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  • 特許-ポリウレタンフォームの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230612BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230612BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230612BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230612BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20230612BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08L75/04
C08K3/36
C08K3/26
C08K9/06
C08G101:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019152865
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2020084173
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018214444
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593139123
【氏名又は名称】株式会社ロジャースイノアック
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】折笠 理加
(72)【発明者】
【氏名】桐山 卓也
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122940(WO,A1)
【文献】特開平09-302273(JP,A)
【文献】特開平09-016011(JP,A)
【文献】特開2005-120339(JP,A)
【文献】特開平11-012378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 75/04
C08K 3/36
C08K 3/26
C08K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物と、泡を保持するための泡保持剤としての疎水性シリカと、軽質炭酸カルシウムとを含むポリウレタン原料混合物と、
造泡用気体と、から得られるポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリウレタン原料混合物において、前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記軽質炭酸カルシウムが10重量部以上かつ150重量部以下であり、前記疎水性シリカが0.8重量部以上である、ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記疎水性シリカは、シリカをシリコーンオイルで表面処理してなる、請求項1に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記疎水性シリカのメタノール湿潤性が40%以上であるか、又は、前記疎水性シリカのDBA吸着量が60mmol/kg以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記疎水性シリカが0.8重量部以上かつ重量部以下である、請求項1から3のうち何れか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォームの見掛け密度が280kg/m以下である、請求項1から4のうち何れか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォームが、厚さ20mmのシート状にして表側に50Jの衝撃エネルギーを垂直に与えたときに、裏側に伝達される衝撃力が8kN未満である衝撃吸収性を有する、請求項1から5のうち何れか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のうち何れか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリウレタン原料混合物と前記造泡用気体とからメカニカルフロス法により前記ポリウレタンフォームを得る、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリウレタンフォームの製造方法として、メカニカルフロス法が示されている。メカニカルフロス法では、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分等を含むポリウレタン原料に不活性ガスを機械的に強制混入することで気泡を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-13304号公報(段落[0008]~[0009])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メカニカルフロス法では、ポリウレタンフォームの密度及び硬度等を容易に調整することができるので、各種用途に適合したポリウレタンフォームを製造することができる。その一例として、衝撃吸収材に用いられるポリウレタンフォームが知られているが、衝撃吸収性の更なる向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一態様は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むポリウレタン原料と造泡用気体とから得られるポリウレタンフォームにおいて、前記ポリウレタン原料には、泡を保持するための泡保持剤としての疎水性シリカと、軽質炭酸カルシウムと、が含まれ、前記ポリオール成分100重量部に対して、前記軽質炭酸カルシウムが10重量部以上である、ポリウレタンフォームである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係るポリウレタンフォームに含まれる疎水性シリカの表面付近の分子構造を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態のポリウレタンフォームは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分を含むポリウレタン原料と造泡用気体とから得られる。ポリウレタン原料には、水及び発泡剤は配合されていないことが好ましい。
【0008】
ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを共重合させたポリエーテルエステルポリオール等を用いることができる。更に、十分な引張強度等を有するフォームとすること等を目的として、ポリマーポリオールを併用することもできる。このポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物を、ポリマーポリオールに対する固形分換算で10~40質量%、好ましくは15~30質量%、グラフト重合させたポリオールであり、各種のポリマーポリオールを特に限定されることなく用いることができる。上記の各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0009】
ポリオール成分は、上記のポリオールに加え、植物由来ポリオールを含んでもよい。植物由来ポリオールとしては、ひまし油系ポリオール、大豆油系ポリオール、パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等が挙げられる。ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とポリオールとの反応物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等を挙げることができる。ひまし油又はひまし油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロプレングリコールなどの2価のポリオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトールなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。ひまし油系ポリオールの配合比率は、ポリオール成分全体に対し、20~80質量%であることが好ましい。大豆油系ポリオールとしては、大豆油に由来するポリオール、例えば、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。大豆油又は大豆油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、上記ひまし油の場合と同様のものを用いることができる。パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等についても、大豆油系ポリオールの場合と同様である。なお、植物由来ポリオールとして以上に例示した各種のポリオールは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0010】
ポリイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDI等が用いられることが多い。この他、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、粗HDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化MDI、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5,-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4'-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4'-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-2,6,4'-トリイソシアネート、4,4'-ジメチルジフェニルメタン-2,2',5,5'テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族系及び脂肪族系の各種のポリイソシアネートを使用することができる。これらの他、プレポリマー型のポリイソシアネートを用いることもできる。上述のポリイソシアネートは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。なお、ポリイソシアネート成分は、イソシアネートインデックスが80~120、好ましくは90~110となるように配合される。
【0011】
ポリウレタン原料には、整泡剤が含まれてもよい。整泡剤は、有機シリコーン界面活性剤は特に有用である。好ましい有機シリコーン界面活性剤は、SiO(ケイ酸塩)単位及び(CHSiO0.5(トリメチルシロキシ)単位から基本的に構成されるコポリマーであり、ケイ酸塩単位とトリメチルシロキシ単位とのモル比が0.8:1~2.2:1、好ましくは1:1~2.0:1である。他の好ましい有機シリコーン界面活性剤は、部分的に架橋されたシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー及びその混合物であり、このシロキサンブロック及びポリオキシアルキレンブロックはケイ素を介して炭素に結合し、又はケイ素を介して酸素-炭素結合に結合する。シロキサンブロックは炭化水素-シロキサン基からなり、前記結合により結合されたブロック毎に平均で少なくとも2価のケイ素を有する。ポリオキシアルキレンブロックの少なくとも一部はオキシアルキレン基からなり、多価である。すなわち、ポリオキシアルキレンブロックの少なくとも一部は、前記結合により結合されたブロック毎に少なくとも2価の炭素及び炭素に結合した酸素の少なくとも一方を有する。残りのポリオキシアルキレンブロックはオキシアルキレン基からなり、且つ1価である。すなわち、残りのポリオキシアルキレンブロックは、前記結合により結合されたブロック毎に1価の炭素及び炭素に結合した酸素の少なくとも一方のみを有する。さらに、米国特許第2,834,748号明細書、第2,846,458号明細書、第2,868,824号明細書、第2,917,480号明細書、及び第3,057,901号明細書に記載されているもの等の通常の有機ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロックコポリマー類が使用され得る。泡安定剤として使用される有機シリコーンポリマーの量は幅広い範囲で変化することができ、例えば活性水素成分の量に対して0.5質量%~10質量%又はそれ以上に変化し得る。好ましくは、発泡体配合物中に存在する有機シリコーンコポリマーの量は、同じ基準において1.0質量%~6.0質量%で変化する。
【0012】
本実施形態では、ポリウレタン原料は、泡を保持するための泡保持剤として、無機系のシリカを含んでいる。泡保持剤としては、特に、疎水性シリカが好ましい。疎水性シリカは、例えば、シリカの粒子を疎水化処理剤で表面処理(疎水化処理)することにより形成される。
【0013】
疎水化処理剤で表面処理される前のベースのシリカ(以下、ベースシリカという。)は、例えば合成シリカであり、湿式法シリカ(例えば、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ等)であってもよいし、乾式法シリカ(例えば、ヒュームドシリカ等)であってもよい。ベースシリカは、表面に親水性のシラノール基を多数有し、親水性である。
【0014】
疎水化処理剤としては、シリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロロシリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等が挙げられる。なお、疎水化処理剤としては、例えば、シランカップリング剤や、アルキルシラザン(例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザン等)等を用いることもできる。
【0015】
図1には、疎水化処理剤としてシリコーンオイルが用いられた疎水性シリカ(符号20)の概念図が示されている。なお、同図の例では、ベースシリカ(符号21)を表面処理するシリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)が用いられている。
【0016】
シリコーンオイルによる表面処理では、例えば、加熱等によりシリコーンオイル中のシロキサン結合(-Si-O-Si-)を切断することで、シラノール基(-Si-0-H)を有する有機ケイ素化合物(例えば、オルガノポリシロキサン、トリアルキルシラノール等)が生成され(式(1))、その有機ケイ素化合物とベースシリカとが、シラノール基の脱水縮合によってシロキサン結合すると考えられる(式(2))。このように、ベースシリカを疎水化処理剤で表面処理することで、ベースシリカの表面の親水性のシラノール基の数が反応により減るので(シリカ表面に疎水基が増えるので)、シリカに疎水性を付与することができると考えられる。なお、式(1)、(2)において、Rは有機基を表し、互いに同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、疎水性シリカでは、ベースシリカの表面のシラノール基が、疎水化処理剤と反応せずに疎水化処理剤に覆われているだけであってもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
疎水性シリカのメタノール湿潤性(M値)は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。M値とは、水とメタノールの混合溶液にシリカ粉末を入れた場合に、シリカ粉末が沈降し始めるときの混合溶液全体に対するメタノールの体積%である。M値が高い程、疎水性が高くなることを意味する。疎水化処理していないベースシリカのM値は0である。なお、詳細には、M値の測定では、10mlの試験管内の水とメタノールの混合溶液5mlに、シリカ粉末を0.1~0.2g入れて、2回振とうし、シリカ粉末の沈降の有無を確認した。
【0020】
疎水性シリカのDBA(ジ-n-ブチルアミン)吸着量は、100mmol/kg以下であることが好ましく、60mmol/kg以下であることがより好ましい。DBA吸着量とは、シリカ表面のシラノール基(親水基)に吸着するDBAの量である。DBA吸着量が低いということは、シリカ表面のシラノール基がシロキサン結合に変化していたりシリコーンオイルに被覆されたりしてDBAが吸着し難くなっていることを示しており、一般に疎水性が高いことを意味する。疎水化処理していないベースシリカのDBA吸着量は、200mmol/kg以上である。なお、詳細には、DBA吸着量は、以下のようにして得ることができる。乾燥させたシリカ粉末250mgに、N/500ジ-n-ブチルアミン溶液(石油ベンジン溶媒)50mlを加え、1時間振とうする。そして、その上澄み液25mlに、エタノール10mlを加えたものを、N/100過塩素酸溶液(無水酢酸溶媒)で電位差自動滴定装置にて滴定し、その滴定値をA(ml)とする。また、別に、上記N/500ジ-n-ブチルアミン溶液25mlに、エタノール10mlを加えたもの(ブランク)を、上記と同様にして電位差自動滴定装置にて滴定し、その滴定値をB(ml)とする。そして、以下の式(α)によりDBA吸着量(mmol/kg)を算出する。但し、fは、上記N/100過塩素酸溶液の力価である。
DBA吸着量 = 80×(B-A)×f (α)
【0021】
疎水性シリカは、トルエンへの疎水化処理剤の溶出率が、疎水性シリカの質量に対して、0.2質量%未満であることが好ましい。なお、この溶出率は、疎水性シリカをトルエンに2%の濃度で分散させ、常温で24時間経過させた場合の疎水化処理剤の溶出量が、分散前の疎水性シリカの質量に対して占める割合である。トルエンへの疎水化処理剤の溶出率が低い程、ベースシリカ表面のシラノール基と未反応の疎水化処理剤が少ないと考えられる。
【0022】
疎水性シリカは、シリコーンオイルを、BET比表面積100m/gのベースシリカ100重量部に対して、3~9重量部含むことが好ましい。また、疎水性シリカは、粒径10~400μmであるものが好ましい。
【0023】
疎水性シリカは、疎水性シリカに対する水の接触角が、145度以上であるものが好ましく、160度以上であるものがより好ましい。なお、疎水性シリカに対する水の接触角は、疎水性シリカの粉末を膜状等に成形し、その表面に水滴を滴下することで、測定することができる。
【0024】
疎水性シリカとしては、市販品を用いることができる。このようなものとして、例えば、東ソー・シリカ株式会社製の「Nipsil(登録商標)」SSシリーズ(例えば、SS-10、SS-20、SS-40、SS-50、SS-50A、SS-70、SS-80S、SS-100、SS-115、SS-178等)や、同社製の「Nipgel(登録商標)」シリーズ(例えば、AY-200、AZ-400、BZ-400、CY-200等)や、EVONIC社製の「AEROSIL(登録商標)」シリーズ、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の「HDK(登録商標)」シリーズ、キャボットコーポレーション製「CAB-O-SIL(登録商標)」シリーズ、信越化学工業株式会社製「QSG」シリーズ等が挙げられる。これらのうち1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0025】
造泡用気体は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分に対して不活性なものであれば特に限定されず、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスであってもよいし、乾燥空気であってもよい。
【0026】
ポリウレタン原料は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、整泡剤及び泡保持剤の他に、充填剤、触媒、架橋剤等を含んでいる。
【0027】
充填剤としては、増粘剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。本実施形態のポリウレタン原料は、機能性充填剤として軽質炭酸カルシウムを含んでいる。軽質炭酸カルシウムは、粒径0.08~5.0μmであるものが好ましい。
【0028】
触媒としては、ポリウレタンフォーム用のアミン系触媒、金属触媒(有機金属化合物系触媒)が単独または併用される。アミン系触媒としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、ポリアミン化合物、環状アミン化合物、アルコールアミン化合物、エーテルアミン化合物等が挙げられ、これらの1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。金属触媒としては、有機錫化合物、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等を挙げることができ、これらの1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0029】
架橋剤としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2~4個有する数平均分子量50以上800以下の低分子化合物が挙げられる。架橋剤として使用される低分子化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を併用することができる。
【0030】
本実施形態のポリウレタンフォームは、ポリウレタン原料と造泡用気体を混合し、攪拌した後、その混合物を加熱し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を反応させて硬化させることにより製造される。具体的には、ポリウレタン原料をチャンバー内に供給すると共に、造泡用気体もチャンバー内に供給し、オークスミキサ、ホバートミキサ等の攪拌器により攪拌して、気液混合させる。このとき、気液混合物には、気泡が形成される。そして、この気液混合物を、成形型内又はキャリアフィルム上に吐出させる。その後、気液混合物を所要温度に加熱し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を反応させて硬化させることにより、ポリウレタンフォームが完成する。気液混合物を成形型内に吐出した場合には、冷却後、成形型から外すことで、所定形状のポリウレタンフォームが得られる。気液混合物をキャリアフィルム上に吐出した場合には、冷却後、キャリアフィルムを取り除き、得られたフォームシートを打ち抜くことで、所定形状のポリウレタンフォームが得られる。
【0031】
ここで、軽質炭酸カルシウムの配合量が少ないと、ポリウレタン原料と造泡用気体を混合、攪拌したときの起泡性が悪くなり、気液混合物に気泡が形成され難くなる。また、軽質炭酸カルシウムの配合量が多くなると、泡保持性が悪くなり、配合量が更に多くなると、原料がペースト状になり攪拌が困難になる。軽質炭酸カルシウムの配合量は、ポリオール成分を100重量部とした場合に、10重量部以上150重量部以下であることが好ましく、40重量部以上100重量部以下であることがより好ましい。
【0032】
また、軽質炭酸カルシウムが10重量部以上であっても、ポリウレタン原料に疎水性シリカが含まれていないと、泡の保持性が悪くなる。疎水性シリカの配合量は、ポリオール成分を100重量部とした場合に、0.8重量部以上5重量部以下であることが好ましく、1重量部以上3重量部以下であることがより好ましい。疎水性シリカの配合量が5重量部よりも多い場合及び0.8重量部よりも少ない場合には、成形後外観が悪くなる。
【0033】
[実験例]
表1,2に示される実験例1~15のポリウレタン原料からポリウレタンフォームを製造し、各実験例について、起泡性、成形後外観、衝撃吸収性及び硬さの評価を行った。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1,2に記載された各成分は、以下の通りである。なお、表中の各成分の配合量は、重量部で示されている。
ポリオール成分;ポリエーテル系ポリオール(三洋化成工業株式会社製、商品名「サンニックス GP-600」)と、ひまし油系ポリオール(伊藤製油株式会社製、商品名「URIC Y-406」)で調整。表1,2では、ポリエーテル系ポリオールとひまし油系ポリオールを合わせたポリオール成分が100重量部になっている。
ポリイソシアネート成分;BASF INOAC ポリウレタン株式会社製、商品名「FOAMLITE MI」(イソシアネートインデックスは105)
泡保持剤;(1)未処理シリカ(疎水化処理をしていない親水性のベースシリカ):東ソー・シリカ株式会社製、商品名「Nipsil KQ」(M値は0%)、(2)疎水性シリカ(疎水化処理をしたシリカ):湿式法シリカ、東ソー・シリカ株式会社製、商品名「Nipsil SS-80K」(M値は45%)
整泡剤;シリコーン系界面活性剤:モメンティブ社製、商品名「L-5614」、10重量部、
触媒;2-エチルヘキサン酸スズ、0.1重量部
軽質炭酸カルシウム;白石工業株式会社製、商品名「シルバーW」
重質炭酸カルシウム;備北粉化工業株式会社製、商品名「BF200」(実験例12)、旭鉱末株式会社製、商品名「Sタンカル」(実験例13)
酸化防止剤;BASFジャパン株式会社製、商品名「IRGANOX 1135」
吸湿剤;ユニオン昭和株式会社製、商品名「モレキュラーシーブ 3A POWDER」
【0037】
なお、表1,2において、炭酸カルシウム粒子径とは、各実験例で用いた軟質又は重質の炭酸カルシウムの平均粒子径[μm]である。この平均粒子径は、JIS R1629に準じたレーザ回折・散乱法(JIS M8511に準じた空気透過法により比表面積を求めた。)により得た粒子径分布において体積基準の積算分率の50%径の値である。また、シリカ粒子径とは、各実験例で用いた未処理シリカ又は疎水性シリカの平均粒子径[μm]である。この平均粒子径は、コールターマルチサイザー(ベックマン・コールター社製。30μm径のアパチャーチューブを用いた。)により得られた粒子径分布において体積基準の積算分率が50%となる粒子径である。詳細には、未処理シリカ又は疎水性シリカを約0.5mlのエタノールに少量入れて超音波分散させ、さらに電解液(ISOTON-2。ベックマン・コールター社製)を約20ml入れたものを、40秒間、超音波分散させ、その分散液について、粒子径分布を測定した。
【0038】
ポリウレタンフォームの製造にあたっては、1~15m/分の速度で連続的に送り出されるキャリアフィルム上に、ポリウレタン原料を吐出して、厚さ0.2~10.0mmのフォームシートを形成した。造泡用気体には、乾燥空気を用い、密度150~700kg/mとなる流量で注入した。
【0039】
起泡性の評価は、具体的には、ポリウレタン原料をハンドミキサーで空気を抱き込ませながら2分間攪拌をした後に、キュアしたサンプルの密度(見掛け密度)が290kg/m未満であれば「○」とし(280kg/m以下がより好ましい。)、密度(見掛け密度)が290kg/m以上であれば「×」とした。また、成形後外観の評価は、成形したサンプルを目視で確認し表面が平滑でピンホールやボイドなどがなければ「○」とし、成形サンプルの表面が荒れていたり、ピンホールやボイドなどが発生していれば「×」とした。原料がペースト状になり成形不可であれば「-」とした。
【0040】
衝撃吸収性の評価方法は、CE規格のEN1621に準拠した衝撃試験により行った。具体的には、厚み20mmのサンプルを準備し、室温23℃の下、サンプルの上方1mの高さから5kgの鉄球を落下させた。そして、サンプルの下に伝達される衝撃を衝撃センサにより測定し、その測定値により衝撃吸収性を評価した。
【0041】
硬さの評価は、25%圧縮硬さ(25%CLD(Compression Load Deflection))により行った。25%圧縮硬さは、JIS K6254:2010のD法に基づいて試験した。但し、この試験では、試験サンプルとして、直径50mmの円柱形状のポリウレタンフォームを用い、このポリウレタンフォームの直径50mmの円形の押圧面の全面を押圧して、該ポリウレタンフォームを軸方向に1.0mm/分の速度で、圧縮前の軸長の30%の圧縮歪みが生じるまで(軸長が圧縮前の70%になるまで)圧縮した。この際、圧縮力と圧縮歪みの関係(圧縮力-変形曲線)を記録しておき、この関係(曲線)から、圧縮前のポリウレタンフォームの軸長に対して圧縮歪みが25%となったときの(軸長が圧縮前の75%となったときの)圧縮力[N]を求める。そして、その圧縮力をポリウレタンフォームの断面積(即ち、押圧面の面積:25×25×円周率[mm])で除して、25%圧縮硬さ[MPa]を算出した(式(β))。なお、この試験では、ポリウレタンフォームの繰り返し圧縮(予備圧縮)は行っていない。
25%圧縮硬さ
=圧縮歪みが25%のときの圧縮力/ポリウレタンフォームの断面積 (β)
【0042】
なお、総合評価では、起泡性が不良(×または-)であるものを「×」とし、起泡性が良好(○)であるもののうち、成形後外観が良好(○)で衝撃吸収性(衝撃センサの測定値)が8kN以下のものを「◎」、それ以外のものを「○」とした。
【0043】
表1,2の結果から明らかなように、ポリオール成分100重量部に対して、軽質炭酸カルシウムが10重量部未満である(実験例5)と、起泡性が不良(×)となる。この要因としては、軽質炭酸カルシウムの配合量が少ないと、原料中の核剤の絶対量が減り、泡立ちが悪くなることが考えられる。また、軽質炭酸カルシウムの代わりに、重質炭酸カルシウムが含まれている場合には、気泡性が不良(×)となる(実験例12,13)。
【0044】
軽質炭酸カルシウムの配合量が10重量部以上であっても、疎水性シリカが含まれていない(実験例1,14)と、起泡性及び成形後外観が不良(×)となる。また、疎水性シリカの代わりに、疎水化処理が行われていない未処理シリカ(即ち、親水性のシリカ)が含まれている場合には、起泡性及び成形後外観が不良(×)となる。これらから、疎水性シリカが含まれていると、核剤としての起泡作用に加え、整泡性が向上し、泡保持性が良好になると考えられる。
【0045】
また、ポリオール成分100重量部に対して、軽質炭酸カルシウムが140重量部より多い(実験例8)と、衝撃吸収性が低くなる。これは、軽質炭酸カルシウムの配合量が多いと泡保持性が若干悪くなることに起因すると考えられる。さらに、軽質炭酸カルシウムの配合量200重量部を超える(実験例9)と、原料がペースト状になり撹拌が困難になる。
【0046】
このように、泡保持剤として疎水性シリカが含まれている場合には、機能性充填剤として軽質炭酸カルシウムが含まれていてもフォームの形成が容易となる。そして、軽質炭酸カルシウムの配合量が、ポリオール成分100重量部に対して10重量部以上140重量部以下である(実験例2,3,7)と、衝撃吸収性が8kN以下となり、高い衝撃吸収性を発揮する。なお、軽質炭酸カルシウムの配合量が10重量部以上140重量部以下であっても、疎水性シリカの配合量が5重量部より多くなる(実験例4)と、成形後外観が悪くなる。この成形後外観の悪化は、疎水性シリカの配合量が多くなるとキュア性が悪化することに起因すると考えられる。また、疎水性シリカの配合量が0.8重量部よりも少ない場合(実験例15)も、成形後外観が悪くなる。
【0047】
なお、表1,2の実験例2~4,6~8,10,11が「実施例」に相当し、実験例1,5,9,12~15が「比較例」に相当する。
【0048】
以下、上述した実施形態及び実験例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0049】
[特徴1]
ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むポリウレタン原料と造泡用気体とから得られるポリウレタンフォームにおいて、
前記ポリウレタン原料には、泡を保持するための泡保持剤としての疎水性シリカと、軽質炭酸カルシウムと、が含まれ、
前記ポリオール成分100重量部に対して、前記軽質炭酸カルシウムが10重量部以上である、ポリウレタンフォーム。
【0050】
[特徴2]
前記疎水性シリカは、シリカをシリコーンオイルで表面処理してなる、特徴1に記載のポリウレタンフォーム。
【0051】
[特徴3]
前記疎水性シリカのメタノール湿潤性が40%以上であるか、又は、前記疎水性シリカのDBA吸着量が60mmol/kg以下である、特徴1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【0052】
[特徴4]
前記ポリオール成分100重量部に対して、前記軽質炭酸カルシウムが140重量部以下であって、前記疎水性シリカが0.8重量部以上かつ5重量部以下である、特徴1から3のうち何れか1の特徴に記載のポリウレタンフォーム。
【0053】
[特徴5]
見掛け密度が280kg/m以下である、特徴1から4のうち何れか1の特徴に記載のポリウレタンフォーム。
【0054】
[特徴6]
厚さ20mmのシート状にして表側に50Jの衝撃エネルギーを垂直に与えたときに、裏側に伝達される衝撃力が8kN未満である衝撃吸収性を有する、特徴1から5のうち何れか1の特徴に記載のポリウレタンフォーム。
【0055】
[特徴7]
特徴1から6のうち何れか1の特徴に記載のポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリウレタン原料と前記造泡用気体とからメカニカルフロス法により前記ポリウレタンフォームを得る、ポリウレタンフォームの製造方法。
【0056】
特徴1,8に係るポリウレタンフォームは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むポリウレタン原料と造泡用気体とから得られる。このポリウレタン原料には、機能性充填剤として軽質炭酸カルシウムが含まれているので、ポリウレタンフォームの衝撃吸収性の向上が図られる。また、ポリウレタン原料には、泡を保持するための泡保持剤として疎水性シリカが含まれているので、メカニカルフロス法でポリウレタンフォームを製造する際に、泡の保持性の向上が図られ、フォームの形成が容易となる。
【0057】
ここで、ポリウレタン原料は、ポリオール成分100重量部に対して、軽質炭酸カルシウムを10重量部以上140重量部以下含み、疎水性シリカを0.8重量部以上かつ5重量部以下含むことが好ましい(特徴4)。軽質炭酸カルシウムの含有量が10重量部未満であるか又は疎水性シリカが含まれていないと、ポリウレタン原料と造泡用気体を混合、攪拌したときの起泡性が悪くなる。また、疎水性シリカの含有量が5重量部を超えると、攪拌性は良いもののキュア性が悪くなり(キュア不足になり)、成形後外観が悪化する。また、軽質炭酸カルシウムの含有量が140重量部より多いと、衝撃吸収性が低くなる。これは、軽質炭酸カルシウムの配合量が多いと、泡保持性が若干悪くなることに起因すると考えられる。さらに、軽質炭酸カルシウムの配合量が200重量部を超えると、原料がペースト状になり攪拌が困難になる。
【0058】
ポリウレタンフォームの衝撃吸収性は、ポリウレタンフォームを厚さ20mmのシート状にして、その表側に50Jの衝撃エネルギーを垂直に与えたときに、裏側に伝達される衝撃力が8kN未満であることが好ましい(特徴6)。このような衝撃吸収性を有するポリウレタンフォームは、例えば、CEマーク規格のプロテクターに用いることができる。
【0059】
また、ポリウレタンフォームの硬さは、25%圧縮硬さが0.08MPa未満であることが好ましい。このような硬さを有するポリウレタンフォームは、インソールやプロテクターに用いられたときに、使用者に良好なフィット感を与えることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
20 疎水性シリカ
21 ベースシリカ
図1