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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】放電装置及び放電システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/18 20060101AFI20230612BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20230612BHJP
   H02P 3/22 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H02P3/18 101D
H02P5/46 J
H02P3/22 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019136703
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2020171186
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019072141
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008515
【氏名又は名称】株式会社アイエイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】西 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 高宏
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-308881(JP,A)
【文献】特開2004-229376(JP,A)
【文献】実開平07-036595(JP,U)
【文献】特開2000-188897(JP,A)
【文献】特開2005-253213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/18
H02P 5/46
H02P 3/22
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電装置であって、
モータに電力を供給し前記モータから回生電力の供給を受け、他の放電装置の電源線と接続される電源線と、
前記電源線の電圧値に基づいて、回生放電すべきか否かを示す第1の放電可否信号を出力する放電可否信号出力手段と、
前記第1の放電可否信号が示す情報を前記他の放電装置に伝達する一の信号線であって、前記他の放電装置の一の信号線と接続される信号線と、
前記信号線の電圧値が所定の値になったとき、前記電源線に供給される回生電力を放電する回生放電手段と、
を備え
前記信号線の電圧値は、前記第1の放電可否信号と、前記他の放電装置の放電可否信号出力手段が出力する回生放電すべきか否かを示す第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記所定の値になるように構成されている放電装置。
【請求項2】
前記放電可否信号出力手段は、前記電源線の電圧値が閾値以上であるとき、回生放電すべきことを示す前記第1の放電可否信号を出力する、
請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記回生放電手段は、前記電源線に一端が接続される回生抵抗と、前記回生抵抗に直列に接続されたスイッチング素子とを備え、
前記スイッチング素子は、前記第1の放電可否信号と、前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すときにオンし、前記電源線から前記回生抵抗に電流を流す、
請求項1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記第1の放電可否信号と前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、補助放電装置が備える第2の回生放電手段に回生電力の放電を指示する放電指示手段をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項5】
前記電源線の電圧を分圧した監視電圧を出力する監視電圧出力手段をさらに備え、
前記放電可否信号出力手段は、前記監視電圧の電圧値に基づいて前記第1の放電可否信号を出力する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項6】
複数の放電装置を備え、
前記複数の放電装置のそれぞれは、
モータに電力を供給し前記モータから回生電力の供給を受け、他の放電装置の電源線と接続される電源線と、
前記電源線の電圧値に基づいて、回生放電すべきか否かを示す第1の放電可否信号を出力する放電可否信号出力手段と、
前記第1の放電可否信号が示す情報を前記他の放電装置に伝達する一の信号線であって、前記他の放電装置の一の信号線と接続される信号線と、
前記信号線の電圧値が所定の値になったとき、前記電源線に供給される回生電力を放電する回生放電手段と、を備え
前記信号線の電圧値は、前記第1の放電可否信号と、前記他の放電装置の放電可否信号出力手段が出力する回生放電すべきか否かを示す第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記所定の値になるように構成されている、
放電システム。
【請求項7】
補助放電装置をさらに備え、
前記補助放電装置は、
前記放電装置の電源線と接続される第2の電源線と、
前記放電装置の指示に応じて前記第2の電源線に供給される回生電力を放電する第2の回生放電手段と、を備え、
前記放電装置は、前記第1の放電可否信号と前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記補助放電装置の前記第2の回生放電手段に回生電力の放電を指示する放電指示手段をさらに備える、
請求項6に記載の放電システム。
【請求項8】
前記補助放電装置は、前記第2の電源線の電圧を分圧した監視電圧を出力する監視電圧出力手段をさらに備え、
前記放電装置の放電可否信号出力手段は、前記監視電圧の電圧値に基づいて前記第1の放電可否信号を出力する、
請求項7に記載の放電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電装置及び放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動する駆動装置において、モータから生じる回生電力を放電する技術が知られている。例えば、モータから生じる回生電力により電源線の電圧が上昇して閾値以上となったとき、駆動装置に設けられた回生抵抗に電流を流すことにより、回生電力を放電することができる。以下、回生電力を放電するための動作を回生動作という。また、回生電力の放電とは、回生抵抗等により回生電力を消費することをいう。
【0003】
一方、駆動装置を複数備える多軸駆動システムにおいて、各駆動装置に使用される素子の特性のばらつき等を原因として、一部の駆動装置のみが回生動作を実行する場合がある。その結果、回生動作の負担が偏るので、一部の駆動装置の回生抵抗のみ過剰に発熱する、駆動装置間で素子の寿命が不揃いになる等の問題が生じうる。
【0004】
この問題に対し、各駆動装置が協働することにより回生動作の負担を分散する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、回生動作中の駆動装置(特許文献1では、モータ制御装置)が回生オン信号を他の駆動装置に出力し、回生オン信号を受信した他の駆動装置も回生動作を開始する。したがって、一部の駆動装置のみが先に回生動作を開始した場合であっても、他の駆動装置が続行して回生動作を開始するので、回生動作の負担を分散することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-253213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術には、他の駆動装置が回生動作中の駆動装置から回生オン信号を受信して回生動作を開始するまでは、回生動作中の駆動装置にのみ回生動作の負担が生じているので、回生動作の負担が偏っている期間がある、という問題がある。したがって、特許文献1の技術は、回生動作の負担の分散が十分でない。
【0007】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、回生動作の負担の分散に優れた放電装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る放電装置は、
モータに電力を供給し前記モータから回生電力の供給を受け、他の放電装置の電源線と接続される電源線と、
前記電源線の電圧値に基づいて、回生放電すべきか否かを示す第1の放電可否信号を出力する放電可否信号出力手段と、
前記第1の放電可否信号が示す情報を前記他の放電装置に伝達する一の信号線であって、前記他の放電装置の一の信号線と接続される信号線と、
前記信号線の電圧値が所定の値になったとき、前記電源線に供給される回生電力を放電する回生放電手段と、
を備え
前記信号線の電圧値は、前記第1の放電可否信号と、前記他の放電装置の放電可否信号出力手段が出力する回生放電すべきか否かを示す第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記所定の値になるように構成されている。
【0009】
前記放電可否信号出力手段は、前記電源線の電圧値が閾値以上であるとき、回生放電すべきことを示す前記第1の放電可否信号を出力するようにしてもよい。
【0010】
前記回生放電手段は、前記電源線に一端が接続される回生抵抗と、前記回生抵抗に直列に接続されたスイッチング素子とを備え、
前記スイッチング素子は、前記第1の放電可否信号と、前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すときにオンし、前記電源線から前記回生抵抗に電流を流すようにしてもよい。
【0011】
前記放電装置は、前記第1の放電可否信号と前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、補助放電装置が備える第2の回生放電手段に回生電力の放電を指示する放電指示手段をさらに備えてもよい。
【0012】
前記放電装置は、前記電源線の電圧を分圧した監視電圧を出力する監視電圧出力手段をさらに備え、
前記放電可否信号出力手段は、前記監視電圧の電圧値に基づいて前記第1の放電可否信号を出力するものであってもよい。
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る放電システムは、
複数の放電装置を備え、
前記複数の放電装置のそれぞれは、
モータに電力を供給し前記モータから回生電力の供給を受け、他の放電装置の電源線と接続される電源線と、
前記電源線の電圧値に基づいて、回生放電すべきか否かを示す第1の放電可否信号を出力する放電可否信号出力手段と、
前記第1の放電可否信号が示す情報を前記他の放電装置に伝達する一の信号線であって、前記他の放電装置の一の信号線と接続される信号線と、
前記信号線の電圧値が所定の値になったとき、前記電源線に供給される回生電力を放電する回生放電手段と、を備え
前記信号線の電圧値は、前記第1の放電可否信号と、前記他の放電装置の放電可否信号出力手段が出力する回生放電すべきか否かを示す第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記所定の値になるように構成されている。
【0014】
前記放電システムは、補助放電装置をさらに備え、
前記補助放電装置は、
前記放電装置の電源線と接続される第2の電源線と、
前記放電装置の指示に応じて前記第2の電源線に供給される回生電力を放電する第2の回生放電手段と、を備え、
前記放電装置は、前記第1の放電可否信号と前記第2の放電可否信号との少なくとも1つが回生放電すべきことを示すとき、前記補助放電装置の前記第2の回生放電手段に回生電力の放電を指示する放電指示手段をさらに備えてもよい。
【0015】
前記補助放電装置は、前記第2の電源線の電圧を分圧した監視電圧を出力する監視電圧出力手段をさらに備え、
前記放電装置の放電可否信号出力手段は、前記監視電圧の電圧値に基づいて前記第1の放電可否信号を出力するものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回生動作の負担の分散に優れた放電装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る多軸駆動システムの構成を示す図
図2】本発明の実施の形態1に係る駆動ユニットの放電制御部の機能的構成を示す図
図3】本発明の実施の形態1に係る駆動ユニットの放電制御部による放電制御の動作の一例を示すフローチャート
図4】本発明の実施の形態2に係る多軸駆動システムの構成を示す図
図5】本発明の実施の形態3に係る多軸駆動システムの構成を示す図
図6】本発明の実施の形態1の変形例に係る多軸駆動システムの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る放電システムを多軸駆動システムに適用した実施の形態を説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照しながら、実施の形態1に係る多軸駆動システム1を説明する。多軸駆動システム1は、複数のモータ30を駆動するシステムである。多軸駆動システム1は、複数の駆動ユニット10と、電源ユニット20と、複数のモータ30とを備える。
【0020】
駆動ユニット10は、モータ30を駆動する。電源ユニット20は、モータ30を駆動するための電力を駆動ユニット10に供給する。多軸駆動システム1において、巻き下げ動作等を原因として一部のモータ30から回生電力が生じる場合がある。詳細は後述するが、多軸駆動システム1においては、各駆動ユニット10が協働して回生電力を放電する。また、電源ユニット20も協働して回生電力を放電する。多軸駆動システム1は、本発明に係る放電システムの一例である。
【0021】
図1では、複数の駆動ユニット10が直列に接続されており、1の駆動ユニット10が電源ユニット20と接続されている。以下、必要に応じて、電源ユニット20と接続されている駆動ユニット10を駆動ユニット10-1と表記し、駆動ユニット10-1と接続されている駆動ユニット10を駆動ユニット10-2と表記する。
【0022】
(電源ユニットの構成)
電源ユニット20は、上述のとおり、モータ30を駆動するための電力を駆動ユニット10に供給し、駆動ユニット10と協働して回生電力を放電する。電源ユニット20は、電源P1と電源線LPと監視電圧出力部21と回生放電部22とを備える。電源ユニット20は、本発明に係る補助放電装置の一例である。
【0023】
電源P1は、電源線LPを介して、モータ30を駆動するための電力を駆動ユニット10に供給する電源である。電源線LPは、駆動ユニット10-1の電源線L1と接続されている。図1に示すとおり、各駆動ユニット10の電源線L1は直列に接続されており、駆動ユニット10-1の電源線L1が電源線LPと接続されているので、電源P1は各駆動ユニット10に電力を供給することができる。電源P1の電源電圧は、例えば直流280Vである。ただし、モータ30から回生電力が生じているとき、電源線LPは電源線L1を介してモータ30から回生電力の供給を受けるので、電源線LPの電圧は電源P1の電源電圧より高くなる。以下では、電源P1の電源電圧は直流280Vであるものとして説明する。また、電圧値について記載するときは、直流であるものとする。電源線LPは、本発明に係る第2の電源線の一例である。
【0024】
監視電圧出力部21は、電源線LPの電圧を分圧して駆動ユニット10の監視電圧線L2に出力する。当該分圧電圧の電圧値は、後述の駆動ユニット10の放電制御部13による監視の対象となるため、以下では当該分圧電圧を監視電圧という。監視電圧出力部21は、本発明に係る監視電圧出力手段の一例である。
【0025】
監視電圧出力部21は、分圧抵抗211と分圧抵抗212とボルテージフォロア213とを備える。監視電圧出力部21は、分圧抵抗211及び分圧抵抗212により電源線LPの電圧を分圧して監視電圧を生成し、ボルテージフォロア213を介して監視電圧を駆動ユニット10の監視電圧線L2に出力する。
【0026】
分圧抵抗211の抵抗値と分圧抵抗212の抵抗値との比率は、例えば99:1である。この場合、監視電圧は電源電圧の1/100となる。これは、後述のA/Dコンバータ12に入力可能な電圧の電圧値が最大で5V程度であることが想定されるからである。例えば、電源電圧の電圧値が280Vであり、回生電力が生じていないとき、電源線LPの電圧は280Vとなるので、監視電圧は2.8Vとなる。
【0027】
ボルテージフォロア213は、インピーダンスを変換しつつ監視電圧をそのまま出力する。ボルテージフォロア213は、オペアンプにより構成された、増幅率1倍の非反転増幅回路である。ボルテージフォロア213を介して監視電圧を出力することで、例えば駆動ユニット10のA/Dコンバータ12の入力インピーダンスがあまり高くない場合であっても、監視電圧の変動を抑えることができる。
【0028】
回生放電部22は、駆動ユニット10-1が出力する後述の放電実行信号に応じて、電源線LPに供給される回生電力を放電する。回生放電部22は、回生抵抗221とスイッチング素子222とを備える。図1ではスイッチング素子222としてMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor :電界効果トランジスタ)を示しているが、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、GTO(Gate Turn-Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、リレー等その他のスイッチング素子であってもよい。回生放電部22は、本発明に係る第2の回生放電手段の一例である。
【0029】
回生抵抗221の一端は電源線LPに接続されており、他端はスイッチング素子222に接続されている。スイッチング素子222は回生抵抗に直列に接続されている。スイッチング素子222の一端は回生抵抗221に接続されており、他端はグランドに接続されている。スイッチング素子222のスイッチ部分は、後述する駆動ユニット10の放電実行信号線L4と接続されている。スイッチ部分について、例えばスイッチング素子222が電界効果トランジスタ(MOSFET: Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の場合、ゲートがスイッチ部分に相当し、スイッチング素子222がバイポーラトランジスタの場合、ベースがスイッチ部分に相当する。
【0030】
スイッチング素子222は、駆動ユニット10-1から受信する放電実行信号がオンのときにオンし、電源線LPから回生抵抗221に電流を流す。回生抵抗221に電流を流すことにより、回生放電部22は電源線LPに供給される回生電力を放電できる。
【0031】
(駆動ユニットの構成)
駆動ユニット10は、電源ユニット20から電力の供給を受け、供給された電力によりモータ30を駆動する。また、駆動ユニット10は、他の駆動ユニット10と協働して回生電力を放電する。駆動ユニット10は、電源線L1と駆動回路11と監視電圧線L2とA/Dコンバータ12と放電制御部13とスイッチング素子14と放電可否信号線L3と電源P2とプルアップ抵抗15と放電実行信号線L4と回生放電部16とを備える。駆動ユニット10は、本発明に係る放電装置の一例である。
【0032】
電源線L1は、電源ユニット20の電源P1からモータ30を駆動するための電力の供給を受ける。電源線L1は、モータ30から生じた回生電力の供給を駆動回路11から受ける。電源線L1は、他の駆動ユニット10の電源線L1と接続されている。駆動ユニット10-1の電源線L1は、電源ユニット20の電源線LPと接続されている。各駆動ユニット10の電源線L1が接続されているので、電源線L1は、他の駆動ユニット10が駆動するモータ30から生じた回生電力の供給も受ける。電源線L1は、本発明に係る電源線の一例である。
【0033】
駆動回路11は電源線L1及びモータ30と接続され、電源線L1に供給された電力によりモータ30を駆動する。また、駆動回路11は、モータ30から生じた回生電力を電源線L1に供給する。
【0034】
例えば、モータ30が三相誘導電動機など三相交流電力にて駆動される電動機である場合、駆動回路11は、直流電力を三相交流電力に変換するインバータ回路と、三相交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路とを含む。駆動回路11は、電源線L1に供給された直流電力をインバータ回路により三相交流電力に変換してモータ30に供給し、モータ30から生じた三相交流の回生電力をコンバータ回路により直流の回生電力に変換して電源線L1に供給する。
【0035】
監視電圧線L2は、他の駆動ユニット10の監視電圧線L2と接続されている。駆動ユニット10-1の監視電圧線L2は、電源ユニット20の監視電圧出力部21の出力端と接続されている。したがって、各駆動ユニット10の監視電圧線L2には監視電圧が印加されている。
【0036】
A/Dコンバータ12は、入力された電圧の電圧値を示すデジタル信号を出力するA/D(Analog to Digital)コンバータである。A/Dコンバータ12の入力端は監視電圧線L2と接続されており、A/Dコンバータ12の出力端は放電制御部13の電圧値入力端子13aと接続されている。したがって、A/Dコンバータ12は、監視電圧線L2に印加された監視電圧の電圧値を示すデジタル信号を放電制御部13の電圧値入力端子13aに出力する。以下、電圧値入力端子13aに監視電圧の電圧値を示すデジタル信号を出力すること等を、単に「電圧値入力端子13aに監視電圧の電圧値を出力する」等と表記する。
【0037】
A/Dコンバータ12はアナログ回路であるため、素子の特性のばらつき等を原因として、各駆動ユニット10の各A/Dコンバータ12の特性に差異が生じうる。例えば監視電圧の実際の電圧値が4.0Vである場合において、駆動ユニット10-1のA/Dコンバータ12が正しく4.0Vを電圧値入力端子13aに出力する一方、駆動ユニット10-2のA/Dコンバータ12は実際より若干低い3.98Vを電圧値入力端子13aに出力する、といった事象が生じうる。詳細は後述するが、放電制御部13は、電圧値入力端子13aに入力された電圧値と閾値との比較結果に応じた放電制御を行うので、A/Dコンバータ12の特性の差異を原因として、各駆動ユニット10の放電制御開始のタイミングにズレが生じうる。
【0038】
放電制御部13は、A/Dコンバータ12が電圧値入力端子13aに出力した監視電圧の電圧値と予め定められた閾値とを比較する。放電制御部13は、比較結果に応じて、回生放電すべきか否かを示す放電可否信号を放電可否信号出力端子13bに出力する。放電可否信号は、オンのとき回生放電すべきことを示す。放電制御部13は、放電可否信号線L3から放電可否信号入力端子13cに入力された放電可否信号に応じて、放電を実行するか否かを示す放電実行信号を放電実行信号出力端子13dに出力する。放電実行信号がオンのとき、回生電力の放電を後述の回生放電部16及び電源ユニット20の回生放電部22に指示することを示す。したがって、放電実行信号がオンのとき、駆動ユニット10は回生動作中である。
【0039】
なお、詳細は後述するが、放電可否信号入力端子13cに入力される放電可否信号は、放電可否信号出力端子13bから出力される放電可否信号とは異なる。具体的には、放電可否信号入力端子13cに入力される放電可否信号は、放電可否信号出力端子13bから出力される放電可否信号と他の各駆動ユニット10の放電可否信号出力端子13bから出力されたそれぞれの放電可否信号とのうち少なくとも1つがオンのときにオンとなる。以下では、これらを区別するため、ある駆動ユニット10に着目したとき、自身の放電可否信号出力端子13bから出力される放電可否信号を第1の放電可否信号、他の駆動ユニット10の放電可否信号出力端子13bから出力された放電可否信号を第2の放電可否信号、放電可否信号入力端子13cに入力される放電可否信号を第3の放電可否信号と記載する。
【0040】
放電制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)と、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)とを備える。CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することにより、放電制御部13の各機能が実現される。あるいは、放電制御部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等による制御回路を備えてもよい。この場合、当該制御回路により放電制御部13の各機能が実現される。放電制御部13の動作電圧は、例えば3.3Vである。図示しない電源により放電制御部13に電圧3.3Vの電力が供給される。
【0041】
図2を参照しながら、放電制御部13の機能的構成を説明する。放電制御部13は、電圧判定部131と放電可否信号出力部132と放電実行信号出力部133とを備える。
【0042】
電圧判定部131は、電圧値入力端子13aに入力された監視電圧の電圧値と予め定められた閾値との高低を判定する。後述の放電実行信号出力部133が出力する放電実行信号がオンのとき、つまり駆動ユニット10が回生動作中のときの閾値は、回生動作をしていないときの閾値より低く設定されている。このように設定されている理由は、判定結果に応じて最終的に回生動作のオン・オフが連動することが想定されるので、両者の閾値が等しいと回生動作のオン・オフが頻繁に切り替わるおそれがあるからである。回生動作のオン・オフが頻繁に切り替わることについては、具体例を挙げて後述する。
【0043】
放電可否信号出力部132は、電圧判定部131による判定結果に応じて、オン又はオフを示す第1の放電可否信号を出力する。具体的には、電圧判定部131により監視電圧の電圧値が閾値以上であると判定されたとき、放電可否信号出力部132はオンを示す第1の放電可否信号を出力し、監視電圧の電圧値が閾値より小さいと判定されたとき、放電可否信号出力部132はオンを示す第1の放電可否信号を出力する。上述のとおり、監視電圧は電源ユニット20の電源線LPの電圧を分圧したものであり、かつ電源線L1と電源線LPは接続されているので、監視電圧の電圧値は電源線L1の電圧値に基づく値である。したがって、放電可否信号出力部132は、電源線L1の電圧値に基づいて、回生放電すべきか否かを示す第1の放電可否信号を出力する、といえる。放電可否信号出力部132は、本発明に係る放電可否信号出力手段の一例である。
【0044】
以下、前述の回生動作のオン・オフが頻繁に切り替わることについても含めて、具体例を挙げて説明する。例えば、回生動作をしていない状態において、放電可否信号出力部132が出力すべき第1の放電可否信号がオンになるかオフになるかを考える。ここでは、電圧判定部131にて用いられる閾値を4.0Vとする。まず、回生電力が生じているモータ30が全くないとき、電源線L1の電圧値及び電源線LPの電圧値は280Vである。上述のとおり、監視電圧は、電源線LPの電圧を1/100に分圧したものであるため、電圧判定部131に入力される電圧値は2.8Vとなる。ただし、ここではA/Dコンバータ12は監視電圧の電圧値を誤差なく出力するものとする。このとき、監視電圧の電圧値は閾値より低いため、第1の放電可否信号はオフになる。
【0045】
一部のモータ30から回生電力を生じている場合であっても、電源線L1の電圧値が400V未満であれば、監視電圧の電圧値は4.0V未満であり依然として閾値より低いため、第1の放電可否信号はオフのままとなる。一方、多数のモータ30から回生電力が生じ電源線L1の電圧値が400V以上となると、監視電圧の電圧値が4.0V以上となり、閾値以上となる。したがって、第1の放電可否信号はオンになる。
【0046】
詳細は後述するが、第1の放電可否信号がオンになると、各駆動ユニット10は回生動作を行う。すると、回生電力が放電され、電源線L1の電圧値が下がり、監視電圧も下がる。ここで、回生動作中に電圧判定部131にて用いられる閾値も4.0Vであると仮定すると、回生動作が行われるとすぐに監視電圧の電圧値が閾値を下回り、第1の放電可否信号がオフになる。ほとんどの場合、第1の放電可否信号がオフになると回生動作が停止される。継続してモータ30から回生電力が生じている場合、再び電源線L1の電圧値が上がり、すぐに監視電圧が閾値以上となり、回生動作が行われる。このように、回生動作中の閾値と回生動作をしていないときの閾値とを等しくすると、頻繁に回生動作のオン・オフが行われてしまう。したがって、回生動作中の閾値は、回生動作をしていないときの閾値より低く設定されている。例えば、回生動作中の閾値は、回生動作をしていないときの閾値である4.0Vより低い3.8Vである。
【0047】
なお、放電可否信号出力部132は、正論理にて表現された信号を放電可否信号出力端子13bに出力する。つまり、放電可否信号出力端子13bに出力される電圧が基準値より高いHighレベルであるとき第1の放電可否信号がオンであり、放電可否信号出力端子13bに出力される電圧が基準値より低いLowレベルであるとき第1の放電可否信号がオフである。
【0048】
放電実行信号出力部133は、放電可否信号入力端子13cに入力された第3の放電可否信号のオン・オフに応じて、オン又はオフを示す放電実行信号を放電実行信号出力端子13dに出力する。なお、詳細は後述するが、放電可否信号入力端子13cに入力される第3の放電可否信号は負論理にて表現される一方、放電実行信号出力端子13dに出力される放電実行信号は正論理にて表現される。したがって、放電可否信号入力端子13cに入力される電圧がLowレベルである場合には第3の放電可否信号がオンなので、放電実行信号出力端子13dに出力される電圧はHighレベルとなり、放電可否信号入力端子13cに入力される電圧がHighレベルである場合には第3の放電可否信号がオフなので、放電実行信号出力端子13dに出力される電圧はLowレベルとなる。放電実行信号出力端子13dに放電実行信号は、放電実行信号線L4を経由して、後述の回生放電部16に出力される。また、駆動ユニット10-1のように、駆動ユニット10が電源ユニット20と接続されている場合、放電実行信号は電源ユニット20の回生放電部22にも出力される。放電実行信号出力部133は、本発明に係る放電指示手段の一例である。
【0049】
再び図1を参照する。スイッチング素子14は、放電可否信号出力端子13bから出力され正論理で表現された第1の放電可否信号のオン・オフに応じてオン又はオフする。スイッチング素子14のスイッチ部分は放電制御部13の放電可否信号出力端子13bに接続されている。スイッチング素子14の一端はグランドに接続されており、他端は放電可否信号線L3に接続されている。なお、図1ではスイッチング素子14としてバイポーラトランジスタを示しているが、上記同様、他のスイッチング素子であってもよい。
【0050】
理解を容易にするため、まず、駆動ユニット10単体に着目し、駆動ユニット10の放電可否信号線L3が他の駆動ユニット10の放電可否信号線L3と接続されていない場合を考える。放電可否信号出力端子13bから出力された第1の放電可否信号がオンのとき、スイッチング素子14がオンし、電源P2からプルアップ抵抗15及びスイッチング素子14を経由してグランドまで電流が流れるので、放電可否信号線L3の電圧はグランドと等しくなる。放電可否信号出力端子13bから出力された第1の放電可否信号がオフのとき、スイッチング素子14はオフし、スイッチング素子14に電流が流れないので、放電可否信号線L3の電圧は電源P2の電源電圧と等しくなる。つまり、放電可否信号出力端子13bから出力された第1の放電可否信号がオンのとき、放電可否信号線L3の電圧はLowレベルとなり、オフのとき、放電可否信号線L3の電圧はHighレベルとなる。したがって、駆動ユニット10単体に着目した場合、スイッチング素子14は、放電可否信号出力端子13bから出力され正論理で表現された第1の放電可否信号を、電源P2及びプルアップ抵抗15と協働して負論理による表現に変換して放電可否信号線L3に出力する機能を有する、といえる。
【0051】
次に、駆動ユニット10の放電可否信号線L3が他の駆動ユニット10の放電可否信号線L3と接続されている場合を考える。この場合、各駆動ユニット10のスイッチング素子14それぞれのうち1つでもオンしている場合、全ての駆動ユニット10の放電可否信号線L3からオンしているスイッチング素子14に電流が流れ、全ての放電可否信号線L3の電圧がグランドと等しくなる。一方、全ての駆動ユニット10のスイッチング素子14がオフしている場合、放電可否信号線L3に電流が流れず、放電可否信号線L3の電圧は電源P2の電源電圧と等しくなる。
【0052】
したがって、駆動ユニット10の放電可否信号出力端子13bから出力された第1の放電可否信号と、他の各駆動ユニット10の放電可否信号出力端子13bから出力された各第2の放電可否信号とのうち少なくとも1つが正論理にてオンのとき、放電可否信号線L3の電圧はLowレベルとなる。逆に、第1の放電可否信号と全ての第2の放電可否信号とが正論理にてオフのとき、放電可否信号線L3の電圧はHighレベルとなる。
【0053】
したがって、スイッチング素子14、放電可否信号線L3、電源P2及びプルアップ抵抗15は、第1の放電可否信号及び各第2の放電可否信号についての負論理ワイアードOR回路を構成している、といえる。負論理にてオン・オフが表現され放電可否信号線L3に出力される信号が、上述の第3の放電可否信号となる。
【0054】
スイッチング素子14は、放電可否信号出力端子13bから出力され正論理にて表現された第1の放電可否信号を負論理にて表現された信号に変換し、放電可否信号線L3を介して他の駆動ユニット10に送信するので、本発明に係る放電可否信号送信手段の一例である。
【0055】
電源P2は、プルアップ抵抗15と接続されている。電源P2の電源電圧は、放電制御部13の動作電圧と等しく、例えば3.3Vである。
【0056】
プルアップ抵抗15は、一端が電源P2と接続されており、他端が放電可否信号線L3と接続されている。プルアップ抵抗15は、スイッチング素子14がオンするときに電源P2とグランドとが短絡することを防ぐ。
【0057】
回生放電部16は、放電制御部13の放電実行信号出力端子13dから出力された放電実行信号がオンのとき、電源線L1に供給された回生電力を放電する。回生放電部16は、回生抵抗161とスイッチング素子162とを備える。回生放電部16は、本発明に係る回生放電手段の一例である。
【0058】
回生抵抗161の一端は電源線L1に接続されており、他端はスイッチング素子162に接続されている。スイッチング素子162は回生抵抗161に直列に接続されている。スイッチング素子162の一端は回生抵抗161に接続されており、他端はグランドに接続されている。スイッチング素子162のスイッチ部分は、放電実行信号線L4と接続されている。図1ではスイッチング素子222としてMOSFETを示しているが、上記同様、他のスイッチング素子であってもよい。
【0059】
スイッチング素子162は、放電実行信号線L4及び放電実行信号出力端子13dを介して放電制御部13から受信する放電実行信号がオンのときにオンし、電源線L1から回生抵抗161に電流を流す。回生抵抗161に電流を流すことにより、回生放電部16は電源線L1に供給される回生電力を放電できる。
【0060】
(放電制御の動作)
次に、図3を参照しながら、放電制御部13による放電制御の動作の一例を説明する。なお、以下の説明では、図3に示す動作は駆動ユニット10の起動直後から実行されるものとする。また、放電制御部13の電圧判定部131にて用いられる閾値について、回生動作をしていないときに用いられる閾値を第1閾値、回生動作中に用いられる閾値を第2閾値とする。また、駆動ユニット10の起動直後は、第1の放電可否信号及び放電実行信号はオフであるものとする。
【0061】
放電制御部13の電圧判定部131は、回生動作停止中であるか否かを判定する(ステップS1)。前述のとおり、電圧判定部131は、放電実行信号出力部133が出力する放電実行信号がオンかオフかを判定することにより、回生動作停止中か否かを判定する。
【0062】
回生動作停止中であると判定されたとき(ステップS1:Yes)、電圧判定部131は、A/Dコンバータ12が出力した監視電圧の電圧値が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0063】
理想的には、全ての駆動ユニット10において、ステップS2での判定結果は同一となる。しかし、上述したように、実際にはA/Dコンバータ12の特性のばらつき等により、ステップS2での判定結果は全ての駆動ユニット10において同一とならない場合がある。例えば監視電圧の実際の電圧値が4.0Vであり、駆動ユニット10-1のA/Dコンバータ12が正しく4.0Vを出力する一方、駆動ユニット10-2のA/Dコンバータ12は実際より若干低い3.98Vを出力する場合を考える。ここで、第1閾値が4.0Vである場合、駆動ユニット10-1と駆動ユニット10-2とでステップS2の判定結果が異なる。その結果、以降のステップにて出力される第1の放電可否信号のオン・オフが異なる。
【0064】
監視電圧の電圧値が第1閾値以上であると判定されたとき(ステップS2:Yes)、放電制御部13の放電可否信号出力部132は、オンを示す第1の放電可否信号を出力する(ステップS3)。この結果、上述のとおり、全ての駆動ユニット10の放電可否信号線L3には、負論理ワイアードOR回路によりオン信号が出力される。つまり、放電可否信号線L3にオンを示す第3の放電可否信号が出力される。そして、放電制御部13はステップS6以降の動作を実行する。
【0065】
ステップS2にて、監視電圧の電圧値が第1閾値より低いと判定されたとき(ステップS2:No)、放電制御部13は、第1の放電可否信号をオンにすることなくステップS6以降の動作を実行する。
【0066】
ステップS1にて、回生動作停止中ではないと判定されたとき(ステップS1:No)、電圧判定部131は、A/Dコンバータ12が出力した監視電圧の電圧値が第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。なお、ステップS2の場合と同様、ステップS4での判定結果は、A/Dコンバータ12の特性のばらつき等により、全ての駆動ユニット10において同一とならない場合がある。
【0067】
監視電圧の電圧値が第2閾値以下であると判定されたとき(ステップS4:Yes)、放電制御部13の放電可否信号出力部132は、オフを示す第1の放電可否信号を出力する(ステップS5)。この場合であっても、上述のとおり、各駆動ユニット10の放電可否信号出力部132が出力する第1の放電可否信号が全てオフにならない限り、全ての放電可否信号線L3には、負論理ワイアードOR回路によりオン信号が出力される。そして、放電制御部13はステップS6以降の動作を実行する。
【0068】
ステップS4にて、監視電圧の電圧値が第2閾値より高いと判定されたとき(ステップS4:No)、放電制御部13は、第1の放電可否信号をオフにすることなくステップS6以降の動作を実行する。
【0069】
放電制御部13の放電実行信号出力部133は、放電可否信号線L3に出力された第3の放電可否信号がオンであるか否かを判定する(ステップS6)。上述のとおり、第3の放電可否信号がオンになるのは、各駆動ユニット10の放電可否信号出力部132が出力する各第1の放電可否信号のうち少なくとも1つがオンとなっているときであり、第3の放電可否信号がオフになるのは、各駆動ユニット10の放電可否信号出力部132が出力する第1の放電可否信号が全てオフとなっているときである。
【0070】
第3の放電可否信号がオンのとき(ステップS6:Yes)、放電実行信号出力部133は、オンを示す放電実行信号を出力する(ステップS7)。この結果、各駆動ユニット10の放電実行信号出力部133から回生放電部16にオンを示す放電実行信号が出力され、回生放電部16による回生放電が実行される。また、駆動ユニット10-1の放電実行信号出力部133からは、電源ユニット20の回生放電部22にもオンを示す放電実行信号が出力され、回生放電部22による回生放電も実行される。そして、放電制御部13はステップS1からの動作の流れを繰り返す。
【0071】
上述のとおり、各駆動ユニット10の各第1の放電可否信号のうち少なくとも1つがオンであるとき、第3の放電可否信号がオンとなる。したがって、A/Dコンバータ12の特性のばらつき等により一部の駆動ユニット10の第1の放電可否信号がオンであったとしても、全ての駆動ユニット10の放電実行信号出力部133が、オンを示す放電実行信号を出力する。
【0072】
第3の放電可否信号がオフのとき(ステップS6:No)、放電実行信号出力部133は、オフを示す放電実行信号を出力する(ステップS8)。この結果、各駆動ユニット10の放電実行信号出力部133から回生放電部16にオフを示す放電実行信号が出力され、回生放電部16による回生放電が停止される。また、駆動ユニット10-1の放電実行信号出力部133からは、電源ユニット20の回生放電部22にもオフを示す放電実行信号が出力され、回生放電部22による回生放電も停止される。そして、放電制御部13はステップS1からの動作の流れを繰り返す。
【0073】
上述のとおり、各駆動ユニット10の各第1の放電可否信号が全てオフであるとき、第3の放電可否信号がオフとなる。したがって、各駆動ユニット10の各第1の放電可否信号が全てオフであるとき、全ての駆動ユニット10の放電実行信号出力部133は、オフを示す放電実行信号を出力する。
【0074】
以上の説明のとおり、各駆動ユニット10の第1の放電可否信号は、それぞれ別個にオン・オフになりうる一方、各駆動ユニット10の各放電実行信号については、全てがオンになるか全てがオフになるかの2通りである。よって、各駆動ユニット10の回生動作については、全ての駆動ユニット10が回生動作を実行しているか全ての駆動ユニット10が回生動作を停止しているかの2通りである。したがって、駆動ユニット10の放電制御部13による放電制御により、一部の駆動ユニット10に回生動作の負担が偏ることを防ぐことができる。
【0075】
(効果)
以上、実施の形態1に係る多軸駆動システム1を説明した。多軸駆動システム1によれば、全ての駆動ユニット10が回生動作を実行しているか全ての駆動ユニット10が回生動作を停止しているかの2通りとなり、一部の駆動ユニット10に回生動作の負担が偏ることを防ぐことができるので、回生動作の負担の分散に優れる。
【0076】
また、多軸駆動システム1によれば、駆動ユニット10-1の放電制御部13が出力する放電実行信号がオンになるのに応じて、電源ユニット20の回生放電部22も回生電力を放電するので、回生動作の負担をさらに分散することができる。
【0077】
(実施の形態2)
図4を参照しながら、実施の形態2に係る多軸駆動システム1Aを説明する。なお、多軸駆動システム1Aは、概ね実施の形態1に係る多軸駆動システム1と同様であるため、異なる点を主に説明する。多軸駆動システム1Aは、駆動ユニット10に代えて駆動ユニット10Aを備える点が実施の形態1と異なる。なお、図4では、電源ユニット20の監視電圧出力部21を簡略して記載しているが、電源ユニット20の構成は実施の形態1と全く同様である。また、図4では、電源ユニット20に接続されていない駆動ユニット10Aの記載も簡略している。
【0078】
駆動ユニット10Aは、スイッチング素子17と電源P3とプルアップ抵抗18とを更に備える。放電制御部13Aは、図2に示す放電実行信号出力部133を備えず、放電可否信号入力端子13c及び放電実行信号出力端子13dも備えない。
【0079】
放電可否信号線L3は、放電可否信号入力端子13cに接続される代わりにスイッチング素子17のスイッチ部分に接続されている。放電実行信号線L4は、放電実行信号出力端子13dに接続される代わりにスイッチング素子17の一端に接続されている。スイッチング素子17の他端はグランドに接続されている。また、放電実行信号線L4は、プルアップ抵抗18の一端に接続されている。プルアップ抵抗18の他端は、電源P3に接続されている。
【0080】
スイッチング素子17、プルアップ抵抗18及び電源P3により、負論理にて表現され放電可否信号線L3に出力された第3の放電可否信号が、正論理にて表現された信号に変換されて放電実行信号線L4に出力される。これは、放電可否信号出力端子13bから出力される正論理にて表現された信号が、スイッチング素子14、プルアップ抵抗15及び電源P2により、負論理にて表現された信号に変換されるのと同様である。
【0081】
したがって、スイッチング素子17は、実施の形態1の放電実行信号出力部133に相当する、ともいえる。そして、スイッチング素子17により負論理から正論理に変換され放電実行信号線L4に出力された第3の放電可否信号は、放電実行信号でもある、といえる。したがって、スイッチング素子17は、実施の形態1の放電実行信号出力部133と同様、本発明に係る放電指示手段の一例である。
【0082】
上記の構成により、実施の形態1の場合と同様、第3の放電可否信号がオンのとき、つまり各駆動ユニット10Aのうち少なくとも1つについて第1の放電可否信号がオンのとき、全ての駆動ユニット10Aが回生動作を行い、電源ユニット20も回生動作を行う。そのため、多軸駆動システム1Aも、実施の形態1に係る多軸駆動システム1と同様に、回生動作の負担の分散に優れる。
【0083】
(実施の形態3)
図5を参照しながら、実施の形態3に係る多軸駆動システム1Bを説明する。なお、多軸駆動システム1Bは、概ね実施の形態1に係る多軸駆動システム1と同様であるため、異なる点を主に説明する。多軸駆動システム1Bは、電源ユニット20に代えて電源ユニット20Bを備え、駆動ユニット10に代えて駆動ユニット10Bを備える点が実施の形態1と異なる。なお、図5では、電源ユニット20Bに接続されていない駆動ユニット10Bの記載を簡略している。
【0084】
電源ユニット20Bは、監視電圧出力部21を備えない点が実施の形態1と異なる。駆動ユニット10Bは、監視電圧出力部19を備える点及び監視電圧線L2が駆動ユニット10Bの外部と接続されず監視電圧出力部19の出力側と接続される点が実施の形態1と異なる。
【0085】
監視電圧出力部19は、実施の形態1の監視電圧出力部21と同様の機能を備える。具体的には、監視電圧出力部19は、分圧抵抗191と分圧抵抗192とボルテージフォロア193とを備える。監視電圧出力部19は、分圧抵抗191及び分圧抵抗192により電源線L1の電圧を分圧して監視電圧を生成し、ボルテージフォロア193を介して監視電圧を監視電圧線L2に出力する。なお、各駆動ユニット10Bにおいて、分圧比は同一である。監視電圧出力部19は、本発明に係る監視電圧出力手段の一例である。
【0086】
したがって、多軸駆動システム1Bにおいては、電源ユニット20Bではなく、各駆動ユニット10Bが監視電圧を生成する。そのため、実施の形態1と異なり、監視電圧を伝達するための外部配線が不要となる。
【0087】
各駆動ユニット10Bにおいて、監視電圧出力部19における分圧比は同一であるとしたが、素子の特性のばらつき等を原因として、各駆動ユニット10Bの監視電圧出力部19から実際に出力される監視電圧には差異が生じうる。各駆動ユニット10Bで監視電圧に差異が生じると、A/Dコンバータ12の特性が同一であったとしても、放電制御開始のタイミングにズレが生じる。しかし、実施の形態1の場合と同様に、放電制御開始のタイミングにズレが生じていても、全ての駆動ユニット10Bが回生動作を実行しているか全ての駆動ユニット10Bが回生動作を停止しているかの2通りとなり、一部の駆動ユニット10Bに回生動作の負担が偏ることを防ぐことができる。
【0088】
上記の構成により、実施の形態1の場合と同様に、各駆動ユニット10Bのうち少なくとも1つについて第1の放電可否信号がオンのとき、全ての駆動ユニット10Bが回生動作を行い、電源ユニット20Bも回生動作を行う。そのため、多軸駆動システム1Bも、実施の形態1に係る多軸駆動システム1と同様に、回生動作の負担の分散に優れる。
【0089】
また、上記の構成により、監視電圧を伝達するための外部配線が不要となるので、多軸駆動システム1Bによれば、実施の形態1に係る多軸駆動システム1よりも装置間の配線を簡素なものとすることができる。
【0090】
(変形例)
実施の形態1から3では、電源ユニット20に回生放電部22を設け、回生放電部22による回生電力の放電を行うものとした。しかし、必ずしも電源ユニット20に回生放電部22が設けられていなくてもよい。回生放電部22による放電をしなくとも、各駆動ユニット10に回生動作の負担を分散できるからである。また、電源ユニット20に回生放電部22を設ける代わりに、回生放電部を備える放電専用のユニットを多軸駆動システム1に追加してもよい。この場合、当該放電専用のユニットは、本発明に係る補助放電装置の一例である。
【0091】
実施の形態1から3では、スイッチング素子14と放電可否信号線L3と電源P2とプルアップ抵抗15とにより構成された負論理ワイアードOR回路により、第3の放電可否信号を出力した。しかし、負論理ワイアードOR回路以外により第3の放電可否信号を出力してもよい。例えば、正論理ワイアードOR回路により第3の放電可否信号を出力してもよいし、ORゲートを組み合わせた回路により第3の放電可否信号を出力してもよい。
【0092】
実施の形態1から3では、モータ30を駆動するための電源系統と放電制御部13を動作させるための電源系統が分離されていない。そこで、動作のさらなる安定を図るべく、絶縁アンプ、フォトカプラなどを用いてこれらの電源系統を分離してもよい。例えば、図1において、ボルテージフォロア213に代えて絶縁アンプを設け、回生放電部16のスイッチング素子162のスイッチ部分の前段にフォトカプラを設け、回生放電部22のスイッチング素子222のスイッチ部分の前段にもフォトカプラを設けることにより、これらの電源系統を分離することができる。
【0093】
実施の形態1では、放電実行信号出力端子13dから、放電実行信号線L4を介して回生放電部16及び回生放電部22の双方に放電実行信号を出力するものとした。しかし、図6に示すように、放電実行信号を出力する放電実行信号出力端子13eを放電制御部13にさらに設け、放電実行信号線L4を放電実行信号出力端子13d及び回生放電部16のみと接続し、放電実行信号出力端子13eと回生放電部22とを新たな放電実行信号線L5により接続してもよい。このように構成することにより、回生放電部16と回生放電部22との一方が故障したとき、故障の影響が他方に及ぶことを軽減できる。なお、図6では駆動ユニット10-2の記載を省略している。
【0094】
また、上記の各実施の形態及び変形例を、当業者の通常の知識の範囲内で適宜組み合わせ、必要に応じて適当な変形をしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1,1A,1B 多軸駆動システム
10,10A,10B,10-1,10-2 駆動ユニット
11 駆動回路
12 A/Dコンバータ
13,13A 放電制御部
13a 電圧値入力端子
13b 放電可否信号出力端子
13c 放電可否信号入力端子
13d,13e 放電実行信号出力端子
131 電圧判定部
132 放電可否信号出力部
133 放電実行信号出力部
14 スイッチング素子
15 プルアップ抵抗
16 回生放電部
161 回生抵抗
162 スイッチング素子
17 スイッチング素子
18 プルアップ抵抗
19 監視電圧出力部
191,192 分圧抵抗
193 ボルテージフォロア
20,20B 電源ユニット
21 監視電圧出力部
211,212 分圧抵抗
213 ボルテージフォロア
22 回生放電部
221 回生抵抗
222 スイッチング素子
30 モータ
P1,P2,P3 電源
L1,LP 電源線
L2 監視電圧線
L3 放電可否信号線
L4,L5 放電実行信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6