(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】光学部材、光学部材の製造方法及び光情報伝達装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20230612BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20230612BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230612BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20230612BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B24B37/08
G02B1/04
G02B5/08 C
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2021501822
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004094
(87)【国際公開番号】W WO2020170801
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2019026906
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300031584
【氏名又は名称】アヒコファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安彦 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 大祐
(72)【発明者】
【氏名】梅田 真一
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-343548(JP,A)
【文献】特開2018-060155(JP,A)
【文献】特開平11-316302(JP,A)
【文献】米国特許第04232075(US,A)
【文献】特許第6002528(JP,B2)
【文献】特開2013-010172(JP,A)
【文献】特開2013-020688(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208270(WO,A1)
【文献】特表2019-507391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
B24B 37/08
G02B 1/04
G02B 5/08
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材を製造する方法であって、
有機高分子を含む成形部材を準備する工程と、
前記成形部材を研磨する際に前記成形部材の移動を規制する移動規制部に前記成形部材を配置した後、研磨パッドで前記成形部材を研磨する第1研磨工程と、
前記第1研磨工程を行った後の前記成形部材をナップ層が設けられたスエードタイプの研磨パッド及びアルミナの研磨材を含む研削液で研磨する第2研磨工程と、を含み、
前記光学部材は、前記有機高分子を含み、面積が1mm
2
以上であり、面積1mm
2
の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計で測定したとき、前記平坦度が80μm以下である面Aを含み、面積4200μm
2
の領域を非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、前記面Aの撮像に高さ50nm以下の複数の線状部が観察され、前記線状部は研磨痕であり、
前記第1研磨工程では、粒度が3μm以上の研磨材を用いて前記成形部材を研磨し、前記第1研磨工程及び前記第2研磨工程により、前記成形部材から前記光学部材を得る光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記面Aの前記平坦度が50μm以下である請求項1に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項3】
前記面Aの反対側に位置し、面積が1mm
2以上である面Bを含み、
前記面A及び前記面Bについて、面積1mm
2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計でそれぞれ測定したとき、前記面Aの平坦度と前記面Bの平坦度との差の絶対値が5μm以下である請求項1又は請求項2に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項4】
光学部材を製造する方法であって、
有機高分子を含む成形部材を準備する工程と、
前記成形部材を研磨する際に前記成形部材の移動を規制する移動規制部に前記成形部材を配置した後、研磨パッドで前記成形部材を研磨する第1研磨工程と、
前記第1研磨工程を行った後の前記成形部材をナップ層が設けられたスエードタイプの研磨パッド及びアルミナの研磨材を含む研削液で研磨する第2研磨工程と、を含み、
前記光学部材は、前記有機高分子を含み、面積が1mm
2
以上である面Aと、前記面Aの反対側に位置し、面積が1mm
2
以上である面Bを含み、前記面A及び前記面Bについて、面積1mm
2
の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計でそれぞれ測定したとき、前記面Aの平坦度と前記面Bの平坦度との差の絶対値が5μm以下であり、面積4200μm
2
の領域を非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、前記面Aの撮像に高さ50nm以下の複数の線状部が観察され、前記線状部は研磨痕であり、前記面Aの前記平坦度は80μm以下であり、前記面Bの前記平坦度は80μm以下であり、
前記第1研磨工程では、粒度が3μm以上の研磨材を用いて前記成形部材を研磨し、前記第1研磨工程及び前記第2研磨工程により、前記成形部材から前記光学部材を得る光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記面Aと前記面Bとの距離の平均が10mm以下である請求項3又は請求項4に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項6】
面積4200μm
2の領域の算術平均粗さRaを非接触光学式表面粗さ計で測定したときの前記面Aの算術平均粗さRaが10nm以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項7】
屈折率が1.58以上である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項8】
23℃でのビッカース硬さが、1GPa以下である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項9】
23℃での引張弾性率が、1.0×10
3MPa~5.0×10
3MPaである請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項10】
前記有機高分子は、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレアウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂及びアリルジグリシジルカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項11】
ウェアラブルデバイス用である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の光学部材
の製造方法。
【請求項12】
前記研磨パッドで前記成形部材を研磨する際に前記成形部材が前記移動規制部に対して相対移動可能である請求項
1~請求項11のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
【請求項13】
前記第1研磨工程では、前記移動規制部にクリアランスが1mm以上となるように前記成形部材を配置する請求項
1~請求項12のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法により光学部材を製造する工程と、
前記光学部材を直接積層させる、あるいは、前記光学部材を接着剤層を介して積層させる工程と、
を含み、
光照射部と、
前記光学部材を複数備え、前記光学部材の主面が略並行になるように複数の前記光学部材が配置された導光路と、
を備える、光情報伝達装置
を製造する光情報伝達装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材、光学部材の製造方法及び光情報伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電子デバイス用ガラス基板の平坦度、表面欠陥等に対する要求が厳しくなっており、例えば、平坦度が高く、かつ、微小欠陥(凹状欠陥、凸状欠陥)が少ないマスクブランクス用ガラス基板等の電子デバイス用ガラス基板が求められている。このような平坦度が高く、かつ、微小欠陥(凹状欠陥、凸状欠陥)が少ないマスクブランクス用ガラス基板の製造方法として、研磨パッドが貼り付けられ上下に対向して設けられた上定盤と下定盤との間に、複数のガラス基板を挟持し、該ガラス基板に前記上定盤側より研磨液を供給しながら、該ガラス基板の両主表面を両面研磨する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
[特許文献1] 特許第6002528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、光学部材は高精度な光伝達が可能であることが望まれており、研磨などによる製造のしやすさからガラス等の無機材料が用いられてきた。しかし、近年、例えばウェアラブル用の光学部材は軽量化が求められており、無機材料を用いて作製された光学部材を薄膜化するなどして軽量化が図られてきた。
【0004】
光学部材の材料を有機材料に変更することで更なる軽量化が期待できるが、有機材料を光学部材として加工する際に、光学部材が変形しやすい、傷つきやすい等の問題があることが技術常識である。そのため、有機材料を用いて作製された光学部材は、高精度な光情報の伝達が困難であり、光学部材に有機材料を用いるという試みは、極めて少ない。
【0005】
本開示の課題は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量であり、かつ、高精度な光情報の伝達が可能な光学部材及びその製造方法、並びに上記光学部材を備える光情報伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様に関係する。
【0007】
<1> 有機高分子を含み、
面積が1mm2以上であり、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計で測定したとき、前記平坦度が80μm以下である面Aを含む光学部材。
<2> 前記面Aの前記平坦度が50μm以下である<1>に記載の光学部材。
<3> 前記面Aの反対側に位置し、面積が1mm2以上である面Bを含み、
前記面A及び前記面Bについて、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計でそれぞれ測定したとき、前記面Aの平坦度と前記面Bの平坦度との差の絶対値が5μm以下である<1>又は<2>に記載の光学部材。
<4> 有機高分子を含み、
面積が1mm2以上である面Aと、前記面Aの反対側に位置し、面積が1mm2以上である面Bを含み、
前記面A及び前記面Bについて、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計でそれぞれ測定したとき、前記面Aの平坦度と前記面Bの平坦度との差の絶対値が5μm以下である光学部材。
<5> 前記面Aと前記面Bとの距離の平均が10mm以下である<3>又は<4>に記載の光学部材。
<6> 面積4200μm2の領域の算術平均粗さRaを非接触光学式表面粗さ計で測定したときの前記面Aの算術平均粗さRaが10nm以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学部材。
<7> 屈折率が1.58以上である<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学部材。
<8> 面積4200μm2の領域を非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、前記面Aの撮像に高さ50nm以下の複数の線状部が観察される<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学部材。
<9> 23℃でのビッカース硬さが、1GPa以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学部材。
<10> 23℃での引張弾性率が、1.0×103MPa~5.0×103MPaである<1>~<9>のいずれか1つに記載の光学部材。
<11> 前記有機高分子は、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレアウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂及びアリルジグリシジルカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む<1>~<10>のいずれか1つに記載の光学部材。
<12> ウェアラブルデバイス用である<1>~<11>のいずれか1つに記載の光学部材。
【0008】
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の光学部材を製造する方法であって、
有機高分子を含む成形部材を準備する工程と、
前記成形部材を研磨する際に前記成形部材の移動を規制する移動規制部に前記成形部材を配置した後、研磨パッドで前記成形部材を研磨する第1研磨工程を含み、
前記第1研磨工程では、粒度が3μm以上の研磨材を用いて前記成形部材を研磨する光学部材の製造方法。
<14> 前記研磨パッドで前記成形部材を研磨する際に前記成形部材が前記移動規制部に対して相対移動可能である<13>に記載の光学部材の製造方法。
<15> 前記第1研磨工程では、前記移動規制部にクリアランスが1mm以上となるように前記成形部材を配置する<13>又は<14>に記載の光学部材の製造方法。
<16> 前記第1研磨工程を行った後の前記成形部材を研磨パッド及び研磨材で研磨する第2研磨工程を更に含む<13>~<15>のいずれか1つに記載の光学部材の製造方法。
【0009】
<17> 光照射部と、
<1>~<12>のいずれか1つに記載の光学部材を複数備え、前記光学部材の主面が略並行になるように複数の前記光学部材が配置された導光路と、
を備える、光情報伝達装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、軽量であり、かつ、高精度な光情報の伝達が可能な光学部材及びその製造方法、並びに上記光学部材を備える光情報伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】遊星歯車方式での太陽歯車、内歯歯車及び移動規制部の歯合関係を示す斜視図である。
【
図2】本開示の光情報伝達装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】非接触光学式表面粗さ計にて撮像した3次元データである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示について、好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を限定するものではない。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「光学部材」は、少なくとも一層の有機高分子を含む部材からなるものを指す。なお、本開示の光学部材は、有機高分子を含む部材が複数積層された積層体の形態としてもよく、他の部材が積層された積層体の形態としてもよい。
【0014】
<光学部材>
本開示の光学部材は、有機高分子を含み、面積が1mm2以上であり、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計で測定したとき、前記平坦度が80μm以下である面Aを含む。本開示の光学部材は、有機高分子を含んで構成されることにより軽量であり、更に、平坦度が80μm以下である面Aを含むことにより、精度よく光情報の伝達が可能である。
【0015】
本開示の光学部材における面Aの位置は特に限定されず、当該光学部材の露出した面(主面を含む)の少なくとも一部に当該面Aが位置している構成が、面Aの高い平坦度により光情報を伝達しやすいため好ましい。本開示の光学部材の露出した面の一部に面Aが位置している場合は、前記面Aが伝達する光情報を受領しやすい場所に位置していることが好ましい。具体的には、光学部材の主面、更には当該主面の重心を含む領域が好ましい。
【0016】
非接触光学式平坦度計で測定する領域は、面Aにおける面積が1mm2である領域であれば特に限定されない。そのため、本開示の光学部材における面Aは、平坦度が80μm以下となる面積1mm2の領域を有していればよく、面Aにおけるその他の領域は平坦度が80μm以下であってもよく、80μm超であってもよい。なお、面Aの全体にて平坦度が80μm以下であってもよく、面Aの全面積の10%以上、好ましくは面Aの全面積の50%以上にて平坦度が80μm以下であってもよい。
【0017】
非接触光学式平坦度計で測定する領域は、面Aの重心を中心とする面積が1mm2である領域であってもよい。
【0018】
面Aの平坦度は、80μm以下であればよく、光情報の伝達の点から、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
面Aの平坦度の下限は、0μm以上であれば特に限定されず、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。
【0019】
面Aの面積は、1mm2以上であればよく、光学部材の用途に応じて適宜定められる。例えば、面Aの面積は、10mm2~20000mm2であってもよく、100mm2~1000mm2であってもよい。
【0020】
本開示の光学部材は、面Aの反対側に位置し、面積が1mm2以上である面Bを含んでいてもよい。
【0021】
面Bの面積の好ましい範囲は、前述の面Aの面積の好ましい範囲と同様である。また、面A及び面Bの面積は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
面Bについて、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計で測定したとき、平坦度は、80μm以下であってもよい。なお、面Bの平坦度の好ましい範囲は、前述の面Aの平坦度の好ましい範囲と同様である。
【0023】
面A及び面Bについて、面積1mm2の領域の平坦度を非接触光学式平坦度計でそれぞれ測定したとき、面Aの平坦度と面Bの平坦度との差の絶対値(以下、「並行度」ともいう。)が5μm以下であることが好ましい。これにより、本開示の光学部材は、より精度よく光情報の伝達が可能であり、例えば、本開示の光学部材を並行度が5μm以下となる領域が接触するように複数積層させて積層構造体としたときに、積層構造体にて精度よく光情報の伝達が可能となる。
【0024】
前述の並行度は、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。また、並行度の下限は、0μm以上であれば特に限定されず、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。
【0025】
面Aと面Bとの距離の平均は、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。また、面Aと面Bとの距離の平均は、2mm以上であってもよく、4mm以上であってもよい。
本開示において、「面Aと面Bとの距離の平均」は、面Aと面Bとの距離の最大値及び面Aと面Bとの距離の最小値の合計を2で割った値を意味する。
【0026】
面積4200μm2の領域の算術平均粗さRaを非接触光学式表面粗さ計で測定したときの面Aの算術平均粗さRaは、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。また、前述の面Aの算術平均粗さRaは、0.1nm超であってもよい。なお、本開示の算術平均粗さRaは、JIS B0601(2013)に基づく。
【0027】
非接触光学式表面粗さ計で測定する領域は、面Aにおける面積が4200μm2である領域であれば特に限定されない。そのため、本開示の光学部材における面Aは、算術平均粗さRaが10nm以下となる面積4200μm2の領域を有していればよく、面Aにおけるその他の領域は算術平均粗さRaが10nm以下であってもよく、10nm超であってもよい。
【0028】
本開示の光学部材は、面積4200μm
2の領域を非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、面Aの撮像に高さ50nm以下の複数の線状部が観察されることが好ましい。これにより、例えば、複数の本開示の光学部材を線状部が観察された領域が接触するように積層した際に、積層構造を保持しやすくなる。前述の複数の線状部は、研磨痕であってもよく、後述する製造方法にて、成形部材を研磨することにより形成された研磨痕であってもよい。一例として、本開示の光学部材について、非接触光学式表面粗さ計にて撮像した3次元データを
図3に示し、本開示の光学部材における研磨痕の画像データを
図4に示す。後述する製造方法にて、成形部材を研磨することにより
図4に示すような研磨痕が形成されやすい。なお、本開示の光学部材に形成される研磨痕は、
図4の形状、大きさ等に限定されない。
なお、「線状部の高さ」は、非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、この線状部におけるもっとも高い位置と、最も低い位置との差を意味する。
【0029】
光学部材の積層構造の保持の点から、面積4200μm2の領域を非接触光学式表面粗さ計で撮像したとき、面Aの撮像に前述の線状部が5個以上観察されることが好ましい。
【0030】
複数の線状部の少なくとも一部は、平行に配置されていてもよく、交差してもよい。特に複数の線状部の少なくとも一部が交差していることにより、面Aと他の層(例えば、接着層、粘着層)とを積層した場合、面Aと他の部材とを積層した場合等に、面Aと他の層、他の部材等との位置的なずれを抑制しやすい。
【0031】
非接触光学式表面粗さ計で測定及び観察する領域は、面Aの重心を中心とする面積が4200μm2である領域であってもよい。線状部を有することで、面Aと他の層(例えば、接着層、粘着層)を積層した場合に当該他の層との密着性が高まることで、面Aと他の層とが位置的にずれにくくなる。また面Aと接触するように他の部材を設置した場合に、面Aと当該他の部材が位置的にずれにくくなる。
【0032】
本開示の光学部材の23℃でのビッカース硬さは、1GPa以下であることが好ましい。すなわち、比較的柔らかい光学部材が好ましい。光学部材の23℃でのビッカース硬さは、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定すればよい。
【0033】
本開示の光学部材の23℃での引張弾性率は、1.0×103MPa~5.0×103MPaであることが好ましい。光学部材の23℃での引張弾性率は、JIS K 7161-1(2014)に準拠して測定すればよい。
【0034】
例えば、後述する本開示の光学部材の製造方法により、前述の23℃でのビッカース硬さ及び23℃での引張弾性率の少なくとも一方を満たし、面Aの平坦性に優れる光学部材が得られる。
【0035】
光学部材の全光線透過率は、10%以上であってもよい。光学部材の全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に準拠して測定すればよい。
【0036】
光学部材のヘイズ(全ヘイズ)は、10%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。光学部材のヘイズは、JIS-K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC-HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値である。
【0037】
光学部材の形状は、特に限定されず、板状、円柱状、直方体状等であってもよい。光学部材を加工して形状を調整する場合、光学部材の面Aを形成した後に光学部材を加工すると当該面Aの並行度、平坦度等が損なわれやすいため、面Aを形成する前に光学部材を加工することが好ましい。通常、光学部材の形状が板状、直方体状などの角を有する形状の場合、面Aを形成する際に、当該角に面Aを形成する際の力が集中し、当該角周辺の並行度又は平坦度が損なわれやすい。一方、後述する本開示の光学部材の製造方法により、面Aを形成する際に、当該角に過剰に力をかけることなく面Aを形成することができ、光学部材の並行度、平坦度等の値を低くすることができる。
【0038】
光学部材の屈折率は、1.58以上であることが好ましい。光学部材の屈折率は、1.80以下であってもよく、1.75以下であってもよい。光学部材の屈折率は、JIS K7142(2014)に準拠して測定すればよい。
【0039】
光学部材に含まれる有機高分子としては、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレアウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂及びアリルジグリシジルカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。中でも、有機高分子としては、屈折率の点から、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂及びポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリ(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂がより好ましい。
【0040】
ポリ(チオ)ウレタン樹脂としては、チオウレタン樹脂が好ましく、より具体的には、ジイソシアネート化合物と、チオール化合物とを重合させたチオウレタン樹脂が好ましい。
【0041】
ジイソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロへキシル)メタン及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
チオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。チオール化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0043】
エピスルフィド樹脂としては、樹脂の出発原料の主成分又は副成分としてエピスルフィド基を有する化合物を使用しているものであればよく、エピスルフィド基を有する化合物としては、例えば、国際公開第2017/159839号、特開2018-154690号公報に記載のエピスルフィド化合物、特開2002-194083号公報に記載のチオエポキシ化合物、特開2019-1785号公報に記載の新規テトラチアスピロ化合物等が挙げられる。
【0044】
光学部材に含まれる有機高分子の含有量は、軽量化の観点から、光学部材全量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、光学部材に含まれる有機高分子の含有量は、光学部材全量に対して100質量%であってもよく、99質量%以下であってもよい。
【0045】
光学部材には、有機高分子以外にその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、劣化防止剤、色素(フォトクロミック材料など)、離型剤、染料、顔料、重合触媒等が挙げられる。
【0046】
本開示の光学部材は、特に限定されず、例えば、表示装置、撮像装置、光学デバイス等に用いることができる。光学部材は、より具体的には、ウェアラブルデバイスに用いることができ、より具体的には、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)等を実現したウェアラブルディスプレイ等に用いることができる。
【0047】
<光学部材の製造方法>
本開示の光学部材の製造方法は、有機高分子を含む成形部材を準備する工程(準備工程)と、前記成形部材を研磨する際に前記成形部材の移動を規制する移動規制部に前記成形部材を配置した後、研磨パッドで前記成形部材を研磨する第1研磨工程を含み、前記第1研磨工程では、粒度が3μm以上の研磨材を用いて前記成形部材を研磨する。これにより、前述の本開示の光学部材を得ることができる。
【0048】
本開示の製造方法は、有機高分子を含む成形部材を準備する工程を含む。成形部材は、研磨処理前の光学部材であり、成形部材の形状は、製造する光学部材の形状に応じて適宜選択すればよい。例えば、有機高分子の原料となるモノマーを含む組成物を成形型に注入し、次いで組成物に紫外線等を照射してモノマーを重合させることにより、成形部材を形成してもよい。
【0049】
(第1研磨工程)
本開示の製造方法は、成形部材を研磨する際に成形部材の移動を規制する移動規制部に成形部材を配置した後、研磨パッドで成形部材を研磨する第1研磨工程を含む。第1研磨工程では、成形部材について、光学部材における面Aとなる一面が少なくとも研磨され、好ましくは、光学部材における面A及び面Bとなる両面がそれぞれ研磨される。成形部材の一面を研磨する場合には、上下の定盤の一方に研磨パッドが設置された片面研磨機を用いればよく、成形部材の両面を研磨する場合には、上下の定盤に研磨パッドがそれぞれ設置された両面研磨機を用いればよい。
【0050】
移動規制部は、研磨パッドで成形部材を研磨する際に成形部材が配置され、成形部材の移動を規制する構成を有していればよい。なお、移動規制部は、研磨パッドで成形部材を研磨する際に、成形部材が移動規制部に対して相対移動しないように成形部材を保持する構成であってもよく、成形部材が移動規制部に対して相対移動可能なように成形部材が配置される構成であってもよい。後者の構成では、面Aの平坦性が高く、かつ面A及び面Bの並行性に優れる光学部材が得られやすい傾向にある。
【0051】
第1研磨工程では、公知の研磨液、研削液等を供給しながら成形部材を研磨してもよい。
【0052】
第1研磨工程では、成形部材の研磨性の点から、粒度が5μm~10μmの研磨材を用いて成形部材を研磨することが好ましく、粒度が7μm~10μmの研磨材を用いて成形部材を研磨することがより好ましい。なお、前述の粒度が3μm以上の研磨材を用いて成形部材を研磨する方法としては、粒度が3μm以上のダイヤモンド等の研磨材(固定砥粒)が埋め込まれた研磨パッド(パッド目が3μm以上)を用いて成形部材を研磨する方法、粒度が3μm以上のダイヤモンド等の研磨材(遊離砥粒)及び研磨パッドを用いて成形部材を研磨する方法等が挙げられる。通常、無機材料を含む成形部材の表面を平滑にするためには研磨材の粒度は小さい方が好ましい。一方、本発明者らは、無機材料に比べて柔らかい有機高分子を含む成形部材を研磨する場合には通常と異なり、粒度が一定以上の研磨材を用いることで並行度、平坦度等の値を低くできることを見出した。
【0053】
第1研磨工程では、移動規制部にクリアランスが1mm以上となるように成形部材を配置することが好ましい。これにより、面Aの平坦性がより高く、かつ面A及び面Bの並行性により優れる光学部材が得られやすい傾向にある。
【0054】
第1研磨工程では、前述のクリアランスは3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが更に好ましい。また、前述のクリアランスは30mm以下であってもよい。
【0055】
本開示において、「クリアランス」とは、移動規制部の側面が多角形状である場合には側面間の距離の最大値を長さAとし、移動規制部の側面が円状である場合には直径を長さAとし、かつ、成形部材の側面が多角形状である場合には側面間の距離の最大値を長さBとし、成形部材の側面が円状である場合には直径を長さBとしたとき、(A-B)/2を意味する。クリアランスを設けることで有機高分子を含む成形部材を研磨する際に有機高分子を含む成形部材の周縁部にかかる力が過剰にならず並行度、平坦度等の値を低くできる。更に、クリアランスを設けることで面Aの形成時に移動規制部と当該成形部材の周縁部が衝突しやすくなるが、有機高分子を含む成形部材の柔軟性により、移動規制部と当該成形部材の周縁部が面Aの形成時に衝突しても変形しにくいと推測される。一方、クリアランスを設けてガラス等の硬い無機材料を主に含む無機系成形部材を研磨する際、移動規制部から当該無機系成形部材にかかる力は当該無機系成形部材の全体に伝播しやすく、並行度、平坦度等の値を低くできると考えられるが、移動規制部と無機系成形部材の周縁部とが衝突し、当該無機系成形部材が破損しやすくなると予想される。
【0056】
前記第1研磨工程では、遊星研磨により成形部材を研磨してもよい。遊星研磨とは、成形部材が配置された移動規制部を公転及び自転させながら成形部材を研磨することを指す。
【0057】
成形部材を遊星研磨する場合、遊星歯車方式の両面研磨機を用いることが好ましい。
図1に、遊星歯車方式での太陽歯車、内歯歯車及び移動規制部の歯合関係の斜視図を示す。
図1に示すように、太陽歯車30とその外方に同心円状に配置される内歯歯車40と、太陽歯車30及び内歯歯車40に噛み合い、太陽歯車30及び内歯歯車40の回転に応じて公転及び自転する移動規制部50とが配置されており、この移動規制部50に成形部材Wが複数枚配置されている。更に、遊星歯車方式の両面研磨機の上下の定盤に設置された研磨パッドにより、移動規制部50に配置された成形部材Wの両面が研磨される。
【0058】
両面研磨機を用いる場合、上部の研磨パッドの回転速度は、5rpm~30rpmであることが好ましく、7rpm~20rpmであることがより好ましい。下部の研磨パッドの回転速度は、20rpm~50rpmであることが好ましく、25rpm~40rpmであることがより好ましい。上部の研磨パッド及び下部の研磨パッドの回転方向は、同じであってもよく、反対であってもよい。
【0059】
また、成形部材が配置された移動規制部の公転速度は、5rpm~30rpmであることが好ましく、7rpm~20rpmであることがより好ましい。移動規制部の公転方向は、下部の研磨パッドと同じであってもよく、反対であってもよい。
【0060】
また、成形部材が配置された移動規制部の自転速度は、2rpm~50rpmであることが好ましく、5rpm~20rpmであることがより好ましい。
【0061】
(第2研磨工程)
本開示の光学部材の製造方法は、第1研磨工程を行った後の前記成形部材を研磨パッド及び研磨材で研磨する第2研磨工程を更に含んでいることが好ましい。第2研磨工程では、第1研磨工程とは異なる研磨パッド、例えば、基材上にウレタン樹脂、エステル樹脂等の樹脂で形成されたナップ層が設けられたスエードタイプの研磨パッド等を用いてもよい。
【0062】
第2研磨工程では、アルミナ等の研磨材を含む公知の研磨液、研削液等を供給しながら成形部材を研磨してもよい。
【0063】
<光情報伝達装置>
本開示の光情報伝達装置は、光照射部と、前述の本開示の光学部材を複数備え、前記光学部材の主面が略並行になるように複数の前記光学部材が配置された導光路と、を備える。この光情報伝達装置は、前述の光学部材を複数備えるため、軽量であり、かつ、高精度な光情報の伝達が可能である。
【0064】
本開示の光情報伝達装置では、前述の本開示の光学部材が直接積層されていてもよく、接着剤層を介して積層されていてもよい。接着剤層としては、例えば、光学部材に有機高分子の原料となるモノマーを含む組成物を付与して組成物層を形成し、形成された組成物層を2つの光学部材で挟み、組成物層に紫外線等を照射してモノマーを重合させて形成してもよい。
【0065】
本開示の光情報伝達装置の一例を
図2に示す。光情報伝達装置10は、画像表示部1
と、複数の光学部材2が配置された導光路と、を備える。画像表示部1から発生した光は、導光路の光学部材2にて反射され、複数の光学部材2にて反射されて広がった光が目に照射されることにより、画像表示部1に表示された画像が光情報伝達装置10を装着した使用者に認識される。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実験例1~4]
まず、以下の材質からなり、直径80mm×高さ1.7mmの円板形状である成形部材を準備した。なお、成形部材のビッカース硬さは228MPaであり、23℃での成形部材の引張弾性率は3.8×103MPaであった。
(材質)
MR10(チオウレタン樹脂、屈折率1.67、三井化学株式会社)
【0068】
<光学部材の製造>
準備した成形部材を、研磨装置(9B両面ラップ機)の両面が開口した固定器具(移動規制部に相当)に、2つの円形面が研磨される面となるように配置した。固定器具の壁面と成形部材との間のクリアランスを20mmとした。そして、以下に示す研磨パッド及び研削液を使用し、以下の研磨条件で第1研磨工程を行った。
(研磨パッド(上部パッド及び下部パッド))
ダイヤモンドパッド(パッド目9μm、#2000相当)
(研削液)
研削液(pH9.3)
(第1研磨工程の研磨条件)
研削液を以下の条件で投入し、上部パッド及び下部パッドを、下記条件にて回転させ、かつ、成形部材が配置された固定器具を以下の条件で自転及び公転させることにより、成形部材を研磨(遊星研磨)した。
研削液の投入量・・・3.8L/分
パッド圧力・・・面圧80g
上部パッドの回転速度・・・10rpm(下部パッドとは逆方向に回転)
下部パッドの回転速度・・・30rpm
固定器具の自転速度・・・5rpm
固定器具の公転速度・・・10rpm(下部パッドと同じ方向に回転)
研磨量・・・840μm
【0069】
前述の第1研磨工程の後、以下に示す研磨パッド及び研削液を使用し、以下の研磨条件で第2研磨工程を行った。なお、固定器具の壁面と成形部材との間のクリアランスは20mmであった。
(研磨パッド(上部パッド及び下部パッド))
スエードパッド (厚み0.95mm、圧縮率3.5%)
ナップ層(NAP長570μm、圧縮弾性率60%、開口径25μm)
(研削液)
POLIPLA608S(株式会社フジミインコーポレーテッド、高純度アルミナ、平均粒子径1.3μm、pH3.4)
(第2研磨工程の研磨条件)
研削液を以下の条件で投入し、上部パッド及び下部パッドを、下記条件にて回転させ、かつ、成形部材が配置された固定器具を以下の条件で自転及び公転させることにより、成形部材を研磨(遊星研磨)した。
研削液の投入量・・・14L/分
パッド圧力・・・面圧120g
上部パッドの回転速度・・・10rpm
下部パッドの回転速度・・・30rpm
固定器具の自転速度・・・5rpm
固定器具の公転速度・・・10rpm
研磨量・・・49μm
【0070】
以上に示す第1研磨工程及び第2研磨工程により、直径80mm×高さ0.81mmの円板形状である光学部材を得た。
【0071】
[実験例5~7]
まず、以下の材質からなり、直径80mm×高さ2.0mmの円板形状である成形部材を準備した。なお、成形部材のビッカース硬さは205MPaであり、23℃での成形部材の引張弾性率は3.1×103MPaであった。
(材質)
MR8(チオウレタン樹脂、屈折率1.6、三井化学株式会社)
【0072】
固定器具の壁面と成形部材との間のクリアランスを20mmから0.5mmに変更し、かつ、パッド圧力を面圧80gから100gに変更した以外は、実験例1~4と同様にして第1研磨工程を行った。第1研磨工程での研磨量は1170μmであった。
更に、固定器具の壁面と成形部材との間のクリアランスを20mmから0.5mmに変更し、かつ、上部パッドの回転速度を10rpmから5rpmに変更し、下部パッドの回転速度を30rpmから15rpmに変更し、固定器具の自転速度を5rpmから2rpmに変更し、固定器具の公転速度を10rpmから5rpmに変更した以外は実験例1~4と同様にして第2研磨工程を行った。第2研磨工程での研磨量は22μmであった。
【0073】
以上に示す第1研磨工程及び第2研磨工程により、直径80mm×高さ0.808mmの円板形状である光学部材を得た。
【0074】
(実験例8)
実験例1~4にてダイヤモンドパッド(パッド目9μm、#2000相当)をダイヤモンドタイル(パッド目2μm、#6000相当)に変更した以外は実験例1~4と同様にして第1研磨工程を行った。しかしながら、実験例8では成形部材の研磨が進まなかった。
【0075】
(実験例9)
実験例5~7にてダイヤモンドパッド(パッド目9μm、#2000相当)をダイヤモンドタイル(パッド目2μm、#6000相当)に変更した以外は実験例5~7と同様にして第1研磨工程を行った。しかしながら、実験例9では成形部材の研磨が進まなかった。
【0076】
(平坦度の測定及び平坦度の差の絶対値の算出)
平坦度測定機(トロペル社製、FlatMaster-Industrial装置)を用いて、実験例1~7の光学部材の2つの円形面について、重心を中心とする面積1mm2の領域の平坦度を測定した。更に、測定した2つの円形面の平坦度の差の絶対値を算出した。
結果を表1に示す。
【0077】
(算術平均粗さの測定)
非接触光学式表面粗さ計である光学式表面性状測定機(Zygo社製、New View 7300装置)を用いて、実験例1~7の光学部材の2つの円形面について、重心を中心として70μm×60μmの領域の算術平均粗さRaを測定した。
結果を表2に示す。
【0078】
(研磨痕の確認)
光学式表面性状測定機(Zygo社製、New View 7300装置)を用いて、実験例1~7の光学部材の2つの円形面について、重心を中心として70μm×60μmの領域を撮像したところ、2つの円形面の撮像に高さ50nm以下の複数の線状部が観察された。これら線状部は、研磨痕であることが推測される。
【0079】
【0080】
【0081】
表1に示すように、実験例1~4では、表面及び裏面の平坦度が小さく、かつ、平坦度の差の絶対値も小さい光学部材が得られた。
実験例5及び6では、表面及び裏面の平坦度が小さい光学部材が得られ、実験例7では平坦度の差の絶対値が小さい光学部材が得られた。
【0082】
2019年2月18日に出願された日本国特許出願2019-026906号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。