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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230612BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230612BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230612BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230612BHJP
   G06T 7/254 20170101ALI20230612BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20230612BHJP
【FI】
A61B6/03 350L
A61B6/03 375
A61B6/03 350V
A61B6/03 360B
A61B5/055 382
G01T1/161 C
G06T7/00 616
G06T7/254 A
G16H30/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019080248
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020062371
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】16/161,134
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン モー
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 和正
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス マシューズ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-005549(JP,A)
【文献】特開2012-200285(JP,A)
【文献】特開2018-020120(JP,A)
【文献】特開2012-030089(JP,A)
【文献】特表2017-508541(JP,A)
【文献】特表2015-506774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、 6/00 - 6/14 、
G01T 1/161- 1/166、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に存在する前記血管に比してコントラストの高い特徴領域を含む第1データセットと、前記血管に関する造影領域を含む、複数の心時相に関する複数の第2データセットとを取得する取得部と、
前記第1データセットと前記複数の第2データセットとに基づいて、前記複数の心時相間の動きの補正と前記特徴領域の除去とを実行する補正部と、を具備し、
前記複数の心時相のうちの第1の心時相に関する第2データセットと第2の心時相に関する第2データセットとは、データ収集期間が互いに重複しない第1の差分期間と第2の差分期間とを有し、
前記補正部は、
前記特徴領域の除去のために、前記第1の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第1の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第1の差分画像を生成し、前記第2の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第2の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第2の差分画像を生成し、
前記複数の心時相間の動きの補正のために、前記第1の差分画像と前記第2の差分画像との差分画像に基づいて前記第1の心時相と前記第2の心時相との間の前記血管の動き量を計算し、前記動き量に基づいて前記複数の第2データセットを補正する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記動き量の空間分布を表すワープフィールドを決定し、前記ワープフィールドを前記複数の第2データセットに適用する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記特徴領域の除去のために、前記複数の第2データセットから前記第1データセットを減算する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特徴領域は、石灰化、ステント及びプラークの少なくとも1つを含む、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記動きの補正のため、レジストレーションと非剛体レジストレーションとの少なくとも一方を実行する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記複数の第2データセットのうちの前記動きの補正と前記特徴領域の除去とが施された第2データセットを用いて画像を再構成する画像生成部を更に備える、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記画像に含まれる前記血管をセグメント化するセグメンテーション部を更に備え、請求項記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記動きの補正と前記特徴領域の除去とは、前記画像に由来する少なくとも1つの制約を受ける、請求項記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記動きの補正と前記特徴領域の除去とは、前記画像に由来する少なくとも1つのパラメータの値を最適化する制約を受けて実行される、請求項記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記動きの補正と前記特徴領域の除去とが施された前記複数の第2データセットを用いて冠血流予備量比を算出する算出部を更に備える、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記第1データセットは、非造影スキャンにより収集され、
前記複数の第2データセットは、造影スキャンにより収集される、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記第1データセットは、カルシウムスコアリングスキャンにより収集され、
前記複数の第2データセットは、冠動脈造影スキャンにより収集される、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
血管に存在する前記血管に比してコントラストの高い特徴領域を含む第1データセットと、前記血管に関する造影領域を含む、複数の心時相に関する複数の第2データセットとを取得する取得工程と
前記第1データセットと前記複数の第2データセットとに基づいて、前記複数の心時相間の動きの補正と前記特徴領域の除去とを実行する補正工程と、を具備し、
前記複数の心時相のうちの第1の心時相に関する第2データセットと第2の心時相に関する第2データセットとは、データ収集期間が互いに重複しない第1の差分期間と第2の差分期間とを有し、
前記補正工程は、
前記特徴領域の除去のために、前記第1の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第1の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第1の差分画像を生成し、前記第2の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第2の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第2の差分画像を生成し、
前記複数の心時相間の動きの補正のために、前記第1の差分画像と前記第2の差分画像との差分画像に基づいて前記第1の心時相と前記第2の心時相との間の前記血管の動き量を計算し、前記動き量に基づいて前記複数の第2データセットを補正する、
医用画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
血管に存在する前記血管に比してコントラストの高い特徴領域を含む第1データセットと、前記血管に関する造影領域を含む、複数の心時相に関する複数の第2データセットとを取得する取得機能と、
前記第1データセットと前記複数の第2データセットとに基づいて、前記複数の心時相間の動きの補正と前記特徴領域の除去とを実行する補正機能と、を実現させ、
前記複数の心時相のうちの第1の心時相に関する第2データセットと第2の心時相に関する第2データセットとは、データ収集期間が互いに重複しない第1の差分期間と第2の差分期間とを有し、
前記補正機能は、
前記特徴領域の除去のために、前記第1の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第1の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第1の差分画像を生成し、前記第2の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、前記第2の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第2の差分画像を生成し、
前記複数の心時相間の動きの補正のために、前記第1の差分画像と前記第2の差分画像との差分画像に基づいて前記第1の心時相と前記第2の心時相との間の前記血管の動き量を計算し、前記動き量に基づいて前記複数の第2データセットを補正する、
医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓のCTスキャンの画質は、心臓の動きによる影響を受ける。心臓CTスキャンの継続期間における心臓の動きにより、心臓CTスキャンから得られた画像にモーションアーチファクトが発生する。
【0003】
心臓の動きは、高い心拍数、例えば60拍毎分(bpm)を超える心拍数で得られたスキャンの画質に特に影響する。高等なスキャナであればほどほどに高い心拍数でも良好な画質を得ることができるが、より高い心拍数ではなおも品質低下が見られうる。
【0004】
高速回転のスキャナは、低速回転のスキャナよりもよい結果を出しうるが、依然としてモーションアーチファクトが発生してしまう。
【0005】
心拍数を遅くするために、例えば心拍数を60拍毎分未満に遅くするために、ベータブロッカーなどの薬物が患者に投与される場合がある。しかしながら、ベータブロッカーは、一部の患者には禁忌であり、例えば病状等に起因して服用できないことがある。
【0006】
異なる時点間に発生した動きを決定するために、異なる時点を表す再構成画像データ(例えば、3次元の位置の関数としての強度又は他のパラメータを表すボクセルセット)を比較することによって心臓の動きを推定することが知られている。しかしながら、異なる時点の画像データ(例えばボクセルセット)は、共通する幾つかのデータを含む生データから再構成され、例えば異なる画像が生データの重なっている断面から再構成されうる。これは、非効率又は不正確である。
【0007】
さらに、画像に存在する血管は、石灰化、プラーク又はステントなどの関連する高コントラストの特徴を含んでおり、これらは、血管の正確な又は正しいセグメンテーションを妨害しうる。
【0008】
冠血流予備量比(FFR)処理又は他の数値流体力学(CFD)処理、及び/又は、血管又は心臓の特性又は機能のモデリング処理の場合、画像データは、異なる心時相(例えば、心周期の70%、80%、90%、及び99%の時相(例えば、R-R間隔))について取得される。異なる時相についての画像の正確な動き補正は、後続のモデリング処理又は計算にとって重要であるが、しばしば実現困難である。
【0009】
異なる心時相に対する血管の正確なセグメンテーションは、冠血流予備量比(FFR)処理又は他の数値流体力学(CFD)処理、及び/又は、血管又は心臓の特性又は機能のモデリング処理にとっても重要である。石灰化、プラーク又はステントなどの特徴は、レジストレーション及び差分を実行することによって、例えば、造影画像(例えば、血管へのヨード造影剤又は他の造影剤の注入後に取得されたデータセット)から非造影画像をレジストレーション及び差分することによって、画像から除去できる。しかしながら、再構成画像に対して実行されるレジストレーション及び差分は、さらなる誤差又は不正確さを取り込んでしまう可能性があり、これらは、画像に使用される動き補正アルゴリズムによって取り込まれる誤差又は不正確さをより悪化させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-005549号公報
【文献】特開2011-200656号公報
【文献】特表2011-507640号公報
【文献】特表2009-517113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、血管の動きの補正と当該血管に含まれる特徴の補正との双方を精度良く実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に係る医用画像処理装置は、血管に存在する特徴領域を含む第1データセットと、前記血管に関する造影領域を含む、複数の心時相に関する複数の第2データセットとを取得する取得部と、前記第1データセットと前記複数の第2データセットとに基づいて、前記複数の心時相間の動きの補正と前記特徴領域の補正とを実行する補正部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る医用画像処理装置の概略図である。
図2図2は、異なる画像に対応する回転角度の範囲を説明する概略図である。
図3図3は、実施形態に係る方法の概要を示すフローチャートである。
図4図4は、図3の方法の特定の特徴をより詳細に示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態において使用する部分再構成画像を取得する方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置、方法及びプログラムを説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る医用画像処理装置10を概略的に示す図である。医用画像処理装置10は、計算装置12、例えばパーソナルコンピュータ(PC)又はワークステーションを有している。計算装置12は、CTスキャナ14と、1又は複数の表示スクリーン16と、コンピュータキーボード、マウス又はトラックボールなどの1又は複数の入力デバイス18とに接続されている。
【0016】
CTスキャナ14は、患者又は他の被検体の撮像領域を表す2次元又は3次元の生データを取得するように構成されたCTスキャナである。本実施形態に係る撮像領域(又は撮像ボリューム)は、心臓を含む解剖学的領域である。撮像領域は、脳や腹部、任意の血管(例えば、冠状動脈)又は器官(例えば、肺又は肝臓)等の任意の領域を含みうる。
【0017】
CTスキャナ14は、ガントリに装着されたX線源及びX線検出器を使用して撮像領域をスキャンするように構成されている。幾つかの実施形態では、使用されるスキャンプロトコルは、連続ボリューム収集である。ガントリは、本実施形態では275msである回転時間で患者の周囲を360°全回転する。状況によっては、患者の1心拍内で全回転が完了しうる。
【0018】
幾つかの実施形態では、患者の周囲の各単一回転は、患者の撮像領域のアキシャル断面を表す生データを提供する。他の実施形態では、CTスキャナ14は、単一回転で複数の断面を取り込むように構成されたマルチスライススキャナである。
【0019】
代替の実施形態では、CTスキャナ14は、他の画像モダリティのスキャナ、例えば、コーンビームCTスキャナ、MRI(磁気共鳴イメージング)スキャナ、又はハイブリッドスキャナ(例えば、CT-MR又はCT-PETスキャナ)、又は他の適切なスキャナに置き換えられたりこれらで補われたりされてよい。
【0020】
以下の説明では、生データセットとの用語は、スキャナから受信されうるような生データ(再構成されていないデータ)を指すのに使用される。生データは、CTスキャン中にスキャナによって取得された測定値、例えばCTスキャン中にスキャナによって取得された電圧データを表しうる。生データセットは、1又は複数のアキシャル断面を表すデータを含みうる。状況によっては、生データセットは、サイノグラムと称されうる。
【0021】
生データセットは、複数のサブセットのデータを含むことができ、サブセットの各々が、スキャン中の異なる時間に対応し、それ故、異なるスキャン角度に対応する。
【0022】
本実施形態では、CTスキャナ14は、画像データを取得するために生データに基づいて再構成を行うように構成されたスキャナ再構成回路15を有する。再構成によって、スキャナ再構成回路15は、生データを、空間中の異なる点でのX線の減弱を表すボクセル強度を含む画像データに変換する。
【0023】
以下の説明では、画像データセットとの用語は、再構成データ(画像データとも称されうる)を指すのに使用される。画像データセットは、例えば、ボクセルのアレイ、及び関連する強度を含むことができ、各ボクセルは、撮像領域における対応する位置を表す。画像データセットは、例えば表示用に、撮像領域の画像を生成するために使用されてよい。画像データセットは、単に画像とも称することがある。
【0024】
CTスキャナ14は、任意の適切な方法を用いて、例えばフィルタ補正逆投影法を用いて、生データを再構成して画像データを取得しうる。
【0025】
本実施形態では、CTスキャナ14は、生データの各アキシャル断面についての3つの画像を再構成する。他の実施形態では、CTスキャナは、生データの各アキシャル断面についての異なる数の画像を再構成するように構成されている。
【0026】
各アキシャル断面に対して、X線源の360°全回転についての生データが取得される。所与の断面についての3つの画像の各々は、その断面についての生データのそれぞれの部分を用いて再構成される。各部分は、回転の少なくとも半分からの生データを、すなわち少なくとも180°の回転からの生データを含む。各部分は時間的にずれており、それ故、回転角度もずれている。例えば、3つの画像は、X線源による回転の6分の1(60°の回転)に対応する時間だけ時間的にずれていてもよい。
【0027】
少なくとも180°の回転についてのデータが、アキシャル断面全体に対応する完全な再構成画像の生成に使用される。幾つかの実施形態では、180°の角度範囲にファンビームの幅を加えたものによるデータが再構成されて完全な再構成が行われる。本実施形態において180°の角度範囲は、180°の範囲にスキャナのファンビームの幅を加えたものを意味する場合がある。
【0028】
状況によっては、180°の回転によるデータが平行投影に使用されてよい。実際のCTスキャナは、ファンビームスキャナであってよく、再構成においてより広い範囲の回転角度を使用しうる。しかしながら、幾つかの動き推定方法及び/又は動き補償方法は、CTスキャナのファンビームの特性を無視し、平行投影を仮定する。例えば、心臓スキャンは小さな視野を有しうるので、ファンビームの角度はかなり小さくてもよく、平行投影を用いて良好な結果が得られうるように平行に十分に近くてよい。
【0029】
3つの画像の各々は、アキシャル断面の完全な再構成を含むことができ、完全な再構成の各々は異なる回転角度範囲による測定値を用いて得られる。同じアキシャル断面の3つの別々の画像が与えられてよく、各画像は異なるスキャン期間に対応する。
【0030】
回転中に撮像領域に動きが発生しなければ、3つの画像の各々は実質的に同一であると予期される。しかしながら、動きがあることで、異なる時間、すなわち、異なる角度で取得された画像間に差を生じうる。
【0031】
画像にはモーションアーチファクトが発生する。画像のモーションアーチファクトは、スキャン期間中に発生するスキャン対象物の動きに起因しうる。動きは、スキャナの回転の半分未満のタイムスケールで発生しうる。例えば、心臓の少なくとも一部の形状及び/又は位置が、第1角度についての測定値の取得と、第1角度から180°未満だけずれた第2角度についての測定値の取得との間に変化しうる。
【0032】
図2は、ガントリ回転角度の範囲の概略図であり、同じ断面の2つの画像A及び画像Tがこの角度範囲により再構成される。明瞭にするために、同じ断面の第3画像Bについての角度範囲は、図2には示されていない。第1画像Aは、図2の領域30、32を含む0°から180°までの角度範囲についての測定値から再構成される。第1画像Aを再構成するために使用される角度範囲が、垂直ハッチングを用いて表される。第2画像Tは、図2の領域32、34を含む60°から240°までの角度範囲についての測定値から再構成される。第2画像Aを再構成するために用いられる角度範囲が、水平ハッチングを用いて表される。60°から180°までの角度範囲に対する測定値が、第1画像Aの再構成と第2画像Tの再構成との両方で使用されることが分かるであろう。図2の実施形態では、第3画像Bは、120°から300°までの角度範囲(図示しない)についての測定値から再構成される。
【0033】
本実施形態では、CTスキャナ14によって再構成された画像(例えば、A、T及びB)が、メモリ20に格納され、続いて、計算装置12に提供される。代替の実施形態では、画像は、画像管理通信システム(PACS)の一部を形成しうる遠隔データ記憶装置(図示しない)から提供される。メモリ20又は遠隔データ記憶装置は、適切な形態のメモリストレージを含んでよい。
【0034】
計算装置12は、画像を自動的又は半自動的に処理するための処理資源を提供するものであって、中央処理装置(CPU)22を有する。本実施形態では、計算装置12は、部分再構成回路24と、レジストレーション回路26と、画像生成回路28とを有する。
【0035】
本実施形態では、部分再構成回路24、レジストレーション回路26及び画像生成回路28は、実施形態の方法を実行するために実行可能であるコンピュータ可読命令を有するコンピュータプログラムによって計算装置12に実装される。例えば、部分再構成回路24、レジストレーション回路26及び画像生成回路28は、計算装置12によって、例えばCPU22によって実行可能であるそれぞれのコンピュータプログラム又はアルゴリズムとして実装されてよい。しかしながら、他の実施形態では、種々のユニットが、1又は複数のASIC(特定用途向け集積回路)、あるいはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)として実装されてもよい。
【0036】
計算装置12はまた、RAM、ROM、データバス、種々のデバイスドライバを含むオペレーティングシステム、及びグラフィックカードを含むハードウェアデバイスを含むPCのハードドライブ及び他の構成要素を含む。明瞭にするために、そのような構成要素は図2には示されていない。
【0037】
図1のシステムは、図3及び図4を参照して以下に説明されるような実施形態の方法を実行するように構成されており、この方法では、動き補償、レジストレーション、及びカルシウム、ステント、プラーク又は他の特徴の除去が、画像の部分再構成を用いて実行される。これらの処理のために部分再構成を用いることによって、幾つかの実施形態では、誤差の減少又は精度が改善される。
【0038】
図3のフローチャートは、実施形態の処理の概観を示す。ステップ35において、関心領域の非造影CT(NCCT)により収集された生データ又は他の非造影CTにより収集された生データなどのカルシウムスコアデータが、例えばCTスキャナ14から直接、又はメモリから取得される。この場合、関心領域は、心臓又はその近くの領域であり、少なくとも1つの心臓血管、例えば心臓からつながる又は心臓につながる動脈又は静脈を含む。
【0039】
ステップ36において、関心領域に関するCT血管造影により収集された生データ(CTAデータ)、又は他の造影データが、例えばCTスキャナ14から直接、又はメモリから取得される。
【0040】
図3の実施形態では、カルシウムスコアデータは、CTスキャナ14を使用して患者又は他の被検体に対する測定によって取得され、次いで、造影剤が、患者又は他の被検体の関心領域に到達又は放出されて、CTAデータが取得される。患者又は他の被検体は、通常、これらのプロセス全体を通してスキャナ内に留まっている。
【0041】
次のステップ37において、カルシウムスコアデータ及びCTAデータから部分再構成画像が取得され、部分再構成画像を用いて動き補償、画像データ及び特徴差分処理の組み合わせが実行される。CTAデータの部分再構成画像は、連続するCTAデータセット間に共通する生データの少なくとも幾つかを省くことによって取得される。このような共通データは、動き補償処理にいかなる追加の情報をも提供することができず、それを省くことで正確さ又は効率を改善することができる。動き補償とレジストレーション及び特徴除去との両方に部分再構成画像を用いることによって、さらに改善された精度又は効率を得ることができる。
【0042】
ステップ37の処理は、幾つかの心時相(例えば、RR間隔における70%、80%、90%及び99%の時相)のそれぞれに対して実行される。異なる心時相についての生データ及び部分再構成画像は、適切なやり方で取得されてよい。例えば、本実施形態では、所望の時相間隔をカバーする(例えば、この実施形態では、RR間隔の70%、80%、90%、及び99%の時相をカバーしている)単一の拡張データセットが取得される。この単一の拡張データセットは、360度を超える回転をカバーしうる。R-Rは、例えば、約0.8秒でありうるので、70%から100%までの心時相間隔をカバーするためには、0.35秒の取得を必要としうる。回転期間が、例えば0.275秒である場合、拡張データセットは、1.3回転、すなわち約470度の回転をカバーすることができる。そして、この単一の拡張データセットは、動き補償及び差分に使用される部分再構成に分けられる。他の実施形態では、部分再構成画像を取得するための他の適切な方法が使用されてよい。例えば、異なる心時相又は関心回転間隔をカバーしている、別々のデータ取得、及び別々の生データであってよく、部分再構成画像は、1又は複数の異なる生データの適切な処理によって取得されてよい。代替的に又は付加的に、部分再構成は、1、2又はそれ以上の既に再構成されたフル画像の適切な処理によって取得されてよい。
【0043】
心時相の各々に対するステップ37の処理に続いて、特徴が除去された動き補償データセット及び異なる時相についての再構成画像に基づいて、心時相の各々に対して、完全再構成画像(ボクセルセット又はピクセルセット)が生成される。異なる時相についての再構成画像は、関心血管をセグメント化するために、ステップ38においてセグメンテーション処理を受ける。
【0044】
そして、ステップ39において、CT-FFR処理又は他の数値流体力学(CFD)処理、及び/又は血管又は心臓の特性又は機能のモデリング処理で、異なる心時相についての血管のセグメンテーションが使用される。
【0045】
図3のプロセスの特定の特徴が、処理のステップの幾つかをさらに詳細に概略的に示す図4のフローチャートを参照してさらに詳細に説明される。
【0046】
上で述べられたように、処理の重要な部分は、動き補償のための部分再構成の使用である。ステップ44、50、52は、心時相の各々についてのCTAデータに実行される動き補償処理を表す。
【0047】
図2を参照して上で述べられたように、スキャナの回転のたびに生成される3つの画像(A、B、Tとラベル付けされている)がある。画像は、動き補償処理で使用される。
【0048】
1つの心時相(例えば、70%時相)から始めて、70%の心時相点又はその近くで取得された2以上の画像(A、B、T)が、動き補償を取得するために用いられてよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、動きは、2つの撮像ボリュームR、Tから推定され、単一のワープフィールドを生成する。ワープフィールドは動き推定であるとみなされ、再構成に使用されてよい。幾つかの実施形態では、3以上の画像が用いられ、動き推定が2回以上実行されてよく、又は組み合わせた動き推定手順が使用されてよい。再構成ステップに提供される2以上のワープフィールドが生成される。他の実施形態では、任意の適切な数の画像及び任意の適切な数の動き推定処理が使用されてよい。
【0050】
図4のフローチャートのステップ44において、部分再構成回路24は、メモリ20から第1画像Rを受け取る。第1画像は、第1スキャン期間に亘りCTスキャナによって取得されたCT測定値を表すデータからCTスキャナ14によって再構成される。第1スキャン期間中、ガントリは、回転角度の第1範囲(例えば、0°から180°)を回転する。他の実施形態では、第1画像Rは、CTスキャナ14又はデータ記憶装置から、例えば遠隔データ記憶装置から受け取られうる。
【0051】
第1画像Rは、患者の解剖学的領域を表し、この実施形態では患者の心臓を含む。本実施形態では、第1画像Rは、患者の心臓を通るアキシャル断面を表す。第1画像Rは、それが対応するアキシャル断面についての完全な再構成であるとみなされる。
【0052】
部分再構成回路24はまた、CTスキャナ14から第2画像Tを受け取る。第2画像データTは、第1画像データとして患者の同じ領域の同じアキシャル断面を表す。第2画像Tは、第2スキャン期間に亘りCTスキャナによって取得されたCT測定値を表すデータからCTスキャナ14によって再構成される。第2スキャン期間中、ガントリは、回転角度の第2範囲(例えば、60°から240°)を回転する。
【0053】
第1スキャン期間と第2スキャン期間とは重なっている。回転角度の第2範囲は、回転角度の第1範囲と重なっている。
【0054】
一実施形態では、第1画像Rは、図2の領域30、32に対応する、0°から180°の角度範囲で取得されるデータを用いて再構成される。第2画像Tは、図2の領域32、34に対応する、60°から240°の角度範囲で取得されるデータを用いて再構成される。60°から180°の角度の範囲(領域34)によるデータは、画像データR、Tに共通である。
【0055】
図4のフローチャートのステップ44において、部分再構成回路24は、第1画像Rを用いて、図2の領域30によって表される角度の範囲(すなわち、0°ないし60°)についての測定値を表すデータから再構成された第1部分再構成画像R’を取得する。部分再構成回路24は、第2画像Tを用いて、図3の範囲34によって表される角度の範囲(すなわち、180°ないし240°)についての測定値を表すデータから再構成された第2部分再構成画像T’を取得する。図2の領域32によって表される角度の範囲(すなわち、60°ないし180°)についての測定値を表すデータは、第1部分再構成画像R’及び第2部分再構成画像T’の再構成から除外される。
【0056】
図3及び図4に関して説明される実施形態では、部分再構成画像は、完全再構成画像、例えば、位置の関数としての減弱又は他のパラメータを表すボクセルの3次元アレイの適切な処理によって生成可能である。部分再構成画像を得るために完全再構成画像を処理する方法が、図5に関連して以下に説明される。代替の実施形態では、部分再構成回路24は、生データ(例えば、スキャン時間/回転位置の関数としての、スキャナからの生データ)を受け取り、選択された角度の範囲についてのデータを省いて、省いた選択データを用いて生データについての再構成処理を実行することによって部分再構成が生成される。
【0057】
図4に戻ると、ステップ44の出力は、2つの部分再構成画像R’、T’である。ステップ50において、部分再構成回路24は、第1部分再構成画像R’と第2部分再構成画像T’とをレジストレーション回路26に供給する。
【0058】
図4の方法のステップ50において、レジストレーション回路26は、第1部分再構成画像R’及び第2部分再構成画像T’をレジストレーションする。本実施形態では、レジストレーション回路26は、例えば、Physics in Medicine and Biology 57(6), 1701-1715 (2012)におけるPiper, J らの方法である、低用量4Dダイナミクス造影CTにおける腹部臓器の動きの非剛体レジストレーションによる補正の客観的評価を使用して、非剛体レジストレーションを実行する。全体の非剛体レジストレーション手順は、類似尺度として相互情報量を使用して実行され、ワープフィールド(変形フィールド)が、クラム-ヒル-ホークス・スキーム(William R Crum, Derek L. G. Hill, David J. Hawkesによる、Proceeding of IPMI’2003, pp. 378-387, 非剛体レジストレーションにおける情報理論的類似尺度)を使用して計算される。本実施形態では、ワープフィールドは密ベクトル場である。密ベクトル場において個々の変位ベクトルは、各ボクセルについて定義される。ワープフィールドは、所与の期間にわたる解剖学的構造の動きを表す2D又は3Dベクトル場であってよい。代替の実施形態では、他の適切なレジストレーション手順が使用されてもよい。
【0059】
本実施形態では、ステップ50の出力は、画像R’の中心時点と画像T’の中心時点との間の動きを表すワープフィールドである。画像R’の中心時点は画像Rの中心時点と同じではなく、画像T’の中心時点はTの中心時点と同じではない。例えば、90°重なりの場合には、ワープフィールドは、画像Rの中心時点の前の点45°とTの中心時点の後の点45°との間の動きを表す。又はその逆でもよい。
【0060】
ワープフィールドは、第1のスキャン期間と第2のスキャン期間との間の時間の重なりについて動き情報が得られないことを考慮して、画像Rが得られた第1のスキャン期間とTが得られた第2のスキャン期間との間の動きを表すとみなされる。ワープフィールドは、動きの推定値と見なすことができる。他の実施形態では、動きの適切な推定値は、R’及びT’のレジストレーションから取得されうる。
【0061】
図2の領域32によって表される角度の範囲が画像R、Tに共通していることが図2から理解されうる。領域32の角度の範囲(この実施形態では、60°ないし180°)を表す画像R、Tにデータをレジストレーションすることによって得られる有益な動き情報はないとみなしてよい。
【0062】
それ故、この実施形態では、画像Rの一部にすぎない(及び画像Tの一部でない)角度の範囲を表す第1部分再構成画像R’が取得され、画像Tの一部にすぎない(及び画像Rの一部でない)角度の範囲を表す第2部分再構成画像T’が取得される。これらの角度の範囲(領域30、34)のデータからの部分再構成画像は、R及びTにおける全てのデータを含むとみなしてよく、実際の、又は非冗長の、又は非重複の動き情報を提供する。角度の範囲(領域30、34)は一貫して180°であり、それ故、同じ空間領域を表すと考えてよい。
【0063】
幾つかの状況では、部分再構成画像R’、T’は、乏しい(及びかなりの方向性をもつ)空間解像度を有しうるが、それらが得られる元の撮像ボリュームR、Tとほとんど同じ動き情報を含む。
【0064】
幾つかの状況では、完全な再構成画像R、Tをレジストレーションすることによって取得されるものよりも部分再構成画像R’及びT’をレジストレーションすることによって取得されるものにより、より正確な動きの推定値が取得される。R及びTの撮像ボリュームは生データ(例えば、サイノグラムデータ)の重なり合う領域から再構成されるので、完全な再構成画像R及びTの撮像ボリュームデータの一部は、高度に相関しうる。状況によっては、完全な再構成画像R及びTのレジストレーションは、動きを過大評価又は過小評価する傾向がある。動きの過大評価又は過小評価は、画像の細部の向きに依存しうる。動きの過大評価又は過小評価は予測困難である。さらに、モーションアーチファクトが存在する場合にレジストレーションを実行することは難しい。
【0065】
2つの連続したデータセットの部分再構成画像を用いてステップ44、50、52で動きのレジストレーションを実行することについて上で説明してきたが、実際には、ステップ44、50、52では、2以上の連続したデータセットが用いられてよく、複数のレジストレーション又は複数のデータセットのレジストレーション処理が使用されてよい。その場合、ステップ52における出力は、時間の関数としての動き補償を表す4D又は時間依存ワープフィールドであってよい。
【0066】
ステップ44、50、52のプロセスは、複数の心時相(例えば、70%、80%、90%、99%の時相)のそれぞれについて実行され、時間依存の動き補償(ワープフィールド)情報が、心時相の各々について取得される。複数の心時相についてのステップ44、50、52の処理が、幾つかの実施形態において単一の組合せステップ又は処理で実行されてよい。単一の組合せステップ又は処理は、複数のレジストレーション(又は単一のグループレジストレーション又はその他の時間及び空間の正規化レジストレーション)を含んでよく、その出力は空間パラメータと時間パラメータとの両方を表す4Dワープである。
【0067】
ステップ35、41によれば、図4の方法の特徴は、カルシウムスコアデータ(又は他の非造影データ)の1又は複数の再構成が、正確なセグメンテーションを妨害しうる、血管に関連する特徴(例えば、石灰化、ステント、又はプラーク)を除去するために使用されることである。
【0068】
ステップ35において、カルシウムスコアデータが上述のようにして取得される。ステップ41において、カルシウムスコアデータの適切な部分再構成画像が、レジストレーション及び差分処理で使用するために取得される。
【0069】
カルシウムスコアデータの部分再構成画像が、心時相の1つについて、又は心時相の各々(例えば、70%、80%、90%、及び99%の時相の各々)について取得される。
【0070】
カルシウムスコアデータは、全360度以上の回転中のスキャンから取得されることができる。CTAスキャンからの部分再構成画像は、このようなカルシウムスコアデータから取得されたカルシウムスコア画像との間で位置合わせされる。例えば、特定の角度60°から始まる部分再構成画像が、同じ角度60°で始まるカルシウムスコア画像にレジストレーションされる。通常、レジストレーションされた部分撮像ボリュームは、同じ回転範囲を有するべきである。ほぼ同じ範囲のR-R時相についてのカルシウムスコアデータを取得することが望ましいが、実際には、カルシウムスコアデータは、70%から100%の時相間隔全体をカバーしていない場合がある。
【0071】
カルシウムスコアデータの部分再構成画像は、CTAデータの部分再構成画像を取得するためにステップ44で使用されたのと同一又は類似の処理を実行することによって取得されてよい。例えば、カルシウムスコアデータの各部分再構成画像についてCTAデータと同じ角度範囲の生データは省略されてもよい。残りのデータは、部分再構成画像を生成するために使用されればよい。
【0072】
各心時相に関して、ステップ41で取得されたカルシウムスコアデータの1又は複数の部分再構成画像、及びステップ52で取得されたCTAデータ44の部分再構成画像及びワープフィールドが、レジストレーション回路26に与えられる。ステップ53において、レジストレーション回路26は、カルシウムスコア(又は他の非造影)データの1又は複数の部分再構成画像、及びCTAデータの1又は複数の対応する部分再構成画像をアライメントさせるためにレジストレーション処理を実行する。なお、当該部分再構成画像は、決定された1又は複数のワープフィールドを使用して適切に動き補正されているものとする。差分処理は、アライメントされたデータに関して実行され、造影(例えば、CTA)及び非造影(例えば、カルシウムスコア)部分再構成画像で表される特徴を除去する。
【0073】
ステップ53の出力は、各心時相の位置の関数(例えば、70%、80%、90%、99%の時相の各々)としての造影剤の表示セットである。表示セットは、心時相の間、したがって時間の関数として、位置と造影剤の濃度との変化を示す4D表示を与える。
【0074】
画像生成回路28は、差分処理及び動き補償処理を受ける、撮像領域の測定値を表すデータセットの再構成を実行する。再構成の処理では、画像生成回路28は、推定された動きワープフィールド52を用いて、測定値を表すデータセットの収集中に発生した動きを補償する。推定された動きを用いて、例えば、Proc. SPIE 9033, Medical Imaging 2014: Physics of Medical Imaging, 903304 (19 March 2013)のTangらの方法である、心臓CTについての組み合わせた局所的及び大域的動き推定及び補償方法、を用いて再構成が実行される。
【0075】
ステップ55において、関心心時相の各々についての造影剤を表す完全再構成画像がセグメンテーション回路25に供給される。完全再構成画像は、例えば、動き補償、特徴除去及び再構成プロセスが施されている。セグメンテーション回路25は、完全再構成画像に含まれる関心血管をセグメント化するためのセグメンテーション処理を実行する。
【0076】
次いで、異なる心時相についてのセグメント化されたデータセットが、既知の技術に従って冠血流予備量比(FFR)処理を実行するためにステップ39で処理される。他の適切な処理、例えば適切な数値流体力学(CFD)処理、及び/又は、血管又は心臓の特性又は機能のモデリング処理が、ステップ39で実行されてよい。
【0077】
図4の処理の変形例(図4に破線枠で示される)では、任意選択的に、動き補償、画像データ及び特徴除去(例えば、差分処理)処理が、処理の1以上の出力に応じて最適化又は変更されてよい。このようにして、動きの補正と、少なくとも1つの特徴の少なくとも部分的な除去とが、1又は複数の再構成画像データから得られた少なくとも1つの制約、及び/又は、1又は複数の再構成画像から得られた少なくとも1つのパラメータの値を最適化する制約を受けうる。
【0078】
例えば、差分適合パラメータが決定されてもよい。差分適合パラメータは、例えば、データセットのピクセル又はボクセル値が、予期されるノイズ範囲内で常に正である場合に最適化された指標を与える。
【0079】
同様に、管腔セグメンテーションパラメータが、差分処理にしたがって、データセットに基づいて計算されてよい。データセットは、決定された管腔(例えば、血管)セグメンテーションが1以上の所定の幾何学的、解剖学的又は他の制約と一致するか否かによって決まる1又は複数の値を含む。例えば、管腔セグメンテーションパラメータ値が高すぎたり低すぎたりする場合、管腔の形状、大きさ又は経路が、通常の人間又は他の解剖学的構造から予期されるものと一致しないことを示唆する。
【0080】
パラメータ値又は他の制約は、動き補償、レジストレーション及び特徴除去(例えば差分処理)処理への入力として含まれてよく、これにより、処理は、パラメータの許容可能な値が得られるまで及び/又は制約が満たされるまで調整される。
【0081】
上で述べられたように、実施形態によれば、部分再構成が、動き補償の推定値を決定するために用いられ、完全な動き補償再構成画像データが得られうる。部分再構成を得るため、及び完全な動き補償の再構成画像(例えば、ボクセルセット)を生成するための適切なプロセスが使用されてよい。
【0082】
図3及び図4の実施形態では、例として、画像Tに関して再構成されたデータセットは、図3及び図4の処理が画像に適用された場合に得られる画像Tの離散フーリエ変換(DFT)である。他の実施形態では、任意の適切なデータが使用されてよい。
【0083】
本実施形態では、画像生成回路28は、画像Tについてのデータの角度範囲を12の領域に分ける。分けられた領域の各々は、15°の角度範囲を有する(約12msの時間に対応する)。他の実施形態では、任意の数の領域が使用されてよい。
【0084】
画像生成回路28は、12の領域の各々に対してDFTを施して部分再構成画像を生成する。部分再構成画像各部分再構成画像は、一方向に良好な空間解像度を有するが、他の方向では非常に乏しい空間解像度を有する。各部分再構成画像は、画像TのDFTの完全な再構成画像が有する時間分解能よりも優れた時間分解能を有しうる。
【0085】
それぞれの時間は、各部分再構成画像に関連付けられている。例えば、部分再構成画像は、所定期間(例えば、12ms付近の期間)に亘り取得された測定値を表すデータから再構成されることができる。部分再構成画像に関連付けられた時間は、データ取得の中間点の時間であってよい。
【0086】
画像生成回路28は、ワープフィールド52に基づいて、部分再構成画像の各々に関連付けられた時間に対応するワープフィールドを補間により生成する。上記の実施例では、12の補間ワープフィールドが生成される。これら12の補間ワープフィールドは互いに異なってもよい。
【0087】
本実施形態では、補間を調整するために追加された追加パラメータを含む3次関数を用いて補間がなされてもよい。本実施形態では、ワープフィールドは、撮像ボリュームの中央でゼロに設定される。他の実施形態では、動きの推定値を補間する任意の方法が使用されてよい。
【0088】
画像生成回路28は、部分再構成画像の各々に、対応する補間ワープフィールドを適用し、動き補正が施された部分再構成画像を生成する。
【0089】
そして、画像生成回路28は、動き補正が施された部分再構成画像を加算する。
【0090】
すなわち、完全再構成画像は、複数の部分再構成画像を取得して、ワープフィールド52を異なる部分再構成画像の異なる時間に対応する補間ワープフィールドに変換し、補間ワープフィールドを部分再構成画像に適用して、適用後の部分再構成画像を結合することによって、動きの推定値に応じて調整される。動きの推定値を再構成に適用することによって、動きの影響が低減されうる。
【0091】
幾つかの実施形態では、再構成は、最終的な画像を得るために単一のアキシャル断面に対して得られた全てのCTデータの再構成である。動き推定は、再構成ジオメトリを調整するために使用される。
【0092】
さらなる画像は、幾つかの動きの影響が除去されたデータセットである。モーションアーチファクトは、画像R、Tの少なくとも1つのモーションアーチファクトと比較して低減されうる。例えば、ターゲット時相のデータセットTよりも新しい立体画像でモーションアーチファクトがほとんど存在しなくなるか、ターゲット時相のデータセットTと比較した場合にモーションアーチファクトの重大度が低減される。
【0093】
図4の方法は、撮像ボリュームのCTデータセットの各アキシャル断面に対して実行されてよい。幾つかの実施形態では、図4の方法は、マルチスライススキャナから得られたマルチスライスの画像データに対して実行されてよい。
【0094】
幾つかの実施形態では、CTスキャナ14は、動きの測定値を得るために、計算装置12によって受け取られて処理される3つの画像(例えば、T、A、B)を再構成する。他の実施形態では、任意の数の画像が測定CTボリュームデータから再構成されてよい。この場合、画像各々は、異なる時点に対応する。例えば、ターゲット時相のデータセットと他に対する1、3、4、又は5つのデータセットとがCTデータから再構成されてよい。
【0095】
図4を参照して上で述べられた方法は、モーションアーチファクトが低減された再構成データセットを生成するために使用される。図4の方法は、冠状動脈の動きの推定を改善することができる。モーションアーチファクトを低減させることによって、CTスキャナの回転速度を増加させることなく画質を向上させることが可能となる。
【0096】
図3及び図4を参照して上で述べられた実施形態では、計算装置12は、画像(例えば、R及びT)を受け取り、画像を処理して部分再構成画像(例えば、R’及びT’)を得る。
【0097】
図5は、完全な再構成画像(例えば、R)から部分再構成画像(例えば、R’)を取得する方法を概略的に示すフローチャートである。
【0098】
本実施形態では、部分再構成回路24は、CTスキャナ14から画像R(図5に入力画像60として表される)を取得する。幾つかの実施形態では、部分再構成回路24は、CTスキャナによる画像Rの再構成に使用した生データにアクセスできない場合がある。
【0099】
ステップ62において、部分再構成回路24は、第1スキャン期間中、スキャナによって取得された測定値を表すデータを取得するために画像Rを処理する。本実施形態では、部分再構成回路24は、画像Rの離散フーリエ変換(DFT画像)64を生成するため、画像Rに2次元高速フーリエ変換(FFT)を施す。他の実施形態では、任意の適切な処理方法が使用されてよい。
【0100】
中央断面定理により、DFT画像64の径方向角度はガントリ角度に対応しうる。所与の径方向角度でDFT画像64の原点を通る線に沿って存在するデータは、対応するガントリ角度で取得された測定データを表しうる。DFT画像64は、ステップ62で実行されるような再構成画像の2次元DFTを取ることによって、又はサイノグラム(生データ)の各線の1次元DFTを取り、中心を通る適切な径方向角度で1次元DFT結果を重ね合わせることによって、生成可能である。それ故、DFT画像64の中心を通る線は、サイノグラムの特定の線に対応する(それ故、特定のガントリ角度に相当する)。
【0101】
部分再構成回路24はまた、メモリ20から(又はCTスキャナ14から、又は他のデータ記憶装置から)、画像Rによって表される回転角度の範囲(この実施形態では、0°ないし180°)と、画像Tによって表される回転角度の範囲(この実施形態では、60°ないし240°)とを含む回転角度の範囲66に関する情報を受け取る。回転角度66は、DFT画像64のマスクアウトする部分を決定するために使用される。回転角度66はまた、再構成ステップ56で使用されてよい。
【0102】
ステップ68において、部分再構成回路24は、R及びTに共通する角度(この実施形態では、60°ないし180°)を表すRのDFT画像64の一部をマスクアウトするためのマスク70を作成する。ステップ68は、ステップ64の前に、ステップ64の後に、又はステップ64と同時に実行されてよい。
【0103】
マスク70は、各画像断面のフーリエ変換の一部をマスクアウトすることによって部分再構成画像を生成するために使用される。DFT画像64を通る各径方向線はサイノグラム(生データ)の特定の線に対応するので、DFT画像64の径方向線をマスクアウトすることは、サイノグラムのその線によって提供された情報を除去することに対応する。マスキングは、動き情報を含むサイノグラムの部分から情報を残して、適切な角度についての測定値を表すサイノグラムの重なり部分のデータを除去することと見なすことができる。マスク70は、所望の時間に対応する径方向角度でDFT74の原点を通過する線を選択するように構成されてよい。
【0104】
ステップ72において、部分再構成回路24は、マスクDFT74を得るために、画像RのDFT画像64にマスク70を適用する。マスクDFTは、Rを含むがTを含まない角度に対する測定値に対応するデータのみを含む。
【0105】
画像Rのフーリエ変換に適切なマスクを適用することによって、部分再構成回路24は、RとTとが重なっているガントリ回転角度の範囲から情報を除去するものと見なすことができ、これにより、動き情報がある角度のみを残すことができる。60°ないし180°の範囲のデータは含まれなくなる。
【0106】
ステップ76において、部分再構成回路24は、マスクDFT74の2次元逆高速フーリエ変換(IFFT)を実行して、部分再構成画像R’(図5に部分再構成画像78として表される)を取得する。
【0107】
部分再構成画像R’は、一軸における減少した空間分解能を犠牲にして、それが取得された画像Rよりも良好な時間分解能を有する。空間分解能の低い軸は、画像R及び画像Tのデータの重なりに起因して、画像R及び画像Tがレジストレーションされた場合に得られる有益な動き情報がない軸である。
【0108】
図5の方法は、画像Tに基づいて部分再構成画像T’が取得される。部分再構成画像T’は、画像Tには含まれるが画像Rには含まれない角度(この実施形態では、180°ないし240°である角度)について取得された測定値を表す。
【0109】
画像R、Tから部分再構成画像R’、T’を取得するために、図5とは異なる方法が使用されてよい。例えば、部分再構成回路24は、画像の投影を実行し、回転角度を用いて結果として生じる投影をマスクし、逆投影を実行して部分再構成画像を生成してもよい。また、例えば、異方性の高いカーネルによる画像の畳み込みによって部分再構成画像が生成されてもよい。
【0110】
部分再構成画像の各々は、180°未満の角度の範囲を表す。部分再構成画像は、完全再構成画像ではない。部分再構成画像R’についての角度(領域30)は、部分再構成画像T’(領域34)についての角度と直接向き合っている。部分再構成画像R’についての角度は、部分再構成画像T’についての角度から180°ずれている。
【0111】
他の実施形態では、計算装置12は、CTスキャナ14から生データを受け取り、生データを処理する。計算装置12は、部分再構成画像R’、T’を再構成する際に使用されるべき生データの部分を選択する。幾つかの実施形態では、計算装置12は、はじめに完全な再構成を行うことなく(例えば、画像R、Tを再構成することなく)、部分再構成画像R’、T’を再構成する。
【0112】
図2に例示される角度を再び参照すると、実施形態では、部分再構成回路24は、一組の生データを受け取り、角度範囲30(0°ないし60°)で取得された測定値を含む生データの一部を選択する。角度範囲30内の生データは、第1スキャン期間(0°から180°までスキャンするのにかかる時間)中に取得されたデータであって、第2スキャン期間(60°から240°までスキャンするのにかかる時間)中に取得されたデータではない。部分再構成回路24は、生データの選択された部分から部分再構成画像R’を再構成する。
【0113】
部分再構成回路24は、角度範囲34(180°ないし240°)で取得された測定値を含む生データの部分を選択する。生データの角度範囲30は、第2スキャン期間(60°から240°までスキャンするのにかかる時間)中に取得されたデータであって、第1スキャン時間(0°から180°までスキャンするのにかかる時間)中に取得されたデータではない。部分再構成回路24は、スキャンデータの選択された部分から部分再構成画像T’を再構成する。レジストレーション回路26は、部分再構成画像R’、T’から動きの推定を取得し、画像生成回路28は、例えば、図4を参照して上で述べられた方法を使用して、アキシャル断面についての生データに基づいて完全再構成画像を再構成する。
【0114】
CTスキャナ14のスキャナ再構成回路15は、部分再構成回路24に代わって、生データの一部を再構成して、部分再構成画像R’、T’を取得してもよい。また、CTスキャナ14は、部分再構成画像を計算装置12に供給してもよい。図4の処理の幾つか又は全てが、CTスキャナ14で、又は任意の適切な装置で実行されてもよい。
【0115】
本実施形態では、スキャナは、生データを収集し、収集された生データに基づいて画像データを再構成する。他の実施形態では、スキャナは、任意の適切なモダリティ(例えば、CT、コーンビームCT、MR、PET、SPECT、X線又は超音波)のデータを取得し、取得したモダリティのデータから画像を再構成するのに適した再構成方法を使用する。スキャナは、スキャナにより収集されたデータを再構成することができ、適切な2次元又は3次元の画像データを提供する。幾つかの実施形態では、スキャナは、ハイブリッドスキャナ(例えば、CT-MR又はCT-PETスキャナ)であり、図2の方法は、ハイブリッドスキャナからのデータのCT部分に適用される。
【0116】
幾つかの実施形態では、スキャナは、コーンビームCTスキャナである。幾つかの実施形態では、画像は、血管造影画像である。コーンビームCTは、他の幾つかのCTスキャン方法よりも回転速度が遅い。状況によっては、コーンビームCTスキャナは、回転時に不要な動き(例えばウォブリング運動)を受けることがある。幾つかのコーンビームCTの実施形態では、動きを推定するときに2よりも多いレジストレーションが行われ、時間の経過とともに動きのより詳細なモデルを取得する。
【0117】
撮像領域は、任意のヒト又は動物の被検体、例えば腹部の任意の適切な解剖学的領域であってよい。解剖学的領域は、任意の適切な解剖学的構造を、例えば、任意の器官(例えば、心臓、脳、肺又は肝臓)又は血管(例えば、冠状動脈)を含む。
【0118】
特定の実施形態は、NCCTデータ及びCTAデータから部分再構成画像を生成することと、時間の関数として動き場を生成するためにCTA画像をレジストレーションすることと、NCCT画像に対してCTA画像をレジストレーションすることと、時間の関数としてヨード造影剤又は他の造影剤マップを生成するために差分処理することとを含む、医用画像処理方法を提供する。
【0119】
部分再構成画像は、収集時間枠内の時間で重ならない時間の範囲を決定することによって計算されることができる(情報は再構成間で共有されない)。
【0120】
部分再構成画像は、各データセットの各2D離散フーリエ変換(DFT)画像を計算して、決定された期間に対応する径方向の角度で各DFT画像の原点を通る線のみを適用して、結果として生じるマスク画像の2次元逆DFTを計算することによって、決定されることができる。
【0121】
セグメンテーション(例えば、冠状血管セグメンテーションなど)が、時間の関数としてセグメンテーションを生成するためにヨード造影剤又は他の造影剤マップを使用して実行されることができる。
【0122】
完全に再構成された撮像ボリュームが動き場を用いて生成されてもよい。
【0123】
動き場及び/又はヨード造影剤(又は他の造影剤)マップ関数は、例えばパラメータ化に従って補間されてよい。
【0124】
パラメータ化は、幾つかのスコアにしたがって(必要に応じて全ての入力に対する結果と共に)最適化されることができる。
【0125】
スコアは、差分適合スコアを含みうる。制約は、差分内の値がノイズ内及び/又はセグメンテーションの一貫性との何らかの組合せ内で正であることを含みうる。制約は、ヨード造影剤(又は他の造影剤)マップ及び差分値が動き場と一致することを含みうる。
【0126】
特定の実施形態は、処理回路を備える医用画像処理装置を提供し、前記処理回路は、血管の内部の石灰化領域を含む第1データと、各心時相についての血管造影を含む複数の第2データとを取得して、前記石灰化領域を減算するように前記複数の第2データに含まれる心時相データを補正して、前記第1データと前記複数の第2データとに基づいて、前記血管の動きを補正するように構成されている。
【0127】
処理回路は、さらに、データ収集時間が前記複数の第2データ間で異なる差分期間のデータに基づいて前記複数の心時相間の前記血管の動き度を計算して、前記動き度に基づいて前記心時相データの動きを補正するように構成されることができる。
【0128】
前記動き度を計算するためのデータは、前記差分期間中に取得された前記第2データと、前記差分期間中に取得された前記第1データとを減算することによって計算されることができる。
【0129】
特定の実施形態は、処理回路を備える医用画像処理装置を提供し、前記処理回路は、血管の内部の特徴領域を含む第1データと各心時相についての血管造影を含む複数の第2データを取得して、前記特徴領域を減算するように前記複数の第2データに含まれる心時相データを補正して、前記第1データと前記複数の第2データとに基づいて、前記血管の動きを補正するように構成されている。
【0130】
特定の実施形態は、処理回路を備える医用画像処理装置を提供し、前記処理回路は、第1期間中に取得された血管の石灰化領域を含む第1データと、前記第1期間よりも短く、前記第1期間と全ての期間で重なっている第2期間中に取得された血管造影領域を含む第2データと、前記第1期間よりも短く、前記第1期間よりも短い第3期間中に取得された血管造影領域を含む第3データとを取得するように構成されている。前記処理回路は、前記第2期間及び前記第3期間の重なり期間を除いた期間内における前期間である第5期間と、前記第2期間及び前記第3期間の重なり期間を除いた期間における後期間である第6期間とを識別するように構成されている。前記処理回路は、前記第5期間中に取得された前記第2データを前記第5期間中に取得された第1データで減算することによって取得された第1減算データと、前記第6期間中に取得された前記第3データを前記第6期間中に取得された第2データで減算することによって取得された第2減算データと、前記第1減算データを前記第2減算データで減算することによって取得された第3減算データとを計算するように構成されている。前記処理回路は、前記第3減算データに基づいて前記第2データと前記第3データとの間の動き度を計算するように構成されることができる。前記処理回路は、前記動き度に基づいて画像を再構成するように構成されることができる。
【0131】
前記処理回路は、さらに、前記第1期間よりも短い前記第4期間中に取得された血管造影領域を含む第4データを取得するように構成されることができ、前記第4期間は、前記第1期間と全ての期間と重なっており、前記第3期間と少なくとも部分的に重なっている。前記処理回路は、さらに、前記第3期間及び前記第4期間を除く期間内の前の期間である第7期間と、前記第3期間と前記第4期間との重複期間を除く期間内の後の期間である第8期間とを識別するように構成されることができる。
【0132】
前記処理回路は、前記第7期間中に取得された前記第1データで前記第7期間中に取得された前記第3データを減算することによって取得された第4減算データと、前記第8期間中に取得された前記第1データで前記第8期間中に取得された前記第4データを減算することによって取得された第5減算データと、前記第5減算データで前記第4減算データを減算することによって取得された第6減算データとを計算するように構成されることができる。
【0133】
前記処理回路は、さらに、前記第6減算データに基づいて前記第3データと前記第4データとの間の第2動き度を計算するように構成されることができる。
【0134】
前記処理回路は、さらに、前記動き度と前記第2動き度とに基づいて画像を再構成するように構成されている。
【0135】
以下、上記の少なくとも1つの実施形態の要点について説明する。
【0136】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、CPU22を有する。CPU22は、少なくとも取得部及び補正部として機能する。取得部は、血管に存在する特徴領域を含む第1データセットと、当該血管に関する造影領域を含む、複数の心時相に関する複数の第2データセットとを取得する。上記実施形態において第1データセットは、非造影スキャンにより収集された生データであり、より詳細には、カルシウムスコアリングスキャンにより収集されたカルシウムスコアデータである。上記実施形態において複数の第2データセットは、造影スキャンにより収集された生データであり、より詳細には、冠動脈造影スキャンにより収集されたCTAデータである。特徴領域は、石灰化、ステント及びプラークの少なくとも1つを含む。補正部は、第1データセットと複数の第2データセットとに基づいて、複数の心時相間の動きの補正と特徴領域の補正とを実行する。
【0137】
CPU22は、更に画像生成部、セグメンテーション部及び算出部として機能する。画像生成部は、複数の第2データセットのうちの、動きの補正と特徴領域の補正とを受けた第2データセットを用いて画像を再構成する。セグメンテーション部は、画像に含まれる血管をセグメント化する。算出部は、動きの補正と特徴領域の補正とが施された複数の第2データセットを用いてCT冠血流予備量比検査を算出する。
【0138】
カルシウムスコアリングスキャンでは血管内における石灰化を画像化することができ、CTAでは血管内腔を画像化することができる。CT冠血流予備量比検査では血管の芯線を抽出する必要がある。CTA画像では血管内腔が画像化されているので、CT冠血流予備量比検査の解析が可能であるが、血管内に石灰化が生じている場合、石灰化が認識されずに血管の芯線が抽出されることになる。すなわち、血管内腔に石灰化領域が存在する場合、血管の芯線を正確に抽出することができない(課題1)。課題1は、カルシウムスコア画像に描出されている石灰化領域をCTA画像から減算することにより解消され得る。また、心臓は拍動しているため、モーションアーチファクトが発生する(課題2)。課題2は、複数の心時相で取得されたデータに対して動き補正を施し、動き量を考慮した再構成を行うことでモーションアーチファクトを補正することにより解消され得る。
【0139】
課題1と課題2とを同時に解決するためには、カルシウムスコア画像の動き量を考慮する必要がある(課題3)。課題3は、動き補正に用いる各心時相のデータの動き量を算出する際に、各心時相でCTA画像とカルシウムスコア画像とを差分して心時相間の動き量を算出することにより解消され得る。課題3を解決するため、本実施形態に係るCPU22は、少なくとも上記の取得部と補正部とを実現する。この手段によれば、カルシウムスコア画像とCTA画像とからCT冠血流予備量比検査に用いる最適な画質を得ることができる。具体的には、石灰化の影響を考慮し且つモーションアーチファクトの影響を低減することができ、石灰化が存在するCTA画像であっても、モーションアーチファクトを低減しつつ、石灰化を考慮した血管芯線抽出を行うことができる。
【0140】
動き補正と特徴領域の補正とは以下の様に行われる。補正部は、第1データセットに部分再構成を実行して第1部分再構成画像を生成し、複数の第2データセットに部分再構成を実行して複数の第2部分再構成画像を生成し、第1部分再構成画像と複数の第2部分再構成画像とに基づいて複数の心時相間の血管の動き量を計算する。より詳細には、複数の心時相のうちの第1の心時相に関する第2データセットと第2の心時相に関する第2データセットとは、データ収集期間が互いに重複しない第1の差分期間と第2の差分期間とを有する。補正部は、第1の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、第1の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第1の差分画像を生成し、第2の差分期間の第2データセットに基づく第2部分再構成画像と、第2の差分期間の第1データセットに基づく第1部分再構成画像との第2の差分画像を生成する。この差分処理により、特徴領域の補正が行われる。そして補正部は、第1の差分画像と第2の差分画像との差分画像に基づいて第1の心時相と第2の心時相との間の動き量を計算する。補正部は、動き量の空間分布を表すワープフィールドを決定し、ワープフィールドを複数の第2データセットに適用する。これにより、動き補正が行われる。
【0141】
例えば、上記実施形態の通り、複数の第2データセットは、心時相70、80、90及び99%のCTAデータであるとする。心時相70%は、心臓の弛緩期にあたり、冠動脈の血流量がピークになる心時相である。
【0142】
心時相80%が処理対象であるとし、心時相70%と心時相80%との間の動き量と心時相80%と心時相90%との間の動き量とが算出される。心時相70%と心時相80%との間の動き量の算出について具体的に説明する。心時相70%に関するCTAデータと心時相80%に関するCTAデータとは、データ収集期間が互いに重複しない差分期間D1と差分期間D2とを有する。補正部は、差分期間D1のCTAデータに基づく部分再構成画像と、差分期間D1のカルシウムスコアデータに基づく部分再構成画像との第1の差分画像を生成する。また補正部は、差分期間D2のCTAデータに基づく部分再構成画像と、差分期間D2のカルシウムスコアデータに基づく部分再構成画像との第2の差分画像を生成する。そして補正部は、第1の差分画像と第2の差分画像との差分画像に基づいて心時相70%と心時相80%との間の動き量を計算する。
【0143】
同様の処理が心時相80%と心時相90%とについても行われ、心時相80%と心時相90%との間の動き量が算出される。このようにして、処理対象である心時相80%に対して隣接する心位相との間で、石灰化を考慮した動き量が算出され、当該動き量に基づいて動き補正を行うことにより、石灰化及びモーションアーチファクトが低減された画像を生成することができる。その後、当該画像に基づいて、造影剤を強調した画像が生成され、血管内腔のセグメンテーションが行われる。これにより、石灰化を考慮した血管芯線抽出が行われ、高精度のCT冠血流予備量比検査の解析が行われることとなる。
【0144】
特定の回路が本明細書に記載されているが、代替の実施形態においてこれらの回路のうちの1つ又は複数の機能は、単一の処理資源又は他の構成要素によって提供されることができ、又は単一の回路によって提供される機能は、2以上の処理資源又は他の構成要素によって組み合わせて提供されてよい。単一の回路への言及は、その回路の機能を提供する構成要素が互いに離れているか否かによらず複数の構成要素を含むことができ、複数の回路への言及は、それらの回路の機能を提供する単一の構成要素をも含む。
【0145】
特定の実施形態が記載されているが、これらの実施形態は単なる例としてのみ提示されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、他の種々の形態で具現化されることができる。さらに、ここに記載される方法及びシステムの形態における種々の省略、置換、及び変更が本発明の精神から逸脱することなく行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、その範囲内に含まれうる形態及び変更を網羅することを意図している。
【0146】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、血管の動きの補正と当該血管に含まれる特徴の補正との双方を精度良く実行することができる。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0148】
10 医用画像処理装置
12 計算装置
14 CTスキャナ
15 スキャナ再構成回路
16 表示スクリーン
18 入力デバイス
20 メモリ
22 中央処理装置(CPU)
24 部分再構成回路
25 セグメンテーション回路
26 レジストレーション回路
28 画像生成回路
図1
図2
図3
図4
図5