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  • 特許-硬化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/00 20060101AFI20230612BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20230612BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B18/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023056581
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301076256
【氏名又は名称】株式会社大川構造設計
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】大川 修
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-112985(JP,A)
【文献】特開2020-105049(JP,A)
【文献】国際公開第02/066396(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207245058(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114477937(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物からなるコンクリート、モルタルおよび瓦、自然物からなる貝殻、岩石、砂、ラテライトおよび動物の骨、脱水ケーキおよび汚泥の少なくとも1つを含む無機物からなる粉状体を生成する工程と、
前記粉状体、ウルトラファインバブル水および天然ゴム系、アクリル系、エポキシ系、シリコン系または酢酸ビニル系の材料で構成される接着剤を含む材料を粉状体が70~80%、接着剤が20~10%、ウルトラファインバブル水が10%として合計で100%になるようにして混合および撹拌し、ウルトラファインバブル水を粉状体の穴および割れ目に浸透させて混合材を生成する工程と、
前記混合材を型枠に流し込む工程と、
前記接着剤が粉状体の周囲に接着され、粉状体同士が接合されることで混合材を硬化させる工程と、
を含む硬化物の製造方法。
【請求項2】
前記混合材を硬化させる工程が、混合材に圧力を加えながら硬化させる工程を含む請求項1の硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記混合材を硬化させて形成された硬化物の表面にアラミド繊維シートまたは炭素繊維シートを張り付ける工程を含む請求項1の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1にリグニンとセルロースとから選択される少なくとも一種およびコンクリート等の廃材を含む硬化物の製造方法が開示されている。リグニンとセルロースは植物由来の廃棄物などから得ることができる。
【0003】
特許文献1は十分な強度を有することを開示しているが、さらに強度を高めることで材料の削減が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7157984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は高硬度の硬化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬化物は、無機物からなる粉状体を生成する工程と、前記粉状体、ウルトラファインバブル水および接着剤を混合および撹拌して混合材を生成する工程と、前記混合材を型枠に流し込む工程と、前記混合材を硬化させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ウルトラファインバブル水を利用することでウルトラファインバブル水が粉状体の奥深くまで浸透し、粉状体の奥深くまで水和反応が発生し、硬化物を強固にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無機物を粉砕する模式図である。
図2】混合材を撹拌する模式図である。
図3】混合材を型枠に入れ、圧力釜の中で硬化させる模式図である。
図4】型枠から取り出された硬化物の模式図である。
図5】硬化物にアラミド繊維シートを張り付けている模式図である。
図6】アラミド繊維シートの上に上塗り材を塗布した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の硬化物の製造方法について図面を参照して説明する。図面は説明のために模式的に示している。
【0010】
[実施形態1]
硬化物は、無機物を粉砕した粉状体、接着剤およびウルトラファインバブル水を混合し、撹拌し、混合材を硬化させて形成したものである。
【0011】
無機物は産業廃棄物および自然物を含む。産業廃棄物は建築物などの構造物を破砕したときに発生するコンクリート、モルタル、瓦などを含む。自然物は貝殻、岩石、砂、ラテライト、動物の骨などを含む。また、無機物は脱水ケーキまたは汚泥などを含む。
【0012】
無機物は粉砕されて粉状体になる。粉状体はカルシウムまたはカルシウム化合物が含まれる。カルシウム化合物は炭酸カルシウム、酸化カルシウム、珪酸三カルシウム、珪酸二カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム、二水石膏などが含まれる。粉状体の平均粒径の一例は約300μmであるが、硬化物の硬度などに応じて適宜変更されてもよい。
【0013】
接着剤は天然ゴム系、アクリル系、エポキシ系、シリコン系または酢酸ビニル系の材料で構成されるものが挙げられる。たとえば、接着剤としてゴムの木を原料とした(天然ゴム)ラテラックスを使用する。接着剤の平均粒径は約0.02~10μmである。接着剤は1粒の粉状体の周囲に接着され、粉状体同士を接合する。天然ゴム系の接着剤を使用することで、環境負荷の小さな硬化物を製造できる。
【0014】
ウルトラファインバブル水は水の中に超微細気泡を含む液体である。ウルトラファインバブル水に含まれる超微細気泡の平均粒径は約0.13μm以下である。1cc当たりの超微細気泡の含有数は約1億個またはそれ以上である。超微細気泡の平均粒径、粉状体の平均粒径および接着剤の平均粒径の比はおおよそ1:15,000:77になる。
【0015】
ウルトラファインバブル水は物質の奥深くに浸透することができる。ウルトラファインバブル水は粉状体の表面に形成された微視的な穴および割れ目などの奥深くに浸透することができる。粉状体はカルシウムまたはカルシウム化合物を含んでおり、水によって水和反応し、硬化する。今回、ウルトラファインバブル水によって粉状体の奥深くまで水和反応がおこる。硬化物の硬度が高められる。
【0016】
次に、硬化物の製造方法について説明する。(1)無機物からなる粉状体を生成する。無機物は、産業廃棄物となったコンクリートおよびモルタル、自然由来の貝殻(食用後の物を含む)、砂および岩石などの少なくとも1つを含む。コンクリートに鉄筋が含まれていた場合、鉄筋を取り除く。図1に示すように、準備された産業廃棄物12などを破砕装置14で粉砕して無機物からなる粉状体16にする。破砕装置14は複数のカッター18が備えられており、そのカッター18によって産業廃棄物12などが破砕される。また、ヘドロなどを脱水して脱水ケーキにし、その脱水ケーキをふるいにかけてごみなどを取り除き、無機物からなる粉状体を生成してもよい。無機物は再利用品または自然界に多く存在するため、環境負荷が小さい。
【0017】
(2)粉状体16、接着剤およびウルトラファインバブル水を1つの容器20に入れて混合し、さらに撹拌して混合材22を形成する(図2)。粉状体16、接着剤およびウルトラファインバブル水の割合は、粉状体16が約70~80%、接着剤が約20~10%、ウルトラファインバブル水が約10%である。硬化物の硬度に合わせて材料の割合を変更し、合計で100%になるようにしてもよい。なお、材料の割合は一例であり、硬化物の硬度および形状などによって変更される場合がある。
【0018】
混合および撹拌するために、容器20に入れられた材料をプロペラ24などでかき混ぜる撹拌機26、混合材22に直接的または間接的に振動を与える振動機、混合材22の容器20の角度を変化させる傾斜装置、混合材22に風を当ててかき混ぜる送風機などを利用する。
【0019】
粉状体16、接着剤およびウルトラファインバブル水を1つずつ容器20に入れて混合および撹拌してもよいし、それら複数を同時に容器20に入れて混合および撹拌してもよい。また、粉状体16と接着剤を混合させる途中または混合させた後、シャワーヘッドを通してウルトラファインバブル水を混合させてもよい。ウルトラファインバブル水がシャワーヘッドから多方向に広がって噴出され、ウルトラファインバブル水が粉状体16と接着剤に混合されやすくする。粉状体16はカルシウムまたはカルシウム化合物を含んでおり、粉状体16はウルトラファインバブル水によって水和反応が生じ、硬化される。
【0020】
(3)混合材22を型枠に流し込む。型枠の中で混合材22に気泡ができないように、混合材22の中に振動装置を入れ、混合材22の中で振動させて気泡を上方に抜けるようにしてもよい。混合材22の硬化後に型枠から取り外せるように、型枠の内壁に離型用のシート、樹脂膜などを設けてもよい。
【0021】
(4)型枠に流し込まれた混合材22を硬化させる。硬化させるときに、混合材22に圧力をかける。密閉可能であり、内部の雰囲気圧力を高めることが可能な圧力釜28の中に型枠30および混合材22を入れてもよい(図3)。圧力釜内のヒータ32を発熱させ、圧力釜内の温度を上げる。混合材22が加熱され、その際に混合材22から蒸発した水分によって圧力釜内の圧力が高まる。型枠30の上部が開放されており、水蒸気34によって混合材22に圧力がかかる。たとえば、圧力釜28の中の雰囲気温度は水が沸騰する温度、たとえば100℃になるようにヒータ32を設定する。混合材22に含まれるウルトラファインバブル水は沸騰して水蒸気になることによって約1700倍に膨張し、圧力釜内の圧力が高まる。硬化物の厚みにより適宜圧力を決定し、調節する。なお、圧力釜28の内部にあるヒータ32によって圧力釜内の雰囲気温度を上げたが、圧力釜28の外部にヒータを配置し、そのヒータから圧力釜内の雰囲気温度を挙げられる構造であってもよい。圧力釜28に対して吸気および排気できるように構成し、圧力釜28の内部の圧力を調節できる構成であってもよい。
【0022】
(5)混合材22が硬化した後、圧力釜28から型枠30を取り出す。硬化物10を型枠30から取り外し、硬化物10が完成する(図4)。硬化物10は土木用構造物や建築物などに利用される。
【0023】
以上のように、本発明はセメント、骨材(砂、砂利)を利用せずに硬化物10を製造している。セメントおよび骨材は地球上で利用できる量が減少しているため、脱セメントおよび骨材を達成できる。従来技術のように木材などを利用していないため、強固な硬化物10を製造することができる。硬化物10の強度が強くなるため、構造物に使用する硬化物10の厚みを薄くしたり、細くしたりすることも可能であり、材料の減量が可能になり、CO排出量も削減できる。
【0024】
[実施形態2]
実施形態1で製造された硬化物10の周囲にアラミド繊維シートを張り付けてもよい。アラミド繊維シートは全芳香族アラミド繊維から構成される。アラミド繊維シートは、繊維を1方向または2方向に配列させてシート状にされている。硬化物10の表面にアラミド繊維シートを巻いて張り付けられる。アラミド繊維シートを硬化物10に張り付けることで、大きな外力(軸力、曲げモーメント、剪断力等)に対応できる。
【0025】
アラミド繊維シートの張り付け方について説明する。(1)実施形態1で製造された硬化物10の表面に対して下地処理をする。たとえば下地処理は硬化物10の表面を研磨装置で研磨する。なお、下地処理が不要であれば省略してもよい。
【0026】
(2)硬化物10の表面に下塗り材を塗布する(プライマー処理)。下塗り材としてエポキシ樹脂が挙げられる。アラミド繊維シートの接着力を強化する。
【0027】
(3)硬化物10の表面に中塗り材36を塗布し、硬化物10の表面にアラミド繊維シート38を張り付ける(図5)。中塗り材36としてエポキシ樹脂が挙げられる。下塗り材と中塗り材36は材料が異なっていてもよい。脱泡ローラで空気を抜きながらアラミド繊維シート38を張り付けてもよい。中塗り材36が乾燥する前に張り付ける。
【0028】
(4)アラミド繊維シート38の上から上塗り材40を塗布する(図6)。アラミド繊維シート38が見えなくなるように上塗り材40を塗布することで、さらに強固な硬化物42が製造される。上塗り材としてエポキシ系の塗装材が挙げられ、耐水性、耐薬品性または耐油性を有する材料であってもよい。
【0029】
アラミド繊維シート38によって当初の硬化物10を補強できる。その硬化物10は軸力、曲げモーメント、せん断力、ねじれ等に抵抗できる力が強くなる。硬化物42の中に鉄筋などの補強材を入れるよりも強固に補強できる。アラミド繊維シート38は、鉄筋などよりも引張り強度が強く、軽く、劣化しにくい。
【0030】
上記アラミド繊維シート38の代わりに炭素繊維シートを硬化物10の表面に張り付けてもよい。炭素繊維シートは炭素繊維でできたシートであり、鉄の約1/4の軽さであり、鉄の約10倍の強度を有する。硬化物10の強度を高めることができる。
【0031】
[実施形態3]
実施形態1において型枠30に流し込まれた混合材22に対して水蒸気34で圧力釜内の圧力を高めて混合材22に圧力をかけたが、他の方法で圧力をかけてもよい。たとえば、ホットプレス方式で、加熱と加圧により混合材22の上方から荷重を加え、混合材22に圧力をかけてもよい。
【0032】
[実施形態4]
実施形態1において、必要に応じて混和剤を含めて硬化物10を製造してもよい。混和剤は、粉状体、接着剤およびウルトラファインバブル水を混合して混合材を生成する際に混合してもよい。混和剤としては、減水剤、急結剤、凝結遅延剤、水和熱抑制剤などが挙げられる。
【0033】
[実施形態5]
上記実施形態において、粉状体、接着剤およびウルトラファインバブル水を混合して撹拌したが、粉状体、接着剤およびウルトラファインバブル水にさらにアルミナ(酸化アルミニウム)を追加して混合してもよい。アルミナは粉状になっている。混合材にアルミナが含まれることで、硬化物10の熱伝導率を高めることができる。所望の熱伝導率に応じて混合材におけるアルミナの割合を変更する。たとえば、製造する際に混合材の外面と内部の温度を均一にでき、均質な硬化物10を製造しやすくなる。また、硬化物10を地面などに設置することで、硬化物10と設置した部分とで熱交換できるようになる。
【0034】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。それぞれの実施形態は独立したものではなく、当業者の知識に基づき適宜組み合わせた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0035】
10、42:硬化物
12:産業廃棄物
14:破砕装置
16:粉状体
18:カッター
20:容器
22:混合材
24:プロペラ
26:撹拌機
28:圧力釜
30:型枠
32:ヒータ
34:蒸気圧
36:中塗り材
38:アラミド繊維シート
40:上塗り材
【要約】
【課題】高硬度の硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化物は、無機物を粉砕した粉状体、接着剤およびウルトラファインバブル水を混合し、撹拌し、混合材を硬化させて形成したものである。無機物は産業廃棄物および自然物を含む。産業廃棄物は建築物などの構造物を破砕したときに発生するコンクリート、モルタル、瓦などを含む。自然物は貝殻、岩石、砂、ラテライト、動物の骨などを含む。また、無機物は脱水ケーキを含む。ウルトラファインバブル水に含まれる超微細気泡の平均粒径は約0.13μm以下である。1cc当たりの超微細気泡の含有数は約1億個またはそれ以上である。硬化物の表面にアラミド繊維シートが張り付けられてもよい。混合材の材料にアルミナが追加されてもよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6