(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20230612BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/49 312A
A61F13/49 410
(21)【出願番号】P 2017166160
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000143086
【氏名又は名称】株式会社光洋
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】白井 敦子
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】武市 匡紘
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190031(JP,A)
【文献】特開2010-233945(JP,A)
【文献】特開2004-10082(JP,A)
【文献】特開2010-115424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49-13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の非伸縮性シートと弾性フィルムと第2の非伸縮性シートとがこの順で積層された弾性シートから構成される外装体を備えた吸収性物品であって、
前記第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シートの少なくとも一方は、前記外装体の左右方向の全部の領域と該左右方向に直交する方向の全部又は一部の領域において、吸汗性不織布からなり、
前記吸汗性不織布は、綿とポリプロピレン繊維からなるスパンレース不織布、または、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維と綿からなるスパンレース不織布であって、綿の配合率が50~70重量%であり、
前記弾性シート
には、前記弾性フィルムが左右方向に伸長された状態で、前記第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シート
のシール面が熱溶着
した接合部と、該接合部の形成により前記弾性フィルムに生成された開孔部とによって接合開孔部が形成されていること
を特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記接合開孔部の一部又は全部は、近接した複数の接合開孔部で構成される近接接合開孔部を形成していること
を特徴とする請求項1記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性フィルムを不織布等の非伸縮性シートで挟んで積層した積層シートを使用したパンツ型の紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品には、パンツ型、テープ止め型、パッドタイプ等の種々の形態のものがある。このうちパンツ型吸収性物品は、外装体と内装体とを備え、外装体は、その外側面が非肌当接面となって、腹側部と股部と背側部、あるいは、腹側部と背側部を形成し、内装体は、その内側面が肌当接面となり、体液を吸収する吸収体を備えて外装体の内側面に取り付けられ、腹側部と背側部の左右方向の両端部が接合されて胴回り開口と脚回り開口が形成される。
そして、このパンツ型吸収性物品は、胴回り方向と脚回り方向に伸縮して使用者の肌に密着し、ずり落ちや体液の漏れ等を防止している。
この場合、パンツ型吸収性物品において、胴回り方向の伸縮性は、腹側部と背側部に弾性糸等の弾性部材を左右方向(胴回り方向)に複数条配設することにより付与され、また、脚回り方向の伸縮性は、腹側部と股部と背側部の脚回り部に弾性部材を複数条配設することにより付与されるのが一般的である。
一方、上記のような弾性糸等の弾性部材を使用したパンツ型吸収性物品に対して、外観や使用者の肌への密着性等を向上させるため、弾性糸等の弾性部材に代えて、弾性フィルムを使用したパンツ型吸収性物品も出現している。
例えば、特許文献1(特許第5980355号公報)には、伸縮領域と、この伸縮領域から連続する非伸縮領域とにわたり、第1シート層と、第2シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、弾性フィルムがそれらの表面に沿う伸縮方向に伸長された状態で、第1シート層及び第2シート層が、伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の点状接合部で、弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合されており、伸縮領域における非伸縮領域側の端部が、当該端部を除いた主伸縮部分よりも点状接合部の面積率が低い緩衝伸縮部分とされている吸収性物品の伸縮構造、及びこれを用いたパンツタイプ使い捨ておむつが開示され、第1シート層と第2シート層の接合部に形成される貫通孔が通気性向上に寄与することが示されている。
また、特許文献2(特開2015-204982号公報)には、内装体と、前記内装体の非肌当接面側に位置し、腹側部、股下部及び背側部に区分される外装体とを備え、前記腹側部及び前記背側部は、複数の不織布と、前記不織布の間に伸縮性フィルムとを熱融着又は超音波接着により一体化された複合シートで構成され、前記伸縮性フィルムは、平面視において千鳥状に配置される複数の開口部を備えたパンツ型吸収性物品が開示され、伸縮性フィルムに設けられている複数の開口部により通気性を向上させることが示されている。
【0003】
しかしながら、外装体に弾性フィルムを使用した吸収性物品においては、弾性フィルムの通気性が不織布より悪く、特許文献1や特許文献2のように弾性フィルムに貫通孔や開口部を設けて通気性の向上が図られたものであっても、不織布だけからなる外装体を使用した吸収性物品に比べて、着用時に発汗して蒸れやすいという問題がある。
そして、特許文献1には、第1シート層と第2シートの構成材は、通気性及び柔軟性の観点から不織布を使用することが示されているものの、着用時に生じた発汗による蒸れを軽減する対策は何ら施されておらず、特許文献2の複合シートを構成する不織布も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5980355号公報
【文献】特開2015-204982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、非伸縮性シートの間に弾性フィルムを挟み込んで積層され、非伸縮性シート同士が熱溶着された弾性シートからなる外装体を備えた吸収性物品において、吸収性物品を着用したときの発汗による蒸れを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1の非伸縮性シートと弾性フィルムと第2の非伸縮性シートとがこの順で積層された弾性シートから構成される外装体を備えた吸収性物品であって、前記第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シートの少なくとも一方は、前記外装体の左右方向の全部の領域と該左右方向に直交する方向の全部又は一部の領域において、吸汗性不織布からなり、前記吸汗性不織布は、綿とポリプロピレン繊維からなるスパンレース不織布、または、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維と綿からなるスパンレース不織布であって、綿の配合率が50~70重量%であり、前記弾性シートには、前記弾性フィルムが左右方向に伸長された状態で、前記第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シートのシール面が熱溶着した接合部と、該接合部の形成により前記弾性フィルムに生成された開孔部とによって接合開孔部が形成されている吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記接合開孔部の一部又は全部は、近接した複数の接合開孔部で構成される近接接合開孔部を形成している吸収性物品を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明の吸収性物品においては、吸収性物品を着用したとき、弾性フィルムの存在により通気性が悪くなって使用者が発汗しても、第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シートの少なくとも一方は、前記外装体の左右方向の全部の領域と該左右方向に直交する方向の全部又は一部の領域において、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布であるため、使用者の汗を吸汗性不織布が吸収し、発汗による蒸れが軽減され、さらに、前記第1の非伸縮性シートと前記第2の非伸縮性シートが熱溶着しやく、弾性シートの引張強度を落とさずに、前記吸収性不織布による吸汗作用を最大限に発揮できるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明の吸収性物品においては、さらに、近接接合開孔部を形成することにより、弾性シートの最大伸度を一定以上に大きく保ちつつ、開孔部の面積率を大きくして通気性が向上されて発汗が低減され、使用者の汗を吸汗性不織布が吸収することと相俟って発汗による蒸れが一層軽減されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が適用されるパンツ型吸収性物品を着用した状態の斜視図である。
【
図2】
図1のパンツ型吸収性物品の腹側部と背側部を重ねて腹側部を正面にして弾性シートを伸長した状態の正面図である。
【
図3】
図1のパンツ型吸収性物品において腹側部を正面にして腹側部と背側部を結合するサイドシール部を剥がして展開した状態の正面図である。
【
図7】本発明の外装体となる腹側パネル20と背側パネル30を展開した状態において、吸汗性不織布が使用される領域の例を示した説明図である。
【
図8】腹側パネル20(弾性シート)の非伸長時の一部拡大正面図である。
【
図11】
図9のA1-A1断面図、A2-A2断面図及びA3-A3断面図である。
【
図12】サンプルS1~S4について、試験片をMD方向に引張った場合の引張試験の結果における変位と試験力(引張力)の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[パンツ型吸収性物品の基本構成]
本発明をパンツ型吸収性物品に適用した実施形態について説明するが、まず、パンツ型吸収性物品の基本構成について説明する。
図1は、本発明が適用されるパンツ型吸収性物品を着用した状態の斜視図、
図2は、
図1のパンツ型吸収性物品の腹側部と背側部を重ねて腹側部を正面にして弾性シートを伸長した状態の正面図、
図3は、
図1のパンツ型吸収性物品において腹側部を正面にして腹側部と背側部を結合するサイドシール部を剥がして展開した状態の正面図である。
図中、1はパンツ型吸収性物品、2は腹側部、3は背側部、4は股部、5は胴回り開口部、6、7は脚回り開口部、8、9はサイドシール部、20は腹側パネル、20aは上縁、20bは左下縁、20cは右下縁、20dは左側縁、20eは右側縁、20fは左側端部、20gは右側端部、30は背側パネル、30aは上縁、30bは左下縁、30cは右下縁、30dは左側縁、30eは右側縁、30fは左側端部、30gは右側端部、40はパッド、40b、40cは側縁、41は吸収体、41aはくびれ部であり、Xは左右方向、Yは上下方向であり、X方向とY方向は直交する。
図1~
図3に示すようにパンツ型吸収性物品1は、腹側部2と背側部3と股部4とから構成され、腹側部2を形成する腹側パネル20の左側縁20dの内側近傍となる左側端部20f、腹側パネル20の右側縁20eの内側近傍となる右側端部20gと、背側部3を形成する背側パネル30の左側縁30dの内側近傍となる左側端部30f、背側パネル30の右側縁30eの内側近傍となる右側端部30gとがヒートシールや超音波シール等の熱溶着手段や接着剤により部分的に接合されてサイドシール部8、9が形成される。
また、パッド40の長手方向を上下方向とした場合のパッド40の上部と下部が、それぞれ腹側パネル20と背側パネル30のX方向(左右方向)中央部に接着剤等で接着されて取り付けられ、股部4が形成される。
本実施形態においては、腹側パネル20(腹側部2)と背側パネル30(背側部3)が本発明の外装体となり、外装体の左右方向がX方向となり、外装体の左右方向と直交する方向がY方向となり、パッド40が内装体となる。
そして、腹側パネル20の上縁20aと背側パネル30の上縁30aで胴回り開口部5が形成され、腹側パネル20の左下縁20bと背側パネル30の左下縁30bとパッド40の側縁40bで左側の脚回り開口部6が形成され、腹側パネル20の右下縁20cと背側パネル30の右下縁30cとパッド40の側縁40cで右側の脚回り開口部7が形成される。
なお、腹側パネル20は、左下縁20bと右下縁20cが上に凹んだ形状で、左下縁20bの右側と右下縁20cの左側を合わせた下縁の中央部分が下に凸の形状であり、背側パネル30は、左下縁30bと右下縁30cが下に凸の形状で、左下縁30bの右端部と右下縁30cの左端部を合わせた下縁の中央部分が上に凹んだ形状であるが、腹側パネル20と背側パネル30の形状はこれに限定されるものではなく、共に台形状である等種々の形状をとることができる。
また、本実施形態においては、外装体を構成する腹側パネル20(腹側部2)と背側パネル30(背側部3)が分離し、パッド40(内装体)のY方向中央部分が股部4となっているが、本発明の外装体はこれに限定されるものではなく、外装体が腹側部から背側部にかけて連続して股部を含み、外装体の股部を含む部分に内装体を取り付けてもよい。
【0018】
図4は、
図3のY-Y拡大断面図、
図5は、
図3のX1-X1拡大断面図、
図6は、
図3のX2-X2拡大断面図である。
図中、21、31は第1の非伸縮性シート、22、32は第2の非伸縮性シート、23、33は弾性フィルム、41は吸収体、42は外面シート、42aはポリエチレンフィルム、42bは不織布、43は内面シート、44、45はギャザーシート、44a、45aは端部、44b、45bは起立部、E1、E2、E3、E4は弾性部材である。
図4に示すように腹側パネル20は、第1の非伸縮性シート21と弾性フィルム23と第2の非伸縮性シート22がこの順で積層された弾性シートで構成され、背側パネル30も同様に、第1の非伸縮性シート31と弾性フィルム33と第2の非伸縮性シート32がこの順で積層された弾性シートで構成される。
また、
図4~
図6に示すように、パッド40は、吸収体41と、吸収体41を外側(非肌対向面)から覆う外面シート42と、吸収体41を内側(肌対向面)から覆う内面シート43と、外面シート42の左側部、右側部に取り付けられたギャザーシート44、45から構成される。
吸収体41は、高吸収性ポリマー粒子を主体とし、あるいは、高吸収性ポリマー粒子を含む綿状パルプを主体として、これに吸収紙等(図示せず)を組み合わせたもの等からなり、使用者が排出した体液等を吸収して保持する。この吸収体41は、
図1~
図3の破線で示すように腹側パネル20と重なる部分と背側パネル30に重なる部分が左右方向に膨らみ、腹側パネル20と背側パネル30に重ならない部分に幅の狭いくびれ部41aが形成された形状であり、くびれ部41aが使用者の股間部に当接することとなる。
なお、吸収体41は、このような形状に限定されるものではなく、長方形状等の種々の形状をとることができる。
外面シート42は、不透液性のポリエチレンフィルム42aと不織布42bを積層したものであるが、不織布42bは外観や肌ざわりを良くするために積層しているもので、ポリエチレンフィルム42aだけで外面シート42が構成されていてもよい。また、内面シート43は、不織布からなる。
外面シート42と内面シート43は、吸収体41の周縁より外側で重なり合い、この重なり合う部分で互いに接着剤(図示せず)や熱融着により接着され、これにより、吸収体41が封入される。
【0019】
パッド40においては、
図5、
図6に示すように、ギャザーシート44、45の左右方向の端部44a、45aは、内側に折り込まれてギャザーシート44、45の重なり合う面に接着され、ギャザーシート44、45の左右方向内側部分(端部44a、45aが折り込まれた部分より内側部分)は、外面シート42の内面シート43と反対側の面の左側部と右側部に接着剤(図示せず)や熱融着により接着され、外面シート42(ポリエチレンフィルム42a)と内面シート43の左側部と右側部は、ギャザーシート44、45の左右方向外側部分と共に内側に折り込まれる。
そして、
図5に示すように、ギャザーシート44、45の端部44a、45aの外側面(ギャザーシート44、45に接着されていない面)の上部と下部は、内面シート43に接着され、
図6(a)に示すように、ギャザーシート44、45の端部44a、45aの内側に折り込まれて内面シート43に接着されていない部分には、弾性糸等の弾性部材E1、E2、E3、E4が取り付けられ、起立部44b、45bが形成される。
弾性部材E1~E4は、上下方向(長手方向)に伸長した状態で接着固定されるため、弾性部材E1~E4が縮むことにより、
図6(b)に示すようにギャザーシート44、45の起立部44b、45bがハの字状に起立して立体ギャザーを形成する。このようにして立体ギャザーを形成することにより、体液等の横漏れが防止される。
【0020】
[弾性シート、吸汗性不織布]
弾性シートは、本発明の外装体となる腹側パネル20と背側パネル30を構成する部材であり、第1の非伸縮性シート21、31と弾性フィルム23、33と第2の非伸縮性シート22、32がこの順で積層されたものである(
図4参照)。
第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の少なくとも一方には、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布を使用する。
本実施形態において、吸汗性不織布としては、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維からなり、熱可塑性樹脂繊維の配合率が20~80重量%である不織布が使用される。
吸汗性不織布に熱可塑性樹脂繊維を含ませたのは、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32を熱溶着させて接合するためであり、吸汗性不織布にセルロース系繊維を含ませたのは、セルロース系繊維は吸汗作用が大きいからである。
この場合、熱可塑性樹脂繊維の配合率が20%未満であると、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32が熱溶着しにくくなると共に引張強度が弱くなり、また、熱可塑性樹脂繊維の配合率が80重量%より大きくなり、セルロース系繊維の配合率が20重量%未満であると、吸汗性が悪くなって、パンツ型吸収性物品1の着用時の発汗による蒸れを軽減できず、本発明の弾性シートに使用される吸汗性不織布としては好ましくない。
吸汗性不織布に含ませる熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維のいずれか1つの繊維、または、これらの2つ以上の混合繊維が使用されるが、熱溶着性と引張強度等の点でポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂繊維、特に、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、または、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維が好ましい。
吸汗性不織布に含ませるセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、半合成セルロース繊維が使用され、天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、綿等の種子毛繊維、麻等のじん皮繊維が使用され、再生セルロース繊維としては、レーヨン等が使用され、半合成セルロース繊維としては、アセテート繊維等が使用されるが、吸汗性や加工適性等の点で綿またはレーヨンが好ましい。
また、吸汗性不織布の製造方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法等の公知の方法を使用することができるが、スパンレース法は、セルロース系繊維に熱可塑性樹脂繊維を絡ませやすく、毛羽立ちがなく肌触りのよい不織布ができる点で好ましい。
そして、吸汗性不織布として、綿とポリプロピレン繊維からなるスパンレース不織布、または、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維と綿からなるスパンレース不織布であって、綿の配合率が50~70重量%であることが、引張強度を落とさずに吸汗作用を最大限に発揮できる点で最も好ましい。
なお、本発明の吸汗性不織布は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維の他に第3の繊維を含んでいてもよい。
【0021】
ここで、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32のいずれか一方、または、その両方を、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布(以下単に「吸汗性不織布」という。)とすることができる。
肌当接面側に位置する第2の非伸縮性シート22、32のみを、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において吸汗性不織布とした場合、使用者の肌から出る汗が直接第2の非伸縮性シート22、32の吸汗性不織布の部分に吸収されることから、吸汗の程度は大きくなるが、肌に当接する第2の非伸縮性シート22、32の吸汗性不織布の部分に汗が残り、多少のべとつき感が生じることとなる。
非肌当接面側に位置する第1の非伸縮性シート21、31のみを、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において吸汗性不織布とした場合、使用者の肌から出る汗のうち、第2の非伸縮性シート22、32と弾性フィルム23、33を透過した汗のみが第1の非伸縮性シート21、31の吸汗性不織布の部分に吸収されることから、第2の非伸縮性シート22、32を、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において吸汗性不織布とした場合に比べて、吸汗の程度は劣るが、肌に当接する第2の非伸縮性シート22、32に汗が残らず、べとつき感を抑えることができる。
第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の両方を、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において吸汗性不織布とした場合、第2の非伸縮性シート22、32の吸汗性不織布の部分が吸収した汗の一部が第1の非伸縮性シート21、31の吸汗性不織布の部分に移行し、吸汗の程度は大きくなり、べとつき感もそれほど生じない。
このように第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32のいずれか一方、あるいは両方を、X方向の全部の領域とY方向の全部又は一部の領域において吸汗性不織布とすることによって、吸汗の程度やべとつき感は異なるが、いずれの場合も発汗による蒸れを軽減することができる。
【0022】
第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の吸汗性不織布でない領域は、非吸汗性不織布とすることができる。
非吸汗性不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリアミド系樹脂繊維等の熱可塑性樹脂繊維、あるいは、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維、などを使用することができる。
また、非吸汗性不織布の製造方法としては、公知の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法等を使用することができ、さらに、これらの製造方法を組み合わせた方法を使用してもよい。
そして、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32は、吸汗性不織布としたもの非吸汗性不織布としたもの共に、多少の伸縮性、例えば、伸度(伸び率)が150%(150%伸長しても破断しない)以下の伸縮性があってもよい。
次に、弾性フィルム23、33は、弾性を有する樹脂フィルム、例えば、ポリスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性組成物の1種又は2種以上のブレンド物をフィルム状に加工したものまたはその積層物を使用することができる。
また、弾性フィルム23、33は、200%以上の最大伸度を有するものが好ましい。
【0023】
[吸汗性不織布の領域]
図7(a)~(d)は、本発明の外装体となる腹側パネル20と背側パネル30を展開した状態において、吸汗性不織布が使用される領域の例を示した説明図であり、図中、網点で表すFR1、FR2、FR3、BR1、BR2、BR3は領域である。
図7(a)は、腹側パネル20と背側パネル30において、X方向(左右方向)の全部の領域とY方向(左右方向と直交する方向)の全部の領域、すなわち、腹側パネル20の全領域である領域FR1と、背側パネル30の全領域である領域BR1に吸汗性不織布を使用した場合を示している。
図7(b)は、腹側パネル20と背側パネル30において、X方向の全部の領域とY方向の上半分(中央から上縁20a、30aまで)の領域となる領域FR2と領域BR2に吸汗性不織布を使用した場合を示している。
図7(c)は、腹側パネル20と背側パネル30において、X方向の全部の領域とY方向の中央部の領域となる領域FR3と領域BR3に吸汗性不織布を使用した場合を示している。
図7(d)は、腹側パネル20においてX方向の全部の領域とY方向の中央部の領域となる領域FR3と、背側パネル30においてX方向の全部の領域とY方向の上半分(中央から30aまで)の領域となる領域BR2に吸汗性不織布を使用した場合を示している。
上記の領域FR1、FR2、FR3及び領域BR1、BR2、BR3においては、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32のいずれか一方、または、その両方が吸汗性不織布となる。
この場合、例えば、吸収性物品1の着用時に内側の面(肌に当接する面)となる第2の非伸縮性シート22、32は、領域FR2、領域BR2を吸汗性不織布とし、吸収性物品1の着用時に外側の面(肌に当接しない面)となる第1の非伸縮性シート21、31は、領域FR3、領域BR3を吸汗性不織布とする等、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32で吸汗性不織布とする領域を異ならせてもよい。
そして、
図7(a)に示すように、領域FR1、領域BR1を吸汗性不織布とすることにより、腹側パネル20と背側パネル30の全領域において、発汗による蒸れを軽減することができる。
また、
図7(b)~(d)に示すように、吸収性物品1の着用時に発汗しやすい腹側パネル20の領域FR2又はFR3と、背側パネル30の領域BR2又はBR3のみを吸汗性不織布とすることにより、発汗による蒸れを軽減すると共に、吸汗性不織布を使用することによる引張強度の低下や風合いの硬さを抑止することができる。
【0024】
[弾性シートにおける接合部、開孔部]
腹側パネル20と背側パネル30を構成する弾性シートにおいては、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32が、多数の接合部によって接合されている。
この多数の接合部は、X方向(左右方向)に伸長した弾性フィルム23、33を、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の間に挟んで、所定のパターンでヒートシールや超音波シールを施すことにより形成される。すなわち、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32のシール面が熱溶着して多数の接合部が形成される。
この場合、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の一方、または、その両方は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維からなり、熱可塑性樹脂繊維を20重量%以上含む吸汗性不織布であり、両シートを容易に熱溶着させて接合することができる。
上記接合部は、Y方向(上下方向)に長い縦長の形状、例えば、長方形状、長円形状、太鼓形状等を備えていることが好ましく、X方向の長さ(幅)は0.1~1.0mm、特に0.1~0.5mmが好ましく、Y方向の長さは0.3~3.0mm、特に0.5~1.5mmが好ましい。X方向の長さが0.1mm未満であったり、Y方向の長さが0.3mm未満であると、第1の非伸縮性シートと第2の非伸縮性シートの接合強度が極端に低くなり、X方向の長さが1.0mmより大きく、Y方向の長さが3.0mmより大きいと塑性変形が起こりやすくなり、弾性シートの伸縮性が極端に悪くなるからである。
そして、弾性フィルム23、33の材質や厚み等によってその伸長応力や最大伸度、引張強度が異なることから、弾性フィルム23、33の材質や厚み等に対応して、所望の伸長応力、最大伸度、引張強度や風合いを持った弾性シートが得られるように、接合部の形状や寸法及び接合時の延伸倍率を設定する。
上記接合部が形成されるとき、弾性フィルム23、33は、ヒートシールや超音波シールが施された部分で溶融してその周囲が破断し、開孔部が形成される。
これにより、弾性シート(腹側パネル20、背側パネル30)には、接合部と開孔部からなる接合開孔部が多数形成される。
そして、弾性シート(腹側パネル20、背側パネル30)において、第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の接合部を形成した後、弾性フィルム23、33の伸長を解くことにより、弾性フィルム23、33が収縮して弾性シートも収縮し、弾性シートに伸縮性が付与される。
また、接合開孔部の開口部は、パンツ型吸収性物品1を着用したときの通気孔としても機能し、接合開孔部を大きくしたり単位面積当たりの数を増やして開口部の面積率を大きくすることにより、通気性を向上させることができる。
【0025】
[接合開孔部の構成・パターン]
接合開孔部の構成や配置パターンは種々の態様をとることができる。具体的には、接合開孔部を、単純な千鳥形状のように間隔を空けて配置することもでき、複数の接合開孔部を近接させた近接接合開孔部として、単独の接合開孔部と近接接合開孔部と交互に配置することもできる。
図8は、単独の接合開孔部と近接接合開孔部と交互に配置したパターンを有する腹側パネル20(弾性シート)の一部拡大正面図、
図9は、
図8に示す接合開孔部の拡大図、
図10は、
図8のX3-X3拡大断面図、
図11は、
図9のA1-A1断面図、A2-A2断面図及びA3-A3断面図である。
図中、51~55は接合開孔部、51a~55aは接合部、51b~55bは開孔部、50A、50Bは近接接合開孔部、G1、G2は分割線、H1は第1の方向、H2は第2の方向である。
図8、
図9、
図11に示すように、腹側パネル20(弾性シート)には、縦長形状の接合部51aと楕円形の開孔部51bからなる接合開孔部51(
図9(a)、
図11(a))、縦長形状の接合部52aと開孔部52bからなる接合開孔部52、縦長形状の接合部53aと開孔部53bからなる接合開孔部53(
図9(b)、
図11(b))、縦長形状の接合部54aと開孔部54bからなる接合開孔部54、縦長形状の接合部55aと開孔部55bからなる接合開孔部55(
図8(c)、
図11(b))の5種類の接合開孔部が形成されている。
このうち接合開孔部52と接合開孔部53は近接して近接接合開孔部50Aを構成し、接合開孔部54と接合開孔部55は近接して近接接合開孔部50Bを構成している。
近接接合開孔部50Aにおける接合部52aと53aの左右方向の間隔d1は、0.2~2.5mm、特に0.3~1.5mmが好ましく、近接接合開孔部50Bにおける接合部54aと55aの左右方向の間隔d2も同様である。間隔d1、d2が0.2mm未満であると開孔部52b(54b)と53b(55b)とが合体し、近接接合開孔部50A(50B)が形成されず、間隔d1、d2が2.5mmより大きいと後述する近接接合開孔部の作用効果を奏さなくなるからである。
近接接合開孔部50Aにおいて、接合開孔部52と接合開孔部53は、弾性シートの伸縮方向(左右方向)に対して右上がりに傾斜する第1の方向H1に配置され、その開孔部52b、53bは、縦軸が第1の方向H1に傾斜した楕円を2分割したような形状となっている。この場合、第1の方向H1の傾斜角度θ1は、15~75度、特に20~60度が好ましい。
近接接合開孔部50Bにおいて、接合開孔部54と接合開孔部55は、弾性シートの伸縮方向(左右方向)に対して左上がりに傾斜する第2の方向H2に配置され、その開孔部54b、55bは、縦軸が第2の方向H2に傾斜した楕円を2分割したような形状となっている。この第2の方向H2は、弾性シートの伸縮方向(左右方向)と直交する方向を軸として第1の方向H1を反転した方向であり、第2の方向H2の傾斜角度θ2は、105~165度、特に120~160度が好ましい。
そして、
図8に示すように、腹側パネル20(弾性シート)においては、近接接合開孔部50Aと接合開孔部51が交互に配置された左右方向の列と、近接接合開孔部50Bと接合開孔部51が交互に配置された左右方向の列が、左右方向と直交する方向に交互に配置されている。
この場合、近接接合開孔部50Aを第1の方向H1と直交する方向に2分割する分割線G1が一直線上に並ばないように近接接合開孔部50Aが配置され、近接接合開孔部50Bを第2の方向H2と直交する方向に2分割する分割線G2が一直線上に並ばないように近接接合開孔部50Bが配置されている。
また、背側パネル30においても、腹側パネル20と同様に、接合部51a~55aと開孔部51b~55bとからなる接合開孔部51~55が形成され、接合開孔部52と53から近接接合開孔部50Aが構成され、接合開孔部54と55から近接接合開孔部50Bが構成されている。
【0026】
図11(a)~(c)に示すように接合部51a~55aにおいては、第1の非伸縮性シート21、第2の非伸縮性シート22及び弾性フィルム23が溶融固化して、第1の非伸縮性シート21と第2の非伸縮性シート22が溶着されている。
ここで、接合部51aの左側に位置する第1の非伸縮性シート21、第2の非伸縮性シート22、弾性フィルム23をそれぞれ第1の非伸縮性シート21a、第2の非伸縮性シート22a、弾性フィルム23aとし、接合部51aの右側に位置する第1の非伸縮性シート21、第2の非伸縮性シート22、弾性フィルム23をそれぞれ第1の非伸縮性シート21b、第2の非伸縮性シート22b、弾性フィルム23bとし(
図11(a)参照)、接合部52aと53aの間に位置する第1の非伸縮性シート21、第2の非伸縮性シート22、弾性フィルム23をそれぞれ第1の非伸縮性シート21c、第2の非伸縮性シート22c、弾性フィルム23cとし(
図11(b)参照)、接合部54aと55aの間に位置する第1の非伸縮性シート21、第2の非伸縮性シート22、弾性フィルム23をそれぞれ第1の非伸縮性シート21d、第2の非伸縮性シート22d、弾性フィルム23dとする(
図11(c)参照)。
近接接合開孔部50Aと接合開孔部51が交互に配置された左右方向の列にあっては、
図10に示すように、近接接合開孔部50Aと接合開孔部51とに挟まれた部分において、接合部51a~53aを形成した後の弾性フィルム23a、23bの左右方向の収縮によって、第1の非伸縮性シート21a、21bと第2の非伸縮性シート22a、22bが、互い離れる方向に突出して上下方向に延びる皺が形成され、近接接合開孔部50Bと接合開孔部51が交互に配置された左右方向の列にあっても、近接接合開孔部50Bと接合開孔部51とに挟まれた部分に同様の皺が形成される。
この場合、
図8に示すように、腹側パネル20(弾性シート)において、近接接合開孔部50Aと接合開孔部51に挟まれた部分と近接接合開孔部50Bと接合開孔部51とに挟まれた部分は、上下方向に連続しないため、この部分に形成される皺も上下方向に連続せず、上下方向に連続した大きな皺が入ることによって剛性が生じ、腹側パネル20(弾性シート)の柔軟性が損なわれることが防止される。
一方、近接接合開孔部50Aにおいては、接合開孔部52と接合開孔部53が近接しているため、接合部52aと53aに挟まれた第1の非伸縮性シート21cと第2の非伸縮性シート22cは、開孔部52bと53bに挟まれた弾性フィルム23cに重なっている。同様に近接接合開孔部50Bにおいても、接合部54aと55aに挟まれた第1の非伸縮性シート21dと第2の非伸縮性シート22dは、開孔部54bと55bに挟まれた弾性フィルム23dに重なっている。
このため、腹側パネル20(弾性シート)を左右方向に引っ張ると、近接接合開孔部50A、50Bと接合開孔部51とに挟まれた部分の弾性フィルム23(23a、23b)が伸長し、第1の非伸縮性シート21(21a、21b)と第2の非伸縮性シート22(22a、22b)によって形成されている皺が伸びて、腹側パネル20が伸長することとなる。
また、背側パネル30においても、腹側パネル20と同様にして、左右方向に伸長することとなる。
なお、近接接合開孔部は、
図8に示すような2個の接合開孔部が近接したものに限定されず、3個あるいはそれ以上の接合開孔部が近接したものであってもよい。
【0027】
近接開孔接合部50A、50Bがなく単独の接合開孔部51のみが設けられた弾性シートにおいては、接合部開孔部51(接合部51aと開孔部51b)の間隔を狭くしたり、接合部開孔部51(接合部51aと開孔部51b)を大きくしたりして、弾性シートの伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性を向上させることができるが、弾性シートの最大伸度を一定以下にすることができず、通気性をそれほど向上させることができない。
これに対して、近接接合開孔部50A、50Bを形成した弾性シートにおいては、接合部開孔部51と近接接合開孔部50A(50B)の間隔や近接接合開孔部50A、50B同士の間隔を狭くしたり、近接接合開孔部50A、50B(接合開孔部52~55)を大きくした場合、近接接合開孔部50A(50B)が接合開孔部52、53(54、55)を合体したような一つの大きな接合開孔部と同様に大きく広がるため、弾性シートの伸長応力を小さくして伸ばしやすくし、通気性をよくすることができる。その一方、近接接合開孔部50A(50B)の接合開孔部52、53(54、55)の大きさは、接合開孔部52、53(54、55)を合体したような一つの大きな接合開孔部の約半分であることから、大きな接合開孔部を形成した弾性シートに比べて、弾性フィルムを大きく伸ばしても塑性変形がしにくくなり、弾性シートの最大伸度を一定以上に大きくできる。
すなわち、近接接合開孔部を形成することにより、弾性シートの最大伸度を一定以上に大きく保ちつつ、開孔部の面積率を大きくして通気性を向上させることができる。
しかしながら、近接接合開孔部による通気性の向上にも限度があり、弾性シートの最大伸度を一定以上にできる範囲内で、近接接合開孔部の数をできるだけ多くして通気性を向上させても、パンツ型吸収性物品1の着用時には、ある程度の発汗が生じる。
この場合、腹側パネル20と背側パネル30における第1の非伸縮性シート21、31と第2の非伸縮性シート22、32の少なくとも一方は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布であることから、この吸汗性不織布が使用者の汗を吸収し、発汗による蒸れが防止されることとなる。
したがって、外装体となる腹側パネル20と背側パネル30に近接接合開孔部を形成して通気性を向上させて発汗を低減し、少なくとも一方が熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布である第1の非伸縮性シート21、31、第2の非伸縮性シート22、32で使用者の汗を吸収することにより、パンツ型吸収性物品1の着用時の蒸れを一層防止することができる。
【0028】
[非伸縮性シートの引張試験]
サンプルS1~S4の4種類の非伸縮性シートを製造し、各サンプルについて引張試験を行った。
サンプルS1は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布であり、原料繊維を綿、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維とし、綿の配合率を70重量%、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維の配合率を30%として、スパンレース法で製造した目付け30g/m2の不織布である。
サンプルS2は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布であり、原料繊維を綿、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維とし、綿の配合率を60重量%、ポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維の配合率40%として、スパンレース法で製造した目付け20g/m2の不織布である。
サンプルS3は、セルロース系繊維からなる吸汗性不織布であり、原料繊維を綿として、スパンレース法で製造した目付け30g/m2の不織布である。
サンプルS4は、熱可塑性樹脂繊維からなる非吸汗性不織布であり、原料繊維をポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維として、スパンボンド法で製造した目付け18g/m2の不織布である。
引張試験においては、試験片の幅を50mm、長さ(試験機に取り付けたときのチャック間距離)を100mm、引張速度を300mm/minとし、試験片のMD(不織布の製造工程における機械方向)について、試験片が破断するまで伸長し、試験力(引張力)が5N、10Nにおける試験片の変位、破断時における試験力(引張力)と試験片の変位を測定した。
引張試験機は、島津製作所製「オートグラフ AGS-X」を使用した。
なお、サンプルS3は、熱可塑性樹脂繊維を含まない綿100%の不織布であって熱溶着できないことから、本発明の吸収性物品の外装体に使用される弾性シートを構成する非伸縮性シートには適さないものであり、比較のためのサンプルとして用いる。
【0029】
[試験結果]
サンプルS1~S4について、引張試験の結果を表1と
図12に示すが、
図12に示すグラフの横軸は変位(mm)を表し、縦軸は試験力(引張力)(N)を表している。
【表1】
サンプルS1、S2、S3のように、原料繊維の少なくとも一部に綿が使用された吸汗性不織布においては、その吸汗性は、綿の配合率が大きいほど強くなることから、サンプルS3の吸汗性が最も強く、次いでサンプルS1の吸汗性が強く、次いでサンプルS2の吸汗性が強く、発汗による蒸れを軽減する点で、綿の配合率が大きい吸汗性不織布は、パンツ型吸収性物品1の外装シート(腹側パネル20と背側パネル30)の素材として適している。
一方、サンプルS4のように、原料繊維に綿等の吸汗性のある繊維を含まない非吸汗性不織布においては、引張強度と最大伸度が大きく、伸長特性が優れており、伸長特性の点で、非吸汗性不織布は、パンツ型吸収性物品1の外装シート(腹側パネル20と背側パネル30)に使用する弾性シートとして適している。
以下、引張強度(破断時の試験力)と最大伸度(破断時の変位)等の伸長特性について、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む吸汗性不織布であるサンプルS1、S2と、熱可塑性樹脂繊維を含まない吸汗性不織布であるサンプルS3、非吸汗性不織布であるサンプルS4を比較する。
表1(
図12)に示すように、サンプルS1とサンプルS2において、その引張強度は、サンプルS3の2.5倍以上とサンプルS3より格段に大きく、その最大伸度は、サンプルS3の約1/3以下とサンプルS3より格段に小さい。
また、サンプルS1とサンプルS2において、その引張強度は、サンプルS4の1.3倍以上とサンプルS4より大きく、その最大伸度は、サンプルS4の約1/2以下とサンプルS4より小さい。
ここで、弾性シートに使用される非伸縮性シートのMD方向(パンツ型吸収性物品1の左右方向)に対しては、パンツ型吸収性物品1の製造時に、張力がかかって引っ張られることから所定の引張強度が要求される一方、最大伸度は小さい方がよい。これは、パンツ型吸収性物品1の製造時において、MD方向に伸長された弾性フィルムを挟んで非伸縮性シート同士が熱溶着されるが、非伸縮性シートの最大伸度が大きいと、非伸縮性シートがより伸長された状態で弾性フィルムと熱溶着され、弾性フィルムの伸長を解いてパンツ型吸収性物品1の外装体となった場合、弾性フィルムの収縮時に非伸縮性シートが元の寸法に戻りにくいため、弾性シートの収縮が阻害され、却って弾性シートの収縮率が低下するからである。
したがって、サンプルS1、S2は、吸汗性を重視して吸汗性のみを大きくした熱可塑性樹脂繊維を含まないサンプルS3に比べて、引張強度と最大伸度の点で各段に優れている。
また、サンプルS1、S2は、熱可塑性樹脂繊維のみからなる吸汗性のないサンプルS4と比較しても、引張強度と最大伸度の点で優れている。
以上より、サンプルS1、S2は、吸汗性があって、引張強度と最大伸度の点でも優れており、弾性シートに使用される非伸縮性シートにより適しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の吸収性物品は、非伸縮性シートの間に弾性フィルムを挟み込んで積層され、非伸縮性シート同士が熱溶着された弾性シートからなる外装体を備えた吸収性物品において、吸収性物品を着用したときの発汗による蒸れを軽減するものであり、パンツ型、テープ止め型、パッドタイプ等の種々の形態の紙おむつ等の使い捨て下着を含む吸収性物品に利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 パンツ型吸収性物品
2 腹側部
3 背側部
4 股部
5 胴回り開口部
6、7 脚回り開口部
8、9 サイドシール部
20 腹側パネル
20a 上縁
20b 左下縁
20c 右下縁
20d 左側縁
20e 右側縁
20f 左側端部
20g 右側端部
21 第1の非伸縮性シート
21a~21h 第1の非伸縮性シート
22 第2の非伸縮性シート
22a~22h 第2の非伸縮性シート
23 弾性フィルム
23a~23h 弾性フィルム
30 背側パネル
30a 上縁
30b 左下縁
30c 右下縁
30d 左側縁
30e 右側縁
30f 左側端部
30g 右側端部
31 第1の非伸縮性シート
32 第2の非伸縮性シート
33 弾性フィルム
40 パッド
40b、40c 側縁
41 吸収体
41a くびれ部
42 外面シート
42a ポリエチレンフィルム
42b 不織布
43 内面シート
44、45 ギャザーシート
44a、45a 端部
44b、45b 起立部
51~55 接合開孔部
51a~55a 接合部
51b~55b 開孔部
50A、50B 近接接合開孔部
FR1~FR3 領域
BR1~BR3 領域
d1、d2 間隔
E1、E2、E3、E4 弾性部材
G1~G2 分割線
H1 第1の方向
H2 第2の方向
X 左右方向
Y 上下方向