(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】断熱ボード
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2019153369
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 重考
(72)【発明者】
【氏名】折方 孝光
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 栄二
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-47632(JP,A)
【文献】特開平9-279708(JP,A)
【文献】特開2015-66681(JP,A)
【文献】特開2004-278022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0124300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームを芯材とし、その両面に面材が積層されてなる断熱ボードであって、
前記面材のJIS P 8113に準拠して測定された比引張強さが、前記芯材の長さ方向及び幅方向で5.0Nm/g以上13.0Nm/g以下であることを特徴とする曲げ可能な断熱ボード。
【請求項2】
前記面材のJIS P 8113に準拠して測定された引張破断伸びが、前記芯材の長さ方向及び幅方向で25%以上35%以下であることを特徴とする請求項1に記載の断熱ボード。
【請求項3】
前記芯材の厚みが5mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱ボード。
【請求項4】
前記断熱ボードの熱伝導率は、0.024W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面部分への断熱に適した曲げ可能な断熱ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野において、保温保冷のために断熱材が用いられている。
例えば、ドラム缶やタンクのような円筒型の容器や曲面を有するコンクリート構造体など曲面部分を有する対象物への断熱には、柔軟性のある断熱シートが利用されている。
柔軟性のある断熱シートとしては、軟質ポリウレタンフォームやポリエチレンフォームなどの合成樹脂発泡体を板状或いはシート状に加工したものやグラスファイバーなどの繊維体を圧縮して板状やシート状に成型したものなどが使用されている。
【0003】
しかしながら、軟質ポリウレタンフォームやポリエチレンフォームなどの柔軟性のある発泡シートの断熱性能は高いものではない。また、シートの厚みを増すと断熱性能は向上するが、厚すぎると柔軟性に劣ってしまい曲面部分に追従できなくなる。しかも、軟質ポリウレタンフォームは吸水しやすいため、屋外での使用には適さない。
【0004】
一方、硬質ポウレタンフォームは断熱性能に優れ、硬く強度があることから、建築物の断熱材として用いられているが、柔軟性に劣る合成樹脂発泡体である。そのため、板状(ボード)に加工した硬質ポリウレタンフォームを使用して曲面部分に追従させようと折り曲げると、割れてしまう虞がある。また、ボードの厚みを薄くすれば折り曲げられる可能性はあるものの、断熱性能は低下してしまう。
ボードに厚みがあっても、工場で強い圧力をかけて強制的に折り曲げ加工することで曲面形状に追従させることは可能であるが、性能低下が起こりやすく、また施工現場までの運搬を考慮すると、曲がったボードでは平積みできず、数量を多く積載できず輸送効率が悪化する。
【0005】
そこで、曲面部分を断熱する方法として、タイル状や短冊状に加工した断熱材を曲面部分に複数並べて被覆する方法(特許文献1)や、発泡体の表面に面材を積層された断熱型枠パネルについて、内側に曲がる面に複数条の溝を設けて湾曲させる方法(特許文献2)が知られている。
しかしながら、特許文献1や2の方法では、工程数が多く大きな手間を要する上、曲面に対して密着度が十分でない場合が多く、断熱性能に劣るものとなる。
【0006】
また、大型な構造物の場合、現場発泡によるウレタン吹きつけ工法を用いることが知られている。この方法であれば曲面部分に合わせた断熱施工が容易となるが、ボードのような工場にて生産された製品と比較すると厚さの精度が出にくく、目的とする断熱性能が得られにくい。また、専門業者が特殊設備を用いて施工するため工事が大掛かりになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭59-208298号公報
【文献】特開平4-258466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、断熱性能に優れ、強度のある硬質ポリウレタンフォームを用いて曲面部分を断熱することは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、強度のある硬質ポリウレタンフォームを用い、断熱性能に優れ、かつ曲面部分への断熱が可能な断熱ボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく検討したところ、硬質ポリウレタンフォームと特定の面材との組み合わせによって、曲げ可能な断熱ボードが得られるとの知見を得た。
【0011】
すなわち、本発明は、硬質ポリウレタンフォームを芯材とし、その両面に面材が積層されてなる曲げ可能な断熱ボードであって、前記面材のJIS P 8113に準拠して測定された比引張強さが、前記芯材の長さ方向及び幅方向で5.0Nm/g以上13.0Nm/g以下であることを特徴とする。
【0012】
硬質ポリウレタンフォーム単体では曲げにくいものであるが、本発明の断熱ボードは、芯材の長さ方向及び幅方向に特定の比引張強さを有する面材が両面に積層されているため、硬質ポリウレタンフォームによる強度を備えたまま容易に曲げることができる。そのため、本発明の断熱ボードは、曲面部分を有する対象物の断熱材に使用することができる。
【0013】
また、本発明の面材は、さらにJIS P 8113に準拠して測定された引張破断伸びが、前記芯材の長さ方向及び幅方向で25%以上35%以下であることが好ましい。
【0014】
芯材の長さ方向及び幅方向で、面材が特定の比引張強さ及び特定の引張破断伸びを有することで、断熱ボードを曲げるときに必要な力が抑えられ、曲げやすくすることができる。
【0015】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームからなる芯材の厚みが5mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0016】
芯材の厚みが厚いほど断熱性能に優れるが、厚すぎると本発明の面材を用いたとしても曲げることが困難となる。本発明では、芯材の厚みが5mm以上50mm以下とすることで、断熱性能に優れ、かつ曲げやすい断熱ボードを得ることができる。
【0017】
本発明の断熱ボードの熱伝導率は、0.024W/(m・K)以下である。なお、熱伝導率は、JIS A 9511に準拠して測定した値である。
【0018】
ここで、熱伝導率とは、物質の熱の伝わりやすさを表す値のことで、値が小さいほど熱が伝わりにくいことを示す。なお、断熱ボードの熱伝導率は、芯材の硬質ポリウレタンフォームの断熱性能に依存している。すなわち、断熱性能が高い芯材を用いることで、断熱ボードの断熱性能も向上することとなる。本発明において、断熱性能に優れる断熱ボードとは、熱伝導率が0.024W/(m・K)以下のものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の断熱ボードは、硬質ポリウレタンフォームを芯材として用いることで断熱性能に優れ、かつ芯材の長さ方向及び幅方向に特定の比引張強さを有する面材が、芯材の両面に積層されているため、硬質ポリウレタンフォームによる強度を備えたまま容易に曲げることができる。そのため、曲面部分への断熱が可能な断熱ボードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の断熱ボードを説明する断面図である。
【
図2】本発明の断熱ボードの曲げ半径を説明する図である。
【
図3】本発明を円筒型の容器に巻きつけた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、
図1に示すように、硬質ポリウレタンフォームを芯材2とし、その両面に面材3,3が積層されてなる断熱ボード1である。
【0022】
本発明の芯材2は硬質ポリウレタンフォームからなり、例えばポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールからなるポリオールと、発泡剤と、整泡剤とを混合反応させることにより得られる発泡体である。また、必要に応じて、触媒、難燃剤等の硬質ポリウレタンフォームの製造に際して一般に使用されている各種添加剤を添加してもよい。
【0023】
本発明で用いられる硬質ポリウレタンフォームに使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを好適に使用でき、これらは1種を単独で使用するか又は2種以上を併用することができる。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては多価カルボン酸に多価アルコールを縮合してなるポリオールや、環状エステル開環重合からなるポリオールがある。多価カルボン酸としてはコハク酸、グルタン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物からなるポリオールが挙げられる。一方、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、ビスフェノールA等が挙げられる。中でもポリエステルポリオールとしては、特に芳香環を有するポリエステルポリオールが好ましい。
ポリエステルポリオールの水酸基価は特に限定されないが、100~400mgKOH/gが好ましい。
【0025】
またポリエーテルポリオールとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、上記多価アルコール等のアルコール類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン類;トルエンジアミン、メチレンジアニリンなどの芳香族アミン類;マンニッヒ縮合物等に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの1種または2種以上を付加重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられ、これらのポリエーテルポリオールは1種を単独で使用するか、或いは2種以上を適宜組み合わせて併用することができる。
中でもポリエーテルポリオールとしては、芳香族ポリエーテルポリオールが熱伝導率を低下させる為に特に好ましい。
ポリエーテルポリオールの水酸基価は特に限定されないが、300~800mgKOH/gが好ましい。
また、ポリエーテルポリオール中に、酢酸ビニルやポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル/スチレン共重合体等のポリマー成分を分散させたポリマーポリオールを使用してもよい。特に酢酸ビニルやポリアクリロニトリル/スチレン共重合体をポリエーテルポリオール中に分散させたポリマーポリオールが好ましく用いられる。
【0026】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)など;これらの変性ポリイソシアネート、すなわち、ポリイソシアネートの部分化学反応で得られる生成物であって、例えば、エステル、尿素、ビューレット、アロファネート、カルボジイミド、イソシアヌレート、ウレタンなどの基を含むポリイソシアネート;などが挙げられる。これらポリイソシアネートは1種を単独で使用するか、或いは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記のポリイソシアネートの使用量は、下記(1)式で示すイソシアネートインデックスが30~300となる量で使用することが好ましく、80~150となる量で使用することがより好ましい。
イソシアネートインデックス=NCO基/ポリオールの活性水素×100 (1)
【0028】
本発明で用いられる硬質ポリウレタンフォームに使用する発泡剤としては、水、HFC、HC、HFO、二酸化炭素より選ばれた少なくとも1種が使用できる。HFCとしては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)等が挙げられる。またHCとしては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等が挙げられる。またHFOとしては、テトラフルオロプロペン(HFO1234)、トリフルオロプロペン(HFO1243)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233)、テトラフルオロブテン(2,4,4,4-テトラフルオロブテン-1以外のHFO1354)、ペンタフルオロブテン(HFO1345)、ヘキサフルオロブテン(HFO1336)、ヘプタフルオロブテン(HFO1327)、ヘプタフルオロペンテン(HFO1447)、オクタフルオロペンテン(HFO1438)、ノナフルオロペンテン等が挙げられる。また二酸化炭素としては、液体状態、亜臨界状態、超臨界状態の二酸化炭素が挙げられる。
発泡剤としての水、HFC、HC、HFO、二酸化炭素は、1種を単独で使用してもよいし又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。発泡剤の使用量は、前述のポリオール100質量部当たり、5~40質量部が好ましい。
【0029】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させるために用いる触媒としては、従来から一般に用いられているアミン触媒や金属触媒等が使用できる。
アミン触媒としては、特に反応型アミン触媒(分子中に活性水素基を有する化合物)が好適であり、例えば、ジメチルメタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2-[メチル[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]エタノール(TMAEEA)、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(DMAEE)、1,3-ビス(ジメチルアミノ)-2-プロパノール(TMHPDA)、4-メチルピペラジン-1-エタノール、3,3’-[3-(ジメチルアミノ)プロピルイミノ]ビス(2-プロパノール)(Thancat-DPA)、2-モルホリノエタノール等が挙げられる。またTOYOCAT RX7(東ソー(株))やポリキャット16、ポリキャット17、DabcoWT(エアプロダクツ社)等の市販品も使用可能である。
金属触媒としては、例えば、スタナスオクトエート;ジブチルチンジラウリレート;オクチル酸鉛;酢酸カリウムやオクチル酸カリウム等のカリウム塩等が使用できる。これらのアミン触媒や金属触媒の他に、蟻酸や酢酸等の脂肪酸の第4級アンモニウム塩等も使用できる。
以上の触媒は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。上記触媒の使用量は、ポリオール100質量部当たりに対し、0.1~15質量部程度の量であることが好ましい。
【0030】
本発明で用いられる硬質ポリウレタンフォームに使用する整泡剤としては、当技術分野で公知の整泡剤を使用することができる。例えばテゴスタブ(登録商標)B8232、B8481、B8443、B8465、B8486、B8466、B8450(いずれもエボニック デグサ ジャパン(株));SF-2936F、SF-2937F、SF-2938F、SF-2945F、SZ-1605、SZ-1642、SZ-1671等(いずれも東レ・ダウコーニング(株))等の整泡剤を使用することができる。
これら整泡剤は単独で1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、密度が25kg/m3以上50kg/m3以下であり、硬く強度があるため当該フォーム単体では曲げにくいものある。
なお、密度は、木箱内で自由発泡させて得た硬質ポリウレタンフォームから、100mm×100mm×100mmの試験片を切り出し、当該試験片を用いてJIS A 9511に準拠して測定した値である。
【0032】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率は0.024W/(m・K)以下が好ましい。この範囲の熱伝導率を有する硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能に優れており、断熱ボードとしての断熱効果が向上する。なお、熱伝導率は45℃に温調した金属プレート上で自由発泡させて得た硬質ポリウレタンフォームから、200mm×200mm×25mmの試験片を切り出し、JIS A 9511に示される熱流計法により、英弘精機社製の“オートラムダHC-074シリーズ”を用いて平均温度23℃で測定した値である。
【0033】
本発明の芯材2は、厚みが5mm以上あればよく、好ましくは、10mm以上50mm以下である。芯材の厚みを増すと断熱性能は向上するが、あまり厚すぎると、後述する本発明の面材を両面に積層しても曲げにくくなり、断熱施工する際に取り扱いが困難となる。
【0034】
本発明の面材3は、比引張強さが、芯材2の長さ方向及び幅方向で5.0Nm/g以上13.0%Nm/g以下である。比引張強さが5.0Nm/g未満であると、断熱ボードは曲げやすくなるが、繰り返し曲げることによって面材が破れるなど耐久性に劣る場合がある。また、13.0Nm/gを超える場合、断熱ボードを曲げることが困難である。なお、比引張強さは、JIS P 8113に準拠して測定した値である。
ここで、芯材2の長さ方向とは
図1に示す矢印方向Xとし、幅方向とは矢印方向Yであり、矢印方向XとYとは直行している。矢印方向X,Yのどちらの方向とも特定の比引張強さを有する面材を用いることで、断熱ボードを曲げることができる。
例えば、面材の比引張強さにおいて、Y方向よりもX方向が大きい場合、当該矢印方向Yに沿って断熱ボードが曲がり易くなる。
【0035】
また、本発明の面材3は、引張破断伸びが芯材2の長さ方向及び幅方向で25%以上35%以下であることが好ましい。
引張破断伸びが25%未満の場合、断熱ボードを曲げにくくなり、35%を超えると、曲げ易くなるが、ボードが反ってしまったり寸法安定性が悪化してしまう。なお、引張破断伸びは、JIS P 8113に準拠して測定した値である。
【0036】
本発明の面材3としては、例えば合成樹脂フィルム、不織布、金属蒸着フィルム等を単独または複数組み合わせて積層させたものが使用できる。
合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、その他として、無機物を混合した合成紙などが挙げられる。そして、芯材である硬質ポリウレタンフォームとの接着性を向上させるために、例えばコロナ処理等を行ってもよい。
不織布としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリオレフィン繊維などの合成繊維、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機繊維から1種、又は2種以上を交絡させたものが使用できる。
また、金属蒸着フィルムとしては、アルミ箔、銅箔、鉄箔、鉛箔等が挙げられ、軽量であるアルミ箔が好ましく使用出来る。
【0037】
本発明の断熱ボード1の製造方法としては、特に限定されない。
例えば、一方の面材3をコンベアー上に巻き出し、その上に硬質ポリウレタンフォーム原料を吐出した後、もう一方の面材3を上方から繰り出して硬質ポリウレタンフォームを挟むようにすれば、連続生産が可能である。
或いは、予め作成された硬質ポリウレタンフォームブロックを板状に切り出して芯材2とし、その表面に面材3を接着剤などで貼り合わせて断熱ボードを作成してもよい。
【0038】
本発明の断熱ボード1は、硬質ポリウレタンフォームによる強度を備えたまま容易に曲げることができる。本発明の断熱ボード1は、曲げられる最小半径(曲げ最小半径)で評価してもよい。曲げ最小半径とは、
図2に示す通り、断熱ボードの両端部に力を加え、最も曲がったときに重なった仮想円の半径Rである。なお、断熱ボードの厚さや長さによって曲げ最小半径は異なるが、本発明の断熱ボードは曲げ最小半径が1000mm以下であるものが好ましい。
【0039】
本発明の断熱ボード1は、硬質ポリウレタンフォームによる強度を備えたまま容易に曲げることができるため、曲面部分への断熱ができ、しかも曲面部分への固定のしやすさや作業中に上に人が載ったり物が落下しても凹みにくく、断熱施工中の作業性にも優れる。
曲面部分を有する対象物としては、例えば、ドラム缶(200L容量)、円筒形タンク、曲面部分を有するコンクリート造、或いは鉄骨造の構造物(例えば、屋根や壁の下地、冷凍・冷蔵室、貯蔵倉庫サイロ、プラント施設、簡易FRP橋など)、飛行機や船、潜水艇、タンカーなどの曲面部分を有する乗り物、その他断熱材を用いる小物(電化製品、床暖房用器具、DIY)などが挙げられる。本発明の断熱ボードを複数枚使用すれば、対象物の大きさで使用が制限されることはない。また、断熱ボード単層だけではなく、任意の厚みを出すために複数枚を積層して使用することもできる。
【0040】
断熱ボード1を曲面部分に固定する方法としては特に限定されないが、例えば、接着剤を用いたり、プラスチック製の結束バンドで巻き締めて固定することができる。
図3には、円筒型の容器に本発明の断熱ボードをプラスチック製の結束バンドで固定した状態を示す。
【実施例】
【0041】
本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
幅910mm、長さ3000mm、厚さ20mmの硬質ポリウレタンフォームを芯材とし、その両面にポリエチレンフィルム付き不織布面材を積層し、断熱ボードを作成した。
なお、使用した硬質ポリウレタンフォームは、密度が25kg/m3、熱伝導率が0.024W/(m・K)であった。また、ポリエチレンフィルム付き不織布面材の比引張強さは、芯材の長さ方向(X)で12.3Nm/g、芯材の幅方向(Y)で6.1Nm/g、引張破断伸びは、芯材の長さ方向(X)で27.3%、芯材の幅方向(Y)で31.0%のものを使用した。
【0043】
〔実施例2~5〕
硬質ポリウレタンフォームの厚さを10mm、30mm、40mm、50mmとしたこと以外は、実施例1と同様に断熱ボードを作成した。
【0044】
〔比較例1〕
厚さ50μmのクラフト紙複合面材(日本マタイ社製、商品名「NPE 120」)を使用したこと以外は、実施例1と同様に断熱ボードを作成した。また、クラフト紙複合面材の比引張強さは、芯材の長さ方向(X)で64.0Nm/g、芯材の幅方向(Y)で33.8Nm/g、引張破断伸びは、芯材の長さ方向(X)で2.4%、芯材の幅方向(Y)で8.1%のものを使用した。
【0045】
〔比較例2〕
実施例1で用いた厚さ20mm、幅910mm、長さ3000mmの硬質ポリウレタンフォームで、面材が無いものを作成した。
【0046】
〔比較例3〕
面材無しの厚さ20mm、幅910mm、長さ3000mmのポリエチレンフォームを作成した。なお、使用した軟質ポリウレタンフォームは、密度29kg/m3、熱伝導率は0.037W/(m・K)であった。
【0047】
芯材において、密度、及び熱伝導率は、JIS A 9511、或るいはJIS A 1412-2に準拠して測定した値である。
また、面材において、比引張強さ及び引張破断伸びは、JIS P 8113に準拠して測定した値である。
【0048】
得られた断熱ボードについて、以下の通り曲げ性及び断熱性を評価した。結果を表1,2に示す。
【0049】
[曲げ性]
図2に示すように、断熱ボードの両端部に力を加え、曲げたときの状態を観察し、以下の通り評価した。
○ 曲げられる、及び曲げたときに芯材が破壊されない
△ 曲げたときに芯材は破壊されないが、曲げ難くい。
× 曲げられない、又は曲げたときに芯材が破壊される
【0050】
[断熱性]
図3に示すように、円筒型の容器(ドラム缶、直径580mm、200L容量)の周囲に各断熱ボードをプラスチック製の結束バンドを用いて固定した。次いで、容器内にポリオール成分を210kg入れ、25℃(T
0)になるよう静置してから、恒温室内の温度を40℃として、5時間保管した。その後、容器内のポリオール成分の温度Tを測定し、(T-T
0)の値で以下の通り評価した。ポリオール成分としては、アキレス株式会社製、商品名「アキレスエアロンFR-FO」のポリオール成分を使用した。このポリオール成分は、芳香族ポリエステルポリール、アミン触媒、難燃剤、整泡剤、発泡剤として水およびHFO(ハイドロフルオロオレフィン)を混合したものである。HFOとしては、沸点が19℃のHFO-1233zdを用いた。
○ (T-T
0)が5℃以下であり、HFOの揮発を抑えることができる
× (T-T
0)が5℃を超えてしまい、HFOが揮発しやすい
【0051】
【0052】
【0053】
実施例1~5は、芯材が破壊されずに曲げることができた。また、実施例1~5の曲げ可能最小半径(mm)を測定した結果、実施例1は500mm、実施例2は250mm、実施例3~5は1000mmであった。ただし、実施例5では、実施例3、4よりも曲げるときに力が必要であったため、曲げ性の評価を△とした。
【0054】
また、実施例1と比較例1とは、面材が違う点以外は同様であるが、実施例1は曲げ性の評価が○であるのに対し、比較例1は断熱ボードが曲がらず×であった。このことから、曲げ難い硬質ポリウレタンフォームの両面に本発明の面材を積層することで、曲げ可能な断熱ボードが得られることが確認された。
なお、比較例2において、本発明の面材を積層していない硬質ポリウレタンフォームのみを用いた場合には、曲げたときに芯材が破壊されたため、曲げ性の評価が×であったことから、硬質ポリウレタンフォーム単体では、曲げると割れてしまうことが示されている。
【0055】
また、芯材としてポリエチレンフォームを用いた比較例3では、曲げ性の評価は○であったが、断熱性が×であり、断熱性能に劣るものであった。
【0056】
このように、本発明の断熱ボードは、硬質ポリウレタンフォームを芯材として用いることで断熱性能に優れ、かつ芯材の長さ方向及び幅方向に特定の比引張強さを有する面材が、芯材の両面に積層されているため、硬質ポリウレタンフォームによる強度を備えたまま容易に曲げることができる。そのため、曲面部分への断熱が可能な断熱ボードを提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 断熱ボード
2 芯材
3 面材
4 円筒型の容器(ドラム缶)
5 結束バンド
C 仮想円
R 仮想円の半径(曲げ半径)
M 中心点