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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】組立式段ボール棺
(51)【国際特許分類】
   A61G 17/013 20060101AFI20230612BHJP
   A61G 17/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61G 17/007 20060101ALI20230612BHJP
   B65D 5/32 20060101ALI20230612BHJP
   B65D 5/44 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61G17/013
A61G17/00 S
A61G17/007
B65D5/32 D
B65D5/44 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019217644
(22)【出願日】2019-11-30
(65)【公開番号】P2021083998
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594101994
【氏名又は名称】株式会社平和カスケット
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 章
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181155(JP,A)
【文献】実開平07-022731(JP,U)
【文献】実開昭59-087428(JP,U)
【文献】特開2002-282311(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0060334(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/013
A61G 17/00
A61G 17/007
B65D 5/32
B65D 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化段ボール材に折り曲げ用の溝加工を施し、この溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に形成する段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底箱(12)と、
この底箱の左右上方に設けられる可倒式の側板(13)と、
前記底箱の前後で前記側板の起立状態を保持する妻板(15)とを備えており、
さらに、
前記左右の側板の前後端に、左右内向きに延びて棺前後に向き合うように固定される留め板(14)と、
前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板を固定するための固定手段(17)とを備え、
前記段ボール棺が組み立てられるとき、前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板が配置された状態で、これらの板面同士が前記固定手段で固定されることにより、前記側板の起立状態が前記妻板で保持されるように構成されており、

加えて、
前記左右の側板の下方に設けられる前記底箱の底側板(23)と、
前記左右の底側板の前後端よりも棺内側にズレた位置に設けられる前記底箱の底妻板(24)と、
前記底妻板の棺外側で前記左右の底側板の間に仕切られる逃し空間(S)と、
前記妻板の棺内側に突出形成される入れ子部(15a)と、を備え、
前記段ボール棺が組み立てられる前は、前記左右の側板が棺内向きに倒れるのに伴って前記左右の留め板が前記逃し空間に収まる一方、前記段ボール棺が組み立てられるときには、前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板が配置された状態で前記妻板の入れ子部が前記逃し空間に収まるように構成されることを特徴とする、組立式段ボール棺。
【請求項2】
前記固定手段がネジ部材である、請求項1記載の組立式段ボール棺。
【請求項3】
前記固定手段に加えて、前記底箱および前記留め板の棺外側に妻板を仮止めする位置決め手段を設ける、請求項1の組立式段ボール棺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、強化段ボール材からなる段ボール棺に関し、詳しくは、可倒式の左右側板を妻板で保持する組立式タイプの段ボール棺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、強化段ボール材に折り曲げ用の溝加工を施し、この溝に沿って同段ボール材を折り曲げて箱状に形成する段ボール棺が知られている。この種の段ボール棺には、箱状に形成した強化段ボール材を接着剤等で固定して最初から棺の完成品とする固定式タイプと、棺の展開状態を半製品として作製し、この半製品を棺の使用時に組み立てて完成品とする組立式タイプとがある。
【0003】
本発明者らは、このような組立式段ボール棺を開発する中で、既に、平面矩形の底箱の左右上方に可倒式の側板を設け、この側板の起立状態を上方から落とし込んだ妻板で保持するものを提案している(特許文献1)。
【0004】
例えば図12に示すように、この種の段ボール棺1は、矩形の底箱2の左右上方に可倒式の側板3,3が設けられる。側板3,3は、棺外側から内側に切り込まれたI溝Miを介して棺内向きに折れ曲がって倒れる。
側板3,3の前後には、折り曲げ用のV溝Mvを介して折り代板4,4が連結される。
段ボール棺1を組み立てる場合、左右の側板3,3をほぼ垂直に立ち上げ、折り代板4,4をV溝Mvに沿って底箱2の上方で棺前後に向き合うように折り曲げる(図12参照)。そして、折り代板4,4に下向きコ字状の妻板5を被せ、底箱2まで落とし込んで左右の側板3,3の起立状態を保持する。
このように段ボール棺1を組み立てることにより、使用前には棺をコンパクトに折り畳んだ状態にしておき、葬儀等で必要となったときには棺を迅速に準備することが可能になる。
【0005】
なお、このような組立式段ボール棺に関する先行技術としては、特許文献1、2等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-181155号公報
【文献】特開2008-272135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の組立式段ボール棺によると、折り代板4,4に下向きコ字状の妻板5を被せるという構造上、前後方向(棺長さ方向)に対する強度が不足しがちになる。つまり、側板3,3に折り代板4,4が固定されていないために妻板5が折り代板4,4と一体となってその展開方向にズレることがある。過大な負荷がかかると、段ボール棺の妻部分(妻板の周辺部分)に歪みやガタ付きが生じるおそれもある。
【0008】
これに対し、あらかじめ側板3,3の前後で折り代板4,4を折り曲げた状態で固定しておく対策が考えられるが、このような構成では、折り代板4,4が底箱2と干渉するため、側板3,3を棺内向きに倒すことが困難となる。この結果、段ボール棺をコンパクトに折り畳むことが難しくなり、保管や運搬の作業性が悪くなる。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、前後方向(棺長さ方向)に対する強度を十分に確保しつつ、コンパクトに折り畳めるようにして保管や運搬の作業性を良好にした組立式段ボール棺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[第1発明]
前記課題を解決するための第1発明の組立式段ボール棺は、
強化段ボール材に折り曲げ用の溝加工を施し、この溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に形成する段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底箱(12)と、
この底箱の左右上方に設けられる可倒式の側板(13)と、
前記底箱の前後で前記側板の起立状態を保持する妻板(15)とを備えており、

さらに、
前記左右の側板の前後端に、左右内向きに延びて棺前後に向き合うように固定される留め板(14)と、
前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板を固定するための固定手段(17)とを備え、
前記段ボール棺が組み立てられるとき、前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板が配置された状態で、これらの板面同士が前記固定手段で固定されることにより、前記側板の起立状態が前記妻板で保持されるように構成されており、

加えて、
前記左右の側板の下方に設けられる前記底箱の底側板(23)と、
前記左右の底側板の前後端よりも棺内側にズレた位置に設けられる前記底箱の底妻板(24)と、
前記底妻板の棺外側で前記左右の底側板の間に仕切られる逃し空間(S)と、
前記妻板の棺内側に突出形成される入れ子部(15a)と、を備え、
前記段ボール棺が組み立てられる前は、前記左右の側板が棺内向きに倒れるのに伴って前記左右の留め板が前記逃し空間に収まる一方、前記段ボール棺が組み立てられるときには、前記底箱および前記留め板の棺外側に前記妻板が配置された状態で前記妻板の入れ子部が前記逃し空間に収まるように構成される。
【0011】
第1発明の構成によれば、側板の起立状態を保持する妻板が底箱および留め板の外側に固定手段により固定されるため、妻板がこれらと一体となってズレることなく安定した位置に保たれる。これにより、前後方向(棺長さ方向)に対する強度を十分に確保することができ、歪みやのガタ付きの少ない安定感のある仕上がりにすることができる。
【0012】
また、段ボール棺が組み立てられる前には、左右の側板が棺内向きに倒れるのに伴って左右の留め板が逃し空間に収まる。つまり、留め板が底箱に干渉することなく左右の側板が棺内向きに倒れる。これにより、段ボール棺をコンパクトに折り畳むことができ、保管や運搬の作業性を良好にすることができる。
さらに、段ボール棺が組み立てられるときには、底箱および留め板の棺外側に妻板が配置された状態で、逃し空間に妻板の入れ子部が収まる。この逃し空間で底箱の底妻板に妻板の入れ子部を当接させることにより、妻板と底箱との板面同士の接触面を大きくして妻板の固定強度を高めることができる。
【0013】
このように第1発明の組立式段ボール棺は、可倒式の側板の起立状態を妻板で安定的に保持した上で、左右の側板を棺内向きに倒せる構造とした。この結果、コンパクトに折り畳める組立式段ボール棺のメリットを活かしつつ、一般的な木棺に近い強度を実現することが可能になる。
【0014】
[第2発明]
第2発明の組立式段ボール棺は、第1発明の構成を有する棺であって、前記固定手段がネジ部材(17)である構成とした。
【0015】
このような構成によれば、段ボール棺を組み立てる際に底箱および留め板の棺外側に妻板が配置された状態で、これらの板面にネジ部材を打ち込むだけで固定作業を完了させることができる。固定手段として両面テープや接着剤を使用する場合には、固定部分にこれらを貼り付けるか、塗布するといった準備作業が必要になるが、ネジ部材を採用する場合にはこのような準備作業の必要がなく、組み立て作業の負担を大幅に軽減することができる。
【0016】
[第3発明]
第3発明の組立式段ボール棺は、第1または第2発明の構成を有する棺であって、前記固定手段に加えて、前記底箱および前記留め板の棺外側に妻板を仮止めする位置決め手段を設ける構成とした。
【0017】
このような構成によれば、底箱および留め板の棺外側に妻板を配置する際に、両者の位置合わせを簡単かつ正確に行うことができる。これにより、バラツキのない高品質の段ボール棺を効率よく製造することができる。
【0018】
[第1~3発明]
本発明において、段ボール棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)は、特に限定されることはない。
前記固定手段(第1発明)としては、棺の耐荷重性を十分に確保できるものであればよく、ネジ部材の他、両面テープ、接着剤、ステープラー等を採用することができる。
前記位置決め手段(第3発明)としては、固定する板同士がズレないように留めておくことができればよく、ダボとダボ穴を設けてこれらを嵌め合わせる構成や、各板に形成した凹凸を嵌め合わせる構成を採用することができる。
また、第1~3発明の段ボール棺において、底箱には強化段ボール材や木材等からなる補強板を適宜貼り合わせてもよい。このように補強板を貼り合わせることで棺の荷重性を向上させることができる。
なお、第1~3発明には必要に応じて本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態による組立式段ボール棺を示す斜視図である。
図2】同段ボール棺の妻部分を示す組立分解斜視図である。
図3図1の[3]-[3]線断面図である。
図4】同段ボール棺を折り畳む様子を示すもので、(A)は側板を倒す前の状態、(B)は側板を倒した後の状態を示す断面図である。
図5】同段ボール棺における固定手段および位置決め手段を説明するための正面図である。
図6図2の[6]-[6]線断面図である。
図7図6に示す[7]部分の拡大断面図である。
図8図5の[8]-[8]線断面図である。
図9】第2実施形態による組立式段ボール棺の妻部分を示す組立分解斜視図である。
図10】同段ボール棺を折り畳む様子を示すもので、(A)は側板を倒す前の状態、(B)は側板を倒した後の状態を示す断面図である。
図11】同段ボール棺の図6対応断面図である。
図12】従来例による組立式段ボール棺の妻部分を示す組立分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載の実施形態およびその変形例は、本発明を適用した形態の一例であり、発明の範囲がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、段ボール棺10は、棺本体10Aと蓋10Bとからなる。棺本体10Aの上方に蓋10Bが設けられ、蓋10Bの片寄りの位置に観音扉式の窓11が設けられる。この窓11の扉を開くことで棺の内部を覗けるようになっている。
段ボール棺10の寸法は、例えば前後の棺長さ(長辺)が170~200cm程度、左右の棺幅(短辺)が50~70cm程度、高さが40~50cm程度である。
【0022】
棺本体10Aおよび蓋10Bは、強化段ボール材により形成される(図3参照)。強化段ボール材としては、たとえば板厚10~15mm程度の二層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が採用される。この強化段ボール材は、図3のR部分拡大図に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfとの間に、2層の波板r1,r2が仕切り板r3を介して積層されてなるもので、優れた耐圧性・耐水性をもつ。本実施形態の強化段ボール材は二層構造であるが、その他の多層構造やハニカム構造の強化段ボール材であってもよい。
【0023】
棺本体10Aおよび蓋10Bを形成するための強化段ボール材には折り曲げ用の溝加工(V溝またはI溝)が施される。強化段ボール材に折曲げ用の溝加工を施す際には、これらの層のうち厚板Rf,Rbのいずれかを残して他の層を回転刃等を用いて切削する。
強化段ボール材を垂直に折り曲げる場合には、残した片方の厚板(ライナー)のみを折り曲げてV溝の溝面を互いに密着させる。V溝の溝角がほぼ90゜になるようにV溝加工を施せば、隣り合う板同士がほぼ垂直に折れ曲がる。
このように強化段ボール材をV溝で折り曲げることにより、厚板(ライナー)の折り曲げ部分がヒンジとなって、折り曲げた板同士の切れ目がV溝の反対側に隠れる。これにより、棺本体10Aの角部の寸法精度が向上し、外観の仕上がりを良好にすることができる。
また、強化段ボール材をI溝で折り曲げる場合には、厚板(ライナー)の折り曲げ部分がヒンジとなって隣り合う板同士が180゜折り返されることになる。
なお、折り曲げ用の溝加工としては、プレス機等で強化段ボール材を圧縮するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態においては、棺本体10Aの折り曲げ部分にV溝Mvが採用される他、後述する底箱12と側板13との連結部分(ヒンジ部分)にV溝Mvが採用される。また、蓋10Bの窓11にI溝Miが採用されている。
【0025】
段ボール棺10の表面には、必要に応じて布やフィルムなどの化粧シートが貼り付けられる。このような化粧仕上げ施すことで、段ボール棺10の質感を高めることができる。木目などの化粧柄がプリントされた壁紙を強化段ボール材の表面に貼り付け、これを加工して段ボール棺10を形成するようにしてもよい。
【0026】
図2および図4に示すように、棺本体10Aは、平面方向から見て矩形の底箱12の左右上方に可倒式の側板13,13を備えている。側板13,13の前後端には棺内向きに延びる留め板14が棺前後に向き合うように固定される。底箱12の前後には側板13,13の起立状態を保持する妻板15が設けられている。
【0027】
側板13,13の上部内側には長手方向に沿って補強枠Fが形成される。補強枠Fは、側板13,13の上端に連なる強化段ボール材を二本の平行なV溝で棺内側に180゜折り返して形成される。このように側板13,13を補強枠Fで補強することで、棺本体10Aの強度が向上し、さらには側板13,13の上端がフラットな面になって棺の外観が良好になる。
【0028】
留め板14の付け根からは補強枠Fの内側に向けて基礎片14aが延びている(図3参照)。基礎片14aは、留め板14の強化段ボール材をほぼ垂直に折り曲げることにより形成されるもので、その折り目が再展開しないように接着剤で固定される。側板13と補強枠Fとの間に基礎片14aが挟まれるように接着されることで(図3参照)、留め板14が側板13の前後端に強固に固定される。
補強枠Fの前後端には、留め板14を通すための切り欠きが設けられており、この切り欠きのカット面が留め板14の付け根部分に当たる。これにより、留め板14が棺内側にズレるのが抑えられている。
【0029】
底箱12および留め板14の棺外側には、これらに隣り合うように妻板15が固定される。これらの板面に棺内側からネジ部材17が打ち込まれる(図5および図6参照)。ネジ部材17としては、段ボール接合用のプラスチックネジが使用される。
底箱12および留め板14と、妻板15との固定部分には、これらを位置決めするためのダボ18とダボ穴19とが設けられる。
ネジ部材17、ダボ18およびダボ穴19は、妻板15の厚みの範囲に収まる長さになっているため、段ボール棺10の外側からは見えることはない。
【0030】
図4に示すように、側板13,13は、底箱12の左右上方にV溝Mvを介して連結される。このV溝Mvは、棺の内側に形成されており、棺の外側からは見えない位置にある。このV溝Mvに沿って左右の側板13,13を折り曲げると、棺内向きにほぼ90゜倒れる(図4(B)参照)。
【0031】
底箱12は、矩形の底板22と、その左右に立ち上げられる底側板23と、底板22の前後に立ち上げられる底妻板24とを備える(図2参照)。強化段ボール材からなる展開シートを箱状に折り曲げて接着することにより形成される。
底妻板24の位置は、底側板23の前後端よりも棺内側に後退した位置にあり、底妻板24の両側に底側板23の前後端が若干突き出る。このように底妻板24が棺内側にズレた位置に形成されることで、底妻板24の棺外側であって左右の底側板23の間に逃し空間Sが仕切られることになる。
【0032】
底妻板24の両端からは棺内側に向けて内張り片24aが延びている。内張り片24aは、底妻板24を形成する強化段ボール材をほぼ垂直に折り曲げることにより形成されるもので、その折り目が再展開しないように接着剤で固定される。底側板23の内側に内張り片24aが接着されることにより底妻板24が底側板23に強固に固定される。
【0033】
図8に示すように、妻板15は、強化段ボール材の展開シートを折り返して板状に形成されるもので、そのベース部分はシート2枚分の厚みを有している。妻板15の棺内側には、ベース部分とは別の段ボール紙片を貼り合わせてなる入れ子部15aが形成される。妻板15の厚みのうち、この入れ子部15aを含む部分はシート3枚分の厚みになる。
入れ子部15aは、妻板15の棺内側で前述の底妻板24に向き合う位置にある。入れ子部15aの左右幅は、逃し空間Sにほぼぴったり収まる長さになっている。
【0034】
次に、段ボール棺10の使用方法を説明する。
まず、段ボール棺10を使用する前は、妻板15を固定しない状態で左右の側板13,13を棺内向きに折り畳む。このとき、図4に示すように、左右の側板13,13をV溝Mvに沿ってほぼ90゜折り曲げて倒すと、これに伴って左右の留め板14が逃し空間Sに収まり、棺底に当たる。このような状態で、底箱12の空いたスペースに妻板15を入れ、折り畳んだ側板13,13の上に蓋10Bを載せて段ボール棺10をコンパクトにまとめる。
【0035】
段ボール棺10を組み立てるときは、蓋10Bと妻板15を取り外して左右の側板13,13を起立させると、これに伴って留め板14が逃し空間Sの上方で棺前後に向き合った位置に来る。そして、底箱12および留め板14の前後に妻板15を配置し、妻板15の入れ子部15aを逃し空間Sに収める。
【0036】
このような状態で棺内側からダボ穴19にダボ18を通し、妻板15を位置決めしつつ仮止めする。そして、底箱12(底妻板24)と留め板14の内側からネジ部材17を打ち込み、これらの板に妻板15を固定する。
本実施形態では、左右の留め板14にそれぞれ2個のネジ部材17と1個のダボ18、底箱12に3個のネジ部材17と2個のダボ18が適度な間隔を保って設けられる(図5参照)。これらのネジ部材17とダボ18の数や位置は、棺のサイズや強化段ボール材の厚みなどに応じて適宜変更しても構わない。
【0037】
このように組み立てた棺本体10Aに蓋10Bを載せることで棺本体10Aが完成する。完成した段ボール棺10は、通常はそのまま葬儀に使用されるが、使用しない場合は、ネジ部材17を取り外すことで、組立前の折り畳み状態に戻すこともできる。
ここで、本実施形態では、底箱12および留め板14の前後に妻板15を配置したとき、妻板15の入れ子部15aと底妻板24との間には僅かな隙間Dが生じる(図7参照)。また、妻板15と留め板14との間にも同様に隙間D(図示省略)が生じるように設定されている。
これらの板面にネジ部材17を打ち込む際には、これらの隙間D分だけ妻板15が棺内側に引っ張れることで側板13,13の前後端に妻板15が圧接され、これらの固定強度が高められている。
【0038】
このように第1実施形態の段ボール棺10によれば、側板13,13の起立状態を保持する妻板15が底箱12および留め板14の棺外側にネジ部材17により固定されるため、妻板15がこれらと一体となってズレることなく安定した位置に保たれる。これにより、段ボール棺10の前後方向に対する強度を十分に確保することができ、歪みやのガタ付きの少ない安定感のある仕上がりにすることができる。
【0039】
また、段ボール棺10を組み立てる前には、左右の側板13,13が棺内向きに倒れるのに伴って左右の留め板14が逃し空間Sに収まり、留め板14が底箱12に干渉することなく左右の側板13,13が棺内向きに倒れる。これにより、段ボール棺10をコンパクトに折り畳むことができ、保管や運搬の作業性を良好にすることができる。
さらに、段ボール棺10を組み立てるときには、底箱12および留め板14の棺外側に妻板15が配置された状態で、逃し空間Sに妻板15の入れ子部15aが収まる。逃し空間Sで底箱12の底妻板24に妻板15の入れ子部15aを当接させることで、妻板15と底箱12との各板面同士の接触面を大きくして妻板15の固定強度を高めることができる。
【0040】
また、段ボール棺10では、段ボール棺10を組み立てる際に底箱12および留め板14の棺外側に妻板15を配置した状態で、これらの板面にネジ部材17を打ち込むだけで固定作業を完了させることができ、組み立て作業を負担を大幅に軽減することができる。
【0041】
さらに、底箱12および留め板14に妻板15を固定する際に、ダボ18とダボ穴19によって両者の位置合わせを簡単かつ正確に行うことができる。これにより、バラツキのない高品質の段ボール棺10を効率よく製造することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の組立式段ボール棺20を図9図11に示す。第2実施形態は、側板13,13の前後に留め板14を折り曲げて固定したものである。その他の構成は実質的に第1実施形態と同様である。
【0043】
図9に示すように、棺本体10Aは、平面方向からみて矩形の底箱12の左右上方に可倒式の側板13,13を備えている。側板13,13の前後端には留め板14が棺内向きに折り曲げられており、棺前後に向き合うように固定される。底箱12の前後には側板13,13の起立状態を保持する妻板15が設けられている。
【0044】
留め板14は、側板13,13にV溝Mvを介して連結される。側板13,13の前後端で留め板14がほぼ90゜折れ曲がり、その折り曲げ部分が接着剤で固定されている。
【0045】
側板13,13の上端側には、棺内側の長手方向に補強枠Fが形成される。この補強枠Fは、側板13,13の上端に連なる強化段ボール材を二本の隣接する平行なV溝で棺内側に180゜折り返して形成される。側板13,13の内側面に補強枠Fが重なって接着される。
【0046】
底箱12の前後には角片26が設けられる。この角片26は、底側板23の先端部をほぼ垂直に折り曲げて形成される。底妻板24の棺外側であって左右の角片26,26(底側板23,23)の間に逃し空間Sが仕切られる。
【0047】
段ボール棺20を組み立てる前は、図10に示すように、側板13,13を棺内向きに倒すと、これに伴って留め板14,14が逃し空間に収まる。
段ボール棺20を組み立てる際には、底箱12および留め板14の棺外側に妻板15を固定すると、底箱12および留め板14に妻板15が支持されて前後方向のズレが抑えられる。
【0048】
第2実施形態の段ボール棺20によれば、第1実施形態の効果に加え、側板13および留め板14を単一の展開シートで一体的に作製することができる。これにより、強化段ボール材のカット作業の負担が少なくなり、段ボール棺の製造コストを抑えることができる。
【0049】
[変形例]
以上、第1および第2実施形態による組立式段ボール棺を説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
前記実施形態では、平板形状の蓋10Bを採用しているが、これを箱状の蓋にしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、妻板15の固定手段として、ネジ部材17を用いているが、これに代えて、両面テープや接着剤、ステープラー等を用いることができる。
前記実施形態では、棺内側にネジ部材17およびダボ18が隠れるようにしているが、これらを棺外側から打ち込むことで棺表面に見せるようにしてもよい。ダボ18およびダボ穴19は省略することもできる。
【0051】
さらに、前記実施形態の段ボール棺を異なる材料で補強してもよい。たとえば底箱12に合板や集成材を重ねて貼り合わせると、棺の強度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
10・・段ボール棺(組立式段ボール棺)
10A・・棺本体 10B・・蓋 11・・窓 12・・底箱
13・・側板 14・・留め板 14a・・基礎片
15・・妻板 15a・・入れ子部15a
17・・ネジ部材 18・・ダボ 19・・ダボ穴
22・・底板 23・・底側板 24・・底妻板 24a・・角片
Mi・・I溝 Mv・・V溝
D・・隙間 S・・逃し空間
図1
図2
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図5
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図10
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図12