(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】アスファルト用コーティング系および関連する方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/24 20060101AFI20230612BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230612BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
E01C7/24
C09K3/00 R
E01C23/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018072515
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518116879
【氏名又は名称】アスファルト システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ラリュス
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー リチャード グロース
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-170116(JP,A)
【文献】特開平11-209909(JP,A)
【文献】特開2000-336602(JP,A)
【文献】特開昭57-142395(JP,A)
【文献】特開2003-292785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0144932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/24
C09K 3/00
E01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)正電荷を有するように改質されたギルソナイトを含むアスファルト配合物と;
b)一つまたは複数のポリマーと
c)カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤とを有する、
飛行場の表面または道路への塗布用の安定なカチオン系エマルジョンと;
飛行場の表面または道路に塗布された安定なカチオン系エマルジョンに塗布される細骨材材料と、
を含む、飛行場の表面または道路用のコーティング系。
【請求項2】
前記アスファルト配合物が前記エマルジョンの50.0重量%から70.0重量%を構成する、請求項1に記載のコーティング系。
【請求項3】
前記ギルソナイトが、前記アスファルト配合物の少なくとも20重量%レベルで存在する、請求項1又は2に記載のコーティング系。
【請求項4】
前記ギルソナイトが、前記エマルジョンの少なくとも10重量%のレベルで存在する、請求項1又は2に記載のコーティング系。
【請求項5】
前記一つまたは複数のポリマーが、アクリル、スチレンブタジエンゴム、またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項6】
前記一つまたは複数のポリマーが、前記エマルジョンの1.0重量%から5.0重量%を構成する、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項7】
前記一つまたは複数の界面活性剤が、前記エマルジョンの0.25重量%から4.0重量%を構成する、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項8】
前記一つまたは複数の界面活性剤が、非イオン系界面活性剤および両性界面活性剤の少なくとも一つである、請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項9】
前記エマルジョンが、前記エマルジョンの0.25重量%から3.0重量%の間のレベルで存在する改質剤を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項10】
前記エマルジョンが6.5未満のpHを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項11】
前記細骨材材料が、粒子の98重量%から100重量%がNo.14のふるいを通過するような粒子サイズ分布を有する粒子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項12】
前記細骨材材料が:
ASTM C1252試験法Aにしたがって測定された、細骨材の少なくとも45%の角張り指数と;
ASTM C128にしたがって測定された、2.6~3.0のバルク乾燥比重と;
ASTM MLN46にしたがって測定された、少なくとも7.0のモース硬度を有する、請求項11に記載のコーティング系。
【請求項13】
前記細骨材材料が、チャート(chert)、珪岩、および炭酸塩の少なくとも一つを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項14】
前記アスファルト配合物が、前記エマルジョンの50.0重量%から70.0重量%を構成し、前記ギルソナイトが、前記エマルジョンの少なくとも10重量%のレベルで存在し、
前記一つまたは複数のポリマーが、前記エマルジョンの1.0重量%から5.0重量%を構成し、そして
前記一つまたは複数の界面活性剤が、前記エマルジョンの0.25重量%から4.0重量%を構成する、請求項1~13のいずれか1項に記載のコーティング系。
【請求項15】
アスファルト・セメントをギルソナイトと配合してアスファルト配合物を形成することと;
水と、改質剤と、一つまたは複数の界面活性剤とを含む水溶液を準備し、前記一つまたは複数の界面活性剤のいずれも、カチオン系界面活性剤ではないことと;
前記アスファルト配合物を水溶液と一つにしてカチオン系エマルジョンを形成し、これにより前記ギルソナイトの部分に正電荷を生じさせて、安定なカチオン系エマルジョンを形成するようにすることと;
一つまたは複数のポリマーを前記水溶液または前記カチオン系エマルジョンに添加することと
を含む、安定なカチオン系アスファルト・エマルジョンを製造する方法。
【請求項16】
前記一つまたはポリマーの添加が、前記アスファルト配合物を前記水溶液と一つにすることに先立って生じる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一つまたはポリマーの添加が、前記アスファルト配合物を前記水溶液と一つにした後に生じる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アスファルト配合物が、前記エマルジョンの50.0重量%から70.0重量%を構成する、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ギルソナイトが、前記アスファルト配合物の少なくとも20重量%のレベルで存在する、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記一つまたは複数のポリマーが、アクリル、スチレンブタジエンゴム、またはそれらの組み合わせである、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記一つまたは複数のポリマーが、前記エマルジョンの1.0重量%から5.0重量%を構成する、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記一つまたは複数の界面活性剤が、前記エマルジョンの0.25重量%から4.0重量%を構成する、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
塗布装置車両を用いて安定なカチオン系エマルジョンを表面に噴霧し、前記安定なカチオン系エマルジョンが、
a)正電荷を有するように改質されたギルソナイトを含むアスファルト配合物と;
b)一つまたは複数のポリマーと、
c)カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤と、を含むことと;
表面に塗布された前記安定なカチオン系エマルジョンに平方ヤードあたり少なくとも1.0重量ポンドの量で細骨材材料を塗布することと
を含む、コーティング系を表面に塗布する方法。
【請求項24】
前記安定なカチオン系エマルジョンを、表面上に平方ヤードあたり0.10から1.0ガロンの量で噴霧する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記安定なカチオン系エマルジョンを、平方ヤードあたり0.15から0.25ガロンの量で噴霧する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細骨材材料を、前記安定なカチオン系エマルジョン上に平方ヤードあたり1.0重量ポンドから平方ヤードあたり5.0重量ポンドの量で塗布する、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記細骨材材料を塗布すること、および前記安定なカチオン系エマルジョンを塗布することを、同一の塗布装置車両を用いて行う、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング系、および関連するアスファルト舗装材用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装材は、鉱物骨材とアスファルト・バインダーを含む複合材料であり、アスファルト・バインダーが硬化して、強固な表面を形成するものである。アスファルト舗装材は、時間経過とともに、アスファルト・バインダーの酸化、重量物、および変動する天候条件に由来して劣化する。劣化したアスファルト舗装材を回復し修理する一つの方法は、既存の舗装材を除去して新たに準備されたまたは再利用された舗装材のいずれかと交換することである。しかしながら、除去と交換は、費用がかかり無駄が多い。しかしながら、舗装材表面の修理に利用されるアスファルト舗装材補修製造物が存在している。
【0003】
典型的なアスファルト補修製造物は、ユインタイト-アスファルト組成物などのコーティング組成物と、骨材とを含む。一般に、この組成物は、アスファルト舗装材に噴霧塗布してもよく、その後に骨材が、散布器またその他の同様な装置を用いて、この組成物全体に塗布される。しかしながら、組成物と骨材をいかに調合することができるかには、多くの多様性がある。組成物の成分、骨材のタイプ、そして塗布率(ガロン/平方ヤード、および/または重量ポンド/平方ヤード)は、すべて、特定の性能目標を達成するために変えることができる。さらに、いくつかの場合では、コーティング組成物および骨材は一つにしてから、舗装材に塗布してもよい。しかしながらかなりの場合、舗装材に塗布される特定の製造物とその塗布率は、舗装材をいかに使用するかによる。
【0004】
アスファルト舗装材業界は、二つの幾分独立した部門、すなわち航空/飛行場および道路の部門を有する。航空の舗装材は、道路の舗装材と比較してより大きな需要がある。航空の舗装材にとっては、安全性が最重要であり、建設の作業とスケジュールは、実行が困難であり、そして問題はより重大で、対処するにはさらにコストがかかる。さらに、飛行場の舗装材は、飛行機を駐機するのに使用される一方で、道路は、車およびトラック用に使用される。2つの舗装材タイプは、その経時変化も異なる。一般に、航空の舗装材向けの要件(例えば、性能要件、仕様、品質管理システム等)は、道路の舗装材に使用されるものよりも概ね厳しく極端である。
【0005】
一般的な道路アスファルト補修表面処理剤は、必ずしも飛行場の舗装材に好適ではない。3~5年を超える耐久性を持つように設計された一般的な道路処理剤は典型的には、要求される飛行場の舗装材に好適ではない。道路処理剤は年を経るにつれ、安全性能の問題、例えば異物(FOD)の発生と増加を生じ、正の摩擦特性を減少させる。飛行場アスファルト舗装材は、一般的なユインタイト-アスファルトのコーティングまたは別の補修コーティングを用いて事前に処理されている場合であっても、その表面状態の特徴の点から劣化し始め、その後、最低限の安全性要件を維持するためには再び処理しなければならない。もしさらなる処理剤を塗布しければ、舗装材は、はるかに大がかりで費用がかかる、破壊を伴う復興手順を踏む必要がある。一般的な道路処理剤を改良することにより、道路状態を改善し摩擦特性を増加させ、これによって上記の安全性の課題に対処することができる。残念なことにそのような処理剤は、寿命が比較的短く、2~5年またはそれ未満しか持続しない。他のさらにかなりの量の(重厚に塗布された)アスファルト補修処理剤によれば、3~5年より長期の耐用年数が得られることがある。しかしながら、そうしたかなりの量の処理剤は、飛行場の舗装材への塗布の要件にそれほど好適ではない。道路と航空の舗装材の両方に好適で有効寿命の延びる比較的重厚な率で塗布することができるコーティング系は存在しない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、飛行場の表面または道路用のコーティング系である。このコーティング系は、飛行場の表面または道路への塗布用の安定なカチオン系エマルジョンを含んでいてもよい。安定なカチオン系エマルジョンは、a)正電荷を有するように改質されたギルソナイトを含むアスファルト配合物と、b)一つまたは複数のポリマーと、c)カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤とを含む。コーティング系はまた、飛行場の表面または道路に塗布された安定なカチオン系エマルジョンに塗布される細骨材材料を含んでいてもよい。
【0007】
本開示のもう一つの実施形態は、安定なカチオン系アスファルト・エマルジョンを製造する方法である。この方法は、アスファルト・セメントとギルソナイトを配合してアスファルト配合物を形成することを含む。この方法はまた、水と、改質剤と、一つまたは複数の界面活性剤とを含む水溶液を準備することを含み、一つまたは複数の界面活性剤のいずれも、カチオン系界面活性剤ではない。この方法はさらに、アスファルト配合物を水溶液と一つにしてカチオン系エマルジョンを形成し、これによりギルソナイトの部分に正電荷を生じさせて、安定なカチオン系エマルジョンを形成するようにすることを含む。この方法また、一つまたは複数のポリマーを、水溶液またはカチオン系エマルジョンに添加することを含む。
【0008】
本開示のもう一つの実施形態は、コーティング系を表面に塗布する方法である。この方法は、塗布装置車両を用いて、安定なカチオン系エマルジョンを表面に噴霧することを含む。安定なカチオン系エマルジョンは、a)正電荷を有するように改質されたギルソナイトを含むアスファルト配合物と、b)一つまたは複数のポリマーと、c)カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤とを有する。この方法はまた、表面に塗布された安定なカチオン系エマルジョン上に、平方ヤードあたり少なくとも1.0重量ポンドの率で細骨材を塗布することを含む。
【0009】
本開示のもう一つの実施形態は、表面をコーティングする系である。この系は、安定なカチオン系エマルジョンを噴霧する噴霧ユニットを含む。この系はまた、塗布装置に搭載されて細骨材を表面に塗布するように構成された散布器ユニットを含む。散布器ユニットは、細骨材材料を保持するホッパーと、ホッパーに結合し、可動であることによって細骨材をホッパーから射出させることができる制御可能なゲートと、噴霧されたエマルジョン上に細骨材材料を塗布するように構成された、制御可能なゲート近傍のローラー組み立て体とを含む。
【0010】
前述の「発明の概要」、および本出願の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読む場合には、さらに良く理解できるであろう。本出願を例示する目的のために、本開示の例示的な実施形態が、それらの図面に示されている。しかしながら本出願が、示された配置および手段と寸分違わないものに制限されるとは理解されないものとする。
それらの図面では:
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本開示の実施形態に係る、細骨材材料を表面に塗布するのに使用する塗布装置車両および散布器ユニットの概略図であり;
【0012】
【0013】
【
図1C】
図1Bに示す散布器ユニット中のローラー組み立て体の部分の斜視図であり;
【0014】
【
図1D】
図1Cに示す散布器ユニット中のローラー組み立て体の部分の側面図であり;
【0015】
【
図2A】本開示の実施形態に係る、細骨材材料を表面に塗布するのに使用する塗布装置車両および散布器ユニットの概略図であり;
【0016】
【0017】
【0018】
【
図2D】本開示の別の実施形態に係る散布器ユニットの概略背面図であり;
【0019】
【
図2E】
図2Dに示す散布器ユニットの概略側面図であり;そして
【0020】
【
図3】本開示の実施形態に係る、細骨材材料を表面に塗布するのに使用する塗布装置車両および散布器ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態は、飛行場の表面または道路の表面への塗布用コーティング系と、そうしたコーティング系の成分を形成する方法とを含む。本開示の実施形態はまた、飛行場の表面または道路の表面にコーティング系を塗布する系および方法を含む。本明細書における新規の概念は、安定なカチオン系エマルジョンと、飛行場の表面または道路に塗布された安定なカチオン系エマルジョンへの塗布用の細骨材材料とから構成されるコーティング系を含む。安定なカチオン系エマルジョンは、ギルソナイトを含むアスファルト配合物を含んでいてもよい。様々な実施形態では、ギルソナイトは、正電荷を有するように改質された成分を含み、これにより安定なカチオン系エマルジョンを生じさせる。コーティング系は、航空と道路の舗装材の各舗装材タイプに要求される最終使用要件が相違するにもかかわらず、これら両方の舗装材に好適であることが分かっている。コーティング系の各成分を以下に記載する。
【0022】
安定なカチオン系エマルジョンは、ギルソナイトを含むアスファルト配合物と、一つまたは複数のポリマーと、カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤とを含んでいてもよい。エマルジョンはまた、酸などの改質剤、そして水を含んでいてもよい。カチオン系エマルジョンは処理されて、アスファルト配合物中のギルソナイトがカチオン性の特性を有するようになっている。これにより今度は、非カチオン系タイプの界面活性剤を使用することができる。エマルジョン中のポリマーの存在、界面活性剤、および改質剤により、後の使用のために長期間保存することのできる安定なエマルジョンを生成することができる。このことにより、エマルジョンを貯蔵タンクにポンプ輸送する、および/または作業場所に長距離にわたり送達することが可能となり、舗装材表面に塗布するときにコーティング系の効能が劣化することはない。
【0023】
アスファルト配合物は、少なくともアスファルト・セメントとギルソナイトとを含む。いくつかの場合では、さらなる添加剤、例えば油および界面活性剤を、加工助剤またはバインダーとしてアスファルト配合物に添加してもよい。アスファルト・セメントは、様々な成分を含むコロイド系として記載されることがある。例えば、アスファルト・セメントは、成分のうちとりわけ、アスファルテン分、芳香族分、樹脂分、および油性/ろう状の飽和分を含んでいてもよい。ほとんどの場合、硬質のアスファルテン分は、芳香族分、樹脂分、油性/ろう状の飽和分等により取り囲まれている(溶媒和している)。アスファルト配合物は、好ましい特定のパラメータを有していてもよい。一例では、アスファルト・セメントは、120/140針入度等級のアスファルトである。針入度等級は、特定のものを用いて、侵入させるのがどれだけ困難かを評価するものである。本明細書で使用するアスファルト・セメントについての針入度等級は、試験法ASTM D-5に準拠して測定する。アスファルト配合物はまた、良好なバランスを保証するよう少なくとも2.50のコロイド指数を有することができる。さらに、アスファルト配合物とアスファルト・セメントは、飽和分、芳香族分、樹脂分、およびアスファルテン分(SARA)の特定の範囲のパラメータを有するものとする。実例としては、以下の表3を見られたい。SARA分析法は、原油成分をそれらの分極率および極性(化学基の種類、本明細書で対象とするもの)にしたがって分割する方法である。本明細書で使用するとおり、使用するSARA分析法はASTM D-2007である。
【0024】
ギルソナイトは、天然に生じるアスファルタイト炭化水素鉱物樹脂である。ギルソナイトは、アスファルト・エマルジョンのコンパウンドにするのが困難であることが知られている異例な組成物である。ギルソナイトは、アスファルト組成物中で複数の違った経路で作用する様々な分子の組み合わせである。ギルソナイトは、極性および樹脂性が比較的高いことが知られている。この理由から、ギルソナイトは、アスファルト・セメント中に典型的に存在するアスファルテンを溶媒和させることができる。ギルソナイトはまた、アスファルトのコロイドバランスに、より均一なスペクトラムを概ね確立する。ギルソナイトが選択されるのは、一部には、そのコロイド特性が、典型的に使用できるアスファルト・セメントのコロイド特性と良好に両立するからである。
【0025】
アスファルト配合物中のギルソナイトを改質させて、接着性を向上させてある。ギルソナイトは、比較的高い窒素含有量を有する。ギルソナイト中の窒素は、ピロール分子(すなわち、極性樹脂)として存在しており、ギルソナイトの添加により、SARA分析に見られるとおり、アスファルト配合物の極性(極性樹脂)分率が増加する。ギルソナイト中の窒素ピロールは、特定の有益な特徴を有する。ギルソナイトは、窒素ピロールを含み、ピロールは生体には無毒であるので、ギルソナイトは環境面で有益であると考えられる。さらに本開示の新規の概念は、窒素ピロールの存在を利用する。特定の実施形態では、窒素ピロールを改質して、エマルジョン中の界面活性剤となるようにしている。エマルジョンのpHを酸性状態にまで、酸などの改質剤の存在を通じて下げることにより、窒素ピロールを活性化させて、ギルソナイト-アスファルト小滴の表面上でN+の正に帯電した分子とする。こうして、ギルソナイトの部分は、正電荷を有し、カチオン系界面活性剤としてふるまう。改質されたギルソナイトは、非カチオン系界面活性剤の使用と組み合わさることで、エマルジョンの所望のカチオン性の特徴を与える。意外な結果が、異例に安定なエマルジョンである。さらに、この態様はまた、固有の接着特性を有するギルソナイト-アスファルト小滴を生成する。ギルソナイトのカチオン電荷は、接着剤として作用し、典型的なアスファルト・エマルジョン上で使用されているような接着用の界面活性剤に依るのではないと考えられている。カチオン性接着は、負の/アニオン性の舗装材表面にアスファルト小滴が接着するのに必要な特性である。以下の表1に、本開示に準拠してギルソナイト中に見つかった典型的な金属を例示するが、これらは、蛍光X線分析すなわちXRFを用いて測定され、この分析は、金属に関して製造物の組成を等級付けするのに使用されるものである。
表1 ギルソナイトの近似的な金属含有量
【表1】
【0026】
エマルジョン中のアスファルト配合物の量は変えることができる。一例では、アスファルト配合物は、エマルジョンの約50.0重量%から約70.0重量%を構成する。別の例では、アスファルト配合物は、エマルジョンの約55.0重量%から約65.0重量%を構成する。アスファルト配合物中のアスファルト・セメントの量は、アスファルト配合物の少なくとも85重量%である。一例では、アスファルト・セメントは、アスファルト配合物中にアスファルト配合物の少なくとも80重量%のレベルで存在する。ギルソナイトは、アスファルト配合物の少なくとも15重量%を構成していてもよい。一例では、ギルソナイトは、アスファルト配合物中に、アスファルト配合物の少なくとも20重量%のレベルで存在する。さらに、これらの言及したレベルで、ギルソナイトがエマルジョンの少なくとも10重量%を構成していてもよいことは理解されるものとする。しかしながらいくつかの場合では、アスファルト配合物および/またはその量のギルソナイトは、上述の範囲以上または以下を構成していてもよい。
【0027】
エマルジョンは、一つまたは複数のポリマーを含んでいてもよい。完成したコーティング系の耐久性と靭性を増加させるために、そして舗装材に塗布されたコーティング中に細骨材材料を維持するのを支援するために、ポリマーを使用してもよい。例示的なポリマーまたはコポリマーは、アスファルト・エマルジョン残留物に所望の特性が得られるのに役立つものを含み、こうした特性は、例えば、下層の舗装材に強力に接着する応力吸収層を与えることにより、非粘着面を与えることにより、または非膨潤性のポリマーを与えることにより得られる。一例では、ポリマーは、ポリマーおよびコポリマーの組み合わせ、例えばアクリル、スチレンブタジエンゴム、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。ポリマーは、エマルジョンの約1.0重量%から約5.0重量%を構成していてもよい。
【0028】
例示的なアクリルポリマーまたはコポリマーは、好ましくはアクリレートモノマーから誘導される。アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、およびこれらのアクリレートモノマーの誘導体を使用したものであってもよい。(メタ)アクリル酸類の例示的なエステル類には、アルキルおよびヒドロキシアルキルエステル類、例えば、メチル(メタ)アクリレート類、エチル(メタ)アクリレート類、ブチル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、および長鎖アルキル(メタ)アクリレート類、例えばエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらには限定されない。(メタ)アクリルアミドの誘導体には、アルキル置換された(メタ)アクリルアミド類、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、および長鎖アルキル(メタ)アクリルアミド類、例えばN-ラウリル(メタ)アクリルアミド、およびN-ステアリル(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、これらには限定されない。またアクリルポリマー類には、アクリルとして一般に公知のポリマー、アクリレートポリマー類、ポリアクリレート類、またはアクリルエラストマー類が挙げられる。アクリレートポリマー類は、概ねプラスチックと称される場合があるポリマーの群に属する一方で、アクリルエラストマー類は、主成分がアクリル酸アルキルエステル(例えば、エチルまたはブチルエステル)であるタイプの合成ゴムに対する一般的な用語である。
【0029】
例示的なコポリマーには、ポリオレフィンから誘導されたポリマー、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、置換されたスチレン、ブタジエン、不飽和ポリエステル、エチレン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、アクリルコポリマーは、アクリレートモノマー類およびそれらの混合物から誘導され、スチレンまたはエチレンと共重合したものである。さらに他の実施形態では、アクリルコポリマーは、ブチルアクリレートから誘導され、スチレンまたはエチレンと共重合したものである。そしてさらに他の実施形態では、コポリマーはアクリロニトリルブタジエンである。
【0030】
エマルジョンは、一つまたは複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、貯蔵、輸送、塗布、硬化、およびキュア(cure)におけるエマルジョンの適切な安定性、粘度、およびその他の必要な特性を確立する。界面活性剤はまた、舗装材中のポリマーバインダーを短期的および長期的に強化しやすくする。
【0031】
界面活性剤は、非イオン系界面活性剤および両性界面活性剤であってもよい。しかしながらほとんどの実例では、エマルジョンはカチオン系界面活性剤を含まず、これは、エマルジョン安定性へのそれらの有害な影響と、本開示の他所で述べる理由に起因する。したがって、両性界面活性剤および/または非イオン系界面活性剤が、カチオン系界面活性剤の代りに好ましい。両性界面活性剤および/または非イオン系界面活性剤は、舗装材上に噴霧されると、エマルジョンの分解/キュア時間を早める。両性界面活性剤は、低pHでカチオン性、そして高pHでアニオン性となり得るものである一方、非イオン性のものは特定電荷を担持しない。対照的に、典型的なカチオン系界面活性剤、例えば脂肪族アルキルアミンは常にカチオン性である。カチオン系界面活性剤は、非常に高いpHである場合は例外として、強い正電荷を有する。しかしながら、上記のとおりのギルソナイト-アスファルト配合物を伴う強い正電荷の界面活性剤は問題があり逆効果である。実例としては、強く正に帯電した界面活性剤は、エマルジョンを短時間で不安定化させ、特にアスファルト配合物の8重量%~10重量%より多いギルソナイト担持量ではそうである。アスファルト配合物の20重量%で存在するギルソナイトを用いると、両性界面活性剤は、穏やかに電荷の緩衝された界面活性剤活性を与え、これにより安定性の向上が生じる。さらに、エマルジョンを舗装材上に噴霧する場合、両性界面活性剤はエマルジョンの分解/キュアを加速させる。対照的に、非イオン系界面活性剤は、舗装材上に塗布される場合、実際に安定性を与える場合があるだけでなく、エマルジョンの分解/キュアを遅延させる。本エマルジョンは意外なことに、カチオン系界面活性剤の使用を回避しつつこれらの競合する特徴を両立させる。
【0032】
例示的な両性界面活性剤には、アルコキシル化アルキルアミンが挙げられるが、これらには限定されない。その他の例示的な両性界面活性剤には、ベタインおよび両性イミダゾリニウム誘導体が挙げられる。
【0033】
例示的な非イオン系界面活性剤には、エオトキシル化化合物およびエステル類,例えばエトキシル化脂肪アルコール類、エトキシル化脂肪酸、ソルビタンエステル類、エトキシル化ソルビタンエステル類、エトキシル化アルキルフェノール類、エトキシル化脂肪アミド類、グリセリン脂肪酸エステル類、アルコール類、アルキルフェノール類、およびそれらの混合物が挙げられる。一例では、非イオン系界面活性剤は、ノニルフェノールエトキシレートまたはエトキシル化アルコールであってもよい。
【0034】
界面活性剤は、エマルジョンの約0.25重量%から約4.0重量%を構成する。一例では、界面活性剤は、エマルジョンの0.25重量%から約2.5重量%を構成する。さらに、両性界面活性剤は、エマルジョンの約0.25重量%から約1.0重量%を構成する。非イオン系界面活性剤は、エマルジョンの約0.25重量%から約4.0重量%を構成していてもよい。一例では、非イオン系界面活性剤は、エマルジョンの0.5重量%から約2.0重量%を構成する。しかしながら、界面活性剤レベルは、上に言及した範囲に厳格に制限されているわけではない。
【0035】
エマルジョンは、アスファルト配合物中のギルソナイトを帯電させる改質剤を含んでいてもよい。改質剤は、エマルジョンの0.25重量%から3.0重量%の間で存在する。このレベルでは、エマルジョンのpHは、6.5未満、そして好ましくは5.0未満に低下する。エマルジョン中で6.5のpHを下回るレベルは、配合物を伴う帯電したギルソナイトを示す。上に説明したとおり、改質剤を使用してエマルジョンのpHを酸性状態にまで下げることにより、ギルソナイト内の窒素ピロールが活性化してN+の正に帯電した分子となる。したがって、エマルジョンは、界面活性剤に類似した部分を含む改質されたギルソナイトを含み、この部分が今度は、使用時の安定性と接着性を向上させる。改質剤は、酸、例えば塩酸であってもよい。
【0036】
エマルジョンは、計画されている使用、塗布方法、および貯蔵条件に関連してエマルジョン特性を調節する、その他の随意の添加物を含有していてもよい。これらには、例えば、鉱物塩類、増粘剤、安定化剤、不凍剤、接着促進剤、殺生剤、顔料等が挙げられる。しかしながらエマルジョンは、実質的にトール油ピッチまたはコールタールを含まない。
【0037】
一例では、エマルジョンは、エマルジョンの重量に対して、ギルソナイトを含む約55%~70%の間のレベルのアスファルト配合物;約1%~5%の間のレベルの一つまたは複数のポリマー;約0.5%~2%の間のレベルの非イオン系面活性剤;約0.25%~1.0%のレベルの両性界面活性剤;約0.5%~2.5%のレベルの改質剤、例えば酸;そして収支を100%とする水を含む。
【0038】
コーティング系はまた、細骨材材料を含む。細骨材材料には、粉砕されたチャート(chert)、珪岩、または炭酸塩を挙げてもよいが、これらには限定されない。その他のタイプの細骨材材料も、同様に使用してもよい。細骨材は、乾燥した、清浄な、安定した、耐久性のある、そして、角張った形状で、高度にテクスチャ加工された表面を有していてもよい。一例では、細骨材は、細骨材の少なくとも50重量%のシリコーンダイオキサイドと、細骨材の約5重量%までの酸化カルシウムとを含むことができる。
【0039】
細骨材材料は、表面摩擦の特徴を向上させるのに有効である。細骨材材料は、容易にそして均等に、エマルジョンをともに、よりかなりの率で、例えば少なくとも平方ヤードあたり1.0重量ポンドの率で舗装材上に塗布してもよい。塗布時に、エマルジョンが硬化しキュアするにつれ、かなりの割合の細骨材材料がエマルジョン内に埋め込まれる、そしてその中で充分に結合すると考えられる。細骨材材料は、長期間だけでなく短期間においても強化された摩擦および安全性に関する特徴を提供することを目的として、充分に埋め込まれた状態で留まる。細骨材は、ASTM C136に準拠して試験される場合に、表2に示された段階的な制限を有することができる。さらに、例示的な細骨材材料は、さらに以下の表3に例示した特性を含んでいてもよい。
表2 微細材料骨材の粒子サイズ
【表2】
表3 細骨材の特性
【表3】
【0040】
表3では、モース(Mohs)硬度試験を、モース尺度を用いた標準試験ASTM MNL46にしたがって実行した。AIMSテクスチャを、AASHTO TP81にしたがって試験し、ソース骨材を、1/4インチのサイズの粒子に対してNo.4を用いて試験した。研磨石の値を、ASTM 3319にしたがって試験し、1/2インチふるいを通過し1/4インチふるい上に留まるソース骨材を用いて、細骨材用に修正した。研磨石の値は、試験法ごとに「F」スケールを用いて読み取る。好ましくは、細骨材材料は、ASTM D-5821にしたがって測定された持続可能な100%破面を有する。細骨材材料はまた、ASTM D-2419にしたがって試験した85より大きい砂等量を有していてもよい。
【0041】
またエマルジョンを、ポリマーの添加なしで評価して、様々なパラメータを決定した。本明細書におけるポリマーの添加なしのエマルジョンは、以下の表4に示す特性を有していてもよい。
表4 ポリマーなしの安定なカチオン系エマルジョンの特性
【表4】
【0042】
本明細書に記載の完成したエマルジョンは、含まれるポリマーとともに、以下の表5に示す特性を有していてもよい。
表5 ポリマーありの安定なカチオン系エマルジョンの特性
【表5】
【0043】
本開示の実施形態は、上記の安定なカチオン系エマルジョンを作製する方法を含む。まず、この方法は、アスファルト・セメントをギルソナイトと配合して、上記のとおりの成分範囲を有するアスファルト配合物を形成することを含む。配合は、標準的なバットミキサー(vat mixer)等を用いて行ってもよい。この配合工程は、随意のガス油、例えば大気軽油をアスファルト配合物に添加することを含む。ガス油は、下層の舗装材へのエマルジョンの浸透を助ける場合がある。次に、随意の界面活性剤をアスファルト配合物に添加する。この随意の界面活性剤は、アスファルト配合物中のギルソナイトの融解と配合を助けるのに使用する。この段階でのアスファルト配合物の組成物を、或る時間の間、少なくとも華氏300度の温度に暴露させる。一例では、アスファルト配合物を、華氏約350度の温度に暴露させて、高温で24~48時間、混合する。
【0044】
この方法は、アスファルト配合物を形成することとは独立に、水と、改質剤(例えば酸)と、一つまたは複数の界面活性剤とを含む水溶液を準備することを含む。上に言及したとおり、カチオン系界面活性剤は、この水溶液中に必要ではない。一例では、水に酸、続いて界面活性剤を添加する。この水溶液をその後、或る時間の間、混合する。
【0045】
続いて、アスファルト配合物と水溶液をエマルジョンミル(emulsion mill)中にポンプ輸送して、エマルジョンを形成する。より詳細には、この方法は、アスファルト配合物を水溶液と一つにしてカチオン系の安定なエマルジョンを形成することを含む。上記のとおり、酸は、さらに酸性の組成物を生成するものであり、アスファルト配合物中のギルソナイトの部分上に正電荷を生成する効果を有し、これによって、安定性の向上したカチオン系エマルジョンを形成する。エマルジョンミルは、ギルソナイト-アスファルト配合物と水溶液を連続工程において一緒にせん断する。
【0046】
この方法は、一つまたは複数のポリマーを水溶液に、またはエマルジョンに添加することを含む。例えば、ポリマーを、ミリングに先立って水溶液、すなわちエマルジョンの水相に添加してもよい。あるいは、ポリマーを、貯蔵タンクまたは輸送車両への積載に先立って、ミリングされたエマルジョンに「後添加」してもよい。
【0047】
後処理済みカチオン系エマルジョンを貯蔵タンクにポンプ輸送してもよく、そして必要になるまで貯蔵してもよい。カチオン系エマルジョンは安定なので、より長い貯蔵時間が可能である。これにより、在庫管理が改善し、配合者が要望に対してさらに素早く対応できるようになる。さらに、貯蔵時間を延ばせることが、舗装材表面に塗装した場合にカチオン系エマルジョンの硬化やキュアの特性に悪影響を及ぼすようなことはない。
【0048】
本開示のもう一つの実施形態は、コーティング系を表面に塗布する系および方法である。この系および方法は、高い骨材担持量レベルに対応できるよう改良された塗布装置車両10を用いて、上記のコーティング系を塗布することができる。
図1A~3に、コーティング系の塗布に使用される塗布装置車両の様々な実施形態を例示する。
図1Aに示すとおり、塗布装置車両10は、その車両に搭載された噴霧ユニット20および散布器ユニット30を含んでおり、エマルジョンおよび細骨材をそれぞれ、単一車両を用いて共に塗布することができるようになっている。塗布装置車両10はまた、カチオン系エマルジョンを保持する貯蔵タンク12を含む。噴霧ユニット30は、上記のとおり、安定なカチオン系エマルジョンを様々な塗布率で噴霧するように構成されている。散布器ユニット単位30は、細骨材を表面に塗布するように構成されている。一実施形態では、散布器ユニット30は、細骨材材料を保持するホッパー32と、ホッパー32に結合した制御可能なゲート34とを含む。制御可能なゲート34は可動であり、細骨材をホッパー32から射出することができる。散布器ユニット単位30はまた、制御可能なゲート34の近傍にローラー組み立て体40を含む。ローラー組み立て体40は、噴霧されたエマルジョン上に細骨材を均一に展開/滴下するために、細骨材材料をホッパー32から制御可能なゲート34を通して誘導するように構成されている。ローラー組み立て体40は、樋44内部に位置する細長いローラーバー42(
図1B~1D)を含んでいてもよい。示されるとおり、ローラーバー42は、ローラーバー42の長さ方向に続く、外向きに伸びたひげ状突起(tine)を含んでいてもよい。ローラーバー42は、モーター46に操作可能に結合しており、このモーターを使用してローラーバー42を回転させる。よって、好ましい散布器ユニットを、ローラーユニットまたはローラー散布器と称してもよい。この系は随意に、細骨材材料をホッパーから除去するのを支援する手段を含む。そうした随意の手段は、内部オーガ(auger)、コンベヤ、もしくはバイブレーター、またはその他の同様な装置であってもよい。この系はまた、散布器ユニットおよび噴霧器ユニットを操作するように構成されたコントローラを含む。コントローラにより塗布装置車両の操作者は、エマルジョンと併せて細骨材散布器ユニットを、それらの成分が表面に塗布されているときに操作することが可能になる。
【0049】
図2A~3に塗布装置車両の代替の実施形態を例示する。
図1A~1Dに示す塗布装置車両10と
図2A~3に例示された塗布装置車両との間の共通の部分と特徴は、同一の参照番号を有する。
図2A~2Eに示す一実施形態に準拠すれば、塗布装置車両10は、ホッパー132a(
図2Bおよび2C)を有する、回転する散布器ユニット130aを含む。したがって、ローラー組み立て体の代わりに、散布器ユニットは、フィン(すなわち旋回するスピナー(spinner))を有する回転プレート140を含んでいてもよい。さらに、ゲート134aは、ホッパー132aの背部に向けて露出していてもよい。
図2D~2Eに示す一実施形態に準拠すれば、塗布装置車両10は、ホッパー132bを有する、回転する散布器ユニット130bを含む。回転する散布器ユニット130bは、フィン(すなわち旋回するスピナー)を有する回転プレート140を含んでいてもよい。しかしながら、ゲート134は、ホッパー132aの背部の向きに露出していてもよい。あるいは、
図2Dおよび2Eに示すとおり、ゲート134bはホッパー132bの下に露出していてもよい。開示の実施形態に準拠すれば、摩擦の向上した結果が、いくつかの修正はあるにしてもこの標準的な「旋回するスピナー」ユニットを用いて得られている。
【0050】
図3に例示するさらに別の実施形態では、
図3に示すとおり、別法として系を、空気で駆動される散布器ユニット230を含むよう構成された塗布装置車両10とともに使用する。したがって、散布器ユニットは、空気を介して骨材を塗布する、空気で駆動される装置である空気ユニット240を、ローラー組み立て体の代わりに含んでいてもよい。
【0051】
コーティング系を塗布する方法は、塗布装置車両を用いて、安定なカチオン系エマルジョンを表面上に塗布することを含む。上述のとおり、安定なカチオン系エマルジョンは:a)正電荷を有するように改質されたギルソナイトを含むアスファルト配合物と;b)一つまたは複数のポリマーと;c)カチオン系界面活性剤を含まない一つまたは複数の界面活性剤とを含む。一例では、安定なカチオン系エマルジョンは、表面に、平方ヤードあたり0.10から1.0ガロンの量で噴霧される。別の例では、安定なカチオン系エマルジョンは、平方ヤードあたり0.15から0.25ガロンの量で噴霧される。
【0052】
この方法はまた、表面に塗布された安定なカチオン系エマルジョン上に、平方ヤードあたり少なくとも1.0重量ポンドの率で細骨材を塗布することを含む。一例では、細骨材材料は、安定なカチオン系エマルジョン上に、平方ヤードあたり1.0重量ポンドから平方ヤードあたり5.0重量ポンドの量で塗布される。安定なカチオン系エマルジョンは、車両に搭載された噴霧器ユニットを介して噴霧される。そして細骨材は、同一の塗布装置車両に搭載された散布器ユニットを用いて塗布される。しかしながら、安定なカチオン系エマルジョンと細骨材材料を、複数の塗布装置車両を用いて塗布することが可能であることは理解されるものする。
【0053】
本開示は、以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに理解される場合がある。
【実施例1】
【0054】
カチオン系エマルジョンと細骨材材料を本明細書に記載のとおり準備した。散布器ユニット(旋回スピナー型)を標準的なアスファルト・ディストリビュータ(asphalt distributor)噴霧トラックに搭載した。トラックを、1.0から3.0重量ポンド/平方ヤードの細骨材材料を塗布するように設定した。カチオン系エマルジョン組成物は、エマルジョンの約60重量%のアスファルト配合物と、エマルジョンの約2.5重量%のラテックスポリマー(SB-アクリル)とを含んでいた。細骨材材料は、表2および3に示す物理的特性を含んでいた。特に、等級付けされた粒子サイズは、No.14のUSふるいを100%通過するものであった。カチオン系エマルジョンを、飛行場のアスファルト舗装材表面に塗布したが、この表面は、コーティングに先立って、標準的な舗装状態指数(PCI)にしたがえば「貧弱」な状態であった。カチオン系エマルジョンを表面に、平方ヤードあたり0.20ガロンで塗布し、細骨材材料を平方ヤードあたり1.5重量ポンドで塗布した。塗布と乾燥の後、表面摩擦試験を行った。この実例では、摩擦試験は、連続式摩擦係数測定装置(CFME)向けの連邦航空局(FAA)試験法、FAA AC 150/5320-12にしたがって進めた。FAAのCMFE規格を使用して、飛行場の表面の摩擦値、よってその安全性レベルを評価した。この試験により、タイヤの制動に対する表面摩擦の直接的な尺度が得られ、表面がFAAに準拠しなければならない最小値が設定される。この試験により、FAAのCMFEの40マイル毎時試験値である1.07と、60マイル毎時値である1.05が明らかになった。試験は、6日後、34日後、そして160日後に行ったが、そうする目的は、時間経過後の、そして厳しい冬の天気の存在下での表面摩擦の不変性を、除雪車を用いて測定するためであった。測定値は、以下の表6に記録してある。舗装材の状態を、PCIにしたがって、塗布後に観察して「顕著に改善」から「良好」とした。こうして、カチオン系エマルジョンの非骨材成分が原因で消失した摩擦の顕著な回復が、平方ヤードあたり1.5重量ポンドの細骨材材料の添加により達成された。この担持量レベルで、実施例1のコーティング系は、安全性に関するFAA要件を超えた。
表6 実施例1において実行した試験から得られた記録値
【表6】
【実施例2】
【0055】
この実施例では、カチオン系エマルジョンと細骨材材料を実施例1のとおりに準備したが、例外は、エマルジョンについてポリマーを(エマルジョンの)2.0重量%レベルのアクリルとしたことである。コーティング系を飛行場アスファルト滑走路舗装材表面に塗布したが、この面は、コーティングに先立って、「妥当な」状態であった。コーティング系を6つの試験領域に、以下の表7に示す塗布率を用いて塗布した。
表7 実施例2の試験プラン
【表7】
塗布と乾燥の後、摩擦を、FAAのAC CMFE手順を用いて評価した。試験は、24時間後と5日後に行ったが、そうする目的は、時間経過後の表面摩擦の不変性を測定することであった。塗布後の測定値を以下の表8に示す。試験は、FAAのAC 150/5320-12にしたがって行った。
表8 実施例2の摩擦データ
【表8】
【0056】
図3および表8に見られるとおり、エマルジョンの非骨材成分が原因で生じた消失した摩擦の顕著な回復が、1.5重量ポンド/平方ヤードの骨材を、3つの異なるカチオン系エマルジョンの率で添加することにより達成された。この実施例では、これらの結果は、PCIを用いて舗装状態の顕著な改善が観察されたことに加え、安全性に関するFAA要件を超えた。加えて、3.0重量ポンド/平方ヤードの率の骨材において、コーティング系は実際に、前処理レベルを超えて到達可能な最高レベルまで舗装材の全体の摩擦を増加させた。このレベルでのデータは、新しい舗装材のデータと相関していると考えられる。これは、そうした比較的低い細骨材レベルにしては意外な結果である。
【0057】
本明細書に記載の新規の概念は、いくつかの利点および意外な結果を有している。この新規のコーティング系は、軽度の塗布レベルから中程度(またはそれより高度)レベルでの典型的な舗装材コーティング塗装において観察されることのなかった摩擦特性の向上を実現する。例えば、これらの担持量レベルで表面のシール・コーティングを現状、実施するには限界がある。1つには、より高粘度のコーティング系を舗装材上に塗布するには、a)塗布される骨材材料の量も同時に増さなければならない、そしてb)さらに大きい粒子を使用しなければならないからである。しかしながら、(様々な政府機関により)使用が承認されている典型的な骨材は、そうした「より高粘度の」塗布には好適でない。さらに、既存の塗布装置車両は、骨材を均一に、平方ヤードあたり1.0重量ポンド以上のレベルで塗布するようには設計されていない。加えて、舗装材に塗布される骨材の量にかかわらず、従来のアスファルト・エマルジョンのさらに高率での塗布は、許容できないレベルの粘着性/タック(tackiness)をさらに生じる可能性がある。これは、今度は、タイヤへのエマルジョンの粘着を生じる場合があり、また舗装材をはがしてしまうかもしれない場合もある。本発明の概念は、複数の方法でこれらの欠点を克服する。記載のアスファルト-エマルジョンはさらに高粘度とすることができる、舗装材にさらに良好に接着することができる、摩擦細骨材をさらに良好に保持できる、そして時間経過に対してさらに耐久性がある。細骨材材料は、舗装材上のエマルジョンに、さらに高い率で塗布することができる。実例としては、細骨材材料は、平方ヤードあたり少なくとも1.0重量ポンド以上で塗布することができる。
【0058】
舗装材上では、分解したまたはキュアされたエマルジョンから残った残留物は、ギルソナイトに起因する少数の特別な特徴を有する。経時変化し酸化した下層表面ACへの浸透とその軟化が、ギルソナイトによって促進される。また、ギルソナイトにより、さらに柔らかいACを配合物に添加することが可能になり、これと相まって、下層の経時変化した舗装材のACが復元される一方で、シーラーとして実用にならないくらいにまで表面上で柔らかくなりすぎることはない。またギルソナイトは天然の抗酸化剤であり、UV劣化に対し抵抗性がある。
【0059】
コーティング系は、「基準に達した」短期の摩擦という結果と優れた長期の摩擦という結果を伴う「典型的な」なキュア(例えば、8~12時間以上)を生じる。特に、エマルジョンは、気象条件に依存して、およそ8~12時間以上でキュアするが、このエマルジョン系は、高いパーセンテージの摩擦細骨材を維持するように見える。エマルジョン系についての摩擦数値は、時間経過とともに着実に増加する傾向にあり、最終的には前処理の摩擦数値に達する、またはそれを超越することさえある。
【0060】
新規のコーティング系はまた、フォグ・シール(fog seal)のあらゆる利点を提供するが、それと同時に、例えば、軽度から中程度の塗布率で舗装材上に塗布された残留物が増加する。コーティング系は、長期間にわたる溶液であり、その期間は5年以上持続すると考えられる。さらに、コーティング系は、舗装材に侵入しこれと融合することにより、舗装状態を改善させる。コーティング系は、このことを実行するだけでなく、高性能CMFE試験法による比較的高量の摩擦を、最初だけでなく長期にわたり維持する。
【0061】
コーティング系は、便利な単一車両系により塗布してもよい。これにより、請負業者の投資および人件費が制限され、その結果として、系をさらに効率的に塗布することができる。さらに、コーティング系は、高速滑走路およびあらゆるその他の飛行場の舗装材(制限なし)、または道路上での使用に好適である。
【0062】
さらに、本明細書に記載のコーティング系は、実質的にさらに高量で適用するのに充分安定でバランスのとれたものであり、そしてその上、状態をさらに長期間にわたり改善するだけでなく飛行場の舗装材の安全性に関する特徴を提供する。しかしながら、他の処理剤とは違って、本明細書に記載のコーティング系は、バインダー上に骨材の余分なブランケットを伸展させる必要はない。これにより、概して飛行場にとって安全性の課題である、粘りのない骨材を除去するのに必要な追加の掃除作業が必要でなくなる。
【0063】
コーティング系は、バインダーと骨材との液体混合物、および最終的に亀裂、剥離、そして劣化して安全性の課題を生じることになるその他の充填材を必要としない。記載のコーティング系は、塗布して好適に厚い層にすることができ、これによって提供される表面コーティングは、さらに耐久性がありその上さらに安全で、コーティング系の長期にわたる寿命を通じて優れた摩擦特性を有するようになる。
【0064】
新規のコーティング系、そして特にエマルジョンは、貯蔵、出荷、そして所望の表面への塗布が容易に行える。同様に、新規の骨材組成物は、便利な車両搭載型散布器ユニットを通じてエマルジョンと共塗布するのに好適な、微細で高密度の、角張った高摩擦骨材材料を含む。これとともに、これらの成分は意外なことに、コーティング成分の表面マイクロテクスチャとマクロテクスチャ粗さを維持しつつ、またはさらには増加させつつ、耐久性も増加させるのに効果的である。
【0065】
本開示の様々な修正や変更を、添付請求項の広い範囲から逸脱することなく行えることは、当業者には理解されるであろう。これらのいくつかはすでに上で考察されており、その他は当業者には自明であろう。本開示の範囲は、請求項よってのみ制限される。