(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】光触媒ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/08 20060101AFI20230612BHJP
B01J 23/78 20060101ALI20230612BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230612BHJP
C03B 8/00 20060101ALI20230612BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20230612BHJP
C03C 4/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B01J37/08
B01J23/78 M
B01J35/02 J
C03B8/00 A
C03C3/062
C03C4/00
(21)【出願番号】P 2019092220
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】久冨木 志郎
(72)【発明者】
【氏名】アーメド・サラ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204185(JP,A)
【文献】特開2015-167871(JP,A)
【文献】特開2015-098431(JP,A)
【文献】特開2015-218081(JP,A)
【文献】特開2018-149538(JP,A)
【文献】韓国登録特許第0833622(KR,B1)
【文献】Y TAKAHASHI et al.,Hyperfine Interactions,2014年,Vol.226,p.747-753
【文献】S ISHIKAWA et al.,Pure and Applied Chemistry,2017年,Vol.89, No.4,p.535-544
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 37/08
B01J 23/78
B01J 35/02
C03B 8/00
C03C 3/062
C03C 4/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融スラグを加熱処理して光触媒ガラスを製造する製造方法において、溶融スラグに硝酸を混合して硝酸混合物とする混合工程と、上記
硝酸混合物を、後処理
として乾燥処理する処理工程と、上記処理工程により得られたスラグ処理物を加熱処理して光触媒ガラスを得る熱処理工程とを具備
し、上記溶融スラグが、Fe、Si、Ca、Al、Naをそれぞれ酸化物として含み、これらの配合割合が、SiO
2
:Fe
2
O
3
:CaO:Al
2
O
3
:Na
2
O=1:1~5:1~5:0.5~3:0.05~1(重量比)である溶融スラグである光触媒ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を有効に活用でき、高い触媒活性を示す光触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1972年にアナターゼ型の二酸化チタン電極が紫外光で、水を水素と酸素に分解する活性が発見され(非特許文献1)、二酸化チタンの半導体が有する光触媒活性を用い効率的に光エネルギーを化学エネルギーに変換させることを最終目的する研究が幅広くなされている。
しかしながら、アナターゼ型二酸化チタンの半導体の光触媒は、3.2eVという比較的大きなバンドギャップがあり、それは388nm以下の波長に相当するものである。端的にいえば、二酸化チタンを用いた光触媒の場合、その光触媒活性には紫外光が必要であり、地表に到達する全太陽光エネルギー中の3~4%である紫外光しか利用することができない。
このため、この数十年の間に、太陽光エネルギーの利用効率を高くするため、可視光で触媒活性を有する光触媒の開発が行われ、アナターゼ型二酸化チタンを主成分とする光触媒が多数開発されている(例えば、非特許文献2~7)。また、少数ではあるが、アナターゼ型二酸化チタンを含まない触媒も開発されている。
たとえば、特許文献1には、光触媒反応ユニットに使用されるシリカガラスであって、光触媒の反応効率を向上させるために、250nm程度以下の光を約250nm~450nm程度の長波長側へ効率よく波長変換することができ、それとともに、長時間紫外線を照射しても性能が低下しにくい、耐紫外線性等に優れた特性を兼ね備えた光触媒用シリカガラスとして、シリカガラスにおいて、少なくとも、前記シリカガラスは、OH基含有量が10wt.ppm以下であり、厚さ10mmの波長245nmでの直線透過率が90.0%~30.0%の範囲であり、塩素及びフッ素の合計含有量が100wt.ppm以下であることを特徴とする光触媒用シリカガラスが提案されている。
本願発明者らは、近年、地方自治体のゴミ焼却施設から排出されるリサイクル焼却灰から調製した鉄含有ソーダ石灰シリカガラスが、模擬排水の化学的要求酸素量(COD)を減少させ、そしてその水浄化活性とメスバウアースペクトル分析により示される局所構造とには相関があることを報告している。(非特許文献8、9)この結果は、鉄含有ソーダ石灰シリカガラスが、水質汚染浄化に有用な光触媒として作用することを示唆するものである。
また、本願発明者らは、可視光で光触媒活性を示すガラスとして、鉄含有シリカガラスを(非特許文献10)、レアメタルを使用せず、可視光で十分な光触媒活性を示す光触媒ガラスとして、鉄化合物成分、ケイ素化合物成分及びアルミニウム化合物成分を含有するガラス組成物を熱処理してなり、 上記ガラス組成物がアルカリ金属化合物成分、及びアルカリ土類金属化合物成分を有し、上記ケイ素化合物成分がSiO2であり、上記アルミニウム化合物成分がAl2O3であり、両者の構成比が(30-y)SiO2:yAl2O3(式中yは5~25、重量比)である光触媒ガラスを提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-154090号公報
【文献】特開2015-218081号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Fujishima A, and Honda K, (1972). Electrochemical photolysis of water at a semiconductor electrode. Nature 238, 37-38.
【文献】H. Ozaki, et al, (2007) Marked Promotive Effect of Ion on Visible-Light-Induced Photocatalytic Activities of Nitrogen-and Silicon-Codoped Titanias, J. Phys. Chem. C, 11117061.
【文献】Wang Z, et al., (2005), Visible-light-activated nanoparticle photocatalyst of iodine-doped titanium dioxide, Chem Mater l7(6), 1548-1552
【文献】Khan S U M, et al, (2002), Efficient Photochemical Water Splitting by a Chemically Modified n-TiO2, Science, 297, (5590), 2243-2245
【文献】Yanfang S, et al, (2009), Phosphorous, nitrogen and molybdenum ternary co-doped TiO2: preparation and photocatalytic activities under visible light, Journal of Sol-Gel Science and Technology, 50(1), 98-102
【文献】Zhang D, et al., (2011), Graphite-like carbon deposited anatase TiO2 single crystals as efficient visible-light photocatalysts., Journal of Sol-Gel Science and Technology., 58(3), 594-601
【文献】Smirnova N, et al., (2001), Synthesis and Characterization of Photocatalytic Porous Fe3+/TiO2 Layers on Glass., Journal of Sol-Gel Science and Technology., 21, 109-113
【文献】Kubuki S, et al, (2012), 57Fe Mossbauer study of iron-containing soda-lime silicate glass with COD reducing ability., American Institute of Physics Conference Proceeding Series., 1489, 41-46
【文献】Kubuki S, et al, (2012), Water Cleaning Ability and Local Structure of Iron Containing Soda-lime Silicate glass, Hyperfine Interact, 218, 41-45
【文献】Takahashi Y, et al., (2013), Visible Light Activated Photo-Catalytic Effect and Local Structure of Iron Silicate Glass Prepared by Sol-Gel Method, Hyperfine Interact, DOI: 10.1007/s10751-013-0928-0.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1及び非特許文献8~10の提案に係る光触媒は、未だ、可視光領域における光触媒活性が不十分であるという問題がある。また、特許文献2にかかる光触媒は、高い光触媒活性を示すものの、廃棄物を有効に活用できるものではなかった。廃棄物としての溶融スラグの廃棄量は特に我が国においては増加しており、その有効活用が要求されている。
したがって、本発明の目的は、廃棄物を有効に活用でき、高い触媒活性を示す光触媒を得ることができる光触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の問題点を解決するため、溶融スラグを有効活用する方法を種々検討した結果、溶融スラグを特定の酸で処理することで優れた光触媒活性を示す場合があることを知見し、かかる知見に基づいて更に検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.溶融スラグを加熱処理して光触媒ガラスを製造する製造方法において、
溶融スラグに硝酸を混合して硝酸混合物とする混合工程と、
上記強酸混合物を後処理する処理工程と、
上記処理工程により得られたスラグ処理物を加熱処理して光触媒ガラスを得る熱処理工程とを具備する光触媒ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光触媒の製造方法は、廃棄物である溶融スラグを有効に活用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1~4等で得られた加熱処理前の光触媒前駆体のXRDデ-タを示すチャ-トである。
【
図2】
図2は、実施例1~4等で得られた加熱処理前の光触媒前駆体のメスバウア-分光法による分析結果を示すチャ-トである。
【
図3】
図3は、実施例1~4で得られた光触媒の触媒活性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例5~8で得られた光触媒の触媒活性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例1~3等で得られた光触媒の触媒活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の光触媒の製造方法は、
溶融スラグを加熱処理して光触媒ガラスを製造する製造方法であって、
上記溶融スラグに硝酸を混合して硝酸混合物とする混合工程と、
上記強酸混合物を後処理する処理工程と、
上記処理工程により得られたスラグ処理物を加熱処理して光触媒ガラスを得る熱処理工程とを具備する。
以下更に詳細に説明する。
[原料]
本発明の製造方法において用いられる上記溶融スラグとしては、光触媒原料として都市燃焼プラントからのゴミ焼却などの廃棄物である溶融スラグを使用することが好ましい。このように溶融スラグを使用することにより、リサイクルの経済的および環境的利点を最大限に生かすことができる。
この際使用できる溶融スラグは、いわゆる産業廃棄物であり、鉄化合物を含んでいるのが好ましく、更にケイ素含有化合物を含んでいるのが好ましい。また、含まれる鉄化合物としては、Fe2O3等が挙げられ、その相はα相、β相、γ相、ε相等特に制限されない。鉄化合物の含有量は、溶融スラグ全体中 4~20重量%であるのが、得られる光触媒の触媒活性の点で好ましく、4~15重量%であるのが更に好ましく、5~10重量%であるのが最も好ましい。
また、Feだけではなく、Si、Ca、Al、Naなどをそれぞれ酸化物として含むのが好ましい。これらの配合割合は特に限定されるものではないが、SiO2:Fe2O3:CaO:Al2O3:Na2O=1:1~5:1~5:0.5~3:0.05~1(重量比)であるのが好ましい。また、多数のその他の元素を含むのが通常であり、その他の元素の量は、スラグ全体中10~50重量%程度であるのが通常である。
【0010】
[製造方法]
以下、本発明の製造方法における各工程について説明する。
なお、溶融スラグを得る前処理工程や得られた光触媒を精製・加工する後処理工程は、通常この種のガラス系の材料において用いられる手法を適宜用いて行うことができる。
(混合工程)
本工程は、上記溶融スラグに硝酸を混合して硝酸混合物とする工程である。
この際用いられる硝酸は、市販品を特に制限なく用いることができ、濃度も1規定(M)~20Mまで種々の濃度のものを用いることができる。また、硝酸は市販のものをそのまま用いることもできるが、蒸留水を用いて希釈したものを用いることもできる。希釈した場合の硝酸濃度は2~15Mとするのが好ましく、3~15Mとするのが更に好ましい。
上記硝酸と上記溶融スラグとの混合割合は、上記溶融スラグ100グラムに対して、上記硝酸(硝酸水溶液中の硝酸そのものの重量)を5~100モルとするのが得られる光触媒の触媒性能の観点から好ましく、10~50モルとするのが更に好ましい。
(処理工程)
本工程は、上記強酸混合物を後処理する工程である。
上記後処理としては、上記溶融スラグに上記硝酸を加えて混合してなる上記硝酸混合物はスラリー状となるのが通常であるが、そのスラリー状の上記硝酸混合物を乾燥させる処理を挙げることができる。
この乾燥条件は、50~100℃で10~100時間処理するのが好ましい。この乾燥を行うことにより、後述する熱処理によりフェントン反応を生じる物質が生成することとなる。
(熱処理工程)
本工程は、上記処理工程により得られたスラグ処理物を加熱処理して光触媒ガラスを得る工程である。
上記加熱処理の条件は、好ましくは500~2000℃、更に好ましくは800~1500℃で、好ましくは10~2000分、更に好ましくは50~1000分とするのが望ましい。
【0011】
[光触媒]
本発明の製造方法により得られる光触媒は、以下の式(1)~(3)で示されるフェントン反応を起こすものであり、特に式(3)で示される光フェントン反応を生じる。
Fe2++H2O2 → Fe3++HO+OH-1(1)
Fe3++H2O2+H2O → Fe2++H3O++HO2・ (2)
Fe3++H2O+hv → Fe2++HO・+H+1(3)
なお、本発明の製造方法により得られる光触媒の触媒活性において過酸化水素の濃度などは特に制限がなく、光触媒と過酸化水素とが接触可能な状態となっていればよい。このため自然界において自然発生する程度の量の過酸化水素でも十分に光触媒が機能する。
本発明の製造方法により得られる光触媒は、3価の鉄イオンを含有するのが好ましい。また、上記光触媒は、SiO2等のケイ素化合物を含有するのが好ましい。
3価の鉄イオンは、ケイ素含有化合物におけるケイ素と入れ替わる形で存在していると考えられる。
本発明においては原料である溶融スラグに含まれる3価の鉄化合物(後述する製造方法における加熱溶融混合により生成するものを含む)が、上記製造方法における加熱処理により実質的に含まれない程度に鉄イオンとなっているものと推定される。このように鉄イオンが生成する一因として、スラグが含有している上述の各元素Ca、Na、Al、Feそれぞれが硝酸と反応してそれぞれ硝酸塩となり、かかる硝酸塩を加熱処理していることが鉄イオンの効率的な生成に寄与していると考えられる。鉄イオンの配合割合は原料である溶融スラグにおける鉄化合物の配合量により決定されるものである。したがって、鉄イオンの配合割合は上述の溶融スラグにおける鉄化合物の含有量に依存するものであるが、上記鉄イオンと上記ケイ素含有化合物との配合割合は、上記鉄イオン100重量部に対して、上記ケイ素含有化合物 200~3000 重量部とするのが好ましく、1000~2500重量部とするのが更に好ましい。
また、上述したように鉄化合物が鉄イオンとなるので溶融スラグに含まれる鉄化合物の全て(実質的に含まれなくなる程度に)が鉄イオンとなり、上記鉄イオンの光触媒中に含まれる鉄化合物(鉄イオンそのものも含む)全体に対する含有量は、実質的に100重量%となるのが好ましいが、これに制限されるものではなく、10重量%以上であれば良い。
上記光触媒においては、上記鉄化合物粒子と上記ケイ素含有化合物以外に、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で種々化合物が含有される。具体的にはAl2O3、Na2O,CaOなどが挙げられる。これらの他の化合物の配合割合は、上記鉄化合物粒子100重量部に対して、好ましくは50~100 重量部である。
【0012】
[使用方法]
本発明の光触媒は、過酸化水素の存在下に光フェントン反応を生じさせる事ができるので、例えば、河川などにおける水質改善用の触媒などとして使用することができる。
使用の形態は特に制限されず、粉末状、粒子状等種々形態で使用することができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明について実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
〔実施例1~4〕
廃棄物処理場(東京二十三区清掃一部事務組合)からスラグを回収した後、採取したスラグの組成を誘導結合プラズマ発光分光法(商品名「ICP-OES」、Thermo Scientific 社製)により測定した。その結果、18.2重量%のFe
2O
3を含むことがわかった。また、SiO
2を9.7重量%、CaOを29.5重量%、Al
2O
3を12.4重量%、Na
2Oを1.1重量%で含有していることがわかった。
得られたスラグを粉砕して粉体とした後、スラグ1gに硝酸を加え、室温で6時間程度撹拌してスラグが硝酸に溶解された硝酸混合物を得た(混合工程)。この際硝酸の濃度は13Mであり、混合量を20ml(実施例1)、10ml(実施例2)、5ml(実施例3)、3ml(実施例4)として、4種類の硝酸混合物を得た。
ついで、それぞれ80℃で48時間乾燥させて処理工程を行い、最終に1000℃で100分間加熱処理して加熱工程を行い、実施例1~4の光触媒サンプルを得た。
得られた光触媒サンプルについて、それぞれ、X線分析(XRD)およびメスバウア-分光法による分析により構造解析を行った。また、加熱処理前の光触媒前駆体サンプルについても同様にXRD及びメスバウア-分光法による分析を行った。これらの結果をそれぞれ
図1及び2に示す。なお、構造解析は以下のようにして行った。
XRD:Cuのフィラメントに管電圧50kV,管電流300 mAをかけて発生させたCu-Kα線を、ガラス盤上に均質に設置したサンプルに対して2θ=10~80
o の角度で入射させ、反射されるX線を計数することでX線回折パタ-ンを得る。2θの角度を変えることでブラッグの法則により、回折が起きる場合と起きない場合が測定試料について出てくる。これをもとに結晶の同定を行い、線幅の広さより結晶子サイズを評価する。
鉄メスバウア-分光法:
57Co線源より放出される14.4 keVのγ線を、線源を単振動させながら試料に垂直に入射をさせ、単振動の速度に依存して、透過したγ線の数を計数することでスペクトルデ-タを得る。これを基準物質であるα-Feを用いて校正することで、測定試料中の鉄の4s電子密度を反映するアイソマーシフト、鉄回りの電子による電場偏りを反映する四極子分裂、鉄回りの結晶性を反映する線幅(いずれも単位はmm/s)、内部磁場(単位:T)を求める。
【0014】
(試験)
実施例1~4の光触媒について、光触媒活性の有無を確認した。光触媒活性の試験は、メチレンブルー染料を用いた。具体的には、メチレンブルー染料(商品名「methyleneblue」、Wako社製)を濃度20μMの濃度で含有するメチレンブルー水溶液を調整し、ここに4g/リットルの濃度で光触媒を投入した。撹拌混合した後過酸化水素を0.4Mの濃度で投入し、経時的なメチレンブルーの濃度変化を確認した。この際、光源としては可視光波長400nm~700nmを用い、反応容器としてプラスチックバイアルを用い、この反応容器全体に光が当たるように、光源を10cm離して設置して光照射を行った。反応容器中の温度は27℃となるように調整した。以下のこの試験条件を試験1という。その結果を
図3に示す。なお、光触媒は粉砕器で3時間粉砕して使用した。
図3に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法で作製した光触媒はいずれも光触媒活性を示した。特に、実施例1の光触媒は高い光活性を示している。
【0015】
〔実施例5~
10〕 硝酸として13Mの硝酸を蒸留水で希釈したものを用い、加熱工程における加熱処理を1000℃及び800℃で100分間とした以外は実施例1と同様にして光触媒を得、実施例1と同様にして試験を行った。光反応性は常法に従って求めたkvalueによって表した。実施例5~8の結果を
図4に示す。 なお、実施例5は、13M硝酸を2.5mlに対して蒸留水2.5ml混合したものを用い、焼成温度を800℃とし、実施例6は、13M硝酸を2.5mlに対して蒸留水2.5ml混合したものを用い、焼成温度を1000℃とし、実施例7は、13M硝酸を3.75mlに対して蒸留水1.25ml混合したものを用い、焼成温度を800℃とし、実施例8は、13M硝酸を3.75mlに対して蒸留水1.25ml混合したものを用い、焼成温度を1000℃とし、実施例9は、13M硝酸を1.25mlに対して蒸留水3.75ml混合したものを用い、焼成温度を800℃とし、実施例10は、13M硝酸を1.25mlに対して蒸留水3.75ml混合したものを用い、焼成温度を1000℃とした。〔比較例1~3〕 比較として、硝酸に代えて塩酸を用いた以外は実施例2~4と同様にして光触媒相当物を得た。得られた光触媒相当物について、実施例1と同様にして試験を行った。その結果を
図5に示す。
図5に示す結果から明らかなように、硝酸を用いて製造された光触媒は、塩酸を用いた場合に比して高い触媒活性を有することがわかる。このことから、多々ある酸のうち硝酸を用いることが選択性を有し、有用なものであることが明白である。