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特許7292638細胞傷害性T細胞放出エキソソームによる癌間質間葉系細胞を標的とした腫瘍増殖及び転移抑制に係る治療薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】細胞傷害性T細胞放出エキソソームによる癌間質間葉系細胞を標的とした腫瘍増殖及び転移抑制に係る治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20230612BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017508320
(86)(22)【出願日】2016-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2016058721
(87)【国際公開番号】W WO2016152786
(87)【国際公開日】2016-09-29
【審査請求日】2019-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2015058467
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度「JST-ERATO秋吉バイオナノトランスポータープロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】珠玖 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 一成
(72)【発明者】
【氏名】原田 直純
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 文康
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】大久保 元浩
【審判官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507140(JP,A)
【文献】瀬尾尚宏 他, 癌と免疫とエクソソーム, Drug Delivery System, 2014,Vol.29, No.2, p.152-159
【文献】Angela MONTECALVO et al., Methods of Purification of CTL-Derived Exosomes, Methods in Molecular Biology, 2014, Vol.1186, p.87-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 31/7088
A61K 48/00
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性T細胞について、抗原刺激から5日目~7日目の細胞から放出されたエキソソームを回収し、そのエキソソームから培養骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)の細胞増殖抑制に有効なmiRNAを特定する工程と、
特定されたmiRNAが、腫瘍間質中の骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)や癌関連線維芽細胞(CAF)を減少又は消失せしめることにより悪性腫瘍の浸潤、転移及び/又は増殖を抑制するか否かを評価して、そのような抑制に有効なmiRNAであることを同定する工程とを含む、悪性腫瘍治療に有効なmiRNAの抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞傷害性T細胞放出エキソソームまたは当該エキソソームに含まれるmiRNAを有効成分としてなる、癌等の細胞増殖性疾病治療に用いることができる治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
原発腫瘍組織では、腫瘍間質は、フィブロネクチン、ラミニン及びコラーゲンなどの細胞外マトリックスや、その他の多くの細胞によって形成されている。これらの細胞には、癌関連線維芽細胞(cancer-associate fibroblasts:CAFs、線維芽細胞マーカ及び血小板由来成長因子受容体α(CD140a)+、α平滑筋アクチン(α-SMA)+)、間質幹細胞(mesenchymal stem cells (MSCs)(非特許文献1。なお、文献については、末尾にまとめて示した。):CD140a+ 幹細胞抗原 Sca-1+)が認められる。その他に、E-カドヘリン等(非特許文献3,4)によって強固に結合する癌細胞と、その癌細胞の隙間を埋めるように間質が張り巡らされ、そこで血管新生(Sca-1+ CD31+)(非特許文献2)が行われる。腫瘍が浸潤及び転移するためには、腫瘍間質との相互作用による上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition: EMT)をはじめとする癌細胞の悪性化が鍵となる。上皮間葉転換は、腫瘍の悪性化を判断するためのマーカと成り得る(非特許文献5)。上皮間葉転換に関与する分子として、いくつかの報告がある(非特許文献3,6,7)。
【0003】
エンドソーム膜由来微小胞(100~200nm径)は、腫瘍細胞や腫瘍間質細胞を含む各種の細胞から放出されて、そこに含まれるタンパク質やRNAによって、細胞間の情報伝達を行うことが知られている(非特許文献8,9)。腫瘍細胞は各種の細胞外小胞(extracellular vesicles: ECV。エキソソームまたはエクソソームということがある。本明細書中において、「エキソソーム」または「ECV」という。)を放出し、これが自己増殖、免疫寛容、腫瘍環境の調整などに関わっているとの報告がある(非特許文献8,10~13)。一方、腫瘍が放出したエキソソームは、腫瘍の上皮間葉転換、及び腫瘍の増大及び増悪化を促進させるという報告がある(非特許文献9,14,15)。このため、エキソソームに関する研究は、腫瘍の増悪度を評価するために、重要なものとなっている。
マウスモデルやヒトの研究によれば、腫瘍に浸潤する活性化CD8 T細胞が、腫瘍や腫瘍間質に浸潤することがある(非特許文献16)。また、腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体を用いた免疫療法において、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含むCD8 T細胞が、腫瘍組織に集積もしくは腫瘍内増殖することが知られている(非特許文献17,18)。CTLは、腫瘍特異的ではなく、基底膜のリモデリングを介して、血管から腫瘍へと浸潤する(非特許文献19)ので、CD8 T細胞は、腫瘍の進展や増悪化に対して様々に関与すると推定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題及びそれを解決するための手段】
【0004】
上記状況下において、細胞傷害性T細胞が放出するエキソソームが、腫瘍の悪性化に関して、如何なる条件下において、どのような作用を持っているかについては、殆ど知られていなかった。
そこで、本発明者らは、細胞傷害性T細胞が放出するエキソソームが、腫瘍の悪性化に対して与える影響を詳細に検討した。その結果、各種の細胞傷害性T細胞のなかでも、とくにCD8 T細胞由来エキソソームは、腫瘍組織の癌部ではなく、周囲の間葉系細胞を死滅させ、癌の増殖・転移を含めた癌の進行を抑制するという事実を見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様は、細胞傷害性T細胞から放出された細胞外小胞(エキソソーム)を含む細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第2の態様は、前記細胞傷害性T細胞のなかでもヒトCD4、CD8、CD9、CD63+、 TCR+T細胞のうち少なくとも1または2以上から放出された細胞外小胞(エキソソーム)を含む第1の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第3の態様は、前記細胞傷害性T細胞のなかでもCD8T細胞から放出された細胞外小胞(エキソソーム)である細胞外小胞(エキソソーム)を含む第2の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第4の態様は、前記細胞外小胞(エキソソーム)が細胞増殖抑制に有効なmiRNAを含むことを特徴とする第2の態様または第3の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
【0005】
本発明の第5の態様は、前記細胞増殖抑制に有効なmiRNAを含むことを特徴とする第4の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第6の態様は、前記細胞増殖性疾病用治療薬が、殺菌剤、粘膜除去剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、増粘剤、防腐剤、粘着剤、又は免疫強化剤の中から選択される1または複数をさらに含有する第2の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第7の態様は、前記治療薬は腫瘍組織内、腫瘍組織内の間葉系細胞、静脈または皮下に投与されることを特徴とする第2の態様の細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
本発明の第8の態様は、細胞傷害性T細胞から放出されたエキソソームを回収し、そのエキソソームから細胞増殖抑制に有効なmiRNAを特定する細胞増殖性疾病治療用miRNAの抽出方法に関する。
本発明の第9の態様は、細胞増殖抑制に有効なmiRNAを含むことを特徴とする細胞増殖性疾病用の治療薬に関する。
【0006】
本発明の第10の態様は、細胞傷害性T細胞から放出されたエキソソームに含まれるmiRNAと同じ塩基配列を持つmiRNAを培養ヒト間葉系幹細胞(MSC)に添加して培養し、MSCに対する障害活性を調べることにより、miRNAのMSC傷害性を評価するMSC傷害性miRNAの同定方法に関する。
MSC傷害性miRNAが同定された後には、そのmiRNAを含むエキソソーム又は、miRNAと同じ配列を持つmiRNAを合成し、合成されたmiRNAをそのまま又はエキソソーム様に再構成することで、細胞増殖性疾患用の治療薬として用いられる。こうして、本発明の第11の態様は、MSC傷害性miRNAを含む細胞増殖性疾患用の治療薬に関する。
また、別の態様は、細胞増殖性疾病の治療方法であって、患者に対して、上記各態様の治療薬を投与する方法に関する。このとき、投与方法は、腫瘍組織内、腫瘍組織内の間葉系細胞、静脈または皮下のいずれかであることが好ましい。
エキソソームとは、各種の細胞から外部に分泌された脂質二重膜で形成される小胞を意味しており、直径が約40nm~200nm程度のものである。生体では、唾液、血液、尿、羊水、悪性腹水等の体液中で観察される。また、培養細胞から培養液中に分泌される。エキソソームには、様々のタンパク質、RNAが含まれており、細胞間の情報伝達を行う役割を担っている可能性が指摘されている。
また、本発明によれば、細胞傷害性T細胞から取得したエキソソームを投与することにより、前記エキソソームが癌細胞周囲の間葉系細胞を死滅(癌間質崩壊)させ、その結果、癌細胞の増殖/転移を抑制することができる。前記細胞傷害性T細胞のなかでもCD8+ T細胞由来のエキソソームがとくに増殖/転移抑制効果がある。作用機序としては、前記エキソソームが、癌細胞と間葉系細胞の両方に取り込まれ、前記間葉系細胞のみを死滅(アポトーシス)させ、その結果、癌細胞が増殖や転移に必要な間質細胞を失い、孤立し、増殖/転移を抑制する。また、前記エキソソームに含まれる特定のmiRNAでも同様に癌細胞の増殖/転移抑制効果が得られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細胞傷害性T細胞由来の細胞外小胞(エキソソーム)を有効成分として含有する細胞増殖性疾病治療薬を提供することができる。また、細胞増殖抑制に有効なmiRNAを含有してなる細胞増殖性疾病治療薬を提供することができる。これら本発明による治療薬は、癌等の腫瘍の細胞増殖および転移を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】CD8+T細胞放出ECVの腫瘍内投与による腫瘍増殖抑制効果を調べた結果を示す。 A. 4日間培養したDUC18、CMS5a投与BALB/c、BALB/c及びCD8+T細胞欠損BALB/c脾臓細胞及びhPBMCの各細胞をマウス及びヒトのCD4-、CD8-及びTCRαβ-特異的モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリー分析を行った結果を示すグラフである。 B. DUC18 ECVを固定化したラテックスビーズを対照モノクローナル抗体、CD4-、CD8-、TCRVb-、CD9-及びCD63-特異的モノクローナル抗体で染色後にフローサイトメトリー分析を行った結果を示すグラフである。 C. CMS5a投与野生型マウス及びヌードBALB/cマウスに対し、CMS5aの投与後12日目に、DUC18,CMS5aTBまたはBLAB/c ECVを腫瘍内投与し、腫瘍の成長を観察した結果を示すグラフである(グラフ中の記号は、* < 0.05, ** < 0.001, n.s.: 有意差無しをそれぞれ示す)。 D. ECV処理後3日目のCMS5a腫瘍を懸濁し、24時間培養したときのスフェロイド形成を顕微鏡で観察した様子を示す写真図である。 E. ECV処理後3日目のCMS5a腫瘍の切片をKi-67モノクローナル抗体及びDAPIで染色した様子を示す蛍光顕微鏡写真図である。
図2】DUC18 CD8+T細胞は、対応する腫瘍に対する特異的溶解作用を示すグラフである。変異ERK2ペプチド刺激DUC18 CD8+ T細胞を用い、CMS5a、H-2Kd-中和CMS5a、CT26、CMS7及びmERK2ペプチドパルスCMS7を目的細胞として、細胞毒性試験を行った結果を示す。
図3】本研究において使用されたECVの全タンパク質濃度及び粒子の全個数、平均直径を示す図である。 A. 3ロット分のDUC18、BALB/c、CMS5a TB及びhPBMC 由来ECVについて、BCAアッセイにて全タンパク質濃度(数値)を、NTAアッセイにて全粒子数(数値)及び平均直径(グラフ)を測定した結果を示す。 B. DUC18及びCMS5a ECVを電子顕微鏡で観察した結果を示す写真図である。
図4】DUC18 ECV投与によって、CT26腫瘍増殖がダウンレギュレーションされることを示す図である。 A. CT26を投与したBALB/cマウスについて、10日目にDUC18 ECVを腫瘍内投与し、腫瘍直径を観察した結果を示すグラフである。 B. CT26腫瘍細胞を培養BM-MSCとDUC18 ECVの存在または非存在下において混合培養したときのCD140aの発現をフローサイトメトリー分析で確認した結果を示すグラフである。 C. CT26腫瘍細胞を培養BM-MSCとDUC18 ECVまたはCMS5a TB ECVと共に混合培養したときのスフェロイド形成の確認を顕微鏡で観察したときの結果を示す写真図である。
図5】腫瘍Tリンパ球、マクロファージ及び樹状細胞の存在比に対して、CD8+ T細胞由来ECVが調節作用しないことを示すグラフである。2ロットのDUC18 ECV, CMS5a TB ECV またはBALB/c ECV をCMS5a投与BALB/cマウスの腫瘍内投与から3日目に、腫瘍懸濁液をCD4, CD8, F4/80, I-Ad, CD206またはCD11cに対するモノクローナル抗体を用いて染色後、フローサイトメトリー分析にかけた結果を示す。
図6】CD8+T細胞放出ECVを腫瘍内に投与したときのCD140a(PDGFRα)発現に対するダウンレギュレーションを調べた結果を示す。 A及びB. 2ロットのDUC18 ECVをCMS5a腫瘍内に投与したときのCD140aの発現をCMS5a ECVまたはBALB/c ECV処理群とをフローサイトメトリー分析により比較した結果を示すグラフである。(A)はドットプロットを、(B)はヒストグラムを示す。 C. ECV処理から3日目のCMS5a腫瘍の切片をCD140a特異的モノクローナル抗体及びDAPIで染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真図である。 D. TRP-2及びgp100ペプチドで刺激したB6脾臓細胞の培養液(5,7,10及び15日目)から調製されたECVを腫瘍投与から12日目のCMS5a投与BALB/cマウスまたはB16投与B6マウスの腫瘍内に投与した。ECV投与から3日目に腫瘍細胞のCD140a発現をCD140a特異的モノクローナル抗体で染色した腫瘍細胞懸濁液について、フローサイトメトリー分析にかけた結果を示すグラフである。
図7】TRP-2及びgp100ペプチド刺激B6脾臓細胞のキネティックスを調べた結果を示す。B6脾臓細胞をTRP-2及びgp100ペプチドで刺激し、TRP-2またはgp100特異的CD8+ T細胞の誘導を刺激から0,5,7,10及び15日目に対応するテトラマーを用いて、フローサイトメトリー分析で確認した結果を示すグラフである。無関係のテトラマーをコントロールとして用いた。
図8】培養した腫瘍細胞のCD140a発現及びアポトーシスに対して、CD8+T細胞由来ECVが直接に抑制しないことを示す。 A. 2ロットのDUC18 MEV、BALB/c ECV及びCMS5a TB ECVをCMD5a, CT26, 4T1,CMS7またはCMS5mの培養液中に添加し、3日目に各腫瘍のCD140a発現をフローサイトメトリーによって調べた結果を示すグラフである。ラットIgG2aモノクローナル抗体をコントロールとして用いた。 B. DUC18 ECV 及びBLAB/c ECVをCT26, CMS5a, 4T1及びCMS7の培養液中に添加し、3日目に各腫瘍細胞をアネクシンVモノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリー分析した結果を示すグラフである。
図9】CD8+T細胞放出ECVによって、BM-MSCがアポトーシスを起こし、MB-MSC媒介腫瘍増殖が抑制される。 A. DUC18 ECVまたはCMS5a TB ECVを腫瘍内投与して3日目のCMS5a腫瘍から得られた切片について、腫瘍増殖及び間質幹細胞(MSC)の評価をCD140a及びSca-1特異的モノクローナル抗体とDAPIを用いて染色することで、ER-TR7-及びα-SMA特異的モノクローナル抗体とDAPIを用いて染色することで癌関連線維芽細胞(CAF)の評価を、TGF-β1-及びSca-1特異的モノクローナル抗体とDAPIを用いて染色することで腫瘍の上皮間葉転換(EMT)の評価を、それぞれ蛍光顕微鏡で観察して行った蛍光顕微鏡写真図である。 B. 砕いた大腿骨から得られた細胞を1ヶ月培養することで、BM-MSCを調製した。DUC18, B6及びhPBMC ECVを図中に示す濃度でBM-MSC培養液に添加し、3日目に残ったBM-MSCをアネクシンVモノクローナル抗体で染色後にフローサイトメトリー分析にかけて、全個数を調べたときのグラフである。 C. MSCと共に培養したCMS5a及びB16について、DUC18 ECVを図中に示す濃度で添加し、4日間培養した。得られた腫瘍細胞をCD140a特異的モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリー分析にかけた。DUC18 ECVまたはCMS5a TB ECVを添加して、MSCと共に培養したCMS5a, 4T1, CT26及びB16のスフェロイド数を顕微鏡で観察した結果を示すグラフである。 D. CD90.1+BM-MSCキメラマウスは、放射線照射BALB/cマウスにBLAB/cマウスの正常BM細胞と培養CD90.1+ BM-MSCとを導入することで調製した。CD90.1+ BM-MSCを導入し2ヶ月後に、DUC18 ECV, hPBMC ECVまたはBLAB/c ECVを投与から12日目のCMS5a腫瘍内に投与した。ECV処理から3日目にCD140a及びSca-1陽性細胞のパーセンテージ及びCD90.1発現をフローサイトメトリーにて求めたときのグラフである。
図10】培養したCD90.1BM-MSCのキャラクタリゼーションを示す。 A. 2ヶ月間培養したCD90.1 BM-MSCをPE結合CD140aモノクローナル抗体、APC結合Sca-1モノクローナル抗体、FITC結合CD90.1, CD29若しくはCD105モノクローナル抗体、またはCD14,CD34及びCD45モノクローナル抗体の混合物を用いて染色した。得られた細胞は、フローサイトメトリー分析に供したときのグラフである。 B. 2週間培養したBM-MSCのコロニー形成をギムザ染色で調べたときの写真図である。 C. 1ヶ月培養したBM-MSC(約80%コンフルエント)を脂肪形成培地または骨形成培地で3週間培養して分化させた。脂肪細胞または骨細胞に分化したBM-MSCをOil Red OまたはアリザリンRed Sで染色したときの写真図である。
図11】腫瘍に浸潤したMSCのアポトーシスに対するCD8+T細胞放出ECVの役割を明確にするために用いられたCD90.1BM-MSCキメラBALB/ cマウスを作成するための戦略の概要図である。6グレイの放射線を照射したBALB/cマウスに対し、培養したCD90.1 BM-MSC及びBALB/c骨髄細胞を静脈内投与した。細胞投与から2ヶ月して、CD90.1 BM-MSCキメラマウスにCMS5a腫瘍細胞を皮下投与した。CMS5a投与から2週間後、DUC18 ECV, BALB/c ECVまたはhPBMC ECVをCMS5a腫瘍(約1cm径)内に投与し、腫瘍のCD90.1+ 細胞の欠損をECV投与から3日目に得られた脾細胞をフローサイトメトリーにかけることで調べた。
図12】腫瘍細胞ではなく、BM-MSCによるECV由来RNAの機能的な取り込みを示す。 A. B16細胞またはCMS5a細胞とBM-MSCを混合/または別々に3日間培養し、SYTO RNASelect染色DUC18, CMS5a TBまたはhPBMC ECVを添加した。ECV添加から2時間後に、B16, CMS5aまたはBM-MSCのSYTO RNASelectの緑色蛍光強度をフローサイトメトリーによって分析したときのグラフである。未処理腫瘍細胞とBM-MSCをネガティブコントロールとして用いた。SYTO RNASelect染色ECV処理B16, CMS5aまたはBM-MSCを別々にポジティブコントロールとして用いた。 B. SYTO RNASelect染色DUC18 ECVを投与して30分後の腫瘍から得られたB16またはCMS5a腫瘍懸濁液をCD140a-, Sca-1-特異的モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリー分析に供したときのグラフである。 C. SYTO RNASelect染色DUC18 ECVを投与した30分後の腫瘍から切片を作成し、CD140a-特異的モノクローナル抗体及びDAPI、またはSca-1-特異的モノクローナル抗体及びDAPIにより染色し、蛍光顕微鏡で観察したときの写真図である。
図13】培養BM-MSCと接触した腫瘍細胞の全mRNAマイクロアレイ解析の結果を示す。 A. B16またはCMS5a細胞を単独/または培養BM-MSCと共に3日間培養した。腫瘍細胞を蛍光活性化セルソーターによってBM-MSCから分離した。BM-MSCと混合培養した腫瘍細胞または腫瘍細胞のみで培養したものからRNeasyミニキットを用いて全RNAを抽出し、全mRNAマイクロアレイ解析に供したときのグラフである。 B. BM-MSCと混合して培養したB16及びCMS5a腫瘍のいずれでも発現量が増大した上位9個の遺伝子を示す表図である。
図14】培養BM-MSCの欠損に対するmiRNAの関与を示す。 A. BALB/c-, CMS5a TB-及びCD4 BALB/c-放出ECVから得られたmiRNAの比較により、DUC18 ECVで支配的なmiRNAを選択した。選択された15のmiRNAは遺伝的に2個のクラスターを形成した。miR-298,miR-1943及びmiR-5099(赤色にて示す)は、発現量が高く、PubMedにおいて未知のものから得られた。 B. miR-351, -700,-1943, -344g, -1199, -5113, -5114, -6347, -6392または -5099は、腫瘍、癌、免疫系、浸潤または転移の領域において、PubMedサーチでは知られていなかった。miR-298,-141, -1249, -23b及び -370は、腫瘍増殖と免疫活性化、及び腫瘍増殖と免疫賦活に関しての報告があった。選択されたDUC18 ECV支配的なmiRNAに関する既報告の70%が、腫瘍促進および増殖をダウンレギュレートするものであったことを示す円グラフである。このことから、我々の検索方法が正確であることが分かった。 C. 選択されたmiR-298, -1943及び -5099を合成し、培養したBM-MSCに対して、単独で/または混合してトランスフェクションした。ネガティブコントロールmiR及び合成CMS5a TB ECV支配的miR(miR-150, -223または -3470b)をコントロールとして用いた。トランスフェクションから3日目に残っているBM-MSCの全個数をフローサイトメトリーにて計数したときのグラフである。
図15】BLAB/c, CMS5aTBまたはCD4BALB/c miRNAとの比較によって選択されたDUC18 ECV 支配的な14個のmiRNAを示す表図である。グローバル正規化法によって抽出された100インジケータ以上のmiRNAをオレンジ色で示した。グレイで示す3個のmiRNA(miR-298-5p, -1943-5p, -5099)は、BM-MSC欠損の研究に用いた。
図16】原発腫瘍に対し、DUC18ECV及びBALB/cECVを投与すると、B16F10の浸潤及び転移を抑制することを示す。 A. B6マウスにB16F10メラノーマ細胞を皮下投与した後、B16F10浸潤と肺への転移を時系列的に観察したときの時点を示す図である。腫瘍投与から10日目、13日目及び16日目に、DUC18またはBALB/c ECVを原発B16F10腫瘍に50μg/腫瘍/部位で投与した。 B. 腫瘍投与から18日目に、取り除いたB16F10腫瘍について、浸潤の程度をHE染色によって調べた顕微鏡写真図である。図は、未処理群の6個の腫瘍切片を代表するものである。 C. 腫瘍投与から18日目に、B16F10腫瘍切片を作成し、CD140a,Sca-1及びDAPIの染色を行ったときの蛍光顕微鏡写真図である。写真図は、各群の3個のサンプルを代表するものである。 D. 腫瘍投与から45日目に、B16F10腫瘍の肺への転移を各群について調べたときの写真図、及び転移腫瘍の個数を調べたときのグラフである(* < 0.05, ** < 0.001)。
図17】腫瘍病変の血管新生部位から浸潤したCD8+ T細胞は、この細胞が産生したECVを媒介することによって、腫瘍間質形成を破壊する能力を有することを示す。 A. DMSO(未処理)またはGW4869処理にて培養したCD90.1 DUC18CD8+ T細胞から得たECVの全タンパク濃度をBSA法で測定した結果を示すグラフである。 B. CMS5aを投与して12日目のBALB/cマウスに対し、DMSO処理またはGW4869処理したCD90.1 DUC18 CD8+T細胞を静脈内に投与した。24時間後、得られた腫瘍の切片を作成し、CD90.1モノクローナル抗体、Sca-1モノクローナル抗体及びDAPI、またはCD31モノクローナル抗体、Sca-1モノクローナル抗体及びDAPIで染色したときの蛍光顕微鏡写真図である。 C. BALB/c野生型またはヌードマウスにCMS5a腫瘍を投与し12日目に、DMSO処理またはGW4869処理したCD90.1 DUC18 CD8+T細胞を投与し、ここから1日目、2日目、3日目、5日目及び7日目に、腫瘍から得られた切片をCD90.1モノクローナル抗体、Sca-1モノクローナル抗体及びDAPI、またはCD140aモノクローナル抗体、Sca-1モノクローナル抗体及びDAPIで染色したときの蛍光顕微鏡写真図である。
図18】腫瘍病変の血管新生部位から浸潤したCD8+ T細胞は、この細胞が産生したECVを媒介することによって、腫瘍間質形成を破壊する能力を有することを示す。 D. 培養したCD90.1 DUC18 CD8+T細胞の上清から得たECVをラテックスビーズと結合させ、コントロールのモノクローナル抗体、CD8モノクローナル抗体、CD9モノクローナル抗体またはCD90.1モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリー分析に供した結果を示すグラフである。 E. GW4869処理または未処理のCD90.1 DUC18CD8+ T細胞の投与から24時間後、得られた腫瘍切片をCD90.1(Thy-1.1)モノクローナル抗体とDAPI、CD8モノクローナル抗体、CD90.1モノクローナル抗体とDAPI、またはCD8モノクローナル抗体、CD9モノクローナル抗体及びDAPIで染色し、蛍光顕微鏡で観察したときの蛍光顕微鏡写真図である。 F. GW4869処理または未処理のCD90.1 DUC18CD8+ T細胞の投与から24時間後、得られた腫瘍切片をFITC結合CD90.1 (Thy-1.1)モノクローナル抗体、PE結合CD140aモノクローナル抗体、APC結合Sca-1モノクローナル抗体及びDAPIで染色し、2光子共焦点顕微鏡で観察した。紫色に染色されたMSC領域をドット円で囲った。黄色矢印は、腫瘍に浸潤したCD90.1 DUC18 CD8+ T細胞を、白い矢印は、CD90.1 ECV取り込みCD140a+ Sca-1+ MSCをそれぞれ示す蛍光顕微鏡写真図である。図は、6枚の写真のうち、いくつかの焦点を代表するものである。
図19】ヒト末梢血から分離した単核球を2週間培養した後のT細胞集団をCD4+及びCD8+でフローサイトメトリーによって調べた結果を示すグラフである。
図20】ヒトT細胞が放出したエキソソームの直径を調べた結果を示すグラフである。
図21】ヒトT細胞が放出したエキソソーム及びヒトT細胞の表面分子をフローサイトメトリーで分析した結果を示すグラフである。各グラフの横軸は蛍光強度を、縦軸はビーズの割合(%)を示す。また、グラフの上側には、分析した分子を示した。
図22】ヒトT細胞が放出したエキソソームが有する各種miRNAが、MSCに与える影響を調べた結果を示す写真図である。写真の縦方向には、miRNAの添加量を変えたものを、横方向には、添加したmiRNAの種類を示した。コントロールには、miRNAを添加しなかった。40種類のmiRNAのうち、miR-6089及びmiR-6090の2種類がMSC障害活性を示した。また、MSC障害活性を示さないものとして、miR-204-3pを示した。
図23】各miRNAがMSCの生存に与える影響を調べた結果を示すグラフである。miRNAは最終濃度40nMとして添加した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
本発明による治療薬は、細胞傷害性T細胞から放出された細胞外小胞(エキソソーム)を有効成分として含有してなることを特徴とする。前記細胞傷害性T細胞の由来は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヒツジ、トリ(ニワトリ、ダチョウを含む)でも良い。なお、治療に用いられる前記細胞傷害性T細胞としては、必ずしも同一種由来のものでなくても良いが、可能であれば、同一種由来の細胞傷害性T細胞を用いることが好ましい。また、同一種由来の細胞傷害性T細胞を用いる場合であっても、必ずしも治療される当事者(ヒトの他、ヒト以外の動物を含む)の細胞傷害性T細胞には限られず、他の者の細胞傷害性T細胞から抽出されても良い。
前記治療薬は、前記細胞傷害性T細胞のなかでもCD4、CD8、CD9、CD63+、 TCR+T細胞のうち少なくとも1または2以上から放出された細胞外小胞(エキソソーム)を含むことを特徴とするが、これらの細胞傷害性T細胞に限定されない。
細胞増殖性疾病とは、正常の領域を超えて、細胞が異常に増殖する性質を備えた疾病のことを意味しており、例えば、悪性腫瘍(癌)、前癌状態(悪性腫瘍を発生する危険性が有意に増加した状態、または正常組織に比べて、悪性腫瘍を発生しやすい形態学的な変化を伴う前癌病変)などが含まれる。
【0010】
また、前記治療薬は、細胞増殖だけでなく転移の抑制にも有効である。さらに、前記治療薬は、好ましくは前癌状態から癌状態の腫瘍が治療対象として有効であるが、良性・悪性を問わず腫瘍の増殖・転移の抑制に有効である。
本発明による治療薬の投与方法は、腫瘍への直接投与、腫瘍周辺の間葉系細胞への投与方法、静脈投与、皮下投与が挙げられるが、これらに限定はされない。
さらに本発明による治療薬は、細胞傷害性T細胞から放出された細胞外小胞(エキソソーム)由来のmiRNAを有効成分として含有してなることを特徴とする。このmiRNAが、細胞増殖抑制に有効な活性を持つことが好ましい。
miRNA(マイクロRNA)とは、細胞内に存在し、長さが20~25塩基程度の短いRNAであり、遺伝子発現を調節する機能を有すると考えられているncRNA(ノンコーディングRNA)の一種を意味する。
また、そのようなmiRNAは、小胞体(エキソソーム、人工的なリポソームを含む)に封入して用いることができる。
また、前記本発明の第6の態様に挙げた、殺菌剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、増粘剤、防腐剤、香料、粘着剤、又は免疫強化剤等の添加物の例を下記に記載する。殺菌剤としては、ヨウ素剤、アルコール類、プロナーゼは粘膜除去剤として用いられる具体例である。等張化剤の具体例としては塩化ナトリウムやグリセリン等、pH調節剤の具体例としてはクエン酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、乳酸等、安定化剤や増粘剤の具体例としてはカラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン等、防腐剤(保存料)の具体例としては安息香酸など、粘着剤の具体例としてはゼラチン、デンプン、カゼインなどがある。免疫強化剤の具体例としては、CpGオリゴDNAやポリIC RNAなどのToll様受容体のアゴニスト以外にも、タキサン系化合物などの化学療法剤、シグナル伝達阻害剤などがある。生体細胞に対し安全に用いることができる物質であればこれに限定されない。
【0011】
<試験方法>
1.マウス及び腫瘍細胞株
BALB/c (CD90.2) 及び C57BL/6 (B6) 雌性マウスは、6-8 週齢のものを日本SLCより購入した。CD90.1コンジェニックBALB/cマウス、変異ERK2(mERK2)136-144(配列番号1:QYIHSANVL)特異的H-2Kd拘束性TCR(Vβ10.1/Jβ48 及び Vβ8.3/Dβ2.1/Jβ2.6)遺伝子導入DUC18マウス(非特許文献20)及びCD90.1コンジェニックDUC18マウスは、三重大学の動物研究施設において維持した。CMS5a, CMS7, CT26, 4T1, B16及びB16F10 腫瘍細胞株は、10%FCS含有D-MEM培地を用いて継代した。DUC18マウス脾細胞から培養したCD8+ T細胞は、mREK2 CMS5aを特異的に溶解したが、mREK2- CMS7 、CT26 (BALB/c バックグラウンドに対し)、B16 または B16F10 メラノーマ(B6 バックグラウンドに対し)を溶解しなかった。実験プロトコールは、三重大学の動物倫理委員会において評価した。
2.培養液からの細胞外微小胞(ECV)の調製
FCSを100,000×gにて4時間超遠心し、フィルター処理(0.45及び0.22μm)することで、ECVを含まないFCS(ECV-free FCS)を調製した。DUC18マウスまたはCD90.1 DUC18マウスから調製した脾臓細胞(2 x 107 個/ml) を10%ECV-free FCS及び1μg/ml mERK2ペプチド含有RPMI-1640培地中にて培養した。B6マウスから調製した脾臓細胞 (2 x 107 個/ml) を10%ECV-free FCSと1μg/ml TRP-2 (配列番号2:SVYDFFVWL) 及び 1μg/ml gp100 (配列番号3:EGSRNQDWL)ペプチド(非特許文献21)を含有するRPMI-1640培地中にて培養した。BALB/cマウス、 CMS5a担癌BALB/cマウス、又はCD8+ T細胞除去BALB/cマウスの脾臓細胞 (2 x 107 cells/ml) を抗CD3モノクローナル抗体(2C11: 2 μg/ml: Biolegend)を固相化した12穴プレート中にて、10%ECV-free FCS及び1μg/ml 抗CD28モノクローナル抗体(37.51: eBioscience )含有RPMI-1640培地中にて培養した。
【0012】
Ficoll-Paque PLUS (GE healthcare社製)グラジエントを用いて調製したヒト末梢血単核球(hPBMC)をOKT3モノクローナル抗体(2 μg/ml:Biolegend)を固相化した12穴プレート中にて、10%ECV-free FCS及び1μg/ml CD28モノクローナル抗体(Biolegend)含有RPMI-1640培地中にて培養した。CD8 T細胞除去BALB/cマウスは、インビトロにてCD4 T細胞を増加させるために、Lyt-2.2-特異的モノクローナル抗体(400μg/マウス)を静脈内投与することによって調製した。培養開始から4日後に、各培地を10%ECV-free FCS及び組換えIL-2(r IL-2)(100 IU/ml)含有RPMI-1640培地に変更し、3日間培養した。得られた上清をECV供給源として用いた。得られた細胞は、マウスCD4(GK1.5)特異的モノクローナル抗体、CD8(53-6.7)特異的モノクローナル抗体、TCRVβ(H57-597)特異的モノクローナル抗体及びVβ8.3(8C1)特異的モノクローナル抗体、またはヒトCD4(OKT4)特異的モノクローナル抗体、CD8(RPA-T8)特異的モノクローナル抗体及びTCR(IP26)特異的モノクローナル抗体(全てBiolegend)を用いたフローサイトメトリー分析、及びカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を用いた細胞毒性アッセイを行った。
ECVは、超遠心を用いたプロトコールに従って精製した。培養上清(約500ml)を10,000×gにて40分間遠心し、0.45μm及び0.22μmフィルターを用いて処理した後、100mlになるまで限外ろ過にて濃縮した(Kvick Lab Packet 50 KD: GE Healthcare)。濃縮した培養上清は、0.22μmフィルターにて処理した後、120,000×gにて90分間、超遠心処理した(SW28 rotor: Beckman Courter)。得られたECV沈殿を30mlのPBSに懸濁し、120,000×gの超遠心にて洗浄した。最後にECV沈殿を1~2mlのPBSに懸濁し、4℃にて保存した。
【0013】
精製したECVのタンパク質濃度をビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Pirece)によって測定した。精製したECVの平均数及び平均直径は、ナノ追跡アッセイ(LM10-HS:Nanosight社)を用いて測定した。ECV表面タンパク質は、ECVをラテックスビーズと結合させた後に、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)を結合した抗CD4モノクローナル抗体、抗CD8モノクローナル抗体、抗CD9モノクローナル抗体(MZ3)、抗CD63モノクローナル抗体(NVG-2)及び抗Vβ8.3モノクローナル抗体(全てBiokegend)を用いて染色し、フローサイトメトリー分析によって検出した。0.1Mの2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液中に10μmのポリスチレンラテックスビーズをECV/ラテックス比を3として、ECVサンプルと混合した。混合物を回転振盪機を用いて、室温にて2時間処理した後、400mMグリシンにてブロックした。得られたラテックス結合ECVは、2% ECV-free FCS含有PBSにて2回洗浄し、モノクローナル抗体で染色処理した。
インビボ及びインビトロでのECVの動態を評価するために、100~300μgのECVを10μM SYTO RNASelect グリーン蛍光細胞染色(Molecular Probes)にて37℃で20分間染色した後、セファデックスG25スピンカラムを用いて結合していない染色物質を除いた。
【0014】
3.骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)の分化培養
BM-MSCは、添付書類の指示に従って、大腿骨から調製した(StemCell Technologies Inc.)。BALB/cまたはCD90.1+ BALB/cから得た10本の大腿骨の両端部分を切断し、乳鉢中に5mlの1%BSA含有PBSと共に移した。大腿骨を乳鉢で弱い力で5分間擦って粉砕し、このとき認められた赤い脊髄細胞は捨て去った。粉砕した大腿骨から赤い脊髄細胞を1%BSA含有PBSを新しいものと交換しながら5回取り去った後、粉々になった白い大腿骨を集め、0.2%コラゲナーゼ・タイプI(Sigma)含有PBSと共にインキュベートした。水浴中で37℃にて40分間激しく振盪した後、MSCを含む上清を70μmフィルターに通過させた。3回洗浄後に、培養プレートの壁面に接着したMSCをマウス20%MSC刺激物質含有MesenCult MSC基礎培地(StemCell Technologie Inc.)中で30日間培養した。培養中は、3日毎に半量の培地を交換した。得られたMSCが脂肪細胞及び骨細胞に分化する能力を確認するために、20%脂肪細胞形成及び骨細胞形成刺激物質を含有するMesenCult MSC基礎培地を用いて、70%コンフルエントMSCを2週間培養した後、脂肪細胞についてはOil Red O(Sigma-Aldrich)を、骨細胞についてはAlizarin Red S(和光ピュアケミカル)とヘマトキシリン(武藤ピュアケミカル)をそれぞれ用いて染色した。MSC刺激物質含有培地で得られた初期MSCコロニーをギムザ(和光ピュアケミカル)染色した。培養されたBM-MSCの純度は、PEを結合した抗CD140aモノクローナル抗体及びFITC結合抗Sca-1モノクローナル抗体で染色したMSCをフローサイトメトリー分析(FACScant II. BD)にて確認した。培養されたMSCは、更にCD29, CD90.1及びCD105の存在と、CD14, CD34及びCD45の非存在とに関し、各分子に対するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー分析によって評価した。
【0015】
4.MB-MSCキメラマウスの調製
BALB/cマウス(CD90.2)の大腿骨をPBSで洗浄し、骨髄細胞を調製した。培養後BM-MSC移植する前に、BALB/cマウスに6-Gyの放射線を照射した。CD90.1+ BALB/cマウスから得た培養MSC(1 x 106/マウス)をBALB/cの大腿骨から得た骨髄細胞(5 x 106 個/マウス)と混合し、放射線を照射したBALB/cマウスに静脈内投与した。得られたキメラマウスは、1mg/mlネオマイシン(Calbiochem社)含有オートクレーブ水と、X線照射餌とを用いて2週間維持した。MSC移植から60日後に、CD90.1+ BM-MSCキメラBALB/ cマウスを腫瘍MSCの確認に用いた。
【0016】
5.インビボにおけるCD8T細胞及びCD8T細胞放出ECVの処理
腫瘍浸潤CD8T細胞放出ECVと腫瘍間質構造の変化との関係を調べるために、皮下にCMS5a腫瘍細胞を投与して10日後(腫瘍直径が約10mm)のCMS5a担癌BALB/cマウスまたはBALB/cヌードマウスに培養後7日目のCD90.1 DUC18 CD8 T 細胞(1 x 107 個/マウス)単独またはGW4869(ECV放出阻害剤)処理したCD90.1 DUC18 CD8 T 細胞(1 x 107 個/マウス)を静脈内投与した。このとき同時に、抗マウス・グルココルチコイド誘導TNFレセプター関連タンパク質(GITR)モノクローナル抗体(DTA-1)(2μg/腫瘍)を腫瘍内投与(inter tumor: i.t.)した。DTA-1は、非特許文献18に示すように、腫瘍部位へのCD8T細胞の集積を高めるために使用した。GW4869は、培養終了の24時間前から20μg/ml添加した。培養したCD90.1 DUC18 CD8 T細胞の投与後1,2,3,5及び7日後にCMS5a腫瘍組織を回収し、免疫組織染色した。
【0017】
CMS5a細胞及びB16細胞(1 x 106 個/マウス)をBALB/c及びB6マウスの背部皮膚にそれぞれ皮下投与した。約2週間後に、腫瘍を投与したマウスのうち腫瘍の直径が1.2~1.5cmとなったものを選択し、ECV処理に用いた。各培養上清から得られたECVは、CMS5aまたはB16に対して、タンパク質量で1, 5 または10μgを腫瘍内投与し、その後の腫瘍直径を測定した。また、ECV投与から3及び5日後に、腫瘍をハサミで切断した後、0.5%トリプシン及び1mM EDTA含有PBS中で37℃、60分間インキュベートした。得られた腫瘍細胞懸濁液をウールカラムに通し、1%FCS含有PBSにて3回洗浄したものをフローサイトメトリー分析及びスフェロイド形成の確認試験に供した。フローサイトメトリー分析には、Sca-1, I-Ad, CD11b CD11c, CD73またはCD206に特異的なFITC結合モノクローナル抗体及びF4/80, Gr-1またはCD140aに特異的なPE結合モノクローナル抗体を用いた。スフェロイド形成の確認試験として、10%FCS含有RPMI-1640中にて、1 x 105 個/mlの培養を行った。
CMS5aを皮下移植したCD90.1+ BM-MSCキメラBALB/cマウスに対し、腫瘍細胞投与から2週間後にDUC18 CD8 T細胞放出ECVを5μg((ECVタンパク質量)/腫瘍)で腫瘍内投与した。ECV投与から3日後に得られた腫瘍細胞懸濁液に関し、FITC結合CD90.1特異的モノクローナル抗体、PE結合CD140a特異的モノクローナル抗体、及びアロフィコシアニン(APC)結合Sca-1特異的モノクローナル抗体で染色後に、7-アミノアクチノマイシンD(7-ADD)染色細胞を除いたものをフローサイトメトリー分析に供した。
B16F10を皮下投与し、7, 10及び13日後に50μgのDUC18 CD8 T細胞ECV, CMS5a担癌BALB/c脾臓細胞ECVまたはBALB/c脾臓細胞ECVを腫瘍内投与した。腫瘍細胞の投与から16日後に、B16F10由来の腫瘍(直径が約2cm)をハサミで注意深く切除し、腫瘍の浸潤を観察した後に外科用縫合糸で皮膚を縫い合わせた。腫瘍細胞の投与から45日後に、B16F10の肺転移の有無を観察した。
【0018】
6.インビトロにおけるCD8T細胞放出ECVの処理
DUC18, CMS5a担癌BALB/c , B16担癌B6, BALB/c及びB6の培養脾臓細胞から得られたECVを5x104個/ml のCMS5a, B16, CT26またはBM-MSCの細胞培養液中に添加した。各細胞の培養には、それぞれ10%FCS含有RPMI-1640培地またはBM-MSC培地(20%MSC刺激物質含有MesenCult MSC基礎培地)を用いた。また、5x104 個/mlのCMS5a, CT26又はB16細胞と5x104 個/mlのBM-MSC(10%FCS含有RPMI-1640培地にて培養)の混合培養後中に1又は5μg(ECVタンパク質)/mlで添加した。
培養開始から4日後に、得られた細胞について、スフェロイド形成の確認及び全細胞数とCD140a及び/またはSca-1の発現確認のフローサイトメトリー分析を行った。
【0019】
7.蛍光免疫測定法
OCTコンパウンド(サクラ・ファインテクニカル)に埋め込まれたCMS5a及びB16F10腫瘍の凍結標本を3μmの厚さで切断し、2時間風乾した後、氷冷アセトンで15分間固定しものを免疫組織化学に供した。PBSで3回洗浄後に組織切片をブロッキング溶液(1%BSA, 5% Blocking One Histo(ナカライテスク社)含有PBS, 0.2μg/mlの抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体(Biolegend))と共に4℃にて30分間インキューベートした。更に、加湿チャンバー内において、スライド上の腫瘍切片を1%BSA・5% Blocking One Histo含有PBSに溶解したPE結合モノクローナル抗体及びFITC結合モノクローナル抗体を用いて、室温にて1時間、2重標識した。0.02% Tween-20含有PBSにて3回洗浄後、スライドをDAPI含有ProLong Gold退色防止試薬(インビトロージェン・ライフテクノロジーズ)で処理し、蛍光顕微鏡(オリンパス製BX53F)にて観察した。PE、FITC及びDAPI染色組織の画像は、Photoshop elementsソフトウエア(アドビ・システムズ)を用いて重ね合わせた。蛍光免疫測定法には、CD8, CD140a, Ki-67, CD31, CD11b, ER-TR7及びTGF-β1に対するPE結合モノクローナル抗体、並びにER-TR7, Sca-1, F4/80, Gr-1, CD90.1 及びα-smooth muscle actin (α-SMA)に対するFITC結合モノクローナル抗体を用いた。
【0020】
8.細胞毒性試験
CMS5a, CMS7及びCT26細胞を2.5mMカルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジル・エステル(CFSE)を用いて、37℃にて6分間標識した。10%FCS含有RPMI-1640を用いて3回洗浄後、CFSE標識CMS5aを標的細胞として用いた。mERK2ペプチド刺激DUC18脾臓細胞を24穴プレートを用いて、CFSE標識CMS5a, CMS7またはB16細胞(1x105個)と1, 5 及び10の比率で混合した。12時間インキュベーション後、残りの細胞をフローサイトメトリーにて分析した。各サンプルについて、20,000個の非CFSE標識細胞を回収し、CFSE標識された生存している細胞数をカウントした。生存率は、2個のウエルの平均値として求め、%細胞傷害活性は文献に従い計算した(非特許文献18)。
【0021】
9.ECVベシクル中のmiRNAの解析
培養したDUC18(2ロット分),CMS5a担癌BALB/c及びBALB/c脾細胞から得られた100μgのCD8T細胞放出ECV、並びにCD8+ T細胞除去BALB/cマウス脾臓細胞から得られた100μgのCD4T細胞放出ECVを3Dジーン・マイクロアッセイ・システム(東レ・インダストリーズ)によって解析しmiRNAを同定した。マイクロアレイの正規化された生データについては、各サンプルを比較した。CMS5a担癌BALB/cとCD4BALB/cのECVと比較して、DUC18のECVにおいて優位に存在するmiRNAを検出し、特定された3個のmiRNAを機能解析にかけた。
【0022】
miRBase中のRNA配列によれば、マウスmiR298-5p (配列番号4:GGC AGA GGA GGG CUG UUC UUC CC), miR-298-3p (配列番号5:GAG GAA CUA GCC UUC UCU CAG C), miR1943-5p (配列番号6:AAG GGA GGA UCU GGG CAC CUG GA), miR-1943-3p (配列番号7:CAG GUG CCA GCU CCU CCC UUC), miR-5099-5p (配列番号8:GUU AGA AAU UAC AUU GAU UUA A), miR5099-3p (配列番号9:UUA GAU CGA UGU GGU GCU CC), miR-150-5p (配列番号10:UCU CCC AAC CCU UGU ACC AGU G), miR-150-3p (配列番号11:CUG GUA CAG GCC UGG GGG AUA G), miR-223-5p (配列番号12:CGU GUA UUU GAC AAG CUG AGU UG), miR-223-3p (配列番号13:UGU CAG UUU GUC AAA UAC CCC A), miR-3470b-5p (配列番号14:UCA CUC UGU AGA CCA GGC UGG)及び miR-3470b-3p (配列番号15:CCU GCC UCU GCC UCC CGA)を合成し、5pと3pの間でアニールした(北海道システムサイエンス)。
【0023】
ヒトPBMCから得られたECVを合成miRNAの機能解析について一時的な小胞として用いた。12穴プレートを用い、10%FCSと100IU/ml rIL-2を含有するRPMI-1640培地中に抗CD3, 抗CD28モノクローナル抗体を添加し、ヒトPBMCを3日間培養・刺激した。FCS非含有RPMI-1640培地で2回洗浄後、刺激されたヒトPBMC(1 x 108)を1.5mlの1%DMSO含有RPMI-1640培地中に懸濁し、miR-298 (50 μg), miR-1943 (50 μg)及びmiR-5099 (50 μg)、またはmiR-150 (50 μg), miR-223 (50 μg)及びmiR-3470b (50 μg)のRNAプールと混合し、エレクトロポーレーションを行った。得られた細胞をECVを含まない10%FCS含有RPMI-1640培地中にて20時間培養し、上清を0.45及び0.22フィルターに通した後、超遠心処理(120,000g)することで、合成miRNA含有ECVを得た。
【0024】
10.MSC傷害性miRNAの探索
フィコールを用いて、ヒト末梢血から単核球(PBMC)を分離した。PBMC(2 x 105 cells/ml)を0.6%自己血漿、0.2%ヒト血清アルブミン(CSL Behring)、600 IU/ml rIL-2入りのGT-T503培地(タカラバイオ)で2週間培養した。培養用プレートとして、5μg/ml OKT3抗体(バイオレジェンド)と25μg/ml RetroNectin (タカラバイオ)をコートしたものを用いた。培養後の細胞集団は、フローサイトメトリーにより、CD4及びCD8の有無を分析した。また、培養後の培養上清を10,000 gにて20 minの遠心処理した後、0.45μm及び0.22μmのフィルターで処理することにより、細胞破片や凝集タンパク質を除去した。更に、120,000 gにて70 minの超遠心処理することにより、ヒト培養T細胞放出エキソソームを分離した。
得られたエキソソームの直径をナノトラッキング解析(Nano-Tracking Analysis (NTA))により測定した。また、各種抗体をラテックスビーズ(4μm径: Life Technologies)と静電気的に結合させた物を用いて、フローサイトメトリー分析(BD: FACSCant)することにより、T細胞及びエキソソームの表面分子を調べた。
培養ヒトT細胞が放出するエキソソームが有するmiRNAをマイクロアレイ(東レ: 3D-Gene)により解析した。特定された40種類のmiRNAを存在量の多いものから順に合成した。合成したmiRNAを培養ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(MSC)に添加し、細胞傷害作用を調べた。細胞傷害活性は、(1)培養MSCに合成したmiRNAを添加した後に培養MSCをギムザ染色(和光)する方法、及び(2)電気抵抗値で細胞生存を測定するxCELLigence (ACEA BioSciences)機器を用い、専用のプレートで培養したMSCに各miRNAを添加した後のMSC生存率を計測する方法により行った。
11.統計解析
2群のデータをマン・ホイットニーU検定にて解析した。分散の同等性をレビンの試験によって確認し、2群間のデータ比較はスチューデントのt検定により解析した。 p < 0.05を統計的に有意とした。統計計算は、SPSS統計ソフトウエアv21.0(IBM)にて行った。
【0025】
<試験結果>
1. CD8T細胞放出ECVによる腫瘍増殖抑制
まず、我々はTCR刺激リンパ球由来ECVが腫瘍増殖に与える影響を調べた。TCR遺伝子トランスジェニックDUC18マウスの変異ERK2ペプチド刺激脾臓細胞、CD3特異的モノクローナル抗体及びCD28特異的モノクローナル抗体の両者で刺激したCMS5a担癌BALB/cマウス、BALB/cマウス、CD8T細胞欠損BALB/cマウス脾細胞またはhPBMCを4日間培養した後、rIL-2(100IU/ml)を含有させて更に3日間培養した。培養されたDUC18, CMS5a担癌 BALB/c及びBALB/cの脾臓細胞は、4日後には全てCD4-CD8の表現型を示した。CD8T細胞欠損BALB/cマウスの脾臓細胞は、65%がCD4及びCD8-であった。培養したhPBMCでは、それぞれCD8が70%、CD4が30%を示した(図1A)。
更に、培養したCD8 DUC18脾臓細胞は、mERK2+ CMS5aに対して細胞毒性を示し、mERK2- CMS7 又は CT26には毒性を示さず、mERK2ペプチド刺激CMS7は溶解した(図2)。得られた培養上清を超遠心処理し、各細胞(DUC18, CMS5aTB, BALB/c, CD4 BALB/c及び hPBMC)からECVを精製した。すべてのECVは、培養上清中に0.6~1.0μg/mlタンパク質濃度、約4~8x109個/ml、及び110~140nmの平均直径で存在した(図3A及び3B)。DUC18 ECVの表面マーカを調べた。親細胞の表現型と一致して、DUC18 ECVは、僅かにCD8、TCRVβ8.3及びCD63を発現し、更に既に知られているECVマーカであるCD9を高く発現した(図1B)。
【0026】
DUC18 ECV, CMS5aTB ECV及びBALB/c ECVをCMS5aを皮下投与したBABL/cマウスの腫瘍内(1.2~1.5cm腫瘍径)に投与した。驚くべきことに、DUC18 ECV及びBALB/c ECVで処理したCMS5aの増殖は、CMS5aTB ECVで処理または未処理群と比べ、それぞれ停止及び有意に減衰した(図1C)。更に、CMS5a懸濁液を1日間培養した後のスフェロイド形成は、DUC18 ECV処理群では認められず、未処理群またはCMS5a TB ECV処理群では認められた(図1C、1D)。同様に、BALB/cヌードマウスにCMS5a担癌群及びCT26担癌群では、DUC18 ECVの腫瘍内投与によって、腫瘍が減衰した。更に、CD4 BALB/c ECVをCMS5a腫瘍内に投与すると、増殖抑制は認められなかった(図1C及び図4)DUC18 ECV及びBALB/c ECVを投与したCMS5a腫瘍では、Ki-67発現量の減少が、免疫組織学的にも認められた(図1E)。これらの知見を総合すると、腫瘍環境下を除き、活性化CD8 T細胞は、細胞性免疫非依存性及び非特異的に腫瘍増殖を抑制する効果を備えたECVを放出することが分かった。
【0027】
2.CD8 T細胞放出ECVによる腫瘍のCD140a発現量の減少
活性化CD8 T細胞放出ECVが腫瘍細胞の増加を直接に抑制するか、腫瘍関連細胞に作用することによって腫瘍の増殖を抑制するか、のいずれかが推測された。この問題を解決するために、我々は、腫瘍増殖を調節すると報告されている腫瘍浸潤細胞集団の変動について調べた。CMS5a腫瘍に対しDUC18 ECV 及びBABL/c ECVを投与して3日後に、F4/80+ CD206+マクロファージまたはF4/80+ I-Ad+マクロファージと、CD11c+樹状細胞CD11b+Gr-1+MDSC又はCD4及びCD8リンパ球との比には変化が認められなかったが(図5)、増殖中の腫瘍細胞、BM-MSC及び/またはCAF細胞を含むCD140+間葉系マーカー陽性細胞数は、DUC18 ECV投与によって大きく減少した(図6A及び6B)。これらのデータは、DUC18 ECV及びBALB/c ECV を投与したCMS5aではCD140aの発現量が減少すること(図6C)によっても確認された。別に、ECV発現動態を、TRP-2及びGP100ペプチド刺激B6脾臓細胞の5, 7, 10, 15日目の培養上清から得られたECVによって確認した。TRP-2特異的CD8リンパ球及びgp100特異的CD8リンパ球は、培養中に徐々に増加し、15日目には、それぞれ95%及び3%に至った(図7)。興味深いことに、腫瘍内投与によるCD140a発現の減少のピークは培養7日目に得られるECVで起こり、TRP-2及びgd100特異的CD8T細胞が放出するECVは、無関係なCMS5a及び関連するB16に対して同様に作用した(図6D)。投与後15日目のペプチド特異的CD8T細胞による機能的ECV産生の減少は、リンパ球の衰退と関連すると考えられた。
これらの結果より、腫瘍の増殖と進行は、CD8T細胞放出ECVの影響によって、特異性無く抑制されることが示された。
【0028】
3.CD8T細胞放出ECVによる間葉系間質細胞媒介性の腫瘍の悪性化のダウンレギュレーション
DUC18 ECVは、CMS5a細胞だけでなくCD26, 4T1及びB16細胞においても、CD140a発現量に対して直接には影響を与えず、インビトロでのアネクシンV染色によって、CMS5a、CT26, 4T1又はCMS7のアポトーシスを誘導できなかったことから、CD8T細胞放出ECVによる腫瘍細胞の直接的な抑制効果は否定された(図8)。更に、免疫組織学においても、DUC18 ECV処理後のCMS5a腫瘍について、BM-MSC(CD140a+ Sca-1+)及びCAF(ER-TR7+ α-平滑筋アクチン[SMA]+)の消失、TGF-β1発現減少が認められた(図9A)。そこで我々は、間葉系腫瘍間質細胞の代表としてのBM-MSCとCD8T細胞放出ECVとの関係について調べた。培養したBM-MCSの数は、DUC18 ECV及びB6 ECVを添加すると、3日後にはアポトーシスによって、劇的に減少した(図10)が、ヒトPBMC放出ECVでは、そのような反応は認められなかった(図9B)。更に、DUC18 ECVを培養BM-MSCと腫瘍細胞の混合物に加えたところ、CMS5aTB ECV処理群に比べると、CMS5a及びB16細胞のCD140aの発現並びにCMS5a, 4T1, CT26及びB16のスフェロイド形成は、DUC18 ECVの存在によってダウンレギュレートされた(図9C)ことから見て、BM-MSCとの相互作用による腫瘍の間葉系への遷移は、BM-MSCがCD8 T細胞放出ECVによって損失を受けたことによって妨害されたものと考えられた。CD8T細胞由来のECVによって、腫瘍浸潤BM-MSCが消失することをインビボで確認するために、DUC18 ECV, BALB/c ECV及びhPBMC ECVをCMS5a担癌CD90.1+ BM-MCSキメラBALB/cマウスの腫瘍内に投与した(図11)。
【0029】
投与されたCD140a+ Sca-1+ BM-MSCの5%及び約15%のBM-MSC分化細胞(例えば、CAF、癌関連繊維芽細胞、周皮細胞など)を含むCD90.1+細胞が、キメラマウスのCMS5a腫瘍内に認められた。この腫瘍浸潤CD90.1+細胞は、hPBMC ECVでは影響がなかった。一方、DUC18 ECV及びBALB/c ECVの腫瘍内投与によって消失した(図9D)。
ECVは、BM-MSC及び腫瘍細胞のいずれに対しても取り込まれるが、BM-MSCと混合培養したB16細胞及びCMS5a細胞は、SYTO RNASelect標識DUC18, CMS5a TBまたはhPBMC ECVを取り込んで直ぐに緑色蛍光強度の減少が確認された。BM-MSCと接触した腫瘍細胞はECVを取り込んだ後すぐにECV由来のmiRNAを分解するようだ(図12A)。全RNAマイクロアレイ解析(東レ社製3Dジーン)によれば、BM-MSCに接触している腫瘍細胞では、リゾチームmRNA量の強い増大が認められた(図13)。SYTO RNASelect標識DUC18 ECV処理したCMS5aのフローサイトメトリー分析及び免疫組織化学解析でも、ECV処理から30分後には、CD140a+ またはSca-1+ 間質領域に緑色蛍光標識が認められたが、癌部には認められなかった(図12B、12C)。
【0030】
4.間葉系間質細胞が媒介する腫瘍進行を阻害する新規miRNAの関与
BM-MSCの死滅に対し、hPMBC ECVが不応答で、自己及び同種CD8 T細胞由来ECVが応答することから、ECV内のmiRNAの関与が示唆された。そこで、DUC18(2ロット), CMS5a TB及びCD4 Balb/c ECVから得られた全RNAをmiRNAマイクロアレイ(東レ社製3Dジーン)によって解析した。グローバル正規化数値及びmiRNA間のヒートマッピングデータを比較することによって、DUC18 ECVでは、miR-298, miR-351, miR-700, miR-141, miR-1943, miR-1249, miR-344g, miR-23b, miR-370, miR-1199, miR-5113, miR-5114, miR-6347, miR-6392及び miR-5099が、CMS5a ECVでは、 miR-150, miR-223 及び miR-3470bが、それぞれ優位に存在すること分かった(図14A)。予想された通り、DUC18 ECV由来のmiR-298, miR-141,miR -1249, miR-23b, 及び miR-370については腫瘍の自己抑制効果が報告されており、選択されたmiRNAが正しいことが確認された(図14B図15)。併せて、DUC18 ECVのうちで最も効果的であると予測された3種類のmiRNA(miR-298, miR-1943及びmiR-5099)の5p及び3pオリゴヌクレオチドを合成、アニールし、培養BM-MSCに導入した。miR-1943及びmiR-5099を導入した場合に比べ、miR-298を導入した場合には、BM-MSCの数が際立って減少した(図14C)。CMD5a TB ECVに優位なmiR-150, miR-223及びmiR-3470bを導入した場合には、BM-MSC死滅作用は見られなかった。これらの結果から、BM-MSCを死滅させるmiRNAとして、miR-298が初めて見出された。免疫系の類似性及び癌の基礎研究から考えて、ヒトの細胞傷害性T細胞から取得したエキソソームに含まれるmiRNAにおいても、このような効果のある特定のmiRNAが存在している。
【0031】
5.CD8 T細胞放出ECV処理による腫瘍の浸潤及び転移の予防
腫瘍の浸潤や転移は、腫瘍の上皮間葉転換及び増悪の指標となる。そこで我々は、B16F10細胞を皮下投与したマウスに対し、DUC18 ECV, CMS5a TB ECVまたはBALB/c ECVを10, 13 及び16日目に腫瘍内投与することで、浸潤と転移に与える影響を調べた。18日目に腫瘍浸潤の状態を観察し、B16F10腫瘍を外科的に切除し、皮膚を縫合した。無処理群では50%、CMS5a ECV処理群では33%で腫瘍の除去が可能であったものの、除去できなかった全ての腫瘍において筋膜への浸潤が認められた(表1)。
【0032】
【表1】
【0033】
一方、DUC18 ECV及びBALB/c ECVを投与した群では、全ての個体で腫瘍の除去が可能であり、45日目において、全個体が生き残っていた(図16A図16B)。更に、B16F10細胞を投与して18日目には、DUC18 ECV及びBALB/c ECVを腫瘍内投与した個体では、免疫組織学的解析によってCD140a+ Sca-1+ 間葉間質の減少が認められた(図16C)。期待した通り、無処理のマウスに比べ、DUC18 ECV及びBALB/c ECVを投与したマウスでは、B16F10の肺転移が大幅に抑制された(図16D)。これらの結果から、CD8 T細胞放出ECVは、腫瘍の増悪を抑制することが示された。
【0034】
6.末梢循環活性化CD8 T細胞は、血管新生部位での腫瘍内浸潤し、腫瘍間質構造を破壊する。
最後に、CD8 T細胞が腫瘍に浸入し、ECVを放出しながら腫瘍間質構造を破壊するか否かを調べた。BALB/cまたはBALB/cヌードマウスにCMS5aを皮下投与し、約1cm径となったところで、GW4869(エキソソーム産生阻害剤)で処理または未処理の培養CD90.1+ DUC18 CD8 T細胞(図17A)を腫瘍内に投与し、腫瘍に浸潤したCD90.1+ DUC18 CD8 T細胞と間質の状態を経時的に腫瘍切片の免疫染色によって調べた。GW4869処理の有無に依らず、CD90.1+ CD8 T細胞は、投与24時間後には、内皮前駆細胞およびBM-MSCによって構成されたCMS5a腫瘍間質のSca-1+ CD31+血管新生領域に認められた(図17B)。驚いたことに、CMS5a腫瘍のSca-1+または CD140a+ 領域は、CD90.1+ CD8 T細胞の移入3日目には消失し、その状態が7日目まで持続した(図17C)。間質破壊効果は、BALB/cヌードマウスに比べ、野生型BALB/cマウスの方が大きく、これはBALB/c由来CD8T細胞が、投与されたCD90.1+ CD8 T細胞と共に腫瘍内浸潤した結果と考えられる。また、Sca-1+または CD140a+ 間質の消失は、GW4869処理CD90.1+ CD8 T細胞の投与群では認められなかった(図17C)ことから、精製ECVを用いた結果と同様に、腫瘍内浸潤CD8 T細胞は腫瘍間質構造を破壊するためのECVを産生していることが示唆された。CD90.1+ CD8 T細胞放出ECVは強いCD9及びCD90.1発現を示し、CD8はほとんど出ていない(図18D)。CD90.1+ CD8T細胞の投与24時間後のCMS5a腫瘍では、CD140a+ Sca-1+ 間質領域におけるECV由来CD9及びCD90.1(図18E)並びにその融合シグナル(図18F)が認められるものの、GW4869処理したCD90.1+ CD8 T細胞処理群腫瘍では認められなかった。
【0035】
7.ヒト培養T細胞が放出するエキソソームからMSC傷害性miRNAを特定できる。
ヒト末梢血から分離した単核球を2週間培養した後のT細胞集団をフローサイトメトリーで分析した結果、CD8が優位なT細胞集団となった(図19)。このT細胞が培養上清中に放出したエキソソームの直径をナノトラッキング解析したところ、約150nmであった(図20)。
エキソソーム及びヒト培養T細胞の表面抗原をフローサイトメトリーで分析した結果、エキソソームマーカーとしてのテトラスパニン分子(CD9, CD63, CD81)とCD8及びHLA class I分子を表現していた(図21)。
エキソソームが有する40種類のmiRNAを培養中のMSCに添加し、細胞傷害活性を調べた結果、2種類のmiRNA(miR-6089及びmiR-6090)を同定できた(図22図23)。
こうして得られたMSC傷害性miRNAは、細胞増殖性疾患用の治療薬として応用できる。
ヒトとマウスとは、免疫系において、ほぼ同様のシステムを有していることから、マウスのインビボ及びインビトロで得られた知見は、そのままヒトにおいて転用できる。
このように、本実施形態によれば、細胞傷害性T細胞放出エキソソームによる癌間質間葉系細胞を標的とした腫瘍増殖及び転移抑制に係る治療薬を提供できた。
次に、本発明に関する先行技術文献を示す。なお、明細書中に番号を付して説明しなかったが、本願発明の先行技術と成りうるものを示してある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0036】
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図1
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【配列表】
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