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  • 特許-液晶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】液晶媒体
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/38 20060101AFI20230612BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20230612BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20230612BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230612BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C09K19/38
C09K19/54 Z
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
G02F1/13 500
G02F1/13 505
G02F1/1334
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019561933
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061784
(87)【国際公開番号】W WO2018206538
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】17170675.7
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕子
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 秀男
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/173693(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/041872(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/041893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K19/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の重合性化合物と、式CYで示される1種以上の化合物と、式PYで示される1種以上の化合物と、式TOで示される1種以上の化合物と、光開始剤とを含む、液晶(LC)媒体:
【化1】
[式中、
aは、1または2を指し、
bは、0または1を指し、
【化2】
は、
【化3】
を指し、
【化4】
は、
【化5】
を指し、
、Rは、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを指し、
は、-CH CH -、-CH=CH-、-CF O-、-OCF -、-CH O-、-OCH -、-C -、-CF=CF-、-CH=CH-CH O-または単結合、好ましくは、単結合を指し、
は、-CHCH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CO-O-、-O-CO-、-C-、-CF=CF-、-CH=CH-CHO-または単結合、好ましくは、単結合を指し、
1~4は、それぞれ独立して、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを指す]。
【請求項2】
式Tで示される1種以上の化合物
【化6】
[式中、RおよびRが、請求項1で与えられた意味を有し、LT1~T6が、それぞれ独立して、H、FまたはClを指し、LT1~LT6の少なくとも1つが、FまたはClである]
をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のLC媒体。
【請求項3】
前記式TOで示される化合物が、下記式:
【化7】
【化8】
[式中、RおよびRが、請求項1で定義されたとおりである]
から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載のLC媒体。
【請求項4】
前記重合性化合物が、式I
-B-(Z-B-R
[式中、個々の基が、各出現において、同一または異なってかつそれぞれ独立して、下記:
およびRが、P、P-Sp-、H、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、SFまたは直鎖もしくは分岐鎖で1~25個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基が、それぞれ独立して、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R00)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子が、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP-Sp-により置き換えられていてもよい)を指し、ここで、Bおよび/またはBが、飽和C原子を含有する場合、Rおよび/またはRは、この飽和C原子にスピロ結合している基を指すこともでき、
前記基RおよびRの少なくとも一方が、基PまたはP-Sp-を指すかまたは含有し、
Pが、重合性基であり、
Spが、スペーサー基または単結合であり、
およびBが、好ましくは、4~25個の環原子を有し、縮合環を含有することもでき、置換されていないかまたはLにより単置換もしくは多置換されている芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式または複素環式基であり、
が、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-OCO-、-O-CO-O-、-OCH-、-CHO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-(CHn1-、-CFCH-、-CHCF-、-(CFn1-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR00または単結合であり、
およびR00が、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
mが、0、1、2、3または4であり、
n1が、1、2、3または4であり、
Lが、P、P-Sp-、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)N(R、-C(=O)Y、-C(=O)R、-N(R、場合により置換されているシリル、6~20個のC原子を有する場合により置換されているアリールまたは直鎖もしくは分枝鎖で、1~25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ(これらにおいて、加えて、1つ以上のH原子が、F、Cl、PまたはP-Sp-により置き換えられていることもできる)であり、
が、ハロゲンであり、
が、P、P-Sp-、H、ハロゲン、直鎖、分岐鎖または環状で、1~25個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基が、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-Oにより置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子が、F、Cl、PもしくはP-Sp、6~40個のC原子を有する場合により置換されているアリールもしくはアリールオキシ基または2~40個のC原子を有する場合により置換されているヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシ基により置き換えられていてもよい)であるという
意味を有する]
から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項5】
前記重合性化合物が、下記式:
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【化9-4】
【化9-5】
[式中、個々の基が、各出現において、同一または異なってかつそれぞれ独立して、下記:
、P、Pが、請求項4においてPに与えられた意味の1つ、好ましくは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンまたはエポキシ基であり、
Sp、Sp、Spが、請求項4においてSpに与えられた意味の1つであり、ここで、加えて、1つ以上の基P-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-が、Raaを指すこともでき、ただし、少なくとも1つの存在する基P-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-が、Raaとは異なるという条件であり、
aaが、H、F、Cl、CNまたは直鎖もしくは分岐鎖で、1~25個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基が、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、それぞれ独立して、-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子が、F、Cl、CNまたはP-Sp-、特に好ましくは、直鎖または分枝鎖で、1~12個のC原子を有する、場合により単フッ化または多フッ化されているアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシにより置き換えられていてもよく、この場合、前記アルケニルおよびアルキニル基が、少なくとも2つのC原子を有し、前記分岐鎖基が、少なくとも3つのC原子を有する)であり、
、R00が、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
およびRが、H、F、CHまたはCFであり、
、X、Xが、-CO-O-、-O-CO-または単結合であり、
が、-O-、-CO-、-C(R)-または-CFCF-であり、
、Zが、-CO-O-、-O-CO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-または-(CH-(式中、nが、2、3または4である)であり、
Lが、F、Cl、CNまたは直鎖もしくは分枝鎖で、1~12個のC原子を有する、場合により単フッ化もしくは多フッ化されているアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
L’、L’’が、H、FまたはClであり、
rが、0、1、2、3または4であり、
sが、0、1、2または3であり、
tが、0、1または2であり、
wが、0または1であり、
xが、0または1であるという
意味を有する]
から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項6】
前記重合性化合物が、下記式
【化10】
[式中、P、P、Sp、Sp、Lおよびrが、請求項において与えられた意味を有する]
から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項7】
下記式
【化11】
から選択される光開始剤を含有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項8】
前記重合性化合物の合計割合が、3~25重量%であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項9】
前記重合性化合物が重合されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のLC媒体。
【請求項10】
スイッチング素子に使用するためのスイッチング層であって、前記スイッチング層は、透明スイッチング状態と散乱スイッチング状態とを有し、上側スイッチング層平面と下側スイッチング層平面との間にLC媒体を含み、前記LC媒体は、請求項1からまでのいずれか1項で定義されたとおりであることを特徴とする、
スイッチング層。
【請求項11】
前記LC媒体が、ネマチック配向分子を含むことを特徴とする、請求項10記載のスイッチング層。
【請求項12】
前記LC媒体中の前記重合性化合物を重合して、ポリマーネットワークを形成していることを特徴とする、請求項10または11記載のスイッチング層。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれか1項記載のスイッチング層を含む、
スイッチングデバイス。
【請求項14】
前記スイッチング層が、第1の層列に配置され、前記第1の層列が、外側から内側に向かって、
- 外側基板層と、
- 外側導電層と、
- 前記スイッチング層と、
- 内側導電層と、
- 内側基板層とを含む、請求項13記載のスイッチングデバイス。
【請求項15】
請求項10から14までのいずれか1項記載のスイッチング層またはスイッチングデバイスを含む、
スイッチング可能な窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物を含む液晶(LC)媒体、その製造方法、光学的、電気光学的および電子的目的のためのその使用、特に、領域要素を通る光の通過を調節するためのスイッチングデバイス、例えば、スイッチング可能な窓におけるその使用に関する。
【0002】
太陽光の種々の吸収度を可能にする暗化可能スイッチング層を有する窓要素が、当業者に公知である。これらの窓要素は、多くの場合、例えば、米国特許出願公開第2016/033807号明細書に開示されているように、印加電極によりアドレス指定される液晶(LC)媒体を含むスイッチング層に基づいている。上記されたスイッチング層のうちの1つを有するスイッチング素子を含有する窓要素は、「明」状態と「暗」状態との間で切り替えることができ、それにより、その外壁に窓の光透過コンポーネントとして窓要素を含有する部屋の遮光が、「暗」スイッチング状態で達成され、遮光の程度は、スイッチング素子に印加される電圧により調節することができる。
【0003】
しかしながら、「暗」スイッチング状態でさえ窓要素を通って部屋に入る太陽光は、多くの人々にとって不快であると見なされる。「暗い」太陽光によってさえもまぶしく感じられるためである。まぶしさを回避するために、スイッチング素子を常に「より暗い」スイッチング状態に切り替えることができるが、最終的にもはやまぶしいとはみなされない「暗」スイッチング状態が達成されるまで、人々が太陽光によるまぶしさに様々な程度で感じることをさらに考慮しなければならない。最終的に、全ての人にとって十分な「暗」スイッチング状態が達成される場合、そのような方法で遮光された部屋は、多くの場合、作業が絶対的に不可能ではないにしても、少なくともより困難になるほど暗い。その結果、人工照明により作業に要する明るさを回復させなければならないが、これは、エネルギーの観点からは望ましくない。
【0004】
したがって、本発明の目的は、室内で必要とされる明るさとは独立して、室内の太陽光によるまぶしさを調節することを可能にすることにより、人工照明の必要性を回避する、スイッチング素子を含有する窓要素を提供することである。
【0005】
ポリマー分散型液晶(PDLC)フィルムは、電気的に切り替えることができるため、フレキシブルディスプレイ、透明ディスプレイおよびスマート窓に相当な可能性を有する。曇りから透明に切り替えられる通常(ノーマリー)曇りPDLCモードは、その製造が容易であるために一般的である。
【0006】
しかしながら、無電圧での通常曇った外観を有する窓は、欠点となる場合がある。本発明者らは、窓用途の場合、通常透明モードPDLCがより好ましくできることを明らかにした。本明細書において提示された1つの解決策は、通常透明ポリマーネットワークLCデバイスである。
【0007】
光重合した液晶(LC)分子のネットワークを含有する液晶に基づく異方性ゲルを、電場の印加により、LCディスプレイセルを無散乱モードから散乱モードに可逆的に切り替えるのに使用した(R.M.A. Hikmet, J. Appl. Phys. 68(9), 1990, 4406-4412)。
【0008】
したがって、本発明の別の目的は、スイッチング素子の透明状態から不透明状態、すなわち、非透過状態へのスイッチングを可能にする、スイッチング素子に使用するためのスイッチング層を提供することである。本明細書において、不透明状態は、スイッチング素子を通過した光が散乱した状態である。不透明スイッチング状態により、上記言及されたようなまぶしさの低減およびプライバシーの確立から選択される1つ以上の効果を生じさせるものとする。
【0009】
本発明の更なる目的は、大面積光学デバイス、例えば、窓ガラスおよび他の透明な建築要素の容易な製造である。大きなガラス基板上への薄い機能層の堆積は、通常、相当な技術的努力と組み合わせられる。
【0010】
発明の概要
本発明は、1種以上の重合性化合物と、式CYおよびPYから選択される1種以上の化合物と、式TOで示される1種以上の化合物とを含む、液晶(LC)媒体に関する:
【化1】
[式中、
aは、1または2を指し、
bは、0または1を指し、
【化2】
は、
【化3】
を指し、
【化4】
は、
【化5】
を指し、
、Rは、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを指し、
およびZは、それぞれ独立して、-CHCH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CO-O-、-O-CO-、-C-、-CF=CF-、-CH=CH-CHO-または単結合、好ましくは、単結合を指し、
1~4は、それぞれ独立して、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを指す]。
【0011】
本発明の更なる目的は、
- 式CYおよびPYから選択される1種以上の化合物ならびに式TOで示される1種以上の化合物を含む、低分子量LC成分(以下、「ホスト混合物」とも呼ばれる)と、
- 1種以上の重合性化合物および場合により、1種以上の光開始剤を含む重合性成分またはその重合生成物(例えば、ポリマーネットワーク)とを含む、LC媒体である。
【0012】
さらに、本発明は、重合性化合物が重合されている、上記されかつ以下に記載されるLC媒体に関する。
【0013】
さらに、本発明は、領域要素を通る光の通過を調節するためのスイッチングデバイス、非常に好ましくは、スイッチング可能な窓における、上記されかつ以下に記載されるLC媒体の使用に関する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明に係るLC媒体を含み、好ましくは、LC媒体の重合性化合物が重合して、ポリマーネットワークを形成している、領域要素を通る光の通過を調節するためのスイッチングデバイス、非常に好ましくは、スイッチング可能な窓に関する。
【0015】
さらに、本発明は、スイッチングデバイスにおける使用のためのスイッチング層であって、スイッチング層が、透明スイッチング状態と散乱スイッチング状態とを有し、上側スイッチング層平面USLPと下側スイッチング層平面LSLPとの間に、少なくとも
- 低分子量LC成分および
- 重合性成分またはポリマー成分
を含むLC媒体を含み、
低分子量LC成分および重合性成分またはポリマー成分が、上記および以下で定義されるとおりである、スイッチング層に関する。
【0016】
さらに、本発明は、スイッチング素子における使用のためのスイッチング層であって、スイッチング層が、透明スイッチング状態と散乱スイッチング状態とを有し、上側スイッチング層平面と下側スイッチング層平面との間にLC媒体を含み、LC媒体が、上記および以下に記載されるとおりであることを特徴とする、スイッチング層に関する。好ましくは、スイッチング層のLC媒体は、ネマチック配向分子を含む。好ましくは、スイッチング層のLC媒体中の重合性化合物が重合して、ポリマーネットワークを形成している。
【0017】
さらに、本発明は、上記および以下に記載されるスイッチング層を含む、スイッチングデバイスに関する。
【0018】
好ましくは、スイッチング可能なデバイスにおいて、スイッチング層は、第1の層列に配置され、第1の層列は、外側から内側に向かって、
- 外側基板層と、
- 外側導電層と、
- 上記および以下に記載されるスイッチング層と、
- 内側導電層と、
- 内側基板層とを含む。
【0019】
さらに、本発明は、上記および以下に記載されるスイッチング層またはスイッチングデバイスを含む、スイッチング可能な窓に関する。
【0020】
さらに、本発明は、1つ以上のさらなる層、例えば、透明電極または配向層を場合により備える2つの平面平行基板の間に、上記および以下に記載される1種以上の重合性化合物を含むLC媒体を充填するかまたは他の方法で提供する工程と、重合性化合物を重合させる工程とを含む、上記および以下に記載されるスイッチングデバイスを製造するための方法に関する。
【0021】
重合性化合物は、好ましくは、光重合により、非常に好ましくは、UV光重合により重合される。
【0022】
さらに、本発明は、式CYおよび/またはPYで示される1種以上の化合物を、式TOで示される1種以上の化合物および1種以上の重合性化合物と、場合によりさらなるLC化合物および/または添加剤とを混合する工程を含む、上記および以下に記載されるLC媒体を製造するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例3または4のそれぞれの重合性混合物を含有するスイッチングデバイスについての透過率対電圧のグラフを示す。
【0024】
用語および定義
本明細書で使用する場合、「スイッチング層」および「スイッチングデバイス」という用語は、2つの状態の間でスイッチング可能であり、層またはデバイスを通る光の通過に変化を引き起こし、好ましくは、2つの状態が、例えば、電圧を印加することにより、異なる光透過率を有する、層またはデバイスを意味すると理解されるであろう。
【0025】
本明細書で使用する場合、「光線」という用語は、UV-A、VISおよびNIR領域における電磁波を意味すると理解されるであろう。特に、窓に通常使用される材料(例えば、ガラス)により吸収されないかまたは無視できる程度にしか吸収されない波長を有する光線を意味すると理解されるであろう。通常使用される定義によれば、UV-A領域は、320nm~380nmの波長を意味し、VIS領域は、380nm~780nmの波長を意味し、NIR領域は、780nm~2000nmの波長を意味すると理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用する場合、「二色性色素」という用語は、その吸収特性が光の偏光の方向に対する分子の配向により決まる光吸収性化合物を意味すると理解されるであろう。典型的には、本願に係る二色性色素は、細長い形状を有し、すなわち、色素分子は、他の2つの空間方向におけるより、1つの空間方向(長手方向軸)において顕著に長い。
【0027】
本明細書で使用する場合、「液晶(LC)媒体」という用語は、特定の条件下で液晶特性を有する材料を意味すると理解されるであろう。本発明に係るLC媒体は、典型的には、分子が細長い形状を有する、すなわち、他の2つの空間方向におけるより、1つの空間方向(長手方向軸)において顕著に長い化合物を含む。LC媒体は、好ましくは、ネマチック相を有する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「低分子量化合物」という用語は、「ポリマー化合物」または「ポリマー」とは対照的に、モノマーでありかつ/または重合反応により製造されず、好ましくは、重合できない化合物を意味すると理解されるであろう。
【0029】
本明細書で使用する場合、「重合できない」という用語は、重合性化合物またはRMの重合に通常適用される条件下での重合に適した官能基を含有しない化合物を意味すると理解されるであろう。
【0030】
本明細書で使用する場合、「メソゲン基」という用語は、当業者に公知であり、文献に記載されており、その引力および反発相互作用の異方性のために、低分子量物質またはポリマー物質中に液晶(LC)相を生じさせるのに本質的に寄与する基を意味する。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、必ずしもLC相自体を有する必要はない。メソゲン化合物が、他の化合物との混合後および/または重合後にのみLC相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、硬質の棒状またはディスク状の単位である。メソゲン化合物またはLC化合物に関連して使用される用語および定義の概要は、Pure Appl. Chem. 2001, 73(5), 888およびC. Tschierske, G. Pelzl, S. Diele, Angew. Chem. 2004, 116, 6340-6368に記載されている。
【0031】
本明細書で使用する場合、「反応性メソゲン」および「RM」という用語は、メソゲンまたは液晶骨格およびそれに付着し、重合に適しており、「重合性基」または「P」とも呼ばれる、1つ以上の官能基を含有する化合物を意味すると理解されるであろう。
【0032】
特に断らない限り、本明細書で使用する場合、「重合性化合物」という用語は、重合性モノマー化合物を意味すると理解されるであろう。
【0033】
特に断らない限り、重合性化合物は、好ましくは、アキラル化合物から選択される。
【0034】
本明細書で使用する場合、「スペーサー基」(以下、「Sp」とも呼ばれる)という用語は、当業者に公知であり、文献に記載されている。例えば、Pure Appl. Chem. 2001, 73(5), 888およびC. Tschierske, G. Pelzl, S. Diele, Angew. Chem. 2004, 116, 6340-6368を参照のこと。本明細書で使用する場合、「スペーサー基」または「スペーサー」という用語は、可撓性基、例えば、アルキレン基を意味し、これは、重合性メソゲン化合物中のメソゲン基と重合性基とを連結する。
【0035】
上記および以下において、
【化6】
は、trans-1,4-シクロヘキシレン環を指し、
【化7】
は、1,4-フェニレン環を指す。
【0036】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、FまたはClを指す。
【0037】
-CO-、-C(=O)-および-C(O)-は、カルボニル基、すなわち、
【化8】
を指す。
【0038】
また、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」等の用語は、多価基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン等も包含する。
【0039】
「アリール」という用語は、芳香族炭素基またはそれから誘導される基を指す。「ヘテロアリール」という用語は、好ましくは、N、O、S、Se、Te、SiおよびGeから選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する、上記で定義された「アリール」を指す。
【0040】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ-n-ブチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシル等である。
【0041】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル等である。
【0042】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル等である。
【0043】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2-メトキシエトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、2-メチルブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、n-ヘプトキシ、n-オクトキシ、n-ノノキシ、n-デコキシ、n-ウンデコキシ、n-ドデコキシ等である。
【0044】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等である。
【化9-1】
は、好ましくは、
【化9-2】
[式中、Lは、上記示された意味の1つを有する]
である。
【0045】
発明の詳細な説明
スイッチング層に使用されるLC低分子量成分は、広い範囲で変更することができ、本明細書に開示された好ましい特性を有する媒体が好ましい。本発明に係るLC媒体は、好ましくは、負の誘電異方性Δεを有し、これは、対向する基板側の電極で良好に機能する。各種の適切で好ましい化合物が、以下の好ましい実施形態に示される。
【0046】
式CY、PY、TおよびTOから選択される化合物が特に好ましい。特に、式CY、PY、T、YC、Y、FI、N、BC、CR、RC、PHおよびBFで示される化合物は、負のΔεに寄与するであろう。加えて、好ましくは、誘電的に中性である式ZK、DK、VKおよびBから選択される1種以上の化合物が、物理的および電気光学的特性を微調整するためにLC媒体に添加されてもよい。
【0047】
スイッチング層の処理されたLC媒体は、スイッチング層の少なくとも1つの状態、好ましくは、電圧駆動状態で前方散乱する。
【0048】
スイッチング層は、「暗」状態での散乱および明状態での非散乱の原理で、ポリマー分散LCデバイス(PDLCデバイス)と同様に機能する。スイッチング層は、好ましくは、スイッチング状態の1つにおいて、入射光線方向D(=)において上側スイッチング層平面USLPに当たる平行光線がスイッチング層を通過する際にD(=)から偏向されるように構成され、その結果、下側スイッチング層平面LSLPを離れた後、元の平行光線は、前方散乱方向D(<)に散乱され、前方散乱をもたらし、これは、拡散透過率Tとして測定され、ここで、T>0.2であり、Tは、式(1)に従って定義される。
【0049】
=(I≧2.5°/I) (1)
[式中、I≧2.5°は、散乱角≧2.5°を有する大角散乱の強度を指し、
は、全透過の強度を指す]。
【0050】
本明細書において、値Tは、380nm~780nmのスペクトル領域にわたって平均化されて示される。示された強度は、実施例に示されるように決定され、値Tは、実施例に示されるように決定される。
【0051】
本明細書において、拡散ヘイズH(ヘイズとも呼ばれる)は、式(2)に従って定義される。
【0052】
H=T・100[%] (2)
[式中、Tは、上記式(1)に従って定義される]。
【0053】
スイッチング素子に組み込まれた本発明に係るスイッチング層により、場合により、明/暗状態による調節に加えて、人工室内照明により必要な室内の明るさをもたらす必要なしに、太陽光によるまぶしさを調節することが可能となる。これは、本発明に係るスイッチング層による、好ましくは、スイッチング状態の一方において、0.2超の拡散透過率により可能になり、スイッチング層を通って外部から部屋に入る光線によるまぶしさを少なくとも顕著に減少させ、同時に、室内で十分な明るさをもたらす。これにより、人工照明なしでの作業が、日中に可能になる。これは、多くの人々に非常に快適であるとみなされ、加えて、本発明に係るスイッチング層を有するスイッチング素子を含有する窓要素を有する建物のエネルギー需要を低減させる。
【0054】
原理的には、省エネルギーで透明またはフレキシブルなディスプレイデバイスを、本発明に係るスイッチング層により実現することもできる。とりわけ、「配向層」を基板に適用する必要がないため、素子の製造にはほとんど労力がかからないことが有利である。
【0055】
LC媒体は、通常、例えば、ガラスまたはプラスチック(ポリマー)の平行な基板間に導入される。この構成では、配向添加剤により、基板面に対するLC分子の長手方向軸の垂直配向がもたらされるであろう。
【0056】
好ましくは、LCの誘電異方性は負であり、典型的には、Δε<1.5の誘電異方性を有する。この設計は、基板間の電界による透明から散乱へのスイッチング動作を可能にする。そのために、LC媒体に面する対向する基板側に電極が設けられ、この電極に適切なスイッチング電圧が供給される。本明細書では、矩形のAC電圧を、スイッチングに使用する。
【0057】
本発明の目的で、「スイッチング状態」という用語は、主に、本発明に係るスイッチング層に存在する場合があるバイナリ状態、すなわち、
- 本発明に係るスイッチング層が0.2~1の拡散透過率Tを有し、人間の目に対して均一に不透明に見えるスイッチング状態および
- 本発明に係るスイッチング層が0.2未満の拡散透過率Tを有し、人間の目に対して透明かつクリアに見える別のスイッチング状態
を意味すると解釈される。
【0058】
ただし、本発明に係るスイッチング層が、さらなるスイッチング状態、特に、中間状態を有することも可能である。
【0059】
加えて、本発明に係るスイッチング層は、スイッチング素子においてさらなるスイッチング層と組み合わせられる場合、完全にプライベートな状態と、外部との視覚的接触を有する状態との間のスイッチングが可能となる。特に、外部との視覚的接触は、日よけおよびブラインドにより提供されない特性である。
【0060】
式CYおよびPYで示される化合物において、好ましくは、LおよびLは両方とも、Fを指すかまたはLおよびLの一方が、Fを指し、他方が、Clを指すかまたはLおよびLは両方とも、Fを指すかまたはLおよびLの一方が、Fを指し、他方が、Clを指す。
【0061】
式CYで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【化10-5】
[式中、aは、1または2を指し、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルケニルは、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指し、(O)は、酸素原子または単結合を指す]
からなる群から選択される。アルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0062】
式CY1、CY2、CY9およびCY10から選択される化合物が特に好ましい。
【0063】
式PYで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化11-1】
【化11-2】
【化11-3】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルケニルは、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指し、(O)は、酸素原子または単結合を指す]
からなる群から選択される。アルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0064】
式PY1、PY2、PY9およびPY10から選択される化合物が特に好ましい。
【0065】
好ましいLC媒体は、式CY2で示される1種以上の化合物および式PY10で示される1種以上の化合物を含有する。
【0066】
好ましくは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式CYおよびPYならびにそれらの部分式で示される化合物の総濃度は、10~50重量%、非常に好ましくは、10~30重量%である。
【0067】
好ましくは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式CYおよびその部分式で示される化合物の濃度は、5~30重量%、非常に好ましくは、5~20重量%である。
【0068】
好ましくは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式PYおよびその部分式で示される化合物の濃度は、5~20重量%、非常に好ましくは、5~15重量%である。
【0069】
式TOで示される好ましい化合物は、LがHである、化合物である。
【0070】
式TOで示される化合物は、好ましくは、下記式
【化12-1】
【化12-2】
[式中、RおよびRは、上記で定義されたとおりである]
から選択される。RおよびRは、特に好ましくは、1~8個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシである。非常に好ましくは、Rは、1~6個のC原子を有するアルキルであり、Rは、1~6個のC原子を有するアルコキシである。
【0071】
式TO1およびTO2から選択される1種以上の化合物ならびに式TO3およびTO4から選択される1種以上の化合物を含むLC媒体が好ましい。
【0072】
式TO1で示される1種以上の化合物、式TO2で示される1種以上の化合物、式TO3で示される1種以上の化合物および式TO4で示される1種以上の化合物を含むLC媒体がさらに好ましい。
【0073】
好ましくは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式TOで示される化合物の濃度は、20~80%、非常に好ましくは、30~75%、最も好ましくは、35~65%である。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態では、LC媒体またはLCホスト混合物は、下記式:
【化13】
[式中、RおよびRは、式CYで与えられた意味を有し、LT1~T6は、それぞれ独立して、H、FまたはClを指し、LT1~LT6の少なくとも1つは、FまたはClである]
の1種以上の化合物を含む。
【0075】
式Tで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
[式中、Rは、1~7個のC原子を有する直鎖アルキルまたはアルコキシ基を指し、Rは、2~7個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指し、(O)は、酸素原子または単結合を指し、mは、1~6の整数を指す]
からなる群から選択される。Rは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0076】
RおよびRは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを指す。
【0077】
式T1、T2およびT3で示される化合物、特に、式T1およびT2で示される化合物が非常に好ましい。
【0078】
(O)が酸素原子を指し、mが1、2、3、4または5であり、Rがメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル(これらは、好ましくは、直鎖である)である、式T1~T24で示される化合物が非常に好ましい。
【0079】
好ましくは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式TまたはT1~T24で示される化合物の濃度は、5~20%、非常に好ましくは、5~15%である。
【0080】
好ましくは、LC媒体は、式TまたはT1~T24で示される1~5種、非常に好ましくは、1または2種の化合物を含有する。
【0081】
さらに好ましいLC媒体は、下記実施形態またはその任意の組み合わせから選択される。
【0082】
a)下記式:
【化15】
[式中、個々の基は、下記:
【化16】
は、
【化17】
【化18】
を指し、
【化19】
は、
【化20】
を指し、
およびRは、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキルを指し、同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-O-CO-または-CO-O-により置き換えられていてもよく、
は、-CHCH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CO-O-、-O-CO-、-C-、-CF=CF-、-CH=CH-CHO-または単結合、好ましくは、単結合を指すという意味を有する]
で示される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。
【0083】
式ZKで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化21-1】
【化21-2】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルケニルは、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指す]
からなる群から選択される。アルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0084】
式ZK1で示される化合物が特に好ましい。
【0085】
式ZKで示される特に好ましい化合物は、下記部分式:
【化22-1】
【化22-2】
[式中、プロピル、ブチルおよびペンチル基は、直鎖基である]
から選択される。
【0086】
式ZK1aで示される化合物が最も好ましい。
【0087】
b)下記式:
【化23】
[式中、個々の基は、各出現において、同一または異なって、下記:
およびRは、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを指し、
【化24】
は、
【化25】
を指し、
【化26】
は、
【化27】
を指し、
eは、1または2を指すという意味を有する]
で示される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。
【0088】
式DKで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化28-1】
【化28-2】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルケニルは、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指す]
からなる群から選択される。アルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0089】
c)下記式:
【化29-1】
【化29-2】
[式中、アルキルは、C1-6-アルキルを指し、Lは、HまたはFを指し、Xは、F、Cl、OCF、OCHFまたはOCH=CFを指す]
からなる群から選択される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。XがFを指す式G1で示される化合物が特に好ましい。
【0090】
d)下記式:
【化30-1】
【化30-2】
【化30-3】
[式中、Rは、Rについて上記示された意味の1つを有し、アルキルは、C1-6-アルキルを指し、dは、0または1を指し、zおよびmは、それぞれ独立して、1~6の整数を指す]
からなる群から選択される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。これらの化合物におけるRは、特に好ましくは、C1-6-アルキルもしくは-アルコキシまたはC2-6-アルケニルであり、dは、好ましくは、1である。
【0091】
本発明に係るLC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)は、好ましくは、≧5重量%の量で、上記言及された式で示される1種以上の化合物を含む。
【0092】
e)下記式:
【化31】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルケニルおよびアルケニルは、それぞれ独立して、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指す]
からなる群から選択される1種以上のビフェニル化合物をさらに含むLC媒体。アルケニルおよびアルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0093】
LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)中の式B1~B3で示されるビフェニルの割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に、≧5重量%である。
【0094】
式B2で示される化合物が特に好ましい。
【0095】
式B1~B3で示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化32】
[式中、アルキルは、1~6個のC原子を有するアルキル基を指す]
からなる群から選択される。本発明に係るLC媒体は、特に好ましくは、式B1aおよび/またはB2cで示される1種以上の化合物を含む。
【0096】
f)下記式:
【化33】
[式中、
【化34】
は、
【化35】
を指し、
は、H、CH、Cまたはn-Cを指し、(F)は、任意のフッ素置換基を指し、qは、1、2または3を指し、Rは、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)に基づいて、好ましくは、>3重量%、特に、≧5重量%、特に非常に好ましくは、5~30重量%の量で、Rについて示された意味の1つを有する]
で示される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。
【0097】
式FIで示される特に好ましい化合物は、下記部分式:
【化36-1】
【化36-2】
[式中、Rは、好ましくは、直鎖アルキルを指し、Rは、CH、Cまたはn-Cを指す]
からなる群から選択される。式FI1、FI2およびFI3で示される化合物が特に好ましい。
【0098】
g)下記式:
【化37】
[式中、Rは、Rについて示された意味を有し、アルキルは、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指す]
からなる群から選択される1種以上の化合物をさらに含むLC媒体。
【0099】
h)テトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種以上の化合物、例えば、下記式:
【化38-1】
【化38-2】
[式中、
10およびR11は、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを指し、
10およびR11は、好ましくは、1~6個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~6個のC原子を有する直鎖アルケニルを指し、
およびZは、それぞれ独立して、-C-、-CH=CH-、-(CH-、-(CHO-、-O(CH-、-CH=CH-CHCH-、-CHCHCH=CH-、-CHO-、-OCH-、-CO-O-、-O-CO-、-C-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CH-または単結合を指す]
からなる群から選択される化合物等をさらに含むLC媒体。
【0100】
i)下記式:
【化39】
[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、R11について上記示された意味の1つを有し、
環Mは、trans-1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
は、-C-、-CHO-、-OCH-、-CO-O-または-O-CO-であり、
cは、0、1または2である]
で示される1種以上のジフルオロジベンゾクロマンおよび/またはクロマンを、LC媒体の低分子量LC成分(すなわち、重合性成分を除く)に基づいて、好ましくは、3~20重量%の量、特に、3~15重量%の量で、さらに含むLC媒体。
【0101】
式BC、CRおよびRCで示される特に好ましい化合物は、下記部分式:
【化40-1】
【化40-2】
【化40-3】
【化40-4】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、(O)は、酸素原子または単結合を指し、cは、1または2を指し、アルケニルおよびアルケニルは、それぞれ独立して、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指す]
からなる群から選択される。アルケニルおよびアルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0102】
式BC-2で示される1つ、2つまたは3つの化合物を含む混合物が特に非常に好ましい。
【0103】
k)下記式:
【化41】
【化42】
[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、R11について上記示された意味の1つを有し、bは、0または1を指し、Lは、Fを指し、rは、1、2または3を指す]
で示される1種以上のフッ化フェナントレンおよび/またはジベンゾフランをさらに含むLC媒体。
【0104】
式PHおよびBFで示される特に好ましい化合物は、下記部分式:
【化43】
[式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、1~7個のC原子を有する直鎖アルキルまたはアルコキシ基を指す]
からなる群から選択される。
【0105】
l)下記式:
【化44】
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、1~12個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、O原子が互いに直接結合しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを指し、
およびLは、それぞれ独立して、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを指す]
で示される1種以上の単環式化合物をさらに含むLC媒体。
【0106】
好ましくは、LおよびLは両方とも、Fを指すかまたはLおよびLの一方が、Fを指し、他方が、Clを指す。
【0107】
式Yで示される化合物は、好ましくは、下記部分式:
【化45-1】
【化45-2】
[式中、アルキルおよびアルキルは、それぞれ独立して、1~6個のC原子を有する直鎖アルキル基を指し、アルコキシは、1~6個のC原子を有する直鎖アルコキシ基を指し、アルケニルおよびアルケニルは、それぞれ独立して、2~6個のC原子を有する直鎖アルケニル基を指し、Oは、酸素原子または単結合を指す]
からなる群から選択される。アルケニルおよびアルケニルは、好ましくは、CH=CH-、CH=CHCHCH-、CH-CH=CH-、CH-CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-、CH-(CH-CH=CH-またはCH-CH=CH-(CH-を指す。
【0108】
式Yで示される特に好ましい化合物は、下記部分式:
【化46】
[式中、アルコキシは、好ましくは、3、4または5つのC原子を有する直鎖アルコキシを指す]
からなる群から選択される。
【0109】
ネマチックLC相を有し、好ましくは、キラル液晶相を有さないLC媒体が好ましい。キラル化合物を含有しないLC媒体がさらに好ましい。
【0110】
本発明に係るスイッチングデバイスにおいて、前記スイッチング層は、好ましくは、上記および以下に記載される好ましい実施形態のうちの1つから選択され、ネマチックに配置されたLC分子を含むLC媒体を含み、前記スイッチング層が、重合性化合物の重合により形成され、好ましくは、スイッチング層のLC媒体中に分散されたポリマーネットワークをさらに含有する。
【0111】
ネマチックに配置された分子は、好ましくは、ポリマーネットワークが内部に分散されている、ネマチックLC分子の混合物(またはLCホスト混合物)の形態で利用される。ポリマーネットワークは、1種以上の重合性化合物および場合により、1種以上の光開始剤を含有する、LCホスト混合物に含まれる重合性成分から形成される。
【0112】
このため、本発明に係るLC媒体は、好ましくは、反応性メソゲンとしても公知の重合性メソゲン化合物から選択される1種以上の重合性化合物を含有する重合性成分および場合により、1種以上の光開始剤をさらに含む。
【0113】
好ましくは、LC媒体は、式I
-B-(Z-B-R
[式中、個々の基が、各出現において、同一または異なってかつそれぞれ独立して、下記:
およびRは、P、P-Sp-、H、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、SFまたは直鎖もしくは分岐鎖で1~25個のC原子を有するアルキルであり、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基は、それぞれ独立して、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R00)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP-Sp-により置き換えられていてもよく、ここで、Bおよび/またはBが、飽和C原子を含有する場合、Rおよび/またはRは、この飽和C原子にスピロ結合している基を指すこともでき、
基RおよびRの少なくとも一方は、基PまたはP-Sp-を指すかまたは含有し、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
およびBは、好ましくは、4~25個の環原子を有し、縮合環を含有することもでき、置換されていないかまたはLにより単置換もしくは多置換されている芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式または複素環式基であり、
は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-OCO-、-O-CO-O-、-OCH-、-CHO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-(CHn1-、-CFCH-、-CHCF-、-(CFn1-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR00または単結合であり、
およびR00は、それぞれ独立して、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
mは、0、1、2、3または4であり、
n1は、1、2、3または4であり、
Lは、P、P-Sp-、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)N(R、-C(=O)Y、-C(=O)R、-N(R、場合により置換されているシリル、6~20個のC原子を有する場合により置換されているアリールまたは直鎖もしくは分枝鎖で、1~25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ(これらにおいて、加えて、1つ以上のH原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-により置き換えられていることもできる)であり、
PおよびSpは、上記示された意味を有し、
は、ハロゲンを指し、
は、P、P-Sp-、H、ハロゲン、直鎖、分岐鎖または環状で、1~25個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子は、F、Cl、PもしくはP-Sp-、6~40個のC原子を有する場合により置換されているアリールもしくはアリールオキシ基または2~40個のC原子を有する場合により置換されているヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシ基により置き換えられていてもよい)であるという
意味を有する]
から選択される1種以上の重合性化合物を含む。
【0114】
式Iで示される特に好ましい化合物は、BおよびBがそれぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、9,10-ジヒドロ-フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,7-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、クマリン、フラボンを指し、ここで、加えて、これらの基中の1つ以上のCH基が、N、シクロヘキサン-1,4-ジイルにより置き換えられていてもよく、加えて、1つ以上の隣接していないCH基が、Oおよび/またはS、1,4-シクロヘキセニレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン-2,6-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、インダン-2,5-ジイルまたはオクタヒドロ-4,7-メタノインダン-2,5-ジイルにより置き換えられていてもよく、ここで、これらの全ての基が、置換されていないかまたは上記で定義されたLにより単置換もしくは多置換されていてもよい、化合物である。
【0115】
式Iで示される特に好ましい化合物は、BおよびBがそれぞれ互いに独立して、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイルまたはナフタレン-2,6-ジイルを指す化合物である。
【0116】
重合性基Pは、重合反応、例えば、フリーラジカルまたはイオン鎖重合、重付加もしくは重縮合またはポリマー類似物反応、例えば、主ポリマー鎖への付加もしくは縮合等に適した基である。鎖重合のための基、特に、C=C二重結合または-C≡C-三重結合を含有する基および開環重合に適した基、例えば、オキセタンまたはエポキシド基等が特に好ましい。
【0117】
好ましい基Pは、CH=CW-CO-O-、CH=CW-CO-、
【化47】
CH=CW-(O)k3-、CW=CH-CO-(O)k3-、CW=CH-CO-NH-、CH=CW-CO-NH-、CH-CH=CH-O-、(CH=CH)CH-OCO-、(CH=CH-CHCH-OCO-、(CH=CH)CH-O-、(CH=CH-CHN-、(CH=CH-CHN-CO-、HO-CW-、HS-CW-、HWN-、HO-CW-NH-、CH=CW-CO-NH-、CH=CH-(COO)k1-Phe-(O)k2-、CH=CH-(CO)k1-Phe-(O)k2-、Phe-CH=CH-、HOOC-、OCN-およびWSi-[式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、1~5個のC原子を有するフェニルまたはアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを指し、WおよびWは、それぞれ独立して、Hまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn-プロピルを指し、W、WおよびWは、それぞれ独立して、Cl、1~5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを指し、WおよびWは、それぞれ独立して、H、Clまたは1~5個のC原子を有するアルキルを指し、Pheは、P-Sp-以外の上記で定義された1つ以上の基Lにより場合により置換されている1,4-フェニレンを指し、k、kおよびkは、それぞれ独立して、0または1を指し、kは、好ましくは、1を指し、kは、1~10の整数を指す]からなる群から選択される。
【0118】
非常に好ましい基Pは、CH=CW-CO-O-、CH=CW-CO-、
【化48】
CH=CW-O-、CH=CW-、CW=CH-CO-(O)k3-、CW=CH-CO-NH-、CH=CW-CO-NH-、(CH=CH)CH-OCO-、(CH=CH-CHCH-OCO-、(CH=CH)CH-O-、(CH=CH-CHN-、(CH=CH-CHN-CO-、CH=CW-CO-NH-、CH=CH-(COO)k1-Phe-(O)k2-、CH=CH-(CO)k1-Phe-(O)k2-、Phe-CH=CH-およびWSi-[式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、1~5個のC原子を有するフェニルまたはアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを指し、WおよびWは、それぞれ独立して、Hまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn-プロピルを指し、W、WおよびWは、それぞれ独立して、Cl、1~5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを指し、WおよびWは、それぞれ独立して、H、Clまたは1~5個のC原子を有するアルキルを指し、Pheは、1,4-フェニレンを指し、k、kおよびkは、それぞれ独立して、0または1を指し、kは、好ましくは、1を指し、kは、1~10の整数を指す]からなる群から選択される。
【0119】
特に非常に好ましい基Pは、CH=CW-CO-O-、特に、CH=CH-CO-O-、CH=C(CH)-CO-O-およびCH=CF-CO-O-、さらに、CH=CH-O-、(CH=CH)CH-O-CO-、(CH=CH)CH-O-、
【化49】
からなる群から選択される。
【0120】
さらに好ましい重合性基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシドからなる群から選択され、最も好ましくは、アクリレートおよびメタクリレートから選択される。
【0121】
Spが単結合と異なる場合、好ましくは、各基P-Sp-が式P-Sp’’-X’’-に一致するように、式Sp’’-X’’-である。式中、
Sp’’は、1~20個、好ましくは、1~12個のC原子を有するアルキレンを指し、同アルキレンは、F、Cl、Br、IまたはCNにより場合により単置換または多置換されており、同アルキレンにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基は、それぞれ独立して、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、-O-、-S-、-NH-、-N(R)-、-Si(R00)-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-N(R00)-CO-O-、-O-CO-N(R)-、-N(R)-CO-N(R00)-、-CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく、
X’’は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-N(R)-、-N(R)-CO-、-N(R)-CO-N(R00)-、-OCH-、-CHO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR-、-CY=CY-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-または単結合を指し、
およびR00は、それぞれ独立して、Hまたは1~20個のC原子を有するアルキルを指し、
およびYは、それぞれ独立して、H、F、ClまたはCNを指し、
X’’は、好ましくは、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR-、-NR-CO-、-NR-CO-NR00-または単結合である。
【0122】
典型的なスペーサー基Spおよび-Sp’’-X’’-は、例えば、-(CHp1-、-(CHCHO)q1-CHCH-、-CHCH-S-CHCH-、-CHCH-NH-CHCH-または-(SiR00-O)p1-[式中、p1は、1~12の整数であり、q1は、1~3の整数であり、RおよびR00は、上記示された意味を有する]である。
【0123】
特に好ましい基Spおよび-Sp’’-X’’-は、-(CHp1-、-(CHp1-O-、-(CHp1-O-CO-、-(CHp1-CO-O-、-(CHp1-O-CO-O-[式中、p1およびq1は、上記示された意味を有する]である。
【0124】
特に好ましい基Sp’’は、各場合において、直鎖のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン-N-メチルイミノ-エチレン、1-メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0125】
式Iで示される非常に好ましい化合物は、下記式:
【化50-1】
【化50-2】
【化50-3】
【化50-4】
【化50-5】
【化50-6】
[式中、個々の基は、各出現において、同一または異なってかつそれぞれ独立して、下記:
、P、Pは、Pに与えられた意味の1つ、好ましくは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンまたはエポキシ基であり、
Sp、Sp、Spは、Spに与えられた意味の1つであり、ここで、1つ以上の基P-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-は、Raaを指すこともでき、ただし、少なくとも1つの存在する基P-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-は、Raaとは異なるという条件であり、
aaは、H、F、Cl、CNまたは直鎖もしくは分岐鎖で、1~25個のC原子を有するアルキル(同アルキルにおいて、加えて、1つ以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、それぞれ独立して、(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていてもよく、同アルキルにおいて、加えて、1つ以上のH原子は、F、Cl、CNまたはP-Sp-、特に好ましくは、直鎖または分枝鎖で、1~12個のC原子を有する、単フッ化または多フッ化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシにより置き換えられていてもよい(この場合、アルケニルおよびアルキニル基は、少なくとも2つのC原子を有し、分岐鎖基が、少なくとも3つのC原子を有する))であり、
、R00は、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
およびRは、H、F、CHまたはCFであり、
、X、Xは、-CO-O-、-O-CO-または単結合であり、
は、-O-、-CO-、-C(R)-または-CFCF-であり、
、Zは、-CO-O-、-O-CO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-または-(CH-(式中、nは、2、3または4である)であり、
Lは、F、Cl、CNまたは直鎖もしくは分枝鎖で、1~12個のC原子を有する、場合により単フッ化もしくは多フッ化されているアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
L’、L’’は、H、FまたはClであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2であり、
wは、0または1であり、
xは、0または1であるという
意味を有する]
から選択される。
【0126】
式M1~M33で示される化合物では、基
【化51】
は、好ましくは、
【化52】
[式中、Lは、各出現において、同一または異なって、上記または以下で与えられる意味の1つを有する]
である。
【0127】
式IおよびM1~M33で示される化合物において、基Lは、好ましくは、F、Cl、CN、NO、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OCまたはP-Sp-、非常に好ましくは、F、Cl、CN、CH、C、OCH、OC、COCH、OCFまたはP-Sp-、より好ましくは、F、Cl、CH、OCH、C、OCまたはOCF、特に、FまたはCHである。
【0128】
式M1~M33で示される好ましい化合物は、P、PおよびPがアクリレート、メタクリレート、オキセタンまたはエポキシ基、非常に好ましくは、アクリレートまたはメタクリレート基を指す化合物である。
【0129】
式M1~M31で示される好ましい化合物は、Sp、SpおよびSpが単結合である化合物である。
【0130】
式M1~M31で示されるさらに好ましい化合物は、Sp、SpおよびSpの1つが単結合であり、Sp、SpおよびSpの別の1つが単結合とは異なる化合物である。
【0131】
式M1~M33で示されるさらに好ましい化合物は、単結合とは異なるような基Sp、SpおよびSpが-(CHs1-X’’-[式中、s1は、1~6、好ましくは、2、3、4または5の整数であり、X’’は、ベンゼン環への結合であり、-O-、-O-CO-、-CO-O、-O-CO-O-または単結合である]を指す化合物である。
【0132】
式M2およびM13で示される化合物、特に、正確に2つの重合性基PおよびPを含有する二反応性化合物が非常に好ましい。
【0133】
基SpおよびSpの一方が単結合であり、基SpおよびSpの他方が単結合とは異なる、式M2およびM13で示される化合物がさらに好ましい。
【0134】
F、Cl、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フッ化メチルまたはメトキシおよびフッ化エチルまたはエトキシ、非常に好ましくは、Fから選択される少なくとも1つの置換基Lを含有する式M2およびM13で示される化合物がさらに好ましい。
【0135】
化合物M15~M31、特に、M17、M18、M19、M22、M23、M24、M25、M26、M30およびM31、特に、正確に3つの重合性基P、Pおよび/またはPを含有する三反応性化合物がさらに好ましい。
【0136】
式M11、M32およびM33で示される化合物がさらに好ましい。
【0137】
式IおよびM1~M33で示される非常に好ましい化合物は、下記部分式:
【化53-1】
【化53-2】
【化53-3】
【化53-4】
から選択される。
【0138】
別の好ましい実施形態では、LC媒体または重合性成分中の重合性化合物は、好ましくもっぱら、下記式
【化54】
[式中、P、P、Sp、Sp、Lおよびrは、上記与えられた意味を有し、SpおよびSpの少なくとも1つは、単結合である]
から選択される。好ましくは、これらの化合物において、PおよびPは、メタクリレートを指す。さらに好ましくは、これらの化合物において、rの少なくとも1つは、1または2であり、Lは、好ましくは、F、Cl、CH、OCH、C、OCまたはOCF、非常に好ましくは、Fである。
【0139】
別の好ましい実施形態では、LC媒体または重合性成分中の重合性化合物は、好ましくはもっぱら、下記式
【化55】
[式中、P、P、Sp、Lおよびrは、上記および以下に与えられる意味を有し、Spは、単結合とは異なる]
から選択される。好ましくは、これらの化合物において、PおよびPは、メタクリレートを指す。さらに好ましくは、これらの化合物において、rの少なくとも1つは、1または2であり、Lは、好ましくは、F、Cl、CH、OCH、C、OCまたはOCF、非常に好ましくは、Fである。
【0140】
式M13aで示される好ましい化合物は、式RM-53、RM-55、RM-57、RM-59、RM-61、RM-63、RM-65、RM-67、RM-69およびRM-71、非常に好ましくは、式RM-55、RM-57、RM-59、RM-67、最も好ましくは、式RM-59から選択される化合物である。
【0141】
別の好ましい実施形態では、LC媒体は、式M11、M32およびM33[ここで、式M11において、好ましくは、ZおよびZの一方または両方が、COOまたはOCOを指す]から選択される1種以上の重合性化合物を含む重合性成分を含有する。
【0142】
別の好ましい実施形態では、LC媒体は、下記部分式:
【化56】
から選択される1種以上の重合性化合物を含む重合性成分を含有する。
【0143】
1つ、2つまたは3つの重合性化合物、好ましくは、上記および以下に示される式Iまたはその部分式から選択される化合物を含むLC媒体が特に好ましい。
【0144】
好ましくは、LC媒体中の重合性成分は、2つ以上の重合性基(二反応性もしくは多反応性または二官能性もしくは多官能性化合物)を含む1種以上の重合性化合物を含む。
【0145】
別の好ましい実施形態では、重合性成分は、複数の重合性化合物を含む。
【0146】
別の好ましい実施形態では、重合性成分は、複数の重合性化合物を含み、そのうちの少なくとも1つは、1つのみの重合性基を含有する重合性化合物(単反応性または単官能性化合物)および2つ以上の重合性基を含む1種以上の重合性化合物(二反応性もしくは多反応性または二官能性もしくは多官能性化合物)である。
【0147】
好ましくは、LC媒体においてまたは本発明に係るスイッチング層もしくはスイッチングデバイスにおいて、全体としてのLC媒体(すなわち、低分子量LC成分、重合性成分および添加剤を含む)に基づく重合性化合物または重合性成分もしくは重合済み成分の総割合は、≦50重量%、より好ましくは、≦30重量%、非常に好ましくは、≦25重量%、かつ好ましくは、≧3重量%、より好ましくは、≧5重量%、非常に好ましくは、≧10重量%の範囲にある。
【0148】
好ましくは、LC媒体においてまたは本発明に係るスイッチング層もしくはスイッチングデバイスにおいて、全体としてのLC媒体に基づく低分子量LC成分の割合は、≧50重量%、より好ましくは、≧70重量%、非常に好ましくは、≧75重量%、かつ好ましくは、≦97重量%、より好ましくは、≦95重量%、非常に好ましくは、≦90重量%の範囲にある。
【0149】
重合の際に、重合性化合物は、架橋ポリマーまたはポリマーネットワークを形成し、これは、好ましくは、スイッチング層に含まれるLC媒体全体に分散される。
【0150】
ネマチックに配置された分子およびポリマーネットワークは、好ましくは、互いに均質に分布している。これは、少なくとも視覚的にまたは巨視的スケールで、ネマチックに配置された分子の液滴形成が観察されないことを意味する。理論に拘束されるものではないが、ポリマーネットワークは、ヘイズの発生の原因となる場合がある、顕微鏡スケールでのドメインを形成すると考えられる。
【0151】
LC媒体中の重合性化合物の重合は、1つの工程または2つ以上の工程で行うことができ、重合条件、例えば、UV露光時間、温度、照射エネルギー等を、個々の重合工程で変えることができる。
【0152】
適切かつ好ましい重合法は、例えば、熱重合または光重合、好ましくは光重合、特にUV誘引光重合であり、これは、重合性化合物をUV照射に暴露させることにより達成することができる。
【0153】
好ましくは、LC媒体は、付加的に、重合を開始しまたは増強するために、1種以上の重合開始剤を含む。重合に適した条件ならびに開始剤の適切な種類および量は、当業者に公知であり、文献に記載されている。フリーラジカル重合には、例えば、市販の光開始剤Irgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)907、Irgacure(登録商標)369、Irgacure(登録商標)819、Darocur(登録商標)TPOまたはDarocur(登録商標)1173(BASF AG)が適している。
【0154】
好ましい光開始剤は、ベンゾフェノン誘導体、非常に好ましくは、下記構造式:
【化57】
から選択される。
【0155】
別の好ましい実施形態では、LC媒体は、ホスフィンオキシド誘導体、非常に好ましくは、下記式
【化58】
【0156】
(TPO=2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド)
から選択される1種以上の光開始剤を含有する。
【0157】
LC媒体全体における重合開始剤の濃度は、好ましくは、0.01~2%、非常に好ましくは、0.1~1%である。
【0158】
重合開始剤は、LC媒体の重合性成分の一部である。
【0159】
本発明に係る重合性化合物は、開始剤なしの重合にも適しており、同重合は、例えば、より低い材料コスト、特に、可能性のある残留量の開始剤またはその分解生成物によるLC媒体の汚染がより少ない等、相当な利点を伴う。このため、重合は、開始剤を添加することなく行うこともできる。このため、別の好ましい実施形態では、LC媒体は、重合開始剤を含有しない。
【0160】
また、LC媒体は、例えば、貯蔵または輸送中におけるRMの望ましくない自然重合を防止するために、1種以上の安定剤を含むこともできる。安定剤の適切な種類および量は、当業者に公知であり、文献に記載されている。例えば、市販の安定剤Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba AG)、例えば、Irganox(登録商標)1076等が特に適している。安定剤が利用される場合、RMまたは重合性成分(成分A)の総量に基づくそれらの割合は、好ましくは、10~500,000ppm、特に好ましくは、50~50,000ppmである。
【0161】
本発明の別の好ましい実施形態では、LC媒体は、低分子量成分および重合性または重合済み成分に加えて、好ましくは、二色性色素から選択される1種以上の色素を含む色素成分を含有する。
【0162】
色素は、好ましくは、有機化合物、特に好ましくは、少なくとも1つの縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有する有機化合物である。
【0163】
LC媒体は、好ましくは、少なくとも2種、特に好ましくは、少なくとも3種、特に非常に好ましくは、3種または4種の異なる色素を含む。
【0164】
2種以上の色素が混合物中に存在する場合、それらは、好ましくは、光の可視スペクトル全体が本質的に吸収され、吸収スペクトルが互いに補完するように選択される。このため、人間の目には黒色の印象が生じる。これは、好ましくは、3種以上の異なる色素を使用することにより達成される。そのうちの少なくとも1種は、青色光を吸収し、そのうちの少なくとも1種は、緑色~黄色光を吸収し、そのうちの少なくとも1種は、赤色光を吸収する。本明細書において、明るい色は、B. Bahadur, Liquid Crystals - Applications and Uses, Vol. 3, 1992, World Scientific Publishing, section 11.2.1に従って定義される。
【0165】
LC媒体全体における色素の総割合は、好ましくは、0.01~20重量%、より好ましくは、0.1~15重量%、非常に好ましくは、0.2~12重量%である。LC媒体全体における各個々の色素の割合は、好ましくは、0.01~15重量%、より好ましくは、0.05~12重量%、非常に好ましくは、0.1~10重量%である。
【0166】
LC媒体中に存在する色素は、好ましくは、LC媒体中に溶解される。色素は、好ましくは、LC状態におけるLC媒体混合物の分子の整列により、それらの整列に影響を受ける。
【0167】
色素は、好ましくは、二色性色素、特に好ましくは、正の二色性色素から選択される。正の二色性は、色素が正の異方性度Rを有することを意味する。異方性度Rは、特に好ましくは、0.4より大きく、特に非常に好ましくは、0.5より大きく、最も好ましくは、0.6より大きい。異方性度Rは、出願文献である国際公開第2015/154848号の実施例に示されるように決定される。
【0168】
代替的な実施形態では、色素が負の二色性であることも好ましい場合がある。負の二色性は、色素が負の異方性度Rを有することを意味する。
【0169】
LC媒体中に存在する色素は、好ましくは、全て正の二色性であるかまたは全て負の二色性である。
【0170】
さらに好ましくは、本願に係る色素は、主に、UV-VIS-NIR領域、すなわち、320~1500nmの波長範囲の光を吸収する。色素は、特に好ましくは、主に、VIS領域、すなわち、380~780nmの波長範囲の光を吸収する。色素は、特に好ましくは、上記で定義されたUV-VIS-NIR領域、好ましくは、VIS領域、すなわち、380nm~780nmの波長において1つ以上の吸収極大を有する。スイッチング可能な窓における用途には、色素がNIR領域、特に、780nm~1500nmに1つ以上の吸収極大を有することが同様に好ましい場合がある。
【0171】
色素は、さらに好ましくは、B. Bahadur, Liquid Crystals - Applications and Uses, Vol. 3, 1992, World Scientific Publishing, section 11.2.1に示される色素クラスから選択され、特に好ましくは、表に示される明示的な化合物から選択される。
【0172】
色素は、好ましくは、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、リレン、特に、ペリレンおよびテリレン、ベンゾチアジアゾール、ピロメテンおよびジケトピロロピロールから選択される。これらのうち、特に、国際公開第2014/187529号に開示されているようなアゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾール、特に、国際公開第2015/090497号に開示されているようなジケトピロロピロールおよび特に、国際公開第2014/090373号に開示されているようなリレンが特に好ましい。
【0173】
以下にその構造を示す下記色素が、特に好ましく利用される。
【化59-1】
【化59-2】
【0174】
ただし、スイッチング層が色素を含まない実施形態も好ましい。これは、スイッチング素子の構造がより単純であるかもしくは明状態での透過率がより高いかまたはその両方であるという利点を有する。さらに、この場合のスイッチング素子の光学的外観は、白色であり、すなわち、着色されておらず、これは、特定の用途に望ましく、大規模な熱および光照射の存在下でのスイッチング素子の寿命を、より長くすることができる。
【0175】
LC媒体は、好ましくは、コモノマー、キラルドーパント、重合開始剤、阻害剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、顔料およびナノ粒子を含むが、これらに限定されないリストから選択される、1種以上のさらなる成分または添加剤をさらに含んでもよい。
【0176】
本発明に係るLC媒体は、例えば、1種以上のUV安定剤、例えば、Tinuvin(登録商標)(Ciba Chemicals)、特に、Tinuvin(登録商標)770、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、ナノ粒子等を含むこともできる。適切な安定剤は、以下の表Cに言及されている。
【0177】
本発明に係るLC媒体は、例えば、1種以上のキラルドーパントを、好ましくは、0.01~1%、非常に好ましくは、0.05~0.5%の濃度で含むこともできる。適切なキラルドーパントは、以下の表Bに言及されている。好ましいキラルドーパントは、例えば、R-もしくはS-1011、R-もしくはS-2011、R-もしくはS-3011、R-もしくはS-4011またはR-もしくはS-5011から選択される。
【0178】
別の好ましい実施形態では、LC媒体は、好ましくは、先の段落で言及されたキラルドーパントから選択される、1種以上のキラルドーパントのラセミ体を含有する。
【0179】
さらに、導電性を改善するために、例えば、0~15重量%の多色色素、さらに、ナノ粒子、導電性塩、好ましくは、エチルジメチルドデシルアンモニウム 4-ヘキソキシ安息香酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルホウ酸塩またはクラウンエーテルの錯塩(参照.例えば、Haller et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 24, 249-258 (1973))または誘電異方性、粘度および/もしくはネマチック相の配向を修飾するための物質を、LC媒体に加えることができる。この種の物質は、例えば、ドイツ国特許出願公開第2209127号明細書、同第2240864号明細書、同第2321632号明細書、同第2338281号明細書、同第2450088号明細書、同第2637430号明細書および同第2853728号明細書に記載されている。
【0180】
本発明に係るLC媒体の好ましい実施形態の個々の成分は、公知であるかまたはそれらの製造のための方法は、関連分野における当業者により従来技術から容易に得ることができる。文献に記載されている標準的な方法に基づいているためである。式CYで示される化合物は、例えば、欧州特許出願公開第0364538号明細書に記載されている。式ZKで示される化合物は、例えば、ドイツ国特許出願公開第2636684号明細書および同第3321373号明細書に記載されている。
【0181】
本発明に係るLC媒体は、例えば、H、N、O、Cl、Fが重水素等のような対応する同位体により置き換えられている化合物を含むこともできることは、当業者には言うまでもない。
【0182】
本発明に係るスイッチング層のLC媒体は、好ましくは、>1.0・10オーム・cm、特に好ましくは、>1.0・1011オーム・cmの比抵抗を有する。
【0183】
本発明に係るLC媒体は、好ましくは、ネマチック相を-20℃まで、好ましくは、-30℃まで、特に好ましくは、-40℃まで低下させて保持し、好ましくは、≧90℃、好ましくは、≧95℃、より好ましくは、>100℃または>105℃、特に非常に好ましくは、>110℃の澄明点を有する。
【0184】
本発明のLC媒体は、好ましくは、少なくとも100K、より好ましくは、少なくとも120K、最も好ましくは、少なくとも140Kのネマチック相範囲を有する。
【0185】
本発明に係るLC媒体は、好ましくは、20℃および1kHzにおいて、-0.5~-10、最も好ましくは、-2.5~-7.5の負の誘電異方性Δεを有する。
【0186】
本発明に係るLC媒体は、好ましくは、複屈折Δn≧0.20、非常に好ましくは、≧0.22を有する。
【0187】
本発明に従って使用することができるLC媒体は、それ自体従来の方法で、例えば、式CYおよび/またはPYならびにTOで示される1種以上の化合物を、上記言及された好ましい実施形態の1種以上の化合物および/もしくはさらなるLC化合物ならびに/または添加剤、例えば、重合性化合物、色素および/または光開始剤と混合することにより製造される。一般的には、少量で使用される所望量の成分を、主成分を構成する成分中に、有利には高温で溶解させる。成分の溶液を有機溶媒、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中で混合し、完全に混合した後、例えば、蒸留により溶媒を再び除去することも可能である。
【0188】
本発明に係るLC媒体は、好ましくは、領域要素を通る光の通過を均一に調節するためのデバイス、特に、太陽光の通過を調節するためのデバイス(上記および以下において、「スイッチングデバイス」とも呼ばれる)に使用される。前記デバイスは、好ましくは、スイッチング可能な窓に利用される。本明細書において、均一な調節は、透過が領域要素内の全ての点で実質的に同じであることを意味すると解釈される。
【0189】
このため、本発明は、領域要素を通る光の通過を均一に調節するためのデバイスであって、本発明に係る混合物を含有する、デバイスに関する。本明細書において、領域要素は、好ましくは、少なくとも0.05m、特に好ましくは、少なくとも0.1m、特に好ましくは、少なくとも0.5m、特に非常に好ましくは、少なくとも0.8mの寸法を有する。
【0190】
領域要素を通る光の通過を調節するためのデバイスは、好ましくは、層の形態の混合物を含む。この層は、好ましくは、切り替え可能である、すなわち、スイッチング層を表す。スイッチング層は、好ましくは、10~100μm、非常に好ましくは、12~30μm、最も好ましくは、15~25μmの厚みを有する。
【0191】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、環境から空間への太陽光の形態の光の通過の調節に適している。本明細書において、空間は、環境から実質的に密閉される任意の所望の空間、例えば、建物、車両または容器であることができる。このデバイスは、一般的には、任意の所望の空間に使用することができ、特に、これらの空間が環境との空気の交換が限定されており、光エネルギーの形態で外部からのエネルギーの進入を行うことができる光透過境界面を有する場合に使用することができる。このデバイスは、特に好ましくは、光透過領域、例えば窓領域を通して強い日射を受ける空間に使用される。その例は、自動車両、特に、自動車の外側および内側に大きな窓領域を有する空間である。
【0192】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、比較的大きな二次元構造の開口内に配置され、この場合、二次元構造自体は、光の通過をほとんど許容しないかまたは全く許容せず、開口は、相対的により大きな程度で光を透過する。二次元構造は、好ましくは、壁または外側からの空間の別の境界である。
【0193】
本発明に係るデバイスは切り替え可能である。本明細書において、スイッチングは、デバイスを通る光の通過の変化を意味する。
【0194】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、電気的に切り替え可能である。この場合、デバイスは、好ましくは、本発明に係る混合物を含む層の両側に設置される2つ以上の電極を含む。電極は、好ましくは、ITOまたは薄い、好ましくは、透明な金属および/または金属酸化物層、例えば、銀またはFTO(フッ素ドープ酸化スズ)またはこの使用のために当業者に公知の代替材料からなる。ITO電極には、例えば、SiOを含むパッシベーション層を設けることができる。電極は、好ましくは、電気的接続を備えている。電圧は、好ましくは、電池、充電式電池または外部電源により供給される。
【0195】
電気的スイッチングの場合、スイッチング動作は、電圧を印加することにより、LC状態の混合物の分子を整列させることにより行われる。
【0196】
第1の好ましい実施形態では、デバイスは、電圧を印加することにより、電圧なしで存在する低い吸収、すなわち、高い光透過率を有する状態から、より高い吸収、すなわち、より低い光透過率を有する状態に変換される。
【0197】
第2の好ましい実施形態では、デバイスは、電圧を印加することにより、電圧なしで存在する高い吸収率、すなわち、低い光透過率を有する状態から、より低い吸収、すなわち、より高い光透過率を有する状態に変換される。
【0198】
デバイスのスイッチング層中のLC媒体は、好ましくは、ネマチック的に両方の状態にあるLCである。無電圧状態は、好ましくは、LC状態のLC媒体の分子、このため、色素が存在する場合の色素の分子が、スイッチング層の平面に平行に整列されることを特徴とする。これは、好ましくは、対応して選択された配向層により達成される。それらは、特に好ましくは、スイッチング層の平面に平行なねじれネマチック状態にある。ねじれ角は、好ましくは、1完全回転未満、特に好ましくは、30~270°、特に非常に好ましくは、100°~260°、さらにより好ましくは、160~255°、最も好ましくは、230~250°である。電圧下での状態は、好ましくは、LC状態にある混合物の分子、このため、色素の分子が、スイッチング層の平面に対して垂直であることを特徴とする。
【0199】
本発明の好ましい実施形態によれば、デバイスは、太陽電池または光および/もしくは熱エネルギーをデバイスに接続された電気エネルギーに転換するための別のデバイスにより必要とされるエネルギーを提供することにより、外部電源なしで動作させることができる。太陽電池によるエネルギーの供給は、直接または間接的に、すなわち、電池もしくは充電式電池または中間に接続されたエネルギーを貯蔵するための他のユニットを介して行うことができる。太陽電池は、好ましくは、例えば、国際公開第2009/141295号に開示されているように、デバイスの外側に設置されるかまたはデバイスの内部コンポーネントである。
【0200】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、外側から内側に向かって、下記層列を有し、この場合、さらなる層がさらに存在してもよい。以下に示される層は、好ましくは、デバイス内で互いに直接隣接している。
【0201】
- 好ましくは、ガラスまたはポリマー製の外側基板層、
- 好ましくは、ITO製の外側導電性透明層、
- 場合により、配向層、
- 本発明に係るLC媒体を含むスイッチング層、
- 場合により、配向層、
- 好ましくは、ITO製の内側導電性透明層、
- 好ましくは、ガラスまたはポリマー製の内側基板層
個々の層に好ましい実施形態を以下に記載する。
【0202】
外側および内側基板層は、ガラスまたはポリマー、好ましくは、光透過性ポリマー、特に、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(環状オレフィンポリマー)またはTAC(トリアセチルセルロース)からなってもよい。
【0203】
外側および内側導電層は、導電性透明酸化物(TCO)、好ましくは、ITOもしくはSnO:Fまたは薄い透明金属および/もしくは金属酸化物層、例えば、銀層からなってもよい。外側および内側導電層は、好ましくは、電気的接続を備える。電圧供給は、好ましくは、電池、充電式電池、スーパーキャパシタまたは外部電源により提供される。
【0204】
スイッチング層は、好ましくは、1μm~100μm、非常に好ましくは、10μm~100μm、より好ましくは、12~30μm、最も好ましくは、15~25μmの厚みを有する。これは、本発明に係るスイッチング素子が正確に1つのスイッチング層を有する場合に当てはまる。スイッチング素子が次々に配置される複数のスイッチング層Sを有する場合、これらの層の厚みの合計は、好ましくは、5~200μm、非常に好ましくは、10~100μmである。
【0205】
さらに好ましい実施形態では、スイッチング層は、10μm~100μmの厚み、好ましくは、15~25μmの厚み、0.3~1の全透過率Ttotalおよび550nmの光線の波長での不透明スイッチング状態における0.2~1の拡散透過率Tを有する。
【0206】
好ましい実施形態では、スイッチング層は、スイッチング状態の一方において、好ましくは、電圧の存在下で、0.25~1、非常に好ましくは、0.30~1、より好ましくは、0.35~1、最も好ましくは、0.40~1の拡散透過率Tを有する。
【0207】
さらに好ましい実施形態では、スイッチング層は、別のスイッチング状態、好ましくは、無電圧状態において、<5%の拡散ヘイズHを有し、この場合、<3%の拡散ヘイズHが特に好ましい。
【0208】
好ましい実施形態では、非散乱状態が、好ましくは、印加電圧なしで起こり、散乱状態は、好ましくは、5~200V、特に好ましくは、20~100Vの範囲の電圧で起こる。
【0209】
さらに好ましい実施形態では、スイッチング層は、25~100%、好ましくは、60~100%、より好ましくは、70~100%、最も好ましくは、80~100%のヘイズHの値を有する不透明な散乱スイッチング状態を提供する。
【0210】
さらに好ましい実施形態では、スイッチング層は、好ましくは、スイッチング状態のうちの一方において、上側スイッチング層平面USLPから、後方散乱方向D(>)に平行光線の45%未満、特に好ましくは、20%未満、より好ましくは、10%未満、特に非常に好ましくは、5%未満を散乱する。この低い後方散乱は、特に好ましくは、スイッチング層の全てのスイッチング状態に存在し、特に、スイッチング層の散乱スイッチング状態にも存在する。
【0211】
さらに好ましい実施形態では、スイッチング層は、0%~80%の全透過率範囲内の全透過率の制御範囲を有し、この場合、制御範囲は、少なくとも15%である。
【0212】
スイッチング層は、LC媒体を含むさらなるスイッチング層と共に、多重スイッチング層デバイスに存在してもよい。本明細書において、追加のスイッチング層は、さらなるスイッチング層Sでもよくかつ/またはそれらは、散乱スイッチング状態を有することなく、明から暗に切り替わるスイッチング層でもよい。2つ、3つまたは4つのスイッチング層を含む多重スイッチング層デバイスが特に好ましく、特に好ましくは、2つまたは3つのスイッチング層を含む多重スイッチング層デバイスである。好ましくは、これらのスイッチング層のうちの少なくとも1つは、散乱スイッチング状態を有さないスイッチング層である。
【0213】
本発明に係るスイッチング素子のさらに好ましい実施形態では、スイッチング素子は、第1の層列の外側基板層上および/または第1の層列の内側基板層上に第2の層列を有し、この場合、第2の層列は、外側から内側に、
- 基板層と、
- 導電層と、
- 第2のLC媒体を含むスイッチング層と、
- 導電層と、
- 基板層と
を含む。
【0214】
第2の層列の基板層、導電層および配向層の好ましい実施形態については、第1の層列の対応する層の説明において既に説明したのと同じことが、対応して適用される。第2の層列のスイッチング層のLC媒体は、好ましくは、前方散乱ではなく、1種以上の二色性色素を含有する。代替的にかつ同様に好ましくは、第2の層列のスイッチング層は、さらなるスイッチング層、すなわち、散乱状態を有するスイッチング層でもよい。
【0215】
第2の層列のスイッチング層に含まれる第2のLC媒体は、上記および以下に記載される本発明に係るLC媒体または異なるLC媒体であることができる。
【0216】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、1つ以上、特に好ましくは、2つの配向層を含む。配向層は、好ましくは、本発明に係る混合物を含む層の両面に直接隣接する。
【0217】
本発明に係るデバイスに使用される配向層は、この目的のために当業者に公知である任意の所望の層であることができる。ポリイミド層、特に好ましくは、ラビングされたポリイミドを含む層が好ましい。当業者に公知の特定の様式でラビングされたポリイミドにより、分子が配向層に平行である(平面配向)場合、ラビング方向におけるLC状態での混合物の分子の配向が生じる。本明細書において、LC状態での混合物の分子は、配向層上で完全に平坦ではなく、代わりに、わずかなプレチルト角を有するのが好ましい。配向層の表面への分子の垂直配向(ホメオトロピック配向)を達成するために、特定の様式で処理されたポリイミドが、好ましくは、配向層のための材料として利用される(非常に大きいプレチルト角のためのポリイミド)。さらに、偏光による露光プロセスにより得られるポリマーは、配向軸に従って分子の配向(光配向)を達成するための配向層として使用することができる。
【0218】
本発明に係るデバイスにおいて、本発明に係る混合物を含むスイッチング層を取り囲む2つの配向層のラビング方向は、好ましくは、30°~270°の角度を含む。
【0219】
このデバイスは、好ましくは、ポリマーベースの偏光子を含有せず、特に好ましくは、固形材料相中に偏光子を含有せず、特に非常に好ましくは、全く偏光子を含有しないことを特徴とする。
【0220】
ただし、代替的な実施形態によれば、デバイスは、1つ以上の偏光子を含有することもできる。この場合の偏光子は、好ましくは、直線偏光子である。
【0221】
さらに、本発明は、上記された種類のスイッチング素子を含有する窓要素を包含する。本発明の目的で、「窓要素」という用語は、窓の光透過性コンポーネント、すなわち、建物の壁面の一部を意図したまたはそれと同等の、単一または複数のグレージングされた窓のガラス板を意味する。ガラス板は、入射平行光線に面する側(外側)と、入射平行光線から離れて面する側(内側)とを有する。上記された種類のスイッチング素子は、本発明に係る窓要素の外側または内側に配置することができる。
【0222】
ただし、本発明に係るスイッチング素子は、窓だけでなく、部屋の内部、例えば、部屋間の隔壁および部屋の個々の区画を分離するための素子にも利用することができる。この場合、スイッチング素子を散乱から透明に切り替えることにより得られるプライバシーにより、部屋の部分間に視覚的な障壁を生成することができる。
【0223】
さらに、上記された種類のスイッチング素子は、前方に吊り下げられたクラッド素子に組み込むことができる。この場合、前方に吊り下げられたクラッド素子は、窓の外側の前方に配置される。それにより、入射平行光線は、窓の内側に隣接する部屋にいる観察者から、より離れて散乱される。より大きな分離により、小さな散乱角度で散乱された光が観察者のそばを通過し、結果として、観察者がまぶしくない確率が高くなる。
【0224】
本発明に係るデバイスは、好ましくは、国際公開第2009/141295号に記載されているように、光および/または熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための太陽電池または別のデバイスに光を輸送する光導波路システムを、さらに好ましく含有する。
【0225】
好ましい実施形態では、本発明に係るデバイスは、その光透過率を切り替えることができる窓のコンポーネント、特に好ましくは、少なくとも1つのガラス領域を含有する窓、特に非常に好ましくは、マルチペイン断熱ガラスを含有する窓である。
【0226】
本明細書において、窓は、特に、フレームと、このフレームにより取り囲まれた少なくとも1つのガラス板とを含む建物内の構造を意味すると解釈される。窓は、好ましくは、断熱フレームと、2つ以上のガラス板(マルチペイン断熱ガラス)とを含む。
【0227】
好ましい実施形態によれば、本発明に係るデバイスは、窓のガラス領域に直接適用され、特に好ましくは、マルチペイン断熱ガラスの2つのガラス板の間の空間に適用される。
【0228】
下記実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明することを意図している。上記および下記において、%データは、重量%を指し、全ての温度は、摂氏度で示される。
【0229】
表A
表Aに、LC媒体に使用することができる好ましい化合物を示す。以下の式において、mおよびnは、それぞれ独立して、1~12、好ましくは、1、2、3、4、5または6の整数であり、kは、0、1、2、3、4、5または6であり、(O)C2m+1は、C2m+1またはOC2m+1を意味する。
【化60-1】
【化60-2】
【化60-3】
【化60-4】
【化60-5】
【化60-6】
【化60-7】
【化60-8】
【化60-9】
【化60-10】
【化60-11】
【化60-12】
【化60-13】
【化60-14】
【化60-15】
【化60-16】
【化60-17】
【化60-18】
【化60-19】
【化60-20】
【0230】
表Aからの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の化合物を含むLC媒体が特に好ましい。
【0231】
表B
表Bに、本発明に係るLC媒体に添加することができる可能性のあるドーパントを示す。LC媒体は、好ましくは、0~10重量%、特に、0.001~5重量%、特に好ましくは、0.001~3重量%のドーパントを含む。
【化61-1】
【化61-2】
【0232】
表C
例えば、本発明に係るLC媒体に0~10重量%の量で添加することができる安定剤は、以下言及される。
【化62-1】
【化62-2】
【化62-3】
【化62-4】
【化62-5】
【化62-6】
【0233】
表D
表Dに、本発明に係るLC媒体に使用することができる例示的な反応性メソゲン化合物を示す。
【化63-1】
【化63-2】
【化63-3】
【化63-4】
【化63-5】
【化63-6】
【化63-7】
【化63-8】
【化63-9】
【化63-10】
【化63-11】
【化63-12】
【化63-13】
【化63-14】
【化63-15】
【化63-16】
【化63-17】
【化63-18】
【化63-19】
【0234】
好ましい実施形態では、本発明に係るLC媒体は、好ましくは、式RM-1~RM-131で示される重合性化合物から選択される、1種以上の重合性化合物を含む。これらのうち、化合物RM-1、RM-4、RM-8、RM-17、RM-19、RM-35、RM-37、RM-43、RM-47、RM-49、RM-51、RM-59、RM-69、RM-71、RM-83、RM-97、RM-98、RM-104、RM-112、RM-115およびRM-116が特に好ましい。
【0235】
実施例
下記実施例は、本発明を限定することなく説明する。ただし、下記実施例は、好ましくは、利用されるべき化合物との好ましい混合物概念およびそれらの各濃度ならびにそれら同士の組み合わせを当業者に示す。加えて、実施例は、どの特性および特性の組み合わせがアクセス可能であるかを示す。
【0236】
加えて、下記略語および記号を使用する。
【0237】
閾値電圧、20℃での容量[V]、
20℃および589nmでの異常屈折率、
20℃および589nmでの通常の屈折率、
Δn 20℃および589nmでの光学異方性、
ε 20℃および1kHzでの指向器に垂直な誘電率、
ε|| 20℃および1kHzでの指向器に平行な誘電率、
Δε 20℃および1kHzでの誘電異方性、
cl.p.,T(N,I) 澄明点[℃]、
γ 20℃での回転粘度[mPa・s]、
20℃での弾性定数「スプレイ」変形[pN]、
20℃での弾性定数「ねじれ」変形[pN]、
20℃での弾性定数「曲げ」変形[pN]
特に断らない限り、本願における全ての濃度は、重量%で引用され、溶媒を含まない全ての固体またはLC成分を含む、対応する混合物全体に関する。
【0238】
特に断らない限り、本願において示される全ての温度値、例えば、融点T(C,N)、スメクチック相(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および澄明点T(N,I)等は、摂氏度(℃)で引用される。M.p.は、融点を指し、cl.p.=澄明点を指す。さらに、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相およびI=等方相である。これらの記号間のデータは、転移温度を表す。
【0239】
全ての物理的性質は、「Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals」, Status Nov. 1997, Merck KGaA, Germanyに従い、これに従って決定し、20℃の温度に適用される。各場合において特に断らない限り、Δnを、589nmで決定し、Δεを、1kHzで決定する。
【0240】
測定法
本発明に使用される測定量の測定を、150mm積分球(ウルブリヒト球)を有するPerkin Elmer Lambda 1050 UV/VIS/NIR分光計において行う。透過強度の値は、各場合において、380~780nmのスペクトル領域にわたって平均化して決定する。本明細書において、「平均化した」は、数値的に平均化したことを意味すると解釈される。
【0241】
大角散乱I≧2.5°の強度の測定のために、サンプルを、積分球のサンプルホルダ上に直接取り付ける。積分球を開ける。出射光を、光トラップ、すなわち、非反射黒色媒体、例えば、黒色の非反射布に集める。それにより、2.5°未満の開口角を有する光は、球体を出て、もはや測定に入らない。
【0242】
全透過率Iの強度の測定のために、サンプルを、積分球の入口にあるサンプルホルダ上に直接取り付ける。積分球(ウルブリヒト球)を閉じ、サンプルを通過する全ての光、すなわち、散乱されていない光と散乱された光も両方を検出器に導く。
【0243】
測定を、異なるスイッチング状態における特性強度を得るために、スイッチング媒体における駆動電圧の有無において行う。完全な特性決定のために、強度対電圧曲線を測定する。
【0244】
後方散乱強度の測定のために、サンプルを、積分球の開放された出口開口に取り付ける。光トラップを、サンプルの後ろのさらなる光路に配置する。サンプルにより反射された光は、積分球を介して検出器に到達し、測定される。非反射光は、検出器に到達することなく積分球を出る。
【0245】
以下の散乱がないことは、Tが0.03未満、好ましくは、0.01未満の値を意味することを意図している。実際の実施形態では、0に等しいT値は、決して完全に達成できるものではない。
【0246】
実施例1
ネマチックLCホスト混合物N1を、下記のように配合する。
【0247】
CY-3-O2 6.00% cl.p. 97℃
CY-3-O4 8.00% Δn 0.2447
CPY-2-O2 5.00% Δε -4.1
CPY-3-O2 5.00% ε|| 4.1
PYP-3-O2 10.00%
PYP-2-4 10.00%
PTP-102 5.00%
PTP-201 5.00%
PTP-301 5.00%
CPTP-301 5.00%
CPTP-302 2.00%
PTP-302FF 12.00%
PTP-502FF 12.00%
CPTP-302FF 5.00%
CPTP-502FF 5.00%。
【0248】
実施例2~14
重合性混合物を、モノマーM1および光開始剤(Darocur(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)819またはIrgacure(登録商標)907)をネマチックホスト混合物N1に種々の濃度で添加することにより形成する。重合性混合物の組成を、以下の表1に示す。
【化64】
表1:重合性混合物組成
【表1】
【0249】
重合性混合物は、スイッチングデバイスおよびスイッチング可能な窓での使用に適している。
【0250】
デバイス実施例
重合性混合物を均質化し、セル厚d約10.0μmで離間し、それぞれ透明ITO電極および垂直配向層を備えた、2つの平行平面ガラス基板からなる試験セルに充填する。
【0251】
LC混合物は、基板の表面に対して自発的なホメオトロピック(垂直)配向を示す。
【0252】
ついで、試験セルを、320nmの波長より短い放射線を遮断するカットフィルターを有する高圧水銀灯(Toshiba TUSCURE753)からの紫外線に、200mW/cmの照射強度で50秒間暴露させ、重合性モノマーを重合させる。
【0253】
得られたスイッチングデバイスを、電極に電圧を印加することにより、高温であっても、透明状態から曇った状態に可逆的に切り替えることができる。
【0254】
図1に、実施例3または4それぞれの重合性混合物を含有するスイッチングデバイスについての、Otsuka Electronics LCD-5200により測定されたスイッチング曲線(透過対電圧グラフ)を示す。グラフは、高い初期透過率(すなわち、低い初期ヘイズ)、実施例3の混合物について約15~30Vのスイッチング動作および実施例4の混合物について約50~70Vのスイッチング動作ならびにより高い電圧での低いレベルの透過率(高いレベルの最大ヘイズ)を示す。スイッチング動作は、非常に可逆的である。
図1