(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】水受け具
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
A01G9/14 R
(21)【出願番号】P 2019088949
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 悠
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-253416(JP,A)
【文献】特開2003-134944(JP,A)
【文献】特開2007-222008(JP,A)
【文献】実開昭62-169945(JP,U)
【文献】特開2002-084900(JP,A)
【文献】米国特許第04472862(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14- 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを定着可能で、前記シートを伝い落ちる水が流入可能な樋部を有し、取付け状態で前記樋部の裏側に長手方向に沿って横、斜め上方、又は上方へ開口する溝が形成されるシート止め材に装着されて、前記シート止め材に溜まった水を回収する水受け具であって、
前記シート止め材から流れ落ちる水を受けるとともに、前記水を排出する排出口と、前記排出口に通じる水路が形成される受け皿部と、
前記受け皿部上に位置して前記シート止め材を取付け可能な取付け部とを備え、
前記取付け部には、前記溝内に挿入される挿入部を含む突部又は突条が前記シート止め材の長手方向に隙間をあけて複数設けられ、
前記隙間が前記水路に通じて
おり、
前記シート止め材が少なくとも一以上の前記隙間を跨いで前記突部又は前記突条に支持される
ことを特徴とする水受け具。
【請求項2】
前記突部又は突条は、三つ以上設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水受け具。
【請求項3】
前記シート止め材の短手方向に沿う方向で切断したときの前記挿入部の外周形状は、前記方向で切断したときの前記溝の内側形状と符合する形状となっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水受け具。
【請求項4】
前記シート止め材は、横並びに配置される露受けフレーム及び下側のシート定着フレームと、前記露受けフレーム及び前記下側のシート定着フレームの上側に重なるように配置される上側のシート定着フレームとを有し、前記上側のシート定着フレームには、前記シートが定着可能で、前記下側のシート定着フレームには、他のシートが定着可能となっており、
前記下側のシート定着フレームと前記上側のシート定着フレームは、それぞれ、長尺板状の底部と、前記底部の長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部及び第二の側部とを含み、
前記下側のシート定着フレームにおいて前記露受けフレーム側に位置する前記第一の側部は、前記上側のシート定着フレームの前記底部に連なり、
前記上側のシート定着フレームが前記樋部となり、
前記上側のシート定着フレームの前記底部と前記下側のシート定着フレームの前記第一の側部との間が前記溝となっている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の水受け具。
【請求項5】
前記露受けフレームは、前記下側のシート定着フレームの前記底部と横並びに配置される長尺板状の受け部と、前記受け部における前記下側のシート定着フレーム側の基端と前記上側のシート定着フレームの前記底部とをつなぐ連結部とを含み
、
前記取付け部には、前記露受けフレームの前記受け部の先端を上側から押さえる第一の押さえ部と、弾性を有して前記下側のシート定着フレームの前記第二の側部を上側から押さえる第二の押さえ部とが設けられ、
前記突部又は突条は、前記上側のシート定着フレームの前記底部を下側から支える
ことを特徴とする請求項4に記載の水受け具。
【請求項6】
前記取付け部における前記下側のシート定着フレームの前記底部と対向する部分には、前記第二の押さえ部へ向けて下り勾配となる傾斜面が形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の水受け具。
【請求項7】
前記シート止め材の長手方向の一端を突当可能なストッパ部を備え、
前記ストッパ部の根本がくびれている
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の水受け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水受け具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水受け具は、例えば、ビニールハウスの屋根部のシートを止めるシート止め材に装着されている。そして、シートの内側面に生じた結露水がシートを伝い落ちるとシート止め材に流れ込み、そのシート止め材によって水受け具へと導かれ、その水受け具によって回収されて、水受け具に取付けられたドレンパイプを通じてビニールハウスの外へ排出される。
【0003】
シート止め材には様々な種類があるが、その中には、シートを止めるシート定着フレームと、これに横並びに配置されてシートを伝い落ちる結露水を受ける露受けフレームとを備えるものがある。そして、そのシート止め材に装着される水受け具は、例えば、特許文献1に記載のように、矩形であって長手側の一辺中央にドレンパイプを接続する排出口が設けられた受け皿部と、二本のシート止め材を直列に並べて取付け可能な取付け部とを有する。
【0004】
受け皿部において、反排出口側の一辺を除く三辺には壁部が設けられている。取付け部は、その壁部の内側に隙間をあけて配置され、取付け部と壁部との間が排出口に通じる水路となっている。また、取付け部は、シート止め材の露受けフレームの先端を押さえる第一の押さえ部と、シート定着フレームの両側部を押さえる第二、第三の押さえ部とを有する。これらの押さえ部は、受け皿部における排出口が手前で、短手側の二辺が左右に並ぶようにして水受け具を見たときに、左右に横長な形状となっており、押さえ部の左右の端部から押さえ部の間にシート止め材をそれぞれ挿し込める。
【0005】
また、前述のようにして水受け具を見たときに、取付け部の左右方向の中央となる位置には上方へ突出するストッパ部が設けられ、そのストッパ部に押さえ部の間に挿し込まれたシート止め材の端部を突き当てられる。さらに、取付け部の左右方向の中央には手前奥方向へ延びる溝が形成されていて、この溝が水路に通じている。これにより、シート止め材によって導かれた結露水は、シート止め材の端からその溝に落ち、水路及び排出口を通じてビニールハウスの外へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、シート止め材には様々な種類があり、水受け具は複種類のシート止め材に装着可能となっている。例えば、上記水受け具は、横並びに配置される露受けフレームとシート定着フレームの上に、さらにシート定着フレームが重なるように配置されたシート止め材にも装着できる。このようなシート止め材を利用すると、上側のシート定着フレームにビニールハウスの屋根部のシートを止めるとともに、下側のシート定着フレームにビニールハウス側面のシートを止める等、シートの張分けが可能になる。
【0008】
また、そのシート止め材では、シートを定着するため上方へ開口する上側のシート定着フレームにも結露水が流れ込む。このため、上側のシート定着フレームも水を水受け具へ導く樋部として機能する。上側のシート定着フレームを流れる水も、基本的には、上側のシート定着フレームの端から水受け具の溝内に流れ落ち、水受け具で回収される。しかし、上側のシート定着フレームの端部に達した水の一部がその上側のシート定着フレームの端から裏側(下側、裏面)へ回り込む可能性がある。
【0009】
そして、上側のシート定着フレームの裏側へ水が回り込んでしまった場合、シート止め材の取付け角度、歪みの程度等によっては、上側のシート定着フレームの底部と、これに連なる下側のシート定着フレームの側部によってできるV字状の溝(窪み)にその回り込んだ水が溜まり、その水が増えるとその溝内を水が水受け具から離れる方向へ流れ、水受け具から外れた(水受け具のない)位置で溝から水が零れ落ちる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、上側のシート定着フレームのような樋部の裏側に長手方向に沿って水が溜まる可能性のある溝が形成されるシート止め材に水受け具が装着された場合に、水受け具から外れた位置でシート止め材から水が落ちるのを防止できる水受け具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する水受け具は、シートを伝い落ちる水が流入可能な樋部を有してその裏側に長手方向に沿って横、斜め上方、又は上方へ開口する溝が形成されるシート止め材に装着される。そして、水受け具は、シート止め材から流れ落ちる水を受けるとともに、その水を排出する排出口と、この排出口に通じる水路が形成される受け皿部と、この受け皿部上に位置してシート止め材を取付け可能な取付け部とを備えている。さらに、その取付け部には、上記シート止め材の樋部裏側に形成された溝内に挿入される挿入部を含む突部又は突条がシート止め材の長手方向に隙間をあけて複数設けられ、その隙間が上記水路に通じている。また、シート止め材は、少なくとも一以上の前記隙間を跨いで前記突部又は前記突条に支持されている。
【0012】
前述のように、シート止め材の樋部裏側に形成された溝が横、斜め上方、又は上方へ開口する場合、その溝に水が溜まり、その水が増えると水受け具から離れる方向へ流れる可能性がある。しかし、そのようなシート止め材を利用する場合であっても、そのシート止め材に上記水受け具を装着すれば、突部又は突条の挿入部によって水が溝へ流入するのを抑制し、水が溝を水受け具から離れる方向へ流れるのを妨げられる。
【0013】
さらに、上記水受け具では、挿入部を含む突部又は突条がシート止め材の長手方向に断続的に設けられ、突部又は突条間にできる隙間が水路に通じている。このため、シート止め材が少なくとも一以上の隙間を跨ぐように水受け具を装着すれば、樋部の裏側に回り込んだ水が一つの突部又は突条における挿入部と溝との間に入り込んだとしても、隣の突部又は突条より手前にある隙間によってその水を水路へと逃がし、隣の突部又は突条における挿入部と溝との間に水が入り込むのを防止できる。
【0014】
これにより、シート止め材においてシートを伝い落ちる水が流入する樋部の裏側に横、斜め上方、又は上方へ開口して水が溜まる可能性のある溝ができたとしても、そのシート定着フレームに本発明に係る水受け具を装着すれば、樋部裏側にできた溝に水が溜まるのを抑制できるとともに、その溝に水が入り込んだとしても、その水が水受け具から外れた位置まで移動するより前に水受け具に回収できる。
【0015】
また、上記水受け具では、突部又は突条が三以上設けられていてもよい。このようにすると、水受け具が二本のシート止め材を直列につなぐジョイントとして利用される場合、二本のシート止め材の端が両方とも中間位置(両端を除いた位置)にある突部又は突条に重なるように水受け具を装着すれば、二本のシート止め材それぞれにおいて、水受け具から外れた位置でシート止め材から水が落ちるのを防止できる。
【0016】
また、上記水受け具では、シート止め材の短手方向に沿う方向で切断したときの挿入部の外周形状が、これと同じ方向で切断したときの溝の内側形状と符合する形状となっていてもよい。このようにすると、挿入部で溝を略完全に埋められるので、挿入部によって水が溝へ流入するのを抑制したり、水が溝を水受け具から離れる方向へ流れるのを妨げたりする効果が高く、シート止め材の水受け具から外れた位置で水がシート止め材から落ちるのをより確実に防止できる。
【0017】
また、上記水受け具が装着されるシート止め材が、横並びに配置される露受けフレーム及び下側のシート定着フレームと、これらの上側に重なるように配置される上側のシート定着フレームとを有するとともに、下側のシート定着フレームと上側のシート定着フレームが、それぞれ、長尺板状の底部と、この底部の長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部及び第二の側部とを含み、下側のシート定着フレームにおいて露受けフレーム側に位置する第一の側部が上側のシート定着フレームの底部に連なっていてもよい。
【0018】
このようにすると、上側のシート定着フレームが上記樋部となり、その上側のシート定着フレームの底部と下側のシート定着フレームの第一の側部との間が上記溝となることがある。そして、このような場合には、ビニールハウスを構成するシート止め材や水受け具以外の部品との関係で、上下のシート定着フレームの形状を大きく変更するのが難しく、上側のシート定着フレームが樋部とならないようにしたり、上下のシート定着フレームの間に溝ができないようにしたり、溝に水が溜まらないような形状や開口方向にしたりできないことがある。このため、上記シート止め材に本発明に係る水受け具を装着するのが特に有効である。
【0019】
また、上記水受け具が装着されるシート止め材の露受けフレームが、下側のシート定着フレームの底部と横並びに配置される長尺板状の受け部と、この受け部における下側のシート定着フレーム側の基端と上側のシート定着フレームの底部とをつなぐ連結部とを含むとともに、上記水受け具の取付け部に上記露受けフレームの受け部の先端を上側から押さえる第一の押さえ部と、弾性を有して下側のシート定着フレームの第二の側部を上側から押さえる第二の押さえ部とが設けられ、上記突部又は突条が上側のシート定着フレームの底部を下側から支えるとしてもよい。
【0020】
このようにすると、第一の押さえ部と第二の押さえ部とでシート止め材を短手方向の両側から支えるとともに、第一、第二の押さえ部と突条とでシート止め材を上下方向の両側から支え、これにより取付け部にシート止め材を保持できる。さらに、第二の押さえ部が弾性を有しているので、この第二の押さえ部を弾性変形させることによってシート止め材の下側から上下方向へ水受け具を着脱できる。このため、シート止め材がビニールハウスに固定された状態であっても、水受け具の着脱が容易であり、水受け具の交換作業を容易にできる。また、水受け具をシート止め材の長手方向の任意の位置に装着できる。
【0021】
また、上記水受け具では、取付け部における下側のシート定着フレームの底部と対向する部分に、第二の押さえ部へ向けて下り勾配となる傾斜面が形成されていてもよい。このようにすると、シート止め材の下側から上下方向へ水受け具を着脱する作業を容易にできる。
【0022】
また、上記水受け具がシート止め材の長手方向の一端を突当可能なストッパ部を備え、そのストッパ部の根本がくびれていてもよい。このようにすると、ストッパ部を容易に除去できるので、水受け具をシート止め材の長手方向の中間位置(両端を除いた位置)に装着する際、ストッパ部が邪魔にならず、水受け具をシート止め材の長手方向の任意の位置に取付けやすい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る水受け具によれば、樋部を有してその裏側に長手方向に沿って水が溜まる可能性のある溝が形成されるシート止め材に装着された場合に、水受け具から外れた位置でシート止め材から水が落ちるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る水受け具の取付け状態を示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る水受け具が装着されるシート止め材の一部を拡大して示した斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る水受け具がシート止め材に装着された状態を示す左側面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る水受け具を斜め手前側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る水受け具を斜め奥側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態に係る水受け具について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部分)を示す。
【0026】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る水受け具Aは、ビニールハウスHの屋根部のシート(以下、屋根シートB1という)、及び側面のシート(以下、側面シートB2という)を止めるシート止め材Fに装着されている。以下の説明では、本実施の形態に係る水受け具A、及びその水受け具Aが装着されるシート止め材FがビニールハウスHに取付けられた状態での「上」「下」を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。
【0027】
水受け具Aが装着されるシート止め材Fは、ビニールハウスHの肩部又はその近傍に、ビニールハウスHの奥行き方向へ延びるように地面に対して略水平に取付けられる。シート止め材Fは、アルミ又はスチール等の金属製の長尺物であって、その長手方向のどの位置でシート止め材Fを短手方向へ切断しても、その切断面の形状が略同じになっている。シート止め材Fの構造について、より詳しく説明すると、シート止め材Fは、
図2に示すように、その短手方向に横並びに配置される露受けフレーム1及び下側のシート定着フレーム2と、これらの上側に重なるように配置される上側のシート定着フレーム3とを有する。
【0028】
上下のシート定着フレーム3,2は、それぞれ、細長い矩形板状の底部3a,2aと、その底部3a,2aの長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部3b,2b及び第二の側部3c,2cとを有する。露受けフレーム1が下側のシート定着フレーム2の左側に来るようにシート止め材Fを見たとき、左側に位置する側部を上下のシート定着フレーム3,2の第一の側部3b,2b、右側に位置する側部を第二の側部3c,2cとすると、上側のシート定着フレーム3の底部3aにおける右側(第二の側部3c側)の端に、下側のシート定着フレーム2の第一の側部2bの上端が連なっている。
【0029】
そして、上下のシート定着フレーム3,2には、それぞれ、底部3a,2aと、第一、第二の側部3b,3c,2b,2cによって上方へ開口するシート定着溝30,20が長手方向に沿って形成される。そして、各シート定着溝30,20に、シートを挿入し、その上から波形のスプリングS(
図1)を挿入することで、シート止め材Fにシートを定着できる。シート止め材Fに定着するシートは、透明シート、遮光シート、メッシュシート等、各種シートを選択できるとともに、一つのシート定着溝に複数のシートを重ねて定着してもよい。このように、シート止め材Fに定着するシートの種類、及び数は自由に選択できる。
【0030】
なお、
図1では、上側のシート定着フレーム3に屋根シートB1の端部が止められ、下側のシート定着フレーム2に側面シートB2の上端が止められている。また、側面シートB2は、その下端から巻取り可能となっており、換気又は温度調整等のためにビニールハウスHの側面を開放できる。このような場合には、害虫、害鳥、害獣等の侵入を防ぐため、下側のシート定着フレーム2にメッシュシートを定着してもよい。さらに、そのような場合には、屋根シートB1と側面シートB2を重ねて上側のシート定着フレーム3に止めたり、屋根シートB1と側面シートB2を一続きにしてその境界部を上側のシート定着フレーム3に止めたりしてもよい。
【0031】
つづいて、
図2に示すように、露受けフレーム1は、上下のシート定着フレーム3,2の底部3a,2aを下方へ向けてシート止め材Fを水平面上に載置した状態で、下側のシート定着フレーム2の底部2aと同じ高さに位置する細長い矩形板状の受け部1aと、この受け部1aの下側のシート定着フレーム2側の端(基端)と上側のシート定着フレーム3の底部3aとをつなぐ連結部1bとを有する。この連結部1bの上端は、上側のシート定着フレーム3の底部3aにおける短手方向の中心から第一の側部3b側に若干ずれた位置に連なっている。
【0032】
そして、シート止め材Fは、
図3に示すように、上下のシート定着フレーム3,2の底部3a,2aが第一の側部3b,2bから第二の側部3c,2cへ向けて下り勾配をもつようにビニールハウスHの骨組に固定される。これにより、露受けフレーム1が下側のシート定着フレーム2の斜め上方に位置する。上記構成によれば、屋根シートB1に生じた結露水がその屋根シートB1を伝ってシート止め材Fに当たると、その多くが上側のシート定着フレーム3の第一の側部3bの外壁を伝って露受けフレーム1に流れ込み、その他の一部が屋根シートB1と第一の側部3bとの間からシート定着溝30内に流れ込む。
【0033】
このようにしてシート止め材Fに溜まった結露水等の水は、シート止め材Fに導かれて水受け具Aへと向かい、水受け具Aに回収されて、その水受け具Aに取付けられたドレンパイプPを通じてビニールハウスHの外へ排出される。つまり、シート止め材Fは、屋根シートB1に生じた結露水を集めて水受け具Aへと導く樋としても機能する。より具体的には、シート止め材Fにおける上下のシート定着フレーム3,2と露受けフレーム1のそれぞれが、水を集めて水受け具Aへ流す樋部として機能できる。
【0034】
また、
図1に示す水受け具Aは、ビニールハウスHの奥行方向に隣り合う二本のシート止め材F,Fのつなぎ目に設けられ、これらを直列に接続するジョイントとしても機能する。さらに、その水受け具Aは、シート止め材Fの下側に装着されていて、シート止め材Fによって導かれた水は、シート止め材Fの端部から水受け具Aに流れ込む。このため、
図1に示す水受け具Aは、二本のシート止め材F,Fを直列につなぐとともに、そのつなぎ目からシート止め材Fに溜まった水を回収し、ビニールハウスH外へと排出できる。
【0035】
以下、本実施の形態に係る水受け具Aの構成について詳細に説明する。水受け具Aは、本実施の形態では合成樹脂製であり、
図4に示すように、略矩形であって長手側の一辺中央にドレンパイプP(
図1,3)を接続する排出口4aが設けられる受け皿部4と、この受け皿部4上に位置してシート止め材Fを取付け可能な取付け部5とを有する。そして、水受け具Aは、シート止め材Fに装着された状態で、受け皿部4の短手側の二辺がビニールハウスHの奥行き方向へ並び、排出口4aのない長手側の一辺が排出口4aを設けた長手側の一辺よりも高い位置にくる(
図3)。
【0036】
以下、説明の便宜上、受け皿部4の短手側の二辺が左右に並び、排出口4aが手前(正面)にくるようにして水受け具Aを見たときの「左」「右」「手前」「奥」を単に「左」「右」「手前(又は前)」「奥」とする。すると、
図4,5に示すように、受け皿部4の奥端の一辺を除く三辺には、壁部4b,4c,4dが連続して起立している。取付け部5は、その壁部4b,4c,4dの内側にその壁部4b,4c,4dと隙間をあけて配置され、受け皿部4上であって取付け部5と壁部4b,4c,4dとの間に排出口4aへ通じる水路40が形成されている。左右の壁部4b,4dは、前側の壁部4cと比較して高さが低く、取付け部5に取付けられたシート止め材Fと干渉しない(
図3)。
【0037】
取付け部5は、平面視で矩形の基台50を有する。この基台50の左右の中央には、手前奥方向へ延びて水路40に通じる中央溝50aが形成されている(
図6)。さらに、取付け部5は、基台50上に突出形成されて、シート止め材Fを短手方向の両側から挟む第一の押さえ部6L,6R及び第二の押さえ部7と、これらの間に設けられて、シート止め材Fの露受けフレーム1と下側のシート定着フレーム2の間に挿入される突条8C,8L,8Rと、取付け部5上に左右に並ぶシート止め材Fの先端がそれぞれ当接可能なストッパ部9とを有する。
【0038】
第一の押さえ部6L,6Rは、基台50の奥端に沿うように、中央溝50aを挟んで左右両側にそれぞれ配置されている。左右の第一の押さえ部6L,6Rは、それぞれ断面逆L字状で、ストッパ部9の左右に位置するシート止め材F,Fの露受けフレーム1における受け部1aの先端をその上側からそれぞれ押さえる(
図3)とともに、水受け具Aに対するシート止め材Fの奥方向への移動を規制する。
【0039】
第二の押さえ部7は、基台50の前端に沿って中央溝50aを跨ぐように配置されている。その第二の押さえ部7は、基台50から上方へ起立する脚部7aと、脚部7aの上端から奥方向へ斜め上向きに起立する当接部7bと、この当接部7bの先端から上方へ起立する立上部7cとを含む。そして、当接部7bは、左右のシート止め材F,Fの下側のシート定着フレーム2における第二の側部2cをまとめて上側から押さえる(
図3)とともに、水受け具Aに対するシート止め材Fの手前方向への移動を規制する。
【0040】
突条8C,8L,8Rは、第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7の間であって、中央溝50aを跨ぐ位置と、その左右両側の計三カ所に配置され、それぞれの間に隙間80,81が形成されている。そして、ストッパ部9の左側に位置するシート止め材Fの右端部が左側の突条8Lと中央の突条8Cに重なり、これら突条8L,8Cの上端が左側のシート止め材Fの上側のシート定着フレーム3における底部3aにそれぞれ当接する(
図3)。その一方、ストッパ部9の右側に位置するシート止め材Fの左端部が右側の突条8Rと中央の突条8Cに重なり、これら突条8R,8Cの上端が右側のシート止め材Fの上側のシート定着フレーム3における底部3aにそれぞれ当接する。
【0041】
つまり、ストッパ部9を挟んで左右に並ぶシート止め材F,Fは、突条8L,8c,8Rで短手方向の中央部分を下側から支えられるとともに、第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7とで短手方向の両端を上側から押さえられ、これにより、取付け部5に直列に保持される。また、ストッパ部9は、第二の押さえ部7の立上部7cにおける奥側面の左右中央となる位置に設けられている。これにより、水受け具Aの左端及び右端から第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7との間に、シート止め材Fをストッパ部9に突き当たるまでそれぞれ挿し込むことで、二本のシート止め材F,Fが水受け具Aで直列に接続される。
【0042】
左側の突条8Lの左端部と、右側の突条8Rの右端部には、シート止め材Fの上側のシート定着フレーム3の下側に左右の突条8L,8Rを容易に挿し込めるよう、取付け部5の左端又は右端へ向けて下り勾配をもつ傾斜面(符示せず)が形成されている。これにより、前述のように第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7との間に左右からシート止め材F,Fを挿し込む際に、そのシート止め材F,Fが左右の突条8L,8Rに引っ掛かるのが抑制されて、シート止め材F,Fの挿し込み作業を容易にできる。
【0043】
さらに、第二の押さえ部7は、弾性を有し、外力が加わると脚部7aの上端(先端)が第一の押さえ部6L,6Rから離れる方へ脚部7aの傾きを変えられるとともに、当接部7bの上端(先端)が脚部7aから離れる方へ当接部7bの傾きを変えられ、外力が除かれると元の形状(傾き)に戻る。また、基台50における中央溝50aの左右両側であって、下側のシート定着フレーム2の底部2aと対向する位置に、第二の押さえ部7へ向けて下り勾配をもつ傾斜面50bがそれぞれ形成されていて、その傾斜面50bによって基台50と第二の押さえ部7との間に広い隙間ができる(
図3)。これにより、シート止め材Fの下側から上下方向へ水受け具Aを容易に着脱できる。
【0044】
具体的には、先ず、水受け具Aの奥端が前端より下になるように水受け具Aを傾けて第二の押さえ部7の下側にシート止め材Fの下側のシート定着フレーム2における第二の側部2cを含む部分を挿し込む。次に水受け具Aの奥端が前端より上になるように水受け具Aを回転しつつ、突条8L,8C,8Rを露受けフレーム1と下側のシート定着フレーム2との間に挿入し、その第二の側部2cで第二の押さえ部7を手前側へ押しつつ上方へ押し上げて、露受けフレーム1の受け部1aの先端を第一の押さえ部6L,6Rの下側へ差し込む。これにより、シート止め材Fの下側から水受け具Aを装着できる。また、上記工程を逆向きにたどれば、シート止め材Fから水受け具Aを下方へ取り外すことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、ストッパ部9の根本がくびれていて、ストッパ部9をニッパ等で容易に切除できる。このようにストッパ部9を除去すれば、シート止め材Fの長手方向の任意の位置に水受け具Aを取付けられる。換言すると、本実施の形態では、シート止め材Fの下側から水受け具Aを上下方向へ着脱できるとともにストッパ部9を容易に除去できるので、水受け具Aを左右に並ぶシート止め材F,Fのつなぎ目のみならず、一本のシート止め材Fの中間部(両端を除いた部分)に取付けるのも容易である。
【0046】
つづいて、ストッパ部9は、前述のように第二の押さえ部7における左右の中央となる位置にあり、中央溝50aの上方にある。これにより、左右に並ぶシート止め材F,Fの端部をそれぞれストッパ部9に当接させた状態では、左右のシート止め材F,Fの間にできる隙間が、平面視で中央溝50aに重なる位置にくる。これにより、左右のシート止め材F,Fによって導かれた水は、各シート止め材Fの端から中央溝50aに零れ落ちる。
【0047】
前述のように、第二の押さえ部7は中央溝50aを跨いで形成されていて、その脚部7aには中央溝50aと水路40とを連通する通孔7dが形成されている。これにより、中央溝50aから水路40へ向かう水の流れが第二の押さえ部7によって妨げられない。また、中央溝50aの底は、水受け具Aがシート止め材Fに装着された状態で、通孔7dへ向けて下り勾配をもつ(
図3)ので、シート止め材Fから中央溝50aに流れ落ちた水は、通孔7dを通って水路40に流入し排出口4aへと向かう。
【0048】
また、左側の第一の押さえ部6Lと左側の突条8Lとの間、及び右側の第一の押さえ部6Rと右側の突条8Rとの間には、突条8L,8Rへ向けて下り勾配をもつ傾斜面50cがそれぞれ形成されるとともに、これらの傾斜面50c,50cと左右の突条8L,8Rとの間に左右へ延びる横溝50dがそれぞれ形成されている。さらに、中央の突条8Cの奥側であって、中央溝50aの左右両側には、横溝50dの底に連なり、中央溝50aへ向けて下り勾配をもつ案内面50eがそれぞれ形成されている。
【0049】
また、中央溝50aの両側であって第一の押さえ部6L,6Rの手前側に形成される傾斜面50c,50cと、前述の第二の押さえ部7の奥側に形成される傾斜面50b,50bにおいて、取付け部5の左端部又は右端部に位置する部分には、それぞれ左端又は右端へ向けて下り勾配をもつ傾斜面(符示せず)が形成されている。これにより、第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7との間に左右からシート止め材F,Fを挿し込みやすい。
【0050】
また、第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7との間に位置してシート止め材Fを下側から支える突条8L,8C,8Rの上端には、それぞれ前方へ突出する挿入部8aが形成されている。そして、
図3に示すように、上側のシート定着フレーム3の底部3aと、下側のシート定着フレーム2の第一の側部2bによって形成される溝V内に、突条8C,8L,8Rの各挿入部8aが挿入される。突条8C,8L,8R及びシート止め材Fをそれぞれ短手方向へ切断したときの各挿入部8aの外周形状は、溝Vの内側形状と符合する形状となっており、その溝Vが挿入部8aによって埋められる。
【0051】
これにより、シート止め材Fの取付け角度等によっては、その下側(裏側)にできる溝Vが横、斜め上方、又は上方へ開口し、上側のシート定着フレーム3の端部から裏側に回った水がその溝Vに溜まる虞があるが、中央の突条8Cの挿入部8aによってその水が溝Vに入り込むのが抑制される。さらに、中央の突条8Cの挿入部8aと溝Vとの間にできるわずかな隙間に水が入り込んだとしても、その水が増えると中央の突条8Cと左(右)の突条8R(8L)との間にできる隙間80(81)に流れ落ち、中央の突条8Cの奥側の案内面50e又は手前側の傾斜面50bを伝って中央溝50a又は水路40に回収される。
【0052】
つまり、シート止め材Fの端が重なる中央の突条8Cの挿入部8aは、上側のシート定着フレーム3の一端から裏側へ回った水が溝Vに流入し、その溝V内を水受け具Aから離れる方向へ向かうのを抑制する。さらに、中央の突条8Cと左右の突条8L,8Rとの間にできる隙間80,81は、挿入部8aと溝Vとの間にできる隙間よりも十分に大きく水の流入を妨げにくい。このため、シート止め材Fの端から裏側に回り込んだ水が一つ目の突条(中央の突条8C)の挿入部8aと溝Vとの間に入り込んだとしても、水が中央の突条8Cに隣り合う左右何れかの突条(8L又は8R)の挿入部8aと溝Vとの間に入り込むより前に隙間(80又は81)に落ちて、その隙間から水路40に回収される。
【0053】
さらに、突条8C,8L,8Rの奥側面(挿入部8aと反対側の面)は、平面となっていて、ビニールハウスHに固定されたシート止め材Fに水受け具Aが装着された状態でその奥側面が下端へ向けて下り勾配をもつ。これにより、上側のシート定着フレーム3の端から裏側に回り込んだ水が中央の突条8Cの奥側面上へ流れ込んだとしてもその水が奥側面を伝って横溝50dへ流れ落ちやすく、奥側面から溝Vへ流れ込むのを抑制できる。
【0054】
以下、本実施の形態に係る水受け具Aの作用効果について説明する。
【0055】
本実施の形態の水受け具Aは、屋根シート(シート)B1を定着可能なシート止め材Fに装着されて、そのシート止め材Fに溜まった水を回収するものである。さらに、本実施の形態の水受け具Aが装着されるシート止め材Fは、屋根シート(シート)B1を伝い落ちる水が流入可能な樋部となる上側のシート定着フレーム3を有し、取付け状態でその上側のシート定着フレーム(樋部)3の裏側に長手方向に沿って横、斜め上方、又は上方へ開口する溝Vが形成されている。
【0056】
そして、本実施の形態の水受け具Aは、そのシート止め材Fから流れ落ちる水を受けるとともに、その水を排出する排出口4aと、この排出口4aに通じる水路40が形成される受け皿部4と、この受け皿部4上に位置してシート止め材Fを取付け可能な取付け部5とを備える。さらに、その取付け部5には、シート止め材Fの上記溝V内に挿入される挿入部8aを含む突条8C,8L,8Rがシート止め材Fの長手方向に隙間80,81をあけて複数設けられ、その隙間80,81が受け皿部4の水路40に通じている。
【0057】
前述のように、上側のシート定着フレーム(樋部)3の裏側に形成された溝Vが横、斜め上方、又は上方へ開口する場合、その溝Vに水が溜まり、その水が増えると水受け具から離れる方向へ流れる可能性がある。しかし、そのようなシート止め材Fを利用する場合であっても、そのシート止め材Fに上記水受け具Aを装着すれば、各突条8C,8L,8Rの挿入部8aによって水が溝Vへ流入するのを抑制し、水が溝Vを水受け具Aから離れる方向へ流れるのを妨げられる。
【0058】
さらに、上記水受け具Aでは、挿入部8aを含む突条8C,8L,8Rが断続的に設けられ、突条8C,8L,8R間にできる隙間80,81が水路40に通じている。このため、シート止め材Fが少なくとも一以上の隙間80,81を跨ぐように水受け具Aを装着すれば、上側のシート定着フレーム(樋部)3の裏側に回り込んだ水が一つの突条(例えば、中央の突条8C)における挿入部8aと溝Vとの間に入り込んだとしても、隣の突条(例えば、左側の突条8Lや右側の突条8R)より手前にある隙間80,81によってその水を水路40へと逃がし、隣の突条における挿入部8aと溝Vとの間に水が入り込むのを防止する。
【0059】
このため、本実施の形態の上側のシート定着フレーム3のようなシートを伝い落ちる水が流入する樋部の裏側に、横、斜め上方、又は上方へ開口して水が溜まる可能性のある溝Vができても、その溝Vに水が溜まるのを抑制できるとともに、その溝Vに水が入り込んだとしても、その水が水受け具Aから外れた位置まで移動するより前に水受け具Aに回収できる。よって、本実施の形態の水受け具Aを利用すれば、樋部の裏側に回り込んだ水が溝Vを伝い、水受け具Aから外れた位置でシート止め材Fから落下するのを防止できる。
【0060】
また、本実施の形態では、突条8C,8L,8Rがシート止め材Fの長手方向に並べて三つ設けられている。このため、水受け具Aが左右に並ぶシート止め材F,Fのジョイントとして利用される場合、左右のシート止め材F,Fの端が両方とも中央の突条8Cに重なるようにして水受け具Aを装着すれば、左右のシート止め材F,Fの両方で水受け具Aから外れた位置から水が落ちるのを防止できる。
【0061】
なお、このような効果は、突条8C,8L,8Rの数が三以上であれば同様に得られる。このため、挿入部8aを含む突条の数を四以上にしてもよい。また、一本のシート止め材Fの溝Vに挿入される挿入部8aが断続的に設けられるようになっていれば、挿入部8aを含む突条と突条の間に、シート止め材Fを支えるのに特化した支持部(挿入部8aをもたず、シート止め材Fの裏面に当接する部分)を設けてもよい。
【0062】
さらに、シート止め材の樋部の裏側に水が溜まる可能性のある溝が形成される場合であっても、その取付け角度等によっては水受け具から外れた位置で水が落ちる不具合の発生がない。そこで、その不具合の発生するシート止め材Fの溝Vに挿入される挿入部8aを含む突条に切欠き(隙間80,81となる部分)を後加工で形成し、これによって突条を複数に分けてもよい。つまり、水受け具Aによって上記不具合の発生するシート止め材Fと、不具合の発生しないシート止め材Fとをつなぐ場合には、突条8C,8L,8Rは二つであってもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、水受け具Aが装着されたシート止め材Fの短手方向に沿う方向で切断したときの挿入部8aの外周形状は、これと同方向で切断したときの溝Vの内側形状と符合する形状となっている。当該構成によれば、挿入部8aで溝Vを略完全に埋められる。このため、挿入部8aによって水が溝Vへ流入するのを抑制したり、水が溝Vを水受け具Aから離れる方向へ流れるのを妨げたりする効果が高い。よって、シート止め材Fの水受け具Aから外れた位置から水が落ちるのをより確実に防止できる。
【0064】
さらに、本実施の形態では、挿入部8aを含む部分が溝Vの長手方向に沿って長い横長の突条8C,8L,8Rであって挿入部8aの横幅を長くできるので、その挿入部8aによって溝Vの長手方向の広い範囲を埋められる。このことによっても、挿入部8aによって水が溝Vへ流入するのを抑制したり、水が溝Vを水受け具Aから離れる方向へ流れるのを妨げたりする効果が高く、シート止め材Fの水受け具Aから外れた位置から水が落ちるのをより確実に防止できる。
【0065】
しかし、挿入部8aによって水が溝Vへ流入するのを抑制したり、水が溝Vを水受け具Aから離れる方向へ流れるのを妨げたりできれば、挿入部8aと溝Vとの間に多少隙間ができてもよく、挿入部8aの形状は変更できる。また、各突条8C,8L,8Rの挿入部8aの形状は同じでも異なっていてもよい。さらに、本実施の形態において挿入部8aを含む部分は横長の突条8C,8L,8Rであるが、横幅の短い突部であってもよく、挿入部8aを含む突条と突部の両方が取付け部5に設けられていてもよい。
【0066】
また、本実施の形態に係る水受け具Aが装着されるシート止め材Fは、横並びに配置される露受けフレーム1及び下側のシート定着フレーム2と、これらの上側に重なるように配置される上側のシート定着フレーム3とを有する。そして、上側のシート定着フレーム3には、屋根シート(シート)B1が定着可能で、下側のシート定着フレーム2には、側面シート(他のシート)B2が定着可能となっている。
【0067】
さらに、上下のシート定着フレーム3,2は、それぞれ、長尺板状の底部3a,2aと、その底部3a,2aの長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部3b,2b及び第二の側部3c,2cとを含み、上側のシート定着フレーム3の底部3aに、下側のシート定着フレーム2において露受けフレーム1側に位置する第一の側部2bが連なっている。そして、上側のシート定着フレーム3が屋根シート(シート)B1を伝い落ちる水が流入可能な樋部となり、その上側のシート定着フレーム3の底部3aと下側のシート定着フレーム2の第一の側部2bとの間が樋部の裏側に長手方向に沿って形成される溝Vとなっている。
【0068】
このように、上側のシート定着フレーム3が樋部となって、その下側のシート定着フレーム2との間に溝Vが形成される場合、他部品との関係で上下のシート定着フレーム3,2の形状を大きく変えられないことがある。これにより、上下のシート定着フレーム3,2の形状変更によって、上側のシート定着フレーム3が樋部とならないようにしたり、溝Vができないようにしたり、溝Vに水が溜まらないような溝形状や開口方向にしたりするのが難しい。このため、上記シート止め材Fに本実施の形態に係る水受け具Aを装着するのが特に有効である。
【0069】
なお、シート止め材がシートを伝い落ちる水が流入可能な樋部を有し、取付け状態でその樋部の裏側に長手方向に沿って横、斜め上方、又は上方へ開口する溝が形成されるものであれば、本発明に係る水受け具を装着することで、水受け具から外れた位置から水が落ちるのを防止できる。このため、本発明に係る水受け具が装着されるシート止め材は、上記シート止め材Fに限られない。さらには、前述のように、本実施の形態に係る水受け具Aは、シート止め材を直列に接続するジョイントとしても機能できる。このため、裏側に水の溜まる可能性のある溝が形成された樋部を含まないシート止め材に上記水受け具Aを装着してもよいのは勿論である。
【0070】
また、本実施の形態では、シート止め材Fの露受けフレーム1は、下側のシート定着フレーム2の底部2aと横並びに配置される長尺板状の受け部1aと、その受け部1aにおける下側のシート定着フレーム2側の基端と上側のシート定着フレーム3の底部3aとをつなぐ連結部1bとを含む。そして、シート止め材Fに装着される水受け具Aの取付け部5には、露受けフレーム1の受け部1aの先端(上記基端と反対側の端)を上側から押さえる第一の押さえ部6L,6Rと、弾性を有して下側のシート定着フレーム3の第二の側部3cを上側から押さえる第二の押さえ部7とが設けられている。また、上記取付け部5の突条8C,8L,8Rは、上側のシート定着フレーム3の底部3aを下側から支える。
【0071】
上記構成によれば、第一の押さえ部6L,6Rと第二の押さえ部7とでシート止め材Fを短手方向の両側から支えるとともに、第一、第二の押さえ部6L,6R,7と突条8C,8L,8Rとでシート止め材Fを上下方向の両側から支え、これにより取付け部5にシート止め材Fを保持できる。
【0072】
さらに、第二の押さえ部7が弾性を有しているので、この第二の押さえ部7を弾性変形させることによってシート止め材Fの下側から上下方向(シート止め材の長手方向に直交する方向)へ水受け具Aを着脱できる。つまり、水受け具Aをシート止め材Fの長手方向へスライドさせることなくシート止め材Fに着脱できるので、ビニールハウスHの骨組にシート止め材Fが固定された状態であっても水受け具Aの着脱が容易であり、これにより水受け具Aの交換作業を容易にできる。
【0073】
また、上記構成によれば、突条8C,8L,8Rを上側のシート定着フレーム3の底部3aに押し付けられる。このため、その突条8C,8L,8Rで底部3aをシールできるので、突条8C,8L,8Rによって水が溝Vへ流入するのを抑制したり、水が溝Vを水受け具Aから離れる方向へ流れるのを妨げたりする効果が高く、シート止め材Fの水受け具Aから外れた位置から水が落ちるのをより確実に防止できる。
【0074】
なお、本実施の形態では、第一の押さえ部6L,6Rが中央溝50aを挟んで左右二本に分かれ、第二の押さえ部7が中央溝50aを跨ぐように一本設けられている。しかし、第一の押さえ部6L,6Rは、一続きになっていてもよく、三以上に分かれていてもよい。同様に、第二の押さえ部7も、複数に分かれていてもよい。
【0075】
また、本実施の形態の水受け具Aでは、取付け部5における下側のシート定着フレーム2の底部2aと対向する部分に、第二の押さえ部7へ向けて下り勾配となる傾斜面50bが形成されている。当該構成によれば、傾斜面50bと第二の押さえ部7との間に広い隙間ができる。これにより、シート止め材Fの下側から水受け具Aを装着する際に、下側のシート定着フレーム2の第二の側部2cを含む部分をその広い隙間へ逃がしつつ、溝Vに挿入部8aを挿入できる。
【0076】
このため、シート止め材Fの下側から水受け具Aを上下方向へ着脱する場合であって、挿入部8aを設けた場合であっても、水受け具着脱時の第二の押さえ部7の変形量を少なくしてその負荷を軽減できるとともに、水受け具Aの着脱作業を容易にできる。なお、シート止め材Fの左右方向(長手方向)へしか水受け具Aを着脱しない場合等には、傾斜面50bを廃してもよい。
【0077】
また、本実施の形態の水受け具Aは、シート止め材Fの左端又は右端(長手方向の一端)を突当可能なストッパ部9を備え、そのストッパ部9の根本がくびれている。このため、ストッパ部9を容易に除去できる。そして、前述のように、水受け具Aはシート止め材Fの下側から上下方向へ着脱できて、ストッパ部9を除去すれば、シート止め材Fの長手方向のどの位置でも水受け具Aを装着できる。さらに、温度等の影響でシート止め材Fが延び、隣り合うシート止め材F,Fの間隔が狭くなっても、ストッパ部9を除去すれば水受け具Aを容易に着脱できる。
【0078】
なお、本実施の形態では、ストッパ部9が第二の押さえ部7に設けられている。しかし、ストッパ部9の位置は、この限りではない。例えば、ストッパ部9が中央の突条8Cの上端に設けられていてもよい。さらに、左右の第一の押さえ部6L,6Rをつなぐブリッジ部を設け、このブリッジ部にストッパ部を設けてもよい。また、ストッパ部9の数は、二以上でもよい。また、ストッパ部9を除去する可能性があっても、ストッパ部9の大きさや素材等によってはストッパ部9の根本がくびれていなくてもよい。さらには、シート止め材Fの左右方向(長手方向)へしか水受け具Aを着脱しない場合等、ストッパ部9を除去する必要がなければストッパ部9の根本がくびれていなくてもよいのは勿論である。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
A・・・水受け具、B1・・・屋根シート(シート)、B2・・・側面シート(他のシート)、F・・・シート止め材、V・・・溝、1・・・露受けフレーム、1a・・・受け部、1b・・・連結部、2・・・下側のシート定着フレーム、2a・・・底部、2b・・・第一の側部、2c・・・第二の側部、3・・・上側のシート定着フレーム(樋部)、3a・・・底部、3b・・・第一の側部、3c・・・第二の側部、4・・・受け皿部、4a・・・排出口、5・・・取付け部、6L,6R・・・第一の押さえ部、7・・・第二の押さえ部、8C,8L,8R・・・突条、8a・・・挿入部、9・・・ストッパ部、40・・・水路、50b・・・傾斜面、80,81・・・隙間