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特許7292711ナノファイバー、電解質膜、及び固体高分子形燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ナノファイバー、電解質膜、及び固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1048 20160101AFI20230612BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230612BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230612BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230612BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230612BHJP
   H01M 8/1088 20160101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M8/1048
C08L101/02
B82Y30/00
H01B1/06 A
H01M8/10 101
H01M8/1088
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019083848
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181701
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩良
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】西澤 基貴
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216187(JP,A)
【文献】特開2010-108692(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102851(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/1048
H01M 8/1016
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)スルホン酸残基含有ポリマー
b)酸性物質と相互作用可能な官能基を有するポリマー 及び
c)スルホン酸以外の酸残基含有ポリマー
の3成分を含有するポリマー組成物を用いて形成されてなる、ナノファイバーであって、
上記a)成分、上記b)成分及び上記c)成分の配合割合が、重量比で、15~85/10~80/1~30(合計100)であり、
上記a)成分のイオン交換容量(IEC)が0.1~5 meq/gであり、重量平均分子量(Mw)が5.0×10 ~1.0×10 であり、分散度(Mw/Mn)は1~4である
ことを特徴とするナノファイバー。
【請求項2】
上記ナノファイバーの繊維径が、500nm以下、繊維長が50μm以上、アスペクト比が100以上である請求項1記載のナノファイバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバーおよびナノファイバー不織布にマトリクスポリマーが導入されてなる電解質膜に関し、さらに詳しくは、固体高分子形燃料電池等に有用な高分子電解質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布に各種物質が導入されてなる複合膜は各種分野に応用されており、近年では固体高分子形燃料電池における電解質膜として注目されている。
固体高分子形燃料電池における電解質膜として高分子電解質膜が提案されており、その例としてはNafion(登録商標)に代表されるフッ素系電解質がある。しかし、これらのフッ素系電解質膜は、低加湿条件下でプロトン伝導性が低下するため発電性能が悪い、燃料ガス透過にともなう副反応により膜および触媒劣化を誘発する、膜強度に乏しく寸法変化をともなう長期安定性に劣る、またフッ素を使用するために高コストである、などの問題がある。
【0003】
一方、フッ素材料を使用しない炭化水素系の高分子電解質膜についても開発が検討されている。炭化水素系高分子電解質膜では、イオン伝導性を高めるためにスルホン酸基の数を増やすことが提案されているが、この提案では、膜が水膨潤のために変形しやすく、また、機械強度が弱くなり、長期安定性に優れた膜を得ることが困難であるという問題がある。
そこで、種々開発が行われており、中でもスルホン化ポリイミドが、高い熱安定性と機械強度を持ち、製膜性に優れることから、高性能の電解質材料として提案されている(特許文献1~4)。しかし、これらの提案にかかるスルホン化ポリイミドは、高温低加湿下ではイオン伝導性が低くなるという問題があったため、幅広い温度範囲で高いイオン伝導性を示し、機械強度に優れた高分子電解質膜として、リン酸ドープ型スルホン化ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンド膜が提案されている(特許文献5)。
このような膜は、-20℃程度の低温から120℃程度の高温まで広い温度範囲で高いイオン伝導性を示し、膜中に水分が少ない低加湿条件下でもイオン伝導性に優れるという特徴がある。
しかし、近年、高分子電解質膜は、無加湿で高いイオン伝導性が求められ、膜抵抗を下げる目的から、膜厚が下げられる傾向にある。上記のブレンド膜は、主鎖に剛直な構造を持っていることから、高い機械強度を示すが、脆いために薄膜化すると取扱いが困難になるという問題がある。また、膜厚が薄くなることによってガスの透過性が高まり、過酸化水素が大量に発生するため、酸化安定性が悪く、長期的に安定な膜ではなかった。
そこで、特許文献6において、幅広い温湿度範囲で高いイオン伝導性を示し、薄膜でも取り扱い性に優れ、長期安定性に優れた複合膜、及びその製造方法を提供する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-358978号公報
【文献】特開2005-232236号公報
【文献】特開2005-272666号公報
【文献】特開2007-302741号公報
【文献】特開2011-68872号公報
【文献】特開2012-238590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献6の提案時よりも現在では、より高温低湿状態でのプロトン伝導性を要求されている。
したがって、本発明の目的は、複合電解質膜を構成する新たなナノファイバーを提供し、高温、無加湿下でプロトン伝導性が高く、30μm程度に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性と強度とを有する電解質膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、高分子ナノファイバーを構成するポリマーとして2種以上の酸残基を有するポリマーを用いると共に、酸を含有しないが酸含有化合物を固定可能なポリマーをブレンドすることにより上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.以下の3成分を含有するポリマー組成物を用いて形成されてなる、ナノファイバー。
a)スルホン酸残基含有ポリマー
b)酸性物質と相互作用可能な官能基を有するポリマー
c)スルホン酸以外の酸残基含有ポリマー
2.上記a)成分、上記b)成分及び上記c)成分の配合割合が、重量比で、15~85/10~80/1~30(合計100)であることを特徴とする1記載のナノファイバー。
3.上記ナノファイバーの繊維径が、500nm以下、繊維長が50μm以上、アスペクト比が100以上である1記載のナノファイバー。
4.更に酸処理または酸ドープ処理されて、酸性物質が化学的に導入または担持されており、燃料電池の電解質膜形成用である1記載のナノファイバー。
5.4記載のナノファイバーとマトリクス樹脂とを含む電解質膜であって、
上記ナノファイバーとマトリクス樹脂との配合割合が、上記ナノファイバー100重量部に対してマトリクス樹脂100~1000重量部である
を特徴とするナノファイバーを含む電解質膜。
6.5に記載の電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナノファイバーは、従来複合膜に用いられてきたナノファイバー特性を上回るものであり、該ナノファイバーを含む電解質膜は、30μm程度に薄膜化した場合にも十分なイオン電導性(プロトン伝導性)とガスバリア性と強度とを有すると共に高温(120℃以上の温度)での熱安定性に優れたものである。特に本発明の電解質膜は、高温(120℃-150℃)での駆動が可能な次世代燃料電池発電条件に適合したものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図2図2は、実施例2で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図3図3は、実施例3で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図4図4は、実施例4で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図5図5は、実施例5で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図6図6は、比較例1で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図7図7は、比較例2で得られたナノファイバー不織布のSEM写真(図面代用写真)である。
図8図8は、比較例3で得られた電解質膜の断面SEM写真(図面代用写真)である。
図9図9は、比較例4で得られた電解質膜の断面SEM写真(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔ナノファイバー〕
まず、本発明のナノファイバーについて説明する。
本発明のナノファイバーは、
以下の3成分を含有するポリマー組成物を用いて形成されてなる、ナノファイバーである。
a)スルホン酸残基含有ポリマー(以下、「a)成分」という)
b)酸性物質と相互作用可能な官能基を有するポリマー(以下、「b)成分」という)
c)スルホン酸以外の酸残基含有ポリマー(以下、「c)成分」という)
【0010】
<a)成分>
上記a)成分は、スルホン酸含有官能基を側鎖に有するポリマーであり、後述する電解質膜の材料として用いた場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための基礎となる部分である。このようなポリマーとしては、具体的には例えば、下記式で表される、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンナトリウム塩、等が挙げられる。
【化1】
式中、XはH、Na、K、トリエチルアンモニウムなどが挙げられる。また、nは100~10000の整数を示す。
また、a)成分としてはイオン交換容量(IEC)が重要であり、IECが好ましくは0.1~5 meq/g、更に好ましくは0.5~3 meq/gであるのが望ましい。。
上記a)成分としては以下の化合物を用いることもできる。
【化2】
XはH、F、またはSO3Hを示すが、少なくとも上述のIECの範囲を満たすようにスルホン酸基を含有するのが好ましい。nは、100~10000の整数を示す。
使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
また、a)成分の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が5.0×10~1.0×10であるのが好ましく、分散度(Mw/Mn)は1~4であるのが好ましい。
【0011】
<b)成分>
b)成分は、酸性物質をナノファイバー表面に導入して分子修飾部位を表面に形成するための成分である。
ここで、「相互作用」とはイオン結合や水素結合の形成だけではなく、共有結合や電荷移動錯体の形成や疎水性相互作用、イオン交換も含まれる。
また、上記の「酸性物質と相互作用可能な官能基」としては、-NH基、>NH基、>N-基、=N-基、アミン誘導体、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体など二級または三級窒素、あるいはアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基など四級窒素、あるいはホスホニウム基やスルホニウム基など四級リンや四級硫黄などが挙げられ、それぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。
上記b)成分としては、具体的には例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチオアゾール、ポリインドール、ポリキノリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができ、使用に際しては、それぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、市販品を用いることもできる。これらの中でもポリベンズイミダゾールは、酸性物質と相互作用可能な塩基性官能基を有し、熱的安定性、機械的特性、化学的安定性に優れ、電解質膜の機械的強度や耐熱性を向上させることができ、さらにはナノファイバー形成能も比較的良好であり、電解質膜の薄膜化に寄与できるため好適である。
また、b)成分の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が5.0×10~1.0×10であるのが好ましく、分散度(Mw/Mn)は1~4であるのが好ましい。
【0012】
<c)成分>
上記c)成分は、a)成分と同様に後述する電解質膜の材料として用いた場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための基礎となる部分であるが、上記a)成分と併用することでプロトン伝導性能が環境中の湿度に影響されることがなく高いレベルとなる。
ここで「スルホン酸以外の酸残基」としては、ホスホン酸基、カルボン酸基等挙げられる。
上記c)成分としては、具体的には例えば、ポリビニルホスホン酸、ポリスチレンホスホン酸、側鎖にホスホン酸基を含むポリアリーレン(ポリフェニレン、ポリアリーレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルケトンおよびそれらの共重合体)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ヘテロポリ酸(リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸など)等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
また、a)成分の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が1.0×10で~1.0×10であるのが好ましく、分散度(Mw/Mn)は1~4であるのが好ましい。
【0013】
<配合割合>
上記a)成分、上記b)成分及び上記c)成分の配合割合が、重量比で、15~85/10~80/1~30(合計100)であるのが好ましく、15~85/10~80/1~30(合計100)であるのが更に好ましい。
上記の範囲外であると、後述する電解質膜として用いた場合に、十分なプロトン伝導度が得られない場合があるので、上記の範囲内とするのが好ましい。
【0014】
<酸性物質>
本発明のナノファイバーは、上述の3成分を含有するポリマー組成物を紡糸してなるファイバーに、更に酸処理または酸ドープ処理を施して、酸性物質が化学的に導入または担持されて、ファイバーの表面に分子修飾部位を有するのが好ましい。
(酸性物質)
上記酸性物質は、本発明のナノファイバーを本発明の電解質膜として使用した場合にプロトンを伝導して電解質膜としての主たる機能を発揮するための物質であり、専ら上記b)成分における上記官能基と反応して導入される。また、上記a)成分及び上記b)成分にナトリウム塩などの塩残基を有するものを用いた場合には、これらの塩をプロトンフォームに置換することができることからも有用である。
上記酸性物質としては、ポリリン酸、フィチン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、スクアリン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。これらの中でもフィチン酸は、比較的分子量が大きいにも関わらず水溶液の粘度が比較的低く、また、一分子中に6つのホスホン酸基を有することでポリマーナノファイバー表面の塩基性官能基、塩基性物質と多点で酸塩基相互作用することで、水の存在下において溶出しにくいため、好適である。
なお、酸性物質としてポリマー(以下、このポリマーを酸性ポリマーという)を用いる場合は、ポリマーナノファイバーの空隙に到達可能な比較的低い粘度が求められる。例えば、酸性ポリマーの重量平均分子量を1万以下に抑える、あるいは10質量%以下の希薄溶液を調整して導入処理に用いることで、ナノファイバーへの修飾および洗浄により過剰な酸性ポリマーの除去が容易な酸性物質として酸性ポリマーを使用することができる。また、本発明の電解質膜において用いることができる酸性基を2つ以上有するプロトン伝達物質の他に、酸性基を1つしか有さない酸性物質を用いることもできる。たとえば、上述した酸性物質の他に、具体的には、リン酸、メタンホスホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルフィン酸、ギ酸、酢酸、硝酸、塩酸、アスコルビン酸、クロム酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸等を挙げることができる。
なお、上記性物質により形成される分子修飾部位は、上記酸性物質と上記b)成分の官能基とが相互作用して形成される部位であり、具体的な分子修飾部位の形成態様は以下のような態様が挙げられる。例えば、b)成分として、三級窒素を有する官能基を有するナノファイバーを用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などを有する化合物を酸性物質として組み合わせた場合は、「酸-塩基相互作用」、すなわち三級窒素がプロトン化して四級になり、酸性官能基がアニオン(ホスホネート、スルホネート)になり、塩を形成する作用により分子修飾部位を形成する。一方、b)成分として四級窒素、四級硫黄、四級リンを有する官能基を有するポリマーファイバーを用い、ホスホン酸基やスルホン酸基などを有する化合物を酸性物質として組み合わせた場合は、「静電相互作用」、すなわち、四級カチオン(プラス電荷)と水中で乖離した酸アニオン(マイナス電荷)がひきつけあい、酸のプロトン(H)と四級カチオン(N等)とがイオン交換する相互作用等により分子修飾部位を形成する。
ナノファイバー表面に酸性物質を導入またはドープさせることで、ファイバー表面において酸性物質を多く含有させることが可能となる。さらに、a)成分またはc)成分の一部がb)成分と相互作用し、プロトンの解離を促進するとともに、塩の形成により水保持能が向上する。特に従来プロトン解離が困難となりプロトン伝導性の低下する低湿度条件においてその効果は顕著になる。このことから本発明のナノファイバーを用いた電解質膜は低湿度条件においても効率的なプロトン伝達経路を有することとなる。
また、2つ以上の酸官能基を有する酸性物質を用いた場合、それらを用いて形成した分子修飾部位はナノファイバー同士を連結するように存在する。そのため、マトリクスポリマーと一体化した際に、効率的なプロトン伝達可能な経路を有するナノファイバー同士の間が広がりにくくなり、連続的なプロトンの伝達経路を形成しやすくなり、本発明の所望の効果を得やすくなる。ナノファイバー同士の連結により、プロトンがナノファイバー表面の分子修飾部位を伝って移動できるため、膜厚方向にも、プロトン伝達性能が向上していると考えられる。更に、ナノファイバー自体は、内部で高分子鎖の配向などに由来する密な構造を形成しており、力学強度やガスバリア性に優れる。これらナノファイバーが電解質膜中に存在することによって、電解質膜の強度やガスバリア性が向上されると考えられる
【0015】
<他の成分>
本発明のナノファイバーにおいては、上述の各成分以外に本発明の所望の効果を損なわない範囲で種々添加剤を添加することができる。
<ナノファイバー形状>
本発明のナノファイバーは、その繊維径が、好ましくは500nm以下、更に好ましくは100~400nmであり、繊維長が50μm以上、アスペクト比が100以上であるのが好ましい。
なお、製造方法については、後述の電解質膜の製造方法の欄において合わせて説明する。
【0016】
〔電解質膜〕
本発明の電解質膜は、上述の酸性物質が導入または担持されてなる本発明のナノファイバーとマトリクス樹脂とを含み、上記ナノファイバーとマトリクス樹脂との配合割合が、特定の割合であることを特徴とする。また、ここで上記ナノファイバーはナノファイバー集積体として不織布状で用いられる。
以下詳述する。
<構成成分>
(マトリクスポリマー)
上記マトリクスポリマーとしては、電解質膜を形成した場合に膜強度を向上させることができ、プロトン伝導性にも優れたポリマーを好ましく用いることができる他、プロトン電導性を有しない高分子化合物を用いることもできる。このようなプロトン電導性を有しない高分子化合物は、従来提案されている高分子化合物からなる不織布を用いた電解質膜では採用しえないマトリクスであるが、本発明のナノファイバーを用いた場合には、プロトン電導性が良好であるため、採用することが可能となる。このようなプロトン電導性を有しない高分子化合物を用いた場合、ガスバリア性がさらに向上し、強度の高い高分子化合物を選択することも可能となり、膜強度もさらに向上させることができ、膜厚もさらに薄くすることが可能となる。 上記のプトロン電導性にも優れたポリマーとしては、上述のスルホン化ポリアリーレンエーテル(SPAE)、下記に示すNafion(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、スルホン化ポリイミド(SPI)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(SPBI)、スルホン化ポリフェニレン(SPP)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)、ポリフェニレンスルフィド(SPPS)、スルホン化ポリスチレンおよびその共重合体(SPSt)、ポリビニルスルホン酸およびその共重合体(PVS)等を用いることができる。また、使用に際しては単独または混合物として用いることができる。
(ナノファイバー集積体(不織布))
上記ナノファイバーが形成している不織布層1において上記マトリクスポリマーを充填する前の不織布自体の空隙率が10~90%であるのが、プロトン伝導性と複合膜とした際の膜強度やガスバリア性の点で好ましい。特に上述した繊維径のポリマーナノファイバーをこの範囲の空隙率で不織布化したものを用いることが、本発明の所望の効果を発揮する点で好ましい。空隙率の測定については後述する。
ここで、上記空隙率とは、後述する製造方法において説明するように、まずポリマーナノファイバーにより不織布を製造し、その後表面修飾工程の後に得られたナノファイバー不織布にマトリクスポリマーを投入して不織布をマトリクスポリマーの溶液に浸漬させると共に所望の形状に成形するが、この溶液に浸漬する前の不織布の状態における各ナノファイバー間に存在する空間の割合である。すなわち、空隙率は不織布に外接する仮想立体の体積に対する、上記空間の割合であり、(上記空間の合計体積/仮想立体の体積)×100で表される。
<配合割合>
上記の特定の配合割合は、上記ナノファイバー100重量部に対してマトリクス樹脂100~1000重量部であり、好ましくは上記ナノファイバー100重量部に対してマトリクス樹脂300~700重量部である。上記範囲外であると、電解質膜としての性能が充分でないので、上記範囲内とする必要がある。
(量比関係)
上記電解質膜全体に対する上記マトリクスポリマーの存在割合は、上記空隙率で存在するナノファイバー間に存在する空隙を埋めて複合膜の外形を形成する程度の量あれば十分であるが、好ましくは上記ナノファイバーとの合計量を100とした場合、9~90質量%であり、10~90質量%であるのがさらに好ましく、20~90質量%であるのが最も好ましい。5質量%未満であるとナノファイバー空隙へのマトリクスポリマーの充填が不十分となりプロトン伝導性やガスバリア性の低下を引き起こし、90質量%を超えるとナノファイバーの効果が十分に発揮されない。図1に示すように複数層分子修飾部位が導入される場合、各層の導入量は任意に設定できるが、たとえば3層以上の構造の場合、1層目が2~15質量%、2層目が1~10質量%、3層目以降が0.2~10質量%の導入量にて分子修飾部位の各層を形成することができる。
<形態>
本発明の電解質膜は、上述の本発明のナノファイバーを含み、上記ナノファイバーの存在割合が、後述する量比関係を満足し、厚さが30μm以下であり、より好ましくは2~30μmであり、最も好ましくは2~10μmである。厚さについてこの範囲を満足することで近年要求されている厚さを満足することができる。
本発明の電解質膜について図2を参照して説明すると、電解質膜100は、ナノファイバーからなる不織布層(各ナノファイバーが絡合された不織布形態で存在している層)1を有し、不織布層1においてナノファイバーの間隔を埋めるようにマトリクスポリマー(わかりにくくなるため特に図示せず)が充填されている。
さらに、本発明の電解質膜においては、ナノファイバー後処理、すなわち表面修飾工程において、酸性物質あるいは塩基性物質を表面に有するポリマーナノファイバーを複数の酸性官能基を有する酸性物質あるいは複数の塩基性官能基を有する塩基性物質で修飾することで、酸性物質あるいは塩基性物質はポリマーファイバー表面の塩基性あるいは酸性官能基と2箇所以上で相互作用する状態となるだけではなく、複数のナノファイバーと2箇所以上で結合して一種の橋懸け構造を形成する。
このような橋懸け構造を形成することにより、従来のものよりも膜厚を薄くしても強固な不織布構造を形成することができ、しかもナノファイバーにはプロトン伝達可能な酸性物質が結合した状態であるためプロトンの伝達性能の面でも有利である。
【0017】
(他の成分)
本発明の電解質膜には、上述の各成分の他に本発明の趣旨を損なわない範囲で種々添加剤を添加することができる。例えば複合膜の機械特性を向上させるためにシリカ粒子などの無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子の粒子径は1nm~1μmであるのが膜の均一性を保つために好ましく、100nm以下であるのがより好ましく、20nm以下であるのが更に好ましい。
【0018】
<製造方法>
次に上記電解質膜の製造方法について説明する。
以下に説明する製造方法は、好ましくは上記の本発明の電解質膜を製造する方法であって、
上記ナノファイバーからなる不織布を形成する工程、
上記不織布に表面修飾処理を施す工程、
上記不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程、及び
ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程
を行うことにより実施できる。
更に説明する。
【0019】
(不織布を形成する工程)
不織布を形成する工程は、上記ポリマーナノファイバーの原料であるポリマーを溶媒に溶解してなる紡糸液を吐出機を用いて捕集体上に吐出する等して行うことができる。これにより本発明のナノファイバーを形成すると同時にナノファイバー集積体を形成することができる。
吐出機を用いた微細ファイバーの不織布の製造については、例えば、特開2003-73964号公報、特開2004-238749号公報、特開2005-194675号公報に開示されている。本工程は、これらに開示されている方法を適宜用いて行うことができる。
【0020】
上記溶媒としては例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられ、原料ポリマー濃度は、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。紡糸液の粘度は、100~10000mPa・sであることが好ましく、500~5000mPa・sであることがより好ましい。
ここで得られる不織布の厚みは40μm未満であるのが電解質膜全体の厚さを低減する観点から好ましく、35μm以下であるのがさらに好ましい。
【0021】
(不織布に表面修飾処理を施す工程)
ついで本工程により、得られた不織布を酸処理または酸ドープを行うことで、得られたナノファイバーを酸処理または酸ドープする。
表面修飾処理は、得られた不織布を任意の容器に入れ、容器に別の注入容器から酸性物質含有溶液を注入し、不織布を一定時間浸漬、その後純水などの溶媒により洗浄することにより行うことができる。
酸性物質含有溶液の濃度は、その溶液粘度が高くなり過ぎない範囲、すなわち500mPa・s以下の範囲で、0.5~70質量%、好ましくは1~50質量%とするのが好ましい。浸漬条件は、温度15~80℃、0.25~3時間とするのが好ましい。
そして、各浸漬終了後、余分な酸性物質あるいは塩基性物質を除去するために洗浄を行うのが好ましい。特に上述の本発明の電解質膜においては、上述のように酸性物質がナノファイバーに結合または吸着されるので、結合等していない余分な酸性物質は除去した方が膜強度やガスバリア性の観点、更には燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合には、触媒の被毒が生じないという観点から好ましく、また、除去しても結合等している表面の分子修飾部位の存在により十分なプロトン伝達性を発揮するので問題がない。洗浄は水などの洗浄液を用いて15~80℃で0.25~24時間行うのが好ましい。
酸性物質の表面修飾量(ポリマーナノファイバーへの吸着量)は、表面修飾処理前後の不織布の質量変化あるいはイオン交換容量を測定することで算出することができる。重量変化の測定には、余分な酸性物質を洗浄後、50~150℃の条件で、5~24時間真空乾燥を行うなどして十分に乾燥させるのが好ましい。
本工程において用いることができる酸性物質は、上述の酸官能基を2つ以上有する酸性物質の他に、酸官能基を一つしか有さない酸性物質を用いることもできる。
【0022】
(不織布の空隙にマトリクスポリマーを充填して、ナノファイバーとマトリクスポリマーとを一体化させる工程)
この工程では前工程で得られたナノファイバーからなる不織布を容器に入れ、容器に別の注入容器からマトリクスポリマーの溶液を投入し、この溶液に上記不織布を浸漬することにより行う。
上記マトリクスポリマー溶液に用いられる溶剤としては、用いるマトリクスポリマーにより任意であるが、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられ、その他溶媒と併用してもよい。また、上記溶液におけるマトリクスポリマーの濃度は、2~20質量%とするのが好ましい。
浸漬させた状態とした後、溶媒を蒸発させることにより本発明の電解質膜を得ることができる。溶媒の蒸発は、例えば、15~150℃における自然乾燥、真空乾燥または熱風式オーブンにより1~48時間処理することにより実施することができる。
また、ポリマーを安定化させるためにマトリクスポリマーをいったん塩とした後上記溶液として処理することもできるがこの場合には上記の蒸発処理終了後に得られた電解質膜を酸処理することが好ましい。
【0023】
(ナノファイバーを含む電解質膜を後処理する工程)
得られたナノファイバーを含む電解質膜を後処理することで、残存する溶媒や低分子を除去する、酸官能基のカウンターイオンをプロトンに交換する、膜を緻密化させ安定性やガスバリア性を向上させるといった効果が期待できる。
後処理として主に溶液処理および加熱処理がある。溶液処理に用いられる物質としては、過酸化水素水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、エタノール/塩酸混合溶液、エタノール/硝酸混合溶液等が挙げられる。溶液処理の終了後、50~150℃で1~48時間真空乾燥処理を行うなどして加熱処理を行うことができる。
【0024】
<使用態様及び利点>
本発明の電解質膜は、正極と負極との間に挟持させて用いられる、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜として使用することができる。すなわち、固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体、ひいては固体高分子形燃料電池に用いることができる。本発明の電解質膜は、上述のように薄膜であり、且つ負極で発生したプロトンを正極に安定的に伝導させることができる。
このような高分子電解質には低膜抵抗性(膜抵抗(Ω・cm)=膜厚(cm)/プロトン伝導度(s/cm):s=1/Ω)が要求されるが、本発明の電解質膜は、特に高温低湿度条件下(80℃、30%RH)において優れた膜抵抗性(例えば0.58Ω・cm)程度を示す。
また、ガスバリア性が高いこと、すなわち低ガス透過流量(O:80℃95%RH下で<1.3×10―9(cm/(cm sec kPa))であることも要求される。この他、膜安定性(化学的、機械的、熱的)が高いことも要求されるところ本発明の電解質膜はその膜厚を従来の膜よりも薄膜としてもこれらの性能を満足するものである。
本発明の電解質膜が、従来の複合膜に比して、より薄膜としても高い低膜抵抗性を有し、しかもガスバリア性も高い、バランスのとれた複合膜であることの理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
このように構成された本発明の電解質膜は、上述の各性能バランスに優れるという効果を奏するのみではなく、フリーな酸性物質が存在せず、燃料電池セルにおける酸性物質による白金触媒への被毒がないため特性低下を大幅に抑制できる。なお、不織布をホットプレスなどにより加圧して、微細ファイバーの密度を高めることができ、より一層の薄膜化も可能である。
【0025】
〔固体高分子形燃料電池〕
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記の本発明の電解質膜を含むことを特徴とする。上記の本発明の電解質膜を含む点以外は通常の燃料電池と同様に構成することが可能である。また、通常の燃料電池の製造方法と同様に製造することが可能である。
【実施例
【0026】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0027】
《合成例1:スルホン化ポリアリーレンエーテル(SPAES)の合成》
窒素雰囲気下、重合溶媒にN,N-ジメチルアセトアミド(脱水)30mlを用い、ディーンスターク管を有する三口フラスコに3,3‘-ジスルホ-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン-ナトリウム塩(SDFB)2.28g(5.4mmol)、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン(FPS)1.68g(6.6mmol)、4,4’-ビフェノール(BP)2.23g(12.0)、2.2倍等量の炭酸カリウム、トルエン(脱水)15mlを加え、140℃で4時間攪拌し、ディーンスターク管内の水およびトルエンを除去後、170℃でさらに15時間攪拌し、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン(SPAES)ナトリウム塩を合成した。なお、合成したSPAESナトリウム塩は熱水に注ぎ沈殿精製した後、蒸留水で繰り返し洗浄して回収した。回収したSPAES(ナトリウム塩)は、60℃で15時間真空乾燥し、溶媒を完全に除去した。
【0028】
NMR装置Burker AVANCEIII500(ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、スルホン化ポリアレーレンエーテルナトリウム塩の1H-NMRスペクトルを測定した。1H-NMRスペクトルにより目的ポリマーが得られたことが確認できた。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、日本分光社製HPLCポンプPU-2080PLUS)を用いて、スルホン化ポリアリーレンエーテルナトリウム塩の分子量を測定した。なお、GPC溶媒として微量の臭化リチウム(10mmol/L)を添加したDMFを用い、キャリアを用いて調整した1mg/mLのスルホン化ポリアリーレンエーテルナトリウム塩溶液よりポリスチレン換算の分子量を測定した。その結果、Mwが6.0×10であり、Mw/Mnは1.7であった。
【0029】
《合成例2:ポリベンズイミダゾール(PBI)の合成》
窒素雰囲気下、重合溶媒にポリリン酸(PPA)を用い、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)2.27g(10.6mmol)、4,4’-オキシビス安息香酸(OBBA)2.73g(10.6mmol)を量り取り、DABとOBBAの濃度が3質量%溶液となるようにポリリン酸(PPA)を加えて、攪拌しながら徐々に温度を上げていき、140℃で12時間攪拌し、ポリベンズイミダゾールを合成した。得られたポリマー溶液をイオン交換水に注ぎ再沈した後、水酸化ナトリウム溶液で中和し、洗浄した。吸引ろ過によりポリベンズイミダゾールを回収し、24時間自然乾燥させた後、100℃で真空乾燥した。
【0030】
ポリベンズイミダゾールの1H-NMRスペクトルを測定し、その結果ポリベンズイミダゾールの構造を確認した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定した。その結果、ポリベンズイミダゾールのMwが1.6×10であり、Mw/Mnは2.1であった。
【0031】
《実施例1:PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元ブレンドナノファイバーである本発明のナノファイバーからなる不織布の作製》
バイアル瓶に、合成例1で得られたスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン塩と、合成例2で得られたポリベンズイミダゾールと、ポリビニルホスホン酸ナトリウム(ポリサイエンス社製、分子量24000)とを重量比で20/66.2/13.8になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の17質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)の3成分からなるナノファイバーを吐出形成すると共に、このナノファイバーからなる不織布をアルミ箔上に形成した。得られたナノファイバーからなる不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。
得られたナノファイバーの酸処理および酸ドープのため、後処理を行った。得られた不織布を塩酸(0.1M)に室温で15時間浸漬し、純水で繰り返し洗浄した。続いて、フィチン酸水溶液(東京化成工業社製、50wt%)に室温で1時間浸漬させ、その後80℃の純水中で繰り返しのべ24時間洗浄し、ドープされなかったフィチン酸を除去した。酸ドープした不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。上記後処理により、SPAESおよびPVPAのナトリウム塩をプロトンフォームに置換するとともに、PBIにフィチン酸をドープすることができた。
ナノファイバーの一部を用い、オスミウムコーティングした後、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL製JSM-6100)によって観察、得られたSEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径を算出した。図1に、実施例1のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は275±61nmであった。
空隙率は、ファイバーマットを4cm角に切り出し、乾燥質量(W)と膜厚から算出した見かけの体積(V)、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)の比重(1.5g/cm3)を用いて、下記の式より算出した。なお、膜厚は、触針式膜厚計(Kett社製、商品名「L-300」)により測定し、サンプル上20箇所以上で測定して平均値を算出することで求めた。
空隙率(%)=(1-(W/(V×1.5))×100
算出された空隙率は、90%程度であった。
【0032】
《実施例2:PBI/SPAES/PVPA(50/41.4/8.6)3元ブレンドナノファイバーである本発明のナノファイバーからなるナノファイバー不織布の作製》
実施例1と同様に、PBI、SPAES、PVPAを重量比で50/41.4/8.6になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の10質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元成分からなるナノファイバーを吐出形成すると共に、このナノファイバーからなる不織布をアルミ箔上に形成した。得られたナノファイバーからなる不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。
実施例1と同様に、得られた複合ナノファイバーの酸処理および酸ドープ、真空乾燥を行った。図2に、実施例2のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は320±41nmであった。実施例1と同様に算出された空隙率は、85%程度であった。
実施例2のナノファイバーの熱安定性を熱重量分析(TGA、日立STA-7300)により評価した。ナノファイバー7.5mgを白金パンに入れ、窒素フロー下、5℃/min で120℃まで昇温、120℃で2時間保持することで試料中の水分を除去後、5℃/minで600℃まで昇温した。5%熱分解温度、10%熱分解温度はそれぞれ270.8℃、444.8℃であり、150℃以上でも利用可能な優れた熱安定性を有することが明らかとなった。
【0033】
《実施例3:PBI/SPAES/PVPA(80/16.5/3.5)3元ブレンドナノファイバー不織布の作製》
実施例1と同様に、PBI、SPAES、PVPAを重量比で80/16.5/3.5になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の9質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3成分からなるナノファイバーを吐出形成すると共に、このナノファイバーからなる不織布をアルミ箔上に形成積層した。得られたナノファイバーからなる不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。
実施例1と同様に、得られた複合ナノファイバーの酸処理および酸ドープ、真空乾燥を行った。図3に、実施例3のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は248±53nmであった。実施例1と同様に算出された空隙率は、86%程度であった。
【0034】
《実施例4:PBI/SPAES/PVPA(20/72.4/7.6)3元ブレンドナノファイバー不織布の作製》
実施例1と同様に、PBI、SPAES、PVPAを重量比で20/72.4/7.6になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の18質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3成分からなるナノファイバーを吐出形成すると共に、このナノファイバーからなる不織布をアルミ箔上に形成した。得られたナノファイバーからなる不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。
実施例1と同様に、得られた複合ナノファイバーの酸処理および酸ドープ、真空乾燥を行った。図4に、実施例4のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は387±57nmであった。実施例1と同様に算出された空隙率は、86%程度であった。
【0035】
《実施例5:PBI/SPAES/PVPA(20/56.4/23.6)3元ブレンドナノファイバー不織布の作製》
実施例1と同様に、PBI、SPAES、PVPAを重量比で20/56.4/23.6になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の15質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3成分からなるナノファイバーを吐出形成すると共に、このナノファイバーからなる不織布をアルミ箔上に積層した。得られたナノファイバーからなる不織布は60℃で15時間真空乾燥させた。
実施例1と同様に、得られた複合ナノファイバーの酸処理および酸ドープ、真空乾燥を行った。図5に、実施例5のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM画像の結果から均一なナノファイバーが作製できたことを確認し、そのファイバー径は341±38nmであった。実施例1と同様に算出された空隙率は、91%程度であった。
【0036】
《比較例1:PBI単独ナノファイバー不織布の作製》
バイアル瓶に、合成例2のポリベンズイミダゾールと、ポリマー重量が15質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.12mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、PBI単独ナノファイバー不織布をアルミ箔上に形成した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。図6に、比較例1のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は113±16nmであった。空隙率は、90%程度であった。
【0037】
《比較例2:PBI/SPAES(80/20)2元ブレンドナノファイバー不織布の作製》
バイアル瓶に、合成例1のスルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンと合成例2のポリベンズイミダゾールを重量比で20/80になるように加え、ポリマーの合計重量が全重量の9質量%となるように脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。バイアル瓶を窒素で満たし、一晩攪拌して溶解させ、ポリマー溶液を調製した。エレクトロスピニング装置ES-2000S(Fuence社製)のコレクター部位にアルミ箔を設置し、エレクトロスピニング装置に、ポリマー溶液が充填されたシリンジをセットして、ポリマー溶液の放出量を0.24mL/時として、エレクトロスピニングを行った。シリンジとコレクターの距離を10cmとし、シリンジに30kvの電圧を印加した。これにより、PBI/SPAES(80/20)2元ブレンドナノファイバー不織布をアルミ箔上に形成した。続いて、実施例1と同じ条件で後処理、乾燥を行った。図7に、比較例2のナノファイバー(放出時間60秒)のSEM像を示す。SEM像から作製されたナノファイバーのファイバー径は308±44nmであった。空隙率は、86%程度であった。
【0038】
《実施例6:PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製》
実施例1で得られたPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例1で得られた膜厚30μm程度の不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、SPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。作製した電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0039】
《実施例7:PBI/SPAES/PVPA(50/41.4/8.6)3元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製》
実施例2で得られたPBI/SPAES/PVPA(50/41.4/8.6)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例2で得られた膜厚30μm程度の不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES/PVPA(50/41.4/8.6)ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。
得られた電解質の膜厚は30μm程度であった。
【0040】
《実施例8:PBI/SPAES/PVPA(80/16.5/3.5)3元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製》
実施例3で得られたPBI/SPAES/PVPA(80/16.5/3.5)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例3で得られた膜厚30μm程度の不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES/PVPA(80/16.5/3.5)ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。
得られた電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0041】
《実施例9:PBI/SPAES/PVPA(20/72.4/7.6)3元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製》
実施例4で得られたPBI/SPAES/PVPA(20/72.4/7.6)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例4で得られた膜厚30μm程度の不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES/PVPA(20/72.4/7.6)ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。
得られた電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0042】
《実施例10:PBI/SPAES/PVPA(20/56.4/23.6)3元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜の作製》
実施例5で得られたPBI/SPAES/PVPA(20/56.4/23.6)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例5で得られた膜厚30μm程度の不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES/PVPA(20/56.4/23.6)ナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。
得られた電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0043】
《比較例3:PBI単独ナノファイバー不織布/マトリクス電解質膜の作製》
PBI単独ナノファイバー不織布とマトリクスポリマーとしてのNafion(登録商標)を用い、電解質膜を作成した。その質量比は、空隙率、比重を考慮し、10/100とした。
比較例1で得られた膜厚30μm程度のPBI単独ナノファイバー不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(登録商標、シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI単独ナノファイバー不織布/Nafion電解質膜を得た。得られた電解質膜の断面SEM写真を図8に示す。その膜厚は30μm程度であった。
【0044】
《比較例4:PBI/SPAES(80/20)2元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion電解質膜の作製》
PBI/SPAES(80/20)ナノファイバー不織布とマトリクスポリマーとしてのNafion(登録商標)とを用い、電解質膜を作成した。その質量比は、空隙率、比重を考慮し、10/50とした。
比較例2で得られた膜厚30μm程度のPBI/SPAES(80/20)2元ブレンドナノファイバー不織布をテフロンシャーレ内に設置し、市販のNafion分散液(シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES(80/20)2元ブレンドナノファイバー不織布/Nafion(登録商標)電解質膜を得た。得られた電解質膜の断面SEM写真を図9に示す。その膜厚は30μm程度であった。
【0045】
《比較例5:Recast-Nafion電解質膜の作製》
テフロンシャーレ内に市販のNafion分散液(シグマアルドリッチ社製、製品番号274704、5wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、Recast-Nafion電解質膜を得た。作製した電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0046】
《比較例6:SPAES電解質膜の作製》
テフロンシャーレ内にSPAES溶液(溶媒DMF、1wt%)をキャストし、室温大気下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、60℃で15時間真空乾燥させることで、SPAES電解質膜を得た。作製した電解質膜の膜厚は30μm程度であった。
【0047】
[各種電解質膜のプロトン伝導度測定]
インピーダンスアナライザー3532-50(日置社製)を用いて、50kHz~5MHzまでの周波数応答性を測定して、ナノファイバー集積体の抵抗(電極間距離1.0cm)を測定した。なお、抵抗測定時の温度及び湿度は、恒温恒湿器SH-221(ESPEC社製)を用いて、それぞれ80℃、95%RHおよびに80℃、40%RH保持した。インピーダンス測定により得られた抵抗[Ω]、電極間距離[cm]、膜断面積[cm2]を用い、式 電極間距離[cm]/(膜断面積[cm2]×抵抗[Ω])から、プロトン伝導度[S/cm]を算出した。結果を表1に示す。
【0048】
《実施例11:PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元ブレンドナノファイバー不織布/SPAES電解質膜の作製》
PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3成分からなるナノファイバーの不織布とマトリクスポリマーからなる電解質膜を以下のようにして作成した。不織布とマトリクスポリマーとの質量比は、空隙率、比重を考慮し、不織布/マトリクスポリマー=10/50とした。
実施例1で得られた膜厚30μm程度のPBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元ブレンドナノファイバー不織布をテフロンシャーレ内に設置し、実施例1で合成したSPAESのDMF溶液(1.0wt%)をキャストし、25℃減圧下でゆっくり溶媒を蒸発させた。その後、120℃で15時間真空乾燥させることで、PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)ナノファイバー不織布/SPAES電解質膜を得た。
得られた電解質膜のの膜厚は30μm程度であり、不織布の表裏両面にSPAESマトリクス層が形成されてなる複合膜となっていた。
【0049】
[PBI/SPAES/PVPA(20/66.2/13.8)3元ブレンドナノファイバー不織布/SPAES電解質膜のプロトン伝導度測定]
インピーダンスアナライザー3532-50(日置社製)を用いて、50kHz~5MHzまでの周波数応答性を測定して、ナノファイバー集積体の抵抗(電極間距離1.0cm)を測定した。なお、抵抗測定時の温度及び湿度は、恒温恒湿器SH-221(ESPEC社製)を用いて、120℃無加湿に保持した。インピーダンス測定により得られた抵抗[Ω]、電極間距離[cm]、膜断面積[cm2]を用い、式 電極間距離[cm]/(膜断面積[cm2]×抵抗[Ω])から、プロトン伝導度[S/cm]を算出した。結果を表1に示す。
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9