IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランド株式会社の特許一覧

特許7293005マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法
<>
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図1
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図2
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図3
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図4
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図5
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図6
  • 特許-マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20230612BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
G10H1/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019123445
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009239
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-067396(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0087156(US,A1)
【文献】特開平10-055178(JP,A)
【文献】特開平08-063164(JP,A)
【文献】特開昭63-289591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-11/02
G10H 1/00- 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子気鳴楽器の楽器本体に着脱可能に構成されるマウスピースであって、
所定の硬さの樹脂材料を用いて形成される筒状の硬質部と、
前記硬質部の少なくとも先端側の外周面に被覆され前記硬質部よりも軟質な樹脂材料を用いて前記硬質部と一体成形される軟質部と、を備えることを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
前記硬質部は、前記硬質部の先端側の部位を構成する小径部と、その小径部の基端に接続され先端の外径が前記小径部の基端の外径よりも大きくされる大径部と、を備え、
前記軟質部は、前記小径部の外周面に被覆されることを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項3】
前記硬質部および前記軟質部は、先端側ほど内径および外径が小さくされ前記マウスピースの軸方向への離型に対するアンダーカットを有さない形状とされることを特徴とする請求項2記載のマウスピース。
【請求項4】
前記小径部の外周面から先端面にかけて前記軟質部が被覆されることを特徴とする請求項3記載のマウスピース。
【請求項5】
前記小径部の基端と前記大径部の先端とを接続する接続面には、前記硬質部の基端側に向けて凹む凹部が形成され、
前記軟質部の基端側が前記凹部に埋め込まれることを特徴とする請求項4記載のマウスピース。
【請求項6】
前記硬質部は、前記硬質部の外周面に凹む凹み、又は、その外周面に貫通する貫通孔として構成され前記軟質部の基端側が埋め込まれる埋込部を備え、
前記埋込部から前記硬質部の先端面にかけて前記軟質部が被覆されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記埋込部は、前記硬質部の外周面に貫通する貫通孔として構成され、
前記軟質部の基端側が前記貫通孔を介して前記硬質部の内周側に回り込むことを特徴とする請求項6記載のマウスピース。
【請求項8】
前記硬質部および前記軟質部によって形成される前記マウスピースの外周面は、円錐台状に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項9】
前記楽器本体に回転可能に支持され先端が前記楽器本体から露出される回転部材を前記電子気鳴楽器が備える場合に、前記マウスピースが前記楽器本体に取付けられた状態において前記回転部材の先端側の周囲を前記硬質部によって取り囲むことが可能とされることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のマウスピースと、
前記マウスピースが着脱可能に構成される楽器本体と、を備えることを特徴とする電子気鳴楽器。
【請求項11】
前記楽器本体に回転可能に支持され先端が前記楽器本体から露出される回転部材を備え、
前記マウスピースが前記楽器本体に取付けられた状態において前記回転部材の先端側の周囲が前記硬質部によって取り囲まれることを特徴とする請求項10記載の電子気鳴楽器。
【請求項12】
電子気鳴楽器の楽器本体に着脱可能に構成されるマウスピースの製造方法であって、
所定の硬さの樹脂材料を用いて筒状の硬質部を形成する第1工程と、
前記第1工程で形成された前記硬質部の少なくとも先端側の外周面に、前記硬質部よりも軟質な樹脂材料の軟質部を一体成形によって被覆する第2工程と、を備えることを特徴とするマウスピースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法に関し、特に、回転部材の破損を抑制しつつ、マウスピースを咥えた際の感触を向上させることができるマウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏者の呼気が吹き込まれるマウスピースにリードを設け、そのリードが演奏者によって噛まれた際の噛み込み量に応じた楽音を生成する電子気鳴楽器が知られている。例えば、特許文献1には、所定の軸周りに回転する回転部材(カンチレバ)の先端をリードの内面に当接させ、回転部材の基端の回転量をセンサ(ホール素子)によって検出する電子気鳴楽器が記載される。この電子気鳴楽器によれば、リードの噛み込み量を回転部材の回転量に基づいて検出し、その検出結果に応じた楽音を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-289591号公報(例えば、第4頁右上欄8行目~16行目、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子気鳴楽器において、回転部材が楽器本体に支持された状態で、マウスピースのみが着脱可能に構成されるものがある(例えば、本願の図1参照)。このような構成により、上述したようなリード付きのマウスピースを楽器本体に取付ければ、リードを有する楽器(例えば、サックス)を模擬した演奏を行うことができる。一方、リード無しのマウスピースに交換することにより、リードを有さない楽器(例えば、フルスやリコーダー)を模擬した演奏を行うことができる。
【0005】
この場合、リード無しのマウスピースは、演奏者が咥えた際の感触を向上させるために軟質な材料であることが求められている。しかしながら、例えば、リード無しのマウスピースの全体を軟質な材料を用いて形成すると、外力によってマウスピースが変形し易くなる。そのマウスピースの変形によって外力が回転部材にも及ぶため、回転部材が破損するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、回転部材の破損を抑制しつつ、マウスピースを咥えた際の感触を向上させることができるマウスピース、電子気鳴楽器、及び、マウスピースの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明のマウスピースは、電子気鳴楽器の楽器本体に着脱可能に構成されるものであり、所定の硬さの樹脂材料を用いて形成される筒状の硬質部と、前記硬質部の少なくとも先端側の外周面に被覆され前記硬質部よりも軟質な樹脂材料を用いて前記硬質部と一体成形される軟質部と、を備える。
【0008】
本発明の電子気鳴楽器は、前記マウスピースと、前記マウスピースが着脱可能に構成される楽器本体と、を備える。
【0009】
本発明のマウスピースの製造方法は、電子気鳴楽器の楽器本体に着脱可能に構成されるマウスピースの製造方法であって、所定の硬さの樹脂材料を用いて筒状の硬質部を形成する第1工程と、前記第1工程で形成された前記硬質部の少なくとも先端側の外周面に、前記硬質部よりも軟質な樹脂材料の軟質部を一体成形によって被覆する第2工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、第1実施形態における電子気鳴楽器の斜視図であり、(b)は、図1(a)の状態からマウスピースを取外した状態を示す電子気鳴楽器の斜視図である。
図2】電子気鳴楽器の部分拡大断面図である。
図3】回転部材を楽器本体から取外した状態を示す電子気鳴楽器の部分拡大断面図である。
図4】(a)は、金型によってマウスピースの硬質部を成形する様子を示す断面図であり、(b)は、図4(a)の状態から第1上型を離型した状態を示す断面図であり、(c)は、図4(b)の状態から金型によって硬質部と軟質部とを一体的に成形する様子を示す断面図であり、(d)は、図4(c)の状態から第2上型および下型を離型した状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態における電子気鳴楽器の部分拡大断面図である。
図6】(a)は、金型によってマウスピースの硬質部を成形する様子を示す断面図であり、(b)は、図6(a)の状態から第1型、第2型、及び、第1中子を離型した状態を示す断面図であり、(c)は、図6(b)の状態から金型によって硬質部と軟質部とを一体的に成形する様子を示す断面図であり、(d)は、図6(c)の状態から第3型、第4型、及び、第2中子を離型した状態を示す断面図である。
図7】第3実施形態における電子気鳴楽器の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施形態の電子気鳴楽器1について説明する。図1(a)は、第1実施形態における電子気鳴楽器1の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の状態からマウスピース10を取外した状態を示す電子気鳴楽器1の斜視図である。
【0012】
なお、図1の矢印U-D,F-B,L-Rは、それぞれ電子気鳴楽器1の上下方向、前後方向、左右方向を示しており、図1以降においても同様とする。但し、電子気鳴楽器1の上下方向、前後方向、左右方向は、電子気鳴楽器1の使用時の上下方向、前後方向、左右方向とは必ずしも一致しない。
【0013】
また、電子気鳴楽器1の各部を説明する場合には、電子気鳴楽器1の前端側(図1の矢印F方向側)を「先端」側、電子気鳴楽器1の後端側(矢印B方向側)を「基端」側と記載して説明する。
【0014】
図1に示すように、電子気鳴楽器1は、演奏者によって噛み込まれるリードを有しない楽器(例えば、フルスやリコーダー)を模した電子楽器である。電子気鳴楽器1は、内部に各種の電子部品が配設される楽器本体2と、その楽器本体2の外面(例えば、上面や左右側面)に配設される複数の操作子3と、後述する回転部材6の周囲を取り囲むようにして楽器本体2に装着されるマウスピース10とを備える。
【0015】
楽器本体2は、演奏者の呼気を検出するためのブレスセンサ(図示せず)や、そのブレスセンサが配設される基板(図示せず)等の電子部品が内部に配設される筐体である。楽器本体2は、前後方向(矢印F-R方向)に長く形成され、その先端(長手方向一端)にマウスピース10が着脱自在に固定される。
【0016】
マウスピース10は、硬質部20と、その硬質部20の外周面に被覆される軟質部30と、を備え、先端側が先細りの筒状に形成される。硬質部20の内部には空洞が形成されており、その空洞の先端側には後述する吹込口21aが開口形成される。吹込口21aへの呼気の吹き込みに伴う気圧の変化がブレスセンサ(図示せず)によって検出され、その検出結果に基づき、生成する楽音の音量等が制御される。
【0017】
操作子3は、生成する楽音信号の音高や、演奏モード、楽音に付与する効果等の各種の設定を行うためのスイッチである。よって、例えば、操作子3を操作しつつマウスピース10の吹込口21aに呼気が吹き込まれることでフルスやリコーダーを模した電子音が生成される。
【0018】
次いで、図2及び図3を参照して、電子気鳴楽器1の詳細構成について説明する。図2は、電子気鳴楽器1の部分拡大断面図であり、図3は、回転部材6を楽器本体2から取外した状態を示す電子気鳴楽器1の部分拡大断面図である。図2及び図3では、電子気鳴楽器1の左右方向(矢印L-R方向)と直交する平面で切断した断面であって、マウスピース10の吹込口21aを含む平面で切断した断面が図示される。
【0019】
なお、図2及び図3では、図面を簡素化するために、電子気鳴楽器1の一部の図示を省略すると共に、一部の断面のハッチングを省略している。また、以下の説明においては、楽器本体2の前後方向(矢印F-B方向)をマウスピース10の「軸方向」と記載して説明する場合がある。
【0020】
図2に示すように、電子気鳴楽器1は、楽器本体2の先端に形成される筒状の筒状部4と、その筒状部4の内周側に嵌め込まれる付勢部材5と、その付勢部材5に挿入される回転部材6と、その回転部材6を支持する支持部材7と、を備える。
【0021】
筒状部4は、マウスピース10が着脱自在に嵌め込まれる部位ある。筒状部4の外周面には周方向に沿う溝が一対に形成され、それら一対の溝のそれぞれに気密部材4aが嵌め込まれる。気密部材4aは、ゴム状弾性体を用いて形成される環状のOリングである。
【0022】
筒状部4は、一対の気密部材4aの間の領域に形成される貫通孔4bを備え、貫通孔4bは、筒状部4の径方向に延びる孔である。貫通孔4bは、筒状部4の周方向等間隔に複数(本実施形態では、4個)形成され、それら複数の貫通孔4bに付勢部材5が嵌め込まれる。
【0023】
付勢部材5は、先端側が閉塞される筒状の本体部5aと、その本体部5aの外周面から径方向に突出する複数の突部5bと、本体部5aの前面から突出する付勢部5cと、その付勢部5cの上方側に形成される導入管5dと、を備え、それら各部がゴム状弾性体を用いて一体的に形成される。
【0024】
付勢部材5の突部5bは本体部5aの外周面に複数(本実施形態では、4個)形成され、それら複数の突部5bが筒状部4の貫通孔4bに嵌め込まれることにより、筒状部4の内周側に付勢部材5が固定される。付勢部材5の付勢部5cは、回転部材6を下方に付勢するための部位である。付勢部5cは、略筒状に形成されており、付勢部5cの内周側に回転部材6が挿通される。
【0025】
導入管5dは、図示しないブレスセンサに呼気を導入するための管である。導入管5dは、本体部5aの前面側と後面側とを接続し、マウスピース10の吹込口21aから吹き込まれる呼気が導入管5dを通してブレスセンサに導入される。この呼気の検出に基づいて楽音の生成が行われるが、リード付きのマウスピース(図示せず)が筒状部4に装着された場合には、回転部材6によってリードの噛み込み量が検出され、その噛み込み量に応じた楽音が生成されるようになっている。
【0026】
回転部材6は、長手方向中央に回転軸6aが形成される棒状の部材である。回転軸6aは、左右に軸を向ける姿勢で回転部材6の側面から突出して形成され、この回転軸6aが支持部材7の貫通孔7a(図3参照)に嵌め込まれる。
【0027】
支持部材7は、筒状部4の内周側(楽器本体2)に固定されつつ筒状部4の先端側に延びるようにして設けられ、支持部材7の先端側に回転部材6の回転軸6aが回転可能に支持される。支持部材7の先端部分が付勢部材5の付勢部5cに嵌め込まれることにより、付勢部5cに回転部材6が挿入される。これにより、回転軸6aよりも先端側において回転部材6の一部が付勢部5cによって被覆される。
【0028】
リード付きのマウスピース(図示せず)が筒状部4に装着された場合には、そのリードの内面に回転部材6の先端が当接するようになっている。付勢部5cは、その当接状態を形成するために回転部材6の先端側をリードの内面(下方)に向けて付勢するための部位である。
【0029】
回転部材6がリードに当接した状態からリードが噛み込まれることにより、回転部材6が回転軸6a回りに回転し、その回転量が図示しない光センサによって計測されるようになっている。
【0030】
このように、リード付きのマウスピースが装着された際のリードの噛み込み量を検出するために、回転部材6の先端はマウスピースの内周側に向けて突出するように設けられている。よって、マウスピース10が筒状部4から取外された状態においては(図1参照)、回転部材6の先端側が楽器本体2から露出するようになっている。
【0031】
この場合、マウスピース10の全体が柔らかい材質(例えば、ゴム状弾性体)を用いて形成される構成であると、マウスピース10を咥えた際の感触を向上させることができる一方で、マウスピース10に外力が加わると、マウスピース10の変形によって回転部材6にも外力が加わるおそれがある。これに対して本実施形態では、マウスピース10を咥えた際の感触を向上させつつ、マウスピース10を装着した状態で回転部材6を保護できる構成となっている。この構成について、以下に説明する。
【0032】
マウスピース10は、筒状部4に嵌め込まれる硬質部20と、その硬質部20の外周面に被覆される軟質部30と、から構成されている。硬質部20は、硬質部20の先端側の部位を構成する小径部21と、その小径部21の基端に接続される大径部22と、その大径部22の基端に接続される筒部23と、を備え、各部が樹脂材料を用いて一体的に形成されている。
【0033】
小径部21、大径部22、及び、筒部23の各部は、それぞれ内周側に空洞を有する筒状に形成されており、硬質部20の先端部分を構成する小径部21には吹込口21aが開口形成される。
【0034】
一方、硬質部20の基端部分を構成する筒部23は、その内径が筒状部4の外径よりも僅かに大きくされており、筒部23が筒状部4に着脱自在に構成される。筒部23が筒状部4に嵌め込まれた状態においては、回転部材6の先端部分(楽器本体2から露出する部分の全体)の周囲が硬質部20の小径部21及び大径部22によって取り囲まれる。
【0035】
硬質部20は、所定の硬さを有する樹脂材料(本実施形態では、ABS樹脂)を用いて形成されているため、マウスピース10に外力が加わった場合であっても、その外力で硬質部20の小径部21や大径部22(回転部材6を取り囲む部位)が変形することを抑制できる。これにより、マウスピース10に加わる外力が回転部材6に及ぶことを抑制できるので、回転部材6の破損を抑制できる。
【0036】
一方、硬質部20の先端側(演奏者によって咥えられることが想定される領域)に形成される小径部21の外周面には、その全周にわたって軟質部30が被覆されている。軟質部30は、所定の柔軟性を有し硬質部20よりも軟質の樹脂材料(本実施形態では、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー)を用いて形成されるため、演奏者が軟質部30を咥えた際に演奏者の歯と軟質部30とが接触しても、その接触による不快感を抑制できる。
【0037】
即ち、本実施形態のマウスピース10によれば、硬質部20によって回転部材6の破損を抑制しつつ、マウスピース10を咥えた際の感触を軟質部30によって向上させることができる。
【0038】
なお、硬質部20の「所定の硬さ」とは、電子気鳴楽器1の使用時に想定される外力(例えば、演奏者が電子気鳴楽器1を手元から落とした際の外力)が加わった際に硬質部20が変形しない程度の硬さである。また、軟質部30の「所定の柔軟性」とは、演奏者の歯と軟質部30とが接触した場合に、その接触による不快感(接触音の発生)を抑制できる程度の柔らかさである。
【0039】
ここで、単にマウスピース10を咥えた際の感触を軟質部30によって向上させることを目的とする場合には、硬質部20と軟質部30とを別体に構成することも可能である。かかる構成の場合には、例えば、硬質部20の外周面に孔を設けると共に、その孔に嵌め込み(引っ掛け)可能な突起を軟質部30に設けることで硬質部20に軟質部30を固定すれば良い。
【0040】
しかしながら、硬質部20と軟質部30とが別体である場合、硬質部20から外れた軟質部30が演奏者に誤飲されるおそれや、硬質部20と軟質部30との間(軟質部30の嵌め込み部分)で気密漏れが生じるおそれがある。その気密漏れを防ぐために硬質部20と軟質部30とを接着剤で接着させる場合、材質(硬さ)の異なる樹脂材料どうしを強く接着させる点と、接着剤が口に入っても安全である点とを両立させる接着剤を選定することが困難となる。
【0041】
これに対して本実施形態では、硬質部20及び軟質部30が樹脂材料を用いて一体的に形成(一体成形)されている。これにより、硬質部20と軟質部30との間に気密漏れが生じることや、硬質部20から軟質部30が外れることを抑制できる。更に、接着剤を用いることなく、硬質部20と軟質部30とを強く接着(融着)させることができる(接着剤が演奏者の口に入ることが無い)ので、安全性を向上させることができる。
【0042】
また、硬質部20の小径部21及び大径部22は、それぞれ外径および内径が先端側ほど小さくされる筒状に形成される。より具体的には、硬質部20の先端側の部位を構成する小径部21は、円錐台状の外周面を有しており、その小径部21の基端に接続される大径部22も同様に、円錐台状の外周面を有している。大径部22の先端の外径は、小径部21の基端の外径よりも大きくされているため、小径部21と大径部22との接続部分には段差が形成されている。
【0043】
そして、その段差を埋めるようにして軟質部30が小径部21の外周面に被覆されるため、大径部22の外周面と軟質部30の外周面とを面一にし易くできる(本実施形態では、面一になっている)。これにより、演奏者が大径部22と軟質部30との境界部分を咥えた際の感触が低下することを抑制できると共に、マウスピース10の外観を向上させることができる。
【0044】
更に、大径部22の外周面と軟質部30の外周面とを面一とすることにより、大径部22と軟質部30とによって形成されるマウスピース10の外周面を、先端側ほど外径が小さい円錐台状に形成することができる。これにより、筒状の吹き口を有する楽器(例えば、フルス)を咥えた感触に近付けることができる。更に、子供から大人まで(口の大きさによらず)マウスピース10を咥え易い形状にできる。
【0045】
また、小径部21の基端と大径部22の先端とを接続する接続面24(大径部22の先端面)には、大径部22の基端側に凹む凹部25が形成される。凹部25には軟質部30の基端部分が埋め込まれた状態で接着されているため、凹部25が非形成とされる場合に比べて軟質部30の基端部分の接着面積を増大させることができる。これにより、軟質部30の基端側が硬質部20から剥がれることを抑制できる。
【0046】
更に、凹部25に軟質部30の基端部分が埋め込まれているため、仮に、軟質部30の基端側の一部と硬質部20との接着(例えば、接続面24や凹部25における接着)が剥がれても、硬質部20から軟質部30が浮き上がることを凹部25と軟質部30との引っ掛かりによって規制できる。
【0047】
なお、本実施形態では、小径部21の外周面に連続するようにして凹部25が形成され(接続面24の内縁部分に凹部25が形成され)、凹部25が接続面24の全周にわたって円環状に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、径方向における接続面24の中央付近に凹部25を形成しても良いし、接続面24において凹部25を周方向に断続的に形成する構成でも良い。この構成においても、硬質部20からの軟質部30の浮き上がりを凹部25と軟質部30との引っ掛かりによって規制できる。
【0048】
図3に示すように、電子気鳴楽器1は、回転部材6の回転軸6a(図2参照)を支持部材7の貫通孔7aから取外すことができるように構成されている。即ち、回転部材6は、楽器本体2に対して着脱自在に構成される。回転部材6が取外された状態の楽器本体2にマウスピース10が装着された場合においても、硬質部20には軟質部30が被覆されているので、マウスピース10を咥えた際の感触を軟質部30によって向上させることができる。
【0049】
次いで、図4を参照して、マウスピース10の製造方法について説明する。図4(a)は、金型100によってマウスピース10の硬質部20を成形する様子を示す断面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態から第1上型101を離型した状態を示す断面図である。図4(c)は、図4(b)の状態から金型100によって硬質部20と軟質部30とを一体的に成形する様子を示す断面図であり、図4(d)は、図4(c)の状態から第2上型103および下型102を離型した状態を示す断面図である。なお、図4では、図面を簡素化するために、金型100については断面部分のみを図示している。
【0050】
図4に示すように、マウスピース10の硬質部20を製造する金型100は、第1上型101及び下型102を備える。第1上型101は、その下端側から上方に延びる円錐台状の成形面として構成される第1成形面101aと(図4(b)参照)、その第1成形面101aの上端部分に接続され円錐台状の成形面として構成される第2成形面101bと、を備える。第1成形面101aは、硬質部20の大径部22を形成するための部位であり、第2成形面101bは、硬質部20の小径部21を形成するための部位である。
【0051】
第1成形面101aの上端の直径は、第2成形面101bの下端の直径よりも大きくされ、第1成形面101a及び第2成形面101bを接続する接続面101cには、下方に突出する突起101dが形成される。突起101dは、接続面101cの全周にわたって(円環状に)形成されており、この突起101dは、硬質部20の凹部25を形成するための部位である。
【0052】
下型102は、第1上型101の第2成形面101bよりも僅かに小径の円錐台状に形成され、下型102の上面を第2成形面101bの上端面に当接させることにより(図4(a)参照)、硬質部20を形成するためのキャビティが形成される。そのキャビティ内に加熱溶融された樹脂材料を注入口(図示せず)から注入した後、その樹脂材料を冷却(固化)させることで硬質部20を形成する(第1工程)。
【0053】
硬質部20を固化させた後、硬質部20を第1上型101から離型する(図4(b)参照)。硬質部20の小径部21及び大径部22は、それぞれ先端側ほど内径および外径が小さくされる筒状に形成され、径方向内側を向く凹部25の側面は、マウスピース10の軸方向(図4の上下方向)に延びる直線状とされているため、マウスピース10の軸方向での離型に対して硬質部20がアンダーカットを有さない形状となっている。
【0054】
このように、硬質部20がアンダーカットを有さない形状とされるため、マウスピース10の軸方向で(2方向で)離型を行うことができる。よって、径方向で離型を行う場合(図6参照)のように、軸方向に延びるパーティングラインが硬質部20の外周面に形成されることがないため、マウスピース10の外観を向上させることができる。更に、マウスピース10の軸方向で(2方向で)離型することができるので、金型100の製造コストを低減させることができる。
【0055】
硬質部20を第1上型101から離型した後、硬質部20が嵌め込まれた状態の下型102を第2上型103に挿入する。第2上型103は、円錐台状の成形面103a(図4(d)参照)と、その成形面103aの上面から下方に突出する凸部103bと、を備える。
【0056】
第2上型103の成形面103aは、第1上型101の第1成形面101a(図4(b)参照)と同径の円錐台状の成形面である。よって、第2上型103の凸部103bに下型102の上面を当接させることにより(図4(c)参照)、軟質部30を形成するためのキャビティが形成される。そのキャビティ内に注入口(図示せず)から加熱溶融された樹脂材料を注入した後、その樹脂材料を冷却(固化)させることで軟質部30を形成する。これにより、硬質部20及び軟質部30が一体成形される(第2工程)。
【0057】
このように、本実施形態では、硬質部20及び軟質部30を成形する際の下型102が共通のものとなっているが、これは、硬質部20の内周面側に軟質部30が回り込まない構成とされているためである。即ち、後述する第2実施形態のように(図6参照)、硬質部の内周側に軟質部が回り込む構成であると、硬質部の成形時と、軟質部の成形時とにおいて異なる形状の下型(中子)を用いる必要がある。言い換えると、軟質部を成形する際に、硬質部を成形した下型(中子)から硬質部を取外し、別の下型(中子)に硬質部を嵌め込む作業が必要となるため、マウスピースの成形時の工数が増加する。
【0058】
これに対して本実施形態では、硬質部20の内周面側に軟質部30が回り込まない構成とされるので、硬質部20及び軟質部30を成形する際の下型102を共通のものとすることができる。即ち、硬質部20を成形した下型102から硬質部20を取外す作業を不要にできるので、マウスピースの成形時の工数を低減させることができる。
【0059】
硬質部20及び軟質部30を一体成形した後、硬質部20及び軟質部30を第2上型103及び下型102から離型することでマウスピース10の製造が完了する(図4(d)参照)。この場合においても、硬質部20及び軟質部30がアンダーカットを有さない形状となっているため、マウスピース10の軸方向で(2方向で)第2上型103及び下型102を離型することができる。よって、軟質部30にパーティングラインが形成されることを抑制できるので、演奏者が軟質部30を咥えた際の感触を向上させることや、マウスピース10の外観を向上させることができる。更に、マウスピース10の軸方向で(2方向で)離型することができるので、金型100の製造コストを低減させることができる。
【0060】
ここで、硬質部20と軟質部30とを一体成形する場合、軟質部30が冷却(固化)される際に、マウスピース10の径方向(図4の左右方向)や軸方向(図4の上下方向)で軟質部30が収縮する。
【0061】
この場合、軟質部30の直径が縮まるような収縮は、軟質部30の内周側の硬質部20によって規制できるので、その収縮によって硬質部20と軟質部30との接着(例えば、接続面24や凹部25における接着)が剥がれることは比較的生じ難い。しかし、マウスピース10の軸方向で軟質部30が収縮すると、その収縮によって硬質部20と軟質部30との接着が剥がれるおそれがある。
【0062】
即ち、例えば、径方向に凹む凹部や貫通孔が硬質部20に形成され、その凹部や貫通孔に軟質部30が回り込む(埋め込まれる)構成であれば、その凹部や貫通孔における硬質部20と軟質部30との引っ掛かりにより、軸方向での軟質部30の収縮を規制できる。しかし、本実施形態のように、硬質部20が軸方向での離型に対するアンダーカットを有さない形状である場合、軸方向で(2方向で)離型することができる等の効果が得られる一方で、軸方向での軟質部30の収縮を規制するような引っ掛かりを形成し難くなる。
【0063】
これに対して本実施形態では、硬質部20の小径部21の外周面から小径部21の先端面にかけて軟質部30が被覆されるため、軟質部30が軸方向で収縮しようとした場合に、その収縮を小径部21の先端面と軟質部30との引っ掛かりによって規制できる。即ち、基端側に比べて接着面積が小さく(周長が短く)、軟質部30の接着が剥がれ易い先端側で軟質部30の軸方向での収縮を規制することにより、軟質部30の先端側で接着が剥がれることを効果的に抑制できる。
【0064】
更に、上述した通り、軟質部30の基端側は、凹部25に埋め込まれた状態で接着されているため、凹部25と軟質部30との接着面積が大きく確保されている。これにより、小径部21の先端面での引っ掛かりと、接着面積の大きい凹部25との2点(軸方向で離れた2箇所)で軟質部30の軸方向の収縮を規制できる。よって、硬質部20が軸方向での離型に対するアンダーカットを有さない場合であっても、軟質部30の収縮による硬質部20と軟質部30との接着の剥がれを抑制できる。
【0065】
次いで、図5~7を参照して、第2実施形態および第3実施形態について説明する。第1実施形態では、接続面24に形成される凹部25に軟質部30の基端側が埋め込まれる場合を説明した。これに対して第2,3実施形態では、硬質部の外周面に形成される凹み又は貫通孔として構成される埋込部に軟質部の基端側が埋め込まれる場合について説明する。
【0066】
まず、図5を参照して、第2実施形態における電子気鳴楽器1について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図5は、第2実施形態における電子気鳴楽器1の部分拡大断面図である。なお、図5では、図2に対応する部分での断面が図示される。
【0067】
図5に示すように、第2実施形態における電子気鳴楽器1は、回転部材6を備えていない点と、マウスピース210の構成が第1実施形態のマウスピース10と異なる点を除き、第1実施形態における電子気鳴楽器1と同一の構成とされる。マウスピース210は、硬質部220に埋込部226が形成される。硬質部220は、凹部25(図2参照)に替えて埋込部226が形成される点を除き、第1実施形態の硬質部20と同一の構成である。埋込部226は、接続面24に連なるようにして小径部21の基端部分に貫通形成される。埋込部226は、小径部21の外周面において周方向に断続して(本実施形態では、2個)設けられており、その埋込部226に軟質部230の基端側が埋め込まれる。
【0068】
軟質部230は、その基端側に第1屈曲部231及び第2屈曲部232が形成される点を除き、第1実施形態の軟質部30と同一の構成である。第1屈曲部231は、軟質部230の基端から硬質部220の内周側に向けて屈曲し、硬質部220の埋込部226に第1屈曲部231が埋め込まれた状態で接着されている。
【0069】
このように、硬質部220の埋込部226に埋め込むようにして第1屈曲部231を接着させることにより、例えば、埋込部226を非形成とし、接続面24のみに軟質部30の基端部分が接着される場合に比べ、埋込部226と軟質部30の第1屈曲部231との接着面積を増大させることができる。これにより、軟質部30の基端側が硬質部220から剥がれることを抑制できる。
【0070】
更に、第1屈曲部231の内縁からは硬質部220の基端側に向けて第2屈曲部232が屈曲し、その第2屈曲部232が硬質部220の内周面に回り込むようにして接着されている。これにより、仮に、軟質部230の基端側の一部と硬質部220との接着(例えば、接続面24や埋込部226における接着)が剥がれても、硬質部220からの軟質部230の基端側が浮き上がることを硬質部220の内周面と第2屈曲部232との引っ掛かりによって規制できる。
【0071】
また、本実施形態のように、回転部材6(図2参照)を備えていない電子気鳴楽器1にマウスピース210が装着された場合には、硬質部220には軟質部230が被覆されているので、マウスピース210を咥えた際の感触を軟質部230によって向上させることができる。一方、第1実施形態のように、回転部材6(図2参照)を備える電子気鳴楽器1にマウスピース210が装着された場合には、硬質部220によって回転部材6の破損を抑制しつつ、マウスピース210を咥えた際の感触を軟質部230によって向上させることができる。
【0072】
次いで、図6を参照して、マウスピース210の製造方法について説明する。図6(a)は、金型200によってマウスピース210の硬質部220を成形する様子を示す断面図であり、図6(b)は、図6(a)の状態から第1型201、第2型202、及び、第1中子203を離型した状態を示す断面図である。
【0073】
図6(c)は、図6(b)の状態から金型200によって硬質部220と軟質部230とを一体的に成形する様子を示す断面図であり、図6(d)は、図6(c)の状態から第2中子204、第3型205、及び、第4型206を離型した状態を示す断面図である。なお、図6では、図面を簡素化するために、金型200については断面部分のみを図示している。
【0074】
図6に示すように、マウスピース210の硬質部220を製造する金型200は、第1型201、第2型202、及び、第1中子203を備える。第1型201及び第2型202は、それぞれマウスピース210の径方向(図6の左右方向)で離型が行われる金型である。第1型201及び第2型202が型締めされた状態においては、第1型201及び第2型202の第1成形面201a,202a(図6(b)参照)によって円錐台状の成形面が形成され、第2成形面201b,202bによって円錐台状の成形面が形成される。
【0075】
第1成形面201a,202aは、硬質部220の大径部22を形成するための部位であり、第2成形面201b,202bは、硬質部220の小径部21を形成するための部位である。
【0076】
第1成形面201a,202aの上端の直径は、第2成形面201b,202bの下端の直径よりも大きくされ、第1成形面201a,202aと第2成形面201b,202bとの接続部分からは、左右方向内側に向けて突出する突起201c,202cが形成される。突起201c,202cは、第1型201及び第2型202のそれぞれに1つずつ形成されており、これらの突起201c,202cは、硬質部220に貫通する埋込部226を形成するための部位である。
【0077】
第1中子203は、その下端側から上方に延びる円錐台状の大径部203aと、その大径部203aの上端に接続され下端の外径が大径部203aの上端の外径よりも小さくされる円錐台状の小径部203bと、を備える。
【0078】
大径部203aの外径は、第1成形面201a,202aの内径よりも僅かに小さくされ、小径部203bの外径は、第2成形面201b,202bの内径よりも僅かに小さくされる。第1中子203の上端面を第1成形面201a,202aの上面に当接させて型締めした状態においては(図6(a)参照)、第1中子203の大径部203aの外周面に第1型201及び第2型202の突起201c,202cが当接するようになっている。
【0079】
これにより、硬質部220を形成するためのキャビティが形成される。そのキャビティ内に注入口(図示せず)から加熱溶融された樹脂材料を注入した後、その樹脂材料を冷却(固化)させることで硬質部220を形成する。
【0080】
硬質部220を固化させた後、硬質部220を第1型201、第2型202、及び、第1中子203から離型する(図6(b)参照)。この場合、本実施形態では、硬質部220に埋込部226が形成されている(軸方向の離型に対してアンダーカットを有している)ため、マウスピース10の径方向および軸方向の3方向で第1型201、第2型202、及び、第1中子203の離型が行われる。
【0081】
硬質部220を離型した後、第2中子204に硬質部220を嵌め込んだ状態で、第3型205及び第4型206を型締めする。第2中子204は、小径部203bの上下方向寸法が長くなっている点を除き、第1中子203と同一の構成である。
【0082】
また、第3型205及び第4型206が型締めされた状態においては、円錐台状の成形面205a,206aが形成される。この成形面205a,206aは、第1型201及び第2型202の第1成形面201a,202aと同径の円錐台状に形成される。これにより、第3型205及び第4型206の成形面205a,206aの上端面に第2中子204の上面を当接させることにより、軟質部230を形成するためのキャビティが形成される。そのキャビティ内に注入口(図示せず)から加熱溶融された樹脂材料を注入した後、その樹脂材料を冷却(固化)させることで軟質部230を形成する。これにより、硬質部220及び軟質部230が一体成形される。
【0083】
次いで、硬質部220及び軟質部230を第2中子204、第3型205、及び、第4型206から離型することにより、マウスピース210の製造が完了する(図6(d)参照)。
【0084】
この場合、上述した第1実施形態と同様に、軟質部230が冷却(固化)される際に、マウスピース210の径方向(図6の左右方向)や軸方向(図6の上下方向)で軟質部230が収縮する。
【0085】
これに対して本実施形態では、小径部21の先端面から小径部21の外周面にかけて軟質部230が被覆され、軟質部230の基端側の第1屈曲部231は、埋込部226に埋め込まれた状態で接着されている。これにより、小径部21の先端面および軟質部230の引っ掛かりと、埋込部226及び第1屈曲部231の引っ掛かりとによって軟質部230の軸方向の収縮を規制できる。よって、軟質部230の収縮による硬質部220と軟質部230との接着の剥がれを抑制できる。
【0086】
次いで、図7を参照して、第3実施形態における電子気鳴楽器1について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図7は、第3実施形態における電子気鳴楽器1の部分拡大断面図である。なお、図7では、図2に対応する部分での断面が図示される。
【0087】
図7に示すように、第3実施形態における電子気鳴楽器1のマウスピース310は、硬質部320に埋込部327が形成される。硬質部320は、凹部25(図2参照)に替えて埋込部327が形成される点を除き、第1実施形態の硬質部20と同一の構成である。埋込部327は、接続面24に連なるようにして凹む凹みであり、小径部21の基端側の外周面に形成される。埋込部327は、小径部21の外周面において周方向に連続して形成されており、この埋込部327に軟質部330の基端側が埋め込まれる。
【0088】
軟質部330は、その基端が硬質部320の内周側に向けて屈曲される点を除き、第1実施形態の軟質部30と同一の構成である。軟質部330の基端の屈曲部分は、硬質部320の埋込部327に埋め込まれた状態で接着されている。
【0089】
このように、硬質部320の埋込部327に埋め込むようにして軟質部330の基端部分を接着させることにより、例えば、埋込部327を非形成として接続面24のみに軟質部330の基端部分を接着させる場合に比べ、埋込部327と軟質部330の基端部分との接着面積を増大させることができる。これにより、軟質部330の基端側が硬質部320から剥がれることを抑制できる。
【0090】
また、小径部21の先端面から小径部21の外周面にかけて軟質部330が被覆され、軟質部330の基端部分が埋込部327に埋め込まれた状態で接着されるため、小径部21の先端面および軟質部330の引っ掛かりと、埋込部327及び軟質部330の屈曲部分の引っ掛かりとにより、金型成形時における軟質部330の軸方向での収縮を規制できる。よって、軟質部330の収縮による硬質部320と軟質部330との接着の剥がれを抑制できる。
【0091】
なお、マウスピース310の製造方法についての詳細な説明は省略するが、第2実施形態の第1型201及び第2型202の突起201c,202c(図6(b)参照)を、硬質部220に貫通しない程度の寸法に形成すれば良い。
【0092】
以上に説明した各実施形態の電子気鳴楽器1及びマウスピース10,210,310によれば、硬質部20,220,320及び軟質部30,230,330によって回転部材6が取り囲まれるので、硬質部20,220,320によって回転部材6の破損を抑制しつつ、マウスピース10,210,310を咥えた際の感触を軟質部30,230,330によって向上させることができる。
【0093】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0094】
上記第1,3実施形態では、楽器本体2に回転部材6が着脱自在に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、楽器本体2に対して回転部材6が取外し不能とされる構成でも良い。また、上記第1,3実施形態では、回転部材6を備える電子気鳴楽器1にマウスピース10,310が装着される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2実施形態のような回転部材6に相当する構成を元より備えていない(回転部材6を使用する演奏が行われない)電子気鳴楽器1にマウスピース10,310を装着することは当然可能である。回転部材6を備えていない電子気鳴楽器にマウスピース10,310が装着された場合においても、マウスピース10,310を咥えた際の感触を軟質部30,330によって向上させることができる。
【0095】
上記各実施形態では、硬質部20,220,320が小径部21を備え、その小径部21に軟質部30,230,330が被覆される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、硬質部の外周面を一定の勾配を有するテーパ状(段差を有さない形状)とし、その外周面に軟質部を被覆する構成でも良い。即ち、軟質部の外周面と硬質部の外周面との境界部分に段差を有する構成でも良い。また、硬質部の外周面の全体を軟質部で被覆する構成でも良い。
【0096】
上記各実施形態では、硬質部20,220,320及び軟質部30,230,330によって形成されるマウスピース10,210,310の外周面が円錐台状である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、マウスピースの外周面は、直径が一定の筒状であっても良いし、その筒状のマウスピースの先端部分に外径が一部大きくされる部位を設けても良い。即ち、マウスピースの外形形状は適宜設定でき、その外形形状に応じて硬質部や軟質部の形状を決めれば良い。
【0097】
上記各実施形態では、硬質部20,220,320(小径部21)の外周面から先端面にかけて軟質部30,230,330が被覆される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、硬質部20,220,320(小径部21)の外周面のみに軟質部30,230,330を被覆する構成でも良い。
【0098】
上記各実施形態では、硬質部20,220,320に形成される凹部25や埋込部226,327に軟質部30,230,330の基端側が埋め込まれる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凹部25や埋込部226,327を省略しても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 電子気鳴楽器
2 楽器本体
6 回転部材
10,210,310 マウスピース
20,220,320 硬質部
21 小径部
22 大径部
24 接続面
25 凹部
226,327 埋込部
30,230,330 軟質部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7