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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】蒸気質評価装置及び蒸気質評価方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20230612BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F22B37/38 C
G01N33/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019172240
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021050830
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日 平成31年3月29日 ウェブサイトのアドレス: https://bms.kurita.co.jp/products/index.html (2)発行日 令和1年6月5日 刊行物:熱産業経済新聞 令和1年6月5日付け 第8面 (3)発行日 令和1年6月19日 刊行物:クリタ・ビーエムエス株式会社の製品・サービス カタログ
(73)【特許権者】
【識別番号】594124926
【氏名又は名称】クリタ・ビーエムエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 紳一郎
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-198032(JP,A)
【文献】特開2019-095232(JP,A)
【文献】特開2003-114944(JP,A)
【文献】特開2019-096206(JP,A)
【文献】特開2018-194471(JP,A)
【文献】特開2012-059103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/38
G01N 33/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から得られる蒸気に含まれる水質の計測結果に基づいて、前記蒸気の質を評価する評価部
前記評価部の評価結果に基づいて、前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する情報提供部と、
を備え、
前記評価部は、評価結果をまとめたレポートを作成し、
前記情報提供部は、前記評価部の評価結果に基づく前記蒸気の質の改善方法の情報が複数ある場合、顧客がコスト優先又は効率優先のいずれの顧客であるのかを示す優先度情報に基づいて、前記顧客の優先度に応じた前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する蒸気質評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記水質の計測結果を用いて前記水質毎の良し悪しを点数化し、点数に応じた指摘事項と、前記水質の計測結果の時系列データと、前記水質毎の点数の一覧表とのいずれか又は全てを含めた前記レポートを作成する、請求項1に記載の蒸気質評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記水質の計測結果の組み合わせに基づいて前記評価を行う、請求項1又は2に記載の蒸気質評価装置。
【請求項4】
外部から得られる蒸気に含まれる水質の計測結果に基づいて、前記蒸気の質を評価する評価ステップ
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する情報提供ステップと、
を有し、
前記評価ステップにおいて、評価結果をまとめたレポートを作成し、
前記情報提供ステップにおいて、前記評価ステップで得られた評価結果に基づく前記蒸気の質の改善方法の情報が複数ある場合、顧客がコスト優先又は効率優先のいずれの顧客であるのかを示す優先度情報に基づいて、前記顧客の優先度に応じた前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する蒸気質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の質を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラで発生した蒸気を冷却装置で冷却し、冷却により生じた凝縮水の水質を水質計測装置により計測することで、蒸気の質をリアルタイムにモニタリング(監視)する蒸気質モニタリング装置が知られている(例えば、特許文献1)。この蒸気質モニタリング装置では、蒸気中に含まれる不純物量や蒸気の腐食性等をモニタリング(監視)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-93128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モニタリングの結果によっては、蒸気が流れるパイプや蒸気を利用する設備などの保守点検を行う必要がある。しかしながら、企業によってはモニタリングの結果を見ても保守点検が必要であるのかわからない場合がある。不必要に保守点検を行うとコストや時間を要してしまうこともある。そのため、蒸気の質のモニタリング結果に基づくサービスが要求されている。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、蒸気の質のモニタリング結果に基づくサービスを提供することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、外部から得られる蒸気に含まれる水質の計測結果に基づいて、前記蒸気の質を評価する評価部前記評価部の評価結果に基づいて、前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する情報提供部と、を備え、前記評価部は、評価結果をまとめたレポートを作成し、前記情報提供部は、前記評価部の評価結果に基づく前記蒸気の質の改善方法の情報が複数ある場合、顧客がコスト優先又は効率優先のいずれの顧客であるのかを示す優先度情報に基づいて、前記顧客の優先度に応じた前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する蒸気質評価装置である。
【0007】
本発明の一態様は、前記評価部は、前記水質の計測結果を用いて前記水質毎の良し悪しを点数化し、点数に応じた指摘事項と、前記水質の計測結果の時系列データと、前記水質毎の点数の一覧表とのいずれか又は全てを含めた前記レポートを作成する。
【0009】
本発明の一態様は、前記評価部は、前記水質の計測結果の組み合わせに基づいて前記評価を行う。
【0010】
本発明の一態様は、外部から得られる蒸気に含まれる水質の計測結果に基づいて、前記蒸気の質を評価する評価ステップ前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する情報提供ステップと、を有し、前記評価ステップにおいて、評価結果をまとめたレポートを作成し、前記情報提供ステップにおいて、前記評価ステップで得られた評価結果に基づく前記蒸気の質の改善方法の情報が複数ある場合、顧客がコスト優先又は効率優先のいずれの顧客であるのかを示す優先度情報に基づいて、前記顧客の優先度に応じた前記蒸気の質の改善方法の情報を提供する蒸気質評価方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、蒸気の質のモニタリング結果に基づくサービスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における蒸気質評価システムの構成を表す構成図である。
図2】第1の実施形態における蒸気質評価装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態における評価テーブルの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態における蒸気質評価装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態における導電率の評価結果を示す図である。
図6】第1の実施形態におけるpHの評価結果を示す図である。
図7】第1の実施形態における蒸気スコアの一例を示す図である。
図8】第1の実施形態におけるレポートの一例を示す図である。
図9】第2の実施形態における蒸気質評価装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図10】第2の実施形態における蒸気質評価装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における蒸気質評価システム100の構成を表す構成図である。蒸気質評価システム100は、蒸気の質のモニタリング結果に基づいて、蒸気の質を評価するシステムである。蒸気質評価システム100は、蒸気利用施設10、蒸気モニタリング装置15及び蒸気質評価装置20を備える。
【0014】
蒸気利用施設10は、蒸気を利用する施設である。蒸気利用施設10は、給水タンク11、ボイラー12、スチームヘッダー13及び蒸気使用生産設備14を備える。給水タンク11とボイラー12、ボイラー12とスチームヘッダー13、スチームヘッダー13と蒸気使用生産設備14は、パイプ等の配管により接続される。なお、蒸気利用施設10は、図1に示す例に限られない。例えば、蒸気利用施設10は、蒸気を発生させて利用する施設であればどのような施設であってもよい。
【0015】
給水タンク11は、ボイラー12に供給する水を蓄えるタンクである。パイプを介して給水タンク11から水がボイラー12に供給される。
ボイラー12は、給水タンク11から供給された水を利用して、蒸気を発生させる装置である。ボイラー12は、蒸気を発生させる装置であればどのようなボイラーであってもよい。ボイラー12により発生された蒸気は、パイプを介してスチームヘッダー13に供給される。
【0016】
スチームヘッダー13は、ボイラー12から供給された蒸気を一旦集めて、水と蒸気に分けて各配管に分配する装置である。スチームヘッダー13から分配された蒸気は、パイプを介して蒸気使用生産設備14に供給される。
蒸気使用生産設備14は、スチームヘッダー13から供給された蒸気を使用する設備である。
【0017】
上記のように、蒸気利用施設10では、ボイラー12により発生した蒸気を利用している。ここで、評価対象となる蒸気(以下「サンプル蒸気」という。)が供給されているラインが、スチームヘッダー13と蒸気使用生産設備14との間の配管であるとする。この場合、スチームヘッダー13と蒸気使用生産設備14との間の配管から、サンプル蒸気の取り出し口を設けて、サンプル蒸気の取り出し口と蒸気モニタリング装置15とを接続する。これにより、サンプル蒸気が蒸気モニタリング装置15に供給される。
【0018】
蒸気モニタリング装置15は、サンプル蒸気の質をリアルタイムにモニタリング(監視)する装置である。蒸気モニタリング装置15は、冷却装置16及び水質計測装置18で構成される。
冷却装置16は、サンプル蒸気を、冷却水によって冷却して、水質計測用の凝縮水に変化させる装置である。凝縮水は、冷却装置16と水質計測装置18とを接続している凝縮水の供給ラインを介して水質計測装置18に供給される。
【0019】
水質計測装置18は、冷却装置16から供給された凝縮水及びサンプル蒸気に基づいて、種々の水質を計測する。水質計測装置18が計測する水質は、例えばpH、電気伝導率(導電率)、溶存酸素濃度、有機物、臭い及び乾き度である。なお、有機物や臭いは、詳細な成分分析のため水質計測装置18の他に、他の装置で採水して分析してもよい。この場合、水質計測装置18は、有機物や臭いの分析結果を他の装置から取得する。有機物は、例えばCOD(Chemical Oxygen Demand)やTOC(Total Organic Carbon)等である。乾き度は、湿り蒸気における飽和水と飽和蒸気の混合割合を表す。一般的に、ボイラー蒸気は、過熱器で過熱しなければ飽和蒸気と飽和水の混合物(湿り蒸気)である。ボイラー12からの湿り蒸気の流れは気体(飽和蒸気)に液体(飽和水)が霧状に混ざった流体である。そこで、この湿り蒸気における飽和水と飽和蒸気の混合割合を示すのが乾き度である。
【0020】
ここで、一例として、pH、電気伝導率(導電率)、溶存酸素濃度を計測する構成について説明する。水質計測装置18は、複数のフローセルを有し、複数のフローセル中に順次凝縮水を通して各フローセルに設けられている計測センサにより、凝縮水の溶存酸素濃度、電気伝導率及びpHを計測する。pH、電気伝導率(導電率)、溶存酸素濃度を計測する具体的な手法は周知の技術であるため説明を省略する。
また、乾き度を計測する場合、水質計測装置18は絞り熱量計を備える。絞り熱量計は、サンプル蒸気を取り込み、取り込んだサンプル蒸気を用いて乾き度を計測する。
【0021】
蒸気質評価装置20は、水質計測装置18によって計測された種々の水質データに基づいて蒸気の質を評価する。蒸気質評価装置20が行う評価とは、蒸気の質の水質項目毎の点数化、水質項目毎の考察及び総合評価等のいずれかを行い、結果をまとめたレポートを作成することを意味する。蒸気質評価装置20は、ノートパソコン、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。
【0022】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における蒸気質評価装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。
蒸気質評価装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、蒸気質評価プログラムを実行する。蒸気質評価プログラムの実行によって、蒸気質評価装置20は、計測結果記憶部21、評価テーブル記憶部22、評価部23を備える装置として機能する。なお、蒸気質評価装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、蒸気質評価プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、蒸気質評価プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0023】
計測結果記憶部21は、水質計測装置18によって計測された種々の水質データを時系列順に記憶する。計測結果記憶部21は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
評価テーブル記憶部22は、蒸気に含まれる特定の水質を評価するための基準となる情報が登録された評価テーブルを記憶する。評価テーブル記憶部22は、水質項目毎の評価テーブルを記憶する。評価テーブル記憶部22は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
【0024】
図3は、第1の実施形態における評価テーブルの一例を示す図である。
評価テーブルは、蒸気の質を評価するための基準となる情報を表すレコードを複数有する。レコードは、計測結果、スコア及び考察の各値を有する。計測結果は、評価対象となる水質項目の計測結果を表す。図3では、評価対象となる水質項目が電気伝導率(導電率)であることが示されている。スコアは、計測結果の値に応じて付与される水質の良し悪しを示す点数を表す。スコアは、数値が高いほどよい。考察は、スコアに応じた指摘事項を表す。
【0025】
図3に示される例では、評価テーブルには計測結果が5段階に分類されている。これらの計測結果は、“2.0以上”、“1.0以上2.0未満”、“0.6以上1.0未満”、“0.2以上0.6未満”、“0.2未満”である。図3において、評価テーブルの最上段に登録されているレコードは、計測結果の値が“2.0以上”、スコアの値が“1”、考察の値が“管理運用方法の見直しをお勧めします。”である。すなわち、電気伝導率(導電率)の計測結果が“2.0以上”である場合、スコアが最も悪い“1”であり、管理運用方法の見直しが必要であることが表されている。
【0026】
また、図3において、評価テーブルの最下段に登録されているレコードは、計測結果の値が“0.2未満”、スコアの値が“5”、考察の値が“現状の管理運用を維持してください。”である。すなわち、電気伝導率(導電率)の計測結果が“0.2未満”である場合、スコアが最もよい“5”であり、現状の管理運用を維持していればよいことが表されている。
【0027】
図3に示す例では、評価テーブルには、5段階の計測結果の分類が登録されていたが、分類は5段階に限定される必要はない。例えば、評価テーブルにおいて、計測結果の分類は2段階以上であれば何段階であってもよい。また、水質項目毎の評価テーブルの計測結果の分類は、同じであってもよいし、一部又は全てが異なっていてもよい。
【0028】
評価部23は、計測結果記憶部21に記憶されている計測結果と、評価テーブル記憶部22に記憶されている評価テーブルとに基づいて、評価対象となる蒸気の質を水質項目毎に評価する。
【0029】
図4は、第1の実施形態における蒸気質評価装置20の処理の流れを示すフローチャートである。
蒸気質評価装置20は、水質計測装置18から計測結果が得られると、得られた計測結果を計測結果記憶部21に記憶する(ステップS101)。評価部23は、評価タイミングになったか否かを判定する(ステップS102)。評価タイミングは、例えば予め定められた時刻であってもよいし、外部から評価の実行指示がなされたタイミングであってもよいし、評価テーブル記憶部22に計測結果のデータが規定数の蓄積されたタイミングであってもよい。
【0030】
評価タイミングになっていない場合(ステップS102-NO)、評価部23は評価タイミングになるまで待機する。この間にも水質計測装置18から計測結果が得られると、得られた計測結果が計測結果記憶部21に記憶される。
一方、評価タイミングになった場合(ステップS102-YES)、評価部23は計測結果記憶部21に記憶されている計測結果と、評価テーブルとを用いて蒸気の質を評価する(ステップS103)。
【0031】
具体的には、評価部23は、ある水質項目(例えば、導電率)の複数の計測結果を計測結果記憶部21から読み出す。評価部23は、読み出した複数の計測結果を用いて、統計値(例えば、最高値、最低値、平均値)を算出する。評価部23は、評価テーブルを参照し、算出した統計値に応じたスコア及び考察の値を取得する。評価部23は、この処理を水質項目全てに対して実行する。なお、評価部23は、指定された水質項目に対してのみ処理を実行してもよい。
【0032】
その後、評価部23は、レポートを作成する(ステップS104)。具体的には、評価部23は、ある水質項目(例えば、導電率)の複数の計測結果を用いて、図5及び図6に示すような表を生成する。図5は導電率の評価結果を示す図であり、図6はpHの評価結果を示す図である。図5及び図6に示す表には、水質項目の計測結果における統計値(例えば、最高値、最低値、平均値)、偏差及び計測結果の時系列データが含まれる。また、評価部23は、水質項目毎に算出されたスコアを用いて、図7に示す蒸気スコアを生成する。蒸気スコアは、水質項目のスコアを一覧で表示した図である。図7では、蒸気スコアを構成する水質項目が3つ(溶存酸素、導電率及びpH)であるが、全ての水質項目が含まれてもよい。
【0033】
評価部23は、上記の処理で得られた各水質項目のスコア及び考察結果と、評価結果と、蒸気スコアとに基づいて図8に示すレポートを作成する。図8は、レポートの一例を示す図である。図8に示されるレポートには、大きく5つの項目が示されている。具体的には、5つの項目として、図8には(|.今回評価した対象先について)、(||.評価方法について)、(|||.評価結果について)、(|V.蒸気スコアについて)、(V.総合所見について)が示されている。(|.今回評価した対象先について)及び(||.評価方法について)の項目は、客先の蒸気の質の評価を請け負っている担当者が事前に入力する。(|||.評価結果について)の項目には、図5及び図6に示すような水質項目毎の評価結果が入力される。(|V.蒸気スコアについて)の項目には、取得された水質項目毎のスコア及び考察が入力される(V.総合所見について)の項目には、水質項目毎の評価結果を踏まえた“腐食性”、“安全性”、“省エネ”及び“生産性”の評価内容が入力される。(V.総合所見について)の項目は、担当者によって入力されてもよい。
【0034】
以上のように構成された蒸気質評価装置20によれば、蒸気の質のモニタリング結果に基づくサービスを提供することが可能となる。具体的には、蒸気質評価装置20は、蒸気の質のモニタリング結果に基づいて、顧客の蒸気の質を評価し、評価結果としてレポートを作成する。このように作成されたレポートには、水質項目毎の良し悪しを示すスコアや考察結果が記載されている。これにより、顧客は、どの水質項目が悪いのかを把握することができ、改善するための取り組みを行うことができる。そのため、蒸気の質のモニタリング結果に基づくサービスを提供することが可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、評価結果に基づいて、顧客の蒸気の質の改善点の指摘及び改善方法の情報を提供する。
図9は、第2の実施形態における蒸気質評価装置20aの機能構成を表す概略ブロック図である。
蒸気質評価装置20aは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、蒸気質評価プログラムを実行する。蒸気質評価プログラムの実行によって、蒸気質評価装置20aは、計測結果記憶部21、評価テーブル記憶部22、評価部23、情報提供部24を備える装置として機能する。なお、蒸気質評価装置20aの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、蒸気質評価プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、蒸気質評価プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0036】
蒸気質評価装置20aは、情報提供部24を新たに備える点で蒸気質評価装置20と構成が異なる。蒸気質評価装置20aは、他の構成については蒸気質評価装置20と同様である。そのため、蒸気質評価装置20a全体の説明は省略し、情報提供部24の構成について説明する。
【0037】
情報提供部24は、評価部23の評価結果に基づいて、蒸気の質の改善点の指摘及び改善方法の情報を提供する。
【0038】
図10は、第2の実施形態における蒸気質評価装置20aの処理の流れを示すフローチャートである。図10において、図4と同様の処理については図4と同様の符号を付して説明を省略する。
情報提供部24は、評価部23の評価結果に基づいて、蒸気の質の改善点の指摘及び改善方法の情報を提供する(ステップS201)。具体的には、情報提供部24は、評価部23の評価結果から、スコアが閾値より低い(例えば、スコア“1”や“2”)水質項目の改善方法の情報を提供する。例えば、情報提供部24は、pHの値が閾値より低い場合には、ボイラ給水を軟水から純水に切り替える情報を提供する。これにより、低pHの原因となる軟水由来の炭酸ガス発生を防止することができる。例えば、情報提供部24は、溶存酸素の値が閾値より低い場合には、酸素剤を添加することを推奨する情報を提供する。なお、情報提供部24が提供する情報は、1つに限らず、複数提供してもよい。これにより、顧客は自分に合った改善方法で作業を行うことができる。
【0039】
以上のように構成された第2の実施形態における蒸気質評価システム100によれば、蒸気質を評価した結果に基づいて、改善方法等の情報を提供することができる。これにより、顧客は、現状よりも蒸気質をより良くするための改善方法を知ることができる。また、蒸気質評価装置20aを備える企業は、顧客に対してより良いサービスを提供することができる。
【0040】
<第2の実施形態における変形例>
蒸気モニタリング装置15と、蒸気質評価装置20は一体化されて構成されてもよい。
蒸気の例では、情報提供部24は、1つの水質項目の評価結果に基づいて改善方法の情報を提供する構成を示した。情報提供部24は、複数(2つ以上)の水質項目の評価結果の組み合わせに基づいて改善方法の情報を提供するように構成されてもよい。例えば、情報提供部24は、pH、溶存酸素及び有機物のデータからボイラー12や蒸気配管の腐食速度についてスコア化する。そして、情報提供部24は、スコアが閾値以下である場合であって、例えば溶存酸素が閾値以上である場合には脱酸素剤を添加することを推奨する情報を提供したり、pHが閾値以上である場合にはpHを調整することを推奨する情報を提供する。これにより、腐食速度スコアを高く維持することが可能になる。
情報提供部24は、顧客毎の優先度情報(例えば、コスト優先、効率優先)等の情報を保持し、顧客に応じて提供する情報を変更するように構成されてもよい。例えば、コスト優先の顧客に対して、コストが高いが非常に効果の高い改善方法を提供することは好ましくない。そこで、情報提供部24は、改善方法が複数ある場合には、顧客の優先度情報に基づいて選択肢を減らして情報を提供してもよい。
情報提供部24は、特定の顧客に対して、特別なプランなどの契約を推奨する情報を提供してもよい。ここで、特定の顧客とは、特定の回数以上の依頼があった顧客であってもよい。
【0041】
以下、第1の実施形態及び第2の実施形態に共通する変形例について説明する。
食品や医療品等の製造工程で製品と蒸気が接触する可能性がある企業がある場合には、蒸気質評価装置20,20aは食品衛生法における水質項目(例えば、カルシウム、マグネシウム等の26項目)の計測結果も踏まえて蒸気質を評価するように構成されてもよい。
上記の各実施形態において評価部23は、1つの水質項目毎に評価を行っていた。評価部23は、複数(2つ以上)の水質項目の組み合わせに基づいて評価を行うように構成されてもよい。例えば、評価部23は、溶存酸素とpHの組み合わせ、導電率と臭いと有機物の組み合わせ等で評価を行ってもよい。溶存酸素と低pHは蒸気腐食性を高める要因となる。そこで、評価部23は、溶存酸素の計測結果とpHの計測結果とに基づいて、蒸気腐食性を評価してもよい。導電率と臭いと有機物の計測結果が高い場合には安全性が懸念される。そこで、評価部23は、導電率の計測結果と臭いの計測結果と有機物の計測結果とに基づいて、安全性を評価してもよい。例えば、評価部23は、導電率の計測結果と臭いの計測結果と有機物の計測結果とが高い場合、すなわち導電率と臭いと有機物の全てのスコアが閾値よりも低い場合には、安全性が低いと評価する。
【0042】
評価部23は、水質項目の計測結果の時系列データに基づいて、計測結果の変化が閾値以上である場合には何かしらの異常が生じていると評価してもよい。また、評価部23は、水質項目の計測結果の値が上昇し続けている場合、下降し続けている場合には何かしらの異常が生じていると評価してもよい。
評価部23は、水質項目の計測結果の時系列データに基づいて、今後の蒸気の質の推移を予測するように構成されてもよい。具体的には、評価部23は、水質項目の計測結果の過去の推移のデータに基づいて、今後の蒸気の質の推移を予測する。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…蒸気利用施設, 11…給水タンク, 12…ボイラー, 13…スチームヘッダー, 14…蒸気使用生産設備, 15…蒸気モニタリング装置, 16…冷却装置, 18…水質計測装置, 20…蒸気質評価装置, 21…計測結果記憶部, 22…評価テーブル記憶部, 23…評価部, 24…情報提供部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10