(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】液体循環システム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20230612BHJP
F03B 17/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F03B13/06
F03B17/02
(21)【出願番号】P 2022077551
(22)【出願日】2022-05-10
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】511228012
【氏名又は名称】小林 和明
(73)【特許権者】
【識別番号】518355272
【氏名又は名称】H&E Tec株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/035574(WO,A1)
【文献】特開昭54-114807(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053114(JP,U)
【文献】特開2014-190302(JP,A)
【文献】米国特許第4265599(US,A)
【文献】国際公開第2020/053486(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0149131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/06
F03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する上部装置と、前記上部装置から流出した液体を貯留する下部装置と、前記下部装置から流出した液体を前記上部装置に還流させる還流路と、前記還流路内の液体を前記上部装置に汲み上げるポンプとを備える液体循環システムにおいて、
前記上部装置は、
内部の液体を流出させる上部流出口が下面に形成された上部シリンダと、
前記上部流出口を開閉する上部バルブ本体、及び前記上部流出口を閉塞する向きに前記上部バルブ本体を付勢する上部付勢部材を有する上部ゲートバルブと、
下面に形成された開口を通じて内部に液体が流入し且つ上面に形成された通気路を通じて空気が流出することによって前記上部シリンダ内を下降し、前記開口を通じて液体が流出し且つ前記通気路を通じて空気が流入することによって前記上部シリンダ内を上昇する上部フロートと、
前記上部フロートに取り付けられて、前記上部フロートが下降したときに前記上部付勢部材の付勢力に抗して前記上部流出口を開放する向きに、前記上部バルブ本体を押圧する上部プッシュロッドと、
前記開口を囲むように前記上部フロートの下端に取り付けられて、前記上部フロートが移動範囲の下端に到達したときに前記上部シリンダの下面に当接して、前記開口を通じて前記上部フロート内に液体が流入するのを阻止する上部パッキンと、
前記通気路を開閉するエアバルブ本体、及び前記通気路を閉塞する向きに前記エアバルブ本体を付勢するエアバルブ付勢部材を有するエアバルブと、
前記エアバルブに取り付けられた第1上部磁石と、
前記上部フロートの移動範囲の上端より上方に固定されて、前記第1上部磁石との間の斥力によって、前記エアバルブ付勢部材の付勢力に抗して前記通気路を開放する向きに、前記エアバルブを移動させる第2上部磁石とを備え、
前記下部装置は、
内部の液体を流出させる下部流出口が形成された下部シリンダと、
上面が開放された前記下部シリンダに対して出没するように、上面に形成された供給口を通じて内部に液体が流入することによって下降し、下面に形成された排出口を通じて液体が排出されることによって上昇する下部ピストンと、
前記排出口を開閉する下部バルブ本体、前記排出口を閉塞する向きに前記下部バルブ本体を付勢する下部付勢部材、及び前記下部ピストンが下降したときに前記下部シリンダの下面に当接して、前記下部付勢部材の付勢力に抗して前記排出口を開放する向きに前記下部バルブ本体を移動させる被押圧部を有する下部ゲートバルブと、
前記下部シリンダ及び前記下部ピストンの間に配置されて、前記下部シリンダの上面から液体が流出するのを阻止する下部パッキンとを備え、
前記還流路は、前記下部流出口と前記上部シリンダとを接続することを特徴とする液体循環システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体循環システムにおいて、
前記上部流出口から流出した液体を一時的に貯留し、貯留した液体を前記供給口に供給する貯留装置を備え、
前記貯留装置は、
前記上部装置及び前記下部装置の間に配置されて、前記上部流出口から流出した液体を内部に流入させる貯留槽流入口が上面に形成され、内部の液体を前記供給口に向けて流出させる貯留槽流出口が下面に形成された貯留槽と、
前記貯留槽流出口を閉塞する貯留槽フロートバルブとを備え、
前記下部装置は、前記下部ピストンに取り付けられて、前記下部ピストンが上昇したときに前記貯留槽フロートバルブを押し上げて、前記貯留槽流出口を開放する下部プッシュロッドを備えることを特徴とする液体循環システム。
【請求項3】
請求項2に記載の液体循環システムにおいて、
前記上部フロートの上昇を補助する補助装置を備え、
前記補助装置は、
前記上部シリンダ及び前記貯留槽の間を昇降可能で、前記上部流出口から流出した液体を内部に流入させるバケット流入口が上面に形成され、内部の液体を前記貯留槽流入口に向けて流出させるバケット流出口が下面に形成されたバケットと、
前記バケット流出口を閉塞するバケットフロートバルブと、
第1ラインによって前記バケットに接続されたウェイトと、
前記バケット流出口から液体が流出したときに前記ウェイトの重みによって前記バケットが上昇し、前記バケット流入口から液体が流入したときに前記バケットが下降するように、前記第1ラインが掛け渡されたワンウェイクラッチ付きプーリとを備え、
前記貯留槽は、前記バケットが下降したときに前記バケットフロートバルブを押し上げて、前記バケット流出口を開放する貯留槽プッシュロッドを有し、
前記ワンウェイクラッチ付きプーリは、
前記バケットが下降したときに第1方向に回転することによって、前記上部フロートに接続された第2ラインを巻き取って前記上部フロートを上昇させ、
前記バケットが上昇したときに空転し、
前記上部フロートが下降したときに前記第1方向と反対の第2方向に回転することによって、前記第2ラインを繰り出すことを特徴とする液体循環システム。
【請求項4】
請求項1に記載の液体循環システムにおいて、
前記下部ピストンの内部は、
前記供給口及び前記排出口に連通した液体貯留室と、
前記液体貯留室の周囲に配置されて、浮力材が充填された浮力材充填室とに区画されていることを特徴とする液体循環システム。
【請求項5】
請求項1に記載の液体循環システムにおいて、
前記下部装置は、
前記下部ゲートバルブに取り付けられた第1下部磁石と、
前記下部バルブ本体の移動範囲の上端より上方に固定されて、前記第1下部磁石との間の斥力によって、前記下部付勢部材の付勢力と共に前記排出口を閉塞する向きに、前記下部バルブ本体を移動させる第2下部磁石とを備えることを特徴とする液体循環システム。
【請求項6】
請求項1に記載の液体循環システムにおいて、
前記下部パッキンは、前記下部ピストンの下端の外周面に取り付けられて、前記下部ピストンの昇降に伴って、前記下部シリンダの内周面に摺接することを特徴とする液体循環システム。
【請求項7】
請求項1に記載の液体循環システムにおいて、
前記液体循環システム内を循環する液体、または前記通気路を流通する空気を利用して発電する発電機を備えることを特徴とする液体循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を循環させる液体循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を貯留する上方貯留槽と、上方貯留槽から流出した液体を利用して発電する発電ユニットと、発電ユニットで利用された液体を貯留する下方貯留槽と、下方貯留槽に貯留された液体を上方貯留槽に汲み上げる電動ポンプとを備える液体循環式発電装置が開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の液体循環式発電装置は、上方貯留槽から下方貯留槽に移動する液体の落差(位置エネルギー)を、電気エネルギーに変換する。また、特許文献1に記載の液体循環式発電装置は、下方貯留槽に貯留された液体を電動ポンプで上方貯留槽に汲み上げることによって、継続して発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の液体循環式発電装置において、電動ポンプによる液体の汲み上げに必要な電気エネルギーは、発電ユニットで発電される電気エネルギーより遥かに大きい。そのため、特許文献1に記載の液体循環式発電装置は、外部から大量の電力の供給を受けなければ、運転を継続することができない(すなわち、エネルギー収支が悪い)。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、重力方向に液体を循環させる液体循環システムにおいて、エネルギー収支を改善する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、液体を貯留する上部装置と、前記上部装置から流出した液体を貯留する下部装置と、前記下部装置から流出した液体を前記上部装置に還流させる還流路と、前記還流路内の液体を前記上部装置に汲み上げるポンプとを備える液体循環システムにおいて、前記上部装置は、内部の液体を流出させる上部流出口が下面に形成された上部シリンダと、前記上部流出口を開閉する上部バルブ本体、及び前記上部流出口を閉塞する向きに前記上部バルブ本体を付勢する上部付勢部材を有する上部ゲートバルブと、下面に形成された開口を通じて内部に液体が流入し且つ上面に形成された通気路を通じて空気が流出することによって前記上部シリンダ内を下降し、前記開口を通じて液体が流出し且つ前記通気路を通じて空気が流入することによって前記上部シリンダ内を上昇する上部フロートと、前記上部フロートに取り付けられて、前記上部フロートが下降したときに前記上部付勢部材の付勢力に抗して前記上部流出口を開放する向きに、前記上部バルブ本体を押圧する上部プッシュロッドと、前記開口を囲むように前記上部フロートの下端に取り付けられて、前記上部フロートが移動範囲の下端に到達したときに前記上部シリンダの下面に当接して、前記開口を通じて前記上部フロート内に液体が流入するのを阻止する上部パッキンと、前記通気路を開閉するエアバルブ本体、及び前記通気路を閉塞する向きに前記エアバルブ本体を付勢するエアバルブ付勢部材を有するエアバルブと、前記エアバルブに取り付けられた第1上部磁石と、前記上部フロートの移動範囲の上端より上方に固定されて、前記第1上部磁石との間の斥力によって、前記エアバルブ付勢部材の付勢力に抗して前記通気路を開放する向きに、前記エアバルブを移動させる第2上部磁石とを備え、前記下部装置は、内部の液体を流出させる下部流出口が形成された下部シリンダと、上面が開放された前記下部シリンダに対して出没するように、上面に形成された供給口を通じて内部に液体が流入することによって下降し、下面に形成された排出口を通じて液体が排出されることによって上昇する下部ピストンと、前記排出口を開閉する下部バルブ本体、前記排出口を閉塞する向きに前記下部バルブ本体を付勢する下部付勢部材、及び前記下部ピストンが下降したときに前記下部シリンダの下面に当接して、前記下部付勢部材の付勢力に抗して前記排出口を開放する向きに前記下部バルブ本体を移動させる被押圧部を有する下部ゲートバルブと、前記下部シリンダ及び前記下部ピストンの間に配置されて、前記下部シリンダの上面から液体が流出するのを阻止する下部パッキンとを備え、前記還流路は、前記下部流出口と前記上部シリンダとを接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重力方向に液体を循環させる液体循環システムにおいて、エネルギー収支を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る液体循環システムの全体構成を示す図である。
【
図2】上部フロートが上死点に位置し、バケットが下死点に位置するときの上部装置及び補助装置を示す図である。
【
図3】上部フロートが下降中で、バケットが上死点に位置するときの上部装置及び補助装置を示す図である。
【
図4】上部フロートが下死点に位置し、バケットが上死点に位置するときの上部装置及び補助装置を示す図である。
【
図5】下部ピストンが上死点に位置し、貯留槽流出口が開放され、排出口が閉塞された貯留装置及び下部装置を示す図である。
【
図6】下部ピストンが下降中で、貯留槽流出口が閉塞され、排出口が閉塞された貯留装置及び下部装置を示す図である。
【
図7】下部ピストンが下死点に位置し、貯留槽流出口が閉塞され、排出口が開放された貯留装置及び下部装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る液体循環システム1を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る液体循環システム1の全体構成を示す図である。液体循環システム1は、液体を重力方向に循環させるシステムである。なお、本明細書中の液体は、水、油の他、あらゆる液体が該当する。また、水は、上水、雨水、海水、湖水、河川水などが該当する。
図1に示すように、液体循環システム1は、上部装置10と、補助装置20と、貯留装置30と、下部装置40と、還流路50と、ポンプ51と、発電機52と、逆止弁53とを主に備える。
【0012】
図2は、上部フロート13が上死点に位置し、バケット21が下死点に位置するときの上部装置10及び補助装置20を示す図である。
図3は、上部フロート13が下降中で、バケット21が上死点に位置するときの上部装置10及び補助装置20を示す図である。
図4は、上部フロート13が下死点に位置し、バケット21が上死点に位置するときの上部装置10及び補助装置20を示す図である。なお、上下方向に移動する構成部品それぞれについて、当該構成部品の移動範囲の上端を「上死点」と表記し、当該構成部品の移動範囲の下端を「下死点」と表記する。
【0013】
[上部装置10の構成]
上部装置10は、外部(例えば、水道、雨、海、湖、河川、還流路50)から供給される液体を貯留し、貯留した液体を補助装置20に流出させる。
図2~
図4に示すように、上部装置10は、上部シリンダ11と、上部ゲートバルブ12と、上部フロート13と、上部プッシュロッド14と、エアバルブ15と、上部パッキン16と、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bとを主に備える。
【0014】
上部シリンダ11は、液体を貯留可能な内部空間を有する筒形状(より詳細には、円筒形状)の外形を呈する。上部シリンダ11は、液体循環システム1のフレーム(図示省略)に固定されている。上部シリンダ11は、上面が開放されて、下面に上部流出口11aが形成されている。そして、上部シリンダ11は、開放された上面から供給された液体を貯留し、貯留した液体を上部流出口11aから下方に流出させる。
【0015】
また、上部シリンダ11には、当接壁11bが設けられている。当接壁11bは、上部シリンダ11の内周面から径方向内向きに突出し、且つ周方向に連続する円盤形状の部分である。また、当接壁11bは、上死点に位置する上部フロート13の上面に当接して、上部フロート13が上死点より上方に移動するのを阻止する。
【0016】
上部ゲートバルブ12は、上部シリンダ11の上部流出口11aを開閉する。より詳細には、上部ゲートバルブ12は、上部フロート13が下死点の近傍まで下降したことによって上部流出口11aを開放し、上部フロート13が上昇したことによって上部流出口11aを閉塞する。上部ゲートバルブ12は、上部バルブ本体12aと、上部被押圧部12bと、上部接続部12cと、上部コイルバネ12d(上部付勢部材)とを主に備える。
【0017】
上部バルブ本体12aは、上部流出口11aの開口面積より大きい板状の部材である。上部バルブ本体12aは、上部シリンダ11の外側(下側)に配置されている。上部被押圧部12bは、上部シリンダ11の内部空間(すなわち、上部流出口11aより上方)に配置されている。上部被押圧部12bは、上部プッシュロッド14によって下向きに押圧される部分である。上部接続部12cは、上下方向に延設されて、上部バルブ本体12aと上部被押圧部12bとを接続する棒状の部材である。上部コイルバネ12dは、上部被押圧部12bと上部シリンダ11の下面との間に配置されて、上部シリンダ11の下面に上部バルブ本体12aを下側から当接させる(すなわち、上部流出口11aを閉塞する)向きに、上部バルブ本体12aを付勢する。
【0018】
図2及び
図3に示すように、上部プッシュロッド14が上部被押圧部12bから離間しているとき、上部バルブ本体12aは、上部コイルバネ12dの付勢力によって、上部流出口11aの周縁に下側から当接することによって、上部流出口11aを閉塞している。一方、
図4に示すように、上部プッシュロッド14が上部被押圧部12bを下向きに押圧すると、上部バルブ本体12aは、上部コイルバネ12dの付勢力に抗して下側に移動し、上部シリンダ11の下面から離間することによって、上部流出口11aを開放する。
【0019】
上部フロート13は、上部シリンダ11の内部空間に収容されている。また、上部フロート13は、上部シリンダ11の内部空間において、予め定められた移動範囲を上下方向に移動(昇降)する。
図2に示すように、上部フロート13の上死点は、上部フロート13の上面が当接壁11bに当接した位置である。
図4に示すように、上部フロート13の下死点は、上部パッキン16が上部シリンダ11の下面に密着した位置である。
【0020】
上部フロート13は、液体を貯留可能な内部空間を有する筒形状(より詳細には、円筒形状)の外形を呈する。また、上部フロート13には、開口13aと、通気路13bとが形成されている。開口13aは、上部フロート13の下面に形成されている。そして、開口13aは、上部フロート13の内部空間に液体を流入させ、上部フロート13の内部空間から液体を流出させる。通気路13bは、上部フロート13の上面から上方に延設されている。通気路13bの上端は、上部フロート13の位置に拘わらず、常に上部シリンダ11に貯留された液体の液面より上方に突出している。そして、通気路13bは、上部フロート13の内部空間に空気を流入させ、上部フロート13の内部空間から空気を流出させる。
【0021】
上部プッシュロッド14は、上部フロート13の下部に取り付けられて、上部フロート13と共に昇降する。また、上部プッシュロッド14は、上下方向から見て、上部ゲートバルブ12の上部被押圧部12bに重なる位置に配置されている。そして、上部プッシュロッド14は、上部フロート13が下死点の近傍まで下降したことによって、上部被押圧部12bに当接する。また、上部プッシュロッド14は、上部フロート13がさらに下降したことによって、上部被押圧部12bを下向きに押圧して上部流出口11aを開放する。さらに、上部プッシュロッド14は、上部フロート13が上昇したことによって、上部被押圧部12bから離間して上部流出口11aを閉塞する。
【0022】
エアバルブ15は、通気路13bを開閉する。より詳細には、
図2に示すように、エアバルブ15は、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの斥力によって、通気路13bを開放する。また、
図4に示すように、エアバルブ15は、上部フロート13内の液体が開口13aを通じて流出して、上部フロート13の内部空間が負圧になったことによって、通気路13bを開放する。一方、エアバルブ15は、上記以外の場合に、通気路13bを閉塞する。エアバルブ15は、エアバルブ本体15aと、支持部15bと、エア接続部15cと、エアコイルバネ15d(エアバルブ付勢部材)とを主に備える。
【0023】
エアバルブ本体15aは、通気路13bの開口面積より大きい板状の部材である。エアバルブ本体15aは、上部フロート13の内部空間(すなわち、通気路13bの下方)に配置されている。支持部15bは、通気路13bの内部(すなわち、エアバルブ本体15aより上方)において、第1上部磁石17aを支持する。エア接続部15cは、上下方向に延設されて、エアバルブ本体15aと支持部15bとを接続する棒状の部材である。エアコイルバネ15dは、支持部15bと上部フロート13の上面との間に配置されて、上部フロート13の上面にエアバルブ本体15aを下側から当接させる(すなわち、通気路13bを閉塞する)向きに、エアバルブ本体15aを付勢する。
【0024】
図3に示すように、上部フロート13が上死点及び下死点の間を移動しているとき、エアバルブ本体15aは、エアコイルバネ15dの付勢力によって、通気路13bの周縁に下側から当接することによって、通気路13bを閉塞している。一方、
図2に示すように、上部フロート13が上死点の近傍(第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの斥力がエアコイルバネ15dの付勢力を上回る領域)まで上昇したとき、エアバルブ本体15aは、エアコイルバネ15dの付勢力に抗して下向きに移動し、上部フロート13の上面から離間することによって、通気路13bを開放する。さらに、
図4に示すように、上部フロート13が下死点に達して内部空間の液体が開口13aを通じて流出したとき、上部フロート13の内部空間が負圧になる。これにより、エアバルブ本体15aは、上部フロート13の内外の圧力差によって、エアコイルバネ15dの付勢力に抗して通気路13bを開放する。
【0025】
上部パッキン16は、開口13aを囲むように、上部フロート13の下端に取り付けられている。また、上部パッキン16は、周方向に連続している。
図2及び
図3に示すように、上部フロート13が下死点より上方に位置しているとき、上部パッキン16は、上部シリンダ11の下面から離間して、開口13aを通じて上部フロート13の内部空間に液体が流入するのを許容する。一方、
図4に示すように、上部フロート13が下死点に到達すると、上部パッキン16は、上部流出口11aを囲むように上部シリンダ11の下面に当接して、開口13aを通じて上部フロート13の内部空間に液体が流入するのを阻止する。
【0026】
第1上部磁石17aは、エアバルブ15の支持部15bに支持されて、エアバルブ15(すなわち、上部フロート13)と共に昇降する。第2上部磁石17bは、通気路13b内の上部フロート13の上死点より上方において、上部シリンダ11に固定されている。また、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bは、互いの間に斥力が発生する(すなわち、N極同士またはS極同士が対面する)向きに配置される。
【0027】
[上部装置10の動作]
図2に示すように、上部シリンダ11内に液体が貯留され、上部フロート13が上死点に位置しているとき、上部ゲートバルブ12が上部流出口11aを閉塞し、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの間の斥力によってエアバルブ15が通気路13bを開放している。これにより、開口13aを通じて上部シリンダ11から上部フロート13に液体が流入し、上部フロート13内の空気が通気路13bを通じて流出する。その結果、上部シリンダ11の浮力が徐々に減少する。
【0028】
次に、上部フロート13に作用する重力が浮力を上回ると、
図3に示すように、上部フロート13が下降を開始する。但し、上部フロート13が下降を開始した直後は、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの間の斥力によって、未だエアバルブ15が通気路13bを開放している。そのため、上部フロート13内への液体の流入が継続し、上部フロート13が加速しながら下降する。そして、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの間の斥力がエアコイルバネ15dの付勢力を下回ると、エアバルブ15が通気路13bを閉塞する。これにより、上部フロート13内への液体の流入が停止し、上部フロート13が等速で下降する。通気路13bを閉塞するタイミングは、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの磁力の大きさによって制御することができる。
【0029】
次に、上部フロート13が下死点に到達する前に、上部プッシュロッド14が上部被押圧部12bに当接して、上部流出口11aを開放する向きに上部ゲートバルブ12を移動させる。上部流出口11aを開閉するタイミングは、上部フロート13に対する上部プッシュロッド14の取付位置によって制御することができる。そして、
図4に示すように、上部フロート13が下死点に到達すると、上部流出口11aが完全に開放され、上部パッキン16が上部流出口11aを囲むように上部シリンダ11の下面に密着する。
【0030】
これにより、上部フロート13の内部空間の液体は、開口13a及び上部流出口11aを通じて、後述するバケット流入口21aに向けて流出する。一方、上部シリンダ11の内部空間の液体は、上部パッキン16に阻止されて上部フロート13に流入しない。その結果、上部フロート13の内部空間が負圧になる。これにより、エアバルブ本体15aは、エアコイルバネ15dの付勢力に抗して通気路13bを開放する。その結果、通気路13bを通じて上部フロート13の内部空間に空気が流入し、上部フロート13の浮力が徐々に上昇する。
【0031】
次に、上部フロート13に作用する重力が浮力を下回ると、上部フロート13が上昇を開始する。また、上部フロート13の内外の圧力差が小さくなると、エアコイルバネ15dの付勢力によってエアバルブ15が通気路13bを閉塞する。なお、通気路13bが閉塞される前に、上部フロート13が上昇を開始するように、上部流出口11aの開口面積、エアコイルバネ15dの付勢力が調整される。
【0032】
次に、上部フロート13が上昇すると、上部ゲートバルブ12が上部流出口11aを閉塞し、上部パッキン16が上部シリンダ11の下面から離間する。但し、エアバルブ15によって通気路13bが閉塞されているので、開口13aを通じて上部フロート13の内部空間に液体は流入せず、上部フロート13は浮力を保ったまま上昇を続ける。次に、上部フロート13が上死点の近傍まで上昇すると、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの間の斥力によって、再びエアバルブ15が通気路13bを開放する。そして、
図2の状態に戻る。このように、上部装置10は、上部フロート13の昇降に連動して、上部シリンダ11内に貯留された液体を流出させる。
【0033】
なお、通気路13bの開口面積が大きいほど、上部フロート13からの空気の流出速度が速くなる。また、上部フロート13の自重が重くなるほど、フロート13の沈降速度(下降速度)が速くなる。さらに、上部フロート13の自重を重くするのに伴って浮力を確保する必要があるので、上部フロート13を水平方向に広げて体積を増やせばよい。
【0034】
[補助装置20の構成]
補助装置20は、上部フロート13の上昇を補助する装置である。より詳細には、補助装置20は、上部流出口11aから流出した液体の重さを、上部フロート13を上昇させる力に変換する。補助装置20は、バケット21と、バケットフロートバルブ22と、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bと、プーリ24a、24b、25a、25bと、ウェイト26a、26bと、第1ライン27a、27bと、第2ライン28a、28bとを主に備える。
【0035】
バケット21は、液体を貯留可能な内部空間を有する箱型の外形を呈する。バケット21には、バケット流入口21aと、バケット流出口21bとが形成されている。バケット流入口21aは、バケット21の上面に形成されている。そして、バケット流入口21aは、上部流出口11aから流出した液体を内部空間に流入させる。バケット流出口21bは、バケット21の下面に形成されている。そして、バケット流出口21bは、内部空間に貯留された液体を後述する貯留槽31の貯留槽流入口31aに向けて流出させる。さらに、バケット21は、上部装置10及び貯留装置30の間を昇降する。
【0036】
バケットフロートバルブ22は、バケット流出口21bを開閉する。より詳細には、バケットフロートバルブ22は、後述する貯留槽プッシュロッド33によって押し上げられたときにバケット流出口21bを開放し、それ以外のとき(すなわち、貯留槽プッシュロッド33が離間したとき)にバケット流出口21bを閉塞する。バケットフロートバルブ22は、例えば、内部に空気が封入された球状のプラスチックで構成されており、ある程度の浮力を有している。
【0037】
そして、バケットフロートバルブ22は、バケット21に液体が貯留されていないとき、自重によってバケット流出口21bを閉塞する。また、バケットフロートバルブ22は、バケット21に液体が流入しているとき、流入する液体の圧力(以下、「液体圧」と表記する。)によってバケット流出口21bに押し付けられて、バケット流出口21bを閉塞する。一方、バケットフロートバルブ22は、貯留槽プッシュロッド33によって押し上げられたときに、液体圧に抗してバケット流出口21bを開放する。さらに、貯留槽プッシュロッド33が下降したとき、バケット21内の液体のほとんどがバケット流出口21bから流出している。そのため、バケットフロートバルブ22は、自重によってバケット流出口21bを再び閉塞する。
【0038】
ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bは、バケット21の上死点より上方において、上部シリンダ11を挟んで互いに反対側に配置されている。また、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bは、水平方向に延びる可動軸線回りに回動可能に、液体循環システム1のフレームに支持されている。プーリ24a、24b、25a、25bは、上部シリンダ11より上方において、水平方向に延びる回動軸線回りに回動可能に、液体循環システム1のフレームに支持されている。
【0039】
ウェイト26a、26bの合計の重さは、液体が貯留されたバケット21より軽く、液体が貯留されていないバケット21より重くなるように設定される。より詳細には、ウェイト26a、26bの重さは、バケット21の自重及びプーリ23a、23b、24a、24b、25a、25bの転がり抵抗の合計+αになるように設定される。
【0040】
第1ライン27a、27bは、一端がバケット21に接続され、他端がウェイト26a、26bに接続され、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bに掛け渡されている。第2ライン28a、28bは、一端が上部フロート13に接続され、プーリ24a、24b、25a、25bに掛け渡され、他端がワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bに接続されている。第1ライン27a、27b及び第2ライン28a、28bは、例えば、ワイヤー、ロープ、チェーン等の線状の部材であればよい。
【0041】
ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bには、バケット21が下降したときにウェイト26a、26bが上昇し、ウェイト26a、26bが下降したときにバケット21が上昇するように、第1ライン27a、27bが掛け渡されている。
【0042】
また、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bは、バケット21が下降したときに第1方向(23aは時計回り、23bは反時計回り)に回転することによって、上部フロート13に接続された第2ライン28a、28bを巻き取る。これにより、上部フロート13が上昇する。
【0043】
一方、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bは、バケット21が上昇したときに空転する。これにより、バケット21の上昇力は、第2ライン28a、28bを通じて上部フロート13に伝達されない。さらに、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bは、上部フロート13が下降したときに、第1方向と反対の第2方向(23aは反時計回り、23bは時計回り)に回転して、第2ライン28a、28bを繰り出す。
【0044】
[補助装置20の動作]
図3に示すように、バケット21に液体が貯留されていないとき、バケット21は上死点に位置し、ウェイト26a、26bは下死点に位置し、バケット流出口21bはバケットフロートバルブ22によって閉塞されている。次に、
図4に示すように、上部ゲートバルブ12によって上部流出口11aが開放されると、上部流出口11aから流出した液体がバケット流入口21aを通じてバケット21の内部空間に流入する。
【0045】
次に、バケット21及びバケット21に貯留された液体の重量の合計が、上部フロート13、上部フロート13に貯留された液体、及びウェイト26a、26bの重量の合計を上回ると、バケット21が下降を開始する。これにより、第1ライン27a、27bによってバケット21に接続されたウェイト26a、26bが上昇する。また、ワンウェイクラッチ付きプーリ23a、23bが第2ライン28a、28bを巻き取ることによって、上部フロート13が上昇する。
【0046】
次に、
図2に示すように、バケット21が下死点に到達すると、バケット流出口21bに進入した貯留槽プッシュロッド33によってバケットフロートバルブ22が押し上げられる。これにより、バケット流出口21bが開放されて、バケット21内の液体がバケット流出口21bを通じて流出する。そして、バケット21及びバケット21に貯留された液体の重量の合計がウェイト26a、26bの重量の合計を下回ると、ウェイト26a、26bが下降する。これにより、第1ライン27a、27bによってウェイト26a、26bに接続されたバケット21が上昇する。
【0047】
また、バケット21が上昇する過程で貯留槽プッシュロッド33がバケットフロートバルブ22から離間して、バケット流出口21bが閉塞される。なお、バケット流出口21bを閉塞するタイミングは、貯留槽プッシュロッド33の突出長さによって制御することができる。一方、バケット21が上昇したときはワンウェイクラッチ付きプーリ23aが空転するので、上部フロート13は、バケット21の上昇とは無関係に、前述したように内部空間の液体及び空気の比率に応じて下降する。
【0048】
図5は、下部ピストン42が上死点に位置し、貯留槽流出口31bが開放され、排出口42bが閉塞された貯留装置30及び下部装置40を示す図である。
図6は、下部ピストン42が下降中で、貯留槽流出口31bが閉塞され、排出口42bが閉塞された貯留装置30及び下部装置40を示す図である。
図7は、下部ピストン42が下死点に位置し、貯留槽流出口31bが閉塞され、排出口42bが開放された貯留装置30及び下部装置40を示す図である。
【0049】
[貯留装置30の構成]
貯留装置30は、バケット流出口21bから流出した液体を一時的に貯留し、貯留した液体を下部ピストン42の供給口42aに供給する装置である。貯留装置30は、貯留槽31と、貯留槽フロートバルブ32と、貯留槽プッシュロッド33とを主に備える。
【0050】
貯留槽31は、液体を貯留可能な内部空間を有する箱型の外形を呈する。下部シリンダ41は、液体循環システム1のフレームに固定されている。貯留槽31には、貯留槽流入口31aと、貯留槽流出口31bとが形成されている。貯留槽流入口31aは、貯留槽31の上面に形成されている。そして、貯留槽流入口31aは、バケット流出口21bから流出した液体を内部空間に流入させる。貯留槽流出口31bは、貯留槽31の下面に形成されている。そして、貯留槽流出口31bは、内部空間に貯留された液体を供給口42aに向けて流出させる。
【0051】
貯留槽フロートバルブ32は、貯留槽流出口31bを開閉する。より詳細には、貯留槽フロートバルブ32は、後述する下部プッシュロッド44によって押し上げられたときに貯留槽流出口31bを開放し、それ以外のとき(すなわち、下部プッシュロッド44が離間したとき)に貯留槽流出口31bを閉塞する。貯留槽フロートバルブ32は、例えば、内部に空気が封入された球状のプラスチックで構成されており、ある程度の浮力を有している。
【0052】
そして、貯留槽フロートバルブ32は、貯留槽31に液体が貯留されていないとき、自重によって貯留槽流出口31bを閉塞する。また、貯留槽フロートバルブ32は、貯留槽31に液体が流入しているとき、流入する液体の液体圧によって貯留槽流出口31bに押し付けられて、貯留槽流出口31bを閉塞する。一方、貯留槽フロートバルブ32は、下部プッシュロッド44によって押し上げられたときに、液体圧に抗して貯留槽流出口31bを開放する。さらに、下部プッシュロッド44が下降したとき、貯留槽31内の液体のほとんどが貯留槽流出口31bから流出している。そのため、貯留槽フロートバルブ32は、自重によって貯留槽流出口31bを再び閉塞する。
【0053】
貯留槽プッシュロッド33は、貯留槽31の下面から上方に突出している。また、貯留槽プッシュロッド33は、上下方向から見て、バケットフロートバルブ22に重なる位置に配置されている。そして、貯留槽プッシュロッド33は、バケット21が下降したときにバケットフロートバルブ22を押し上げて、バケット流出口21bを開放する。また、貯留槽プッシュロッド33は、バケット21が上昇したときにバケットフロートバルブ22から離間して、バケット流出口21bを閉塞する。
【0054】
[貯留装置30の動作]
図2に示すように、バケット21が下死点に到達すると、貯留槽プッシュロッド33は、バケットフロートバルブ22を押し上げる。これにより、バケット流出口21bが開放される。その結果、バケット流出口21bから流出した液体が貯留槽流入口31aを通じて貯留槽31の内部空間に流入する。一方、バケット21が下死点から上昇すると、貯留槽プッシュロッド33は、バケットフロートバルブ22から離間する。これにより、バケット流出口21bが閉塞される。その結果、バケット流出口21bからの液体の流出が停止する。
【0055】
また、
図5に示すように、下部ピストン42が上死点に達すると、下部プッシュロッド44は、貯留槽流出口31bに進入して貯留槽フロートバルブ32を押し上げる。これにより、貯留槽流出口31bが開放される。その結果、貯留槽31に貯留された液体が貯留槽流出口31bを通じて供給口42aに供給される。一方、
図6及び
図7に示すように、下部ピストン42が上死点から下降すると、下部プッシュロッド44は、貯留槽フロートバルブ32から離間する。これにより、貯留槽流出口31bが閉塞される。その結果、貯留槽流出口31bからの液体の流出が停止する。
【0056】
[下部装置40の構成]
下部装置40は、貯留装置30から流出した液体を貯留し、貯留した液体を還流路50に流出させる。下部装置40は、下部シリンダ41と、下部ピストン42と、下部ゲートバルブ43と、下部プッシュロッド44と、下部パッキン45と、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bとを主に備える。
【0057】
下部シリンダ41は、液体を貯留可能な内部空間を有する筒形状(より詳細には、円筒形状)の外形を呈する。下部シリンダ41は、液体循環システム1のフレームに固定されている。下部シリンダ41は、上面が開放されて、下部(本実施形態では、側面の下端)に下部流出口41aが形成されている。そして、下部シリンダ41は、下部ピストン42から供給された液体を貯留し、貯留した液体を下部流出口41aから還流路50に流出させる。
【0058】
下部ピストン42は、下部シリンダ41の内部空間に収容されている。また、下部ピストン42は、下部シリンダ41の開放された上面を通じて下部シリンダ41に対して出没するように、予め定められた移動範囲を上下方向に移動(昇降)する。
図5に示すように、下部ピストン42の上死点は、下部プッシュロッド44が貯留槽フロートバルブ32を押し上げる位置である。
図7に示すように、下部ピストン42の下死点は、後述する上部被押圧部12bが下部シリンダ41の下面に押圧されて、排出口42bが開放される位置である。
【0059】
下部ピストン42は、液体を貯留可能な内部空間を有する筒形状(より詳細には、円筒形状)の外形を呈する。また、下部ピストン42には、供給口42aと、排出口42bとが形成されている。供給口42aは、下部ピストン42の上面に形成されている。そして、供給口42aは、貯留槽流出口31bから流出した液体を下部ピストン42の内部空間(より詳細には、液体貯留室42c)に流入させる。排出口42bは、下部ピストン42の下面に形成されている。そして、排出口42bは、液体貯留室42cに貯留された液体を下部シリンダ41に流出させる。
【0060】
また、下部ピストン42の内部空間は、液体貯留室42cと、浮力材充填室42dとに区画されている。液体貯留室42cは、下部ピストン42の内部空間のうち、径方向の中央部の空間である。また、液体貯留室42cは、供給口42a及び排出口42bに連通する空間である。浮力材充填室42dは、下部ピストン42の内部空間のうち、液体貯留室42cの周りを囲むように形成された空間である。また、浮力材充填室42dは、供給口42a及び排出口42bに連通していない空間である。さらに、浮力材充填室42dには、液体循環システム1内を循環する液体より密度比(比重)が小さい物質(例えば、空気)が充填されている。
【0061】
下部ゲートバルブ43は、下部ピストン42の排出口42bを開閉する。より詳細には、下部ゲートバルブ43は、下部ピストン42が下死点の近傍まで下降したことによって排出口42bを開放し、下部ピストン42が上昇したことによって排出口42bを閉塞する。下部ゲートバルブ43は、下部バルブ本体43aと、下部被押圧部43bと、下部接続部43cと、下部コイルバネ43d(下部付勢部材)とを主に備える。
【0062】
下部バルブ本体43aは、排出口42bの開口面積より大きい板状の部材である。下部バルブ本体43aは、下部ピストン42の下面より上方(液体貯留室42c内)に配置されている。下部被押圧部43bは、下部ピストン42の下面より下方に配置されている。下部被押圧部43bは、下部ピストン42が下降したときに、下部シリンダ41の下面に当接して上向きに押圧される部分である。下部接続部43cは、上下方向に延設されて、下部バルブ本体43aと下部被押圧部43bとを接続する棒状の部材である。下部コイルバネ43dは、下部被押圧部43bと下部ピストン42の下面との間に配置されて、下部ピストン42の下面に下部バルブ本体43aを上側から当接させる(すなわち、排出口42bを閉塞する)向きに、下部バルブ本体43aを付勢する。
【0063】
下部プッシュロッド44は、下部ピストン42の上面から上方に突出している。また、下部プッシュロッド44は、上下方向から見て、貯留槽フロートバルブ32に重なる位置に配置されている。さらに、下部プッシュロッド44は、下部ピストン42と共に昇降する。そして、下部プッシュロッド44は、下部ピストン42が上昇したときに貯留槽フロートバルブ32を押し上げて、貯留槽流出口31bを開放する。また、下部プッシュロッド44は、下部ピストン42が下降したときに貯留槽フロートバルブ32から離間して、貯留槽流出口31bを閉塞する。
【0064】
下部パッキン45は、下部シリンダ41及び下部ピストン42の間に配置されて、開放された下部シリンダ41の上面から液体が流出するのを阻止する。本実施形態に係る下部パッキン45は、下部シリンダ41の開放部を囲むように、下部シリンダ41の上端に取り付けられている。また、下部パッキン45は、周方向に連続している。そして、下部パッキン45は、昇降する下部ピストン42の外周面に摺接することによって、液体が流出するのを阻止する。
【0065】
第1下部磁石46aは、下部バルブ本体43aの上面に支持されて、下部ゲートバルブ43(すなわち、下部ピストン42)と共に昇降する。第2下部磁石46bは、下部バルブ本体43aの上死点より上方において、貯留槽31に固定されている。また、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bは、互いの間に斥力が発生する(すなわち、N極同士またはS極同士が対面する)向きに配置される。
【0066】
[下部装置40の動作]
図5に示すように、下部ピストン42が上死点に位置しているとき、下部プッシュロッド44は貯留槽流出口31bに進入して貯留槽フロートバルブ32を押し上げている。また、下部コイルバネ43dの付勢力と、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bの斥力とによって、下部バルブ本体43aが排出口42bを閉塞している。これにより、貯留槽流出口31bから流出した液体は、供給口42aを通じて液体貯留室42cに供給される。そして、液体貯留室42cに貯留される液体が増えるにつれて、下部ピストン42の浮力が減少する。
【0067】
次に、液体貯留室42cに貯留される液体が増加すると、
図6に示すように、下部ピストン42は、液体貯留室42c内の液体の重さによって下降を開始する。これにより、下部シリンダ41の内部空間に貯留されていた液体が下部流出口41aを通じて還流路50に押し出される。また、下部プッシュロッド44が貯留槽フロートバルブ32から離間して、貯留槽流出口31bが閉塞される。貯留槽流出口31bが閉塞されるタイミングは、下部プッシュロッド44の突出長さによって制御することができる。一方、下部バルブ本体43aは、下部コイルバネ43dの付勢力によって、未だ排出口42bを閉塞している。
【0068】
次に、下部ピストン42が下死点の近傍まで下降すると、下部被押圧部43bが下部シリンダ41の下面に当接する。さらに、
図7に示すように、下部ピストン42が下死点に到達すると、下部シリンダ41の下面に押圧された下部被押圧部43bが、下部コイルバネ43dの付勢力に抗して、下部バルブ本体43aを上方(すなわち、排出口42bを開放する向き)に移動させる。これにより、液体貯留室42cに貯留された液体が排出口42bを通じて下部シリンダ41の内部空間に排出される。
【0069】
次に、液体貯留室42cに貯留される液体が減少すると、浮力材充填室42dに充填された浮力材の浮力によって、下部ピストン42が上昇する。これにより、下部被押圧部43bが下部シリンダ41の下面から離間して、下部コイルバネ43dの付勢力によって、下部バルブ本体43aが排出口42bを閉塞する向きに移動を開始する。なお、下部コイルバネ43dは、単独では下部バルブ本体43aで排出口42bを完全に閉塞できない程度に、弱い付勢力に設定されてもよい。これにより、下部ピストン42は、排出口42bから液体を排出しながら上昇する。
【0070】
次に、下部ピストン42が上死点の近傍まで上昇すると、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bの斥力によって、下部バルブ本体43aが排出口42bを閉塞する向きにさらに移動する。これにより、下部ゲートバルブ43によって排出口42bが閉塞される。さらに、下部ピストン42が上死点に到達すると、下部プッシュロッド44が貯留槽フロートバルブ32を押し上げて、貯留槽流出口31bが開放される。
【0071】
なお、下部ピストン42を液体(水)の比重より軽い材質で構成することによって、下部ピストン42に浮力が発生する。例えば、水の比重1[g/cm3]に対して、ポリエチレンの比重は0.92~0.97であり、ポリプロピレンの比重は0.90~0.91なので、これらの材料を用いればよい。そして、下部ゲートバルブ43によって排出口42bが閉塞され、下部ピストン42内に浮力を上回る液体が充填されると、下部ピストン42が下部シリンダ41内を沈下(下降)する。
【0072】
また、下部ピストン42の高さは、下部シリンダ41の高さより高い(例えば、2~3倍)。但し、下部ピストン42の高さが高くなるほど、還流路50を通じて上部装置10に揚水するのに必要なエネルギーが大きくなる。そこで、下部ピストン42のうち、下部シリンダ41の上部に露出する部分を水平方向に拡げて体積を大きくしてもよい。これにより、下部ピストン42の高さを低くすることができる。
【0073】
さらに、下部ゲートバルブ43には、上下方向の両側から圧力が負荷される。下部ゲートバルブ43に下方から負荷される圧力は、下部ピストン42の自重と下部ピストン42内の液体との重量に総和に対応する。一方、下部ゲートバルブ43に上方から負荷される圧力は、下部ピストン42内の液体の重量に対応する。このように、下部ゲートバルブ43には下方からの圧力が大きいので、下部ゲートバルブ43は開こうとする。そこで、下部コイルバネ43dによって下部ゲートバルブ43を閉じる方向に付勢している。
【0074】
[還流路50、ポンプ51、発電機52、逆止弁53の構成]
還流路50は、下部装置40から流出した液体を上部装置10に還流させる配管である。より詳細には、還流路50は、下部流出口41aと、上部シリンダ11の開放された上面とを接続する。ポンプ51は、還流路50に配置されている。ポンプ51は、電力の供給を受けて還流路50内の液体を上部装置10に汲み上げる電動ポンプである。ポンプ51には、発電機52で発電された電力が供給されてもよいし、外部電源から電力が供給されてもよい。発電機52は、還流路50に配置されている。発電機52は、還流路50内を流れる液体を利用して発電する。すなわち、発電機52は、還流路50内を流れる液体の運動エネルギーを、電気エネルギーに変換する。逆止弁53は、還流路50内の下部装置40から上部装置10への液体の流れを許容し、還流路50内の上部装置10から下部装置40への液体の流れ(すなわち、逆流)を阻止する。
【0075】
[本実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、液体循環システム1内を上から下に移動する液体を利用して、上部フロート13及び下部ピストン42を昇降させる。そして、下降する下部ピストン42によって下部流出口41aから液体を押し出すことによって、還流路50内の液体が上部装置10に押し出される。これにより、下部装置40から上部装置10に液体を汲み上げるために、ポンプ51で消費される電力を削減することができる。その結果、液体循環システム1のエネルギー収支が改善する。
【0076】
また、上記の実施形態によれば、上部装置10及び下部装置40の間に貯留装置30を介在させることによって、上部装置10及び下部装置40を非同期で動作させることができる。但し、上部装置10及び下部装置40を適切なタイミングで同期して動作させることができれば、貯留装置30を省略することができる。
【0077】
また、上記の実施形態によれば、液体の重さによって下降するバケット21によって、上部フロート13の上昇を補助するので、液体循環システム1のエネルギー収支がさらに改善する。但し、上部シリンダ11及び上部フロート13の容量、上部コイルバネ12d及びエアコイルバネ15dの付勢力、第1上部磁石17a及び第2上部磁石17bの磁力を、上部フロート13が適切なタイミングで昇降するように設定することができれば、補助装置20を省略することができる。
【0078】
また、上記の実施形態によれば、下部ピストン42の内部空間を液体貯留室42cと浮力材充填室42dとに区画して、下部ピストン42の浮力を調整することによって、適切なタイミングで下部ピストン42を昇降させることができる。但し、下部ピストン42の内部空間に浮力材充填室42dを設けるのに代えて、下部ピストン42を構成する材料によって下部ピストン42の浮力を調整してもよい。
【0079】
なお、下部ピストン42を適切なタイミングで昇降させるために、ポンプ51を利用してもよい。例えば、下部装置40は、下部ピストン42の下降速度を検知する速度センサと、速度センサの検知結果に基づいてポンプ51を制御するコントローラとを備えてもよい。コントローラは、例えば、速度センサによって検知された下降速度に基づいて、下部装置40から還流路50に吐出される液体の圧力を演算する。そして、コントローラは、演算した液体の圧力が閾値を下回ったことに応じて、還流路50を通じた液体の還流を補助するために、ポンプ51を駆動してもよい。
【0080】
また、上記の実施形態によれば、下部コイルバネ43dの付勢力と、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bの斥力とによって、下部ゲートバルブ43を制御するので、適切なタイミングで排出口42bを開閉することができる。但し、下部コイルバネ43dの付勢力のみによって、適切なタイミングで排出口42bを開閉できれば、第1下部磁石46a及び第2下部磁石46bを省略することができる。
【0081】
また、上記の実施形態によれば、還流路50を流れる液体を利用して発電機52に発電させるので、液体循環システム1のエネルギー収支がさらに改善する。但し、発電機52の設置位置は、
図1の例に限定されない。すなわち、発電機52は、液体循環システム1内を循環する液体を利用して発電することができれば、上部装置10及び補助装置20の間、補助装置20及び貯留装置30の間、貯留装置30及び下部装置40の間などに設置されてもよい。発電機52は、例えば、上部フロート13、バケット21、ウェイト26a、26b、下部ピストン42(特に、自重の重い上部フロート13)の落下エネルギーを利用して、発電してもよい。さらに、発電機52は、通気路13b内に設置されて、通気路13b内を流通する空気を利用して発電してもよい。
【0082】
さらに、上記の実施形態に係る液体循環システム1は、循環する液体を利用して電気エネルギーを発生させる「循環式エネルギー発生システム」である。但し、液体循環システム1の用途は前述の例に限定されず、液体循環システム1で循環する液体を利用して対象物(例えば、プラント)を冷却する「循環式冷却システム」であってもよい。
【0083】
[変形例]
図8は、変形例に係る下部装置40Aを示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。上記の実施形態に係る下部装置40と、変形例に係る下部装置40Aとは、浮力材充填室42dの有無と、下部パッキン45、45Aの配置とが相違し、その他の点が共通する。
【0084】
変形例に係る下部パッキン45Aは、下部ピストン42の下端の外周面に取り付けられている。そして、下部パッキン45Aは、下部ピストン42の昇降に伴って、下部シリンダ41の内周面に摺接することによって、下部シリンダ41の開放された上面から液体が流出するのを阻止する。
【0085】
上記の実施形態に係る下部パッキン45の配置では、
図6及び
図7に示すように、下部ピストン42が下降するのに伴って、下部シリンダ41内の液体に下部ピストン42が没入する。そして、下部ピストン42の液体に没入した部分の重さは、浮力と相殺されて、下部ピストン42内の液体を下部流出口41aから押し出すのに寄与しない。
【0086】
これに対して、変形例に係る下部パッキン45Aの配置では、
図8に示すように、下部ピストン42の位置に拘わらず、下部ピストン42全体が下部シリンダ41内の液体から上方に突出している。そのため、下部ピストン42及び内部空間に貯留された液体の重量全体で、下部ピストン42内の液体を下部流出口41aから押し出すことができる。その結果、液体循環システム1のエネルギー収支がさらに改善する。
【0087】
[その他の変形例]
なお、本発明に係る液体循環システム1は、上部装置10のみ、または、上部装置10及び補助装置20のみでも成立する。すなわち、上部シリンダ11への液体の補充があれば、上部フロート13は上昇及び下降を繰り返す。そして、上部フロート13の下降時の重力エネルギーを、電気エネルギーに変換すればよい。なお、沈下した上部フロート13を浮力で上昇させるには、上部フロート13を大きくして空気量を増やす必要があり、その分だけ上部フロート13の自重も重くなる。そのため、上部フロート13を上死点まで引き上げるには、自重に見合うウェイト26a、26bで釣り合いを取ればよい。
【符号の説明】
【0088】
1…液体循環システム、10…上部装置、11…上部シリンダ、11a…上部流出口、11b…当接壁、12…上部ゲートバルブ、12a…上部バルブ本体、12b…上部被押圧部、12c…上部接続部、12d…上部コイルバネ、13…上部フロート、13a…開口、13b…通気路、14…上部プッシュロッド、15…エアバルブ、15a…エアバルブ本体、15b…支持部、15c…エア接続部、15d…エアコイルバネ、16…上部パッキン、17a…第1上部磁石、17b…第2上部磁石、20…補助装置、21…バケット、21a…バケット流入口、21b…バケット流出口、22…バケットフロートバルブ、23a,23b…ワンウェイクラッチ付きプーリ、24a,24b,25a,25b…プーリ、26a,26b…ウェイト、27a,27b…第1ライン、28a,28b…第2ライン、30…貯留装置、31…貯留槽、31a…貯留槽流入口、31b…貯留槽流出口、32…貯留槽フロートバルブ、33…貯留槽プッシュロッド、40,40A…下部装置、41…下部シリンダ、41a…下部流出口、42…下部ピストン、42a…供給口、42b…排出口、42c…液体貯留室、42d…浮力材充填室、43…下部ゲートバルブ、43a…下部バルブ本体、43b…下部被押圧部、43c…下部接続部、43d…下部コイルバネ、44…下部プッシュロッド、45,45A…下部パッキン、46a…第1下部磁石、46b…第2下部磁石、50…還流路、51…ポンプ、52…発電機、53…逆止弁
【要約】
【課題】エネルギー収支を改善した液体循環システムを提供する。
【解決手段】液体循環システム1は、下部装置40から流出した液体を上部装置10に還流させる還流路50と、還流路50内の液体を上部装置10に汲み上げるポンプ51とを備える。上部装置10は、液体が流入し且つ空気が流出することによって上部シリンダ内を下降し、液体が流出し且つ空気が流入することによって上部シリンダ内を上昇する上部フロートを備える。下部装置40は、液体が流入することによって下部シリンダ内を下降し、液体が排出されることによって下部シリンダ内を上昇する下部ピストンを備える。
【選択図】
図1