洗金具から排出して手洗い可能としたものがある。しかし、この場合、手洗いに使用した上水W1がタンク内部に流れ込んでしまうので、タンク内に貯留された洗浄用水W2の使用用途が制限されてしまう。手洗金具から流れる上水W1を洗浄以外に使用することは可能であるが、給水管15からの上水W1供給が絶たれてしまうと使用することができない。
これに対し、実施形態1にかかる洗浄タンク1は、手洗金具はなく、タンク本体2内に貯留している洗浄用水W2を水栓20から排出させて使用するので、使用用途制限を従来構成に比べて少なくできる。
【0017】
特許文献1に記載の技術においては、上水W1を貯留した備蓄タンクを備えているので、使用用途制限は少なくなる半面、洗浄タンクと個別に備蓄タンクを備えているため、タンク同士を接続しなければならず、施工が煩雑になる。これに対し、実施形態1にかかる洗浄タンク1は、洗浄タンクの容量を通常の洗浄タンクよりも大容量とし、水栓20を装着したので、施工性が良く、災害時に使用可能な洗浄タンクとなる。また、このような洗浄タンク1をトイレシステム100が備えることで、施工性が良く、災害時に使用可能なトレイシステム100を提供することができる。
【0018】
実施形態1において、洗浄タンク1は、トレイ室30の架台31の上に載置されているので、トレイ室30の床面30Aよりも上方に位置することになるため、水栓20からの給水作業を衛生的に行える。さらに、洗浄タンク1は、架台31の上に載置された状態で、取付金具32を介してトレイ室30内の壁面30Bに固定されるので、壁面30Bに対する荷重を取付金具32単体で固定する場合に比べて低減することができる。このため、洗浄タンク1の容量が変化した場合でも、同一の設置方法で行えるので、設置作業を効率よく、かつ、バラつきを少なくして行える。
【0019】
(実施形態2)
図4に示す実施形態2にかかる洗浄タンク1Aは、実施形態1で説明した洗浄タンク1が経路遮断手段50を備えたものである。なお、実施形態1で説明した部材については実施形態1で用いた符号と同一の符号を付し、重複説明を省略する。以下同様とする。
経路遮断手段50は、洗浄タンク1Aのタンク内部から便器40への洗浄用水W2の流れを遮断するものである。より具体的に説明すると、経路遮断手段50は、排出口4から便器40への洗浄用水W2の流れを制御する開閉弁である。実施形態2において、経路遮断手段50には電磁弁を用いている。電磁弁はオフ時に排出部36を開放状態とし、作動時に排水部36を閉状態とするものが用いられている。排水部36は、フロート弁7よりも用水排出下流側に配されている。
電磁弁で構成された経路遮断手段50は、
図5に示すように、制御部60と配線を介して接続されている。制御部60は乾電池、商業電源などの電源61から電力供給されることで起動するもので、経路遮断手段50への電力供給と閉信号を送信する機能を備えている。経路遮断手段50は、平時は開いていて、閉信号が入力されると閉じる方向に作動するものが用いられている。本実施形態において、制御部60はトレイシステム100の構成要素である。
【0020】
便器40に温水洗浄機器や臭気低減機器を備えている場合、当該機器の作動を制御するコントローラが備えられることが多い。このため、コントローラに経路遮断手段50を開閉する制御部60の機能を持たせてもよい。
制御部60には、振動検知手段41が配線を介して接続されている。振動検知手段41は、例えば地震による揺れを検知するものである。制御部60は、振動検知手段41から振動検知信号が入力されると、経路遮断手段50を作動してタンク本体2の排水口4から外部への洗浄用水W2の流れを遮断するように、経路遮断手段50の動作を制御する。制御部60は、振動検知手段41から振動検知信号が入力されない場合、タンク本体2の排水口4から洗浄用水W2の流れを可能とすべく、経路遮断手段50の作動を停止するように経路遮断手段50の動作を制御する。
【0021】
このように、振動検知手段41が振動を検知すると、経路遮断手段50が作動して排水口4から外部への経路(排出部36)が遮断されるため、地震などの発生後に操作レバー12が操作されてもタンク本体2内に貯留されている洗浄用水W2の排出がなくなる。このため、操作レバー12の不用意な操作によるタンク内部の洗浄用水W2の減少を防止することができる。このことは災害時における飲料水、生活用水の効率的な利用につながる。
【0022】
経路遮断手段50は、
図6に示すように、筒状のボス部材38に装着し、経路遮断手段50が装着されたボス部材38を排水口4内にシール部材を介して挿入することで、止水した状態でタンク底部2Aに一体的に固定される。
このように経路遮断手段50を排水口4内に挿入される筒状のボス部材38に装着すると、ボス部38の外径を排水口4の直径とほぼ同寸法に形成することで、様々な排水口4の直径に対応することができるので、汎用性とともに作業性も向上する。
実施形態2において、ボス部38は排出部36を構成するとともに排水管42を構成する。
【0023】
タンク本体2に対する経路遮断手段50の取付け形態としては、ボス部材38に装着して取り付ける形態に限定されるものではない。例えば
図7に示すように、タンク底部2Aと便器40との間にタンク幅方向Dに延在するようにアダプター70を配置し、当該ダプター70に排水部36を形成して経路遮断手段50を取り付けて配置してもよい。この場合、アダプター70を便器40の形状やタンク本体2の排水口4の位置や形状に合わせて形成することで、異なる形式、異なる形状の洗浄タンクや便器40に対応することができるので好ましい。また、このアダプター70を洗浄タンク1A側に出荷時から取り付けて販売することで、洗浄タンク1Aは経路遮断手段50を備えたものとなる。
【0024】
また、このアダプター70を、例えば既存の洗浄タンクや実施形態1の洗浄タンク1と便器との間に、改装時などに後付けすることでトレイシステム100が経路遮断手段50を備えることになる。
【0025】
(実施形態3)
図8に示す実施形態3にかかる洗浄タンク1Bは、実施形態1で説明した洗浄タンク1が、振動発生時にタンク本体2内への上水W1の流入を遮断する上水遮断手段80を備えたものである。上水遮断手段80は、給水管15から洗浄タンク1Bへの洗浄用水W2の流れを制御する開閉弁である。実施形態3において、上水遮断手段80には電磁弁を用いている。電磁弁はオフ時に給水接続部5を開放状態とし、作動時に給水接続部5を閉状態とするものが用いられている。
【0026】
電磁弁で構成された上水遮断手段80は、
図9に示すように、制御部60Aと配線を介して接続されている。制御部60Aは乾電池、商業電源などの電源61から電力が供給されることで起動するもので、上水遮断手段80への電力供給と閉信号を送信する機能を備えている。上水遮断手段80は、平時は開いていて、閉信号が入力されると閉じる方向に作動するものが用いられている。
【0027】
便器40に温水洗浄機器や臭気低減機器を備えている場合、当該機器の作動を制御するコントローラが備えられることが多い。このため、コントローラに上水遮断手段80を開閉する制御部60Aの機能を持たせてもよい。
制御部60Aには、振動検知手段41が配線を介して接続されている。制御部60Aは、振動検知手段41から振動検知信号が入力されると、上水遮断手段80を作動して給水管15からタンク本体2内への洗浄用水W2の流れを遮断するように、上水遮断手段80の作動を制御する。制御部60Aは、振動検知手段41から振動検知信号が入力されない場合、給水管15からタンク本体2への上水W1の流れを可能とすべく、上水遮断手段80の作動を停止するように制御する。
【0028】
このように、振動検知手段41が振動を検知すると、上水遮断手段80が作動して給水管15からタンク本体2内への洗浄用水W2の流れが遮断される。このため、地震などの発生後に、例えば上水W1に濁りが発生した場合でも、濁った上水W1のタンク本体2内への流入を避けられる。このことにより、タンク内部に貯留されている洗浄用水W2の汚染を防止することができ、災害時における飲料水、生活用水としての効率的な利用につながる。
【0029】
上水遮断手段80を給水接続部5に組み込んで設置した場合、洗浄タンク1Aが上水遮断手段80を備えた構成となる。また、
図8に示すように、上水遮断手段80を止水栓71と給水接続部5との間に設置した場合、トレイシステム100が上水遮断手段80を備えた構成となる。
さらに、給水接続部5をタンク本体2に対して交換可能とした場合、給水接続部5の交換時に上水遮断手段80を備えた給水接続部5に交換することで、既存の洗浄タンクや実施形態1、2で説明した洗浄タンク1、1Aにも適用することができる。
【0030】
(実施形態4)
図10に示す実施形態4にかかる洗浄タンク1Cは、タンク本体2の内部が密閉可能に構成されているとともに、地震による振動を検知する振動検知手段41からの検知信号に基づき作動する真空ポンプ90によりタンク内部が真空とされることを特徴としている。真空ポンプ90は、例えばタンク本体2の上面2Dに固定されて設置されている。真空ポンプ90の設置場所は、タンク本体2の上面2Dに限定されるものではない。
真空ポンプ90は、吸引側が洗浄タンク1Cの内部と連通するように配管を介して連結されている。真空ポンプ90は、作動すると洗浄タンク1C内の流体である空気を排出する周知の構成である。
【0031】
真空ポンプ90は、
図11に示すように、制御部60Bと配線を介して接続されている。制御部60Bは乾電池、商業電源などの電源61から電力が供給されることで起動するもので、真空ポンプ90をオン/オフ制御する機能を備えている。真空ポンプ90は、電源61(商業電源)と配線によって接続されており、電源61から電力供給が行われることで作動するように構成されている。
制御部60Bには、振動検知手段41と圧力センサ42が信号線を介して接続されている。圧力センサ42は、洗浄タンク1Cのタンク内圧を検知するものであり、圧力に応じた信号を制御部60Bへ送信する機能を備えている。制御部60Bは、振動検知手段41から振動検知信号が入力されると、洗浄タンク1内が真空状態となるまで真空ポンプ90の作動を制御する。制御部60Bは、圧力センサ42の値が予め設定した圧力値となると、真空ポンプ90の作動を停止するように制御する。予め設定した圧力値とは、真空状態となる圧力値である。圧力センサ42は、洗浄タンク1Cに設置されている。
【0032】
一般に上水W1(水道水)には、殺菌目的のために塩素が一定割合、法令によって含有されている。上水W1の保存期間は、常温で3日、冷蔵庫内で10日程度とされている(東京都水道局の場合)。この保存期間が過ぎていくと、水道水に含まれている残留塩素も徐々に減少するため、細菌が繁殖しやすくなり、加熱なしでは飲料水としては適さなくなる。
これに対し、実施形態4にかかる洗浄タンク1Cの場合、振動検知手段41が振動を検知すると、真空ポンプ90が作動して洗浄タンク1Cの内部が減圧され、圧力センサ42の値が真空状態となる圧力値となると真空ポンプ90が停止する。このため、タンク内の空気に含まれている雑菌の洗浄用水W2への混入が防止されるとともに、洗浄タンク1C内の洗浄用水W2に含まれている残留塩素の低減が抑制される。これにより、地震などの災害発生時に、タンク内の洗浄用水W2の雑菌の繁殖を抑えられるため、洗浄用水W2の保管期間の延長を図ることができる。
【0033】
すなわち、実施形態4の場合、真空ポンプ90をトレイシステム100が備えることで、洗浄タンク1C内に貯留されている洗浄用水W2(上水W1)の保管期間を、既存の洗浄タンクや実施形態1~3にかかる洗浄タンク1、1A、1Bよりも延長することができる。このことは、タンク内部に貯留されている洗浄用水W2の災害時における飲料水としての効率的な利用につながる。
また、タンク内部を真空状態とした場合、フロート弁7、ボールタップ8の少なくとも一方、あるいは双方が開いてしまうことが想定される。このため、真空ポンプ90を用いてタンク内部を真空状態とする洗浄タンク1Cまたは当該洗浄タンク1Cを備えたトレイシステム100には、経路遮断手段50、上水遮断手段80を備えることで、不用意なフロート弁7の動作による濁り水のタンク内への流入や、ボールタップ8の動作によるタンク内からの洗浄用水W2の排出を防止できるので好ましい。
【0034】
実施形態1~4にかかる洗浄タンク1~1Cのタンク本体2及び蓋11の材質は、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリカーボネート、強化プラスチック、アクリル、ステンレス材等を用いることができる。
洗浄タンク1~1Cのタンク本体2の外面には、
図12に示すように、断熱材91を設けることで、タンク画面の結露防止や、タンク内の温度変化を抑制することができるので好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1、1A、1B、1C 洗浄タンク
20 水栓
23 取付部
40 便器
41 振動検知手段
50 経路遮断手段
60、60A、60B 制御部
80 上水遮断手段
90 真空ポンプ
100 トレイシステム
W1 上水
W2 洗浄用水