IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌビー ポステクの特許一覧

特許7292741非共有結合的に付着された有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】非共有結合的に付着された有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020543180
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 IB2018058584
(87)【国際公開番号】W WO2020089678
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520296554
【氏名又は名称】エヌビー ポステク
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ソン ミン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0048120(US,A1)
【文献】特表2009-505057(JP,A)
【文献】特開2012-058058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0047673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53,33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的物質の存在を分析するための側方流動アッセイキットであって、前記アッセイキットが多孔性ニトロセルロース膜を含み、前記多孔性ニトロセルロース膜が、前記ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している複数の末端部分を有する有機ナノ構造化合物を含み、前記有機ナノ構造化合物は共有結合した捕捉分子をさらに含むものであって、
前記有機ナノ構造化合物は、
中心原子、
前記多孔性ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している複数の末端部分を有する分岐領域、および
線形領域の末端に共有結合した捕捉分子を有する単一の線形領域であって、前記捕捉分子は、標的物質に選択的に結合するように適合されるものである、単一の線形領域、
を含む、側方流動アッセイキット。
【請求項2】
前記有機ナノ構造化合物の前記分岐領域が前記ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している少なくとも3つの末端部分を含む、請求項1に記載の側方流動アッセイキット。
【請求項3】
サンプル中の標的分子の存在を検出するために適合された多孔性ニトロセルロース膜を含む側方流動アッセイキットを製造する方法であって、
前記方法は、
a)
(A)前記ニトロセルロース膜の表面に有機ナノ構造化合物を非共有結合的に固定化して、
(i)中心原子、
(ii)前記多孔性ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している複数の末端部分を有する分岐領域、および
(iii)線形領域の末端に共有結合した捕捉分子を有する単一の線形領域であって、前記捕捉分子は、標的物質がサンプル中に存在する場合、標的物質に選択的に結合するように適合される、単一の線形領域
を含む固定化された有機ナノ構造化合物を得る工程、または
(B)
(i)複数の非共有結合的付着により前記ニトロセルロース膜の表面に有機ナノ構造化合物を固定化して、
(a)中心原子、
(b)前記多孔性ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している複数の末端部分を有する分岐領域、および
(c)標的物質がサンプル中に存在する場合、標的物質に選択的に結合するように適合される捕捉分子に共有結合で付着するように適合される官能基を有する末端を含む単一の線形領域、
を含む固定化された有機ナノ構造化合物を得る工程、および
(ii)共有結合した捕捉分子を含む前記有機ナノ構造化合物の線形領域を生成するのに十分な条件下で、捕捉分子を前記線形領域の末端の官能基と反応させる工程、
を含む、(B)の工程、および
b)
前記ニトロセルロース膜を用いて側方流動アッセイキットを製造する工程、
を含む、方法。
【請求項4】
サンプル中の標的分子の存在を検出する方法であって、
前記方法は、
(a)標的物質がサンプル中に存在する場合、標的物質を前記有機ナノ構造化合物の線形領域の末端に存在する捕捉分子に結合させるのに十分な条件下で、請求項1に記載の側方流動アッセイキットの多孔性ニトロセルロース膜をサンプルと接触させ、それにより、捕捉分子-標的物質複合体を形成する工程、
(b)前記工程(a)の多孔性ニトロセルロース膜に検出物質を接触させる工程であって、前記検出物質は、捕捉分子-標的物質複合体が存在する場合に捕捉分子-標的物質複合体に選択的に結合する検出分子を含む、工程、および
(c)前記工程(b)の多孔性ニトロセルロース膜を分析して、サンプル中の標的物質の存在を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項5】
前記分析する工程(c)が定量分析、定性分析、またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機ナノ構造化合物の分岐領域の複数の末端のそれぞれは独立して正電荷または負電荷を含み、それにより、前記多孔性ニトロセルロース膜の表面への前記有機ナノ構造化合物の分岐領域の非共有結合的付着を可能にする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記検出分子は、酵素、フルオロフォア、磁性粒子、ナノ粒子、金属粒子、ナノファイバー粒子、またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉分子は、抗原、抗体、DNA、RNA、PNA、アプタマー、脂質、ホルモン、無機物、細胞、リガンド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルは、生体サンプル、化学サンプル、環境サンプル、および食品サンプルからなるグループから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記標的物質は、抗原、抗体、ペプチド、DNA、RNA、PNA、アプタマー、リガンド、代謝産物、毒性化合物、脂質、ホルモン、細菌、ウイルス、エキソソーム、マクロベシクル、マイクロベシクル、細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記捕捉分子が抗原、抗体、DNA、RNA、PNA、アプタマー、脂質、ホルモン、無機物、細胞、リガンド、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のアッセイキット。
【請求項12】
サンプル中の標的分子の存在を分析するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットが多孔性ニトロセルロース膜を含み、前記多孔性ニトロセルロース膜が、表面と非共有結合的に付着された式Aの有機ナノ構造分子を含み、
【化1】
ここで
Lは、トリアゾール部分を含む前記有機ナノ構造分子の線形領域部分であって、Lはさらに以下を含む:
(1)標的分子に選択的に結合するように適合された捕捉分子を共有結合するように適合された線形領域末端官能基、または
(2)標的分子に選択的に結合するように適合された共有結合した捕捉分子、
Q1は、+3以上の酸化数を持つ前記有機ナノ構造分子の中心原子であり、
a1は2からQ1の酸化数-1までの整数であり、および
各Tは独立して、前記有機ナノ構造分子を前記多孔性ニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させるように適合された末端領域官能基であり、
および、前記有機ナノ構造分子は、複数の前記末端領域官能基によって前記多孔性ニトロセルロース膜に非共有結合的に付着された、アッセイキット。
【請求項13】
請求項12に記載のアッセイキットであって、前記有機ナノ構造分子は次の式IAのものである:
【化2】
ここで、
a、b、およびcのそれぞれは、独立して0または1であり、
cが0の場合、xは1であり、またはcが1の場合、xは1からQ4の酸化数-1までの整数であり、
bが0の場合、yは1であり、またはbが1の場合、yは1からQ3の酸化数-1までの整数であり、
aが0の場合、zは1であり、またはaが1の場合、zは1からQ2の酸化数-1までの整数であり、
nは、1からQ1の酸化数-1までの整数であり、
LおよびQ1は請求項12に定義される通りであり、
Q2、Q3、Q4はそれぞれ独立して、+3以上の酸化数および2つ以上の結合を持つ原子であり、
R2、R3、R4、およびR5はそれぞれ独立してリンカーであり、および
Yは前記末端領域官能基である、
ただし、n、x、y、およびzの積が少なくとも3である、アッセイキット。
【請求項14】
請求項13に記載のアッセイキットであって、前記有機ナノ構造分子は次の式IBのものである:
【化3】
ここで
Q1、Q2、Q3、Q4、R2、R3、R4、R5、Y、a、b、c、x、y、z、および nは請求項13に定義される通りであり、
Raは、
【化4】

【化5】
およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、アッセイキット。
【請求項15】
請求項14に記載のアッセイキットであって、前記有機ナノ構造分子は次の式ICのものである:
【化6】
ここで、Raは請求項14に定義される通りである、アッセイキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面および有機ナノ構造分子を含む多孔性ニトロセルロース膜ならびにその製造方法および使用に関する。特に、本発明の多孔性NCMは、表面結合有機ナノ構造分子を含む。該有機ナノ構造分子は、多孔性NCMの表面に非共有結合的に付着または結合した複数の末端領域(例えば、末端)部分を含む分岐領域を有する。該有機ナノ構造分子は、標的分子に選択的に結合するように適合され共有結合された捕捉分子を含む線形領域も含む。
【背景技術】
【0002】
ニトロセルロース膜は、ニトロセルロースから構成される多孔性膜である。多孔性ニトロセルロース膜は、典型的には、約0.2 pm~約15 pmの範囲の中央細孔径を有する。ニトロセルロース膜は全体的に中性であるが、NCMのニトロ基とタンパク質に存在する双極子モーメント間の強い双極子モーメントを介してタンパク質を固定化するのに使用される。いくつかの例では、タンパク質のイオン性側鎖も、NCMにタンパク質を固定化するために使用されている。タンパク質の固定化におけるNCMの能力は、使用する溶液のpHによって変化する。いかなる理論にも縛られることはないが、pHは、溶液中のタンパク質の特性を変化させることにより、特定のタンパク質の固定化効率に影響を与えると考えられる。
【0003】
ニトロセルロース膜は、核酸を静電的に固定するためにも使用される。二本鎖DNAに比べて、ニトロセルロースは一本鎖DNAおよびDNA-RNAハイブリッドに対して特に高い親和性を持つ。通常、NCMはRNAを固定しない。ヌクレオチド結合特性のこれらの違いにより、液相ハイブリッド形成反応における一本鎖ヌクレオチド鎖と一本鎖核酸を分離または定量し、タンパク質と複合体を形成する核酸を分離または定量するために使用される。
【0004】
ニトロセルロース膜を使用した、標的材料または物質(例えば、タンパク質、核酸など)の定量分析のため、捕捉分子(例えば、対象の標的物質に選択的に結合するもの)として使用されるタンパク質は、ニトロセルロース膜上に印刷され、結果として生じるニトロセルロース膜を乾燥させることがしばしばある。この態様において、捕捉分子は、捕捉分子とニトロセルロース膜表面との間に共有結合を生成することなく、ニトロセルロース膜上に固定化される(図1)。理論に縛られることはないが、このような非共有結合的付着による固定化またはニトロセルロース膜の表面への捕捉分子の付着は、イオン相互作用、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用などのさまざまな化学的および/または物理的手段によって達成され得る。さらにまた、いかなる理論にも束縛されないが、非共有結合的付着では、そのような化学的および/または物理的相互作用の1以上の組み合わせが、ニトロセルロース膜の表面上への捕捉分子の固定化に関与し得る。捕捉物質(または捕捉分子)のニトロセルロース膜の表面への非共有結合的付着は熱力学現象であり、双極子モーメント相互作用および/または疎水性相互作用が現象の主要な要因または要素の1つであると考えられる。
【0005】
ニトロセルロース膜は、実質的に一方向の溶液の流れを有するクロマトグラフィーマトリックスとして機能することができる多孔性構造化ポリマーである。この実質的に一方向の流れにより、ニトロセルロース膜をさまざまな診断アッセイのフロースルー試験キットで使用できる。他のフロースルー試験や診断キットと同様に、標的分子が捕捉分子を含む固定領域を通過しても、捕捉分子と標的物質の複合体が形成されない場合、サンプル内の標的分子の存在を正確に決定できない。また、流速が試験ごとに異なる場合、試験または診断キットは信頼できない。したがって、正確で信頼性の高い試験または診断キットは、捕捉分子-標的物質複合体が形成するのに十分な時間を提供する必要がある。ニトロセルロース膜に一定の流速を生成する従来の方法は、膜の孔径を調整することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念なことに、流速と細孔サイズは、フロースルー試験または診断キットの精度と信頼性に必要な唯一の要素ではない。例えば、捕捉分子と標的物質との間に複合体を形成するのに十分な時間で標的物質が膜の表面に結合した捕捉分子を通過したとしても、捕捉分子-標的物質複合体を形成するために必要な反応部位は、不適切な配向またはニトロセルロース膜の表面上に捕捉分子の複数の層が存在するために覆い隠されまたはアクセスできない可能性があるため、所望の複合体は形成されないことがしばしばある。これらの要因により、ニトロセルロース膜を使用するフロースルー試験または診断キットの再現性と信頼性も低下する。
【0007】
したがって、再現性が高く信頼性の高いニトロセルロース膜ベースの試験および/または診断キットが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様ではニトロセルロース膜を使用した再現性と信頼性の高い試験および/または診断キットを提供する。本発明のニトロセルロース膜は、非共有結合的に付着された有機ナノ構造(すなわち、有機ナノ構造分子)を含む。いくつかの態様において、有機ナノ構造分子は、標的材料または標的物質に選択的に結合することができる共有的に付着した(すなわち、共有結合した)捕捉分子または捕捉物質を含む。いかなる理論にも縛られることはないが、有機ナノ構造分子の使用は、標的分子への捕捉分子のより効率的かつ好ましい提示を可能にし、それにより、より正確で信頼できる試験/診断キットをもたらすと考えられる。
【0009】
本発明の有機ナノ構造分子の使用は、反応部位または結合部位をよりアクセスしやすく、より構造化し(すなわち、凝集または多層ではない)、その結果、捕捉分子と標的物質との間の結合の立体障害を大幅に減少させると考えられる。有機ナノ構造を膜支持体に付着させた後、捕捉分子が有機ナノ構造分子に付着または印刷された場合にも、同じ効果が得られる。有機ナノ構造分子を使用して捕捉分子を付着させると、ニトロセルロース膜の表面上の捕捉分子の空間環境が変更され、標的材料と捕捉分子が複合体をより簡単に形成できる環境が作り出される。得られるニトロセルロース膜は、再現性が高く、信頼性の高い標的物質の定量的および定性的分析を提供する。
【0010】
本発明の別の態様では標的物質の再現性の高い定量分析法を提供する。標的物質は、本発明の有機ナノ構造分子に共有結合している捕捉分子に選択的に結合する。次に、有機ナノ構造分子は、支持体として使用されるニトロセルロース膜に非共有的に付着される。
【0011】
本発明のさらに別の態様では定量的および/または定性的アッセイキットを提供する。 いくつかの態様では、該アッセイキットは、標的物質の再現性の高い定量を可能にする。
【0012】
いくつかの態様において、有機ナノ構造分子は、複数の分岐領域および線形領域を含む。線状領域の末端は、捕捉分子を共有結合させるために使用できる官能基を含む。あるいは、捕捉分子は、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させる前に、線形領域の末端に結合させてもよい。いくつかの態様において、有機ナノ構造分子は、ニトロセルロース膜への非共有結合的付着を形成することができる複数(例えば、少なくとも2つ、典型的には少なくとも3つ、最も頻繁には3、9または27)の分岐領域末端官能基を含む。分岐領域末端官能基は、正に帯電、または負に帯電のいずれかであり得る。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、本明細書に記載のニトロセルロース膜を使用した標的物質の定量的および/または定性的分析方法を提供する。
【0014】
さらに別の本発明の態様では、本発明のニトロセルロース膜(NCM)を含む定量的および/または定性的アッセイキットを提供する。
【0015】
本発明は、とりわけ標的物質の定量的および/または定性的分析に有用な有機ナノ構造分子をも提供する。本発明の有機ナノ構造分子は、捕捉分子を共有結合させるために使用することができる複数の分岐領域末端官能基および線形領域末端官能基を含む。
【0016】
いくつかの態様において、本発明のニトロセルロース膜の使用は、ポリエチレングリコール(「PEG」)ベースのリンカーなどの従来のニトロセルロースベースのアッセイ試験と比較して、選択性および/または特異性が少なくとも10%、通常は少なくとも25%、多くの場合少なくとも50%向上を提供する。さらに他の態様において、本発明のニトロセルロース膜の使用は、図4に示すとおり少なくとも100%、通常少なくとも200%、多くの場合少なくとも300%、より多くの場合には少なくとも400%、最も多くの場合には少なくとも500%の再現性の向上を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、従来法の捕捉物質をニトロセルロース膜(NCM)の表面に固定化した模式図である。
図2-1】図2-1は、本発明の一態様による有機ナノ構造分子を使用した、ニトロセルロース膜への捕捉分子の付着を示す概略図である。
図2-2】図2-2は、本発明の別の態様による有機ナノ構造分子を使用したニトロセルロース膜への捕捉分子の付着を示す概略図である。
図3図3は、実施例1の捕捉物質と有機ナノ構造のモル比の再現性の結果を示すグラフであり、濃度対CV(%)グラフ、傾向線と標準方程式、およびCV10%の濃度を示す。
図4-1】図4は、CV10%および再現性向上倍率(reproducibilityenhancement magnification)での比較例1の各メーカーのニトロセルロース膜に有機ナノ構造を適用した場合の再現性の結果を示すグラフである。
図4-2】図4は、CV10%および再現性向上倍率(reproducibilityenhancement magnification)での比較例1の各メーカーのニトロセルロース膜に有機ナノ構造を適用した場合の再現性の結果を示すグラフである。
図5図5は、 CV10%および再現性向上倍率での実施例2の有機ナノ構造のエポキシドおよびアルデヒド官能基の再現性の結果を示すグラフである。
図6図6は、CV10%および再現性向上倍率での実施例3の負の電荷または正の電荷としての分岐末端を有する有機ナノ構造の再現性を示すグラフである。
図7図7は、CV10%の濃度および再現性向上倍率での実施例4の有機ナノ構造の分岐分子の数が3および9である場合の再現性の結果を示す。
図8図8は、実施例5の有機ナノ構造と捕捉物質を組み合わせる場合の連続方式と混合方式を使用するCV10%の濃度および再現性向上倍率での再現性である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の以下の説明は、本発明のいくつかの態様を例示する目的でのみ提示されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の説明は、1つまたは複数の態様の説明ならびに特定の変形および修正を含むが、他の変形および修正は、例えば、本開示を理解した後、当業者の技術および知識の範囲内であり得るように本発明の範囲内である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されたものに対する代替の、交換可能な、および/または同等の構造、機能、範囲、または工程を含む、許容される範囲までの代替の実施形態を含むことが意図され、そのような代替、交換可能、および/または同等の構造、機能、範囲、または工程が本明細書に開示されているかどうかにかかわらず、特許性のある主題を公にささげることを意図していないことを理解されたい。本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される用語は、特定の用途のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈から明らかにそうでないことが指示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0020】
本発明の特定の態様の1つは、標的物質の定量分析および/または定性分析に役立つニトロセルロース膜(NCM)を提供する。1つの態様において、NCMは、NCMに非共有結合的付着された有機ナノ構造分子を含む。本発明の有機ナノ構造分子は、複数の分岐領域を含み、それぞれの分岐領域は、NCMに非共有結合的に付着するために使用することができる末端官能基を含むことができる。分岐領域末端官能基は、正または負に帯電することができる。有機ナノ構造分子は、捕捉分子に共有結合もしくは結合することができる官能基を含む線形領域も含む。本発明の範囲は、捕捉分子がすでに有機ナノ構造分子に共有結合されている有機ナノ構造分子を含むことを理解されたい。
【0021】
本発明の有機ナノ構造分子は中心原子、複数の末端部分を有する分岐領域、末端官能基を有する線状領域を含む。線形領域の末端官能基は、本明細書に詳細に記載されるように、捕捉分子を共有結合させるために使用される。有機ナノ構造化合物を多孔性ニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させるために、複数の分岐領域末端部分(すなわち、複数の分岐領域末端官能基)が使用される。典型的には、本発明で使用されるニトロセルロース膜は、約0.05 pm~約30 pm、典型的には約1 pm~約30 pm、多くは約5 pm~約20 pm、およびより多くは約10 pm~約15 pmの中央孔径サイズを有する。文脈が他に必要としない限り、本明細書で使用される用語「約」は、数値を指す場合、数値の±20%、通常は±10%、多くの場合±5%、最も多くは±1%を意味する。いくつかの態様において、線形領域の末端官能基は、共有結合した捕捉分子を含む。
【0022】
多種多様な方法を使用して、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させることができるが、本発明の一つの特定の態様では、複数の非共有結合的付着により、多孔性ニトロセルロース膜の表面またはマトリックス上に有機ナノ構造分子を固定化することを含む。有機ナノ構造は以下を含む:(i)中心原子、(ii)前記多孔性ニトロセルロース膜の表面に非共有結合的に付着している複数の末端部分を有する分岐領域、および(iii)線形領域の末端に共有結合した捕捉分子を有する線形領域であって、前記捕捉分子は、標的物質がサンプル中に存在する場合、標的物質に選択的に結合するように適合されるものである。有機ナノ構造分子は、印刷処理を含むがこれに限定されない既知の方法のいずれかによってニトロセルロース膜に付着させることができる。印刷処理は、例えば、有機ナノ構造分子の溶液がニトロセルロース膜に印刷され、印刷された溶液が乾燥可能であるジェットプリント技術の使用を含む。この印刷技術により、複数の非共有結合的付着によって有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に固定することができる。
【0023】
あるいは、有機ナノ構造分子は、ニトロセルロース膜上に(例えば、印刷処理を介して)固定化され、捕捉分子に共有結合している有機ナノ構造の線形領域を生成するのに十分な条件下で、捕捉分子を有機ナノ構造分子の線形領域の末端官能基と反応する。いくつかの態様において、捕捉分子は、有機ナノ構造分子に非共有結合的に付着するニトロセルロース膜の同じ領域に印刷され、結果として生じる領域は、定量および/または定性アッセイでニトロセルロース膜を使用する前に、反応および乾燥することができる。いかなる理論にも縛られないが、捕捉分子をニトロセルロース膜に付着させる際の有機ナノ構造分子の使用は、図2に示されるとおり捕捉分子-標的物質複合体間の距離を制御し、それによって立体障害を有意に減少させると考えられる。
【0024】
アッセイ方法には、本明細書に記載されている(たとえば、フロースルーアッセイキットまたは側方流動アッセイキットとしての)ニトロセルロース膜の使用、ならびに、サンプルまたは標本をニトロセルロース膜に接触させて、サンプルまたは標本内の標的物質の存在および/または量を決定することを含む。本明細書において、用語「サンプル」および「標本」は本明細書において交換可能に使用され、分析される物質を指す。そのようなサンプルは、体液サンプル(例えば、血液、唾液、便、尿、粘液など)、生体サンプル(例えば、細胞、DNA、タンパク質、細菌、ウイルスなど)、化学サンプル、食品サンプル、環境サンプル(例えば、土壌、大気など)、ならびに分析可能な他のサンプルであり得る。典型的には、アッセイは、側方流動(lateral flow)またはフロースルー(flow-through)プロセスを使用して行われ、標的物質(存在する場合)を捕捉分子に結合する。
【0025】
アッセイ工程は、検出物質、例えば、フルオロフォア、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、コロイド金などのシグナルトレーサーをニトロセルロース膜に添加して、その存在または捕捉分子-標的物質複合体の量を決定することを含むこともできる。分析には、捕捉分子-標的物質複合体をELISAで使用されるものと同様の検出物質と反応させることが含まれ得る。
【0026】
検出物質は、比色、化学発光、または化学蛍光シグナルを生成するように適合された部分を含むことができる。この様式において、生成されたシグナル(例えば、それぞれ、色、発光、または蛍光シグナル)は、光学センサーを使用して分析できる。シグナルのシグナルレベルを分析して、ニトロセルロース膜上に形成された捕捉分子-標的物質複合体を定量化することもできる。例として、検出物質が蛍光シグナル生成部分を含む場合、ニトロセルロース膜に励起波長の光を照射し、蛍光強度を定量化して、サンプル中に存在する標的物質の量を決定することができる。検出物質がコロイド金を含む場合、サンプルに存在する標的物質の量を定量化するために、光学装置の比色分析のパラメーターを使用して、光学システムで発色の程度が取得される。
【0027】
例えば光学機器を使用して得られたシグナルは、標的物質濃度とシグナル値の間のグラフ、傾向線、標準方程式、および決定係数を使用して、定量化または半定量化できる。
【0028】
いくつかの態様において、本発明の方法は、例えば、細胞、DNA、RNA、PNA、アプタマー、リガンド、エキソソーム、脂質などのさまざまな標的物質を確実に分析するために使用できる。文脈が他に必要としない限り、用語「分析する」または「分析」は、定性的および/または定量的分析を意味する。
【0029】
本発明はまた、以下の工程を含む、ニトロセルロース膜を使用する標的物質の分析方法を提供する:(i)標的物質がサンプル中に存在する場合、捕捉分子-標的物質複合体を形成するのに十分な条件下で、本発明のニトロセルロース膜にサンプルを加える工程、(ii)捕捉分子-標的物質複合体がニトロセルロース膜上に存在する場合、得られたニトロセルロース複合体を検出物質と接触させて、検出複合体を形成する工程、および、(iii)検出複合体から生成されたシグナルを分析して、サンプル中に存在する標的物質の存在および/または量を決定する工程。
【0030】
サンプルは通常、溶液として存在する。本発明の方法を使用して分析することができる例示的なサンプルには、血液、血清、血漿、唾液、尿や、糞便、痰または組織などの生体サンプル、および、例えば、水サンプル、土壌サンプル、空気サンプルなどの環境サンプル、および例えば、肉、魚、野菜、飲料、乾燥食品、加工食品などの食品サンプルが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
標的物質は、例えば、抗原、抗体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、PNA、アプタマー、リガンド、毒性化合物、脂質、ホルモン、ミネラル、細菌、ウイルス、マクロベシクル(macro-vesicle)またはマイクロベシクル(micro-vesicle)、エキソソーム、細胞などの分析に必要とされるいかなる物質であってよい。
【0032】
捕捉分子は、標的物質に選択的に結合することができる任意の分子であり得る。例示的な捕捉分子には、抗原、抗体、DNA、RNA、PNA、アプタマー、リガンド、脂質、ホルモンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
検出物質はまた、これらに限定されないが、フルオロフォア、磁性粒子、酵素、ナノ粒子、ナノファイバーなどシグナルボディ(signal body)または検出部分を含み得る。
【0034】
本発明では、有機ナノ構造分子の分子量または構造に応じて、ニトロセルロース膜表面に存在する捕捉分子間の距離と密度を制御することができる。1つの特定の態様において、有機ナノ構造分子の線形領域末端官能基(またはそれに結合した捕捉分子)間の距離は、約0.5nm~約10nmの範囲で制御することができる。あるいは、ニトロセルロース膜上の捕捉分子の密度は、1nm2あたり約0.01~約0.1の捕捉分子の範囲で制御できる。
【0035】
共有結合した捕捉分子を有する非共有結合的に付着した有機ナノ構造分子を含む、本発明のニトロセルロース膜を用いた分析方法は、アッセイキットの形で使用することができ、診断方法にも適用することができる。1つの特定の態様において、本発明のアッセイキットは、側方流動タイプまたはフロースルータイプのアッセイキットで製造される。しかしながら、本発明の範囲はこれらの特定のアッセイキットに限定されないことを理解されたい。
【0036】
本発明はまた、捕捉分子をニトロセルロース膜に共有結合させるために使用することができる有機ナノ構造分子を提供する。有機ナノ構造分子は、捕捉分子を共有結合させるために使用される末端官能基を有する線形領域を含む。有機ナノ構造分子はまた、複数の分岐領域を含む。複数の分岐領域は、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させるために使用できる末端官能基を含む。
【0037】
捕捉分子を共有結合させるために使用できる線形領域の末端官能基は、例えば、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボニル基、カルボキシ基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、フェニル基、アルキル基、ホスフィン基、N-ヒドロキシスクシンイミド-エステル基、アルデヒド基、エポキシド、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド水和物、またはEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)HCl)であり得る。典型的な線形領域の末端官能基は、アルデヒド基およびエポキシド基からなる群から選択される。しかしながら、本発明の範囲は、線形領域の上記の末端官能基に限定されないことを理解されたい。
【0038】
いくつかの態様において、有機ナノ構造分子の線形領域には、少なくとも1つのエーテル基が含まれる。エーテル基の存在により、有機ナノ構造分子の親水性が向上する。
【0039】
さらに他の態様において、有機ナノ構造分子の分岐領域の末端官能基のそれぞれは、アミノ基、スルホン酸基、フェニル基、アルキル基、ホスフィン基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、エポキシ基からなる群から選択される。しかしながら、分岐領域の末端官能基はこれらの官能基に限定されないことを理解されたい。一般的に、有機ナノ構造分子のニトロセルロース膜への非共有結合的付着を可能にする任意の適切な官能基を使用することができる。
【0040】
さらに他の態様において、有機ナノ構造分子の分岐領域は、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させるように適合された、少なくとも2つ、多くの場合少なくとも3つ、典型的には3、9または27の末端官能基を含む。
【0041】
いくつかの態様において、有機ナノ構造分子は、その線形領域にトリアゾール部分を含む。驚くべきことかつ予想外なことに、本発明者らは、有機ナノ構造分子の線形領域上にトリアゾール部分が存在すると、再現性と信頼性の高いニトロセルロース膜アッセイキットが得られることを見出した。さらに、線形領域上のトリアゾール部分の存在により、他の線形領域部分と比較して、比較的強固な構造が可能となりおよび合成が容易になる。1つの特定の態様において、有機ナノ構造分子は次の式のものである:
【化1】
ここで
Lは、トリアゾール部分を含む有機ナノ構造分子の線形領域部分であって、Lはさらに以下を含む:
(1)標的分子に選択的に結合するように適合された捕捉分子を共有結合するように適合された線形領域末端官能基、または
(2)標的分子に選択的に結合するように適合された共有結合した捕捉分子、
Q1は、少なくとも3つの酸化状態を持つ前記有機ナノ構造分子の中心原子であり、
a1は2からQ1-1の酸化状態までの整数であり、
各Tは独立して、前記有機ナノ構造分子を前記多孔性ニトロセルロース膜に非共有結合的に付着させるように適合された分岐末端領域官能基を含む前記有機ナノ構造分子の分岐末端領域部分であり、
および、前記有機ナノ構造分子は、複数の前記分岐末端領域官能基によって前記多孔性ニトロセルロース膜に非共有結合的に付着される。
【0042】
いくつかの態様において、Lはトリアゾリル部分を含む。さらに他の態様において、L は1,2,3-トリアゾリル部分を含む。また他の態様において、 Lは1,4-置換1,2,3-トリアゾリル部分を含む。
【0043】
1つの特定の態様において、Lは次の式の部分を含む:
【化2】
ここで、Raは本明細書で定義されるとおりであり、RbはQ1に結合されたリンカーである。いくつかの態様において、Rbは、約2~約10、典型的には約2~約8、多くの場合約2~約6、およびより多くの場合2~4の原子鎖を有するリンカーである。1つの特定の態様において、Rb は、式 -(CH2)2-C(=O)-NRc-(ここで、Rcは水素、C1-4アルキルまたは窒素保護基である)の部分である。用語「アルキル」は、1~12個、典型的には1~6個の炭素原子の飽和線状一価炭化水素部分、または3~12個、典型的には3~6個の炭素原子の飽和分岐一価炭化水素部分を指す。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、tert-ブチル、ペンチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
a1がQ1-1の酸化状態より小さい整数である場合、Q1は水素またはアルキル基に結合でき、例えば、Q1がCでa1が2の場合、式Aの化合物はL-CH(T)2 または L-CR1(T)2(ここで、R1は、メチル、エチルなどのアルキルである。)として表すことができることを理解されたい。
【0045】
さらに別の態様において、有機ナノ構造分子は次の式のものである:
【化3】
ここで、
a、b、およびcのそれぞれは、独立して0または1であり、
cが0またはcが1の場合、xは1であり、xは、1からQ4-1の酸化状態までの整数であり、
bが0またはbが1の場合、yは1であり、yは、1からQ3-1の酸化状態までの整数であり、
aが0またはaが1の場合、zは1であり、zは、1からQ2-1の酸化状態までの整数であり、
nは、1からQ1-1の酸化状態までの整数であり、
L および Q1は本明細書に定義される通りであり、
Q2、Q3、Q4はそれぞれ独立して、少なくとも3の酸化状態を持つ分岐原子であり、
R2、R3、R4、およびR5はそれぞれ独立してリンカーであり、および
Yは前記分岐末端領域官能基である、
ただし、n、x、y、およびzの積(product)が少なくとも3である場合。リンカーであるR2、R3、R4、およびR5は、例えば、O、S、またはNR(ここで、RはHまたはC1-C6アルキルであってよい)などのヘテロ原子を任意に持つアルキレン(例えば、メチレン、エチレン、プロピレンなど)であってよい。用語「アルキレン」は、1~12、好ましくは1~6の炭素原子の飽和直鎖飽和二価炭化水素部分、または3~12、好ましくは3~6の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素部分を指す。例示的なアルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、R2、R3、R4、およびR5はそれぞれ独立して -CH2-、-CH2^O-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、-O-CH2-CH2-CH2-などからなる群から選択される。
【0046】
さらに別の態様において、有機ナノ構造分子は次の式のものである:
【化4】
ここで
Q1、Q2、Q3、Q4、R2、R3、R4、R5、Y、a、b、c、x、y、z、および nは本明細書に定義される通りであり、
Ra
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】
、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
ここで
点線は任意の二重結合を表し、
Zは、標的分子に選択的に結合するように適合される捕捉分子であって、前記Zは、式L1の化合物のアルデヒド官能基または式L2の化合物のエポキシド官能基を使用して共有結合される。
【0047】
また別の態様において、有機ナノ構造分子は次の式のものである:
【化9】
ここで Raは本明細書で定義される通りである。
【0048】
いくつかの例示的な有機ナノ構造分子は、次の式のものである:
【化10】
【0049】
概して、特に定義しない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学および生化学の当業者によく知られている。本明細書で使用される特定の用語のいくつかは、次のように定義される。
【0050】
用語「サンプル」は、乳液、分散液、均質溶液、および懸濁液を含むがこれらに限定されない液体または溶液サンプルを指す。
【0051】
用語「体液」は、すべての臨床サンプルを指す。例示的な体液には、血液、血漿、血清、尿、粘液、脊髄液、唾液、および生物から内部に排出、分泌、または移動される他の任意の体液が含まれるがこれらに限定されない。
【0052】
文脈が他に必要としない限り、「捕捉する分子」、「捕捉分子」、「捕捉物質」、および「捕捉材料」という用語は、本明細書では互換的に使用され、標的物質に直接または間接的に結合可能な物質を指す。例示的な捕捉分子には、核酸(例えば、DNA、RNA、PNAおよび対応するオリゴヌクレオチド)、受容体、リガンド、酵素、タンパク質、アプタマー、ならびに標的物質に選択的に結合できる任意の他の基質が含まれるが、これらに限定されない。1つの特定の例において、捕捉分子は、所望の抗原に対して強い結合能力を有する抗体である。
【0053】
「検出分子」、「検出材料」、「検出物質」、および「検出部分」は、本明細書では互換的に使用され、捕捉分子と標的物質の間に形成される複合体の検出または観察を可能にする物質を指す。検出分子は、捕捉分子および/または標的物質の一部であり得る。したがって、検出分子は別々の分子である必要はない。
【0054】
捕捉分子は、捕捉分子が標的とする異なる認識部位を有する標的物質を特異的に認識することができる任意の物質であり得る。例えば、捕捉分子は、(i)哺乳動物を標的物質で免疫して得られた抗血清から精製されたポリクローナル抗体を含む抗体、(ii)標的物質で免疫された哺乳動物から抽出された抗体産生細胞、および(iii)使用することができる骨髄腫細胞との融合により得られるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体、であってよい。標的物質に対するポリクローナル抗体は、当業者に公知の精製方法、例えば、(i)抗血清の塩析、(ii)イオン交換クロマトグラフィー、(iii)アフィニティークロマトグラフィーなどにより得ることができる。標的物質に対するモノクローナル抗体は、マウスなどの適切な動物を標的物質で免疫し、脾細胞を骨髄腫細胞と融合させ、ELISAなどの方法を使用して、標的物質に特異的に結合する抗体を産生するクローンを選択し、そして適切な上清またはハイブリドーマを適切な動物に接種して得られた腹水を使用するなどして、当業者が入手可能である。このようにして得られた標的物質に対する抗体は、本明細書に記載されるニトロセルロース膜などの支持体上に抗体を固定化することにより、捕捉分子として使用することができる。
【0055】
概して、抗体の産生において、例えば、これに限定されないが、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット、またはニワトリなどの適切な実験動物が、抗体が望まれる抗原に曝露される。典型的には、動物は、動物に注射される有効量の抗原で免疫される。抗原の有効量は、動物による抗体産生を誘発するのに必要な量を指す。その後、動物の免疫系は、所定の期間にわたって応答することができる。免疫システムが抗原に対する抗体を産生していることがわかるまで、免疫工程を繰り返すことができる。抗原に特異的なポリクローナル抗体を得るために、所望の抗体を含む動物から血清を採取する(またはニワトリの場合、卵から抗体を採取できる)。このような血清は試薬として有用である。ポリクローナル抗体は、例えば、血清を硫酸アンモニウムで処理することにより、血清(または卵)からさらに精製することができる。
【0056】
モノクローナル抗体は、例えば、KohlerとMilsteinの方法論(Nature , 1975, 256, 495-497)に従って製造することができる。例えば、Bリンパ球を免疫動物の脾臓(または任意の適切な組織)から回収し、骨髄腫細胞と融合させて、適切な培地で継続的に増殖できるハイブリドーマ細胞の集団を取得する。所望の抗体を産生するハイブリドーマは、ハイブリドーマによって産生された抗体が所望の抗原に結合する能力を試験することによって選択される。
【0057】
酵素、蛍光物質、または金コロイドなどのシグナル部分を抗体に標識することにより、抗体はまた、捕捉分子と複合体を形成した標的物質を認識するための検出物質として使用することもできる。シグナル部分標識検出物質を有する抗体としては、標的物質に対する高い選択性を得るために、通常、モノクローナル抗体が用いられる。しかしながら、捕捉分子がモノクローナル抗体である場合、ポリクローナル抗体は検出物質として使用できる。
【0058】
本発明において用語「インキュベーション」は、抗原抗体または相補的DNAまたはRNA間の反応は一定の温度で保たれる(たとえば、±5℃以内、通常±3℃以内、多くの場合±1℃以内)ことを意味する。抗原抗体反応は、相補的な構造を持つ抗原への抗体の選択的結合である。本明細書において、相補的DNAまたはRNA反応は、ハイブリダイゼーションのために100%相補的塩基配列を有する各鎖のDNAまたはRNAが反応する反応である。したがって、本発明の組成物および方法は、一塩基多型(「SNP」)を区別するために使用することができる。
【0059】
用語「洗浄」は、広く受け入れられる方法で使用される。典型的には、用語「洗浄」はインキュベーション工程において、捕捉分子または標的物質(例えば、抗体または核酸ハイブリダイゼーション)と反応しない残りの物質を溶媒または溶液を利用して洗浄または除去することを意味する。捕捉分子-標的物質複合体の形成(例えば、抗原-抗体または核酸ハイブリダイゼーション)に影響を及ぼさない限り、特に制限はない。界面活性剤を添加して、洗浄または洗浄効果を高めることができる。また、洗浄や洗浄の方法は、複合体形成工程全体に有効であれば特に限定されない。洗浄またはクリーニングは、シグナル干渉の可能性のある物質を除去することにより分析の感度を高めるために実行してもよい選択的な工程である。
【0060】
本発明において、インキュベーションおよびシグナル体シグナル発生の工程における反応温度は特に限定されない。しかしながら、酵素シグナル活性の喪失や反応液の凍結や蒸発を防ぐために、約4℃~約40℃の範囲で標的分子への捕捉分子の結合を行う。酵素-リガンド複合体形成において迅速なシグナル終結が望まれる場合、複合体形成の温度範囲は通常、約15℃~約40℃の範囲である。
【0061】
捕捉分子と標的分子との間で複合体を形成するインキュベーション工程の間、より長いインキュベーション時間は、概してより多くの量の捕捉分子-標的物質複合体形成をもたらす。しかしながら、結合(つまり、複合体形成)反応は、一定時間後に飽和する可能性がある。迅速な分析を提供するために、複合体形成(すなわち、インキュベーション)時間を短縮することが望ましい。捕捉分子の量が多ければ多いほど(すなわち、非共有結合的に固定化される)、NCM支持体への感度がより高くなり、そして、より多くの標的物質を捕捉分子に複合化できるため、反応時間またはインキュベーション時間を短縮できる。他方、標的物質が反応する(すなわち、錯体形成)部位を遮断することにより立体障害となる部分では、効率が低下する。したがって、ニトロセルロース膜に負荷された(すなわち、固定化された)捕捉分子の量を最適化する必要がある。本明細書において、用語「固定化」は、ニトロセルロース膜への有機ナノ構造分子の付着について言及する場合、乾燥したニトロセルロース膜内の有機ナノ構造分子の実質的にすべて(通常、 90%以上、多くの場合95%以上、最も多くの場合には 99%以上)がアッセイ中ニトロセルロース膜に付着したままであることを指す。
【0062】
捕捉分子は、有機ナノ構造分子を介してニトロセルロース膜の表面に固定化されているため、各捕捉分子間の距離は、有機ナノ構造分子によって比較的制御することができる。これにより、立体障害に起因する定量分析の再現性が不十分になるという問題が解消または大幅に軽減される。
【0063】
用語「蛍光」、「化学発光」、「化学蛍光」および「比色分析」は、当業者によく認識されている。典型的には、これらの用語は、色または光(蛍光、発光)が放射されるという事実、または当業者に知られている分析方法のいずれかを使用して検出できるという事実を指す。
【0064】
本明細書に開示される方法の分析工程中に、肉眼を使用してシグナルを半定量的または定性的に測定または決定することができる。しかしながら、典型的には、シグナルは、シグナルを定量的または定性的に分析するための機器(たとえば、比色計、UV/Vis分光計など)によって測定される。当業者によく知られているように、「化学発光」、「化学蛍光」、および「蛍光」は、典型的には、光学デバイスシステムのイメージセンサーによって放出される蛍光または化学発光の強度を測定する。そのようなシグナルは定量的または定性的に分析され得る。
【0065】
文脈が他に必要としない限り、用語「検出」および「分析」は、標的物質の存在を確認するための工程を指す。この用語には、標的物質の存在または不存在を確認するための定性的決定、ならびに標的物質濃度の定量的または半定量的決定が含まれる。
【0066】
典型的には、サンプルは、標的物質(サンプル中に存在する場合)とNCM支持体に固定化された捕捉分子との間の選択的または特異的結合を促進するため、流動性を有する流体または溶液である。しかしながら、サンプルは流体に限定されないことを理解されたい。例えば、サンプルが固体の場合、適切な溶媒を使用して溶液に溶解または分散させることができる。
【0067】
測定(例えば、アッセイ)に必要なサンプル量に関して、サンプル中に標的物質が存在する場合、NCMの支持体に固定された捕捉分子によって、標的物質を検出/定量化するのに十分な量のサンプルである限り、必要なサンプルの量に特別な要件はない。アッセイ前にサンプルを希釈することができる。しかしながら、サンプルを希釈すると、標的物質の濃度が低下する。したがって、サンプル中の標的物質の濃度が低下するため、標的物質の検出や定量が困難になる可能性がある。このような場合、標的物質がサンプル中に存在する場合、インキュベーション時間を増加させて、捕捉分子-標的物質複合体の形成に十分な時間を与えることができる。あるいは、捕捉分子の量は、標的物質の減少した濃度を補うために増加させることができる。本発明の分析方法で使用されるサンプルの典型的な量は、約10μL~約200μLの範囲である。しかしながら、分析に使用されるサンプルの量はこれらの範囲に限定されないことを理解されたい。事実、捕捉分子と標的物質との間の複合体の形成を可能にするのに十分である任意の量のサンプルが、本発明の方法において使用され得る。
【0068】
NCM支持体に固定化された捕捉分子は、有機ナノ構造分子の線形領域の末端官能基に共有結合される。有機ナノ構造分子の適切な線形領域末端官能基には、ヒドロキシル、ホルミル、カルボニル、カルボキシル、エーテル基、エステル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、フェニル基、アルキル基、ホスフィン基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、アルデヒド、エポキシド、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール、マレイミド、ヨードアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、およびEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)HCl)が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの態様において、所望の標的物質とニトロセルロース膜の非捕捉分子部分との間の偽陽性シグナルを生成する相互作用を回避または大幅に低減するために、ニトロセルロース膜の非捕捉分子部分を遮断またはクエンチすることができる。例えば、捕捉分子がタンパク質の場合、ニトロセルロース膜をカゼイン、ウシアルブミン、またはゼラチンを含む溶液で処理すると、ニトロセルロース膜の非捕捉分子部分と標的物質との間の非選択的相互作用が大幅に減少または防止される。
【0070】
本発明の方法は、所望の任意の標的物質を検出/分析するために使用され得る。本発明のニトロセルロース膜および方法によって検出/分析することができる例示的な標的物質には、生体材料(抗原、抗体、タンパク質、脂質、ペプチド、DNA、およびRNAなど)、毒性化合物、ミネラル、バクテリア、ウイルス、マクロベシクル、マイクロベシクル、エキソソーム、細胞、および例えば薬物、色素、重金属などの非生体材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明の方法はまた、2つの抗体(例えば、一方は捕捉分子として、他方は検出物質として)で標的物質を捕捉することを含み得る。このような方法は、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)に類似するが、信頼性と再現性が大幅に向上する。さらに、本発明の方法は、はるかに正確であり、検出/分析のために必要な標的物質の量が著しく少ない。このような方法は、12~15のアミノ酸を含むペプチドの分子量を有する標的物質に特に有用である。
【0072】
対象物質がビタミンなどの無機物やグルコースなどの低分子物質の場合、捕捉分子として抗体は不向きである。このような場合、標的物質に類似した物質と1つの特定のシグナルトレーサー間の相互競合を使用することができる。
【0073】
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、限定することを意図しない以下の実施例を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。実施例において、熟練により建設的に減らされる手順は現在時制で記述され、実験室で実行された手順は過去時制で示される。
【実施例
【0074】
実施例1
【0075】
本実施例において、急性心筋梗塞バイオマーカー(すなわち、心臓トロポニンI(cTnl))を検出するように適合された捕捉分子を使用して、再現性の高い定量分析に必要な有機ナノ構造分子の適切な量を決定した。
【0076】
有機ナノ構造分子のカリウム塩の水溶液(MW 762.93、C27H41K3N4O14)は、捕捉分子、cTnIに特異的な抗体のモル数に対して、0.4、1.0、4.1、および5.1のモル比で調製された。調製した有機ナノ構造分子溶液を、0.35μL/ cmの割合でニトロセルロース膜(CNPC、Advanced Microdevices、インド)にディスペンスし、線を形成し、40℃、相対湿度10%の乾燥機で約10分間乾燥させた。その後、有機ナノ構造分子の量が異なる4種類のニトロセルロース膜を、60℃、相対湿度10%以下の乾燥機で24時間乾燥する同様の工程で処理した。有機ナノ構造分子の量の効果を比較するために、有機ナノ構造分子を含まず、水のみを供給したニトロセルロース膜を対照として調製した。cTnI特異的捕捉抗体(0.027 mM、0.35μL/ cmのディスペンス率)を同じ位置にディスペンスし、線を再形成し、40℃、相対湿度10%の乾燥機で約10分間乾燥させ、その後、60℃、相対湿度10%以下の乾燥機で24時間乾燥させた。
【0077】
側方流動タイプキットはこれらの膜を使用して調製された。ヒト血清(Sigma-Aldrich、Louis、MO)(FSDTM 647、650 nmでの最大励起)で希釈したさまざまな濃度のcTnl抗原(8T62、HyTest、フィンランド)をアッセイキットに配置し、 続いて100 μLの各試験群および各対照群とのイムノブロット結合を行った。665 nmの最大発光部分(BioActs、韓国)を、重合したcTnl特異的結合検出抗体(4T21クローン19C7、HyTest、フィンランド)で挟んだ。蛍光シグナルは、レーザーダイオード(650 nm)の励起光と、660 nm未満の波長カットオフを持つ光学フィルターを備えたフォトダイオードを使用して検出された。発光した665 nmの蛍光を、感光性蛍光リーダーを使用して測定した。測定された蛍光シグナル値は、対照線領域と試験線領域の面積を積分し、試験線領域積分値を、対照線領域積分値で割ったT/C比率に変換することによって得られた。標的物質(cTnl)の濃度について検量線を作成した(図3)。
【0078】
各サンプルの放出は16回測定され、標準曲線から得られた標準方程式を使用して変換され、そして、CV(%)グラフは、変換された濃度の平均値と標準偏差で計算された変動係数(CV)を使用して取得された(図3)。
【0079】
有機ナノ構造の各供給量の10%CVでの濃度値を、サンプル濃度に対するCVグラフのパワー線(power line)の形で傾向線(trend line)から得られた式を使用して比較した。
【0080】
10%CVで2.03ng/mLの濃度は、有機ナノ構造分子の非存在下で固定化された捕捉分子を持つ対照ニトロセルロース膜から得られ、そして、10%CVで1.95 ng/mLの濃度は、水処理後の有機ナノ構造分子の非存在下で固定化された捕捉分子を含む対照ニトロセルロース膜から得られた。
【0081】
捕捉分子の相対モル数の0.4、1.0、4.1、および5.1倍の有機ナノ構造分子を含む試験群では、CV 10%での濃度はそれぞれ6.70 ng/mL、8.30 ng/mL、0.40 ng/mL、および2.55 ng/mLであった。4つの異なる濃度のうち、捕捉分子と比較して4.1倍の有機ナノ構造分子のモル数の処理でニトロセルロース膜に固定化されたキットは、最高の再現性のある結果を与えた(図3)。この側方流動と迅速型検査プラットフォームで、捕捉分子の相対モル数の4.1倍で処理された有機ナノ構造分子は、固定化定量分析よりも約5倍低いCV 10%性能を示し、標準能力(standard capacity)が再現性の点で向上したことを示す。
【0082】
比較例1
【0083】
本比較例において、異なるメーカーのニトロセルロース膜の影響を調べた。簡単に言えば、側方流動キットは、捕捉分子と比較して4.1倍モル過剰の有機ナノ構造分子を使用して調製され、ヒト血清中の急性心筋梗塞マーカーについてアッセイされた。定量的改善効果を比較するために、バイオマーカーとしてのcTnl標的物質の検出を10%CVで実行した。有機ナノ構造分子を使用して、3つの異なるメーカーのニトロセルロース膜(MilliporeのHF-135、GEhealthcareのImmuno-pore RP、AdvancedMicrodevicesのCNPC)を捕捉分子で固定化した。対照として、膜はまた、有機ナノ構造分子を使用せずに、捕捉分子で固定化された。
【0084】
ヒト血清(Sigma-Aldrich、Louis、MO)のcTnl抗原(8T62、HyTest、フィンランド)のさまざまな濃度(0、0.15、0.3、0.6、1.25、および2.5 ng/mL))を調製した。100 μLのサンプルを各試験および対照キットに配置し、蛍光(FSD(商標)647、最大励起650 nm、最大発光665nm、BioActs、韓国)で重合したcTnl特異的結合検出抗体(4T21クローン19C7、HyTest、フィンランド)で挟んだ。蛍光シグナルはレーザーダイオード(650 nm)で励起光によって検出され、660 nm未満の波長をカットする光学フィルターを備えたフォトダイオードを使用して665 nmの発光蛍光を検出するリーダーが使用された。
【0085】
試験はそれぞれ8回繰り返した。標的物質(cTnl)の濃度の標準曲線は、対照と試験線の面積を積分し、試験線の面積の積分値をT/C比率に変換することで得られた。標準曲線から得られた標準方程式を使用して、平均値と標準偏差が決定された。次に、これらの値を使用してCV(%)を計算し、濃度のCVグラフをプロットした。図4参照。サンプル濃度のCVグラフの傾向線をべき乗で作成し、CV10%での濃度を算出した。定量的改善効果は、各メーカーのニトロセルロース膜について決定された。
【0086】
有機ナノ構造分子を使用せずに捕捉分子が固定化された対照ニトロセルロース膜のCV 10%濃度のHF-135、Immuno-pore RP、およびCNPCの濃度は、それぞれ2.81 ng/mL、5.94 ng/mL、および1.73 ng/mLだった。図4参照。有機ナノ構造分子で固定化された試験群膜のCV 10%濃度のHF-135、Immuno-poreRP、およびCNPCは、それぞれ0.96 ng/mL、0.73 ng/mL、および0.24 ng/mLだった。図4参照。
【0087】
図4に示されるとおり、有機ナノ構造分子を使用して捕捉分子を固定化すると、対照のニトロセルロース膜と比較して、2.93倍から8.14倍の範囲の定量分析の再現性が向上した。図4参照。
【0088】
実施例2
【0089】
本実施例は、本発明のニトロセルロース膜を使用した標的物質の定量分析の再現性の改善を実証している。
【0090】
本実施例において、試験アッセイキットは、まず有機ナノ構造分子の線形領域末端官能基を使用して、有機ナノ構造分子に捕捉分子を共有結合させることによって作成した。捕捉分子を共有結合させるのに使用される有機ナノ構造分子の線形領域末端官能基は、アルデヒドまたはエポキシド官能基だった。次に、実施例1の手順を使用して、有機ナノ構造化分子をニトロセルロース膜上に非共有結合的に固定化した。
定量試験の再現性の改善を決定するために、上記の実施例に記載されている試験と同様に試験を行った。
【0091】
アルデヒド線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子は、捕捉分子と共有結合された。簡単に言えば、使用される有機ナノ構造分子の量は、捕捉分子の量の4.1倍だった。同様に、エポキシド線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子は、捕捉分子と共有結合された。試験ニトロセルロース膜は、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に非共有結合で固定化することによって作成された。有機ナノ構造分子の非存在下で捕捉分子を直接ニトロセルロース膜に付着させることにより、対照膜も調製した。
【0092】
これらの膜を用いて側方流動タイプのキットを作製した。ヒト血清中の様々な濃度のcTn1抗原を上述のとおり調製した。各試験キットに、100 μLのサンプルを配置し、蛍光(FSD(商標)647、最大励起650 nm、最大発光665nm、BioActs、韓国)で重合したcTnl特異的結合検出抗体(4T21クローン19C7、HyTest、フィンランド)で挟んだ。蛍光シグナルは、レーザーダイオード(650 nm)を使用して検出され、660 nm未満の波長をカットする光学フィルターを備えたフォトダイオードを使用して665 nmの発光蛍光を検出した。この手順を、ニトロセルロース膜ごとに8回繰り返した。
【0093】
標的物質(cTnl)の濃度の標準曲線は、対照と試験線の面積を積分し、試験線の面積の積分値をT/C比率に変換することで得られた。CV(%)は、変換された濃度の平均値と標準偏差を使用して計算された。図5参照。サンプル濃度のCVグラフの傾向線をべき乗で作成し、CV10%での濃度を算出した。アルデヒドおよびエポキシド線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子を使用した場合、結果は定量的アッセイの信頼性の向上を示した。
【0094】
対照のニトロセルロース膜、エポキシドの線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜、およびアルデヒドの線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜のCV 10%は、それぞれ1.90 ng/ mL、0.28 ng/ mL、および0.27ng/mLだった(図5)。これは、有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜が、有機ナノ構造分子の線形領域末端官能基のタイプに関係なく、定量分析を改善したことを示す(図5)。
【0095】
実施例3
【0096】
本実施例は、正電荷(MW 657.07、C24H52Cl3N7O7)または負電荷(MW 762.93、C27H41K3N4O14)を有する有機ナノ構造化合物を含む側方流動アッセイキットの再現性の向上を決定する。
【0097】
分岐領域末端に負電荷を持つ有機ナノ構造分子(MW 762.93、C27H41K3N4O14)および正電荷を持つ有機ナノ構造分子(MR 657.07、C24H52Cl3N7O7)は捕捉分子に共有結合された。簡単に言えば、エポキシド線形領域末端官能基を有する有機ナノ構造化分子の4.1モル当量を、上述のとおりcTnI抗体で調製した。有機ナノ構造分子を使用せずに捕捉分子をニトロセルロース膜に付着させた対照ニトロセルロース膜も調製した。
【0098】
これらの膜を用いて側方流動タイプのキットを作製した。ヒト血清中の様々な濃度のcTn1抗原を上述のとおり調製した。各試験キットに、100 μLのサンプルを配置し、蛍光(FSD(商標)647、最大励起650 nm、最大発光665 nm、BioActs、韓国)で重合したcTnl特異的結合検出抗体(4T21クローン19C7、HyTest、フィンランド)で挟んだ。蛍光シグナルは、レーザーダイオード(650 nm)を使用して検出され、660 nm未満の波長をカットする光学フィルターを備えたフォトダイオードを使用して665 nmの発光蛍光を検出した。この手順を、ニトロセルロース膜ごとに8回繰り返した。
【0099】
標的物質(cTnl)の濃度の標準曲線は、対照と試験線の面積を積分し、試験線の面積の積分値をT/C比率に変換することで得られた。CV(%)は、変換された濃度の平均値と標準偏差を使用して計算された。図6参照。サンプル濃度のCVグラフの傾向線をべき乗で作成し、CV10%での濃度を算出した。正の分岐領域末端と負の分岐領域末端を有する有機ナノ構造分子を使用した場合、結果は定量的アッセイの信頼性の向上を示した。
【0100】
対照のニトロセルロース膜、負の分岐領域末端を有する有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜、および正の分岐領域末端を有する有機ナノ構造分子を含むニトロセルロース膜のCV 10%は、それぞれ1.82 ng/mL、0.29 ng/mL、および0.42 ng/mLだった(図6)。これは、負の分岐領域末端有機ナノ構造分子、および正の分岐領域末端有機ナノ構造分子のそれぞれに関し、定量アッセイの信頼性がそれぞれ6.26倍および4.33倍向上することと同等である。このように、有機ナノ構造分子の分岐領域末端が負に帯電している場合、より良い定量的改善が得られたようである。図6参照。
【0101】
実施例4
【0102】
本実施例において、3つ(MW 762.93、C27H41K3N4O14)および9つの分岐領域末端官能基(MW 1949.41、C66H98K9N7O38)を有する側方流動タイプのキットが作製され、試験された。
【0103】
対応するアッセイ試験キットおよびアッセイ試験は、上述のとおり行われた。対照、3つの分岐領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子、および9つの分岐領域末端官能基を有する有機ナノ構造分子のCV 10%濃度は、それぞれ1.97 ng/mL、0.30 ng/mL、および 0.36 ng/mLだった。図7参照。これは、対照群と比較して、定量分析の信頼性がそれぞれ6.57倍および5.47倍向上したことと同等である(図7)。
【0104】
実施例5
【0105】
本実施例において、試験キットは2つの異なる方法により作製された。1つめの方法は、有機ナノ構造分子が最初にニトロセルロース膜に付着し、そして捕捉分子が有機ナノ構造分子に付着する連続法であった。2つめの方法は、有機ナノ構造分子をニトロセルロース膜に固定化する前に、捕捉分子を有機ナノ構造分子に共有結合させることを含むものであった。
【0106】
1つめの方法において、0.111mM (捕捉分子に対して4.1相当) の有機ナノ構造分子(MW 762.93、C27H41K3N4O14)を0.35μL/cmのディスペンス率でニトロセルロース膜(CNPC、Advanced Microdevices、Inc.)にディスペンスし、線を形成した。得られたニトロセルロース膜を40℃、相対湿度10%以下で約10分乾燥し、さらに60℃、相対湿度10%以下で24時間乾燥した。cTnI特異的捕捉抗体(0.027 mM、0.35μL/cmのディスペンス率)が同じ位置にディスペンスされ、そして、40℃、10%相対湿度で約10分乾燥し、さらに60℃、相対湿度10%以下で24時間乾燥した。
【0107】
2つめの方法において、0.111モルの有機ナノ構造分子(FW 762.93、C27H41K3N4O14、捕捉分子に対して4.1モル当量)を捕捉分子、すなわちcTnI抗体(0.027 mM)と混合した。該混合物は37℃で撹拌しながら3時間反応させた。得られた反応混合物をニトロセルロース膜(CNPC、Advanced Microdevices、インド)に0.35μL/cmのディスペンス率で線を形成し、40℃、10%相対湿度で約10分間乾燥した。さらに、ニトロセルロース膜を相対湿度10%以下、60℃で24時間乾燥させた。
【0108】
上記2つの方法で作製した膜を用いて、側方流動タイプアッセイキットを作製した。アッセイは上述のとおり行った。対照、1つめの方法で作製したニトロセルロース膜、および2つめの方法で作製したニトロセルロース膜のCV 10%濃度は、それぞれ1.75 ng/mL、0.31 ng/mL、0.29 ng/mLだった。図8参照。これは、対照群と比較して、定量分析の信頼性がそれぞれ5.65倍および6.03倍向上したことと同等である(図8)。
【0109】
本発明の前述の議論は、例示および説明の目的で提示された。上記は、本発明を本明細書に開示された1つまたは複数の形態に限定することを意図するものではない。本発明の明細書には、1つまたは複数の態様の説明および特定の変形および変更が含まれているが、本開示を理解した後、例えば、当業者の技能および知識の範囲内であり得るように、他の変形および修正は、本発明の範囲内である。許可されている範囲で、特許請求の範囲に記載の代替の、交換可能な、および/または同等の構造、機能、範囲、または工程をそのような代替、交換可能、および/または同等の構造、機能、範囲、または工程が本明細書で開示されているかどうかにかかわらず含み、特許性のある主題を公に専用にする意図はなく、代替の態様を含む権利を取得することを目的とする。本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0110】
図面の用語
Nitrocellulose membrane matrix ニトロセルロース膜マトリックス
Capture molecule 捕捉分子
Linker リンカー
No-treated 未処理
Water 水
fold molar linker 倍モルリンカー
times reproducibility improvement 倍再現性向上
epoxide linker エポキシドリンカー
aldehyde linkerアルデヒドリンカー
charge 電荷
sequential 連続
mixing 混合
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8