(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】タイヤモールド及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230612BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
(21)【出願番号】P 2019150165
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 弘幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-179751(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126710(WO,A1)
【文献】特開2017-213858(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200828(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0001561(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを成形するための成形面を有するタイヤモールドにおいて、
前記成形面を構成する内面部に孔部を有するモールド本体と、
前記モールド本体に着脱自在であって、前記孔部に嵌められるモールド片と、を備え、
前記モールド片は、前記成形面に開口されるベントホールを備え
、
前記モールド本体は、前記モールド片が工具によって前記孔部から打ち出されるために、外面部に開口されて前記孔部まで貫通する貫通口部を備え、
前記ベントホールは、前記貫通口部から離れて配置され、
前記タイヤモールドは、前記ベントホールと前記貫通口部とを連通する連通部を備える、タイヤモールド。
【請求項2】
前記モールド片は、前記ベントホールを開閉する開閉弁を備え、
前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備える、請求項
1に記載のタイヤモールド。
【請求項3】
前記モールド本体及び前記モールド片は、熱膨張性を有し、
前記モールド本体は、前記成形面に開口されるベントホールを備え、
前記モールド片の前記ベントホールの開口面積の大きさの平均は、前記モールド本体の前記ベントホールの開口面積の大きさの平均よりも、小さい、請求項1
又は2に記載のタイヤモールド。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項のタイヤモールドによって
未加硫タイヤを加硫する工程を備えるタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモールド及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤモールドは、タイヤを成形するための成形面を構成する内面部に孔部を有するモールド本体と、モールド本体に着脱自在であって、孔部に嵌められるモールド片とを備えている(例えば、特許文献1)。そして、モールド本体と孔部との間に隙間が形成されることによって、タイヤモールドの内部の空気が、タイヤモールドの外部に吸引されている。
【0003】
ところで、例えば、モールド本体と孔部との間の隙間の大きさが、小さい場合や、モールド本体と孔部との間に、隙間が形成できない場合がある。斯かる場合には、例えば、モールド片の成形面の周辺に、気体が溜まるため、モールド片で成形されるタイヤの部分に、ゴム欠損が発生し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、第1の課題は、モールド片で成形されるタイヤの部分にゴム欠損が発生することを抑制することができるタイヤモールドを提供することである。
【0006】
また、第2の課題は、モールド片で成形されるタイヤの部分にゴム欠損が発生することを抑制されたタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タイヤモールドは、タイヤを成形するための成形面を有するタイヤモールドにおいて、前記成形面を構成する内面部に孔部を有するモールド本体と、前記モールド本体に着脱自在であって、前記孔部に嵌められるモールド片と、を備え、前記モールド片は、前記成形面に開口されるベントホールを備える。
【0008】
また、タイヤモールドにおいては、前記モールド本体は、前記モールド片が工具によって前記孔部から打ち出されるために、外面部に開口されて前記孔部まで貫通する貫通口部を備え、前記ベントホールは、前記貫通口部から離れて配置され、前記タイヤモールドは、前記ベントホールと前記貫通口部とを連通する連通部を備える、という構成でもよい。
【0009】
また、タイヤモールドにおいては、前記モールド片は、前記ベントホールを開閉する開閉弁を備え、前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備える、という構成でもよい。
【0010】
また、タイヤモールドにおいては、前記モールド本体及び前記モールド片は、熱膨張性を有し、前記モールド本体は、前記成形面に開口されるベントホールを備え、前記モールド片の前記ベントホールの開口面積の大きさの平均は、前記モールド本体の前記ベントホールの開口面積の大きさの平均よりも、小さい、という構成でもよい。
【0011】
また、タイヤは、前記のタイヤモールドによって製造される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るタイヤモールドの模式図であって、型開き状態を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るタイヤモールドの模式図であって、型閉め状態を示す図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るタイヤモールドの要部断面図であって、型閉め状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4と同じ部分の断面図であって、モールド片がモールド本体から取り外された状態を示す図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係るタイヤモールドの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、タイヤモールド及びタイヤにおける一実施形態について、
図1~
図6を参照しながら説明する。なお、各図(
図7も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1に示すように、タイヤ10は、ビードを有する一対(
図1においては、1つのみ図示している)のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びる一対(
図1においては、1つのみ図示している)のサイドウォール部12とを備えている。また、タイヤ10は、一対のサイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド部13を備えている。
【0015】
図1~
図3に示すように、タイヤモールド2は、タイヤ加硫装置1に複数備えられている。複数のタイヤモールド2は、成形面2dがタイヤ10のサイドウォール部12に接する一対のサイドモールド2a,2aと、成形面2dがタイヤ10のトレッド部13に接する複数のトレッドモールド2bと、タイヤ10のビード部11が嵌合される一対のビードモールド2c,2cとを備えている。
【0016】
各図において、第1の方向D1は、タイヤ10の回転中心であるタイヤ回転軸と平行なタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ10の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。なお、タイヤモールド2における方向D1~D3は、タイヤ加硫装置1で成形されるタイヤ10に対する方向(タイヤ幅方向D1、タイヤ径方向D2、タイヤ周方向D3)を使用する。
【0017】
一対のサイドモールド2a,2aは、成形室1aの内部にセットされるタイヤ10に対して、タイヤ幅方向D1に離間して配置されている。また、複数のトレッドモールド2bは、一対のサイドモールド2a,2aの側方に配置され、且つ、成形室1aの内部にセットされるタイヤ10に対して、タイヤ周方向D3に沿って環状に並列されている。
【0018】
なお、タイヤ加硫装置1は、サイドモールド2aの外側を支持するサイドベース1bと、トレッドモールド2bの外側を支持するトレッドベース1cとを備えている。また、タイヤ加硫装置1は、トレッドモールド2b及びトレッドベース1cをタイヤ径方向D2に移動させる第1移動機構1dと、トレッドモールド2b及びトレッドベース1cと上側のサイドモールド2a及びサイドベース1bとを上下方向に移動させる第2移動機構(図示していない)とを備えている。
【0019】
各移動機構1dによって、一方のサイドモールド2aは、他方のサイドモールド2aに対して、タイヤ幅方向D1で接離可能であり、また、複数のトレッドモールド2bは、サイドモールド2aに対して、タイヤ径方向D2で接離可能である。これにより、複数のモールド2は、
図1に示すように、タイヤ10を出し入れするための型開き位置と、
図2及び
図3に示すように、タイヤ10を成形するための型閉め位置との間を移動可能である。
【0020】
そして、タイヤ加硫装置1は、
図1に示す型開き状態の際に、サイドモールド2aとトレッドモールド2bとが離れているため、タイヤ10の出し入れを可能にする。また、タイヤ加硫装置1は、
図2及び
図3に示す型閉め状態の際に、サイドモールド2aとトレッドモールド2bとが加圧接触しているため、タイヤ10を成形するための閉空間である成形室1aを内部に形成している。
【0021】
サイドモールド2aは、モールド本体3と、モールド本体3に着脱自在であるモールド片4とを備えている。
図4及び
図5に示すように、モールド本体3は、成形面2dを構成する内面部3aに、孔部3bを備えており、モールド片4は、孔部3bに嵌められている。
【0022】
なお、モールド本体3は、内面部3aの一部で成形面2dを構成しており、モールド片4は、内面部4bの全体で成形面2dを構成している。また、モールド片4の成形面2dは、タイヤ10の意匠性や装飾性を高めたり、タイヤ10の情報を表示したりするために、例えば、タイヤ10に文字、数字、図形等を形成する凹凸を備えている。
【0023】
モールド本体3は、成形面2dに開口される第1ベントホール3cを備えている。第1ベントホール3cは、モールド本体3の内面部3aから外面部3dまで直線状に延びている。これにより、第1ベントホール3cは、サイドモールド2aの内部と外部とを連通している。そして、例えば真空ポンプ等の吸気装置(図示していない)によって、サイドモールド2aの内部の気体が、第1ベントホール3cを経由して、外部へ吸引される。なお、第1ベントホール3cの個数は、特に限定されない。
【0024】
また、モールド片4は、成形面2dに開口される第2ベントホール4aを備えている。第2ベントホール4aは、モールド片4の内面部4bから外面部4cまで直線状に延びている。そして、モールド本体3は、外面部3dに開口されて孔部3bまで貫通する貫通口部3eと、第2ベントホール4aと貫通口部3eとを連通する連通部3fとを備えている。これにより、第2ベントホール4a、連通部3f及び貫通口部3eは、協働して、サイドモールド2aの内部と外部とを連通している。
【0025】
そして、例えば吸気装置によって、サイドモールド2aの内部の気体が、第2ベントホール4a、連通部3f及び貫通口部3eを経由して、外部へ吸引される。したがって、モールド片4の成形面2dの周辺に気体が溜まることを抑制することができるため、モールド片4で成形されるタイヤ10の部分にゴム欠損が発生することを抑制することができる。なお、第2ベントホール4aの個数は、特に限定されない。
【0026】
また、貫通口部3eは、直線状に形成されている。そして、モールド片4がモールド本体3から取り外される際に、貫通口部3eに、棒状の工具X1が挿入され、モールド片4の外面部4cが、工具X1に打たれる。このとき、第2ベントホール4aが、貫通口部3eから離れて配置されているため、第2ベントホール4aが工具X1に打たれることを防止することができる。これにより、第2ベントホール4aが変形することを抑制することができる。
【0027】
しかも、連通部3fは、モールド本体3に備えられている。これにより、モールド片4が工具X1によってモールド本体3の孔部3bから打ち出される際に、連通部3fが工具X1に打たれることを防止することができる。したがって、連通部3fが変形することを抑制できるため、第2ベントホール4a、連通部3f及び貫通口部3eによる気体の流路を確実に形成することができる。
【0028】
なお、連通部3fの構成は、特に限定されないが、本実施形態においては、連通部3fは、孔部3bの底面部に溝状に形成されている。これにより、モールド片4がモールド本体3に取り付けれている際に、モールド片4の外面部4cは、モールド本体3の孔部3bの底面部に当たっている。
【0029】
したがって、モールド片4をモールド本体3に取り付ける際には、モールド本体3に対するモールド片4の位置決めが容易となる。しかも、モールド片4がモールド本体3に取り付けれた際には、モールド片4をモールド本体3に対して安定させることができる。なお、
図5においては、工具X1は、断面で図示していない。
【0030】
また、サイドモールド2aは、モールド片4をモールド本体3に固定する固定機構5を備えている。固定機構5の構成は、特に限定されないが、本実施形態においては、固定機構5は、モールド片4に連結される長尺な雄ネジ体5aと、雄ネジ体5aと螺合する雌ネジ体5bとを備えている。なお、
図4及び
図5(
図7も同様)においては、雄ネジ体5a及び雌ネジ体5bは、断面で図示していない。
【0031】
そして、モールド本体3は、孔部3bと連通して雄ネジ体5aに挿入される挿入口部3gと、外面部3dに開口され、雌ネジ体5bに係止される係止口部3hとを備えている。これにより、雌ネジ体5bが雄ネジ体5aと螺合して係止口部3hを係止することにより、モールド片4は、モールド本体3に固定される。
【0032】
ところで、ベントホール3c,4aの内部にゴムが侵入した場合には、タイヤ10を製造した後に、例えば、ドリル等の工具を用いて、ベントホール3c,4aの内部を掃除する必要がある。例えば、ドリルの刃をベントホール3c,4aの内部に挿入することによって、ベントホール3c,4aの内部に詰まったゴムが除去される。
【0033】
それに対して、本実施形態に係るサイドモールド2aにおいては、第2ベントホール4aが貫通口部3eから離れており、第2ベントホール4aと貫通口部3eとが直線状に連接されていない。これにより、例えば、ドリルでベントホール4aの内部を掃除する際に、ドリルの刃の先端がモールド本体3に当たるため、モールド片4がモールド本体3に取り付けられた状態で、第2ベントホール4aの内部を掃除する作業は、困難である(即ち、モールド片4をモールド本体3から取り外す必要がある)。
【0034】
そこで、モールド片4は、全ての第2ベントホール4aに対して、第2ベントホール4aを開閉する開閉弁6を備えている。これにより、開閉弁6が第2ベントホール4aを閉止することによって、ゴムが第2ベントホール4aの内部に侵入することを抑制することができる。したがって、第2ベントホール4aの内部を掃除する作業の必要性を低下させることができる。
【0035】
本実施形態においては、モールド本体3も、第1ベントホール3cを開閉する開閉弁6を備えている。なお、モールド本体3は、全て又は一部の第1ベントホール3cに対して、第1ベントホール3cを開閉する開閉弁6を備えていてもよく、また、全ての第1ベントホール3cに対して、第1ベントホール3cを開閉する開閉弁6を備えていなくてもよい。
【0036】
図6に示すように、開閉弁6は、気体が通過可能な孔7aを有する弁座7と、孔7aを閉止する閉止位置と孔7aを開放する開放位置とに移動可能な弁体8とを備えている。また、開閉弁6は、弁体8が閉止位置から開放位置へ向かうように、弁体8に力を加える加力部6aを備えている。なお、開閉弁6は、ベントホール4a(3c)の内端部に配置されている。
【0037】
弁座7は、ベントホール4a(3c)の内部に固定されている。具体的には、弁座7は、ベントホール4a(3c)内に嵌め込められている。なお、弁座7は、モールド片4(又はモールド本体3)と別体である、という構成に限られず、モールド片4(又はモールド本体3)と一体である、という構成でもよい。
【0038】
弁座7は、筒状に形成されており、弁体8は、弁座7の内部に配置されている。具体的には、弁体8は、弁座7に対して可動となるように、弁座7の孔7aに挿入されている。そして、弁座7及び弁体8は、互いに接する座面7b,8aを備えている。また、加力部6aの構成は、特に限定されないが、本実施形態においては、加力部6aは、弾性力によって弁体8に力を加える弾性体(例えば、コイルばね)としている。
【0039】
図6に示す開閉弁6においては、加力部6aが弁体8に力を加えることによって、弁体8は、弁座7の孔7aを開放する開放位置に位置している。このとき、弁体8の座面8aは、弁座7の座面7bから離れている。これにより、タイヤモールド2の内部とベントホール4a(3c)とが連通しているため、ベントホール4a(3c)は、開状態である。
【0040】
一方、タイヤ10の加硫が進むと、ゴムがベントホール4a(3c)に近づくことによって、タイヤモールド2の内部の圧力が低下したり、ゴムが弁体8に接したりする。それに伴って、弁体8が加力部6aからの力に反して移動し、弁体8が弁座7の孔7aを閉止する閉止位置に位置する。このとき、弁体8の座面8aは、弁座7の座面7bと接している。これにより、タイヤモールド2の内部とベントホール4a(3c)とが連通していないため、ベントホール4a(3c)は、閉状態となる。
【0041】
このように、弁体8が弁座7に対して移動することによって、開閉弁6は、ベントホール4a(3c)を開閉する。なお、弁座7及び弁体8の材質は、特に限定されないが、例えば、弁座7及び弁体8は、ステンレス鋼、鋼鉄等の金属で形成されている、という構成でもよい。また、第1ベントホール3cの開閉弁6も、第2ベントホール4aの開閉弁6と、同じ構成である(但し、異なる大きさである)。
【0042】
また、モールド本体3及びモールド片4の材質は、特に限定されないが、本実施形態においては、モールド本体3及びモールド片4は、温度が上昇するにつれて膨張する熱膨張性を有して、形成されている、という構成である。例えば、モールド本体3及びモールド片4は、ステンレス鋼、鋼鉄、アルミ等の金属で形成されている、という構成でもよい。
【0043】
したがって、タイヤ10の加硫が進むと、モールド本体3及びモールド片4は、加熱されて、熱膨張する。そして、モールド片4がモールド本体3の孔部3bに嵌められているため、モールド片4は、モールド本体3から応力を受ける。このとき、モールド片4のうち、強度が弱い部分、即ち、第2ベントホール4aに応力が作用する。
【0044】
そこで、モールド片4の第2ベントホール4aの開口面積の大きさの平均は、モールド本体3の第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均よりも、小さくなっている。これにより、第2ベントホール4aの強度が低くなり過ぎることを抑制しているため、第2ベントホール4aが変形することを抑制することができている。
【0045】
なお、例えば、全ての第2ベントホール4aの開口面積の大きさは、第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均よりも、小さい、という構成でもよい。また、例えば、第2ベントホール4aの開口面積の大きさは、全ての第1ベントホール3cの開口面積の大きさよりも、小さくなっている、という構成でもよい。これにより、第2ベントホール4aの強度が低くなることをさらに抑制することができる。
【0046】
ここで、「第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均」とは、モールド本体3に設けられる全ての第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均である。また、同様に、「第2ベントホール4aの開口面積の大きさの平均」とは、モールド片4に設けられる全ての第2ベントホール4aの開口面積の大きさの平均である。
【0047】
また、「各ベントホール3c,4aの開口面積の大きさ」とは、当該ベントホール3c,4aの開口面積の大きさの平均である。即ち、各ベントホール3c,4aの開口面積の大きさは、各ベントホール3c,4aの空体積V1を、各ベントホール3c,4aの長さL1で除した値である。
【0048】
以上より、本実施形態に係るタイヤモールド2は、タイヤ10を成形するための成形面2dを有するタイヤモールド2において、前記成形面2dを構成する内面部3aに孔部3bを有するモールド本体3と、前記モールド本体3に着脱自在であって、前記孔部3bに嵌められるモールド片4と、を備え、前記モールド片4は、前記成形面2dに開口されるベントホール4aを備える。
【0049】
斯かる構成によれば、モールド片4が成形面2dに開口されるベントホール4aを備えているため、モールド片4の成形面2dの周辺に気体が溜まることを抑制することができる。これにより、モールド片4で成形されるタイヤ10の部分にゴム欠損が発生することを抑制することができる。そして、本実施形態に係るタイヤモールド2によって製造されるタイヤ10は、モールド片4で成形されるタイヤ10の部分にゴム欠損が発生することを抑制されたタイヤ10となっている。
【0050】
また、本実施形態に係るタイヤモールド2においては、前記モールド本体3は、前記モールド片4が工具X1によって前記孔部3bから打ち出されるために、外面部3dに開口されて前記孔部3bまで貫通する貫通口部3eを備え、前記ベントホール4aは、前記貫通口部3eから離れて配置され、前記タイヤモールド2は、前記ベントホール4aと前記貫通口部3eとを連通する連通部3fを備える、という構成である。
【0051】
斯かる構成によれば、ベントホール4aが貫通口部3eから離れて配置されているため、モールド片4が工具X1によって孔部3bから打ち出される際に、ベントホール4aが工具X1に打たれることを防止することができる。これにより、ベントホール4aが変形することを抑制することができる。なお、連通部3fがベントホール4aと貫通口部3eとを連通しているため、タイヤモールド2の内部の気体を外部へ吸引させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係るタイヤモールド2においては、前記モールド片4は、前記ベントホール4aを開閉する開閉弁6を備え、前記開閉弁6は、前記ベントホール4aの内部に固定される筒状の弁座7と、前記ベントホール4aを閉止する閉止位置と前記ベントホール4aを開放する開放位置とに移動可能な弁体8と、を備える、という構成である。
【0053】
斯かる構成によれば、ベントホール4aが貫通口部3eから離れて配置されているため、モールド片4がモールド本体3に取り付けられた状態で、ベントホール4aの内部を掃除する作業が困難であることに対して、開閉弁6は、ベントホール4aを開閉する。これにより、弁体8が閉止位置に位置することによって、ゴムがベントホール4aの内部に侵入することを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るタイヤモールド2においては、前記モールド本体3及び前記モールド片4は、熱膨張性を有し、前記モールド本体3は、前記成形面2dに開口されるベントホール3cを備え、前記モールド片4の前記ベントホール4aの開口面積の大きさの平均は、前記モールド本体3の前記ベントホール3cの開口面積の大きさの平均よりも、小さい、という構成である。
【0055】
斯かる構成によれば、モールド本体3及びモールド片4が熱膨張することによって、モールド片4のベントホール4aに応力が作用することに対して、モールド片4のベントホール4aの開口面積の大きさは、小さくなっている。これにより、モールド片4のベントホール4aの強度が低くなり過ぎることを抑制している。
【0056】
なお、タイヤモールド2及びタイヤ10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤモールド2及びタイヤ10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0057】
(1)上記実施形態に係るタイヤモールド2においては、ベントホール4aを有するモールド片4とモールド本体3とを備えるタイヤモールド2は、サイドモールド2aである、という構成である。しかしながら、タイヤモールド2は、斯かる構成に限られない。具体的には、ベントホール4aを有するモールド片4とモールド本体3とを備えるタイヤモールド2は、サイドモールド2aとトレッドモールド2bとビードモールド2cとのうち、少なくとも一つのタイヤモールド2であればよい。
【0058】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド2においては、ベントホール4aと貫通口部3eとは、連通部3fを経由して、連通している、という構成である。しかしながら、タイヤモールド2は、斯かる構成に限られない。例えば、
図7に示すように、ベントホール4aは、貫通口部3eと直接に連通している、という構成でもよい。
【0059】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤモールド2においては、モールド片4は、全ての第2ベントホール4aに開閉弁6を備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド2は、斯かる構成に限られない。例えば、モールド片4は、一部の第2ベントホール4aに開閉弁6を備えている、という構成でもよい。
【0060】
また、例えば、
図7に示すように、モールド片4は、全ての第2ベントホール4aに開閉弁6を備えていない、という構成でもよい。なお、第2ベントホール4aに開閉弁6を備えていない構成においては、モールド片4をモールド本体3に取り付けた状態で、第2ベントホール4aの内部を掃除できるように、
図7に示すように、ベントホール4aと貫通口部3eとは、直線状となるように直接に連通してもよい。
【0061】
(4)また、上記実施形態に係るタイヤモールド2においては、連通部3fは、モールド本体3に備えられている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド2は、斯かる構成に限られない。例えば、連通部は、モールド片4に備えられていてもよく、一例として、連通部は、モールド片4の外面部4cに溝状に形成されている、という構成でもよい。また、連通部は、モールド本体3の孔部3bの底面部とモールド片4の外面部4cとの間の隙間で形成されている、という構成でもよい。
【0062】
(5)また、上記実施形態に係るタイヤモールド2においては、モールド片4の第2ベントホール4aの開口面積の大きさの平均は、モールド本体3の第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均よりも、小さい、という構成である。しかしながら、タイヤモールド2は、斯かる構成に限られない。例えば、第2ベントホール4aの開口面積の大きさの平均は、第1ベントホール3cの開口面積の大きさの平均以上である、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…タイヤ加硫装置、1a…成形室、1b…サイドベース、1c…トレッドベース、1d…第1移動機構、2…タイヤモールド、2a…サイドモールド、2b…トレッドモールド、2c…ビードモールド、2d…成形面、3…モールド本体、3a…内面部、3b…孔部、3c…第1ベントホール、3d…外面部、3e…貫通口部、3f…連通部、3g…挿入口部、3h…係止口部、4…モールド片、4a…第2ベントホール、4b…内面部、4c…外面部、5…固定機構、5a…雄ネジ体、5b…雌ネジ体、6…開閉弁、6a…加力部、7…弁座、7a…孔、7b…座面、8…弁体、8a…座面、10…タイヤ、11…ビード部、12…サイドウォール部、13…トレッド部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、X1…工具