(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】殺菌消毒器具
(51)【国際特許分類】
A61L 2/26 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
A61L2/26
(21)【出願番号】P 2019056786
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】発地 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】西澤 由紗
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-061453(JP,A)
【文献】特開平08-187274(JP,A)
【文献】特開2012-239658(JP,A)
【文献】特開2006-087942(JP,A)
【文献】特公昭60-057866(JP,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0645135(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 9/00-9/08
A61L 2/00-2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体の1面のみを開口した主容器部と、該主容器部に収納可能な副容器部と、前記主容器部の開口部を閉塞する蓋部とから成る殺菌消毒器具であって、
前記副容器部は、片側に設けられた水を貯水可能な保水部と、該保水部と向かい合うように前記保水部と連結され、多数の透孔を有する水切部とから構成されて
おり、
前記保水部は、矩形の主板部と、該主板部の各辺から垂直に延在する側板部とから成り、
前記水切部は、矩形の主面部と、該主面部の3辺から垂直に延在し、3面の前記側板部とそれぞれ連結する側面部とから成ることを特徴とする殺菌消毒器具。
【請求項2】
前記側面部と連結しない前記側板部の近傍に、消毒対象物の出し入れを行う取出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の殺菌消毒器具。
【請求項3】
前記取出口の内側に取手部が回動自在に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の殺菌消毒器具。
【請求項4】
前記主容器部は透明又は半透明の耐熱性樹脂から成ることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の殺菌消毒器具。
【請求項5】
直方体の1面のみを開口した主容器部と、該主容器部に収納可能な副容器部と、前記主容器部の開口部を閉塞する蓋部とから成る殺菌消毒器具であって、
前記副容器部は、片側に設けられた水を貯水可能な保水部と、該保水部と向かい合うように前記保水部と連結され、多数の透孔を有する水切部とを有しており、
前記水切部は、矩形の主面部と、該主面部の3辺から垂直に延在する側面部と、前記主面部の残りの1辺と連続する側面を開放した箇所に設けられた取出口とを有しており、
前記主容器部に前記副容器部を収納した状態で、前記取出口を介して消毒対象物の出し入れが可能であることを特徴とする殺菌消毒器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳瓶等の殺菌消毒を行うための殺菌消毒器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳児が使用する哺乳瓶は、使用毎に殺菌消毒を行う必要があり、湯を張った鍋に哺乳瓶等を入れて煮沸消毒を行ったりしている。
【0003】
特許文献1には、哺乳瓶を容器本体に収容して、水を加えて電子レンジにより加熱することで発生する水蒸気を用いて、哺乳瓶の殺菌消毒を行う消毒容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の消毒容器は、乾燥時に湿気が消毒容器内から排出し難く、哺乳瓶が完全に乾燥するまでに時間を要するという問題がある。また、哺乳瓶が乾燥し、哺乳瓶を消毒容器から取り外さない限り、消毒容器自体を洗浄することができないという問題もある。更に、特許文献1による消毒容器では、水抜き孔等の存在により哺乳瓶全体を消毒用の薬液で浸すことによる殺菌消毒を行うことが難しい。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、本体部から取り外して哺乳瓶等の水切り、乾燥が可能であり、水蒸気による殺菌消毒と消毒用の薬液に浸す殺菌消毒との双方に対応可能な殺菌消毒器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る殺菌消毒器具は、直方体の1面のみを開口した主容器部と、該主容器部に収納可能な副容器部と、前記主容器部の開口部を閉塞する蓋部とから成る殺菌消毒器具であって、前記副容器部は、片側に設けられた水を貯水可能な保水部と、該保水部と向かい合うように前記保水部と連結され、多数の透孔を有する水切部とから構成されており、前記保水部は、矩形の主板部と、該主板部の各辺から垂直に延在する側板部とから成り、前記水切部は、矩形の主面部と、該主面部の3辺から垂直に延在し、3面の前記側板部とそれぞれ連結する側面部とから成ることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る殺菌消毒器具は、直方体の1面のみを開口した主容器部と、該主容器部に収納可能な副容器部と、前記主容器部の開口部を閉塞する蓋部とから成る殺菌消毒器具であって、前記副容器部は、片側に設けられた水を貯水可能な保水部と、該保水部と向かい合うように前記保水部と連結され、多数の透孔を有する水切部とを有しており、前記水切部は、矩形の主面部と、該主面部の3辺から垂直に延在する側面部と、前記主面部の残りの1辺と連続する側面を開放した箇所に設けられた取出口とを有しており、前記主容器部に前記副容器部を収納した状態で、前記取出口を介して消毒対象物の出し入れが可能であることを特徴とする殺菌消毒器具。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る殺菌消毒器具によれば、殺菌消毒する際に、電子レンジによる水蒸気を利用する横置きの殺菌消毒と、消毒用の薬液に浸す縦置きの殺菌消毒との双方に対応可能である。
【0009】
また、通気性の良い副容器部のみで哺乳瓶等を水切り、乾燥させることが可能であり、哺乳瓶の口部が下になるように副容器部を配置することで、哺乳瓶内に水滴が残ることなく乾燥させることができる。更に、副容器部を乾燥させている間に、主容器部及び蓋部を洗浄することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】主容器部に蓋部をロックした状態の斜視図である。
【
図4】哺乳瓶を入れて取出口を横に向けた縦置き状態の副容器部の斜視図である。
【
図5】哺乳瓶を収容し、取出口を横に向けた縦置き状態の副容器部の側面断面図である。
【
図6】取出口を上にした状態の副容器部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の殺菌消毒器具の分解斜視図であり、
図2は主容器部に蓋部を被着した状態の殺菌消毒器具の斜視図である。殺菌消毒器具は耐熱性の合成樹脂製であり、その大きさは、例えば縦15cm、横25cm、高さ20cm程度である。この大きさは、殺菌消毒器具に収容可能な哺乳瓶の本数等に応じて適宜の大きさのものを採用することができる。
【0012】
殺菌消毒器具は、直方体の1面のみを開口した開口部1aを有する主容器部1と、この主容器部1内に収容可能な副容器部2と、開口部1aを閉塞してロック状態にする蓋部3とから構成されている。
【0013】
主容器部1は透明又は半透明の耐熱性樹脂が好ましく、矩形状の底面部1bと、この底面部1bの各辺から垂直に延在する4つの周面部1c~1fとから構成され、水漏れがない箱状体とされている。なお、周面部1c~1f同士のそれぞれの接合部は、図示のように安全性を考慮して丸みを帯びるように形成されている。
【0014】
そして、対向する周面部1c、1eの略中央には、半円弧状の取手板部1gがそれぞれ設けられている。また、周面部1c、1eの開口部1a側の略中央部には、後述する蓋部3に設けた係止片と係合する被係止部1hがそれぞれ設けられている。
【0015】
副容器部2は主容器部1内に隙間なく収納可能であって、大きさも主容器部1より若干小さい程度のものである。副容器部2は、片側に設けられた水を貯水可能な保水部2aと、この保水部2aと向かい合うように保水部2aと連結され、多数の透孔を有する部材から成る水切部2bと、保水部2a、水切部2bの開放側に設けられた矩形状の取出口2cと、この取出口2cの一部に回動自在に取り付けられた取手部2dとから構成されている。なお、水切部2bの透孔は、図示するような格子状部材に限定されるものではなく、網目状であってもよく、単に多数の透孔をランダムに設けてもよい。
【0016】
保水部2aは矩形の主板部2eと、この主板部2eの各辺から垂直に延在する側板部2f~2iとから構成され、副容器部2の保水部2aの主板部2eを下にした横置き状態で、保水部2a内に水を貯水できるようにされている。
【0017】
格子状部材から成る水切部2bは、矩形状の主面部2j、及びこの主面部2jの1組の短辺を含む3辺から垂直に延在する側面部2k~2mから構成されている。これらの3つの側面部2k~2mと保水部2aの3つの側板部2f、2g、2hとがそれぞれ連結されている。これらの連結は、連結部材2nにより連結されている。
【0018】
図1に示す副容器部2は、側板部2gと側面部2lとを連結した面が底面を形成し、側板部2fと側面部2kとが連結した面、側板部2hと側面部2mとが連結した面、主板部2e、及び主面部2jが周面に形成されている。
【0019】
そして、取出口2cは水切部2bの側面部と連結しない側板部2iの近傍で、水切部2bの開放した個所に哺乳瓶等の消毒対象物を出し入れ可能に設けられている。また、側板部2i及び取出口2cの周囲には、主容器部1の開口部1aの縁部に係止可能な薄板状のフランジ部2oが外方に向けて設けられている。
【0020】
そして、取出口2cの内側には、コの字状の取手部2dが取り付けられている。この取手部2dの両端部が取出口2cの内側に軸支されることで、
図3に示すように取手部2dを起立可能に回動させることができる。
【0021】
蓋部3は、中央が皿状に若干凹んでいる矩形状の頂面部3aと、この頂面部3aの短辺側の端部に取り付けられ、主容器部1の被係止部1hとロックのために係合する折り畳み可能な一対の係止片3bとから構成されている。なお、蓋部3も透明又は半透明の耐熱性樹脂が好ましい。
【0022】
図2に示すように蓋部3の係止片3bを閉止して、主容器部1の被係止部1hに係合してロックすることで、主容器部1は蓋部3による閉止状態となる。
【0023】
殺菌消毒器具を使用する際には、先ず
図2の状態から蓋部3のロックを解除して、蓋部3を主容器部1から取り外す。そして、取手部2dを回動して起立状態にして、この取手部2dを手で掴んで引き出すことで、容易に主容器部1から副容器部2を引き出すことができる。
【0024】
殺菌消毒器具を用いて哺乳瓶Hを消毒する消毒方法として、電子レンジによる水蒸気を利用する消毒方法と、消毒用の薬液に浸す消毒方法とがある。
【0025】
電子レンジによる水蒸気を利用する消毒方法は、主容器部1から取り出した副容器部2を、
図3に示すように保水部2aの主板部2eを下にし、水切部2bの主面部2jを上にした横置き状態にする。そして、保水部2aに水を数10ミリリットル程度、注入した後に、洗剤等で洗浄した3本の哺乳瓶Hを、取出口2cを介して副容器部2内に寝かせた状態で収容する。また、図示は省略しているが、哺乳瓶Hの口部H1に取り付ける乳首部等も併せて副容器部2内に収容してもよい。
【0026】
続いて、横置きの主容器部1内に開口部1aを介して、消毒すべき哺乳瓶Hを入れ、取手部2dを折り畳んだ副容器部2を横置きのまま挿入する。挿入後に、被係止部1hに係止片3bを係合させて主容器部1と蓋部3とをロックして閉止状態にする。
【0027】
この状態で主容器部1の取手板部1gを把持して殺菌消毒器具を電子レンジ内に搬入した後に、数分間の加熱を行う。この加熱により、保水部2a内の水は沸騰し、水蒸気となって殺菌消毒器具内に充満する。水蒸気によって哺乳瓶H等は加熱による殺菌消毒が行われる。なお、透明又は半透明の主容器部1を採用することで、水蒸気の充満度合いや殺菌消毒の状態を外部から確認することができる。
【0028】
所定時間の蒸気による殺菌消毒を行った後に、電子レンジから殺菌消毒器具を取り出す。そして、蓋部3によるロック状態を解除し、取手部2dを引っ張ることにより主容器部1から副容器部2を取り出す。
【0029】
続いて、
図4の斜視図に示すように、取り出した副容器部2を保水部2aの主板部2e、水切部2bの主面部2j及び取出口2cが側面になるようにし、更に哺乳瓶Hの口部H1を下方に向けた縦置き状態にして、副容器部2内の水切りを行う。なお、中央が凹んでいる蓋部3を水切用トレーとして使用し、蓋部3上に副容器部2を載置するようにしてもよい。
【0030】
図5はこの縦置き状態の副容器部2の側面から見た断面図であり、哺乳瓶Hの口部H1を下方に向けて放置することで、哺乳瓶Hの内外の水滴は下方に落下して、哺乳瓶Hに水滴が残ることなく乾燥させることができる。そして、十分に乾燥後に哺乳瓶H等を副容器部2から取り出して保管する。なお、取り出し後にそのまま授乳用として使用してもよい。
【0031】
一方、消毒用の薬液による哺乳瓶H等の消毒方法は、電子レンジのない環境等で哺乳瓶Hを殺菌消毒する場合に用いられる。先ず、
図1の取出口2cを上方にした状態で取り出した副容器部2内に、洗浄した複数の哺乳瓶Hを取出口2cを介して配置する。
【0032】
なお、副容器部2内に配置する哺乳瓶Hは、取出口2cの長手方向と直交する縦置き、又は取出口2cの長手方向と平行する横置きの何れを採用してもよいが、哺乳瓶H内の空気が抜け易いように口部H1を上方にした縦置きに配置することが好ましい。
【0033】
複数の哺乳瓶H等を収容し、取出口2cを上方にした状態の副容器部2を主容器部1に収納する。そして、副容器部2内の哺乳瓶Hが完全に浸るまで、例えば次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする消毒用の薬液により主容器部1内を満たす。この場合に、哺乳瓶H等が浮き上がることがあるので、浮き上がり防止のために、図示しない落とし蓋を哺乳瓶H等の収容後に副容器部2内に配置してもよい。
【0034】
そして、消毒用の薬液を主容器部1内に満たした後に、被係止部1hと係止片3bとを係合させて主容器部1に蓋部3をロックして閉止状態とする。この状態で1時間以上、放置することで、哺乳瓶H等の殺菌消毒が行われる。
【0035】
消毒後に蓋部3のロック状態を解除し、副容器部2を主容器部1から取り出す。哺乳瓶H等には消毒用の薬液が付着しているため、一旦、副容器部2から取り出して水洗した後に、
図6に示すように取出口2cを上にした縦置き状態の副容器部2に、再度、水洗いした哺乳瓶Hを横置きにして収容する。
【0036】
収容後に、副容器部2を
図4、
図5に示す取出口2cを側面とする縦置き状態にして、哺乳瓶Hの水切りを行う。なお、消毒用の薬液が次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする場合には、水洗いを行わずに哺乳瓶Hを乾燥させてもよい。
【0037】
十分に乾燥後に、哺乳瓶Hを副容器部2から取り出して保管する。なお、取り出し後にそのまま授乳用として使用してもよい。
【0038】
また、副容器部2を用いて哺乳瓶Hの水切り、乾燥時に、使用済みの主容器部1及び蓋部3は、洗剤等により洗浄することが可能である。哺乳瓶Hを乾燥させた副容器部2を洗浄し乾燥させ、或いはそのまま主容器部1に収納して、蓋部3をロックする。そして、
図2に示す殺菌消毒器具の状態にして保管する。
【0039】
このように、殺菌消毒器具を用いることで、電子レンジによる水蒸気を利用する場合は、水を保水可能な横置きにし、また、消毒用の薬液に浸す場合は、縦置きにすることで、2通りの消毒方法に対応可能としている。
【0040】
また、通気性の良い副容器部2のみで哺乳瓶H等を乾燥させることが可能であり、哺乳瓶Hの口部H1が下になるように副容器部2を配置することで、哺乳瓶H内に水滴が残ることなく水切り、乾燥させることが可能である。更に、副容器部2を乾燥させている間に、主容器部1及び蓋部3を洗浄することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 主容器部
2 副容器部
2a 保水部
2b 水切部
2c 取出口
2d 取手部
2e 主板部
2f~2i 側板部
2j 主面部
2k~2m 側面部
3 蓋部