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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】安定化システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/24 20060101AFI20230612BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230612BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230612BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230612BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H02J3/24
H02J3/00 170
H02J3/38 120
H02J3/46
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019193966
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021069214
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】下尾 高廣
(72)【発明者】
【氏名】木村 操
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030065(JP,A)
【文献】特開2019-091124(JP,A)
【文献】特開2017-118614(JP,A)
【文献】特開2015-130777(JP,A)
【文献】特開2016-208826(JP,A)
【文献】特開2017-070130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
G06Q50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する電力系統における複数の再生可能エネルギー発電装置から供給される電力の供給を削減した場合の、同期安定性の安定化指標の変化量を算出する安定化指標変化量算出部と、
前記安定化指標変化量算出部により算出された前記安定化指標の前記変化量に基づき、複数の前記再生可能エネルギー発電装置をグループに分類する再エネグループ決定部と、
前記電力系統の複数の潮流断面ごとに、前記再エネグループ決定部により分類された複数の前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの想定される事故の発生時における安定化に必要な出力電力の減少量を算出し、前記潮流断面のノードブランチ情報に基づき前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの前記減少量推定モデルを構築する推定モデル作成部と、
前記推定モデル作成部により算出された前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの前記減少量を前記グループ内の前記再生可能エネルギー発電装置に配分する制御量配分部と、
前記制御量配分部により配分された前記減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループを決定し、出力電力の減少量を前記再生可能エネルギー発電装置に指示する制御部と、
を備える安定化システム。
【請求項2】
前記安定化指標変化量算出部は、系統構成のトポロジーと同期発電機の運転停止状態の類似度に基づき前記電力系統の複数の前記潮流断面を分類し、分類された前記潮流断面に対して、想定される事故ごとの前記安定化指標の前記変化量を算出し、
前記再エネグループ決定部は、分類された前記潮流断面に対して前記安定化指標の前記変化量に基づき、複数の前記再生可能エネルギー発電装置を分類し、前記減少量の推定モデルを作成する単位となる前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループを決定し、
前記推定モデル作成部は、分類された前記潮流断面に対して想定される事故ごとに前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとに前記推定モデルを構築する、
請求項1記載の安定化システム。
【請求項3】
前記安定化指標変化量算出部は、前記再生可能エネルギー発電装置の電力供給の停止により変化する不安定傾向の同期発電機の出力の変化に基づき同期安定性の前記安定化指標の前記変化量を算出する、
請求項1または2に記載の安定化システム。
【請求項4】
前記安定化指標変化量算出部は、前記電力系統の複数の前記潮流断面の類似度を算出し、前記類似度の差分が予め定められた数値より大きい前記潮流断面の組合せを抽出し、前記潮流断面の前記組合せに含まれる前記潮流断面に対して、複数の前記再生可能エネルギー発電装置から所定量の電力供給を停止した場合における同期安定性の前記安定化指標の前記変化量を算出し、さらに平均化し前記安定化指標の前記変化量とする、
請求項2または3記載の安定化システム。
【請求項5】
前記再エネグループ決定部は、前記推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断された場合、各再生可能エネルギー同士の前記安定化指標の前記変化量の差分に基づいて複数の前記再生可能エネルギー発電装置をグループに分類し、
前記推定モデル作成部は、前記教師データに基づいて前記推定モデルを作成する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の安定化システム。
【請求項6】
前記再エネグループ決定部は、安定化の対象となる前記電力系統における複数の同期発電機を安定群と不安定群に分類し、不安定群に分類された前記同期発電機の動揺方程式から、安定度に有意な差が生じる内部位相角変化量に相当する電気出力変化量を算出し、前記電気出力変化量を前記安定化指標に換算した値を閾値とし、前記再生可能エネルギー発電装置の電力供給を停止した場合における、前記安定化指標の前記変化量の差分が前記閾値以下となる前記再生可能エネルギー発電装置を、同一の前記グループに分類する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の安定化システム。
【請求項7】
前記推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断された場合、
前記再エネグループ決定部は、前記閾値による分類において、他のどの前記再生可能エネルギー発電装置とも前記安定化指標の前記変化量の差分が前記閾値以下とならない前記再生可能エネルギー発電装置を単体の前記再生可能エネルギー発電装置として1つのグループに分類し、
前記推定モデル作成部は、前記教師データに基づいて前記推定モデルを作成し、
前記推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断されない場合、
前記再エネグループ決定部は、他のどの前記再生可能エネルギー発電装置とも前記安定化指標の前記変化量の差分が前記閾値以下とならない前記再生可能エネルギー発電装置をグループ化せず、
前記推定モデル作成部は、グループ化されていない前記再生可能エネルギー発電装置を除いて、前記推定モデルを作成する、
請求項6記載の安定化システム。
【請求項8】
前記制御量配分部は、前記安定化指標の前記変化量に基づき、電力供給の減少による安定化効果の最も高い前記再生可能エネルギー発電装置を安定化効果最大グループとして選定して電力供給の停止対象とするとともに、前記安定化効果最大グループのみで安定化にかかる減少量が確保できない場合、前記安定化効果最大グループに対して電力供給を停止することができる最大減少量を割り当てるとともに、前記推定モデルに基づき算出された前記安定化効果最大グループに必要とされる減少量と前記最大可能減少量との差分を、前記安定化効果最大グループと異なる他の前記再生可能エネルギー発電装置にグループに按分して配分する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、同期発電機と再生可能エネルギー発電装置を含む電力系統において、再生可能エネルギー発電装置の出力量を制御し、電力系統の安定を確保する電力系統安定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
事故時の発電機の脱調を防止すべく、収集した電力系統の情報に基づき電力系統における再生可能エネルギー発電装置の出力量を制御する電力系統安定化システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-130777号公報
【文献】特開2016-208826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを利用した再生可能エネルギー発電装置の導入が進んでいる。電力系統に、多数の再生可能エネルギー発電装置が接続される。このため、電力系統に接続される火力、水力などの同期発電機の運転台数は、従来よりも減少する傾向にある。
【0005】
電力系統に接続される火力、水力などの同期発電機の運転台数が減少することにより、発電装置の同期安定性や電圧安定性が低下すると考えられ、電力系統を安定して運用することがより難しくなると予想される。同機器の停止(電制)で安定な系統状態を見つける従来の電力系統安定化システムにかかる制御方法は、このような同期発電機の運転台数が少ない電力系統の制御に適さない可能性がある。
【0006】
同期発電機の運転台数が少ない電力系統において、電力系統全体に対する同期発電機の出力電力の減少量の比率が、従来の電力系統に比べ高くなる。例えば事故発生時等に、電制を行った場合、電力系統が不安定となる可能性がある。このような制御を行った場合、電力系統全体に占める同期発電機の比率がさらに低くなり、電圧維持源が減少し、慣性、同期化力が減少するおそれがあるためである。
【0007】
したがって、同期発電機の運転台数が少ない電力系統において、同期発電機の代わりに再生可能エネルギー発電装置の出力量を減少または停止させ、同期発電機の出力量を一定量確保するようにすることが望ましいともいえる。しかしながら、無作為に再生可能エネルギー発電装置を選択して出力量を減少または停止させる制御を行ったのでは、効率よく電力系統の安定性を確保することができないとの問題点があった。効率よく電力系統の安定性を確保することができる再生可能エネルギー発電装置を選択して、出力量を減少させる制御を行うことが必要とされる。
【0008】
再生可能エネルギー発電装置の出力量を減少または停止させる制御を行った場合、制御対象となった再生可能エネルギー発電装置を保有する発電事業者に損失が発生するとの問題点もある。もしくは、送配電事業者が、発電事業者において発生した損失を補填しなくてはならない場合もある。このため、制御の対象となる再生可能エネルギー発電装置の出力量の減少または停止は、必要最小限とすることが望ましい。一方、事故発生時に電力系統の同期安定性を確保することは、重要である。
【0009】
本実施形態は、上記問題点に鑑み、出力量を減少または停止させる再生可能エネルギー発電装置を選択し、効率よく電力系統の安定性を確保することができる電力系統安定化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の電力系統安定化システムは、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)電力を供給する電力系統における複数の再生可能エネルギー発電装置から供給される電力の供給を削減した場合の、同期安定性の安定化指標の変化量を算出する安定化指標変化量算出部。
(2)前記安定化指標変化量算出部により算出された前記安定化指標の前記変化量に基づき、複数の前記再生可能エネルギー発電装置をグループに分類する再エネグループ決定部。
(3)前記電力系統の複数の潮流断面ごとに、前記再エネグループ決定部により分類された複数の前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの想定される事故の発生時における安定化に必要な出力電力の減少量を算出し、前記潮流断面のノードブランチ情報に基づき前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの前記減少量を推定する推定モデルを構築する推定モデル作成部。
(4)前記推定モデル作成部により推定された前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループごとの前記減少量を前記グループ内の前記再生可能エネルギー発電装置に配分する制御量配分部。
(5)前記制御量配分部により配分された前記減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする前記再生可能エネルギー発電装置の前記グループを決定し、出力電力の減少量を前記再生可能エネルギー発電装置に指示する制御部。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムを用いた電力系統の構成を示す全体図
図2】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの機能フローを示す図
図3】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムの演算部により作成される推定モデルを示す図
図4】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムによる出力電力の制御量の演算を説明する図
図5】第1実施形態にかかる電力系統安定化システムによる再生可能エネルギー発電装置のグループ化にかかる動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1は、第1の実施形態に係る電力系統安定化システム1を用いた電力系統の構成を示す全体図である。本実施形態において、同一構成の装置や部材が複数ある場合、それらについて同一の番号を付して説明を行い、また、同一構成の個々の装置や部材についてそれぞれを説明する場合に、共通する番号にハイフンにより添え字を付けることで区別する。本実施形態において、再生可能エネルギー発電装置6の減少させる出力電力にかかる制御量を、減少量と呼ぶ。再生可能エネルギー発電装置6の減少させる出力電力にかかる制御量は、例えば太陽光発電装置である再生可能エネルギー発電装置6の、出力を停止させるストリングスの電力の停止量であってよい。
【0013】
図1において、同期発電機4-1は、変圧器3-1、遮断器5-1、送電線2-2及び送電線2-1を介して電力系統9と接続される。同様に、同期発電機4-2は変圧器3-2、遮断器5-2、送電線2-2及び送電線2-1を介して電力系統9と接続され、同期発電機4-3は変圧器3-3、遮断器5-3、送電線2-2及び送電線2-1を介して電力系統9と接続される。
【0014】
同期発電機4-1、4-2、4-3は、火力、水力などの発電装置により構成される。変圧器3-1、3-2、3-3は、それぞれ同期発電機4-1、4-2、4-3から出力された電力の電圧を、予め定められた電圧に変換する。
【0015】
遮断器5-1、5-2、5-3は、電力を遮断する開閉器により構成され、それぞれ同期発電機4-1、4-2、4-3から出力された電力を遮断する。遮断器5-1、5-2、5-3は、通信線により電力系統安定化システム1に接続され、電力系統安定化システム1に開閉を制御される。
【0016】
再生可能エネルギー発電装置6-1は、変圧器3-4を介して電力系統9と接続され、再生可能エネルギー発電装置6-2は、変圧器3-5及び送電線2-1を介して電力系統9と接続される。変圧器3-4、3-5は、それぞれ再生可能エネルギー発電装置6-1、6-2から出力された電力の電圧を、予め定められた電圧に変換する。
【0017】
再生可能エネルギー発電装置6-1、6-2は、通信線により電力系統安定化システム1に接続され、電力系統安定化システム1に出力量を制御される。
【0018】
送電線2-1に事故検出装置7-1が、送電線2-2に事故検出装置7-2が設置される。事故検出装置7-1、7-2は、地絡検出装置、異常電圧電流検出装置等により構成される。事故検出装置7-1、7-2は、通信線により電力系統安定化システム1に接続され、電力系統安定化システム1に対し事故情報を送信する。
【0019】
送電線2-1に情報収集装置8-6、8-7が、送電線2-2に情報収集装置8-8、8-9が設置される。同期発電機4-1に情報収集装置8-1が、同期発電機4-2に情報収集装置8-2が、同期発電機4-3に情報収集装置8-3が設置される。再生可能エネルギー発電装置6-1には情報収集装置8-4が、再生可能エネルギー発電装置6-2には情報収集装置8-5が設置される。
【0020】
情報収集装置8-1~8-9は、電力の周波数、位相、電圧、電流、有効電力、無効電力を検出する測定装置により構成される。情報収集装置8-1~8-9は、通信線により電力系統安定化システム1に接続される。情報収集装置8-1~8-9は、電力の周波数、位相、電圧、電流、有効電力、無効電力を検出し、電力情報として電力系統安定化システム1に送信する。
【0021】
[1-2.電力系統安定化システム1の構成]
電力系統安定化システム1は、事故発生時における出力電力の制御量である減少量およびまたは停止量を算出し、対象となる再生可能エネルギー発電装置6を決定する制御装置である。電力系統安定化システム1は、演算部10と制御部20を有する。演算部10と制御部20は、それぞれコンピュータにより構成され、電力系統安定化システム1内部で接続される。または、演算部10と制御部20は、コンピュータにより一体に構成される。電力系統安定化システム1は、電力系統の監視制御を行う給電指令所、系統制御所、集中制御所などの指令室等に設置される。
【0022】
(A、演算部10の構成)
演算部10は、コンピュータにより構成され、制御部20と電力系統安定化システム1内部で接続される。演算部10は、通信線を介して接続された情報収集装置8-1~8-9からの電力情報を受信し、事故発生時において出力電力を減少させる再生可能エネルギー発電装置6および出力電力の減少量を決定する。
【0023】
図2に示す機能フローにおける演算部10の各部は、コンピュータ内のハードウェア、またはソフトウェアモジュールにより構成される。演算部10は、安定化指標変化量算出部11、再エネグループ決定部12、推定モデル作成部13、制御量配分部14を有する。
【0024】
(安定化指標変化量算出部11)
安定化指標変化量算出部11は、電力を供給する電力系統9における複数の再生可能エネルギー発電装置6から供給される電力の供給を削減した場合の、同期安定性の安定化指標の変化量を算出する。
【0025】
(再エネグループ決定部12)
再エネグループ決定部12は、安定化指標変化量算出部11により算出された安定化指標の変化量に基づき、複数の再生可能エネルギー発電装置6をグループ化(グループに分類)する。
【0026】
(推定モデル作成部13)
推定モデル作成部13は、電力系統9の複数の潮流断面ごとに、再エネグループ決定部12によりグループ化された複数の再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの想定される事故の発生時における安定化に必要な出力電力の減少量を算出し、潮流断面のノードブランチ情報に基づき再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量を推定する推定モデルを構築する。
【0027】
(制御量配分部14)
制御量配分部14は、推定モデル作成部13により推定された再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量をグループ内の再生可能エネルギー発電装置6に配分する。
【0028】
(B、制御部20の構成)
制御部20は、コンピュータにより構成され、演算部10と電力系統安定化システム1内部で接続される。制御部20は情報伝送網を介して遮断器5-1、5-2、5-3および再生可能エネルギー発電装置6-1、6-2に接続され、指令値、設定値の送受信を行う。制御部20は、演算部10の制御量配分部14により配分された減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループを決定し、出力電力の減少量を再生可能エネルギー発電装置6に指示する。
【0029】
以上が、電力系統安定化システム1の構成である。
【0030】
[1-2.作用]
次に、図1~5に基づき本実施形態の電力系統安定化システム1の動作の概要を説明する。図2に示す機能フローにかかる、演算部10内のハードウェア、またはソフトウェアモジュールにより構成された安定化指標変化量算出部11、再エネグループ決定部12、推定モデル作成部13、制御量配分部14、および制御部20により下記の演算および制御が行われる。
【0031】
演算部10は、図2に示す機能フローに従い、想定事故ごとに同期発電機4の脱調を防止し電力系統を安定化するため、出力電力の減少または停止の対象となる再生可能エネルギー発電装置6の選択を行う。また演算部10は、解列の対象となる同期発電機4の選択を行う。、制御部20は、演算部10により演算された、配分された減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループを決定し、出力電力の減少量を再生可能エネルギー発電装置6に指示する。また制御部20は、解列の対象となる同期発電機4に対し解列を指示する。本実施形態における電力系統安定化システム1は電力系統の安定化のために再生可能エネルギー発電装置6の出力電力を優先的に減少または停止させる。
【0032】
最初に推定モデルの構築に必要な教師データが複数用意される。教師データは、算出対象となる潮流断面につき複数用意される。教師データは、推定モデルの推定精度を確保するために、特徴の異なる潮流状態を有する潮流断面につき、できるだけ多く用意されることが望ましい。教師データは作業者により演算部10に設定される。演算部10は、教師データに基づき推定モデル作成部13により推定モデルの構築を行う。
【0033】
送電線における遮断器5の開閉状態等により構成される電力系統9の系統構成(トポロジー)や、同期発電機4の運転停止状態が異なることにより、同期安定性や電圧安定性などの、電力系統9の安定度は離散的に異なることとなる。推定モデルは、演算部10により電力系統9の系統構成(トポロジー)と同期発電機4の運転停止状態によって予め分類された潮流断面ごとに構築される。これにより出力電力の減少量の誤差の少ない高精度な推定モデルが構築される。図3に、一つの潮流断面分類に対する推定モデル作成の過程、および推定モデルを用いた制御量算出の過程を示す。
【0034】
演算部10は、各潮流断面に対して潮流計算と過渡安定度計算を行い、安定化に必要とされる再生可能エネルギー発電装置6の出力電力の減少量の算出を行う。再生可能エネルギー発電装置6は、後述する安定化指標変化量に基づいてグループ化され、グループごとに必要とされる減少量が算出される。
【0035】
演算部10は、想定事故ごと、および分類された潮流断面ごとに、ノード電圧、電力、ブランチ潮流等の潮流計算結果を入力、再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの出力電力の安定化に必要とされる減少量を出力とした教師データを生成する。演算部10は、回帰式や機械学習等の統計モデルを適用し、推定モデルを構築する。
【0036】
出力電力の減少の対象となる潮流断面の潮流計算結果と、想定事故が推定モデルに入力されることにより、電力系統9の系統構成(トポロジー)と同期発電機4の運転停止状態の類似度に基づき該当する潮流断面分類が選択される。演算部10により選択された潮流断面分類に対する再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの出力電力の必要とされる減少量が算出される。
【0037】
演算部10は、再生可能エネルギー発電装置6のグループの中で最も減少量が少なく安定化効果の高いグループを事故発生時に制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループとして選択する。事故発生時に、制御部20は、算出された減少量を、選択された制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループに所属する再生可能エネルギー発電装置6のノードに対して、安定化の効果の高い順に配分する。制御部20は、ノードに対し減少量を配分した後、さらに余剰の減少量をノードに含まれる再生可能エネルギー発電装置6に対し配分する。
【0038】
演算部10による過渡安定度解析として、電力系統9の基幹系統における過渡安定度の評価が主として行われる。演算難度の低減や演算時間の短縮の観点から、電力系統9の詳細は模擬されず、一般的に例えば図4に示すように66kV以下の電圧階級を集約模擬した系統モデルとして扱われる。図4に示すモデルは、系統モデル作成時の電圧階級の考え方の一例であり、同期発電機4を除く66kV以下は集約して模擬され、66kVより高い電圧階級は詳細に模擬される。
【0039】
太陽光発電装置等の再生可能エネルギー発電装置6は、一般的に66kV以下の電圧階級に接続されるため、66kV以下の系統に接続される再生可能エネルギー発電装置6が集約されて66kVノードに設置された系統モデルを作成することが有効である。
【0040】
制御部20は、制御対象となる再生可能エネルギー発電装置6のノードと安定化に必要な減少量を決定し、選択されたノードに所属する再生可能エネルギー発電装置6(図4では66kV系統以下の再生可能エネルギー発電装置6)に対して減少量を配分する。減少量は、均等配分や設備容量に応じた配分、公平性に基づいた輪番的な配分等により配分される。
【0041】
(安定化指標変化量算出部11による演算制御)
演算部10の安定化指標変化量算出部11は、電力を供給する電力系統9における複数の再生可能エネルギー発電装置6から供給される電力の供給を削減した場合の、同期安定性の安定化指標の変化量を算出する。
【0042】
最初に安定化指標変化量算出部11は、電力系統9の系統構成(トポロジー)と同期発電機4の運転停止状態に基づき潮流断面の分類を行う。安定化指標変化量算出部11は、例えば過去数日分の運用データから、数多くの電力系統9の系統断面の収集を行い、SV情報に基づき「電力系統9の系統構成(トポロジー)」と「同期発電機4の運転停止状態」の類似度に基づき潮流断面の分類を行う。
【0043】
「電力系統9の系統構成(トポロジー)」、「同期発電機4の運転停止状態」の2つの指標により類似すると判断された潮流断面が、同じグループとされる。「電力系統9の系統構成(トポロジー)」の類似度は、例えば算出された想定事故点からの短絡インピーダンスが指標とされ判断される。過去の電力系統9の系統構成(トポロジー)に基づき、系統の安定度に関して有意な差が生じる短絡インピーダンスが、グループ化における閾値として予め演算部10に設定される。
【0044】
「同期発電機4の運転停止状態」の類似度は、各同期発電機4の運転停止状態が離散値のベクトルとされて比較されることにより判断される。「同期発電機4の運転停止状態」の類似度は、例えば系統の安定度の過去の計算結果に基づき、事故条件ごとに不安定となる同期発電機4が選別され、その選別された同期発電機4の運転停止状態により判断される。
【0045】
演算部10の安定化指標変化量算出部11は、上記により潮流断面を分類した後、再エネグループ決定部12による再生可能エネルギー発電装置6のグループ化に用いられる安定化指標変化量Sの算出を、電力系統9の潮流断面の分類ごとに行う。安定化指標変化量Sは、再生可能エネルギー発電装置6の出力電力の減少または停止による安定化効果を示す指標である。一例として安定化指標変化量Sは、(式1)により算出される。
【0046】
安定化指標変化量Siは、各想定事故ケースおよび潮流断面の分類ごとに算出される。i番目の再生可能エネルギー発電装置6-iを単位量につき減少または停止した場合における同期発電機4の発電機群の安定化指標の変化感度を示す。
【0047】
(式1)は、再生可能エネルギー発電装置6-iを単位量につき減少または停止した場合に不安定となる同期発電機4の出力増分を、不安定となる同期発電機4の容量と再生可能エネルギー発電装置6の減少または停止にかかる単位量ΔPREiで標準化したものを、再生可能エネルギー発電装置6-iの出力電力の減少または停止した場合の安定化効果の変化感度としている。同期発電機4の発電機群の安定化指標は、再生可能エネルギー発電装置6の出力電力の減少または停止時に、不安定となる同期発電機4の出力増分に限らず、例えば内部位相差角の変化量(減少量)などであってもよい。
【数1】
・・・・・ (式1)
i:再生可能エネルギー発電装置6の番号
(i∈I, I:制御対象候補の再エネノードの集合)
j:同期発電機4の番号
U:不安定となる同期発電機4の群
ΔPREi:再生可能エネルギー発電装置6の減少または停止にかかる単位量
ΔPG:再生可能エネルギー発電装置6の出力電力をΔPREi減少または停止した場合における同期発電機4の出力電力の増加分
【0048】
安定化指標変化量Siは、想定される事故条件および潮流断面の分類ごとに算出される。潮流断面の分類に複数の潮流断面が含まれる場合、例えば、潮流断面の分類に含まれる複数の潮流断面の中から、代表となる1断面を選択し安定化指標変化量Siを算出するようにしてもよい。例えば、潮流計算結果のノードブランチの電圧、潮流、位相等の値から、重心を算出し、重心に最も近い潮流断面を代表1断面として安定化指標変化量Siを算出するようにしてもよい。
【0049】
また、潮流断面の分類に複数の潮流断面が含まれる場合、潮流断面の分類の中で最も特徴の異なる2断面を選択し、2断面でそれぞれ安定化指標変化量Siを算出し平均化するようにしてもよい。例えば、潮流計算結果のノードブランチの電圧、潮流、位相等の特徴量の距離が最も離れている2断面を選択し、2断面でそれぞれ安定化指標変化量Siを算出し平均化するようにしてもよい。または、安定化対象となる電力系統に属する同期発電機4を安定群と不安定群に分類し、不安定群の同期機の出力のみを特徴量とした場合に、当該特徴量で計算した距離が最も離れている2断面を選択し、2断面でそれぞれ安定化指標変化量Siを算出し平均化するようにしてもよい 。
【0050】
安定化指標変化量Siは、減少または停止の候補となる再生可能エネルギー発電装置6のノード数N個につき算出される。
【数2】
・・・・・ (式2)
【0051】
(再エネグループ決定部12による演算制御)
演算部10の再エネグループ決定部12は、安定化指標変化量算出部11により算出された安定化指標の変化量である安定化指標変化量Siに基づき、複数の再生可能エネルギー発電装置6をグループに分類する。
【0052】
図5に基づき、再生可能エネルギー発電装置6のグループ化にかかる動作の一例を説明する。図5に示すグループ化の例において、再生可能エネルギー発電装置6は安定化指標変化量Siの差に基づきグループ化される。予め設定された安定化指標変化量Siの差にかかる閾値に基づき、再生可能エネルギー発電装置6はグループ化される。
【0053】
推定モデルを構築する十分な教師データを確保することができる場合、グループ化から漏れた再生可能エネルギー発電装置6は、単体での推定モデルが構築される。推定モデルを構築する十分な教師データを確保することができない場合、グループ化から漏れた再生可能エネルギー発電装置6は、推定モデルの構築から除外される。
【0054】
安定化指標変化量Siの差の閾値は、一例として電力系統9の同期発電機4を安定群と不安定群に分類し、不安定群の動揺方程式に基づき安定度に有意な差が生じる内部位相角変化に相当する電気出力変化を算出し、電気出力変化を安定化指標に換算することにより算出される。
【0055】
例えば、不安定発電機群の動揺方程式に基づき、4秒の動揺周期の場合の0.5πに相当する1秒で5°程度の差が生じる電気出力変化が安定化指標に換算され、安定化指標変化量Siの差の閾値とされる。また、グループ化の方法は上記に限らず、例えば各グループで推定モデルを構築する十分な教師データを確保することを制約条件とし、安定化指標変化量Siの差に応じたクラスタリングを実施するなどの方法によるものであってもよい。
【0056】
再エネグループ決定部12は、および潮流断面分類の各々において、想定事故、およびその潮流断面分類内の複数の潮流断面に対して、グループ化された再生可能エネルギー発電装置6の安定化に必要なグループごとの出力電力の減少量を算出する。再エネグループ決定部12は、潮流計算結果(ノード電圧、電力、ブランチ潮流等)を入力、再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの出力電力の減少量を出力とした教師データを作成する。
【0057】
安定化に必要な再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの出力電力の減少量は、例えば安定化指標変化量Siの高い再生可能エネルギー発電装置6から順に出力電力の減少量が積み上げられ算出される。また、減少量は、上記に限らず、例えば再生可能エネルギー発電装置6の同一のグループに含まれる再エネに対して、総当たり的に減少量が積み上げられることにより算出されるようにしてもよい。
【0058】
(推定モデル作成部13による演算制御)
演算部10の推定モデル作成部13は、電力系統9の複数の潮流断面ごとに、再エネグループ決定部12によりグループ化された複数の再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの想定される事故の発生時における安定化に必要な出力電力の減少量を算出し、潮流断面のノードブランチ情報に基づき再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量を推定する推定モデルを構築する。
【0059】
推定モデル作成部13は、再エネグループ決定部12により作成された教師データに基づき、想定事故、潮流断面分類、再生可能エネルギー発電装置6のグループごとに、回帰式や機械学習等の統計モデルにより出力電力の減少量の推定モデルを構築する。減少量の算出の対象となる潮流断面の潮流計算結果と想定事故が推定モデルに入力されることにより、「電力系統9の系統構成(トポロジー)」と「同期発電機4の運転停止状態」の類似度から該当する潮流断面分類が選択され、その潮流断面分類に対応する再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量が算出される。
【0060】
(制御量配分部14による演算制御)
演算部10の制御量配分部14は、推定モデル作成部13により推定された再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量をグループ内の再生可能エネルギー発電装置6に配分する。
【0061】
制御量配分部14は、安定化指標変化量Siに基づき、最も出力電力の減少または停止による安定化効果の高い再生可能エネルギー発電装置6のグループを、制御対象となる安定化効果最大グループとして選択する。安定化効果最大グループに対して推定モデルで算出した減少量が、安定化効果最大グループ内の再生可能エネルギー発電装置6の合計出力値を超え、単一の安定化効果最大グループで安定化に必要とされる減少量を確保することができない場合、安定化効果最大グループに対して可能である最大の減少量を割り当てるとともに、減少量の余剰量を他の再生可能エネルギー発電装置6のグループに、安定化効果の高い順に按分して配分する。減少量の余剰量の割り当ては、安定化効果最大グループと、他のグループ各々のグループ単体の、必要とされる減少量の比率によって配分量が算出され行われる。
【0062】
(制御部20による演算制御)
制御部20は、演算部10の制御量配分部14により配分された減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループを決定し、出力電力の減少量を再生可能エネルギー発電装置6に指示する。
【0063】
制御部20は、事故発生時に、制御量配分部14で算出した再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量を、さらに安定化効果の高い順に、再生可能エネルギー発電装置6のグループに所属する再生可能エネルギー発電装置6のノードに対して配分する。
【0064】
以上が、電力系統安定化システム1の動作である。
【0065】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1は、電力を供給する電力系統9における複数の再生可能エネルギー発電装置6から供給される電力の供給を削減した場合の、同期安定性の安定化指標の変化量を算出する安定化指標変化量算出部11と、安定化指標変化量算出部11により算出された安定化指標の変化量に基づき、複数の再生可能エネルギー発電装置6をグループに分類する再エネグループ決定部12と、電力系統9の複数の潮流断面ごとに、再エネグループ決定部12により分類された複数の再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの想定される事故の発生時における出力電力の減少量を算出し、潮流断面のノードブランチ情報に基づき再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量を推定する推定モデルを構築する推定モデル作成部13と、推定モデル作成部13により推定された再生可能エネルギー発電装置6のグループごとの減少量をグループ内の再生可能エネルギー発電装置6に配分する制御量配分部14と、制御量配分部14により配分された減少量に基づき、事故発生時に制御対象とする再生可能エネルギー発電装置6のグループを決定し、出力電力の減少量を再生可能エネルギー発電装置6に指示する制御部20とを備えるので、出力電力を減少または停止させる再生可能エネルギー発電装置を選択し、効率よく電力系統の安定性を確保することができる電力系統安定化システム1を提供することができる。
【0066】
将来、再生可能エネルギー発電装置6の導入が促進され、電力系統9は従来よりも火力、水力など同期発電機4の運転台数を減らした運用となることが予測される。このため同期安定性や電圧安定性が低下し、電力系統9を安定的に運用することがより難しくなる可能性がある。同期機を停止する従来技術による電力系統安定化システムにかかる制御方法は、同期発電機4の運転台数が少ない電力系統9の制御に適さない可能性がある。
【0067】
同期発電機4の運転台数が少ない電力系統9では、電力系統9全体の出力電力に対する同期発電機4の出力電力の減少量の割合が高くなるため、慣性、同期化力の減少や電圧維持源の減少といった制御における短所が強く表れ、従来技術による電力系統安定化システムにかかる制御方法を用いたのでは、逆に不安定な状態に陥る恐れが考えられるためである。
【0068】
これを改善するため、従来技術の一例として、再生可能エネルギー発電装置6を出力電力の減少または停止の対象とする制御方法等が存在する。しかしながら、従来技術にかかる制御方法は、詳細な過渡安定度計算の反復により制御量を算出するオンライン事前演算型安定化システム等によるものであった。従来技術にかかる制御方法は、制御量の算出に時間を要する等の問題点があった。
【0069】
本実施形態にかかる電力系統安定化システム1は、安定化に必要な制御量を推定する推定モデルをオフラインシミュレーションによって事前に構築し、迅速に制御量の算出を行うことができる。
【0070】
再生可能エネルギー発電装置6は、同期発電機4と比較して分散設置されているため、一般に再生可能エネルギー発電装置6を制御対象とする場合、複数個所に点在する再生可能エネルギー発電装置6を制御することが必要となる。電力系統9をノードブランチで表現した電力系統モデルで表した場合、同期発電機4を制御対象とした場合と比較して、再生可能エネルギー発電装置6を制御対象とした場合の方が、より多くのノードの電源を制御する必要が生じると考えられる。
【0071】
したがって、単一のノードに対して推定モデルを構築することは、多大な教師データが必要とされ効率的であるとは言えない。これを解決するために複数ノードの再生可能エネルギー発電装置6をグループ化し、このグループに対する推定モデルを構築することが有効である。また、制御にかかる出力電力の減少量は必要最小限に抑えられることが望ましい。
【0072】
本実施形態によれば、複数ノードの再生可能エネルギー発電装置6を電力系統9の安定化効果の類似度に基づいてグループ化して推定モデルを構築し、制御にかかる出力電力の減少量を必要最小限に抑え、電力系統9の安定化に有効な再生可能エネルギー発電装置6および出力電力の減少量を決定することができる。
【0073】
本実施形態によれば、慣性、同期化力の減少や電圧維持源の減少等の制御における短所が改善された、同期発電機4の運転台数が少ない電力系統9を安定的に制御することができる電力系統安定化システム1を提供することができる。
【0074】
(2)本実施形態によれば、安定化指標変化量算出部11は、系統構成のトポロジーと再生可能エネルギー発電装置6の電力供給の停止における状態の類似度に基づき電力系統9の複数の潮流断面を分類し、分類された潮流断面に対して、想定される事故ごとの安定化指標の変化量を算出し、再エネグループ決定部12は、分類された潮流断面に対して安定化指標の変化量に基づき、複数の再生可能エネルギー発電装置6をグループ化し、減少量の推定モデルを作成する単位となる再生可能エネルギー発電装置6のグループを決定し、推定モデル作成部13は、分類された潮流断面に対して想定される事故ごとに再生可能エネルギー発電装置6の前記グループごとに推定モデルを構築するので、迅速に出力電力を減少または停止させる再生可能エネルギー発電装置を選択し、効率よく電力系統の安定性を確保することができる電力系統安定化システム1を提供することができる。
【0075】
本実施形態にかかる電力系統安定化システム1は、分類された潮流断面に対して想定される事故ごとに再生可能エネルギー発電装置6のグループごとに安定化に必要な制御量である減少量を推定する推定モデルをオフラインシミュレーションによって事前に構築し、迅速に制御量である減少量の算出を行うことができる。
【0076】
(3)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1の安定化指標変化量算出部11は、再生可能エネルギー発電装置6の電力供給の停止により変化する不安定傾向の同期発電機4の出力に基づき同期安定性の安定化指標の変化量を算出する。
【0077】
安定化指標の変化量の差分に基づいて再生可能エネルギー発電装置6がグループに分類され、電力系統9の安定化に効果の高い再生可能エネルギー発電装置6のグループが優先的に制御対象に選択にされ出力電力の減少量が指示されるので、各再生可能エネルギー発電装置6のグループにおける出力電力の減少量が抑制される。
【0078】
(4)本実施形態によれば、安定化指標変化量算出部11は、電力系統9の複数の潮流断面の類似度を算出し、類似度の差分が予め定められた数値より大きい潮流断面の組合せを抽出し、潮流断面の組合せに含まれる潮流断面に対して、複数の再生可能エネルギー発電装置6から所定量の電力供給を停止した場合における同期安定性の安定化指標の変化量を算出し、さらに平均化し安定化指標の変化量とするので、潮流断面に対し効率よく電力系統の安定性を確保することができる、出力電力を減少または停止させる再生可能エネルギー発電装置6を選択することができる。
【0079】
(5)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1の再エネグループ決定部12は、推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断された場合、各再生可能エネルギー同士の安定化指標の変化量の差分に基づいて複数の再生可能エネルギー発電装置6をグループに分類する。
【0080】
同期発電機4と比較して個々の出力が小さい再生可能エネルギー発電装置6がグループ化されるので、十分な数の教師データを確保することができ、教師データに基づき構築された推定モデルにより、電力系統9の安定化に必要とされる出力電力の減少量の算出、および再生可能エネルギー発電装置6の選択を迅速に行うことができる。
【0081】
(6)本実施形態によれば、電力系統安定化システム1の再エネグループ決定部12は、安定化の対象となる電力系統9における複数の同期発電機4を安定群と不安定群に分類し、不安定群に分類された同期発電機4の動揺方程式から、安定度に有意な差が生じる内部位相角変化量に相当する電気出力変化量を算出し、電気出力変化量を安定化指標に換算した値を閾値とし、再生可能エネルギー発電装置6の電力供給を停止した場合における、安定化指標の変化量の差分が閾値以下となる再生可能エネルギー発電装置6を、同一のグループに分類する。これにより、電力系統9の安定化効果の近い再生可能エネルギー発電装置6がグループ化されるので、推定モデルによる推定誤差を最小化することができる。
【0082】
(7)本実施形態によれば、再エネグループ決定部12は、閾値によるグループ化において、他のどの再生可能エネルギー発電装置6とも安定化指標の変化量の差分が閾値以下とならない再生可能エネルギー発電装置6を、推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断された場合、単体の再生可能エネルギー発電装置6を1つのグループとして推定モデルを作成し、推定モデルを作成する十分な教師データが存在すると判断されない場合、推定モデルの作成の対象から除くので、より精度よく電力系統9の安定化効果の高い再生可能エネルギー発電装置6、および出力電力の減少量が算出される。
【0083】
(8)本実施形態によれば、制御量配分部14は、安定化指標の変化量に基づき、電力供給の減少による安定化効果の最も高い再生可能エネルギー発電装置6を安定化効果最大グループとして選定して電力供給の停止対象とするとともに、安定化効果最大グループのみで安定化にかかる減少量が確保できない場合、安定化効果最大グループに対して電力供給を停止することができる最大減少量を割り当てるとともに、推定モデルに基づき算出された安定化効果最大グループに必要とされる減少量と最大可能減少量との差分を、安定化効果最大グループと異なる他の再生可能エネルギー発電装置にグループに按分して配分するので、安定化効果最大グループのみで安定化にかかる減少量が確保できない場合であっても、効率よく電力系統9の安定化効果の高い再生可能エネルギー発電装置6、および出力電力の減少量が算出され再生可能エネルギー発電装置6に配分される。
【0084】
[2.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0085】
(1)上記実施形態では、電力系統9は、同期発電機4-1、4-2、4-3、再生可能エネルギー発電装置6-1、6-2を有するものとしたが、電力系統9が有する同期発電機4、再生可能エネルギー発電装置6の数量、系統構成はこれに限られない。電力系統9は、任意の数量の同期発電機4、再生可能エネルギー発電装置6を有していてよい。また、電力系統9は、任意の系統構成を有していてよい。
【符号の説明】
【0086】
1・・・電力系統安定化システム
2,2-1,2-2・・・送電線
3,3-1,3-2,3-3・・・変圧器
4,4-1,4-2,4-3・・・同期発電機
5,5-1,5-2,5-3・・・遮断器
6,6-1,6-2・・・再生可能エネルギー発電装置
7,7-1,7-2・・・事故検出装置
8,8-1,8-2,8-3,8-4,8-5,8-6,8-7,8-8,8-9・・・
情報収集装置
9・・・電力系統
10・・・演算部
11・・・安定化指標変化量算出部
12・・・再エネグループ決定部
13・・・推定モデル作成部
14・・・制御量配分部
20・・・制御部

図1
図2
図3
図4
図5