(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】クリアーホルダー
(51)【国際特許分類】
B42F 7/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B42F7/00 G
(21)【出願番号】P 2019224070
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032735
【氏名又は名称】プラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 一輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】眞田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】塩野 順
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】原田 くるみ
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3060641(JP,U)
【文献】特開2001-354244(JP,A)
【文献】特開2004-352303(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167259(JP,U)
【文献】特開2005-022263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折曲辺と、折曲辺に隣接する接合辺と、2つの開放辺とを備えるクリアーホルダーであって、
該クリアーホルダーは、一枚の紙部材から形成されており、
該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、
前記クリアーホルダーの表紙または裏紙の面積の90%以上に透明化樹脂が付与されており、
該折曲辺の近傍には、透明化樹脂が付与されていない、
クリアーホルダー。
【請求項2】
前記透明化樹脂が付与されている部分の不透明度が60%未満である、請求項1に記載のクリアーホルダー。
【請求項3】
前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量以下である、請求項1または2に記載のクリアーホルダー。
【請求項4】
前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量の1/4以上である、請求項1~3のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項5】
前記折曲辺の近傍15mm以下に透明化樹脂が付与されていない、請求項1~4のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項6】
前記クリアーホルダーの内面のうち、少なくとも一面の平滑度が60秒以下である、請求項1~
5のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項7】
前記クリアーホルダーの外面のうち、少なくとも一面の平滑度が150秒以上である、請求項1~
6のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項8】
前記クリアーホルダーの接合辺の近傍に、透明化樹脂が付与されていない、請求項1~
7のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項9】
前記クリアーホルダーの接合辺が、包み接着により接合されている、請求項1~
8のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項10】
前記透明化樹脂が、クリアーホルダーの内面に付与されている、請求項1~
9のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項11】
前記紙基材の厚みが、75μm以上である、請求項1~
10のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項12】
前記紙基材の坪量が、50g/m
2以上である、請求項1~
11のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項13】
クリアーホルダーの内面の
表紙または裏紙の面積の90%以上に着色塗料が付与されている、請求項1~
12のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【請求項14】
クリアーホルダーの外面に印刷処理がなされた、請求項1~
13のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリアーホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリアーホルダーは、一般的に収納物が外部から見えるようにするために、透明性を有するプラスチックシートなどの樹脂をシート状に加工したものを融着して用いている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、各種合成樹脂製のシート材料を使用したクリアーホルダーは、安易に焼却処分をすることが困難であり、環境負荷低減が求められている。
本発明の目的は、紙基材を使用しつつ、透明性および引き裂き強度に優れたクリアーホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、一枚の紙部材から形成されたクリアーホルダーにおいて、折曲辺の近傍に透明化樹脂を付与しないことにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<14>に関する。
<1> 折曲辺と、折曲辺に隣接する接合辺と、2つの開放辺とを備えるクリアーホルダーであって、該クリアーホルダーは、一枚の紙部材から形成されており、該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、該折曲辺の近傍には、透明化樹脂が付与されていない、クリアーホルダー。
<2> 前記透明化樹脂が付与されている部分の不透明度が60%未満である、<1>に記載のクリアーホルダー。
<3> 前記透明化樹脂の紙基材への付与量が、紙基材の坪量以下である、<1>または<2>に記載のクリアーホルダー。
<4> 前記折曲辺の近傍15mm以下に透明化樹脂が付与されていない、<1>~<3>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<5> 前記クリアーホルダーの略一面に透明化樹脂が付与されている、<1>~<4>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<6> 前記クリアーホルダーの内面のうち、少なくとも一面の平滑度が60秒以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<7> 前記クリアーホルダーの外面のうち、少なくとも一面の平滑度が150秒以上である、<1>~<6>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<8> 前記クリアーホルダーの接合辺の近傍に、透明化樹脂が付与されていない、<1>~<7>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<9> 前記クリアーホルダーの接合辺が、包み接着により接合されている、<1>~<8>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<10> 前記透明化樹脂が、クリアーホルダーの内面に付与されている、<1>~<9>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<11> 前記紙基材の厚みが、75μm以上である、<1>~<10>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<12> 前記紙基材の坪量が、50g/m2以上である、<1>~<11>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<13> クリアーホルダーの内面の略一面に着色塗料が付与されている、<1>~<12>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
<14> クリアーホルダーの外面に印刷処理がなされた、<1>~<13>のいずれかに記載のクリアーホルダー。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紙基材を使用しつつ、透明性および引き裂き強度に優れたクリアーホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、クリアーホルダーの基本構成図である。
【
図3】
図3は、紙部材の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[クリアーホルダー]
本発明のクリアーホルダーは、折曲辺と、折曲辺に隣接する接合辺と、2つの開放辺とを備えるクリアーホルダーであって、該クリアーホルダーは、一枚の紙部材から形成されており、該紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されており、該折曲辺の近傍には、透明化樹脂が付与されていない。
本発明のクリアーホルダーは、紙基材を使用しつつ、透明性および引き裂き強度に優れる。
上記の効果が得られる理由としては、以下のように考えられる。
紙基材に透明化樹脂を付与することにより、透明性に優れた紙部材が得られる。一方、透明化樹脂を付与した紙部材を用いて、従来と同様にクリアーホルダーを作製すると、十分な引き裂き強度が得られず、折曲辺に隣接する開放辺近傍で破れが生じた。
本発明者等が鋭意検討した結果、紙基材は、透明化樹脂が付与されることによって、引き裂き強度が低下することが明らかとなった。引き裂き強度が低下した結果、内容物の出し入れの際に外力が集中する折曲辺の近傍で破れが生じていると考え、折曲辺の近傍には、透明化樹脂を付与しないことで、引き裂き強度の低下が抑制され、透明性および引き裂き強度に優れたクリアーホルダーが得られたと推察される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0009】
図1は、クリアーホルダーの基本構成図である。また、
図2および
図3は、本発明のクリアーホルダーに使用される紙部材の一例を示す模式図である。なお、
図2および
図3は、440mm×330mmの紙基材に、透明化樹脂、着色塗料等を付与した後、または付与する前に、
図2または
図3に示す形状に打ち抜いた(所望の形状に切った)ものである。
図1~
図3を用いて、本発明のクリアーホルダーについて説明する。
本発明のクリアーホルダー10は、一枚の紙部材Sから形成されており、紙部材Sを折り曲げて二枚重ねとし、折り曲げにより形成された折曲辺11に隣接する1つの接合辺12と、2つの開放辺13および14とを有する。
なお、一枚の紙部材から形成されているとは、二枚以上の紙部材から形成されたものではないことを意味し、折り曲げにより二枚重ねにしていることを意味するものである。従って、たとえば、接合辺の接合のために、接着用部材を有する態様を排除するものではない。
クリアーホルダー10は、開放辺13および14から書類D等を挿入し、紙部材Sの間に書類Dなどを挟持させるものである。クリアーホルダー10の大きさは特に限定されないが、A4、A5、B5、B6などの大きさの書類Dを挟持可能となるように設計されていることが好ましい。
また、クリアーホルダー10の表紙21とは、
図1の手前側に存在する、切り欠き15が形成されている側の紙部材Sであり、裏紙22とは、
図1において書類Dの奥側に存在する、紙部材Sである。すなわち、本発明のクリアーホルダーは、一枚の紙部材Sを折り曲げることにより、表紙21と裏紙22が形成されている。
さらに、内面とは、書類Dと接触する側の面であり、表紙21の内面と、裏紙22の内面の2つが存在する。同様に、外面とは、内面の反対面であり、表紙21の外面と、裏紙22の外面の2つが存在する。
図2は、紙部材Sを内面側から観察しており、左側が表紙、右側が裏紙である。また、
図3は、紙部材Sを外面側から観察したものであり、右が表紙、左が裏紙である。
【0010】
接合辺12は、書類Dが落下しないように、接合され、閉じている。接合辺12は、いずれの方法で接合されていてもよく、たとえば、接着剤による貼合、接着用部材(たとえば、粘着紙テープ)による接着、包み(くるみ)接着等が例示されるが、
図2に示すように、表紙21の下端部を裏紙22方向に折り込んで、裏紙22の外面と接合する、包み接着により接合されていることが、強度に優れ、クリアーホルダーの内部に、接合辺近傍まで書類等を挿入可能となる点で好ましい。
また、
図2および
図3に示すように、包み接着を行う際に、紙の巻き込みを防止する観点から、裏紙側の接合辺に傾斜を持たせることも好ましい。
なお、接合辺12は、接合辺全体が閉じている態様に限定されず、一部、閉じられている部分が存在していてもよい。
すなわち、
図2では、包み接着用の折り返し部25が折曲辺11まで形成されているが、このような態様に限定されるものではなく、
図3に示すように、折り返し部25と折曲辺11との間に折り返し部25が形成されていない部分があってもよい。このような場合、接合辺12の折曲辺11近傍は接合されていないが、クリアーホルダーの内部から書類等が脱落しない範囲で、接合されていない箇所が存在してもよい。
【0011】
本発明において、紙部材Sは、紙基材の少なくとも一部に、透明化樹脂が付与されている。
透明化樹脂は、紙基材の少なくとも一部に付与されていればよいが、内容物である書類D等を視認するため、略一面に付与されていることが好ましく、紙部材Sの少なくとも表紙21に付与されていることが好ましく、透明化樹脂が、表紙の略一面に付与されていることがより好ましい。
図2に示すように、紙基材Sの表紙21の略一面に透明化樹脂を付与することにより、透明性に優れたクリアーホルダーが得られる。ここで、略一面とは、表紙または裏紙の面積の90%以上の面積を意味し、好ましくは95%以上の面積を意味する。
【0012】
透明化樹脂は、折曲辺の近傍に付与されていない。
図2では、折曲辺11の近傍5mm以下に透明化樹脂が付与されていない。
図2において、表紙21の網掛け部分は、透明化樹脂の付与部分を示している。このように、折曲辺11の近傍に付与しないことにより、引き裂き強度に優れたクリアーホルダーを得ることができる。
透明化樹脂は、十分な引き裂き強度を得る観点、および透明性を担保する観点から、折曲辺の近傍15mm以下に付与されていないことが好ましい。ここで、折曲辺の近傍15mm以下とは、折曲辺と並行する線を仮定したとき、折曲辺と前記並行する線の間の幅が15mm以下であることを意味し、折曲辺と前記並行する線の間に、透明化樹脂が付与されていないことを意味する。
透明化樹脂が付与されていない部分は、折曲辺の近傍12mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0013】
本発明において、接合辺12の近傍にも、透明化樹脂が付与されていないことが好ましい。接合辺12の近傍に透明化樹脂が付与されていないことにより、書類Dの出し入れの際に力のかかる、接合辺12の開放辺14の近傍における引き裂き強度が高まり、破れの発生が抑制される。
透明化樹脂は、十分な引き裂き強度を得る観点、および透明性を担保する観点から、接合辺の近傍15mm以下に付与されていないことが好ましい。ここで、接合辺の近傍15mm以下とは、接合辺と並行する線を仮定したとき、接合辺と前記並行する線の間の幅が15mm以下であることを意味し、接合辺と前記並行する線の間に、透明化樹脂が付与されていない。
図2においては、接合辺の近傍5mm以下に透明化樹脂が付与されていない。
透明化樹脂が付与されていない部分は、折曲辺の近傍12mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明において、クリアーホルダーの表紙の少なくとも一部に、透明化樹脂の少なくともいずれかの樹脂が付与されている。
透明化樹脂は、表紙の内面に付与されていても、外面に付与されていてもよい。
【0015】
本発明のクリアーホルダーにおいて、透明化樹脂が付与されている部分の不透明度は、ホルダー内部の視認性を高める観点から、好ましくは60%未満、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下であり、そして、製造容易性の観点から、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。
不透明度は、JIS P 8149:2000に規定される不透明度試験方法により測定する。
【0016】
本発明のクリアーホルダーは、クリアーホルダーの一部に着色塗料が付与されていてもよく、意匠性を高める観点から、クリアーホルダーの内面の略一面に着色塗料が付与されていることが好ましく、クリアーホルダーの裏紙の内面の略一面に着色塗料が付与されていることがより好ましい。
図2において、裏紙の網掛け部分は、着色塗料の付与部分を示している。
本発明において、クリアーホルダーを構成する紙部材は、紙基材を有するため、塗料を種々の印刷方法により容易に付与することができる。印刷方法としては、具体的には、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷等が例示されるが、特に限定されない。
着色塗料を付与することにより、内部に書類Dが入っているのか、否かを容易に識別することが可能となり、また、裏紙の外面側への書類Dの透けが抑制される。さらに、書類Dを入れる前のクリアーホルダーの意匠性が向上する。
なお、本発明において、紙基材が使用されており、印刷適正に優れるため、着色塗料を表紙の一部に付与して意匠性を向上させたり、表紙または裏紙に種々の模様を印刷することもできる。また、単色の着色塗料を付与する態様に限定されず、たとえば、インクジェットプリンタを用いて、種々の模様を印刷してもよい。
【0017】
本発明のクリアーホルダーは、外面に印刷処理を行ってもよい。具体的には、裏紙の外面に、必要に応じて、商品のバーコードや販売社名を記載したり、外面に種々の模様を印刷することによって、クリアーホルダーの意匠性を向上させてもよい。
当該印刷処理は、いずれの印刷方法を適用してもよく、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
図3には、一例として、裏紙の外面に、販売社名およびバーコードが印刷されている。
【0018】
本発明のクリアーホルダーは、内面のうち、少なくとも一面の平滑度が60秒以下であることが好ましい。なお、少なくとも一面の平滑度が60秒以下であるとは、少なくとも内面の一面の中で、50面積%以上、好ましくは70面積%以上、より好ましくは90面積%以上が、平滑度が60秒以下であることを意味し、以下の説明において同様である。
平滑度が上記範囲内であると、摩擦係数が高く、挿入される書類Dが飛び出しにくいため好ましい。
内面の内、少なくとも一面の平滑度は、より好ましくは55秒以下、さらに好ましくは50秒以下、よりさらに好ましくは40秒以下、よりさらに好ましくは30秒以下、よりさらに好ましくは20秒以下である。また、下限は特に限定されないが、書類Dが挿入されていないときの張り付きを抑制する観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上、さらに好ましくは5秒以上である。
なお、表紙の内面および裏紙の内面の双方が、平滑度が60秒以下であることが好ましく、裏紙の内面であることが好ましい。また、透明化樹脂が付与された内面が上述した平滑度を有することも好ましい。
平滑度は、実施例に記載の方法により測定される。
内面の平滑度は、紙厚や紙を抄紙する際のプレス工程での圧力を調整することで、上記範囲内とすることができる。または、オフカレンダーにより平滑性を調整してもよいがその限りではない。
【0019】
本発明のクリアーホルダーは、外面のうち、少なくとも一面の平滑度が150秒以上であることが好ましい。平滑度が上記範囲内であると、手触り感、および意匠性に優れるので好ましい。また、クリアーホルダーの外面が滑りやすくなることで、クリアーホルダーを重ね合わせた際に、取り出しやすくなるので好ましい。
外面のうち、少なくとも一面の平滑度は、より好ましくは160秒以上、より好ましくは180秒以上、さらに好ましくは200秒以上である。また、上限は特に限定されないが、意匠性および手触り感の観点から、好ましくは1000秒以下、より好ましくは700秒以下、さらに好ましくは500秒以下である。
なお、平滑度が150秒以上である外面は、表紙の外面であることが好ましく、すなわち、透明化樹脂が付与された内面の反対面である外面であることがより好ましい。
平滑度は実施例に記載の方法により測定される。
外面の平滑度は、透明化樹脂の付与量を調整することで、上記範囲内とすることができ、また、紙を抄紙する際の、ヤンキードライヤーのシリンダー表面に紙を当てるときの圧力調整によっても上記範囲内の平滑性が調整できる。
【0020】
以下、本発明のクリアーホルダーに使用される紙基材、および透明化樹脂について記載する。
<紙基材>
本発明のクリアーホルダーに用いられる紙基材は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられる紙であることが好ましく、木材パルプまたは非木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。また、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等が挙げられ、これらの中でも、晒または未晒クラフト紙、上質紙、片艶紙が好ましく、所望の平滑度を得る観点から、片艶紙がより好ましい。この場合、片艶紙の艶面を外面とし、内面に透明化樹脂を付与することが好ましい。
本発明のクリアーホルダーは、紙基材を使用することで、環境負荷低減、リサイクル性、廃棄容易性に優れる。
【0021】
紙基材には、内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0022】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(たとえば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用することができる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0023】
また、上述のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0024】
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、クリアーホルダーとしての形状安定性および引き裂き強度に優れるクリアーホルダーを得る観点から、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは55g/m2以上、さらに好ましくは58g/m2以上であり、そして、経済性および環境負荷低減、透明性に優れたクリアーホルダーを得る観点から、好ましくは300g/m2以下、より好ましくは200g/m2以下、さらに好ましくは150g/m2以下、よりさらに好ましくは120g/m2以下、よりさらに好ましくは80g/m2以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0025】
(紙厚)
紙基材の厚さ(紙厚)は、クリアーホルダーの形状安定性、十分な引き裂き強度を得る観点、および透明度に優れたクリアーホルダーを得る観点から、好ましくは75μm以上、より好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは125μm以下である。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0026】
<透明化樹脂>
本発明のクリアーホルダーを構成する紙部材は、紙基材の少なくとも一部に透明化樹脂が付与されている。
透明化樹脂としては、たとえば、UV硬化型透明化樹脂、ロジン系水性透明化樹脂、石油系炭化水素透明化樹脂、ポリエステル系透明化樹脂、ウレタン系透明化樹脂、ニトロセルロース系透明化樹脂等を好適に用いることができる。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
UV硬化型透明化樹脂(「UVニス」と称される場合もある。)は、(メタ)アクリレート系単量体と光重合開始剤とを含有する組成物である。UV硬化型透明化樹脂は紙基材に付与することにより、紙基材の不透明度を低下させる作用を有する。また、紫外線を照射されると前記光重合開始剤が分解し、前記(メタ)アクリレート系単量体が重合することにより付与部分を硬化させる作用をも有する。
UV硬化型透明化樹脂としては、たとえば、サイデン化学株式会社製の「サイビノールX-507-251V(商品名)」、オート化学工業株式会社製の「UVF-102A-2」等を好適に用いることができる。
UV硬化型透明化樹脂を紫外線硬化させる際には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ等の公知の光源を使用し、積算光量として、たとえば50~1,000mJ/cm2を照射して硬化する。
【0028】
ロジン系水性透明化樹脂は、天然ロジン系樹脂等のロジン系樹脂のエマルジョンおよび水を含有する組成物である。ロジン系水性透明化樹脂は紙基材に付与することにより、紙基材の不透明度を低下させる作用を有する。また、熱硬化性樹脂を混合させた組成物は加熱により付与部分を硬化させる作用をも有する。さらに、組成物が水性であるため、紙基材の再生が容易となる点においても好ましい。
ロジン系水性透明化樹脂としては、たとえば、いずれも日工化学株式会社製の「ユニットNo.10N冬(商品名)」、「エコロスイセイAC-130N(商品名)」等を好適に用いることができる。
ロジン系水性透明化樹脂に熱硬化性樹脂を混合する場合には、改質剤として変性エポキシ樹脂と溶媒の混合物を用いることができる。より具体的には、いずれも日工化学株式会社製の「改質剤M-14(商品名)」、「改質剤HS(商品名)」等を好適に用いることができる。また、粘度を調整するためにロジン系水性透明化樹脂に希釈溶媒を加えたものを用いてもよい。希釈溶媒の種類は特に限定されないが、水と親和性の高い溶媒、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル等を好適に用いることができる。
【0029】
本発明において、透明剤樹脂の中でも、UV硬化型透明化樹脂を用いることが好ましい。
なお、紙基材の透明化樹脂を付与することにより、上述した不透明度が達成されるように、透明化樹脂の種類、付与量等を適宜調整することが好ましい。
【0030】
透明化樹脂の紙基材への付与量は、透明性を向上させる観点、および十分な引き裂き強度を得る観点から、好ましくは紙基材の坪量の1/4以上の付与量、より好ましくは紙基材の坪量の1/3以上の付与量、さらに好ましくは紙基材の坪量の1/2以上の付与量、よりさらに好ましくは紙基材の2/3以上の付与量である。
また、透明化樹脂の紙基材への付与量は、同様の観点から、好ましくは紙基材の坪量以下である。紙基材の坪量を超えて透明化樹脂を付与すると、引き裂き強度が低下する傾向にある。
【0031】
本発明において、クリアーホルダーの折曲辺近傍における引き裂き強度は、好ましくは350mN以上、より好ましくは400mN以上、さらに好ましくは420mN以上であり、そして、製造容易性の観点から、好ましくは1500mN以下、より好ましくは1000mN以下である。
なお、上記の引き裂き強度は、クリアーホルダーの縦方向(折曲辺と平行な方向)および横方向(接合辺と平行な方向)のいずれかで満足することが好ましいが、特に折曲辺での引き裂きを抑制する観点から、縦方向の引き裂き強度が上記の範囲であることがより好ましい。
クリアーホルダーの折曲辺近傍における引き裂き強度、すなわち、透明化樹脂が付与されていない部分の紙基材の引き裂き強度を上記の範囲内とすることにより、書類等を出し入れした際の破れの発生が抑制されるので好ましい。
【0032】
透明化樹脂の付与方法は特に限定されず、必要な部分のみを含浸する方法、種々の印刷方法(たとえば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷)を使用すればよい。
また、透明化樹脂がUV硬化型透明化樹脂である場合、紙基材への付与後に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0034】
実施例および比較例で使用した紙基材、透明化樹脂の種類、UV照射装置等は、以下の通りである。なお、坪量および紙厚は、表1に示す通りである。
<紙基材>
A:中越パルプ工業株式会社製、「竹純白」
B:大王製紙株式会社製、「晒竜王W」
C:王子マテリア株式会社製、「OKブリザード」
<透明化樹脂>
オート化学工業株式会社製、「UVF-102A-2」、アクリル系紫外線硬化型樹脂
<UV照射装置>
アイグラフィックス株式会社製、「アイグランデージ:ECS-301G1」
【0035】
実施例1
表1に示す紙基材(330mm×440mm)に、
図2に示すように、透明化樹脂を、フレキソ印刷を用いて、20g/m
2で付与した後、UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製:アイグランデージ:ECS-301G1)を使用して、積算光量50mJ/cm
2、照度100mW/cm
2にて、紫外線を照射して、硬化させた。なお、透明化樹脂は、片艶紙のより粗面である面(艶面ではない面)に付与し、これが内側になるようにした。
得られた紙部材を
図2に示すように四隅を、丸みを帯びるようにカットし、
図1に示すように切り欠きを設け、
図2に示すように折り返し部を作製した。
これを、折曲辺で2つに折り、接合辺を包み接着することで、クリアーホルダーを得た。
得られたクリアーホルダーまたは紙部材について、透明化樹脂付与部分(α)および透明化樹脂が付与されていない部分(β)の引き裂き強度、不透明度、および平滑度を測定した。
なお、引き裂き強度については、縦方向(折曲辺と平行な方向)と横方向(接合辺と平行な方向)の引き裂き強度を測定した。なお、本実施例において、縦方向(折曲辺と平行な方向)は、抄紙方向に対して垂直な方向(CD)であり、横方向(接合辺と平行な方向)は、抄紙方向(MD)であった。
結果を以下の表1に示す。
【0036】
<測定方法>
得られたクリアーホルダーの透明化樹脂付与部分および透明化樹脂を付与していない部分について、引き裂き強度、不透明度、坪量、および平滑度を測定した。また、平滑度については、内面および外面で測定した。
〔引き裂き強度〕
引き裂き強度は、JIS P 8116:2000に従い、株式会社東洋精機製作所製、デジタルエルメンドルフ・引裂度試験機 No.164を使用して測定した。
【0037】
〔不透明度〕
不透明度は、JIS P 8149:2000に従い、測定した。
【0038】
〔平滑度〕
平滑度は、王研式平滑度であり、熊谷理機工業株式会社製、王研式平滑度計(デジタル式、EYBO-5)を使用して、JIS P 8155:2010に従って測定した。
【0039】
〔坪量〕
坪量(g/m2)は、JIS P 8124:2011に従って測定した。
【0040】
〔紙厚〕
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0041】
実施例2~6、比較例1~6
実施例1で使用した紙基材の種類、透明化樹脂の付与量等を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~6、比較例1~6のクリアーホルダー用の紙部材を作製し、評価を行った。なお、比較例6については、βとして、折曲辺近傍のサンプルにて測定を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
実施例1~6の本発明のクリアーホルダーは、引裂強度が高く、かつ、透明性に優れる。一方、透明化樹脂を付与していない比較例1~4では、十分な透明性が得られなかった。
さらに、透明化樹脂の付与量が少ない場合には、比較例5に示すように、十分な透明性が得られなかった。また、比較例6に示すように、折曲辺の近傍にも透明化樹脂を付与した場合には、引き裂き強度の明らかな低下が認められた。
また、クリアーホルダーの内面に透明化樹脂を付与することにより、外面の平滑性が向上した。その結果、クリアーホルダーを重ね合わせたときや、複数のクリアーホルダーを並べたときに、取り出しが容易になる。さらに、紙基材を選択することで、クリアーホルダーの内面の平滑性を調整可能であり、内面の平滑性を低くすることによって、書類Dの飛び出しを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のクリアーホルダーは、引き裂き強度が高く、かつ、透明性に優れる。従来、プラスチック樹脂フィルム製のクリアーホルダーが使用されてきた種々の用途への適用が期待される。
【符号の説明】
【0045】
S:紙部材
D:書類
10:クリアーホルダー
11:折曲辺
12:接合辺
13、14:開放辺
15:切り欠き
21:表紙
22:裏紙
25:折り返し部