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特許7292710製氷システム、製氷方法、及び製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】製氷システム、製氷方法、及び製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20230612BHJP
   F25C 1/147 20180101ALI20230612BHJP
   B08B 9/055 20060101ALI20230612BHJP
   B08B 9/057 20060101ALI20230612BHJP
   E03F 9/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F25C1/00 A
F25C1/147 K
F25C1/147 J
F25C1/147 G
F25C1/147 H
B08B9/055 556
B08B9/057
E03F9/00
F25C1/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060577
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159640
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
(72)【発明者】
【氏名】羽染 豊成
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281294(JP,A)
【文献】特開2001-153406(JP,A)
【文献】特開2019-025372(JP,A)
【文献】特開2014-083513(JP,A)
【文献】特開2010-169322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00
F25C 1/147
B08B 9/055
B08B 9/057
E03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水を冷却して氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷装置と、
該製氷装置によって生成されたシャーベット状流動体を貯める貯留タンクと、
該貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌する攪拌装置と、
前記貯留タンクから排出される流動体を前記製氷装置を介して該貯留タンクに還流させる還流経路と、を備えた製氷システムにおいて、
前記還流経路は、前記貯留タンクから排出される流動体から氷粒子を分離して塩水を抽出する氷粒子分離機構と、抽出された塩水を前記製氷装置へ送る圧送手段と、前記氷粒子分離機構により分離された氷粒子を前記貯留タンク内に戻す氷粒子返還機構と、を備え
前記氷粒子分離機構は、前記貯留タンクの流動体排出口又はその近傍に設けられ、シャーベット状の流動体から氷粒子を分離する分離フィルタを有し、
前記氷粒子返還機構は、前記分離フィルタに堆積した氷粒子に対して、前記還流経路の流れ方向と逆方向の流体圧力を付与する圧力付与手段を備え、
前記分離フィルタは、筒状であって、外周面に氷粒子が付着するように、前記貯留タンクに形成された下方側に突出するホッパー型の排出部に設けられており、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の最終的な含氷率は、70%以上であることを特徴とする製氷システム。
【請求項2】
塩水を冷却して氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷装置と、
該製氷装置によって生成されたシャーベット状流動体を貯める貯留タンクと、
該貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌する攪拌装置と、
前記貯留タンクから排出される流動体を前記製氷装置を介して該貯留タンクに還流させる還流経路と、を備えた製氷システムにおいて、
前記還流経路は、前記貯留タンクから排出される流動体から氷粒子を分離して塩水を抽出する氷粒子分離機構と、抽出された塩水を前記製氷装置へ送る圧送手段と、前記氷粒子分離機構により分離された氷粒子を前記貯留タンク内に戻す氷粒子返還機構と、を備え
前記氷粒子分離機構は、前記貯留タンクの流動体排出口又はその近傍に設けられ、シャーベット状の流動体から氷粒子を分離する分離フィルタを有し、
前記分離フィルタは、略円錐台形状又は柱状であって、前記貯留タンクの底部に形成された排出部に下方側に突出して設けられており、該分離フィルタの周囲には、抽出された塩水を流通させる管路が設けられ、
前記氷粒子返還機構は、前記分離フィルタの下流端と前記貯留タンクの底部とを繋ぐ配管と、該配管に設けられて前記貯留タンク内の流動体を前記分離フィルタに向かって噴射する圧力付与手段と、を備え、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の最終的な含氷率は、70%以上であることを特徴とする製氷システム。
【請求項3】
前記貯留タンクに形成された流出口と流入口との間を前記製氷装置を介さずに連結する循環配管と、前記流出口から前記流入口に向かって前記循環配管内の流動体を圧送する圧送手段と、を有する循環経路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の製氷システム。
【請求項4】
前記製氷装置は、
熱交換媒体によって内周面が冷却される円筒状の冷却ドラムと、
該冷却ドラムの内部に配置され、円柱状の外周面に、前記冷却ドラムの内周面に付着した氷を掻き取る螺旋状の刃を有するオーガスクリュと、
前記冷却ドラムの一端部に設けられ、該冷却ドラムの内周面と前記オーガスクリュの外周面との間に塩水を注入する注入口と、
前記冷却ドラムの他端部に設けられ、前記オーガスクリュにより搬送された氷粒子を含有するシャーベット状の流動体を排出する排出口と、
を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システムを用いて氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷方法であって、
前記還流経路を用いて前記貯留タンクに貯留された塩水を繰り返し還流する還流工程と、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体を前記攪拌装置により攪拌する攪拌工程と、
を含み、
前記攪拌工程を行いながら前記還流工程を複数回繰り返すことにより、前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率を70%以上にすることを特徴とする製氷方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法であって、
シャーベット状流動体が収容されたタンクから該流動体の一部を取り出して、含氷率の測定を行う工程と、
測定結果に基づいて、前記タンク内のシャーベット状流動体の含氷率が所定の目標含氷率の範囲内となるように、必要に応じて該シャーベット状流動体の含氷率の調整を行う工程と、
前記目標含氷率の範囲内にあるシャーベット状流動体を用いて管路の洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする管路洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷システム、製氷方法、及び製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法に関し、特に、塩水から氷粒子を含有するシャーベット状の流動体を生成する製氷システム及び製氷方法並びに該シャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体等を流す管路、例えば、上水道管や下水道管、工場において原料や燃料等を送る搬送管、又は家庭内での排水管などの管路は、長期間の使用により管路内に堆積物等が付着する。このような管路では、堆積物の付着による詰まり等の不具合を防止するために、定期的に洗浄を行う必要がある。
【0003】
例えば、下水道管では、管路内に排出された生活排水や産業排水に含まれる汚物等が管路の内壁に付着・堆積し、上水道管では、水道水に含まれるミネラル分や濾過をくぐり抜けた微細な異物や有機物等により、管路の内壁にぬめりや錆等が付着し、時間の経過とともに堆積する。
【0004】
近年、このような管路の堆積物や異物を除去する管路洗浄方法として、洗浄対象となる管路内にシャーベット状の流動体を導入する方法が注目されている(例えば、特許文献1)。この管路洗浄方法では、塩水中に微細な氷粒子を含むシャーベット状の流動体を管路内に加圧注入して流動体を移動させる。これにより、流動体中の氷粒子が管路内の堆積物に衝突して堆積物が削り取られ、流動体とともに管路から排出される。
【0005】
流体を流す管路は、多様な用途に合わせて様々な形態が採用されており、例えば、管路の曲がり部分や狭窄部分においては洗浄が困難になる。シャーベット状流動体を用いた洗浄方法では、多様な管路形状に容易に適応させることができ、堆積物を適切に除去することが可能である。流動体を構成する氷粒子は、管路内での流動性を維持するために、平均粒径が0.5mm以下の小さい粒径に設定されている。
【0006】
塩水からシャーベット状の流動体を製造する製氷システムとして、例えば、特許文献2には、シャーベット状流動体を生成する製氷装置と、製氷装置により生成された流動体を貯留する貯留タンクと、貯留タンク内の流動体を攪拌する攪拌装置と、貯留タンクの底部に設けられた排出口と製氷装置の塩水供給口とを繋ぐ還流経路とを備えたシステムが記載されている。
【0007】
特許文献2に記載の製氷システムでは、まず、貯留タンクに塩水を入れ、この貯留タンクから塩水の一部を還流経路により製氷装置へ供給する。製氷装置で生成されたシャーベット状流動体は貯留タンクに貯留され、塩水よりも比重の小さい氷粒子は塩水に浮いた状態となり、貯留タンク底部には塩水が溜った状態となる。還流経路を用いて貯留タンク底部の塩水を製氷装置へ供給するように還流を繰り返すことにより、貯留タンク内の氷粒子の割合が増加していき、貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率(貯留タンク内のシャーベット状流動体の全体積に対する氷粒子の体積の割合)を高めることができる。また、攪拌装置によって貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌することにより、氷粒子同士が結合することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4653921号公報
【文献】特開2010-71484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
管路洗浄に用いるシャーベット状流動体は、管路内の堆積物を削り取る効果を高めるために、塩水に対して固体である氷粒子の割合が高い流動体、具体的には、含氷率が70%以上のシャーベット状流動体とすることが求められる。
【0010】
しかしながら、引用文献2に記載の製氷システムでは、含氷率が高くなると、攪拌装置によって攪拌された氷粒子が、塩水とともに還流経路に流れて製氷装置に入り込み、配管内に詰まりが生じる等の不具合が発生する虞がある。
【0011】
このような事態を回避するために、含氷率が高くなった際に、シャーベット状流動体の攪拌を停止して、貯留タンク内で氷粒子と塩水とを十分に分離させようとすると、氷粒子同士が結合して氷粒子の粒径を小さく維持することができなくなる。それ故、攪拌装置を備えたタンクを別途用意し、このタンクに含氷率の高いシャーベット状流動体を移して攪拌する必要があり、設備が大型化していた。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、設備を大型化することなく含氷率の高いシャーベット状流動体を生成できる製氷システム及び製氷方法並びに該シャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、
塩水を冷却して氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷装置と、
該製氷装置によって生成されたシャーベット状流動体を貯める貯留タンクと、
該貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌する攪拌装置と、
前記貯留タンクから排出される流動体を前記製氷装置を介して該貯留タンクに還流させる還流経路と、を備えた製氷システムにおいて、
前記還流経路は、前記貯留タンクから排出される流動体から氷粒子を分離して塩水を抽出する氷粒子分離機構と、抽出された塩水を前記製氷装置へ送る圧送手段と、前記氷粒子分離機構により分離された氷粒子を前記貯留タンク内に戻す氷粒子返還機構と、を備え
前記氷粒子分離機構は、前記貯留タンクの流動体排出口又はその近傍に設けられ、シャーベット状の流動体から氷粒子を分離する分離フィルタを有し、
前記氷粒子返還機構は、前記分離フィルタに堆積した氷粒子に対して、前記還流経路の流れ方向と逆方向の流体圧力を付与する圧力付与手段を備え、
前記分離フィルタは、筒状であって、外周面に氷粒子が付着するように、前記貯留タンクに形成された下方側に突出するホッパー型の排出部に設けられており、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の最終的な含氷率は、70%以上であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
塩水を冷却して氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷装置と、
該製氷装置によって生成されたシャーベット状流動体を貯める貯留タンクと、
該貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌する攪拌装置と、
前記貯留タンクから排出される流動体を前記製氷装置を介して該貯留タンクに還流させる還流経路と、を備えた製氷システムにおいて、
前記還流経路は、前記貯留タンクから排出される流動体から氷粒子を分離して塩水を抽出する氷粒子分離機構と、抽出された塩水を前記製氷装置へ送る圧送手段と、前記氷粒子分離機構により分離された氷粒子を前記貯留タンク内に戻す氷粒子返還機構と、を備え、
前記氷粒子分離機構は、前記貯留タンクの流動体排出口又はその近傍に設けられ、シャーベット状の流動体から氷粒子を分離する分離フィルタを有し、
前記分離フィルタは、略円錐台形状又は柱状であって、前記貯留タンクの底部に形成された排出部に下方側に突出して設けられており、該分離フィルタの周囲には、抽出された塩水を流通させる管路が設けられ、
前記氷粒子返還機構は、前記分離フィルタの下流端と前記貯留タンクの底部とを繋ぐ配管と、該配管に設けられて前記貯留タンク内の流動体を前記分離フィルタに向かって噴射する圧力付与手段と、を備え、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の最終的な含氷率は、70%以上であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、還流経路を用いて貯留タンク内の貯留された塩水を繰り返し還流すことにより、含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。また、貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率が高くなってきた場合に、攪拌装置によって貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌して氷粒子同士の結合を防止しつつ、還流経路に設けられた氷粒子分離機構により、貯留タンクから排出されるシャーベット状流動体から氷粒子を分離して抽出された塩水を製氷装置へ供給することができる。これにより、1つの貯留タンクで、シャーベット状流動体の攪拌を行いながら、この貯留タンクに貯留されるシャーベット状流動体の含氷率を高めることができるので、設備を大型化することなく、含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。
【0016】
この構成によれば、還流経路において分離された氷粒子を氷粒子返還機構によって貯留タンク内に戻すことにより、氷粒子返還機構における氷粒子の堆積を防止して塩水の抽出性能を保持しながら貯留タンク内の含氷率を高めることができるので、効率よく含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。
【0018】
この構成によれば、分離フィルタに堆積した氷粒子を圧力付与手段によって除去し、貯留タンク内に戻すことができるので、簡易な構造で効率よく含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。
また、この構成によれば、貯留タンク内の流動体を管路洗浄に適したシャーベット状流動体とすることができる。
【0019】
請求項に係る発明は、請求項1又は2に記載の製氷システムにおいて、
前記貯留タンクに形成された流出口と流入口との間を前記製氷装置を介さずに連結する循環配管と、前記流出口から前記流入口に向かって前記循環配管内の流動体を圧送する圧送手段と、を有する循環経路を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率が高くなった際に、攪拌装置による攪拌とともに、循環経路によるシャーベット状流動体の循環を行うことができる。攪拌装置のみで含氷率の高いシャーベット状流動体の流動性を維持する場合、攪拌されない領域をなくすために、攪拌速度を十分に上げる必要があるが、これによって攪拌部に近い領域では氷粒子が融解することがある。攪拌とともに、循環経路によってシャーベット状流動体を循環させることで、攪拌速度の上昇を抑えて氷粒子の融解を防止しながら、シャーベット状流動体の流動性を維持することができる。
【0023】
請求項に係る発明は、請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システムにおいて、
前記製氷装置は、
熱交換媒体によって内周面が冷却される円筒状の冷却ドラムと、
該冷却ドラムの内部に配置され、円柱状の外周面に、前記冷却ドラムの内周面に付着した氷を掻き取る螺旋状の刃を有するオーガスクリュと、
前記冷却ドラムの一端部に設けられ、該冷却ドラムの内周面と前記オーガスクリュの外周面との間に塩水を注入する注入口と、
前記冷却ドラムの他端部に設けられ、前記オーガスクリュにより搬送された氷粒子を含有するシャーベット状の流動体を排出する排出口と、
を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、注入口から注入された塩水が冷却ドラムで冷却され、その内周面に付着した氷をオーガスクリュで掻き取ることで、氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成し、排出口から排出することができる。
【0025】
請求項に係る発明は、
請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システムを用いて氷粒子を含有するシャーベット状流動体を生成する製氷方法であって、
前記還流経路を用いて前記貯留タンクに貯留された塩水を繰り返し還流する還流工程と、
前記貯留タンク内のシャーベット状流動体を前記攪拌装置により攪拌する攪拌工程と、
を含み、
前記攪拌工程を行いながら前記還流工程を複数回繰り返すことにより、前記貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率を70%以上にすることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、貯留タンク内のシャーベット状流動体の含氷率が高くなってきた場合に、攪拌装置によって貯留タンク内のシャーベット状流動体を攪拌して氷粒子同士の結合を防止しつつ、還流経路に設けられた氷粒子分離機構により、貯留タンクから排出されるシャーベット状流動体から氷粒子を分離して抽出された塩水を製氷装置へ供給することができる。これにより、氷粒子の詰まり等による不具合を防止しながら含氷率が70%以上のシャーベット状流動体を生成することができる。
【0027】
請求項に係る発明は、請求項1~のいずれか1項に記載の製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体を用いた管路洗浄方法であって、
シャーベット状流動体が収容されたタンクから該流動体の一部を取り出して、含氷率の測定を行う工程と、
測定結果に基づいて、前記タンク内のシャーベット状流動体の含氷率が所定の目標含氷率の範囲内となるように、必要に応じて該シャーベット状流動体の含氷率の調整を行う工程と、
前記目標含氷率の範囲内にあるシャーベット状流動体を用いて管路の洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする管路洗浄方法。
【0028】
この構成によれば、管路を洗浄する際に、製氷システムにより生成されたシャーベット状流動体の含氷率を測定して、目標含氷率の範囲内にすることで、より洗浄に適したシャーベット状流動体とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の製氷システム及び製氷方法によれば、還流経路を用いて貯留タンク内の貯留された塩水を繰り返し還流すことにより、含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。また、還流経路に設けられた氷粒子分離機構によってシャーベット状流動体から氷粒子を分離して塩水を抽出することにより、1つの貯留タンクで、シャーベット状流動体の攪拌を行いながら、この貯留タンクに貯留されるシャーベット状流動体の含氷率を高めることができるので、設備を大型化することなく、含氷率の高いシャーベット状流動体を生成することができる。また、本発明の管路洗浄方法によれば、この製氷システムで生成されたシャーベット状流動体を用いて管路を適切に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態である製氷システムのブロック図。
図2】製氷装置の一部を模式的に示す一部断面図。
図3】製氷装置の他の例を模式的に示す一部断面図。
図4】製氷システムにおける氷粒子分離機構と氷粒子返還機構を示す説明図。
図5】製氷システムにおける氷粒子分離機構と氷粒子返還機構の他の例を示す説明図。
図6】貯留タンク及び攪拌装置の他の実施例を模式的に示す断面図。
図7】シャーベット状流動体の含氷率の測定手段の説明図。
図8】シャーベット状流動体を用いた管路洗浄システムを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1の本発明の実施の形態である製氷システムのブロック図である。製氷システム10は、下水管等の管路を洗浄するための氷粒子14を含有するシャーベット状流動体12を生成するシステムであり、製氷装置20と、貯留タンク30と、攪拌装置35と、第1還流配管41と、第2還流配管42と、循環配管52とを備える。第1還流配管41及び第2還流配管42は、それぞれ、製氷装置20と貯留タンク30を繋ぐ配管であり、貯留タンク30、第1還流配管41、製氷装置20及び第2還流配管42は、貯留タンク30に貯留された塩水が還流する還流経路40を構成している。還流経路40には、分離フィルタ(氷粒子分離機構)44と、氷粒子返還機構46と、ポンプ(圧送手段)43とが設けられている。
【0032】
製氷装置20は、図1及び図2に示すように、冷凍回路21と、冷却ドラム22と、冷却ドラム22の内部に配置されたオーガスクリュ26とを備える。
【0033】
冷凍回路21は、冷媒を圧縮する圧縮機と、凝縮器と、冷媒を膨張させる膨張弁と、蒸発器と、これらを循環する冷媒が流通する冷媒配管28とを備える。冷媒は、冷凍回路21において閉ループを構成する冷媒配管28を循環して、圧縮、凝縮、膨張、蒸発の熱サイクルを受ける。
【0034】
図2に示すように、冷却ドラム22は、内筒22A及び内筒22Aと一体に構成された外筒22Bを有する円筒状に形成されている。内筒22Aの外周面には、冷凍回路21の蒸発器を構成する冷媒配管28の一部(以下、冷却管24と称する)が巻回されている。冷却管24及び内筒22Aは、熱伝導率の高い材料で形成されており、外筒22Bは熱伝導率の低い材料で形成されている。冷却ドラム22の一端部(図示例では上下方向に長く延びる冷却ドラム22の下端部)には、内筒22Aの内部に塩水を注入するための注入口23aが形成され、他端部(図示例では上端部)には排出口23bが形成されている。
【0035】
オーガスクリュ26は、円柱状のスクリュ本体26aと、スクリュ本体26aの外周面に螺旋状に設けられた回転刃(螺旋状の刃)26bとを有する。オーガスクリュ26は、一端部側に設けられた駆動機構27により冷却ドラム22内を回転駆動し、冷却ドラム22の内周面23cに付着した氷を掻き取って、排出口23bまで搬送する。本実施の形態では、オーガスクリュ26の回転刃26bが配置されている領域に、冷却ドラム22の注入口23aと排出口23bが設けられている。
【0036】
この製氷装置20では、冷却ドラム22において、注入口23aから冷却ドラム22内に注入された塩水と冷却管24を流れる冷媒との間で熱交換が行われることにより、塩水が冷却されて氷状になって冷却ドラム22の内周面23cに付着する。付着した氷はオーガスクリュ26の回転刃26bによって掻き取られ、氷粒子14を含有するシャーベット状流動体12となって排出口23bから排出される。
【0037】
シャーベット状流動体12を構成する氷粒子14の粒径(長径)は5mm以下であり、好ましくは平均粒径が約0.01~0.5mmである。
【0038】
図3は、製氷装置20の別の例を模式的に示す一部断面図である。製氷装置20は、冷凍回路を循環する冷媒により内周面63が冷却される冷却ドラム62と、冷却ドラム62の一端部(図3の上端部)を封止する封止部材61と、封止部材61に軸支されて冷却ドラム62の中心軸上に配置された回転軸65と、を備える。
【0039】
冷却ドラム62は、内筒62A及び内筒62Aと一体に構成された外筒62Bを有する円筒状に形成されている。内筒62Aの外周面には、冷凍回路の蒸発器を構成する冷却管64が巻回されている。冷却ドラム62の下面はシャーベット状流動体12を排出する排出口となっている。
【0040】
回転軸65は、封止部材61を貫通し、封止部材61と間に嵌装された軸受部材61aにより、封止部材61に回転可能に軸支されている。この回転軸65は、封止部材61の上方に設置された図示していないギヤードモータによって軸回りに回転する。冷却ドラム62内の回転軸65には、回転軸65とともに回転し、冷却ドラム62の内周面63に向けて塩水を噴射する噴射孔66aを先端部に有する複数のパイプ66と、回転軸65とともに回転する回転刃67とが取付けられている。複数のパイプ66は、回転軸65の外周面に略等間隔で配置され、回転軸12から竪型ドラム11の半径方向に放射状に延びている。各パイプ66の設置位置は、冷却ドラム62の内筒62Aの上部位置であって、内筒62Aの内周面の上部に向けて塩水が噴射される。なお、パイプ66に代えてスプレーノズルを使用してもよい。回転刃67は、回転軸65から、この回転軸65の半径方向外側に延びるアーム部と、アーム部の先端に形成され、冷却ドラム62の内周面63に生成されたシャーベット状の氷を掻き取る刃部とを有する。刃部は、内筒22のほぼ全長(全高)に亘って形成されている。刃部と冷却ドラム62の内筒62Aとの間隙は約0.1mm~0.2mm程度が好ましい。
【0041】
回転軸65の上方部には、この回転軸65内を軸方向に延びて各パイプ66と連通する連通孔67が形成されている。回転軸12の頂部は、図示していないジョイント部材により第1還流配管41と連結されており、この第1還流配管41から連通孔67内に供給された塩水が、各パイプ66に送られる。
【0042】
図3に示す製氷装置20では、ギヤードモータにより回転する回転軸65の連通孔67を通って、回転軸65とともに回転する各パイプ66から冷却ドラム22内に噴射された塩水が、冷却されて氷状になって冷却ドラム62の内周面63に付着する。付着した氷は回転刃67の刃部によって掻き取られ、氷粒子14を含有するシャーベット状流動体12となって冷却ドラム62の下面側から排出され、貯留タンク30内に貯留される。なお、このような製氷装置20は、例えば、特開2017-72358号公報に記載されている装置を参考にして製造することができる。このような製氷装置20では、図2に示すオーガ式の製氷装置に比べて、含氷率を高めることができる。
【0043】
なお、図2及び図3に示す製氷装置20において、冷却ドラムの内周面の温度は、例えば、-30℃~-60℃とすることができる。また、製氷装置20で生成された氷粒子14は、氷結晶内に閉じ込められる塩分濃度が、その周囲の塩水よりも低くなるため、製氷装置20から排出されたシャーベット状流動体12中の塩水は、製氷装置20に供給される塩水よりも塩分濃度が高くなる。例えば、塩分濃度5質量%の塩水を用いて、後述する方法により含氷率約80%のシャーベット状流動体12を生成した際に、塩水中の塩分濃度は8~10質量%となり、一部の塩分は氷粒子14に含まれた状態とすることができる。
【0044】
貯留タンク30は、塩水を貯留するとともに、製氷装置30で生成されたシャーベット状流動体12を貯留する。貯留タンク30は、流動体排出口31aと、流動体貯留口31bと、流出口32aと、流入口32bとを有する。本実施の形態では、貯留タンク30の底部にホッパー型の排出部33が形成されており、その先端が流動体排出口31aとなっている。さらに、貯留タンク30は、上部に図示していない塩投入口を有する。
【0045】
攪拌装置35は、貯留タンク30内に配置された攪拌羽根37を有し、モータ36によって攪拌羽根37を駆動することにより貯留タンク30内の流体を攪拌する。
【0046】
第1還流配管41は、一端が貯留タンク30の流動体排出口31aに接続され、他端が製氷装置20の冷却ドラム22の注入口23aに接続される。第1流出口31aは、貯留タンク30の底部又は底部付近に形成される。第1還流配管41には、管路内の流体を貯留タンク30側から製氷装置20側へ向かって流すポンプ43と、第1還流配管41の流路を開閉する制御バルブ49とが配設されている。制御バルブ49はポンプ43の上流側に配置されている。
【0047】
図4に示すように、貯留タンク30の流動体排出口31aには、シャーベット状流動体12から氷粒子14を分離して塩水を抽出する分離フィルタ44が設けられている。分離フィルタ44は、氷粒子14の平均粒径よりも目が小さく設定されており、本実施の形態では筒状に形成されている。図4に示すように、ホッパー型の排出部33の高さ方向のほぼ全域に分離フィルタ44を設けることで、攪拌の影響を受け難くするとともに分離フィルタ44の詰まりを生じ難くすることができ、氷粒子14を適切に分離することができる。
【0048】
分離フィルタ44によって氷粒子14が分離された流動体(すなわち塩水)は第1還流配管41に配設されたポンプ43によって製氷装置20へ送られる。
【0049】
なお、分離フィルタ44は、流動体排出口31aの近傍、例えば、流動体排出口31a付近の貯留タンク30内や、流動体排出口31aの下流付近等に設けられる構成であってもよい。また、分離フィルタ44の形状はこれに限れず、例えば、所要の厚さのシート状であってもよい。また、分離フィルタ44に代えて、例えば、遠心分離によって氷粒子14と塩水とを分離する氷粒子分離機構を還流経路40に配設する構造であってもよい。
【0050】
分離フィルタ44の近傍には氷粒子返還機構46が設けられている。氷粒子返還機構46は、分離フィルタ44により分離された氷粒子14を貯留タンク30内に戻すものであり、本実施の形態では、第1還流配管41から分岐した分岐配管47と、分離配管47に配設されたポンプ(圧力付与手段)48と、流体供給制御バルブ45とを備える。
【0051】
分岐配管47は、一端である上流端が氷粒子分離機構44よりも下流側の第1還流配管41に接続され、他端である下流端が氷粒子分離機構44の近傍の還流経路40に接続される。本実施の形態では、分岐配管47の下流端が貯留タンク30の排出部33に接続されている。
【0052】
流体供給制御バルブ45は図示していない制御装置に接続され、所定のタイミングで分岐配管47の流路を開閉する。本実施の形態では、制御バルブ49によって第1還流配管41の流路を閉鎖した際に、流体供給制御バルブ45を開放状態にするように各バルブ45,49の開閉制御を行う。ポンプ48は、流体供給バルブ45を開放した状態で、分岐配管47を流れる流体を上流端側から下流端側へ圧送する。
【0053】
上述した氷粒子返還機構46では、制御バルブ49を閉鎖状態、流体供給制御バルブ45を開放状態とし、ポンプ48を駆動することによって、流動体排出口31aから排出された塩水を分岐配管47を介して分離フィルタ44に堆積した氷粒子14に向けて噴射する。これにより、分離フィルタ44に堆積した氷粒子14に還流経路40の流れ方向とは逆方向の流体圧力を付与され、分離フィルタ44から除去された氷粒子14が貯留タンク30内に戻される。なお、氷粒子返還機構46は、分離フィルタ44の下流側(製氷装置20側)から上流側(貯留タンク30側)に向かって塩水を逆噴射させるように、分岐配管47の下流端を分離フィルタ44の下流側に配置する構成であってもよい。
【0054】
図5は、分離フィルタ44と、氷粒子返還機構46の他の例を説明する図である。
【0055】
分離フィルタ44は、貯留タンク30の底部に形成された排出部33に取付けられた略円錐台形状をしており、その周囲に、抽出された塩水を流通させる管路70が設けられている。なお、分離フィルタ44の形状はこれに限られず、円柱状や多角柱状であってもよい。管路70内の塩水は第1還流配管41を通って製氷装置20へ送られる。
【0056】
氷粒子返還機構46は、分離フィルタ44の下流端と貯留タンク30とを繋ぐ配管72と、配管72に設けられたポンプ73とを備える。配管72の一端は、貯留タンク30の底部に形成された貫通孔38に接続されている。この氷粒子返還機構46では、ポンプ73によって、貯留タンク30内の流動体を分離フィルタ44に向かって噴射する、すなわち、分離フィルタ44に流動体の逆噴射を行うことにより、分離フィルタ44に堆積した氷粒子14を貯留タンク30内に戻すことができる。
【0057】
第2還流配管42は、一端が冷却ドラム22の排出口23bに接続され、他端が貯留タンク30の流動体貯留口31bに接続される。流動体貯留口31bは貯留タンク30の上部に設けられている。第2還流配管42により、製氷装置20で生成されたシャーベット状流動体は貯留タンク30内へ貯留される。なお、図示していないが第2還流配管42にシャーベット状流動体を製氷装置20側から貯留タンク30側へ圧送するポンプ等の圧送手段を設けてもよい。
【0058】
循環配管52は、貯留タンク30の流出口32aと流入口32bとの間を製氷装置20を介さずに繋ぐ配管であって、その流路にはポンプ(圧送手段)53が配設されている。循環配管52とポンプ53とは、貯留タンク30内のシャーベット状流動体12を循環移動させる循環経路50を構成している。なお、循環経路50は、ポンプ53に代えて、圧送手段であるスクリュポンプを設ける構成とすることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、循環配管52から分岐配管57が延びており、分岐配管57は利用タンク58に接続されている。分岐配管57には流路を開閉するバルブ59が設けられている。循環配管52において、分岐配管57の接続部よりも下流側には、循環配管52の流路を開閉するバルブ55が設けられている。
【0060】
次に、上述した製氷システム10を用いて管路洗浄に用いるシャーベット状流動体12を製造する方法について説明する。
【0061】
まず、貯留タンク30内に水を貯めるとともに塩投入口から塩を投入し、攪拌装置35を駆動して攪拌することにより塩水を生成する(塩水生成工程)。この塩水中の塩分の割合は、例えば、3~7質量%とすることができる。塩水生成工程では、攪拌装置35による攪拌に加えて、分岐配管57のバルブ59を閉鎖し、循環配管52のバルブ55を開放した状態で循環経路50を用いて貯留タンク30内の塩水を循環させることにより、早期に均一な塩分濃度の塩水を生成することができる。なお、塩水生成工程において還流経路40は、流動体排出口31aやバルブ49を閉鎖することにより還流停止状態となっている。
【0062】
塩水が生成された後、製氷装置20によりシャーベット状流動体12を生成する(製氷工程)。この製氷工程では、還流経路40の流路を流通状態とし、ポンプ43を駆動して貯留タンク30内の塩水の一部を製氷装置20に供給してシャーベット状流動体12を生成する還流工程と、攪拌装置35を駆動させて貯留タンク30内の流動体を攪拌する攪拌工程とが同時に行われる。
【0063】
還流工程において、製氷装置20へ供給された塩水は、冷却ドラム22を通過する際に冷却されて氷状になって冷却ドラム22の内周面23cに付着するとともに、オーガスクリュ26によって削り取られて氷粒子14を含有したシャーベット状流動体12となって、冷却ドラム22の排出口23bから排出され、第2還流配管42を通って貯留タンク30内に貯留される。なお、製氷装置20によって塩水から生成されるシャーベット状流動体12の製氷率(すなわち、氷粒子14を含まない塩水が製氷装置20を一度通過した際の含氷率)は、例えば、約30~60%、好ましくは約50~60%である。
【0064】
還流工程の間、貯留タンク30では、攪拌装置35を駆動して貯留タンク30内のシャーベット状流動体12を攪拌する(攪拌工程)。攪拌工程を行いながら還流工程を複数回繰り返すことにより、貯留タンク30内のシャーベット状流動体12の含氷率が次第に高くなる。製氷工程初期では、貯留タンク30内の流動体において氷粒子14が上方に浮遊し、塩水が底部に溜った状態となるが、含氷率が高くなるに従って氷粒子14が混在したシャーベットが貯留タンク30の底部に溜った状態となる。
【0065】
還流工程において、貯留タンク30から排出される流動体に混在した氷粒子14は、分離フィルタ44によって塩水と分離される。分離フィルタ44を通過した塩水は、第1還流配管41を通って製氷装置に供給される。
【0066】
分離フィルタ44に堆積した氷粒子14は、氷粒子返還機構46を作動させて、分離フィルタ44に分岐配管47を介してポンンプ48の圧力により塩水を逆噴射させることにより、分離フィルタ44から除去することができる。この逆噴射によって、分離フィルタ44に付着した氷粒子14が貯留タンク30内に返還される。氷粒子返還機構46を作動するタイミングは適宜設定することができる。例えば、図示していない検出器によって分離フィルタ44に堆積した氷粒子14の量を検出し、氷粒子14が所定量以上堆積した場合に氷粒子返還機構46を作動させてもよい。また、別の例として、貯留タンク30内の含氷率が設定値以上となった後に所定時間の間隔で氷粒子返還機構46を作動させてもよい。氷粒子返還機構46を作動させる際には、還流経路40による還流を一時停止させることができる。
【0067】
製氷工程において、循環経路50は、塩水生成工程から継続して貯留タンク30内の流動体を循環移動させてもよいが、塩水生成工程の後、ポンプ53を停止して流通停止状態としてもよい。かかる場合、貯留タンク30内の含氷率が低い製氷工程初期においては循環経路50の流通停止状態を継続し、貯留タンク30内の含氷率が所定値以上(例えば、40%以上)となった際に、ポンプ53を駆動して流通状態とし、攪拌工程を行いながらシャーベット状流動体12を循環移動させる。
【0068】
このように、製氷工程において、還流工程、攪拌工程及び循環経路50によってシャーベット状流動体12を移動させる循環工程を同時に行いながら、還流工程を繰り返すことにより、貯留タンク30内に含氷率の高いシャーベット状流動体12、具体的には、含氷率が70%以上、好ましくは含氷率が75~90%、より好ましくは80~85%のシャーベット状流動体12を生成する。
【0069】
シャーベット状流動体12を構成する氷粒子の粒径(長径)は5mm以下であり、好ましくは平均粒径が約100μm~300μmである。ここで、平均粒径が約100μm~300μmでとは、氷粒子の全質量に対し、少なくとも70~80%の割合を占める氷粒子の粒径が約100μm~300μmの範囲にあることをいう。
【0070】
製氷工程が終了した後は、攪拌装置35による攪拌と、循環経路50による循環によって、シャーベット状流動体12の流動状態が維持される。
【0071】
上述した製氷システム10によれば、還流経路40を用いて貯留タンク30内の貯留された塩水を繰り返し還流すことにより、含氷率の高いシャーベット状流動体12を生成することができる。また、シャーベット状流動体12の含氷率が高くなってきた場合に、攪拌装置35による攪拌とともに、循環経路50によるシャーベット状流動体12の循環を行うことで、貯留タンク30内のシャーベット状流動体12の氷粒子14同士の結合を防止することができる。
【0072】
一般に、攪拌装置35のみで含氷率の高いシャーベット状流動体12の流動性を維持する場合、攪拌速度を十分に上げる必要があり、その結果、流体の温度が上昇して氷粒子14が融解することがあるが、攪拌とともに、循環経路50によってシャーベット状流動体12を循環させることで、攪拌速度の上昇を抑えて氷粒子14の融解を防止しながら、シャーベット状流動体12の流動性を維持することができる。
【0073】
また、上述した製氷システム10では、還流経路40に設けられた分離フィルタ44により、貯留タンクから排出されるシャーベット状流動体12から氷粒子14を分離して抽出された塩水を製氷装置20へ供給することができるので、1つの貯留タンク30で、シャーベット状流動体12の攪拌を行いながら、この貯留タンク30に貯留されるシャーベット状流動体12の含氷率を高めることができる。これにより、設備を大型化することなく、含氷率の高いシャーベット状流動体12を生成することができる。
【0074】
さらに、氷粒子返還機構46により、分離フィルタ44に堆積した氷粒子14を流体圧力を用いて除去し、貯留タンク30内に戻すことができるので、簡易な構造で効率よく含氷率の高いシャーベット状流動体12を生成することができる。
【0075】
なお、塩水生成工程において、貯留タンク30内に貯留される塩水は、0℃より高い温度、例えば室温とすることができる。塩水生成工程の後、還流経路40を用いて製氷工程を継続することにより、生成されたシャーベット状流動体12が貯留タンク30内に供給され、貯留タンク30の液体は次第に冷却される。これを繰り返すことにより、塩分を含有する貯留タンク30内の液体は、温度が0℃より低い温度(例えば、-5℃等)となる過冷却状態となる。このように、貯留タンク30内の液体が過冷却状態となることで、貯留タンク30内のシャーベット流状態12は溶けることなく氷粒子14を維持できるようになる。
【0076】
製氷システム10を用いて生成されたシャーベット状流動体12は、必要に応じて、循環配管52のバルブ55を閉鎖して分岐配管57のバルブ59を開放することにより、分岐配管57を介して利用タンク58に移され、この利用タンク58を搭載した施工車によって洗浄現場まで搬送される。利用タンク58には、攪拌装置58aが設けられており、利用タンク58内のシャーベット状流動体12を常に攪拌する。さらに、分岐配管57及び利用タンク58を用いることなく、製氷システム10から攪拌装置35を含む貯留タンク30及び循環経路50を分離させて、これらを施工車に搭載して管路洗浄現場へ搬送する構成とすることができる。また、製氷システム10を搭載した施工車により、製氷システム10ごと管路洗浄現場へ搬送可能な構成とすることができ、かかる場合は、利用タンク58を設けない構造とすることができる。含氷率が70%以上のシャーベット状流動体12は、洗浄作業が行われるまでの間、常に攪拌されることが好ましく、攪拌装置35は、少なくとも15分以上、攪拌を休止させることがないように制御され、より好ましくは5分以上、さらに好ましくは1分以上休止させることがないように制御される。
【0077】
図6は、製氷システム10において使用される貯留タンク30及び攪拌装置35の他の実施例を示す図である。この貯留タンク30は、攪拌装置35及び後述する含氷率測定手段74とともに、シャーベット状流動体12を保存可能なタンクシステムを構成している。
【0078】
この貯留タンク30は、全体が略円筒状に形成されており、設置状態における貯留タンク30の上部に、流動体貯留口31b、流入口32b及び塩投入口34が設けられ、底部に、流動体排出口31a及び流出口32aが設けられる。なお、図7では流動体排出口31aの記載を省略している。
【0079】
流出口32aには、ホッパー32が接続され、ホッパー32の下流端に循環配管52が接続されるとともに、この循環配管52の内部に圧送手段であるスクリュポンプ54が設けられる。スクリュ54に接続された駆動装置56をON状態にすると、スクリュポンプ54が回転して、ホッパー32内に流入した流動体を循環配管52を介して流入口32bまで圧送する。
【0080】
図6に示す例のように、循環経路50をホッパー32及びスクリュポンプ54を用いて構成することで、含氷率の高いシャーベット状流動体12をより適切に循環移動させることができる。さらに、スクリュポンプ54を貯留タンク30とともに流動体注入装置88に搭載することにより、管路洗浄作業において、このスクリュポンプ54を、シャーベット状流動体12を注入用連通管内に圧送するための圧送手段として用いることができる。
【0081】
なお、貯留タンク30に用いられる攪拌装置35の攪拌の代表速度(攪拌速度が最も速い部分の速度、すなわち、攪拌羽根の半径方向最外側の速度)は、約0.1~0.2m/sであることが好ましい。
【0082】
また、スクリュポンプ54の下流側の配管50Aには、シャーベット状流動体12の含氷率を測定するための含氷率測定手段74が設けられている。図7に示すように、本実施形態の含氷率測定手段74は、配管50Aに連結したバイパス配管76と、バイパス配管76の上流端部及び下流端部に設けられて管路を開閉可能なバルブ75B,75Cと、バイパス配管76の容積を変化させるピストン状の可動部材77とを備える。なお、図7では、理解しやすいように、バイパス配管76の2つのバルブ75B,75Cの間の領域のシャーベット状流動体12のみを記載している。
【0083】
可動部材77は、バルブ75B,75Cの間に配置されており、バイパス配管76の内周面を摺動可能な円柱のフィルタ部77aと、これを移動させるための棒状部77bとを有する。フィルタ部77aは、氷粒子14の平均粒径よりも目が小さく設定されることで、塩水のみを通過可能に構成されている。
【0084】
この含氷率測定手段74では、図7(a)に示すように、配管50Aに設けられたバルブ75Aを閉じてバイパス配管76内にシャーベット状流動体12を充填させ、その後、バルブ75B,75Cを閉じる。次に、図7(b)に示すように、可動部材77を移動させることにより、フィルタ部77aで仕切られた一方の領域が氷粒子14のみで充填され、他方の領域に塩水が排出されるようにし、この際の可動部材77の移動量を測定することで含氷率を間接的に測定する。なお、バイパス配管76における可動部材77の移動量と、含氷率との関係は、予め行った実験結果から設定しておくことができる。また、バイパス配管76を透明な配管とし、視認可能な目盛りを付すことで、この管路内を移動したフィルタ77aの移動量を視認しやすくすることができる。
【0085】
一例として、シャーベット状流動体の目標含氷率(所定の目標含氷率)を80~85%と設定した場合、測定結果により、含氷率が目標値よりも低い場合には、製氷装置20によってより含氷率を高めることができる。また、測定した含氷率が目標値よりも高い場合には、貯留タンク30に接続された塩水用配管78から、貯留タンク30内に塩水を供給して含氷率を低下させることができる。なお、これに代えて又はこれと同時に、攪拌装置35の攪拌速度を上げて氷粒子14を融解することにより、含氷率を低下させてもよい。
【0086】
次に、製氷システム10により生成されたシャーベット状の流動体12を用いて、管路の内部を洗浄する管路洗浄システム80について説明する。
【0087】
図8は、管路洗浄システム80の一例を模式的に示す断面図である。管路洗浄システム80は、洗浄対象管路の一例である上水道本管82と、上水道本管82と外部とを連通する複数の枝管84,85と、上水道本管82の洗浄対象区間の上流側及び下流側の開口端部をそれぞれ閉鎖する制水弁86a,86bと、上水道本管82内に流動体12を加圧注入する流動体注入装置88と、流動体12を回収する回収タンク89とを備える。
【0088】
上水道本管82は、地面から所定の深さに埋設されており、管路の途中に複数の制水弁86a,86bが設置される。洗浄時には、上水道本管82の洗浄対象区間90の両端部に位置する制水弁86a,86bを閉じることで、洗浄対象区間90の上水98の流れを止めることができる。
【0089】
枝管84,85は、上水道本管82から分岐して地上へ延びる管路であって、上水道本管82の延在方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。枝管84,85は、上水道本管82の点検等に用いられ、止水弁91,92を介して図示していない消火栓又は排泥管等が取付けられる。
【0090】
枝管84,85のうち、洗浄対象区間90の一端部側に位置する枝管84は、シャーベット状流動体12を注入する注入用配管として用いられ、他端部側に位置する枝管85は、シャーベット状流動体12を排出する排出用配管として用いられる。図8に示す例では、枝管84,85が、地面から所定深さ掘った凹所94,95内に突出しており、枝管84,85に取付けられた止水弁91,92を介して、注入用配管である接続管96及び排出用配管である接続管97と連結される。
【0091】
流動体注入装置88は、シャーベット状流動体12を収容する貯留タンク30又は利用タンク58と、このタンク内の流動体12を注入用連通管内に圧送する圧送手段(例えば、スクリュポンプ等)とを備える。本実施形態では、洗浄を行うための施工車に製氷システム10が搭載されており、流動体注入装置88は、図6に示す貯留タンク30、スクリュポンプ54及び含氷率測定手段74等を備えたタンクシステムによって構成されている。流動体注入装置88は地上に配置され、流動体注入装置88から吐出されるシャーベット状流動体12は、接続管96及び枝管84を介して上水道本管20内に加圧注入される。本実施形態では、図6に示すように、循環配管52に設けられた三方弁55Aによって流路を切り替えて、スクリュポンプ54により圧送されたシャーベット状流動体12を、三方弁55Aを介して接続された接続管96に注入することができる。
【0092】
回収タンク89は、洗浄後のシャーベット状流動体12を回収するためのタンクであり、排出用配管である接続管97の下流端に設置される。
【0093】
上述した管路洗浄システム80では、以下の方法によって上水道本管82を洗浄する。
【0094】
まず、図6及び図7に示すように、地上に配置した流動体注入装置88の設けられた含氷率測定手段74によって、貯留タンク30内のシャーベット状流動体12の含氷率を測定する。測定結果から、含氷率が目標含氷率の範囲を超えていると判断した場合には、含氷率の調整を行う。例えば、含氷率が低い場合には、製氷装置20を稼働させて貯留タンク30内の含氷率を上げ、含氷率が高い場合には、塩水用配管78から、貯留タンク30内に塩水を供給して含氷率を下げることによって、シャーベット状流動体12を目標含氷率の範囲内に調整する。
【0095】
次に、枝管84に、止水弁91及び接続管96を介して、流動体注入装置88を接続し、枝管85に、止水弁92及び接続管97を介して、回収タンク89を接続する。また、制水弁86a,86bを閉じて洗浄対象区間90の上水98の流れを止める。なお、シャーベット状流動体12の含氷率の調整を行う場合、これらの作業を並行して行うことができる。
【0096】
次に、止水弁91,92を開放し、流動体注入装置88を作動させ、洗浄対象区間90内にシャーベット状流動体12を加圧注入する。この時、洗浄対象区間20内に残留している上水98は、シャーベット状流動体12の注入により下流側へ押し出されて排出される。
【0097】
シャーベット状流動体12は、洗浄対象区間90の少なく一部の領域で管路断面を充満するように加圧注入される。本実施の形態ではシャーベット状流動体12が洗浄対象区間90の全域に亘って充填され、洗浄対象区間90内を例えば、約0.3~1.0m/sの速度で移動するように加圧注入している。移動速度は一定であってもよいし、所定の範囲内で変化させてもよい。長年使用された上水道本管82の内壁には、全周に亘って堆積物が付着しており、シャーベット状流動体12が移動することにより、付着した堆積物が削り取られて管路内が洗浄される。シャーベット状流動体12の含氷率を70%~90%とすることで、堆積物を削り取りながら、長距離の管路内を洗浄することができる。上水道本管82では、例えば、内径が約100~400mmである場合に、洗浄対象区間16の長さを約300~4000mとすることができる。
【0098】
洗浄対象区間90を通過したシャーベット状流動体12及び取り除かれた堆積物等は、枝管85及び接続管97を経て回収タンク89内へ排出される。なお、図示していないが、排出用配管には水質監視装置が接続され、この水質監視装置により排出されたシャーベット状流動体12の濁度、温度、管路内圧力等が監視される。
【0099】
洗浄に必要な量のシャーベット状流動体12の注入が完了すると、止水弁91を閉鎖する。次に、上流側の制水弁86aを開放して、上水98を洗浄対象区間90に流すことにより、上水道本管82内のシャーベット状流動体12を押し流して枝管85から外部へ排出する。このような上水98による洗浄対象区間90のフラッシングは、水質監視装置によって所定の水質が得られるまで行われる。所定の水質が確認された後、止水弁92を閉鎖し、制水弁86bを開放する。
【0100】
この管路洗浄システム80ではシャーベット状流動体12によって、付着した堆積物を除去し、シャーベット状流動体12とともに排出することで適切に洗浄することができる。含氷率の高いシャーベット状流動体12を用いることで、堆積物を削り取る力を大きくして洗浄力を高めるとともに、除去した堆積物を固体の氷粒子14によって、管路内に留めることなく適切に排出させることができる。
【0101】
また、シャーベット状流動体12を上水道本管82に注入する前に、含氷率の測定を行って、目標含氷率となるように調整を行うことで洗浄効果を高めることができる。
【0102】
例えば、シャーベット状流動体12の生成場所が、洗浄現場と離れている場合、シャーベット状流動体12を搬送している間に氷粒子14が溶けて含氷率が低下するおそれがあり、製氷時に、含氷率が目標値よりも高いシャーベット状流動体12を生成してすることがある。このような場合に、洗浄現場において含氷率を測定し、含氷率が目標値よりも未だ高い状態である場合に塩水を供給して目標の範囲内とすることで、シャーベット状流動体12の流動性を確保することができる。
【0103】
なお、洗浄対象となる管路は、上水道管に限られず、下水道管や工業・農場用配管等であってもよい。下水道管を洗浄する場合、例えば、内径が約150~600mmの下水道管に対し、洗浄対象区間を約15~300mとすることができ、シャーベット状流動体12の含氷率を70%以上とすることで、洗浄対象区間における氷粒子による削り取り性能を保持しながら、除去した堆積物を適切に搬送・排出することが可能である。
【0104】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 製氷システム
20 製氷装置
21 冷凍回路
22 冷却ドラム
24 冷却管
26 オーガスクリュ
28 冷媒配管
30 貯留タンク
35 攪拌装置
40 還流経路
41 第1還流配管
42 第2還流配管
44 氷粒子分離機構
46 氷粒子返還機構
48 ポンプ(圧力付与手段)
50 循環経路
52 循環配管
58 利用タンク
80 管路洗浄システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8