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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】塗布具用液体収容部材
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20230612BHJP
   B43K 8/03 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B43K7/02
B43K8/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019133483
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021016976
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】市川 秀寿
(72)【発明者】
【氏名】梶山 忍
(72)【発明者】
【氏名】飯森 武志
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆幸
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-70097(JP,A)
【文献】登録実用新案第3095119(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0060889(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
B43K 27/00-27/12
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の内層と、前記内層の外周面に形成され、金属層またはシリカ蒸着層である中間層とを備える紙基材積層体と、
前記中間層の外周面に形成された、紙基材からなる外層と
からなる少なくとも三層を有し、
前記内層の紙基材の密度が0.8g/cm3以上であることを特徴とする塗布具用液体収容部材。
【請求項2】
前記内層の紙基材が、グラシン紙、パーチメント紙またはバルカナイズドファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載の塗布具用液体収容部材。
【請求項3】
前記紙基材積層体をスパイラル状に巻き付けた構造及び
前記中間層の外周面に前記紙基材からなる外層をスパイラル状に巻き付けた構造を有する、請求項1または2に記載の塗布具用液体収容部材。
【請求項4】
塗布具用液体収容部材の長手方向に沿って、
前記紙基材積層体をその隣接面同士を重ならないように接触させてスパイラル状に巻いた構造及び
前記紙基材からなる外層をその隣接面同士を接触させてスパイラル状に巻いた構造を有する、請求項3に記載の塗布具用液体収容部材。
【請求項5】
前記紙基材積層体を二組以上有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗布具用液体収容部材。
【請求項6】
前記紙基材積層体同士の接触箇所と、
前記紙基材からなる外層同士の接触箇所とが、塗布具用液体収容部材の長手方向に沿って1mm以上かつ前記紙基材積層体または前記紙基材からなる外層の幅の2分の1以下離れている、請求項3または4に記載の塗布具用液体収容部材。
【請求項7】
筆記用具用紙製リフィルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗布具用液体収容部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックに代えて紙基材を使用した、環境への影響を低減させた塗布具用液体収容部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボールペンなどの筆記具用インク収容管(以下、「リフィル」ともいう。)は、その一端部(前端部)を、筆記部材であるボールペンチップもしくはボールペンチップを支持する中継部材に、圧入嵌合することにより、筆記具の軸筒中に収容されている。
【0003】
そして、インク収容管には、成形の容易性とインク量の視認性を確保するために、従来から、例えば、ポリプロピレンなどの透明もしくは半透明のプラスチックが用いられている。
【0004】
ところで、近年において海洋に流出するマイクロプラスチックの問題が注目されており、使い捨てを前提としたプラスチックの使用を控えるなど、地球環境問題に対する取り組みの気運が高まっている。
【0005】
筆記具を構成する各部品についても、脱プラスチックに着目した提案がなされており、特許文献1では、紙を基材として、これにバリア性を有する合成樹脂やアルミニウムなどの金属を積層した複合材を用い、これをスパイラル成形してなる軸筒を備えた筆記具が開示されている。
【0006】
この筆記具に用いられる軸筒は、耐水性やガスバリア性を向上させるため、軸筒の外面側から、裏面がクラフト紙からなるアルミ箔ラベル紙、およびライナー紙を二層重ねた後、さらに内面にポリエチレン層、次いでアルミ蒸着膜を外側に持つポリエステル膜を積層した構造を有している。
【0007】
この軸筒によると、紙基材を含む複合材を用いることで、耐内容物性および耐久性を維持しながら低公害化を達成し得る筆記具を提供することができる。
【0008】
一方、特許文献2では、生分解性樹脂により成形された収容管基体の内側に、他の樹脂層を一層または二層以上形成してなる多層構造のインク収容管を用いた水性インク収容部材が提案されている。
【0009】
これによると、生分解性樹脂により成形された収容管基体は、水性インクで膨潤して寸法変化を起こすことがなく、また、時間の経過と共に生分解されるので、廃棄処理量の少量化に貢献することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭62-70097号公報
【文献】特開2001-146091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記したように、生分解性樹脂や紙基材を用いた製品は低公害化に適しており、とりわけパルプまたは紙を含む素材を基材として用いれば、プラスチックの代替材料となり得る環境問題に配慮した製品を提供できると考えられる。
【0012】
本発明は、前記した観点に沿ってなされたものであり、ポリプロピレンなどのプラスチックを用いて成形していたインク等の液体収容管を、紙基材を含む材料に置き換えることにより、脱プラスチックを図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の塗布具用液体収容部材は、紙基材の内層と、前記内層の外周面に形成され、金属層またはシリカ蒸着層である中間層とを備える紙基材積層体と、紙基材からなる外層とからなる少なくとも三層を有し、前記内層の紙基材の密度が0.8g/cm3以上であることを特徴とする。
【0014】
前記内層の紙基材は、グラシン紙、パーチメント紙またはバルカナイズドファイバーであることが好ましい。
【0015】
前記紙基材積層体をスパイラル状に巻き付けた構造および前記中間層の外周面に、前記紙基材からなる外層をスパイラル状に巻き付けた構造を有することが好ましい。
【0016】
塗布具用液体収容部材の長手方向に沿って、前記紙基材積層体をその隣接面同士が重ならないように接触させてスパイラル状に巻いた構造、および前記紙基材からなる外層をその隣接面同士を接触させてスパイラル状に巻いた構造を有することが好ましい。
【0017】
さらに、前記紙基材積層体を二組以上有することが好ましい。
前記紙基材積層体同士の接触箇所と、前記紙基材からなる外層同士の接触箇所とが、塗布具用液体収容部材の長手方向に沿って1mm以上かつ前記紙基材積層体または前記紙基材からなる外層の幅の2分の1以下離れていることが好ましい。
前記塗布具用液体収容部材は、筆記用具用紙製リフィルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗布具用液体収容部材に、プラスチックに代えて紙基材を用いることにより、プラスチックの使用量を低減した、環境への影響を低減させた塗布具用液体収容部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の塗布具用液体収容部材の平面図(a)およびA-A矢視断面図(b)である。
図2図2は、本発明の塗布具用液体収容部材を構成する内層、中間層および外層の三層構造を示す図である。
図3図3は、本発明の塗布具用液体収容部材を構成する内層、中間層、内層、中間層および外層の五層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の塗布具用液体収容部材について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る塗布具用液体収容部材(以下単に「液体収容部材」ともいう。)10は、紙基材の内層1と、前記内層1の外周面に形成され、金属層またはシリカ蒸着層である中間層2とを備える紙基材積層体と、前記中間層2の外周面に形成された紙基材からなる外層3とからなる少なくとも三層を有し、前記内層の紙基材の密度が0.8g/cm3以上である。
【0021】
前記液体収容部材10は、液体と接触する内層1と、中間層2と、外層3との少なくとも三層からなる。このような三層構造のうち、内層1および中間層2は、紙基材の表面に金属層またはシリカ蒸着層を積層させた複合材である紙基材積層体である。なお、紙基材積層体は、液体収容部材10の製造時、加工用マンドレルにスパイラル状に巻き付けられる場合、その形状は、前記複合材が所定幅に裁断された帯状である。
【0022】
内層1を構成する材料は、密度0.8g/cm3以上の紙基材である。内層1を構成する紙基材としては、上質紙、中質紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、板紙、白板紙、ライナー、微塗工紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、パーチメント紙、バルカナイズドファイバー等の各種公知のものが使用可能である。
これらの紙基材のうち、内層1を構成する材料として密度0.8g/cm3以上の紙基材を使用することにより、耐水性や耐油性を付与することができる。
内層1を構成する紙基材は、具体的にはグラシン紙、パーチメント紙またはバルカナイズドファイバーであることが好ましい。
【0023】
グラシン紙は、高密度で透明性の高い紙であり、バージンパルプを高度に叩解することで比表面積を大きくし、抄紙した紙をスーパーキャレンダーで処理し、緻密化すると共にセルロース繊維同士の結合を強化したものである。本発明では、坪量が20~50g/m2のグラシン紙が用いられる。グラシン紙を内層1を構成する紙基材として用いることにより、耐水性や耐油性を付与することが容易となる。また、坪量が20~50g/m2のグラシン紙を基紙としてその片面または両面に、ポリビニルアルコール水溶液等の塗工液を塗工したものを用いてもよい。グラシン紙の厚さは、通常20~50μm、好ましくは20~30μmである。
【0024】
パーチメント紙およびバルカナイズドファイバーは、製造過程における濃硫酸や塩化亜鉛溶液による処理により、セルロース繊維同士の直接的な結合を強化したもの、すなわち、セルロース繊維の間のセルロースの水素結合の密度を増加したものである。よって、パーチメント紙およびバルカナイズドファイバーを、内層1を構成する紙基材として用いれば、紙粉の発生を効果的に抑えることができる。
【0025】
パーチメント紙には、例えば、坪量が20~100g/m2のものを用い、好ましくは、紙および板紙の吸水度試験方法(コッブ法)に準拠して水に替えて鉱物油を使用した場合の吸油度が13g/m2以下となるように耐油性を高めたものを用いる。パーチメント紙の厚さは、通常20~100μm、好ましくは20~60μmである。
【0026】
バルカナイズドファイバーは、製造過程における反応性の違いから、パーチメント紙に比べて厚手にすることが容易である。したがって、紙基材として厚紙が必要な場合に適している。バルカナイズドファイバーの厚さは、液体収容部材10形成後の紙管部分の圧縮強度や、製造時の扱い易さを考慮すると、通常0.08~1mm、好ましくは0.1~0.5mmである。また、バルカナイズドファイバーの密度は、一般的な紙管原紙に比べて高く、通常0.8~1.4g/cm3であり、本発明において、紙管部分の強度や入手しやすさを考慮すると、0.8~1.3g/cm3が好ましい。
【0027】
また、パーチメント紙およびバルカナイズドファイバーには、樹脂含浸処理またはガラスコーティング処理を施してもよい。前記処理を施すことによって、セルロース繊維同士の結合がより強化され、これらの紙を、内層1を構成する紙基材として用いた場合にも、紙粉の発生を抑えることができる。
【0028】
前記液体収容部材10の内層1および中間層2は、すべて同厚の紙基材および金属層またはシリカ蒸着層を用いた紙基材積層体で形成してもよいし、異厚の紙基材および金属層またはシリカ蒸着層を用いた紙基材積層体を適宜組み合わせて形成してもよい。
【0029】
前記液体収容部材10の内層1および中間層2は、紙基材積層体をボビンスリッターなどで4~70mm程度の幅に裁断し、液体収容部材10加工用のマンドレル(紙管製造機)の外周面に種々の厚さを有する紙基材積層体を複数層巻き付け、酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤などを塗布して、接着し、形成される。巻き方には、紙基材積層体をマンドレルにスパイラル状に巻き付けるスパイラル巻き、紙基材積層体をマンドレルに対して直角に巻き付ける平巻きなどがある。これらの巻き方のうち、生産性が良好な点でスパイラル巻きが好ましい。なお、マンドレルには、内層1、中間層2および外層3を形成した後、マンドレルの引き抜きを容易にするため、あらかじめ適正な潤滑剤で表面を処理しておくか、内層1(紙基材)のマンドレルに巻き付ける側の面に適量の潤滑剤を塗布することが好ましい。
【0030】
紙基材積層体は、前記のとおり、紙基材に金属層またはシリカ蒸着層を形成してなる帯状のシートである。金属層は、紙基材の片面に、アルミニウム箔等の金属箔をアクリル系樹脂などで接着させてもよいし、アルミニウム、または、アルミニウムおよび亜鉛の合金等を真空下に電子ビーム蒸着して設けてもよい。
【0031】
紙基材積層体において、紙基材の厚さと、金属層またはシリカ蒸着層の厚さの割合は、2/1~1200/1程度である。
【0032】
本発明の液体収容部材10において、内層1および中間層2は、該液体収容部材10の長手方向に沿って、紙基材積層体をその隣接面同士を重ならないように接触させてスパイラル状に巻いた構造を有することが好ましい。仮に前記紙基材積層体同士の接触箇所、すなわち、継ぎ目4において隣接面同士が重なるとしても、重なり幅は最大1mmとする。継ぎ目4を重ならないように接触させる、または重なり幅を最大1mmとすることで、継ぎ目4からの液体の漏出を抑えることができる。継ぎ目4において重なり幅が1mmを超えると該重なり部分に段差が生じ、液体の漏出に繋がることがある。
【0033】
中間層2の外周面に紙基材をスパイラル状に巻き付けて外層3を形成する。
外層3を構成する紙基材としては、上記した内層1を構成する紙基材が適宜使用可能である。
【0034】
前記外層3も紙基材積層体と同様に、その隣接面同士を接触させて巻くことが好ましい。外層3同士の継ぎ目4’と、紙基材積層体同士の継ぎ目4とは、塗布具用液体収容部材の長手方向に沿って1mm以上でかつ前記紙基材積層体または前記外層3の幅の2分の1以下の間隔が離れていることが好ましく、3mm以上でかつ前記紙基材積層体または前記外層3の幅の2分の1以下の間隔が離れていることがより好ましい。なお、外層3同士の継ぎ目4’が多少重なっても、液体の漏出の問題はない。
【0035】
前記したように、本発明の液体収容部材10は、紙基材の表面に金属層またはシリカ蒸着層を積層させた複合材である紙基材積層体である内層1及び中間層2と、紙基材からなる外層3とからなり、プラスチック層を有しない。よって、本発明の塗布具用液体収容部材は環境に配慮した製品である。
【0036】
本発明の一実施形態に係る液体収容部材10は、図1および図2に示すように、紙基材の内層1と、金属層またはシリカ蒸着層の中間層2と、紙基材からなる外層3とからなり、内層1、中間層2および外層3のそれぞれの厚み(μm)の割合は、通常、20~60:0.025~12:50~200であり、好ましくは20~30:0.025~12:50~200である。
【0037】
本発明の他の実施形態に係る液体収容部材10は、図3に示すように、内層1、中間層2、内層1、中間層2および外層3の五層構造を有する。すなわち、本発明の液体収容部材10は、内層1、中間層2および外層3の三層構造において、中間層2および外層3の間に、内層1および中間層2をこの順にもう一組有してもよい。五層構造において、内層1、中間層2および外層3のそれぞれの厚み(mm)の割合は、三層構造の場合と同様でもよいし、それぞれ2つずつある内層1および中間層2の厚みは異なっていてもよい。前記他の実施形態に係る液体収容部材10は、液体の漏出や揮発の防止の点で、より好ましい形態である。
【0038】
前記のように作製された液体収容部材10は、内層1、中間層2および外層3を形成後、マンドレルを引き抜き、三層または五層構造の筒状の成形体を、塗布具用の液体収容部材10に必要な所定の長さに切断し、適度な温度および湿度の下、数時間乾燥することにより完成する。
【0039】
本発明の液体収容部材10は、通常の紙管などと比べて細径であり、その外径は、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下であり、前記外径の下限は、通常1mm以上、好ましくは2mm以上である。このような細径の液体収容部材は、厳しい寸法精度が要求される。よって、液体収容部材10の外径が小さいほど、紙基材積層体および紙基材からなる外層をスパイラル状に巻くに際して、紙基材積層体をその隣接面同士を重ならないように接触させ、かつ、紙基材からなる外層をその隣接面同士を接触させることが好ましい。
【0040】
液体収容部材10の管厚は、通常0.07~0.6mm、具体的には0.2~0.4mmである。液体収容部材10の管厚を前記範囲とすることにより、充分な量の液体を収容できるとともに、バリア性が向上し、液体の漏れや劣化を抑制することが容易となる。
液体収容部材10は、塗布具内に収容されるため、その大きさには一定の制約があるが、横断面最大長として1~20mm、具体的には3~10mmである。
【0041】
本発明の塗布具は、前記液体収容部材10を備えるものであれば制限はなく、中綿式および直液式の筆記用具でもよいし、アイライナー、マスカラおよびコンシーラーなどの化粧道具でもよい。
【0042】
筆記用具の場合、ペン先は筆毛、軟筆および硬筆など、いずれでもよい。より具体的には万年筆、ボールペン、マーキングペン、フェルトペンおよび筆ペンなどが挙げられる。このとき、液体収容部材10に収容されるインクの種類は、水性(ゲル)インクおよび油性インクのいずれでもよく、ペンの用途を考慮すれば、ボールペン用、加圧ボールペン用、またはマーキングペン用などのインクが挙げられる。
本発明では、塗布具が筆記用具であり、前記液体収容部材10が筆記用具用紙製リフィルであると、本発明の効果が有意に発揮されるため好ましい。
【実施例
【0043】
[実施例1]
[塗布具用液体収容部材の製造]
厚さ25μmのグラシン紙(坪量25g/m2、密度1.0g/cm3)と厚さ6.5μmのアルミニウム箔とをアクリル系接着剤で貼り合せた接着層厚さ6.5μmで合計厚さが38μmの貼合紙を、ボビンスリッターで11mm幅に裁断した。
短冊形の貼合紙の外側層であるアルミニウム箔側に、ロール型アプリケーターを用いて、アクリル系接着剤を35g/m塗布し、紙管製造機(ラングストン)のマンドレルの外周面にグラシン紙が内側になるように一重にスパイラル巻きした。
次いで、厚さ66μmのコート紙(坪量85g/m2)を、貼合紙外側層であるアルミニウム箔上に一重にスパイラル巻きした。
このとき、貼合紙およびコート紙は、それぞれ、その隣接面同士を重ねず、突き当てるように巻いた。また、貼合紙同士の接触箇所とコート紙同士の接触箇所とが長手方向に沿って3mm離れるように巻いた。
得られたスパイラルチューブを長さ89.3mmに断裁し、内径3.8mmの塗布具用液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管1とした。
【0044】
[塗布具用液体収容部材の評価]
(1)揮発減量の測定
得られた紙管1に下記処方で調製した塗布液1を0.7g充填し、さらにポリブテンを約10mmの長さに充填して塗布液の後端を封止した。
<塗布液1> (全量100質量%)
スピロンバイオレットC-RH [保土ヶ谷化学工業(株)製] 8%
スピロンイエローC-GNH [保土ヶ谷化学工業(株)製] 5%
Printex#35 [デグッサジャパン(株)製] 8%
ポリビニルブチラール BL-1 [積水化学工業(株)製] 4%
ポリビニルブチラール BH-3 [積水化学工業(株)製] 0.7%
ハイラック110H [日立化成(株)製] 10%
SOLSPERSE 28000 [日本ルーブリゾール(株)製] 1%
(酸価:29、重量平均分子量:約3400)
ベンゾトリアゾール 0.5%
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール 62.8%
【0045】
次いで、前記封止部とは反対側の液体収容部材端部にステンレス鋼製の栓を圧入した。両端を塞いだ紙管1を横向きで50℃10%RHの環境下に10日間静置し、塗布液の減少量から揮発減量(%)を求めた。
紙管1の揮発減量は0.63%であった。
【0046】
(2)曲げ試験
支点間距離を75mmとして、紙管1の中央を曲げくさび治具により30mm/minの速さで押し付け、座屈時の測定値を曲げ強度とした。
紙管1の曲げ強度は1.4Nであった。
揮発減量および曲げ試験の測定結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2~4]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例1において、紙管製造機(ラングストン)のマンドレルの外周面に、短冊形の貼合紙を一重ではなく、二重にスパイラル巻きしたこと以外は、実施例1と同様にして液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管2~4とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1において、塗布液1に代えて、紙管3には塗布液2を充填し、紙管4には塗布液3を充填したこと以外は、実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。塗布液2および3は下記処方で調製した。なお、紙管2には、塗布液1を充填した。
【0048】
<塗布液2> (全量100質量%)
FUJI RED 2510 [冨士色素(株)製] 8%
ジョンクリル61J [BASFジャパン(株)製] 6%
キサンタンガム KELSAN S [三晶(株)製] 0.32%
リン酸イソプロピル 0.5%
バイオデン421 [日本曹達(株)製] 0.2%
ベンゾトリアゾール 0.3%
トリエタノールアミン 1.4%
プロピレングリコール 15%
イオン交換水 68.28%
【0049】
<塗布液3> (全量100質量%)
ビニブランGV5651 [日新化学工業(株)製] 80%
(ポリ酢酸ビニルエマルション;固形分40%)
酸性染料 赤227号 0.22%
黄4号 0.34%
青1号 0.08%
精製水 19.36%
【0050】
紙管2の揮発減量は0.51%、曲げ強度は2.1N、紙管3の揮発減量は5.5%、曲げ強度は2.1N、紙管4の揮発減量は5.3%、曲げ強度は2.1Nであった。
結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、貼合紙として、グラシン紙に代えて、厚さ25μmのパーチメント紙(坪量25g/m2、密度1.0g/cm3)と、厚さ6.5μmのアルミニウム箔とをアクリル系接着剤で貼り合せたものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管5とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管5の揮発減量は0.53%、曲げ強度は1.9Nであった。
結果を表1に示す。
【0052】
[実施例6]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、貼合紙として、厚さ25μmのグラシン紙(坪量25g/m2、密度1.0g/cm3)の上に、アルミニウム箔ではなく、厚さ0.4μmのシリカ蒸着層を形成したものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管6とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管6の揮発減量は0.51%、曲げ強度は2Nであった。
結果を表1に示す。
【0053】
[実施例7]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、コート紙の隣接面同士を突き当てるのではなく、1mm重ねて巻いたこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管7とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管7の揮発減量は0.53%、曲げ強度は2Nであった。
結果を表1に示す。
【0054】
[実施例8]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、貼合紙同士の接触箇所とコート紙同士の接触箇所との間隔を3mmではなく、5mm空けたこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。前記液体収容部材を紙管8とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管8の揮発減量は0.52%、曲げ強度は2.1Nであった。
結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、貼合紙に代えて、潤滑剤を塗布した厚さ6.5μmのアルミニウム箔にアクリル系接着剤を35g/m塗布し、紙管製造機(ラングストン)のマンドレルの外周面にスパイラル巻きしたこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。つまり、比較例1では内層を有しない液体収容部材を作製した。前記液体収容部材を紙管9とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管9では塗布液が滲み出しており、揮発減量の測定に意味をもたなかった。一方、曲げ強度は1.9Nであった。
結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
[塗布具用液体収容部材の製造]
実施例2において、貼合紙に代えて、厚さ25μmのグラシン紙(坪量25g/m2、密度1.0g/cm3)にアクリル系接着剤を35g/m塗布し、紙管製造機(ラングストン)のマンドレルの外周面にスパイラル巻きして接着したこと以外は、実施例2と同様にして、液体収容部材を得た。つまり、比較例2では中間層を有しない液体収容部材を作製した。前記液体収容部材を紙管10とした。
[塗布具用液体収容部材の評価]
実施例1と同様にして、揮発減量および曲げ試験を測定した。
紙管10では塗布液が滲み出しており、揮発減量の測定に意味をもたなかった。一方、曲げ強度は1.9Nであった。
結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【符号の説明】
【0058】
10 塗布具用液体収容部材
1 内層
2 中間層
3 外層
4、4’ 継ぎ目
図1
図2
図3