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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20230612BHJP
   H02K 37/14 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K37/14 535B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019016137
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020124082
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】古林 一美
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211967(JP,A)
【文献】特開2016-136829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻き回される筒状胴部、および、前記筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、前記フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、前記ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、
前記ステータは前記対向面に複数の凹部を有し、
前記ボビンは、前記対向面に向かって突出し、前記凹部に嵌まることで前記側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に前記端板部から外力を受ける複数の突出部を前記側端面に有し、
前記突出部は、周方向に欠損部を有する側壁から形成される略中空柱状形状をし、前記側壁の外周面が前記凹部の内周に当接して前記外力を受けることを特徴とするモータ。
【請求項2】
コイルが巻き回される筒状胴部、および、前記筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、前記フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、前記ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、
前記ステータは前記対向面に複数の凹部を有し、
前記ボビンは、前記対向面に向かって突出し、前記凹部に嵌まることで前記側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に前記端板部から外力を受ける複数の突出部を前記側端面に有し、
前記凹部は、ステータが取り付けられる被取付部に設けられた突起に嵌合してステータの前記被取付部に対する位置を決める、前記端板部に設けられた位置決め穴であることを特徴とするモータ。
【請求項3】
コイルが巻き回される筒状胴部、および、前記筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、前記フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、前記ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、
前記ステータは前記対向面に複数の凹部を有し、
前記ボビンは、前記対向面に向かって突出し、前記凹部に嵌まることで前記側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に前記端板部から外力を受ける複数の突出部を前記側端面に有し、
前記凹部は、ステータに設けられる極歯を切り起こすために極歯の根元の前記端板部に形成される切り欠きであることを特徴とするモータ。
【請求項4】
前記突出部は、周方向に欠損部を有する側壁から形成される略中空柱状形状をし、前記側壁の外周面が前記凹部の内周に当接して前記外力を受けることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記突出部は、突出する先端側の前記側壁に傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記突出部は、前記外力を受ける部分における横断面が円弧状をした側壁から形成される略円筒形状をしていることを特徴とする請求項1,請求項4及び請求項5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記突出部は、前記凹部に嵌まることで前記側端面の面方向において互いに向き合う方向に前記端板部から外力を受けることを特徴とする請求項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンが固定されるステータを持つモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータとしては、例えば、特許文献1に開示されたステッピングモータがある。
【0003】
このステッピングモータにおけるステータは、第1のステータ部であるフロント側ステータアッシーと、第2のステータ部であるエンド側ステータアッシーを軸方向で結合した構造をしている。フロント側ステータアッシーにはフロントプレートが固定され、エンド側ステータアッシーにはエンドプレートが固定されている。フロント側ステータアッシーは、外側ステータ、ボビン、内側ステータを軸方向で結合した構造をしている。ボビンの円環部の外側ステータの円環部に対向する面には、外側ステータの円環部の方向に突出する3箇所の凸部が設けられている。
【0004】
ボビンの円環部と外側ステータの円環部とは、結合した状態において、直接面で接触していない。すなわち、ボビンの円環部に突出する3箇所の凸部の斜面が、外側ステータの円環部に設けられた孔部の内部に埋没せず、両円環部の間に隙間が形成されている。ボビンは、外側ステータと内側ステータとの間において、隙間を有した状態で、且つ、軸方向の圧力を受けた状態で保持される。したがって、何らかの理由により、ボビンの変形が生じても、その変形は、この隙間の変動により吸収され、ボビンと外側ステータおよび内側ステータとの間でガタが生じる問題が抑制される。このため、ガタの発生による振動の発生や騒音の発生が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-211967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のモータでは、ボビンの円環部と外側ステータの円環部との間に設けられるスラスト方向の隙間にはバラツキが発生する。このバラツキにより、隙間が小さく形成された場合には、ガタの発生を十分に抑制することができない。
【0007】
本発明は、ボビンとステータとの間でスラスト方向に生じるガタの発生を、このようなバラツキが生じる隙間によらずに、確実に抑制することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために本発明は、コイルが巻き回される筒状胴部、および、筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、
ステータが対向面に複数の凹部を有し、
ボビンが、対向面に向かって突出し、凹部に嵌まることで側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に端板部から外力を受ける複数の突出部を側端面に有する
ことを特徴とするモータを構成した。
【0009】
本構成によれば、ボビンのフランジ部の側端面に突出する複数の突出部がステータの端板部に設けられた各凹部に嵌まることで、各突出部は、端板部から、側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に、外力を受ける。したがって、フランジ部の端板部に対する位置はこの外力によって固定され、この固定により、ボビンとステータとは相互に固く結合する。このため、ボビンとステータとの間でスラスト方向に生じるガタの発生は、従来のようなバラツキが生じる隙間によらずに、抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、突出部が、周方向に欠損部を有する側壁から形成される略中空柱状形状をし、側壁の外周面が凹部の内周に当接して外力を受けることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、端板部から受ける外力に対して突出部が発揮する対抗力は、突出部が周方向に全く欠損部を有しない側壁から形成されて剛性が高い場合に比較して、弱くなる。したがって、フランジ部の突出部は、側端面の面方向において撓みやすくなり、端板部の凹部に嵌めやすくなる。このため、ボビンのステータへの組み付け作業性が向上する。
【0012】
また、本発明は、突出部が、突出する先端側の側壁に傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、フランジ部の突出部を端板部の凹部に嵌める際、突出部は、側壁に形成された傾斜面が凹部の内周に案内されて、その先端が凹部内に容易に導かれる。したがって、フランジ部の突出部は端板部の凹部にさらに嵌めやすくなる。このため、ボビンのステータへの組み付け作業性がさらに向上する。
【0014】
また、本発明は、突出部が、外力を受ける部分における横断面が円弧状をした側壁から形成される略円筒形状をしていることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、端板部から受ける外力に対して突出部が発揮する対抗力は、ボビンとステータとの間の結合を、それらの間でスラスト方向に生じるガタの発生を抑制するのに、必要にして十分なものに容易に設定することができる。
【0016】
また、本発明は、略円筒形状をした突出部が、凹部に嵌まることで側端面の面方向において互いに向き合う方向に端板部から外力を受けることを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、突出部が、側端面の面方向において互いに向き合う方向に端板部から外力を受けることで、凹部は、側端面の面方向において互いに離反する方向に、突出部から反力を受ける。この突出部と凹部との間に生じる作用力と反作用力とにより、ボビンとステータとは相互に固く結合する。
【0018】
また、本発明は、コイルが巻き回される筒状胴部、および、筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、ステータが対向面に複数の凹部を有し、ボビンが、対向面に向かって突出し、凹部に嵌まることで側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に端板部から外力を受ける複数の突出部を側端面に有し、凹部が、ステータが取り付けられる被取付部に設けられた突起に嵌合してステータの被取付部に対する位置を決める、端板部に設けられた位置決め穴であることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、ガタの発生を抑制するために端板部に凹部を敢えて設けることなく、端板部に形成される既存の位置決め穴を、ガタの発生を抑制するための凹部に用いることができる。このため、モータの製造コストを抑制しながら、ボビンとステータとの間に生じるガタの発生を確実に抑制することができる。
【0020】
また、本発明は、コイルが巻き回される筒状胴部、および、筒状胴部の両端に設けられるフランジ部を有するボビンと、フランジ部の側端面に対向する対向面を有する端板部を備えて構成され、ボビンが固定されるステータとを持つモータにおいて、ステータが対向面に複数の凹部を有し、ボビンが、対向面に向かって突出し、凹部に嵌まることで側端面の面方向において互いに向き合う方向または互いに離反する方向に端板部から外力を受ける複数の突出部を側端面に有し、凹部が、ステータに設けられる極歯を切り起こすために極歯の根元の端板部に形成される切り欠きであることを特徴とする。
【0021】
本構成によっても、ガタの発生を抑制するために端板部に凹部を敢えて設けることなく、端板部に形成される既存の切り欠きを、ガタの発生を抑制するための凹部に用いることができる。このため、本構成によっても、モータの製造コストを抑制しながら、ボビンとステータとの間に生じるガタの発生を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボビンとステータとの間でスラスト方向に生じるガタの発生を確実に抑制することができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態によるステッピングモータの外観斜視図である。
図2】(a)は図1に示すステッピングモータの正面図、(b)は、端板の前方の部品を取り外した状態における正面図である。
図3図2(b)に示すステッピングモータの断面図である。
図4】(a)は、図1に示すステッピングモータを構成する外側ステータの斜視図、(b)はボビンの斜視図である。
図5図1に示すステッピングモータを構成する外側ステータにボビンを取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明によるモータをステッピングモータに適用した際における本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
なお、以下の説明において、回転軸2の軸線方向であるモータ軸線Lの方向のうち、回転軸2がステータ5から突出している側を出力側L1とし、回転軸2がステータ5から突出している側とは反対側を反出力側L2として説明する。出力側L1は、回転軸2の回転出力が取り出される側である。
【0026】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態によるステッピングモータ1の外観斜視図、図2(a)は正面図である。図2(b)は、同図(a)に示す状態から、後述する端板31、軸受け部材32および付勢部材33の各部品を取り外した状態におけるステッピングモータ1の正面図である。図3は、図2(b)におけるIII-III線でステッピングモータ1を破断した際に矢視方向から見たステッピングモータ1の断面図である。
【0027】
ステッピングモータ1は、例えば、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク駆動装置における光ヘッドの駆動や、情報をミラーで反射させて車のフロントウィンドウに映し出すHUD(ヘッドアップディスプレイ)におけるミラーの駆動等に用いられ、回転軸2および回転軸2の外周に固定された永久磁石3を備えたロータ4と、ロータ4の外周側に配置されたステータ5とを有している。
【0028】
(ステータの構成)
ステータ5は筒状に構成されており、図3に示すように、ステータ5の径方向内側にはロータ4がモータ軸線Lを中心にしてステータ5と同軸状に配置されている。ステータ5は、第1ステータ組51と第2ステータ組52とがモータ軸線Lの方向に重ねて配置されて構成される。第1ステータ組51は、第1のボビン7aの筒状胴部7a4に巻き回されるコイル6aと、コイル6aに対してモータ軸線Lの方向の両側に配置される外ステータコア8aおよび内ステータコア9aとから構成される。第2ステータ組52は、第2のボビン7bの筒状胴部7b4に巻き回されるコイル6bと、コイル6bに対してモータ軸線Lの方向の両側に配置される外ステータコア8bおよび内ステータコア9bとから構成される。
【0029】
外ステータコア8aおよび内ステータコア9a、並びに、外ステータコア8bおよび内ステータコア9bはそれぞれ磁性材料からなる。第1ステータ組51と第2ステータ組52とは、ケースを兼ねる外ステータコア8aと外ステータコア8bとの相互の突き当て部が溶接されることで、外ステータコア8aと外ステータコア8bとに周囲が囲まれて、一体に固定されている。
【0030】
各外ステータコア8a,8bは、モータ軸線Lの方向において互いに近づく方向に突出する複数の極歯8a3,8b3を備える。また、各内ステータコア9a,9bは、モータ軸線Lの方向において互いに遠ざかる方向に突出する複数の極歯9a3,9b3を備える。第1のボビン7aの筒状胴部7a4の内周面では、外ステータコア8aおよび内ステータコア9aの複数の極歯8a3,9a3が周方向に並び、ボビン7aに巻き回されたコイル6aはこれら極歯8a3,9a3の周りで周回する。また、第2のボビン7bの筒状胴部7b4の内周面では、外ステータコア8bおよび内ステータコア9bの複数の極歯8b3,9b3が周方向に並び、ボビン7bに巻き回されたコイル6bはこれら極歯8b3,9b3の周りで周回する。
【0031】
本実施形態では、第1のボビン7aおよび第2のボビン7bは樹脂製の絶縁部材からなり、筒状胴部7a4および7b4の両側部にフランジ部7a3および7b3を備える。第1のボビン7aおよび第2のボビン7bのフランジ部7a3および7b3には端子台7a1,7b1が一体に形成されている。各端子台7a1,7b1にはそれぞれ2個の端子ピン10が圧入されて固定されている。各端子ピン10には、各コイル6a,6bの線材の巻き始めおよび巻き終わりの端部がそれぞれ絡げられる。これら端子台7a1,7b1は、ボビン7a,7bの同一の角度位置に形成されており、モータ軸線Lの方向からみたときに重なっており、外ステータコア8a,8bにそれぞれ形成された切り欠きから外ステータコア8a,8bの外側に突出する。
【0032】
(ロータの構成)
ロータ4における回転軸2はモータ軸線Lの方向に延在しており、ステンレスや真鍮等の金属材料からなる。回転軸2の外周面のうち、ステータ5から突出する側(出力側L1)の外周面には図示しない螺旋溝が形成されている。回転軸2の反出力側L2寄りの位置には、略円筒状の永久磁石3が回転軸2の周囲に接着剤によって固定されている。回転軸2は、図示しないラックとともに回転-直動変換機構を構成する。永久磁石3は、高分子材料からなるバインダー中に磁石粒子が配合されたボンド磁石からなる。
【0033】
永久磁石3は、モータ軸線Lの方向における両側に位置する一対の大径円筒部3a,3bと、それらの中央にある小径円筒部3cで構成された形状をしている。一方の大径円筒部3aの外周面は、第1ステータ組51の外ステータコア8aおよび内ステータコア9aの径方向の内側で、それらの極歯8a3,9a3と所定の間隔を介して対向する。他方の大径円筒部3bの外周面は、第2ステータ組52の外ステータコア8bおよび内ステータコア9bの径方向の内側で、それらの極歯8b3,9b3と所定の間隔を介して対向する。
【0034】
(軸受構造)
第1ステータ組51を構成する外ステータコア8aの出力側L1における端面には、プレート21の連結板部21aが溶接等により固着されている。プレート21は金属製である。プレート21の先端側屈曲部分21bには、回転軸2の出力側L1の端部を回転可能に支持する出力側L1の軸受機構が構成されている。これに対して、第2ステータ組52を構成する外ステータコア8bの反出力側L2の端面には、円板状の端板31が溶接等で固着されている。この端板31を利用して、回転軸2の反出力側L2の端部を回転可能に支持する反出力側L2の軸受機構が保持されている。
【0035】
反出力側L2の軸受機構では、端板31の中心部に形成された開口部に軸受け部材32が設けられている。回転軸2の反出力側L2の端部は、軸受け部材32によって回転可能に支持されている。回転軸2の反出力側L2の端部は、軸受け部材32に支持されてモータ軸線Lの方向に移動可能に構成されており、付勢部材33によって出力側L1に向けて付勢されている。付勢部材33は、端板31の反出力側L2の面に重なる矩形状の端板部33aと、端板部33aの一辺から反出力側L2に向けて折り曲げられた板バネ部33bとを有している。端板部33aには軸受け部材32の外周に嵌合する半円状の切り欠きが形成されており、付勢部材33は、端板部33aの切り欠きが軸受け部材32の外周に嵌合している。板バネ部33bの出力側L1の端面には回転軸2の反出力側L2の端部の先端が当接しており、回転軸2は、板バネ部33bが持つ弾性により出力側L1に向けて付勢されている。
【0036】
出力側L1の軸受け機構も、反出力側L2の軸受け機構と同様に構成されている。すなわち、プレート21の先端側屈曲部分21bには出力側L1の軸受け部材35が保持されている。本実施形態において、軸受部材35は樹脂製である。回転軸2の出力側L1の端部は、軸受け部材35によって回転可能に支持されると共に、出力側L1への移動が規制されている。従って、回転軸2は、出力側L1の端部が軸受部材35に当接するように、板バネ部33bに付勢された状態にあるため、回転軸2が回転した際、回転軸2のモータ軸線Lの方向でのがたつきが防止される。
【0037】
(ガタ防止構造)
図4(a)に示すように、第2ステータ組52を構成する外ステータコア8bの端板部8b1には、切り欠き8b2が8箇所に形成されている。各切り欠き8b2は、外ステータコア8bに設けられる極歯8b3を切り起こすために、極歯8b3の根元の端板部8b1に形成されている。これら8箇所の切り欠き8b2のうちの3箇所の切り欠き8b2には、位置決め穴8b4が連通して形成されている。位置決め穴8b4は、外ステータコア8bが取り付けられる図示しない被取付部に設けられた突起に嵌合して、外ステータコア8bの被取付部に対する位置を決めるために、端板部8b1に予め設けられているものである。本実施形態では、外ステータコア8bの端板部8b1には端板31が取り付けられ、端板31に設けられた穴31aを介して、位置決め穴8b4は図示しない被取付部に設けられた突起に嵌合する。
【0038】
本実施形態では、3箇所の位置決め穴8b4のうちの、モータ軸線Lを中心に対向する2箇所の位置決め穴8b4に、図4(b)に示すように第2のボビン7bの2箇所に設けられた突出部7b2が、図5に示すように嵌まる。突出部7b2は、第2ステータ組52を構成する第2のボビン7bにおけるフランジ部7b3の側端面7b33に設けられている。フランジ部7b3の側端面7b33は外ステータコア8bの端板部8b1に対向し、突出部7b2は、フランジ部7b3の側端面7b33に対向する端板部8b1の対向面8b11(図3参照)に向かって突出する。突出部7b2が嵌まる2箇所の位置決め穴8b4は、突出部7b2が嵌まる複数の凹部を構成する。突出部7b2は、これら凹部に嵌まることで、フランジ部7b3の側端面7b33の面方向において、図5に矢印で示す互いに向き合う方向Aに、端板部8b1から外力を受ける。なお、第1ステータ組51を構成する外ステータコア8aと第1のボビン7aも、第2ステータ組52を構成する外ステータコア8bと第2のボビン7bと同じ構造を有している。
【0039】
突出部7b2は、図4(b)に示すように、周方向に欠損部を有する側壁7b21から形成される略中空柱状形状をし、図5に示すように、側壁7b21の外周面が位置決め穴8b4の内周に当接して、端板部8b1から外力を受ける。本実施形態における突出部7b2は、外力を受ける部分における横断面が半円弧状をした側壁7b21から形成される略半円筒形状をしており、突出する先端側の側壁7b21に傾斜面7b22が形成されている。半円弧状をした各側壁7b21は、端板部8b1から外力を受けると互いに向き合う方向Aに変形して、各位置決め穴8b4の内周に圧入された状態となる。各側壁7b21は、各部品の寸法がモータ軸線Lの方向にばらついて、フランジ部7b3の側端面7b33と端板部8b1の対向面8b11との間の距離が変わっても、この圧入状態を維持することができる、モータ軸線Lの方向の長さ、および、側端面7b33における形成位置を有する。
【0040】
(実施形態の作用・効果)
このような本実施形態によるステッピングモータ1によれば、フランジ部7b3の側端面7b33に突出する2箇所の突出部7b2が、外ステータコア8bの端板部8b1に設けられた各位置決め穴8b4に嵌まることで、各突出部7b2は、端板部8b1から、フランジ部7b3の側端面7b33の面方向において互いに向き合う方向Aに、外力を受ける。したがって、フランジ部7b3の端板部8b1に対する位置はこの外力によって固定され、この固定により、第2のボビン7bと外ステータコア8bとは相互に固く結合する。このため、第2のボビン7bと外ステータコア8bとの間でスラスト方向に生じるガタの発生は、従来のようなバラツキが生じる隙間によらずに、抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、突出部7b2は、上記のように、位置決め穴8b4に嵌まることで、ボビン7b3の側端面7b33の面方向において互いに向き合う方向Aに端板部8b1から外力を受ける。突出部7b2が、互いに向き合う方向Aに端板部8b1から外力を受けることで、位置決め穴8b4は、ボビン7b3の側端面7b33の面方向において、図5に矢印で示す互いに離反する方向Bに、突出部7b2から反力を受ける。この突出部7b2と位置決め穴8b4との間に生じる作用力と反作用力とにより、第2のボビン7bと外ステータコア8bとは相互に固く結合する。
【0042】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、突出部7b2は、上記のように、周方向に欠損部を有する側壁7b21から形成される略中空柱状形状をしている。本構成によれば、端板部8b1から受ける外力に対して突出部7b2が発揮する対抗力は、突出部7b2が周方向に全く欠損部を有しない側壁から形成されて剛性が高い場合に比較して、弱くなる。したがって、フランジ部7b3の突出部7b2は、フランジ部7b3の側端面7b33の面方向において撓みやすくなり、端板部8b1の位置決め穴8b4に嵌めやすくなる。このため、第2のボビン7bの外ステータコア8bへの組み付け作業性が向上する。
【0043】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、突出部7b2は、上記のように、外力を受ける部分における横断面が半円弧状をした側壁7b21から形成される略半円筒形状をしている。本構成によれば、端板部8b1から受ける外力に対して突出部7b2が発揮する対抗力は、第2のボビン7bと外ステータコア8bとの間の結合を、それらの間でスラスト方向に生じるガタの発生を抑制するのに、必要にして十分なものに容易に設定することができる。
【0044】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、突出部7b2は、上記のように、突出する先端側の側壁7b21に傾斜面7b21が形成されている。本構成によれば、フランジ部7b3の突出部7b2を端板部8b1の位置決め穴8b4に嵌める際、突出部7b2は、側壁7b21に形成された傾斜面7b21が位置決め穴8b4の内周に案内されて、その先端が位置決め穴8b4内に容易に導かれる。したがって、フランジ部7b3の突出部7b2は端板部8b1の位置決め穴8b4にさらに嵌めやすくなる。このため、第2のボビン7bの外ステータコア8bへの組み付け作業性がさらに向上する。
【0045】
また、本実施形態によるステッピングモータ1では、突出部7b2が嵌まる凹部は、外ステータコア8bの被取付部に対する位置を決めるために端板部8b1に予め設けられている位置決め穴8b4によって構成される。本構成によれば、ガタの発生を抑制するために端板部8b1に凹部を敢えて設けることなく、端板部8b1に形成される既存の位置決め穴8b4を、ガタの発生を抑制するための凹部に用いることができる。このため、ステッピングモータ1の製造コストを抑制しながら、第2のボビン7bと外ステータコア8bとの間に生じるガタの発生を確実に抑制することができる。
【0046】
(変形例)
上記の実施形態では、突出部7b2が嵌まる凹部は、端板部8b1に予め設けられている位置決め穴8b4によって構成される場合について、説明した。しかし、突出部7b2が嵌まる凹部は、外ステータコア8bに設けられる極歯8b3を切り起こすために、極歯8b3の根元の端板部8b1に形成されている切り欠き8b2によって構成することもできる。本構成によっても、ガタの発生を抑制するために端板部8b1に凹部を敢えて設けることなく、端板部8b1に形成される既存の切り欠き8b2を、ガタの発生を抑制するための凹部に用いることができる。このため、本構成によっても、ステッピングモータ1の製造コストを抑制しながら、第2のボビン7bと外ステータコア8bとの間に生じるガタの発生を確実に抑制することができる。
【0047】
また、突出部7b2が嵌まる凹部は、端板部8b1にそれ専用に形成してもよく、また、その形状も貫通穴として形成してもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、突出部7b2は、位置決め穴8b4に嵌まることで、ボビン7b3の側端面7b33の面方向において互いに向き合う方向Aに、端板部8b1から外力を受ける場合について、説明した。しかし、突出部7b2は、位置決め穴8b4に嵌まることで、ボビン7b3の側端面7b33の面方向において互いに離反する方向Bに、端板部8b1から外力を受けるように構成してもよい。この場合、突出部7b2が嵌まる凹部を端板部8b1にそれ専用に形成し、凹部と突出部7b2との当接箇所を、上記の実施形態のように互いに遠くなる位置ではなく、互いに近くなる位置に設けることになる。
【0049】
また、上記の実施形態では、突出部7b2が、外力を受ける部分における横断面が半円弧状をした側壁7b21から形成される略半円筒形状をしている場合について、説明した。しかし、突出部7b2は、円筒をその軸方向にスリット等で分割して、側壁が周方向に欠損した形状に形成してもよい。すなわち、中空柱状形状の周方向が非連続であり、環状に繋がっていない形状であればよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、突出部7b2と凹部とをそれぞれ2箇所に設けた場合について説明したが、2箇所以上設けるようにしてもよい。その場合、突出部7b2は、凹部に嵌まることで、ボビン7b3の側端面7b33の面方向において互いに向き合う方向、または、互いに離反する方向のいずれかに外力を受けるように、構成される。
【0051】
また、上記の実施形態では、突出部7b2と凹部とをそれぞれモータ軸線Lを中心とする対角線上の2箇所に設けた場合について説明した。しかし、突出部7b2と凹部とは、モータ軸線Lを中心とせずに、端板部8b1の偏った離間した位置に複数設けるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記の実施形態では、ステッピングモータに本発明を適用したが、ステッピングモータ以外のモータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ステッピングモータ、2…回転軸、3…永久磁石、3a,3b…大径円筒部、3c…小径円筒部、4…ロータ、5…ステータ、51…第1ステータ組、52…第2ステータ組、6a,6b…コイル、7a…第1のボビン、7a1…端子台、7b…第2のボビン、7b1…端子台、7b2…突出部、7b21…側壁、7b22…傾斜面、7a3,7b3…フランジ部、7b33…側端面、7a4,7b4…筒状胴部、8a,8b…外ステータコア、8b1…端板部、8b11…対向面、8b2…切り欠き、8a3,8b3,9a3,9b3…極歯、8b4…位置決め穴、9a,9b…内ステータコア、10…端子ピン、21…プレート、21a…連結板部、21b…先端側屈曲部分、31…端板、31a…穴、32…軸受部材、33…付勢部材、33a…端板部、33b…板バネ部
図1
図2
図3
図4
図5