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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】含フッ素ピラーアレーン
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/225 20060101AFI20230612BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20230612BHJP
   C07C 271/44 20060101ALI20230612BHJP
   C07C 43/21 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C07C43/225 C CSP
C09K3/18 103
C07C271/44
C07C43/21
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022097536
(22)【出願日】2022-06-16
(65)【公開番号】P2023001080
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2021101149
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】生越 友樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 克知
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】小森 政二
(72)【発明者】
【氏名】青山 博一
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221893(JP,A)
【文献】特開2018-039758(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108659215(CN,A)
【文献】大山直樹 外4名,アミド基の導入による液晶性ピラー[n]アレーンの創成,日本化学会春季年会講演予稿集,Vol.101st ,2021年03月19日,A09-1vn-08
【文献】生越友樹 外2名,柱型環状分子ピラー[n]アレーンを基にしたソフトクリスタルの創成,日本画像学会誌,2020年,Vol.59 No.3,301-307
【文献】生越友樹 外3名,構造性液体Pillar[6]areneのゲスト蒸気による状態変化,高分子学会予稿集,Vol.67 No.2,2018年,2F15
【文献】Computational and Theoretical Chemistry,2019年,1161,1-9
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2019年,141,785-789
【文献】Chem. Sci.,2022年03月16日,13,4082-4087
【文献】Org.Lett.,2022年02月28日,24,1822-1826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/225
C09K 3/18
C07C 271/44
C07C 43/21
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1A):
【化1】
[式中:
1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
前記有機基は、それぞれ独立して、下記式:
-O-R 11a -(O-R 11a r1 -Rf
[式中:
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1である。
で表される基、又は下記式:
-O-R 11p -Rf
[式中:
11pは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、1~5個のフッ素により置換されたフェニル基であ。]
で表される基であり、
ただし、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも1つは、-O-R 11a -(O-R 11a r1 -Rf 又は-O-R 11p -Rf であり、
n1は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
【請求項2】
1a及びR3aは、それぞれ独立して、-O-R 11a -(O-R 11a r1 -Rf 又は-O-R 11p -Rf であるか、あるいは
2a及びR4aは、それぞれ独立して、-O-R 11a -(O-R 11a r1 -Rf 又は-O-R 11p -Rf である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
n1は、4~6の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記Rfは、パーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
1a及びR3aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1であり、
n1は、4~6の整数である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1a及びR3aは、-O-R11p-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11p-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11pは、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、
Rfは、1~5個のフッ素により置換されたフェニル基であり、
n1は、4~6の整数である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
下記式(1B):
【化2】
[式中:
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
前記有機基は、それぞれ独立して、下記式:
-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf
[式中:
11bは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1である。]
で表される基であり、
ただし、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも1つは、-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf であって、該-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf は、SP値が8.0以下であり、
n2は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
【請求項9】
1b及びR3bは、それぞれ独立して、-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf であり、
ただし、R1b及びR3bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下である-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf であるか、あるいは
2b及びR4bは、それぞれ独立して、-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf であり、
ただし、R2b及びR4bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下である-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf である、
請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
1b及びR3bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下である-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf であるか、あるいは
2b及びR4bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下である-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf である、
請求項に記載の化合物。
【請求項11】
2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは
1b及びR3bは、水素原子である、
請求項に記載の化合物。
【請求項12】
n2は、4~6の整数である、請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
前記-O-R 11b -(O-R 11b r2 -Rf のSP値は、4.0~7.5である、請求項に記載の化合物。
【請求項14】
1b及びR3bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは
2b及びR4bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R1b及びR3bは、水素原子であり、
11bは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1であり、
n2は、4~6の整数である、
請求項に記載の化合物。
【請求項15】
成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、請求項に記載の化合物。
【請求項16】
下記式(1C):
【化3】
[式中:
1cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
前記有機基は、それぞれ独立して、-O-R12cであり、
12cは、C17-30アルキル基であり、
ただし、R1c、R2c、R3c、及びR4cの少なくとも1つは、-O-R12cであり、
n3は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
【請求項17】
1c及びR3cは、それぞれ独立して、-O-R12cであるか、あるいは
2c及びR4cは、それぞれ独立して、-O-R12cである、
請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
n3は、4~6の整数である、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
1c及びR3cは、-O-R12cであり、R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは
2c及びR4cは、-O-R12cであり、R1c及びR3cは、水素原子であり、
12cは、C17-30アルキル基であり、
n3は、4~6の整数である、
請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
下記式(1D):
【化4】
[式中:
1dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
前記有機基は、それぞれ独立して、-O-R12dであり、
12dは、C17-30アルキル基であり、
ただし、R1d、R2d、R3d、及びR4dの少なくとも1つは、-O-R12dであり、-O-R12dは、SP値が8.2以上であり、
n4は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
【請求項22】
1d及びR3dは、それぞれ独立して、-O-R12dであるか、あるいは
2d及びR4dは、それぞれ独立して、-O-R12dである、
請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
n4は、4~6の整数である、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
前記-O-R12dのSP値は、8.2~8.4である、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
1d及びR3dは、-O-R12dであり、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは
2d及びR4dは、-O-R12dであり、R1d及びR3dは、水素原子であり、
12dは、C17-30アルキル基であり、
n4は、4~6の整数である、
請求項21に記載の化合物。
【請求項26】
成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、請求項21に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1種を含む組成物。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか1項に記載の化合物の成形体。
【請求項29】
請求項27に記載の組成物から形成される成形体。
【請求項30】
フィルムである、請求項28に記載の成形体。
【請求項31】
請求項1~26のいずれか1項に記載の化合物で処理された基材を含む材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素ピラーアレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
環状化合物として、ピラーアレーン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ククルビットウリルがといった化合物が知られている。なかでも、シンメトリックな柱状構造を有するピラーアレーンが、ゲスト分子を取り込むことができるホスト分子として機能し得るなど種々の特性を有することから注目されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-221893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、良好な撥水性を有する新規なピラーアレーン、特にフッ素原子を含有する新規なピラーアレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 下記式(1A):
【化1】
[式中:
1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基であり、
n1は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
[2] R1a及びR3aは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R1a及びR3aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基であるか、あるいは
2a及びR4aは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R2a及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基である、
上記[1]に記載の化合物。
[3] R1a及びR3aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基であるか、あるいは
2a及びR4aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基である、
上記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
1a及びR3aは、水素原子である、
上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] n1は、4~6の整数である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] 前記フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基は、-(Op1-R11a q1)-Rfであり、
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
p1は、0~2の整数であり、
q1は、0~3の整数であり、
(Op1-R11a q1)中、O及びR11aの存在順序は限定されない、
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] 前記フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基は、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1である、
上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の化合物。
[8] 前記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の化合物。
[9] R1a及びR3aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1であり、
n1は、4~6の整数である、
上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の化合物。
[10] 前記フルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-(Op3-R11p q3)-Rf
[式中:
11pは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、1~5個フェニル基であり、
p3は、0~2の整数であり、
q3は、0~3の整数であり、
(Op3-R11p q3)中、O及びR11pの存在順序は限定されない。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[11] 前記フルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-O-R11p-Rf
[式中:
11pは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、1~5個のフッ素により置換されたフェニル基である。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[12] R1a及びR3aは、-O-R11p-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11p-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11pは、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、
Rfは、1~5個のフッ素により置換されたフェニル基であり、
n1は、4~6の整数である、
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[13] 成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の化合物。
[14] 下記式(1B):
【化2】
[式中:
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であって、該フッ素原子を有する有機基は、SP値が8.0以下であり、
n2は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
[15] R1b及びR3bは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R1b及びR3bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であるか、あるいは
2b及びR4bは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R2b及びR4bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である、
上記[14]に記載の化合物。
[16] R1b及びR3bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であるか、あるいは
2b及びR4bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である、
上記[14]又は[15]に記載の化合物。
[17] R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは
1b及びR3bは、水素原子である、
上記[14]~[16]のいずれか1項に記載の化合物。
[18] n2は、4~6の整数である、上記[14]~[17]のいずれか1項に記載の化合物。
[19] 前記フッ素原子を有する有機基のSP値は、4.0~7.5である、上記[14]~[18]のいずれか1項に記載の化合物。
[20] 前記フッ素原子を有する有機基は、C1-10フルオロアルキル基を有する、上記[14]~[19]のいずれか1項に記載の化合物。
[21] 前記C1-10フルオロアルキル基は、C1-10パーフルオロアルキル基である、上記[30]に記載の化合物。
[22] R1b及びR3bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは
2b及びR4bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R1b及びR3bは、水素原子であり、
11bは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1であり、
n2は、4~6の整数である、
上記[14]~[21]のいずれか1項に記載の化合物。
[23] 成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、上記[14]~[22]のいずれか1項に記載の化合物。
[24] 下記式(1C):
【化3】
[式中:
1cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1c、R2c、R3c、及びR4cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、
n3は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
[25] R1c及びR3cは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R1c及びR3cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であるか、あるいは
2c及びR4cは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R2c及びR4cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である、
上記[24]に記載の化合物。
[26] R1c及びR3cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である、
2c及びR4cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である、
上記[24]又は[25]に記載の化合物。
[27] 前記長鎖アルキル基の炭素数は、17~30である、上記[24]~[26]のいずれか1項に記載の化合物。
[28] R1c及びR3cは、それぞれ独立して、-O-R12cであるか、あるいは
2c及びR4cは、それぞれ独立して、-O-R12cであり、
12cは、C17-30アルキル基である、
上記[24]~[27]のいずれか1項に記載の化合物。
[29] R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは
1c及びR3cは、水素原子である、
上記[24]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[30] n3は、4~6の整数である、上記[24]~[29]のいずれか1項に記載の化合物。
[31] R1c及びR3cは、-O-R12cであり、R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは
2c及びR4cは、-O-R12cであり、R1c及びR3cは、水素原子であり、
12cは、C17-30アルキル基であり、
n3は、4~6の整数である、
上記[24]~[30]のいずれか1項に記載の化合物。
[32] 成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、上記[24]~[31]のいずれか1項に記載の化合物。
[33] 下記式(1D):
【化4】
[式中:
1dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1d、R2d、R3d、及びR4dの少なくとも1つは、アルキル基を有する有機基であり、該アルキル基は、SP値が8.2以上であり、
n4は、4~20の整数である。]
で表される化合物。
[34] R1d及びR3dは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R1d及びR3dの少なくとも1つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であるか、あるいは
2d及びR4dは、それぞれ独立して、有機基であり、
ただし、R2d及びR4dの少なくとも1つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である、
上記[33]に記載の化合物。
[35] R1d及びR3dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であるか、あるいは
2d及びR4dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である、上記[33]又は[34]に記載の化合物。
[36] R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは
1d及びR3dは、水素原子である、
上記[33]~[35]のいずれか1項に記載の化合物。
[37] n4は、4~6の整数である、上記[33]~[36]のいずれか1項に記載の化合物。
[38] 前記アルキル基のSP値は、8.2~8.4である、上記[33]~[37]のいずれか1項に記載の化合物。
[39] R1d及びR3dは、-O-R12dであり、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは
2d及びR4dは、-O-R12dであり、R1d及びR3dは、水素原子であり、
12dは、C17-30アルキル基であり、
n4は、4~6の整数である、
上記[33]~[38]のいずれか1項に記載の化合物。
[40] 成膜した場合の膜の水に対する静的接触角は、80°以上である、上記[33]~[39]のいずれか1項に記載の化合物。
[41] 上記[1]~[40]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1種を含む組成物。
[42] 上記[1]~[40]のいずれか1項に記載の化合物の成形体。
[43] 上記[41]に記載の組成物から形成される成形体。
[44] フィルムである、上記[42]又は[43]に記載の成形体。
[45] 上記[1]~[40]のいずれか1項に記載の化合物、又は上記[41]に記載の組成物で処理された基材を含む材料。
[46] 下記式(1E):
【化5】
[式中:
1e、R2e、R3e、及びR4eは、それぞれ独立して、水素原子または有機基であり、
n5は、5又は6である。]
で表されるピラーアレーン及び炭化水素化合物を含む、撥液性組成物。
[47] 前記有機基は、炭素数1~30の有機基である、上記[46]に記載の撥液性組成物。
[48] さらに、溶媒を含む、上記[46]又は[47]に記載の撥液性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、含フッ素ピラーアレーンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において用いられる場合、「一価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。
【0008】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0010】
第一の態様において、本開示は、下記式(1A):
【化6】
[式中:
1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であり、
n1は、4~20の整数である。]
で表される化合物を提供する。
【0011】
上記式(1A)中、R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R2aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R4aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基である。一の態様において、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基である。
【0012】
式(1A)で表される化合物は、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基を有することにより、高い相溶性、耐熱性及び撥水撥油性を有し得る。
【0013】
上記有機基としては、置換基により置換されていてもよい、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルエーテル基、トシル基、トリフラート基又はフェニル基等を含む基が挙げられる。
【0014】
上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基、及び5~10員のヘテロアリール基、ならびに反応性官能基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる
【0015】
上記反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アセチレン基、ニトリル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0016】
上記アルキル基は、好ましくはC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。別の態様において、C1-30アルキル基は、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、より好ましくはC26-30アルキル基であり得る。
【0017】
上記アルキルオキシ基は、典型的には、-O-R31(式中、R31は、アルキル基である。)で表される基である。
【0018】
31におけるアルキル基は、上記した置換基により置換されていてもよく、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基は、好ましくはフッ素原子により置換されていてもよいC1-30アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-30アルキル基は、C1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-30アルキル基であり得る。
【0019】
31は、好ましくは-R32-R33(式中、R32は、非置換のC1-30アルキレン基、好ましくはC1-20アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基であり、R33は、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基である。)で表される基である。
【0020】
上記アルキルエーテル基は、上記アルキル基の分子鎖中に1つ以上のエーテル性酸素原子を有する化合物である。かかるアルキルエーテル基は、典型的には、-R36-R37-(O-R38-R39で表される基である。式中、R36は、単結合又は酸素原子である。R37は、単結合又はC1-10アルキレン基である。R38は、C1-10アルキレン基である。R39は、フッ素原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基である。
【0021】
一の態様において、上記有機基は、末端が反応性官能基により置換されたアルキル基、アルキルオキシ基、又はアルキルエーテル基であり得る。なお、かかる基は、さらに別の置換基により置換されていてもよい。
【0022】
一の態様において、R1a及びR3aは、それぞれ独立して、有機基であり、R1a及びR3aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であるか、あるいは、R2a及びR4aは、それぞれ独立して、有機基であり、R2a及びR4aの少なくとも1つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基である。
【0023】
一の態様において、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも2つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基である。一の態様において、R1a、R2a、R3a、及びR4aの少なくとも2つは、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基である。
【0024】
一の態様において、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの2つは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基である。一の態様において、R1a、R2a、R3a、及びR4aのうちの2つは、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基である。
【0025】
一の態様において、R1a及びR3aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であるか、あるいは、R2a及びR4aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基である。
【0026】
一の態様において、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは、R1a及びR3aは、水素原子である。
【0027】
好ましい態様において、R1a及びR3aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは、R2a及びR4aは、それぞれ独立して、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であり、R1a及びR3aは、水素原子である。
【0028】
より好ましい態様において、R1a及びR3aは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは、R2a及びR4aは、フルオロアルキル基又はフルオロフェニル基、好ましくはフルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基であり、R1a及びR3aは、水素原子である。
【0029】
上記フルオロアルキル基は、好ましくはC1-10フルオロアルキル基、より好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0030】
上記フルオロフェニル基は、1~5個のフッ素により置換されたフェニル基であってもよく、好ましくは5個のフッ素により置換されたフェニル基である。
【0031】
一の態様において、上記フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-(Op1-R11a q1)-Rf
[式中:
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
p1は、0~2の整数であり、
q1は、0~3の整数であり、
(Op1-R11a q1)中、O及びR11aの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0032】
11aにおけるC1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC2-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。
【0033】
一の態様において、R11aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基である。
【0034】
別の態様において、R11aは、各出現においてそれぞれ独立して、-CONH-である。
【0035】
RfにおけるC1-10フルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0036】
p1は、0~2の整数、好ましくは1又は2である。一の態様において、p1は1である。別の態様において、p1は2である。
【0037】
q1は、0~3の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2である。一の態様において、q1は1である。別の態様において、q1は2である。
【0038】
好ましい態様において、上記フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基は、
-O-R11a-(O-R11ar1-Rf
[式中:
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1である。]
で表される基である。
【0039】
より好ましい態様において、上記フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基は、
-O-R11a-(O-R11ar1-Rf
[式中:
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基又は-CONH-であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1である。]
で表される基である。
【0040】
一の態様において、上記フルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-(Op3-R11p q3)-Rf
[式中:
11pは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-3アルキレン基であり、
Rfは、1~5個、好ましくは5個のフッ素により置換されたフェニル基であり、
p3は、0~2の整数であり、
q3は、0~3の整数であり、
(Op3-R11p q3)中、O及びR11pの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0041】
11pにおけるC1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。
【0042】
p3は、0~2の整数、好ましくは1又は2である。一の態様において、p1は1である。別の態様において、p1は2である。
【0043】
q3は、0~3の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2である。一の態様において、q1は1である。別の態様において、q1は2である。
【0044】
好ましい態様において、上記フルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-O-R11p-Rf
[式中:
11pは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-3アルキレン基であり、
Rfは、1~5個、好ましくは5個のフッ素により置換されたフェニル基である。]
で表される基である。
【0045】
n1は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5又は6である。
【0046】
特に好ましい態様において、
1a及びR3aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11a-(O-R11ar1-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11aは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基であり、
r1は、0又は1であり、
n1は、4~6の整数、好ましくは5又は6である。
【0047】
別の特に好ましい態様において、
1a及びR3aは、-O-R11p-Rfであり、R2a及びR4aは、水素原子であるか、あるいは
2a及びR4aは、-O-R11p-Rfであり、R1a及びR3aは、水素原子であり、
11pは、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基、好ましくはC1-3アルキレン基であり、
Rfは、1~5個、好ましくは5個のフッ素により置換されたフェニル基であり、
n1は、4~6の整数、好ましくは5又は6である。
【0048】
上記式(1A)で表される化合物の分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000であり得る。
【0049】
上記式(1A)で表される化合物を成膜した場合、得られた膜の水に対する静的接触角は、80°以上であり、好ましくは90°以上である。
【0050】
上記式(1A)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの置換基を、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基に変換することにより得ることができる。典型的には、上記式(1A)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの所定の位置にヒドロキシル基を導入し、該ヒドロキシル基と、フルオロアルキル基を有する炭素数2以上の有機基のトシル化物、ハロゲン化物等とを反応させることにより得ることができる。
【0051】
第二の態様において、本開示は、下記式(1B):
【化7】
[式中:
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であって、該フッ素原子を有する有機基は、SP値が8.0以下であり、
n2は、4~20の整数である。]
で表される化合物を提供する。
【0052】
本明細書において、SP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は、物質に固有の値であり、数値が大きいほど極性が高く、数値が小さいほど極性が低いことを示す。SP値は、Fedorsの方法(R.F.Fedors.Polyme.Eng.Sic.,14,147(1974))を用いて、蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)を求め、下記式から算出される値δ(cal/cm1/2である。
δ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0053】
上記式(1B)中、R1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R3bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R4bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であって、該フッ素原子を有する有機基は、SP値が8.0以下である。
【0054】
式(1B)で表される化合物は、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基を有することにより、高い相溶性、耐熱性及び撥水撥油性を有し得る。
【0055】
上記有機基は、上記した式(1A)における有機基と同意義である。
【0056】
一の態様において、R1b及びR3bは、それぞれ独立して、有機基であって、R1b及びR3bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であるか、あるいは、R2b及びR4bは、それぞれ独立して、有機基であって、R2b及びR4bの少なくとも1つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である。
【0057】
一の態様において、R1b、R2b、R3b、及びR4bの少なくとも2つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である。
【0058】
一の態様において、R1b、R2b、R3b、及びR4bのうちの2つは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である。
【0059】
1b及びR3bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であるか、あるいは、R2b及びR4bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基である。
【0060】
一の態様において、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは、R1b及びR3bは、水素原子である。
【0061】
好ましい態様において、R1b及びR3bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であり、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは、R2b及びR4bは、それぞれ独立して、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であり、R2b及びR4bは、水素原子である。
【0062】
より好ましい態様において、R1b及びR3bは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であり、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは、R2b及びR4bは、SP値が8.0以下であるフッ素原子を有する有機基であり、R1b及びR3bは、水素原子である。
【0063】
上記フッ素原子を有する有機基のSP値は、好ましくは4.0~7.5であり、より好ましくは6.0~7.5である。
【0064】
好ましい態様において、上記フッ素原子を有する有機基は、C1-10フルオロアルキル基を有する。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0065】
別の好ましい態様において、上記フッ素原子を有する有機基は、フルオロフェニル基を有する。かかるフルオロフェニル基は、1~5個、好ましくは5個のフッ素により置換されているフェニル基である。
【0066】
一の態様において、上記フッ素原子を有する有機基は、下記式:
-(Op2-R11b q2)-Rf
[式中:
11bは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
p2は、0~2の整数であり、
q2は、0~3の整数であり、
(Op2-R11b q2)中、O及びR11bの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0067】
一の態様において、上記フルオロフェニル基を有する炭素数2以上の有機基は、下記式:
-(Op1-R11a q1)-Rf
[式中:
11aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、1~5個、好ましくは5個のフッ素により置換されたフェニル基であり、
p1は、0~2の整数であり、
q1は、0~3の整数であり、
(Op1-R11a q1)中、O及びR11aの存在順序は限定されない。]
で表される基である。
【0068】
11bにおけるC1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC2-6アルキレン基である。かかるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。
【0069】
RfにおけるC1-10フルオロアルキル基は、好ましくはC1-6フルオロアルキル基である。かかるフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。かかるフルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0070】
p2は、0~2の整数、好ましくは1又は2である。一の態様において、p2は1である。別の態様において、p2は2である。
【0071】
q2は、0~3の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2である。一の態様において、q2は1である。別の態様において、q2は2である。
【0072】
好ましい態様において、上記フッ素原子を有する有機基は、
-O-R11b-(O-R11br2-Rf
[式中:
11bは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10フルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1である。]
で表される基である。
【0073】
より好ましい態様において、上記フッ素原子を有する有機基は、
-O-R11b-(O-R11br2-Rf
[式中:
11bは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1である。]
で表される基である。
【0074】
n2は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5又は6である。
【0075】
特に好ましい態様において、
1b及びR3bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R2b及びR4bは、水素原子であるか、あるいは
2b及びR4bは、-O-R11b-(O-R11br2-Rfであり、R1b及びR3bは、水素原子であり、
11bは、それぞれ独立して、C1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、
Rfは、C1-10パーフルオロアルキル基、好ましくはC1-6パーフルオロアルキル基であり、
r2は、0又は1であり、
n2は、4~6の整数、好ましくは5又は6である。
【0076】
上記式(1B)で表される化合物の分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000であり得る。
【0077】
上記式(1B)で表される化合物を成膜した場合、得られた膜の水に対する静的接触角は、80°以上であり、好ましくは90°以上である。
【0078】
上記式(1B)で表される化合物は、上記式(1A)で表される化合物と同様の方法により製造することができる。例えば、上記式(1B)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの所定の位置にヒドロキシル基を導入し、該ヒドロキシル基と、フッ素原子を有する有機基のトシル化物、ハロゲン化物等とを反応させることにより得ることができる。
【0079】
第三の態様において、本開示は、下記式(1C):
【化8】
[式中:
1cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1c、R2c、R3c、及びR4cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、
n3は、4~20の整数である。]
で表される化合物を提供する。
【0080】
上記式(1C)中、R1cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R2cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R3cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R4cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R1c、R2c、R3c、及びR4cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である。
【0081】
式(1C)で表される化合物は、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基を有することにより、高い相溶性、耐熱性及び撥水性を有し得る。
【0082】
上記有機基は、上記した式(1A)における有機基と同意義である。
【0083】
上記長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは17~30、より好ましくは18~30、さらに好ましくは26~30である。
【0084】
上記長鎖アルキル基を有する有機基は、好ましくは-O-R12c(式中、R12cは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基、好ましくはC17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、C26-30アルキル基である)で表される基である。
【0085】
上記長鎖アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0086】
一の態様において、R1c及びR3cは、それぞれ独立して、有機基であり、R1c及びR3cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であるか、あるいは、R2c及びR4cは、それぞれ独立して、有機基であり、R2c及びR4cの少なくとも1つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である。
【0087】
一の態様において、R1c、R2c、R3c、及びR4cの少なくとも2つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である。
【0088】
一の態様において、R1c、R2c、R3c、及びR4cのうちの2つは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基である。
【0089】
一の態様において、R1c及びR3cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基、好ましくは-O-R12cであるか、あるいは、R2c及びR4cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基、好ましくは-O-R12cである。
【0090】
一の態様において、R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは、R1c及びR3cは、水素原子である。
【0091】
好ましい態様において、R1c及びR3cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは、R2c及びR4cは、それぞれ独立して、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、R1c及びR3cは、水素原子である。
【0092】
より好ましい態様において、R1c及びR3cは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、R2c及びR4cは、水素原子であるから、あるいは、R2c及びR4cは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基であり、R1c及びR3cは、水素原子である。
【0093】
n3は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5又は6である。
【0094】
特に好ましい態様において、
1c及びR3cは、-O-R12cであり、R2c及びR4cは、水素原子であるか、あるいは、
2c及びR4cは、-O-R12cであり、R1c及びR3cは、水素原子であり、
12cは、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、C26-30アルキル基であり、
n3は、4~6の整数、好ましくは5又は6である。
【0095】
上記式(1C)で表される化合物の分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000であり得る。
【0096】
上記式(1C)で表される化合物を成膜した場合、得られた膜の水に対する静的接触角は、80°以上であり、好ましくは90°以上である。
【0097】
上記式(1C)で表される化合物は、上記式(1A)で表される化合物と同様の方法により製造することができる。例えば、上記式(1C)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの所定の位置にヒドロキシル基を導入し、該ヒドロキシル基と、炭素数が17以上の長鎖アルキル基を有する有機基のトシル化物、ハロゲン化物等とを反応させることにより得ることができる。
【0098】
第四の態様において、本開示は、下記式(1D):
【化9】
[式中:
1dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
2dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
3dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
4dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、
ただし、R1d、R2d、R3d、及びR4dの少なくとも1つは、アルキル基を有する有機基であり、該アルキル基は、SP値が8.2以上であり、
n4は、4~20の整数である。]
で表される化合物を提供する。
【0099】
上記式(1D)中、R1dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R2dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R3dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R4dは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は有機基であり、R1d、R2d、R3d、及びR4dの少なくとも1つは、アルキル基を有する有機基であり、該アルキル基は、SP値が8.2以上である。
【0100】
式(1D)で表される化合物は、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基を有することにより、高い相溶性、耐熱性及び撥水性を有し得る。
【0101】
上記有機基は、上記した式(1A)における有機基と同意義である。
【0102】
一の態様において、R1d及びR3dは、それぞれ独立して、有機基であって、R1d及びR3dの少なくとも1つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であるか、あるいは、R2d及びR4dは、それぞれ独立して、有機基であって、R2d及びR4dの少なくとも1つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である。
【0103】
一の態様において、R1d、R2d、R3d、及びR4dの少なくとも2つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である。
【0104】
一の態様において、R1d、R2d、R3d、及びR4dのうちの2つは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である。
【0105】
一の態様において、R1d及びR3dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であるか、あるいは、R2d及びR4dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基である。
【0106】
一の態様において、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは、R1d及びR3dは、水素原子である。
【0107】
好ましい態様において、R1d及びR3dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であり、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは、R2d及びR4dは、それぞれ独立して、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であり、R1d及びR3dは、水素原子である。
【0108】
より好ましい態様において、R1d及びR3dは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であり、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは、R2d及びR4dは、SP値が8.2以上であるアルキル基を有する有機基であり、R1d及びR3dは、水素原子である。
【0109】
上記アルキル基のSP値は、好ましくは8.2~8.4である。
【0110】
好ましい態様において、アルキル基を有する有機基は、好ましくは-O-R12d(式中、R12dは、炭素数が17以上の長鎖アルキル基、好ましくはC17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、C26-30アルキル基である)で表される基である。
【0111】
上記長鎖アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0112】
n4は、4~20の整数であり、好ましくは4~6の整数であり、より好ましくは5又は6である。
【0113】
特に好ましい態様において、
1d及びR3dは、-O-R12dであり、R2d及びR4dは、水素原子であるか、あるいは
2d及びR4dは、-O-R12dであり、R1d及びR3dは、水素原子であり、
12dは、C17-30アルキル基、好ましくはC18-30アルキル基、C26-30アルキル基であり、
n4は、4~6の整数、好ましくは5又は6である、
請求項30~35のいずれか1項に記載の化合物。
【0114】
上記式(1D)で表される化合物の分子量は、好ましくは500~10,000、より好ましくは1,000~5,000であり得る。
【0115】
上記式(1D)で表される化合物を成膜した場合、得られた膜の水に対する静的接触角は、80°以上であり、好ましくは90°以上である。
【0116】
上記式(1D)で表される化合物は、上記式(1A)で表される化合物と同様の方法により製造することができる。例えば、上記式(1D)で表される化合物は、ピラー[n]アレーンの所定の位置にヒドロキシル基を導入し、該ヒドロキシル基と、アルキル基を有する有機基のトシル化物、ハロゲン化物等とを反応させることにより得ることができる。
【0117】
本開示は、上記式(1A)、(1B)、(1C)、又は(1D)で表される化合物を含む組成物を提供する。
【0118】
本開示の組成物は、本開示の化合物を単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0119】
本開示の組成物は、液体であっても、固体であってもよい。
【0120】
本開示の組成物において、各成分は、本開示のピラーアレーンに、他の成分が包摂されたもの、いわゆる包摂物として含まれていてもよく、あるいは、本開示のピラーアレーンに、他の成分が付着したもの、いわゆる表面付着物であってもよい。
【0121】
本開示の組成物は、本開示の化合物に加え、溶媒を含んでいてもよい。
【0122】
上記溶媒としては、例えば、水;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、HFE7100、HFE7200、HFE7300、CFCHOH、CFCFCHOH、(CFCHOH等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
上記組成物に溶媒が含まれる場合、上記式(1A)、(1B)、(1C)、又は(1D)で表される化合物は、溶媒による膨潤物であってもよい。
【0124】
上記溶媒は、気体であってもよい。即ち、本開示の組成物は、上記式(1A)、(1B)、(1C)、又は(1D)で表される化合物と上記溶媒の気体の混合物を含んでいてもよい。
【0125】
上記気体としての溶媒は、好ましくは炭化水素、より好ましくはC4-10炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、又はデカン、さらに好ましくはペンタン又はヘキサンであり得る。かかる溶媒の気体を含ませることにより、本開示の組成物を用いて得られる膜の接触角を向上させることができる。
【0126】
本開示の組成物は、非フッ素樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0127】
上記非フッ素樹脂としては、例えば、ポリエチレン(例えば、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等)、各種構造異性体(シンジオタクティック、アイソタクティック、アタクティック構造)を含むポリプロピレン、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、各種構造異性体を含むポリスチレンまたはポリスチレン誘導体系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、アイオノマー、各種構造異性体を含むポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタラート(PCT)等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリジメチルシリコーン(PDMS)、ポリウレタン、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂等、あるいはこれらを含む共重合体、混合物、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0128】
上記フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン[PVDF]、フッ化ビニリデン(VDF)/TFE共重合体、ポリフッ化ビニル[PVF]等が挙げられる。
【0129】
本開示の組成物は、フィラーを含んでいてもよい。
【0130】
上記フィラーとしては、例えば、フィラーとしては、シリカおよびカーボンブラックの他に、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填材、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、セライト、クレーなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0131】
本開示の化合物及び組成物は、相溶化剤、接着剤、表面処理剤(例えば、撥水剤)、高耐熱性材料、吸着分離材、成形体の材料など、広範な用途に用いることができる。
【0132】
本開示の化合物及び組成物は、成形体に成形することができる。従って、本開示は、本開示の化合物及び組成物から形成される成形体も提供する。
【0133】
本開示の化合物及び組成物の成形方法は、特に限定されず、一般的な成形方法、例えば押出成形、射出成形、プレス成形、真空成形、トランスファ成形、キャスト成形等を用いることができる。
【0134】
得られる成形体の形状は、特に限定されず、所望するいずれの形状、例えば、ブロック状、シート状、フィルム状、棒状、その他用途に応じた種々の形状であってもよい。
【0135】
例えば、フィルムを得る場合、本開示のピラーアレーンを、良溶媒に溶解させ、基材上にキャストし、溶媒の沸点以上まで加熱して溶媒を揮発させることにより成膜することができる。
【0136】
本開示の化合物又は組成物の成形体は、耐熱性及び撥水性が高い。
【0137】
本開示の化合物又は組成物をキャスト成形して得られたフィルムは、炭化水素、好ましくはC4-10炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、又はデカン、より好ましくはペンタン又はヘキサンの気体で処理することにより、耐水接触角を向上させることができる。
【0138】
本開示の化合物又は組成物を表面処理剤として用いる場合、種々の基材を処理することができる。従って、本開示は、本開示の化合物及又は組成物で処理された基材を含む材料を提供する。
【0139】
本開示の化合物及び組成物で処理可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、建築部材、衛生用品、吸着分離材、任意の適切な材料で構成され得る。
【0140】
本開示の化合物又は組成物で処理された基材は、耐熱性及び撥水性が高い。
【0141】
本開示は、下記式(1E):
【化10】
[式中:
1e、R2e、R3e、及びR4eは、それぞれ独立して、水素原子または有機基であり、
n5は、5又は6である。]
で表されるピラーアレーン及び炭化水素化合物を含む、撥液性組成物を提供する。
【0142】
上記撥液性組成物の成形体は、撥水性が高い。
【0143】
上記有機基は、好ましくは炭素原子数1~30、より好ましくは炭素原子数1~20の有機基である。
【0144】
上記撥液性組成物は、さらに溶媒を含んでいてもよい。
【0145】
上記溶媒としては、上記式(1A)、(1B)、(1C)、又は(1D)で表される化合物を含む組成物に関して記載した溶媒と同様のものが挙げられる。上記撥液性組成物に含まれる溶媒は、C4-10炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、又はデカン、さらに好ましくはペンタン又はヘキサンであり得る。
【0146】
上記撥液性組成物に含まれる炭化水素化合物は、好ましくはC4-10炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、又はデカン、さらに好ましくはペンタン又はヘキサンであり得る。
【0147】
上記撥液性組成物に含まれる炭化水素化合物は、上記溶媒と同じであっても異なっていてもよい。
【0148】
上記撥液性組成物において、式(1E)で表されるピラーアレーンと炭化水素化合物は、式(1E)で表されるピラーアレーンに、炭化水素化合物が包摂されたもの、いわゆる包摂物として含まれていてもよく、あるいは、ピラーアレーンに炭化水素化合物が付着したもの、いわゆる表面付着物であってもよい。
【0149】
上記撥液性組成物に溶媒が含まれる場合、式(1E)で表されるピラーアレーンは、溶媒による膨潤物であってもよい。
【0150】
上記包摂物及び表面付着物は、式(1E)で表されるピラーアレーンを、炭化水素化合物の気体で処理することにより得ることができる。
【0151】
以上、本開示の化合物について詳述した。なお、本開示の化合物の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0152】
本開示の化合物について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0153】
合成例1
ヒドロキノン体のピラー[5]アレーン(1.30g,2.13mmol)に、脱水ジメチルホルムアミド(30mL)、及び脱水テトラヒドロフラン(30mL)を加えた後に、NaH(1.33g,66.7mmol)を加えた。1-トシルオキシ-4,4,4-トリフルオロブタン(12.1g,42.9mmol)を加えた後に、60℃で72時間反応を行った。室温に戻した後に、メタノールを加えて反応をクエンチした。濃縮した後に、ジクロロメタンと飽和食塩水で分液を行い、クロロホルム層にNaSOを加えて脱水を行った。濾過によりNaSOを除き、濃縮を行った。シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)で精製し、下記の置換ピラー[5]アレーン(収率15%)を得た。
【0154】
【化11】
CF3[5]:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.75 (s, 10H), 3.89 (t, J = 10.8 Hz, 20H), 3.74 (s, 10H), 2.29-2.41 (m, 20H), 2.01-2.08 (m, 20H)
【0155】
合成例2
1-トシルオキシ-4,4,4-トリフルオロブタンの代わりに、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル-p-トルエンスルホネート(14.3g,42.9mmol)を用いること以外は、合成例1と同様にして、下記の置換ピラー[5]アレーン(収率13%)を得た。
【0156】
【化12】
【0157】
C2F5[5]:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.76 (s, 10H), 3.75-4.03 (m, 20H), 3.73 (s, 10H), 2.25-2.34 (m, 20H), 2.08-2.11 (m, 20H)
【0158】
合成例3
1-トシルオキシ-4,4,4-トリフルオロブタンの代わりに、8-[(6-ブロモヘキシル)オキシ]-1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロ-オクタン(22.6g,42.9mmol)を用いること以外は、合成例1と同様にして、下記の置換ピラー[5]アレーン(収率5.3%)を得た。
【0159】
【化13】
【0160】
C6F13[5]:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.86 (bs, 10H), 3.24-4.21 (m, 89H), 2.38 (bs, 22H), 1.51-2.10 (m, 31H), 1.45 (bs, 28H)
【0161】
合成例4
ヒドロキノン体のピラー[5]アレーンの代わりに、ヒドロキノン体のピラー[6]アレーン(1.30g,1.77mmol)を用い、1-トシルオキシ-4,4,4-トリフルオロブタンの代わりに、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル-p-トルエンスルホネート(14.3g,42.9mmol)を用いること以外は、合成例1と同様にして、下記の置換ピラー[6]アレーン(収率24%)を得た。
【0162】
【化14】
【0163】
C2F5[6]:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.66 (s, 12H), 3.78-3.82 (m, 36H), 2.14-2.27 (m, 24H), 1.93-2.04 (m, 24H)
【0164】
合成例5
窒素雰囲気下で、1,2-ジクロロエタン(20mL)に1,4-ジペンチルオキシベンゼン(1.66g,10mmol)を溶かした溶液にパラホルムアルデヒド(0.31g,10mmol)を加えた。次に三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(1.25mL,10mmol)を加えて、30℃の温度で3時間攪拌した。溶液をメタノールに注ぎ、沈殿物をろ過により収集した。沈殿物をトリクロロメタンに溶解させ、溶けなかった部分はろ過により取り除いた。減圧下でトリクロロメタンを取り除き、目的化合物(0.413g,収率23.2%)をアセトンにより晶出させた。
【0165】
【化15】
【0166】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, TMS) δ 6.72 (s, 10H), 3.82 (q, J=7.1 Hz, 20H), 3.76 (s, 10H), 1.25 (t, J = 7.1 Hz, 30H)
13C NMR (CDCl3, 100 MHz, TMS) δ 149.8, 128.5, 115.1, 63.8, 29.8, 15.0
【0167】
合成例6
ヒドロキノン体のピラー[6]アレーン(0.582g,0.795mmol)を、アセトニトリル(60mL)に溶解させた。次いで、ペンタフルオロベンジルブロミド(5.00g,19.2mmol))を添加し、さらに、KCO(1.65g,11.9mmol)、KI(0.319g,1.92mmol)を添加した。混合液を、60℃に加熱し、72時間反応させた。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=20~25:80~75)により目的物を単離した。H NMRおよびHPLCにより、目的化合物が得られたことを確認した。
【0168】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, TMS) δ 6.71 (s, 12H), 4.80 (s, 24H), 3.70 (s, 12H)
【0169】
【化16】
【0170】
合成例7
ヒドロキノン体のピラー[5]アレーン(0.305g,0.5mmol)を、ジメチルスルホキシド(5mL)に溶解させた。その後、ステアリルイソシアネート(1.478g,5mmol)を添加し、触媒としてジブチルスズラウレートを1滴滴下した。混合物を、40℃に加熱し、6時間反応させた。反応溶液および析出物をヘキサン、水の順で洗浄し、目的化合物を得た。得られた化合物については、FT-IRにより3000~3500cm-1付近にブロードに出るヒドロキノン体ピラーアレーン由来のピークの消失、2266cm-1のステアリルイソシアネート由来のC=Oのピークの消失、1708cm-1付近のウレタン結合由来のC=Oのピーク生成から確認した。
【0171】
【化17】
【0172】
<SP値、相溶性>
(SP値)
合成例1~4のピラーアレーンの側鎖のSP値を、上記Fedorsの方法により算出した。結果を下記表に示す。
【0173】
(相溶性)
下記表に示す通り、合成例1~4の側鎖構造のSP値は6.9~7.4の範囲であった。これに対して、例えばSP値が5.9のフッ素樹脂を選択した場合に両者のSP値が近いため、ピラーアレーン化合物とフッ素樹脂との相溶性が良好であると考えられる。
【0174】
【表1】

【0175】
(SP値)
側鎖構造が、長鎖アルキルオキシ基:-O-C1735、-O-C2041、-O-C2653、-O-C3061(すべて直鎖)である場合のSP値を、上記Fedorsの方法により算出した。結果を下記表に示す。
【0176】
(相溶性)
下記表に示す通り、参考例1~4の側鎖構造のSP値は8.4~8.5であった。これに対して、例えばSP値が8.1の非フッ素樹脂を選択した場合に両者のSP値が近いため、ピラーアレーン化合物とフッ素樹脂との相溶性が良好であると考えられる。
【0177】
【表2】

【0178】
<フィルム形成>
(キャストフィルムの形成)
上記合成例1、2、4、及び5で得られたピラーアレーンを、ジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液を、ガラス基板上にキャストし、室温でジクロロメタンを揮発させた後、160度まで加熱し、溶融させた。次いで、室温で冷却して、ピラーアレーンのキャストフィルムを得た。
【0179】
(後処理)
溶媒を入れたサンプル瓶及び上記で得られたキャストフィルムを加え、キャストフィルムを17時間溶媒の蒸気に曝し、その後、ドラフト内で2時間風乾させ、溶媒処理フィルムを得た。キャストフィルムと溶媒の組み合わせは下記の通りである。
合成例2のキャストフィルム:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン
合成例4のキャストフィルム:シクロヘキサン
合成例5のキャストフィルム:ペンタン、ヘキサン
【0180】
上記風乾後のサンプルを重クロロホルムに溶解させ、ピラーアレーンとアルカン部のH NMRのピークの積分値から、溶媒がピラーアレーンに包接されていることを確認した。
【0181】
(接触角の測定)
合成例1、2、4、及び5の化合物から得られたキャストフィルム、及び上記で得られた溶媒処理フィルムの接触角を、上記暴露前後で測定した。接触角は、水を用い、全自動小型接触角測定計(メイワフォーシス、P200A-HSM)で測定した。結果を下記表に示す。
【0182】
【表3】

【0183】
上記の結果から、合成例1、2、4、及び5のピラーアレーンのフィルムは、良好な撥水性を有することが確認された。特に、溶媒の蒸気で処理した場合、さらに良好な撥水性を有することが確認された。
【0184】
<融点>
合成例1、2、4、及び5の化合物から得られたキャストフィルムの融点を、DSC7020(Hitachi High-Tech Science Co., Tokyo, Japan)で測定した。結果を下記表に示す。
【0185】
【表4】

【0186】
上記の結果から、合成例1、2、及び4、特に合成例1~2のピラーアレーンは、融点が高く、耐熱性に優れていることが確認された。化合物の融点が高いことにより、樹脂への添加剤として使用した際の樹脂の軟化を抑制することができる。従って、本開示のピラーアレーンは、耐熱性が求められる用途等、広範な用途において使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本開示の化合物は、相溶化剤、接着剤、表面処理剤、高耐熱性材料、吸着分離材、成形体の材料等、広範な用途に用いることができる。