(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】電動車両、アクセル部材、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 26/04 20060101AFI20230612BHJP
B62K 23/04 20060101ALI20230612BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20230612BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20230612BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20230612BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20230612BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230612BHJP
【FI】
B60K26/04
B62K23/04
B62M7/12
G05G1/30 Z
G05G1/38
B60L15/00 J
B60L3/00 N
(21)【出願番号】P 2019034211
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111489(WO,A1)
【文献】特開2007-182196(JP,A)
【文献】特開2013-057252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368376(US,A1)
【文献】特開2012-016972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/04
B62K 23/04
B62M 7/12
G05G 1/30
G05G 1/38
B60L 15/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの駆動によって走行する電動車両であって、
受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材
と、
前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内であることを示す情報を表示する表示部と、
を備え、
前
記対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、
前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態であ
り、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記アクセル開度が前記対象範囲内であることを示す情報を前記表示部へ表示させる動作を行う、
電動車両。
【請求項2】
前記電動車両は、予め決められた位置に振動子を備え、
前記予め決められた動作は、前記振動子を振動させる動作である、
請求項
1に記載の電動車両。
【請求項3】
モーターの駆動によって走行する電動車両であって、
自動二輪車であり、
受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材を備え、
前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、
前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である、
電動車両。
【請求項4】
前記第1抵抗力と前記第2抵抗力とは、離散的に異なる抵抗力である、
請求項1
から3のうちいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記アクセル開度の変化率が予め決められた閾値以上である場合、前記第1抵抗力と前記第2抵抗力とが同じ抵抗力である、
請求項1
から4のうちいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記電動車両は、前記モーターの駆動によって走行する自動車である、
請求項1から
5のうちいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項7】
モーターの駆動によって走行する
自動二輪車に備えられ、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記
自動二輪車の速度を加速または減速させるアクセル部材であって、
前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、
前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力である、
アクセル部材。
【請求項8】
モーターの駆動によって走行する電動車両の制御方法であって、
前記電動車両は、
受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材
と、
前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内であることを示す情報を表示する表示部と、
を備え、
前記制御方法は、
前
記対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異ならせるステップ
と、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記アクセル開度が前記対象範囲内であることを示す情報を前記表示部へ表示させる動作を行うステップと、
を有し、
前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である、
制御方法。
【請求項9】
モーターの駆動によって走行する自動二輪車の制御方法であって、
前記自動二輪車は、
受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記自動二輪車の速度を加速または減速させるアクセル部材を備え、
前記制御方法は、
前記アクセル部材のアクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異ならせるステップを有し、
前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、
前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両、アクセル部材、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両のエネルギー効率の改善を図るために、モーターのニュートラル状態を適切に使用して運転することが望まれる。例えば、前方の信号が赤信号であることが検出された場合、モーターをニュートラル状態に設定して惰力走行を行えば、その間のエネルギーの消費を抑えられ、エネルギー効率の改善が図れる。
【0003】
電動車両では、アクセルペダルを所定のアクセル開度以上となるように踏み込むと、モーターは力行状態となり、加速力を発生していく。アクセルペダルを所定のアクセル開度以下となるように踏力を緩めると、モーターは回生状態になり、減速力を発生していく。モーターが力行状態となる場合のアクセル開度と回生状態となる場合のアクセル開度との間に、力行も回生も行わないニュートラル状態がある。したがって、モーターをニュートラル状態に設定する場合、ドライバーは、モーターが回生状態となる範囲と力行状態となる範囲との間の範囲に含まれるアクセル開度となるように、アクセルペダルを踏み込めばよいことになる。
【0004】
一方、電動車両を運転しているドライバーは、車両の加減速を体感しながらアクセルペダルの踏み込み量を調整しており、アクセルペダルの踏み込み量からモーターがニュートラル状態であるか否かを認識することは難しい。もちろん、ドライバーは、セレクトレバーの操作でニュートラル状態に設定することはできる。しかしながら、モーターをニュートラル状態に設定するためにドライバーが走行中にセレクトレバーを操作するのでは、ドライバビリティが損なわれてしまう。
【0005】
ここで、特許文献1には、アクセルペダルの情報をドライバーにフィードバックできるアクセルペダル情報フィードバックシステムが記載されている。特許文献1に記載されたアクセルペダル情報フィードバックシステムでは、電動車両の駆動電力の負荷状態をユーザーに認識させるため、予め決められた2つの範囲のうちの第1範囲にアクセル開度が含まれている場合、固定抗力がアクセルペダルに与えられ、アクセル開度が当該2つの範囲のうちの第2範囲に含まれている場合、可変抗力がアクセルペダルに与えられる。すなわち、アクセルペダル情報フィードバックシステムでは、アクセル開度が含まれる範囲に応じて、アクセルペダルに与えられる抗力が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるアクセルペダル情報フィードバックシステムは、アクセル開度が第2範囲に含まれている場合であっても、アクセルペダルに与えられる抗力を駆動電力の負荷状態に応じて変化させるものである。このため、当該アクセルペダル情報フィードバックシステムでは、モーターがニュートラル状態になったことをアクセルペダルからドライバーが認識することは難しい。また、当該アクセルペダル情報フィードバックシステムは、エネルギー効率の改善ついて考慮されていない。すなわち、当該アクセルペダル情報フィードバックシステムでは、バッテリーの消費電力を低減させることが困難な場合がある。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、モーターがニュートラル状態になったことをドライバーが認識でき、モーターのニュートラル状態を使用してドライバーがエネルギー効率の改善を図ることができる電動車両、アクセル部材、及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電動車両は、モーターの駆動によって走行する電動車両であって、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材と、前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内であることを示す情報を表示する表示部と、を備え、前記対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態であり、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記アクセル開度が前記対象範囲内であることを示す情報を前記表示部へ表示させる動作を行う。
本発明の一態様に係る電動車両は、モーターの駆動によって走行する電動車両であって、自動二輪車であり、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材を備え、前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である。
【0010】
本発明の一態様に係るアクセル部材は、モーターの駆動によって走行する自動二輪車に備えられ、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記自動二輪車の速度を加速または減速させるアクセル部材であって、前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異なり、前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力である。
【0011】
本発明の一態様に係る制御方法は、モーターの駆動によって走行する電動車両の制御方法であって、前記電動車両は、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記電動車両の速度を加速または減速させるアクセル部材と、前記アクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内であることを示す情報を表示する表示部と、を備え、前記制御方法は、前記対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異ならせるステップと、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記アクセル開度が前記対象範囲内であることを示す情報を前記表示部へ表示させる動作を行うステップと、を有し、前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である。
本発明の一態様に係る制御方法は、モーターの駆動によって走行する自動二輪車の制御方法であって、前記自動二輪車は、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、前記自動二輪車の速度を加速または減速させるアクセル部材を備え、前記制御方法は、前記アクセル部材のアクセル開度が予め決められた第1開度と前記第1開度よりも大きい第2開度との間の対象範囲内である場合における前記アクセル部材の第1抵抗力と、前記アクセル開度が前記対象範囲外である場合における前記アクセル部材の第2抵抗力とが異ならせるステップを有し、前記第1抵抗力及び前記第2抵抗力のそれぞれは、前記アクセル部材から前記操作を行う方向と反対の方向に作用する抵抗力であり、前記アクセル開度が前記対象範囲内である場合、前記モーターの状態は、ニュートラル状態である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドライバーは、アクセルペダルの抵抗力からモーターの状態がニュートラル状態に設定されているか否かを判定することができ、ニュートラル状態を適切に使用して、エネルギー効率の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置の概要の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置におけるアクセル開度と加減速の状態との関係の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置においてモーターがニュートラル状態から回生状態になった場合の減速度合いの説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るアクセル装置における処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る電動車両のアクセル装置の概要の説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る電動車両のアクセル装置の概要の説明図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る電動車両のアクセル装置の概要の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1の概要の説明図である。本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1は、電動車両として、例えば、モーターの駆動によって走行する四輪自動車のアクセル部材に適用される。なお、電動車両は、モーターの駆動によって走行する四輪自動車に代えて、モーターとガソリンエンジンとの双方を備えたハイブリッドカーであってもよい。
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1は、アクセルペダル11と、アーム12と、ブラケット13と、回転検出部14と、抵抗力発生部材15と、抵抗力設定部16と、ECU(Electronic Control Unit)17と、インバータ18と、モーター19と、バッテリー20を備える。
【0016】
アクセルペダル11は、電動車両を加減速する場合にドライバーが足を載せて操作するアクセル部材であり、受け付けた操作に応じたアクセル開度に変位し、電動車両の速度を加速または減速させる。アーム12は、アクセルペダル11の動きをアクセル開度に応じた回転力に変換する。アーム12の先端には、アクセルペダル11が取り付けられ、アーム12の他端は、車体に固定されたブラケット13に、回動自在に取り付けられる。
【0017】
回転検出部14は、アーム12の回転角を検出する。回転検出部14は、例えば、ロータリーエンコーダで構成できる。回転検出部14の検出信号は、ECU17に送られる。
【0018】
抵抗力発生部材15は、アクセルペダル11を踏み込んだ場合に、アーム12の回転力に抗するような抵抗力をアーム12に与える。すなわち、ドライバーがアクセルペダル11にFaで示すような力を与えると、抵抗力発生部材15は、アーム12をFbに示すような抵抗力を与える。これにより、アクセルペダル11を踏み込む操作と反対の方向に作用する抵抗力Fbが生じる。抵抗力発生部材15は、その抵抗力Fbが可変できる構造となっている。このような抵抗力発生部材15は、例えば、スプリング、オイルシリンダー、エアーシリンダー等から実現できる。抵抗力発生部材15がスプリングの場合には、スプリングの張力設定により抵抗力が可変できる。抵抗力発生部材15がオイルシリンダー、エアーシリンダー等の場合、オイルシリンダー、エアーシリンダー等の圧力設定により抵抗力が可変できる。
【0019】
抵抗力設定部16は、抵抗力発生部材15の抵抗力を可変させる。本実施形態では、抵抗力設定部16は、ECU17の制御の下に、少なくとも離散的な2段階(第1抵抗力B1及び第2抵抗力B2)に、抵抗力発生部材15の抵抗力を設定できる。
【0020】
ECU17は、アーム12の回転検出量からアクセル開度を判定する。そして、ECU17は、アクセル開度に応じた制御信号をインバータ18に供給する。ここで、アクセル開度は、アーム12の可動範囲を100%とした場合のアーム12の回転角の百分率によって表される。例えば、ドライバーがアクセルペダル11から足を離している場合のアーム12の回転角がアクセル開度0%に相当する。また、例えば、ドライバーがアクセルペダル11から最大限まで踏み込んでいる場合のアーム12の回転角がアクセル開度100%に相当する。
【0021】
インバータ18は、加速力が必要な場合、バッテリー20からの直流電源をアクセル開度に応じた周波数の交流電源に変換して、モーター19に供給する(力行状態)。また、インバータ18は、減速力が必要な場合、モーター19で発電した交流電源を直流電源に変換して、バッテリー20に充電する(回生状態)。モーター19の状態としては、力行状態と回生状態とニュートラル状態とがある。ニュートラル状態は、モーター19が加速も減速も行わず、フリーラン状態となっている状態である。なお、電動車両を等速に維持するためには、摩擦損失等を加速力で補う必要があるため、モーター19がニュートラル状態になると、車速は僅かに減速していく。また、摩擦損失や道路の勾配の影響等があるため、電動車両の実際の加減速は、モーターの力行状態や回生状態による加減速と必ずしも一致するものではない。
【0022】
また、本実施形態では、ECU17は、回転検出部14からのアーム12の回転量の情報から、アクセル開度がニュートラル状態となる範囲内であるか否かを判定する。そして、ECU17は、アクセル開度がニュートラル状態となる範囲を対象範囲とし、アクセル開度が対象範囲内にある場合と対象範囲外にある場合とで、アクセルペダル11の踏み込み時の抵抗力が異なるように抵抗力設定部16を設定する。これにより、ドライバーは、アクセルペダル11の抵抗力から、モーター19がニュートラル状態に設定されているか否かを判定することができ、ニュートラル状態を適切に使用して、エネルギー効率の改善を図ることができる。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1におけるアクセル開度と加減速の状態との関係の説明図である。この例では、アクセルペダル11のアクセル開度θが第1開度A1%と第2開度A2%との間(A1%≦θ<A2%)の範囲は、モーター19がニュートラル状態となる範囲(すなわち、前述の対象範囲)である。アクセル開度が当該範囲に含まれる場合、アクセルペダル11の抵抗力Fbは、第1抵抗力B1となる(Fb=B1)。
【0024】
アクセル開度が第1開度A1%未満の間(0%≦θ<A1%)の範囲にアクセル開度が含まれる場合、モーター19は、回生状態となり、減速力を発生していく。当該範囲にアクセル開度が含まれる場合、アクセルペダル11の抵抗力Fbは、第2抵抗力B2となる(Fb=B2)。また、アクセル開度が第2開度A2%以上の間(A2%≦θ≦100%)の範囲にアクセル開度が含まれる場合、モーター19は、力行状態となり、加速力を発生していく。当該範囲にアクセル開度が含まれる場合、アクセルペダル11の抵抗力Fbは、第2抵抗力B2となる(Fb=B2)。
【0025】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1において、モーター19がニュートラル状態から回生状態になった場合の減速度合いの説明図である。
図3に示すように、アクセル開度がニュートラル状態となる範囲内に含まれるアクセル開度のアクセルペダル11に対する踏力を小さくしてアクセル開度を0%に近づけていくと、これに応じて、モーター19は、減速力を発生していく。発生する減速力は、低速走行時に比べて、高速走行時の方が大きくなる。すなわち、この場合、低速走行時の減速度に比べて、高速走行時の減速度の方が大きい。
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1では、以下のようにニュートラル状態を適切に使用して、エネルギー効率の改善を図ることができる。例えば、ドライバーが、アクセルペダル11を
図2における第2開度A2%以上(A2%≦θ≦100%)まで踏み込んでおり、モーター19が力行状態で電動車両を加速させている場合について考える。この場合、アクセルペダル11の抵抗力Fbは、第2抵抗力B2となっている。
【0027】
ここで、例えば、前方の信号が赤信号であることが検出されたとする。この場合、電動車両のモーター19をニュートラル状態に設定して信号の近傍まで惰力走行させれば、その分、消費電力を抑えられる。加速状態からニュートラル状態にモーター19の状態を移行させる場合、ドライバーは、アクセルペダル11の踏力を弱めていく。アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になるまでドライバーがアクセルペダル11の踏力を弱めると、アクセルペダル11の抵抗力Fbが第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化する。これにより、ドライバーは、モーター19の状態がニュートラル状態に移行したことを認識できる。ドライバーは、ニュートラル状態に移行したことを認識したら、アクセルペダル11の抵抗力Fbが第1抵抗力B1となる範囲を保持するように、アクセルペダル11の踏力を調整してモーター19の状態をニュートラル状態に保持し、所望の位置まで、電動車両を惰力走行させる。
【0028】
電動車両を惰力走行させ、所望の位置まで信号に近づいたら、ドライバーは、アクセルペダル11の踏力を弱めてモーター19を回生状態に設定して、電動車両を減速させる。このとき、ドライバーは、アクセルペダル11の抵抗力Fbが第1抵抗力B1から第2抵抗力B2に変化することにより、モーター19の状態がニュートラル状態を外れて回生状態に入ったことを認識できる。そして、ドライバーは、ブレーキ操作により、所望の停止位置で電動車両を停止させる。
【0029】
ここで、赤信号で停止する前に、信号が青信号に変わったら、ドライバーは、アクセルペダル11を踏み込み、モーター19を力行状態に設定して電動車両を加速させる。このときにも、ドライバーは、アクセルペダル11の抵抗力Fbが第1抵抗力B1から第2抵抗力B2に変化することにより、モーター19の状態がニュートラル状態を外れ、力行状態に入ったことを認識できる。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1における処理を示すフローチャートである。
【0031】
(ステップS101)ECU17は、回転検出部14の検出情報から、アクセル開度を検出して、処理をステップS102に進める。
【0032】
(ステップS102)ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)にあるか否かを判定する。
【0033】
(ステップS103)ステップS102において、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になければ(ステップS102:No)、ECU17は、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第2抵抗力B2に設定して、処理をステップS104に進める。
【0034】
(ステップS104)ECU17は、アクセル開度θに応じて、電動車両を加速または減速させて、処理をステップS101にリターンする。
【0035】
(ステップS105)ステップS102において、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)であれば(ステップS102:Yes)、ECU17は、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第1抵抗力B1に設定して、処理をステップS106に進める。
【0036】
(ステップS106)ECU17は、モーター19の状態をニュートラル状態に設定して、処理をステップS101にリターンする。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、アクセル開度θが予め決められた第1開度A1%と第1開度A1%よりも大きい第2開度A2%との間(A1%≦θ<A2%)の対象範囲内である場合のアクセルペダル11の抵抗力Fb(Fb=B1)と、アクセル開度が対象範囲外である場合におけるアクセルペダル11の抵抗力Fb(Fb=B2)とが異なっており、アクセル開度が対象範囲内である場合、モーター19の状態はニュートラル状態となる。これにより、ドライバーは、アクセルペダル11の抵抗力Fbからモーター19の状態がニュートラル状態に設定されているか否かを判定することができ、ニュートラル状態を適切に使用して、エネルギー効率の改善を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、アクセルペダル11の抵抗力Fbを離散的な2段階(第1抵抗力B1及び第2抵抗力B2)に設定している。これにより、ドライバーは、モーター19の状態がニュートラル状態になったか否かをアクセルペダル11の抵抗力Fbから確実に認識できる。
【0039】
モーター19の状態がニュートラル状態となる場合のアクセルペダル11の第1抵抗力B1と、それ以外の場合のアクセルペダル11の第2抵抗力B2との大きさは、どのように設定してもよい。例えば、第1抵抗力B1を第2抵抗力B2より小さくすると、ドライバーは、モーター19の状態がニュートラル状態になると、アクセルペダル11の力が抜けたように感じることになり、このアクセルペダル11の力が抜けたような感覚から、モーター19の状態がニュートラル状態になったことを認識できる。また、例えば、第1抵抗力B1を第2抵抗力B2より大きくすると、ドライバーは、モーター19の状態がニュートラル状態になると、アクセルペダル11のクリック感を感じることになり、このアクセルペダル11のクリック感から、モーター19の状態がニュートラル状態になったことを認識できる。
【0040】
また、モーター19がニュートラル状態となるアクセル開度θの範囲(A1%≦θ<A2%)は、どのように設定してもよい。モーター19がニュートラル状態となるアクセル開度θの範囲(A1%≦θ<A2%)を広くとると、ドライバーは、モーター19をニュートラル状態に設定しやすくなる。モーター19がニュートラル状態となるアクセル開度θの範囲(A1%≦θ<A2%)を狭くすると、加減速のドライバビリティへの影響は小さくなる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、アクセル開度θが予め決められた第1開度A1%と第1開度A1%よりも大きい第2開度A2%との間(A1%≦θ<A2%)の対象範囲内である場合には、直ちに、モーター19をニュートラル状態に設定しているが、急加速時または急制動時においては、ニュートラル状態に移行すると、加速や減速の妨げになり、ドライバビリティが低下する。そこで、ECU17は、アクセル開度の変化率が予め決められた閾値以上である場合には、アクセル開度θが予め決められた第1開度A1%と第2開度A2%との間(A1%≦θ<A2%)の対象範囲内になっても、モーター19をニュートラル状態に移行させないとともに、アクセルペダル11の抵抗力を変化させないように制御してもよい。
【0042】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電動車両のアクセル装置101の概要の説明図である。なお、本発明の第2の実施形態に係る電動車両のアクセル装置101の基本構成は、前述の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1と同様であり、同一部分には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
前述の第1の実施形態では、ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になると、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化させ、ドライバーに、モーター19がニュートラル状態になったことを認識できるようにしている。
【0044】
これに対して、この第2の実施形態に係る電動車両のアクセル装置101は、さらに、表示部31が備えられる。表示部31は、例えば、電動車両のインストルメントパネルに実装される。表示部31としては、液晶ディスプレイ等を用いてもよいし、LED(Light Emitting Diode)インジケータであってもよい。そして、本実施形態では、ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になると、モーター19をニュートラル状態に設定し、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化させるとともに、モーター19がニュートラル状態であることを示す情報を表示部31に表示させる。これにより、ドライバーは、視覚情報からも、ニュートラル状態を認識できる。
【0045】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る電動車両のアクセル装置201の概要の説明図である。なお、本発明の第3の実施形態に係る電動車両のアクセル装置201の基本構成は、前述の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1と同様であり、同一部分には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
前述の第1の実施形態では、ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になると、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化させ、ドライバーに、モーター19がニュートラル状態であることを認識できるようにしている。そのために、第1の実施形態では、抵抗力発生部材15は、抵抗力設定部16により、その抵抗力が可変できる構造となっている。
【0047】
これに対して、この第3の実施形態に係る電動車両のアクセル装置201は、さらに、アクセルペダル11に振動を与える振動子41が設けられている。そして、本実施形態では、ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になると、モーター19をニュートラル状態に設定し、アクセルペダル11の抵抗力Fbを第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化させるとともに、振動子41によりアクセルペダル11に振動を与える。これにより、ドライバーは、ニュートラル状態をより確実に認識できる。
【0048】
<第4の実施形態>
図7は、本発明の第4の実施形態に係る電動車両のアクセル装置301の概要の説明図である。なお、本発明の第4の実施形態に係る電動車両のアクセル装置301の基本構成は、前述の第1の実施形態に係る電動車両のアクセル装置1と同様であり、同一部分には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
前述までの実施形態では、電動車両として四輪の自動車を想定し、アクセル部材として、ドライバーが足で踏み込んで操作するようなアクセルペダル11について説明してきた。これに対して、この実施形態は、電動車両として、自動二輪車を用いている。電動車両として自動二輪車を用いた場合には、アクセル部材は、ライダーが手で握って回転させて操作するようなアクセルグリップ51となる。この実施形態では、回転検出部14は、アクセルグリップ51の回転角を検出しており、ECU17は、アクセルグリップ51の回転角から、アクセル開度θを検出している。そして、ECU17は、アクセル開度θが第1開度A1%以上、第2開度A2%未満の範囲内(A1%≦θ<A2%)になると、アクセルグリップ51の回転の抵抗力を第2抵抗力B2から第1抵抗力B1に変化させ、ライダーに、モーター19がニュートラル状態になったことを認識できるようにしている。このように構成することで、本発明は、電動車両として自動二輪者である場合にも対応できる。
【0050】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
11…アクセルペダル、14…回転検出部、15…抵抗力発生部材、16…抵抗力設定部、17…ECU