(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】交通管制システムおよび情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   G08G   1/00        20060101AFI20230612BHJP        
   G08G   1/01        20060101ALI20230612BHJP        
【FI】
G08G1/00 A 
G08G1/01 C 
(21)【出願番号】P 2019182468
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川  裕亮
【審査官】貞光  大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-193212(JP,A)      
【文献】特許第6045846(JP,B2)    
【文献】特開2019-114094(JP,A)      
【文献】特開2017-151545(JP,A)      
【文献】特開2017-84268(JP,A)      
【文献】国際公開第2017/038166(WO,A1)    
【文献】特開2019-96280(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G      1/00  -    1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  第1規定時間ごとに、道路の交通情報に基づいて前記道路におけるイベントの発生しやすさを示すイベント発生度を算出するイベント発生度算出部と、
  前記イベント発生度算出部によって算出された直近の規定の複数回の前記イベント発生度のうち最も大きい前記イベント発生度を提供情報とし、当該提供情報を配信先に配信する情報配信部と、
  を備えた交通管制システム。
【請求項2】
  前記イベントは、交通事故である、請求項1に記載の交通管制システム。
【請求項3】
  前記情報配信部は、前記提供情報を前記第1規定時間の複数倍の第2規定時間ごとに更新する、請求項1または2に記載の交通管制システム。
【請求項4】
  前記情報配信部は、前記道路の交通渋滞についての情報である渋滞情報が前記道路の前記交通渋滞が延伸傾向であることを示す場合には、前記提供情報を更新する更新間隔を前記道路に前記交通渋滞が無い場合の前記更新間隔よりも延ばし、前記渋滞情報が前記交通渋滞が縮小傾向であることを示す場合には、前記更新間隔を前記道路に前記交通渋滞が無い場合の前記更新間隔に近づける、請求項3に記載の交通管制システム。
【請求項5】
  イベント発生度算出部が、第1規定時間ごとに、道路の交通情報に基づいて前記道路におけるイベントの発生しやすさを示すイベント発生度を算出する工程と、
  情報配信部が、前記イベント発生度算出部によって算出された直近の規定の複数回の前記イベント発生度のうち最も大きい前記イベント発生度を提供情報とし、当該提供情報を配信先に配信する工程と、
  を備えた情報提供方法。 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明の実施形態は、交通管制システムおよび情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
  従来、道路(例えば、高速道路、有料自動車道路等)では、交通事故等の様々なイベント(事象)が発生する。交通管制システムは、道路におけるイベントの発生しやすさを表すイベント発生度を算出し、算出したイベント発生度を道路上のユーザに対して提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  上記従来の交通管制システムにおいては、規定時間ごとにイベント発生度を算出して当該イベント発生度を提供する。このため、提供されるイベント発生度の時間変動が大きくなりやすく、ユーザが混乱する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
  実施形態の交通管制システムは、イベント発生度算出部と、情報配信部と、を備える。前記イベント発生度算出部は、第1規定時間ごとに、道路の交通情報に基づいて前記道路におけるイベントの発生しやすさを示すイベント発生度を算出する。前記情報配信部は、前記イベント発生度算出部によって算出された直近の規定の複数回の前記イベント発生度のうち最も大きい前記イベント発生度を提供情報とし、当該提供情報を配信先に配信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
            【
図1】
図1は、第1実施形態の交通管制システム等の構成図である。
 
            【
図2】
図2は、第1実施形態の情報提供処理のフローチャートである。
 
            【
図3】
図3は、第1実施形態の提供情報の決定方法の一例を説明するための説明図である。
 
            【
図4】
図4は、第1実施形態の提供情報の決定方法の変形例を説明するための説明図である。
 
            【
図5】
図5は、第2実施形態の情報提供処理のフローチャートである。
 
            【
図6】
図6は、第2実施形態の情報提供と比較例の情報提供とを説明するための説明図である。
 
            【
図7】
図7は、第3実施形態の情報提供処理のフローチャートである。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0007】
  以下、本発明の実施形態(第1実施形態~第3実施形態)について、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
  まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、道路(例えば、高速道路、有料自動車道路等)へ適用した実施形態について、説明する。ここでは、道路の例として高速道路の場合について説明する。また、本実施形態では、発生しやすさを算出するイベント、すなわち発生を予測するイベントとして、交通事故が適用されている。
【0009】
  次に、第1実施形態における交通管制システムについて説明する。
  図1は、第1実施形態の交通管制システム10等の構成図である。
 
【0010】
  交通管制システム10は、交通管制処理を行うとともに交通事故予測を行なう処理部11Aと、処理部11Aと連携し、道路利用者に事故予報情報等の情報を提供する事故情報配信サービス10Bと、を備えている。交通管制システムは、情報提供システムとも称され、事故情報配信サービス10Bは、事故情報配信部とも称される。
【0011】
  ここで、交通管制処理とは、高速道路における渋滞の度合いや交通事故等を含む交通状況を認識し、その交通状況の情報に応じた通行規制等の処置や、高速道路の利用者等に発生中のイベント情報、注意喚起等の情報を提供する処理である。交通管制システム10は、例えば、交通管制室における複数のコンピュータ装置によって構成される。
【0012】
  まず、第1実施形態の特徴部分を構成する、交通管制システム10における処理部11Aの交通事故予測機能(事故発生度算出部1141)および事故情報配信サービス10Bの概要について説明する。
【0013】
  交通管制システム10の事故発生度算出部1141は、交通管制システム10で検出された交通状況と過去の交通事故発生事例から、高速道路における交通事故の発生しやすさを示す事故発生度を算出する処理を行う。具体的には、事故発生度算出部1141は、交通管制システム10で検出された交通状況と過去の交通事故発生事例から、高速道路の所定区間(所定距離毎あるいは所定設備)ごとに、交通事故の発生しやすさを示す事故発生度を算出する処理を行う。
【0014】
  事故発生度の算出方法の一例として、例えば、特許6045846号公報の記載のように、自己組織化マップ等のモデルを利用し、道路上の位置、時間、天候等の条件ごとに、事故事例を学習させる方法で、事故発生度を算出する方法がある。
【0015】
  一方、事故情報配信サービス10Bは、算出された事故発生度を含む事故予報情報を配信(提供)する。
【0016】
  次に、各構成について具体的に説明する。交通管制システム10は、情報収集手段として、車両感知器2、監視カメラ3、管理車両PC(管理車両の車載装置)、非常電話4、携帯電話5Aやスマートフォン5B等の移動情報端末5、一般車6(一般車の車載装置)等を用いる。
【0017】
  車両感知器2は、例えば、高速道路の路側に設置され、交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などの情報を収集する感知器(トラフィックカウンタ)であり、感知した情報を交通管制システム10に送信する。
【0018】
  監視カメラ3は、例えば、高速道路の路側に設置され、高速道路の映像を撮影するカメラであり、撮影した映像を交通管制システム10に送信する。
【0019】
  管理車両PCは、例えば、GPS(Global  Positioning  System)などの検知システムを用いて、時系列の車両情報として、経度情報、緯度情報、高度情報、位置精度、速度情報、走行方向、加速減速度情報(X,Y,Z方向の加速度)などのプローブ情報を収集し、そのプローブ情報を交通管制システム10に送信する。
【0020】
  非常電話4は、例えば、高速道路の本線上、トンネル内、インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリア、バスストップ、非常駐車帯等に設けられている。そして、交通事故の発生時には、道路の利用者等が非常電話4を用いて交通管制システム10を管轄する交通管制センターに通知する。
【0021】
  一般車6は、路側に設けられた路車間通信装置と通信を行うことで、通行情報を交通管制システム10に送信する。
【0022】
  移動情報端末5は、例えば、道路の利用者等により携帯される。そして、交通事故の発生日時や個別の位置情報などを、移動情報端末5の所有者が移動情報端末5を用いて交通管制システム10を管轄する交通管制センターに通知する。
【0023】
  次に、交通管制システム10の構成について説明する。以下の説明においては、説明の簡略化のため、外部の装置や機器との通信のための通信部の図示および説明を省略する。交通管制システム10は、1つ以上のコンピュータ装置から構成され、処理部11Aおよび事故情報配信サービス10Bの他に、記憶部12A、入力部13A、および表示部14Aを備えている。
【0024】
  処理部11Aは、情報取得部111、交通状況算出部112、イベント登録部113、表示制御部114、および事故発生度算出部1141を備える。なお、以下では、処理部11Aにおいて図示している各部以外の処理については、動作主体を「処理部11A」と記載する。事故発生度算出部1141は、イベント発生度算出部の一例である。
【0025】
  処理部11Aは、例えば、MPU(Micro  Processing  Unit)と、ROM(Read  Only  Memory)と、RAM(Random  Access  Memory)と、を備える。
【0026】
  MPUは、交通管制システム10の動作を統括的に制御する。ROMは、各種プログラムやデータを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。
【0027】
  そして、MPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部12A等に格納されたプログラムを実行する。
【0028】
  記憶部12Aは、HDD(Hard  Disk  Drive)やSSD(Solid  State  Drive)などの外部記憶装置である。記憶部12Aは、道路情報記憶部115、取得情報記憶部116、交通状況記憶部117、イベント記憶部118、および交通事故予測記憶部1181を備える。
【0029】
  入力部13Aは、交通管制システム10の処理部11Aに対する交通管制官の操作を受け付ける入力装置である。入力部13Aは、例えば、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0030】
  表示部14Aは、液晶表示装置(LCD(Liquid  Crystal  Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等により実現される表示部であり、各種情報を表示する。
【0031】
  次に、処理部11Aの構成について詳細に説明する。情報取得部111は、各情報収集手段(車両感知器2等の他、降水検知器、雨量計、路面温度計、土砂検知器等も図示していないが、必要に応じて設置)や外部の各種情報サーバ(災害情報サーバ、天気情報サーバ等)から各種情報を取得して、取得した各種情報を取得情報記憶部116に記憶する。
【0032】
  交通状況算出部112は、高速道路に設置されている車両感知器2からの情報や一般車6からの情報等(つまり、取得情報記憶部116に記憶されている情報)に基づいて、高速道路における車両の渋滞、すなわち交通渋滞の度合いを含む交通状況を算出し、算出した交通状況を交通状況記憶部117に記憶する。すなわち、交通状況には、高速道路の交通状態についての渋滞情報が含まれる。交通状況算出部112は、公知の方法により現在の交通渋滞の発生の有無、および交通渋滞の伸縮傾向を算出し、算出結果を渋滞情報に含ませる。交通状態の伸縮傾向には、交通渋滞の延伸傾向および交通渋滞の縮小傾向が含まれる。
【0033】
  イベント登録部113は、高速道路でイベントが発生した場合に、交通管制官による入力部13Aを用いた情報の入力に基づくイベントの登録操作を受け付け、その内容をイベント記憶部118に登録(記憶)する。イベント登録情報としては、例えば、イベントの発生した日時、イベントの発生した場所、イベントの内容(交通事故、故障車、路上障害物、火災等)がある。
【0034】
  表示制御部114は、各種情報を表示部14Aに表示する制御を行う。
【0035】
  事故発生度算出部1141は、事故発生度を算出し、事故発生を予測する。具体的には、事故発生度算出部1141は、第1規定時間ごとに、道路の交通情報に基づいて事故発生度を算出する。第1規定時間は、例えば5分である。なお、第1規定時間は、5分以外であってもよい。
【0036】
  事故発生度算出部1141において予測処理に必要な交通情報としては、例えば、単位時間あたりの通過交通量積算値(単位時間あたりの走行車両台数;以下、交通量と記す)や、単位時間あたりの平均速度、占有率、大型車混入率などがあげられる。また、事故発生度算出部1141において予測処理に必要な管制情報としては、交通事故の発生時の発生フラグや、発生時刻などが挙げられる。この管制情報は交通管制官がマンマシンインターフェースを用いて手入力したものでもよい。
【0037】
  処理部11Aは、取得情報記憶部116および交通状況記憶部117から過去の交通情報および管制情報を入手し、イベント記憶部118に記憶されているイベント発生時の交通情報をパターンとして学習する。学習の方法としては、イベント記憶部118に記憶されているイベント発生時情報(イベント発生地点、イベント発生時刻、イベントタイプ)を基本に、これに対応する時間帯、路線位置(車線)の交通情報(例えば交通量、平均速度、占有率、大型車混入率等)を入手し、これらの対応をイベント発生時のパターンとして学習する。
【0038】
  例えば、イベントが事故の場合、イベント発生パターン学習部131は、交通情報および管制情報に加えて、天気、温度、路面状況(路面凍結、落葉状態)等の環境情報を考慮して事故発生時のパターンとして学習してもよい。この結果、雨天、霧、路面凍結等のより事故が発生しやすい状況も考慮して事故発生パターンを学習し、事故の発生確率をより正確に算出することができる。
【0039】
  事故発生度算出部1141における事故発生度の算出方法の一例として、例えば、特許6045846号公報の記載のように、自己組織化マップ等のモデルを利用して事故事例を学習させる方法で、道路上の位置、時間、天候等の条件ごとに、事故発生度(過去に事故が発生した状況[例えば、渋滞の度合い、路面状態、温度、天気等]にどれだけ類似した状況かの類似度)を算出する方法がある。
【0040】
  また、学習の最も簡単な方法としては、これらの組合せを保持、蓄積する方法や、これらの組合せを統計処理でクラスタリングし、類似したケースのデータを作成する方法等が挙げられる。
【0041】
  これらの結果、事故発生度算出部1141は、情報取得部111が取得した情報に基づいて交通状況算出部112が算出した予測処理時点の交通状況を、イベント発生パターン学習部131において学習された事故発生時の交通状況のパターンと比較し、類似度が高い場合に、事故発生度が高いという事故発生予測結果を出力する。
【0042】
  例えば、予測処理時点の交通情報と、イベント発生パターン学習部131において学習された事故発生時のパターンのいずれかとの相関が例えば0.85以上である場合、事故発生度85%と演算する。
【0043】
  換言すれば、事故発生度算出部1141は、学習された事故発生時の交通状況パターンのいずれかとの相関を事故発生度(事故発生可能性あるいは事故発生傾向)ととらえ、これを事故発生予測結果として演算することとなる。そして、例えば、事故発生度を0%から10%単位で100%迄の11段階(第11段階が最も交通事故が発生しやすく、第1段階が最も交通事故が発生しにくい)に区分する。なお、以下、第1段階~第11段階を、単に「1」~「11」として説明する場合がある。
【0044】
  そして、事故発生度算出部1141で算出された事故発生度に基づいて、交通管制システム10は、事故を予測し、事故の発生に備え、情報配信対象である情報板DT1、ハイウェイラジオDT2、情報提供端末DT3、移動情報端末DT4、車載器DT5等を介して走行車両等に対して注意を呼びかけたりすることが可能となる。
【0045】
  次に、交通管制システム10の記憶部12Aの構成について詳細に説明する。記憶部12Aは、HDDやSSDなどの外部記憶装置であり、道路情報記憶部115、取得情報記憶部116、交通状況記憶部117、イベント記憶部118、および交通事故予測記憶部1181を備える。
【0046】
  道路情報記憶部115は、高速道路における車線数、インターチェンジ、パーキングエリアの場所等の道路情報を記憶する。
【0047】
  取得情報記憶部116は、情報取得部111によって取得された車両感知器2、監視カメラ3、管理車両PC、一般車6等からの各種情報を記憶する。
【0048】
  交通状況記憶部117は、交通状況算出部112によって算出された交通状況を記憶する。
【0049】
  イベント記憶部118は、イベント登録部113によって受け付けたイベントの登録操作の内容を記憶する。交通事故予測記憶部1181については後述する。
【0050】
  次に、事故情報配信サービス10Bの構成について説明する。事故情報配信サービス10Bは、1つ以上のコンピュータ装置から構成され、処理部11B、記憶部12B、入力部13B、表示部14B、および通信部15を備える。
【0051】
  処理部11Bは、情報配信部121および表示制御部124を備える。なお、以下では、処理部11Bにおいて図示している各部以外の処理については、動作主体を「処理部11B」と記載する。処理部11Bは、例えば、処理部11Aと同様に、MPUと、ROMと、RAMと、を備える。
【0052】
  情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された事故発生度を配信先に配信する。詳細には、情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された直近の規定の複数回の事故発生度のうち最も大きい事故発生度を提供情報とする。換言すると、情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された最新回から、最新回の規定回前までの事故発生度のうち最も大きい事故発生度を提供情報とする。このようにして、情報配信部121は、提供情報を作成する。上記の規定の複数回は、例えば3回である。この場合、最新回の規定回前は、2回前である。なお、規定の複数回は3回以外の複数回であってもよい。そして、情報配信部121は、提供情報を配信先に配信する。
【0053】
  ここで、提供情報の配信先としては、例えば、
図1の例の場合、情報板DT1、ハイウェイラジオDT2、情報提供端末DT3、移動情報端末DT4、車載器DT5等が挙げられる。
 
【0054】
  情報板DT1は、高速道路の各所に配置された情報表示装置である。ハイウェイラジオDT2は、高速道路の各所に配置された送信アンテナから送信される電波を受信して音声に変換するラジオ装置である。
【0055】
  情報提供端末DT3は、高速道路に設けられているサービスエリアやパーキングエリアに設置された情報提供用の端末装置である。移動情報端末DT4は、予め登録された道路利用者が携帯しているスマートフォン、携帯電話等である。車載器DT5は、予め登録された一般車6に搭載されたカーナビゲーション装置等である。
【0056】
  表示制御部124は、例えば、イベント登録部113により登録されたイベントの情報や、事故発生度算出部1141によって算出された事故発生度ついての情報等を表示部14Bに表示する。
【0057】
  次に、事故情報配信サービス10Bの記憶部12Bについて説明する。記憶部12Bは、HDDやSSDなどの外部記憶装置であり、配信情報記憶部128を備える。
【0058】
  配信情報記憶部128は、事故発生度算出部1141によって区間ごとに算出された事故発生度を時系列に記憶するとともに、情報配信部121によって作成された提供情報を記憶する。
【0059】
  入力部13Bは、事故情報配信サービス10Bに対する交通管制官の操作を受け付ける入力装置である。入力部13Bは、例えば、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0060】
  表示部14Bは、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置等により実現される。
【0061】
  通信部15は、図示しない通信インタフェースを有し、情報配信対象である情報板DT1、ハイウェイラジオDT2、情報提供端末DT3、移動情報端末DT4、車載器DT5のそれぞれに対応する通信経路を介して情報(イベントに関するテキストデータ、音声データ、画像データ等)を配信する。通信部15は、上記の情報配信を情報配信部121の制御により実行する。すなわち、情報配信部121は、通信部15を介して、情報配信対象に情報(提供情報)を配信する。
【0062】
  次に、第1実施形態の動作について説明する。
  図2は、第1実施形態の情報提供処理のフローチャートである。なお、この情報提供処理を実行する前に、すでに事故予測の学習モデルが生成されているものとする。また、情報提供処理は、高速道路の所定区間のそれぞれに対して実行される。なお、所定区間の例の詳細は後述する。
 
【0063】
  まず、交通管制システム10の情報取得部111は、高速道路について、車両感知器2等の情報収集手段から、交通量、平均速度、車両密度、占有率等の交通情報を取得する(S1)。
【0064】
  次に、交通管制システム10の事故発生度算出部1141は、事故予測の学習モデルと交通情報とに基づいて、高速道路の所定の区間ごとに事故発生度を算出する(S2)。
【0065】
  次に、事故情報配信サービス10Bの情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された直近の規定の複数回の事故発生度、具体的には最新、5分前、および10分前の事故発生度のうち最も大きい事故発生度を提供情報に決定する(S3)。詳細には、情報配信部121は、最新の事故発生度が、5分前の事故発生度および10分前の事故発生度よりも大きいか否かを判定する。情報配信部121は、最新の事故発生度が、5分前の事故発生度および10分前の事故発生度より大きい場合には、最新の事故発生度を提供情報に決定する。一方、情報配信部121は、最新の事故発生度が、5分前の事故発生度および10分前の事故発生度以下の場合には、最新の事故発生度、5分前の事故発生度および10分前の事故発生度から最も大きな事故発生度を抽出し、抽出した事故発生度を提供情報に決定する。
【0066】
  ここで、上記のS3の提供情報の決定方法を
図3を参照してより詳細に説明する。
  
図3は、第1実施形態の提供情報の決定方法の一例を説明するための説明図である。
  
図3の例では、二つのインターチェンジ(
図3ではIC1,IC2)間の区間Bの提供情報の決定方法の例である。また、二つのインターチェンジ間に4つ(複数)の車両感知器(
図3ではTC1~TC4)2が設置されている。以後の説明では、二つのインターチェンジとしてIC1,IC2を用い、複数の車両感知器2としてTC1~TC4を用いる場合がある。この例では、区間Bは、複数の構成区間として、TC1とTC2との間の区間Baと、TC2とTC3との間の区間Bbと、TC3とTC4との間の区間Bcとを含む。ここで、TC1~TC4は、高速道路の地点である。すなわち、区間Bは、高速道路の地点によって定義される。区間Baの事故発生度は、TC1によって収集された情報に基づいて算出され、区間Bbの事故発生度は、TC2によって収集された情報に基づいて算出され、区間Bcの事故発生度は、TC3によって収集された情報に基づいて算出される。
 
【0067】
  図3では、時刻10:10が最新の事故発生度であり、時刻10:05が前回(5分前)の事故発生度であり、時刻10:00が前々回(10分前)の事故発生度である。事故発生度算出部1141は、各時刻において、各区間Ba~Bcの事故発生度を算出する。そして、事故発生度算出部1141は、各時刻において、区間Ba~Bcの事故発生度から最大の事故発生度を抽出する。
図3では、区間Ba~Bcの事故発生度のうち最大の事故発生度は、それぞれ四角の枠で囲繞されている。そして、事故発生度算出部1141は、抽出した事故発生度を、各時刻における区間Bの事故発生度とする。
 
【0068】
  情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された直近3回(10:00、10:05、10:10)の事故発生度から最大の事故発生度を抽出する。
図3では、区間Bの事故発生度のうち最大の事故発生度は、四角の枠で囲繞されている。そして、情報配信部121は、抽出した事故発生度を、区間Bの提供情報とする。
 
【0069】
  図2に戻って、情報配信部121は、S3で決定した提供情報(事故発生度)を含む事故予報情報を、情報板DT1、ハイウェイラジオDT2、情報提供端末DT3、移動情報端末DT4、車載器DT5等の配信先に配信、すなわち提供する(S4)。
 
【0070】
  以上のように、本実施形態では、交通管制システム10は、事故発生度算出部1141(イベント発生度算出部)と、情報配信部121と、を備える。事故発生度算出部1141は、第1規定時間(例えば、5分)ごとに、高速道路の交通情報に基づいて高速道路における交通事故の発生しやすさを示す事故発生度を算出する。情報配信部121は、事故発生度算出部1141によって算出された直近の規定の複数回の事故発生度のうち最も大きい事故発生度を提供情報とし、当該提供情報を含む事故予報情報を配信先に配信する。よって、本実施形態によれば、配信先に提供される事故発生度の時間変動が大きくなるのを抑制することができる。よって、事故発生度の時間変動によるユーザの混乱を抑制することができる。
【0071】
  次に、本実施形態の提供情報の決定方法の変形例を
図4を参照して説明する。
  
図4は、第1実施形態の提供情報の決定方法の変形例を説明するための説明図である。
  
図4に示す変形例は、
図2に示す一例に対して、下記の点が異なる。すなわち、変形例では、情報配信部121は、区間Ba~Bc毎に3回(10:00、10:05,10:10)の事故発生度から最大の事故発生度を抽出する。
図3では、区間Ba~Bcの事故発生度のうち最大の事故発生度は、それぞれ四角の枠で囲繞されている。そして、情報配信部121は、抽出した事故発生度を、各区間Ba~Bcの最大の事故発生度とする。そして、情報配信部121は、算出された3つの区間Ba~Bcの事故発生度から最大の事故発生度を抽出する。
図3では、区間Ba~Bcの事故発生度のうち最大の事故発生度は、四角の枠で囲繞されている。そして、情報配信部121は、抽出した事故発生度を、区間Bの提供情報とする。
 
【0072】
(第2実施形態)
  次に、第2実施形態について説明する。
  
図5は、第2実施形態の情報提供処理のフローチャートである。
  
図5に示すように、第2実施形態は、第1実施形態に対して、情報提供処理の一部が異なる。具体的には、S4において、情報配信部121は、S3で決定した事故発生度を、情報板DT1、ハイウェイラジオDT2、情報提供端末DT3、移動情報端末DT4、車載器DT5等の配信先に、第1規定時間(例えば5分)の複数倍(例えば3倍)の第2規定時間(例えば15分間)、配信(提供)し続ける。すなわち、情報配信部121は、提供情報を第1規定時間の複数倍の第2規定時間(15分)ごとに更新する。なお、上記の複数倍は、3倍以外であってもよい。
 
【0073】
  図6は、第2実施形態の情報提供と比較例の情報提供とを説明するための説明図である。
図6に示す比較例は、5分毎に、事故発生度の算出および情報提供を行なうものである。なお、
図6の例では、本実形態と比較例のそれぞれにおいて、事故発生度が閾値以上の場合に事故発生度(提供情報)を提供(配信)し、事故発生度が閾値未満の場合には、事故発生度(提供情報)を提供(配信)しない。また、
図6の例では、10:20~10:25の間に実際に交通事故が発生している。本実施形態は、10:10から10:25迄の間、10:10に提供情報として決定した事故発生度を提供し続ける。これにより、事故発生度を提供している期間に事故が発生する。すなわち、本実施形態では、事故予報が的中するという結果が得られる。これに対して、比較例は、10:10に、事故発生度を算出および提供(配信)した後、少なくとも10:15~10:25の間は、事故発生度を提供しない。これは、10:15~10:25の各時刻で算出された事故発生度が閾値未満であったためである。このた、比較例は、事故発生度を提供していない期間に事故が発生する。すなわち、比較例は、事故予報がはずれるという結果となる。
 
【0074】
  以上のように、本実施形態では、情報配信部121は、提供情報を第1規定時間(例えば5分)の複数倍(例えば3倍)の第2規定時間(例えば15分)ごとに更新する。よって、本実施形態によれば、配信先に提供される事故発生度の時間変動が大きくなるのをより抑制することができる。よって、事故発生度の時間変動によるユーザの混乱をより抑制することができる。
【0075】
(第3実施形態)
  次に、第3実施形態について説明する。
  
図7は、第3実施形態の情報提供処理のフローチャートである。
  
図7に示すように、第3実施形態は、第1および第2実施形態に対して、情報提供処理の一部が異なる。
 
【0076】
  具体的には、情報配信部121は、S3で事故発生度を決定した後、S11に進む。S11において、情報配信部121は、交通状況算出部112が算出した渋滞情報に基づいて、道路の区間に交通渋滞が有るかを判定する(S11)。ここで、上述の通り、交通状態の伸縮傾向には、交通渋滞の延伸傾向および交通渋滞の縮小傾向が含まれる。情報配信部121は、交通渋滞が無いと判定した場合には(S11:No)、事故予報情報(提供情報)の提供時間(配信時間)を基準値(基準時間)としての15分に設定する(S4)。そして、情報配信部121は、S4に進む。ここで、提供時間(配信時間、更新間隔)は、記憶部12Bに記憶される。
【0077】
  情報配信部121は、交通渋滞が有ると判定した場合には(S11:Yes)、渋滞情報に基づいて、交通渋滞が過去15分の間に延伸しているか、すなわち交通渋滞が延伸傾向かを判定する(S13)。情報配信部121は、交通渋滞が延伸傾向であると判定した場合には(S13:Yes)、事故予報情報(提供情報)の提供時間(配信時間)を基準値(15分)よりも長い時間、例えば25分に設定する(S14)。すなわち、情報配信部121は、事故予報情報(提供情報)を更新する時間間隔である更新間隔を25分に設定する。そして、情報配信部121は、S4に進む。
【0078】
  情報配信部121は、交通渋滞が延伸傾向ではない判定した場合には(S13:No)、交通渋滞が過去15分の間に縮小しているか、すなわち交通渋滞が縮小傾向かを判定する(S15)。情報配信部121は、交通渋滞が縮小傾向であると判定した場合には(S15:Yes)、事故予報情報(提供情報)の提供時間(配信時間)を例えば20分に設定して基準値(15分)に近づける(S16)。そして、情報配信部121は、S4に進む。
【0079】
  情報配信部121は、情報配信部121は、交通渋滞が延伸傾向でなく(S13:No)かつ縮小傾向でない場合(S15:No)、すなわち渋滞が停滞している場合には(S17)、設定されている事故予報情報(提供情報)の提供時間(配信時間、更新間隔)を保持する(S18)。すなわち、この場合には提供情報の提供時間は変更されない。そして、情報配信部121は、S4に進む。
【0080】
  S4において、情報配信部121は、S12,S14,S16,S18にて設定または保持された提供時間の間、事故予報情報(提供情報)を配信先に配信(提供)する。
【0081】
  以上のように、本実施形態では、情報配信部121は、高速道路の交通渋滞についての情報である渋滞情報が道路の交通渋滞が延伸傾向であることを示す場合には、事故予報情報(提供情報)を更新する更新間隔(時間間隔)を道路に交通渋滞が無い場合の事故予報情報(提供情報)の更新間隔よりも延ばす。また、情報配信部121は、渋滞情報が交通渋滞が縮小傾向であることを示す場合には、事故予報情報(提供情報)の更新間隔を高速道路に交通渋滞が無い場合の事故予報情報(提供情報)の更新間隔に近づける。よって、本実施形態によれば、交通渋滞の伸縮に応じて事故予報情報(提供情報)の更新間隔を設定することができる。
【0082】
  以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
  また、イベント発生度の算出対象のイベントは、交通事故に限られることなく、高速道路の利用者に対して配信する必要のある事象であれば任意に設定可能である。例えば、イベント発生度の算出対象のイベントは、交通渋滞、燃料切れ、落下物、土砂崩れ、雪崩、局地的豪雨等であってもよい。
【0084】
  また、対象となる道路は、高速道路に限定されず、さらに、有料、無料を問わない。
【0085】
  また、提供情報の対象区間は、区間Bに限定されず、例えば、各区間Ba~Bcであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
  10      交通管制システム
  121    情報配信部
  1141  事故発生度算出部(イベント発生度算出部)