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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】検長装置、検長システムおよび検長方法
(51)【国際特許分類】
   B21F 35/00 20060101AFI20230612BHJP
   G01B 11/04 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B21F35/00 A
G01B11/04 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020042757
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142541
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 浩明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋延
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/239719(US,A1)
【文献】特開2019-35605(JP,A)
【文献】特表2014-517601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 35/00
G01B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイリングマシンによりワイヤから成形されるコイルばねの長さを検出する検長装置であって、
前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列で撮像することにより得られた複数の画像を合成した合成画像を生成する画像合成モジュールと、
前記合成画像に基づき前記コイルばねの長さを検出する検長モジュールと、
を備える検長装置。
【請求項2】
前記合成画像は、前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、
前記検長モジュールは、前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する、
請求項1に記載の検長装置。
【請求項3】
前記合成画像は、前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、
前記検長モジュールは、前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する、
請求項1に記載の検長装置。
【請求項4】
前記画像合成モジュールは、前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された第1領域を示す第1合成画像と、前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された第2領域を示す第2合成画像とを生成し、
前記検長モジュールは、前記第1合成画像における前記第1領域の端部の位置と、前記第2合成画像における前記第2領域の端部の位置とに基づいて前記コイルばねの長さを検出する、
請求項1に記載の検長装置。
【請求項5】
前記検長モジュールにより検出される前記コイルばねの長さは、前記第1領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第1長さと、前記第2領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第2長さの間の値である、
請求項4に記載の検長装置。
【請求項6】
前記複数の画像のフレームレートは、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねの振動の周波数よりも大きい、
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の検長装置。
【請求項7】
前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列で撮像して前記複数の画像を生成するカメラと、
請求項1に記載の検長装置と、
を備える検長システム。
【請求項8】
コイリングマシンによりワイヤから成形されるコイルばねの長さを検出する検長方法であって、
前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列に撮像し、
撮像された複数の画像が合成された合成画像を生成し、
前記合成画像に基づき前記コイルばねの長さを検出する、
検長方法。
【請求項9】
前記合成画像は、前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、
前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する、
請求項8に記載の検長方法。
【請求項10】
前記合成画像は、前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、
前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する、
請求項8に記載の検長方法。
【請求項11】
前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された第1領域を示す第1合成画像と、前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された第2領域を示す第2合成画像とを生成し、
前記第1合成画像における前記第1領域の端部の位置と、前記第2合成画像における前記第2領域の端部の位置とに基づいて前記コイルばねの長さを検出する、
請求項8に記載の検長方法。
【請求項12】
前記第1領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第1長さと、前記第2領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第2長さの間の値を前記コイルばねの長さとして検出する、
請求項11に記載の検長方法。
【請求項13】
前記複数の画像のフレームレートは、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねの振動の周期よりも大きい、
請求項8~12のうちいずれか1項に記載の検長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルばねの長さを検出する検長装置、検長システムおよび検長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルばねは、コイリングマシンによって素材となるワイヤを螺旋状に成形し、この螺旋状に成形された部分をワイヤから切断することにより製造される。さらに、このように製造されるコイルばねに対しては、長さやピッチ等が予め定められた基準に適合しているかどうかを確認するために、各種データの計測が実施される。
【0003】
例えば特許文献1~3に開示されたように、上記計測は、素材となるワイヤから切断された後のコイルばねに対し、カメラやセンサを備えた装置を用いて実施される。また、特許文献4に開示されたように、コイリングマシンによる成形動作中にコイルばねに対する計測が実施される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-119088号公報
【文献】特開2011-177791号公報
【文献】独国特許出願公開第4239207号明細書
【文献】特表2015-510841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルばねの製造工程を効率化する観点からは、コイリングマシンにより成形されて素材となるワイヤから切断される前のコイルばねに対し計測が実施されることが好ましい。しかしながら、切断前のコイルばねには成形動作時の振動が残るため、例えばコイルばねの長さを計測しようとしても当該振動に起因した誤差が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、ワイヤから切断される前のコイルばねの長さを精度良く検出可能な検長装置、検長システムおよび検長方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る検長装置は、コイリングマシンによりワイヤから成形されるコイルばねの長さを検出するものであって、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列で撮像することにより得られた複数の画像を合成した合成画像を生成する画像合成モジュールと、前記合成画像に基づき前記コイルばねの長さを検出する検長モジュールと、を備えている。
【0008】
例えば、前記合成画像は前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、前記検長モジュールは前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する。
【0009】
他の例として、前記合成画像は前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された領域を示す画像であり、前記検長モジュールは前記合成画像における前記領域の端部を前記コイルばねの端部とみなして前記コイルばねの長さを検出する。
【0010】
さらに他の例として、前記画像合成モジュールは、前記複数の画像の全てにおいて前記コイルばねが映し出された第1領域を示す第1合成画像と、前記複数の画像の1つにでも前記コイルばねが映し出された第2領域を示す第2合成画像とを生成する。さらに、前記検長モジュールは、前記第1合成画像における前記第1領域の端部の位置と、前記第2合成画像における前記第2領域の端部の位置とに基づいて前記コイルばねの長さを検出する。
【0011】
この場合において、前記検長モジュールにより検出される前記コイルばねの長さは、前記第1領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第1長さと、前記第2領域の端部を前記コイルばねの端部とみなした前記コイルばねの第2長さの間の値であってもよい。
【0012】
前記複数の画像のフレームレートは、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねの振動の周波数よりも大きいことが好ましい。
【0013】
一実施形態に係る検長装置は、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列で撮像して前記複数の画像を生成するカメラと、前記検長装置と、を備えている。
【0014】
一実施形態に係る検長方法は、コイリングマシンによりワイヤから成形されるコイルばねの長さを検出するものであって、前記ワイヤから切断される前の前記コイルばねを時系列に撮像し、撮像された複数の画像が合成された合成画像を生成し、前記合成画像に基づき前記コイルばねの長さを検出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤから切断される前のコイルばねの長さを精度良く検出可能な検長装置、検長システムおよび検長方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係るコイリングマシンおよび検長システムの概略的な構成を示す図である。
図2図2は、上記実施形態に係るコイリングマシンおよび検長システムが備える制御要素の一例を示す図である。
図3図3は、上記実施形態に係るカメラが生成する画像の一例を示す図である。
図4図4は、上記実施形態に係る画像合成モジュールの動作の一例を示す図である。
図5図5は、上記実施形態に係る第1合成画像および第2合成画像の生成方法の一例を示す図である。
図6図6は、上記実施形態に係る第1合成画像の一例を示す図である。
図7図7は、上記実施形態に係る第2合成画像の一例を示す図である。
図8図8は、上記実施形態に係るコイリングマシンおよび検長システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、合成回数が3回の場合においてコイルばねの長さを検出および実測した結果を示すグラフである。
図10図10は、図9に示した検出結果と実測結果の差分を示すグラフである。
図11図11は、合成回数が5回の場合においてコイルばねの長さを検出および実測した結果を示すグラフである。
図12図12は、図11に示した検出結果と実測結果の差分を示すグラフである。
図13図13は、合成回数が7回の場合においてコイルばねの長さを検出および実測した結果を示すグラフである。
図14図14は、図13に示した検出結果と実測結果の差分を示すグラフである。
図15図15は、合成回数が9回の場合においてコイルばねの長さを検出および実測した結果を示すグラフである。
図16図16は、図15に示した検出結果と実測結果の差分を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るコイリングマシン1および検長システム2の概略的な構成を示す図である。なお、コイリングマシン1および検長システム2を合わせてコイリングシステムなどと呼ぶこともできる。
【0018】
図1に示すように、X方向、Y方向、Z方向およびθ方向を定義する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。θ方向は、コイルばねを構成するワイヤが巻かれる方向である。
【0019】
コイリングマシン1は、複数の駆動ローラ10と、複数の従動ローラ11と、ワイヤガイド12と、第1成形ローラ13と、第2成形ローラ14と、ピッチツール15と、マンドレル16と、カッタ17とを備えている。
【0020】
駆動ローラ10と従動ローラ11は、隙間を介して対向している。図1の例においては駆動ローラ10と従動ローラ11の対が2つ示されているが、コイリングマシン1はより多くの駆動ローラ10および従動ローラ11を備えてもよい。駆動ローラ10と従動ローラ11の隙間には、ワイヤ3が通されている。各駆動ローラ10が回転すると、ワイヤ3を介して各従動ローラ11も回転する。このとき、ワイヤ3はX方向に送り出される。ワイヤガイド12には、ワイヤ3が挿入されている。ワイヤガイド12は、ワイヤ3がX方向に直進するようにガイドして、ワイヤ3を第1成形ローラ13に導く。
【0021】
第1成形ローラ13、第2成形ローラ14およびピッチツール15は、θ方向において順に配置されている。マンドレル16は、第1成形ローラ13、第2成形ローラ14およびピッチツール15の内側に配置されている。マンドレル16は、例えば図示したようにX-Y平面に沿う形状が半円状であり、Z方向に長尺に延びている。
【0022】
第1成形ローラ13は、X方向に送られるワイヤ3をY方向に向けて円弧状に曲げる。第2成形ローラ14は、第1成形ローラ13を経たワイヤ3をさらに円弧状に曲げる。このように曲げられたワイヤ3は、ピッチツール15によってガイドされてθ方向に送り出される。マンドレル16は、第2成形ローラ14とピッチツール15の間に位置するワイヤ3の内周面を支持する。
【0023】
ピッチツール15を経たワイヤ3により、図示したような螺旋状のコイルばね30が形成される。コイルばね30は、ワイヤ3の連続的な送り出しに伴いZ方向に成長する。カッタ17は、マンドレル16の上方に配置されている。カッタ17は、例えば鋭利な切断刃を先端に有しており、Y方向に沿って上下に移動可能である。カッタ17が下降してワイヤ3に衝撃を与えると、コイルばね30がワイヤ3から切り離される。
【0024】
検長システム2は、検長装置4と、カメラ5と、光源6とを備えている。カメラ5と光源6は、X方向に正対している。コイリングマシン1により成形されるコイルばね30は、カメラ5と光源6の間に位置する。
【0025】
光源6は、例えばY方向およびZ方向と平行な発光面6aを有する面光源である。カメラ5は、例えばCCD(Charge Coupled Device)を撮像素子として有しており、光源6によって照らされたコイルばね30を撮像して、コイルばね30が映し出された画像(画像データ)を生成する。検長装置4は、カメラ5および光源6を制御するとともに、カメラ5が生成する画像に基づいて各種の処理を実行する。光源6は、他の装置により制御されてもよいし、作業者がスイッチを操作することにより点灯および消灯されてもよい。
【0026】
図2は、コイリングマシン1および検長システム2が備える制御要素の一例を示す図である。コイリングマシン1は、プロセッサを含むコントローラ18と、駆動ローラ10を回転させるフィードモータ19と、第1成形ローラ13および第2成形ローラ14を駆動する成形ローラ駆動機構20と、ピッチツール15を駆動するピッチツール駆動機構21と、カッタ17を駆動するカッタ駆動機構22とを備えている。
【0027】
コントローラ18は、コイルばね30のピッチ、径および長さなどを含む予め設定された成形条件に基づいて各部を制御し、コイルばね30を製造する。例えば、コントローラ18は、成形ローラ駆動機構20およびピッチツール駆動機構21を制御して、第1成形ローラ13、第2成形ローラ14およびピッチツール15を上記成形条件に応じた位置に調整する。また、コントローラ18は、フィードモータ19を回転させてワイヤ3を送り、上記成形条件が示す長さに相当する分だけワイヤ3を送るとフィードモータ19を停止させ、カッタ駆動機構22を制御してカッタ17を下降させてワイヤ3を切断する。
【0028】
検長装置4は、コントローラ40を備えている。コントローラ40は、カメラ5を制御してコイリングマシン1により成形されるコイルばね30を撮像させるとともに、光源6を制御してコイルばね30を照明する。また、コントローラ40は、コイリングマシン1に対して成形条件の補正データ等を出力することもある。カメラ5が撮像時に生成する画像は、コントローラ40に入力される。なお、カメラ5により生成される画像には、コイルばね30の端末31が含まれている。
【0029】
コントローラ40は、カメラ5から入力される画像に対する処理に関する要素として、画像合成モジュール40aと、検長モジュール40bとを備えている。これら画像合成モジュール40aおよび検長モジュール40bは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)より実現される。
【0030】
詳しくは後述するが、画像合成モジュール40aは、カメラ5から入力される複数の画像を合成する。検長モジュール40bは、画像合成モジュール40aにより生成された合成画像に基づき、コイルばね30の長さを検出(演算)する。
【0031】
図3は、カメラ5がコイルばね30の撮像時に生成する画像IMGの一例を示す図である。ここでは時系列に撮像されたNo.1~No.6の6つの画像IMGを示している。図1に示すようにカメラ5と光源6を正対させ、その間に配置されたコイルばね30をカメラ5により撮像した場合、コイルばね30に相当する領域が低輝度となる画像が得られる。例えば、図3に例示した画像IMGに映し出されたコイルばね30は、端末31側の一部である。
【0032】
各画像上の破線枠は、予め定められた関心領域ROIである。関心領域ROIは、例えば螺旋状に成形された後に切断を待っている状態のコイルばね30のZ方向における端部が位置し得る範囲に設定される。各画像においてY方向に延びるラインLNは、関心領域ROIにおいてコイルばね30のZ方向における最端部の位置を表す。
【0033】
図3中の各画像IMGの右方には、コイルばね30の端部(Z方向における最端部)の位置の測定値を表す曲線Cが示されている。成形直後のコイルばね30には成形動作時の振動が残るため、各画像IMGにおけるコイルばね30の端部の位置は安定しない。したがって、曲線Cは上記振動に応じて周期的に変動する。曲線Cに付された矢印は、例えば各画像IMGにおける端部の位置の平均である基準値からの変動分を表す。
【0034】
このようにコイルばね30の端部の位置が不安定であるため、仮に1枚の画像IMGに基づいてコイルばね30の長さを検出しようとすると、振動に起因した誤差が生じる。そこで本実施形態においては、上述の画像合成モジュール40aおよび検長モジュール40bにより、複数の画像IMGに基づいてコイルばね30の長さが検出される。
【0035】
図4は、画像合成モジュール40aの動作の一例を示す図である。図中左方には、カメラ5によって生成される画像IMG1~IMG6が示されている。矢印tは、時間経過を表す。すなわち、画像IMG1、画像IMG2、画像IMG3、画像IMG4、画像IMG5および画像IMG6はこの順で時系列に撮像されたものであり、振動により端部の位置が変動するコイルばね30が映し出されている。
【0036】
画像合成モジュール40aは、これら画像IMG1~IMG6のような画像IMGに基づいて第1合成画像Wと第2合成画像Bを生成する。第1合成画像Wおよび第2合成画像Bの生成元となる画像IMGの数は特に限定されないが、図4においては4つの画像IMGにより第1合成画像W1~W3および第2合成画像B1~B3が生成される場合を例示している。すなわち、画像IMG1~IMG4に基づき第1合成画像W1および第2合成画像B1が生成され、画像IMG2~IMG5に基づき第1合成画像W2および第2合成画像B2が生成され、画像IMG3~IMG6に基づき第1合成画像W3および第2合成画像B3が生成される。
【0037】
図5は、第1合成画像Wおよび第2合成画像Bの生成方法の一例を示す図である。画像IMG、第1合成画像Wおよび第2合成画像Bは、例えばグレースケールの画像であり、水平方向および垂直方向にマトリクス状に並ぶ多数の画素の輝度値(階調値)を示すデータにより構成される。一例として、輝度値は0(黒)から255(白)の範囲の値である。画像IMGにおいては、コイルばね30に対応する領域の輝度値が低くなる。
【0038】
画像合成は例えば画像IMGに含まれる全ての画素について実行されるが、図5においては3つの画素PX1~PX3を例にとり、図3に示した第1合成画像W1および第2合成画像B1が画像IMG1~IMG4に基づいて生成される過程を例示する。
【0039】
画像IMG1において、画素PX1の輝度値は30であり、画素PX2の輝度値は80であり、画素PX3の輝度値は220である。また、画像IMG2において、画素PX1の輝度値は90であり、画素PX2の輝度値は110であり、画素PX3の輝度値は130である。画像合成モジュール40aは、先ずこれら画像IMG1,IMG2に基づいて第1合成画像Waおよび第2合成画像Baを生成する。
【0040】
第1合成画像Waの画素PX1の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX1の輝度値のうち高い一方、すなわち90である。第1合成画像Waの画素PX2の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX2の輝度値のうち高い一方、すなわち110である。第1合成画像Waの画素PX3の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX3の輝度値のうち高い一方、すなわち220である。
【0041】
第2合成画像Baの画素PX1の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX1の輝度値のうち低い一方、すなわち30である。第2合成画像Baの画素PX2の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX2の輝度値のうち低い一方、すなわち80である。第2合成画像Baの画素PX3の輝度値は、画像IMG1,IMG2の画素PX3の輝度値のうち低い一方、すなわち130である。
【0042】
続いて、画像合成モジュール40aは、第1合成画像Waおよび画像IMG3に基づいて第1合成画像Wbを生成するとともに、第2合成画像Baおよび画像IMG3に基づいて第2合成画像Bbを生成する。画像IMG3において、画素PX1の輝度値は60であり、画素PX2の輝度値は120であり、画素PX3の輝度値は60である。
【0043】
第1合成画像Wbの画素PX1の輝度値は、第1合成画像Waおよび画像IMG3の画素PX1の輝度値のうち高い一方、すなわち90である。第1合成画像Wbの画素PX2の輝度値は、第1合成画像Waおよび画像IMG3の画素PX2の輝度値のうち高い一方、すなわち120である。第1合成画像Wbの画素PX3の輝度値は、第1合成画像Waおよび画像IMG3の画素PX3の輝度値のうち高い一方、すなわち220である。
【0044】
第2合成画像Bbの画素PX1の輝度値は、第2合成画像Baおよび画像IMG3の画素PX1の輝度値のうち低い一方、すなわち30である。第2合成画像Bbの画素PX2の輝度値は、第2合成画像Baおよび画像IMG3の画素PX2の輝度値のうち低い一方、すなわち80である。第2合成画像Bbの画素PX3の輝度値は、第2合成画像Baおよび画像IMG3の画素PX3の輝度値のうち低い一方、すなわち60である。
【0045】
さらに、画像合成モジュール40aは、第1合成画像Wbおよび画像IMG4に基づいて第1合成画像W1を生成するとともに、第2合成画像Bbおよび画像IMG4に基づいて第2合成画像B1を生成する。画像IMG4において、画素PX1の輝度値は180であり、画素PX2の輝度値は70であり、画素PX3の輝度値は200である。
【0046】
第1合成画像W1の画素PX1の輝度値は、第1合成画像Wbおよび画像IMG4の画素PX1の輝度値のうち高い一方、すなわち180である。第1合成画像W1の画素PX2の輝度値は、第1合成画像Wbおよび画像IMG4の画素PX2の輝度値のうち高い一方、すなわち120である。第1合成画像W1の画素PX3の輝度値は、第1合成画像Wbおよび画像IMG4の画素PX3の輝度値のうち高い一方、すなわち220である。
【0047】
第2合成画像B1の画素PX1の輝度値は、第2合成画像Bbおよび画像IMG4の画素PX1の輝度値のうち低い一方、すなわち30である。第2合成画像B1の画素PX2の輝度値は、第2合成画像Bbおよび画像IMG4の画素PX2の輝度値のうち低い一方、すなわち70である。第2合成画像B1の画素PX3の輝度値は、第2合成画像Bbおよび画像IMG4の画素PX3の輝度値のうち低い一方、すなわち60である。
【0048】
なお、ここでは4つの画像IMG(IMG1~IMG4)に基づき第1合成画像W(W1)および第2合成画像B(B1)が生成される場合を例示したが、第1合成画像Wおよび第2合成画像Bは2つ、3つまたは5つ以上の画像IMGに基づいて生成されてもよい。
【0049】
以上のように、第1合成画像Wの生成過程においては、合成対象である2つの画像に含まれる画素の輝度値のうち高い一方が抽出される。すなわち、1つの画像がm行n列の画素で構成されており、合成対象である2つの画像の一方における各画素の輝度値をL1(m,n)、他方における各画素の輝度値をL2(m,n)とすると、以下の条件(1)(2)にて合成画像における各画素の輝度値LW(m,n)が決定される。
(1) L1(m,n)>L2(m,n)の場合、LW(m,n)=L1(m,n)
(2) L1(m,n)<L2(m,n)の場合、LW(m,n)=L2(m,n)
なお、L1(m,n)=L2(m,n)の場合には、L1(m,n)およびL2(m,n)のいずれをLW(m,n)に決定してもよい。このような条件にて順次画像を合成することにより生成される第1合成画像Wの画素は、合成元の複数の画像IMGにおける当該画素の輝度値の最大値を有する。
【0050】
一方、第2合成画像Bの生成過程においては、合成対象である2つの画像に含まれる画素の輝度値のうち低い一方が抽出される。すなわち、合成対象である2つの画像の一方における各画素の輝度値をL1(m,n)、他方における各画素の輝度値をL2(m,n)とすると、以下の条件(3)(4)にて合成画像における各画素の輝度値LB(m,n)が決定される。
(3) L1(m,n)>L2(m,n)の場合、LB(m,n)=L2(m,n)
(4) L1(m,n)<L2(m,n)の場合、LB(m,n)=L1(m,n)
なお、L1(m,n)=L2(m,n)の場合には、L1(m,n)およびL2(m,n)のいずれをLB(m,n)に決定してもよい。このような条件にて順次画像を合成することにより生成される第2合成画像Bの画素は、合成元の複数の画像IMGにおける当該画素の輝度値の最小値を有する。
【0051】
図6は、第1合成画像Wの一例を示す図である。図7は、第2合成画像Bの一例を示す図である。これら第1合成画像Wおよび第2合成画像Bの水平方向は図1に示したZ方向に相当し、垂直方向は図1に示したY方向に相当する。
【0052】
図6に示すように、第1合成画像Wは、低輝度な第1領域R1を含む。第1領域R1は、合成元となる複数の画像IMGの全てにおいてコイルばね30が映し出された領域に相当する。第1領域R1とその周囲の領域は、例えば予め定められた階調値の第1閾値に基づいて隔てることができる。すなわち、第1領域R1は、当該第1閾値以下の輝度値を有する画素で構成される。
【0053】
図7に示すように、第2合成画像Bは、低輝度な第2領域R2を含む。第2領域R2は、合成元となる複数の画像IMGの1つにでもコイルばね30が映し出された領域に相当する。第2領域R2とその周囲の領域は、例えば予め定められた階調値の第2閾値に基づいて隔てることができる。すなわち、第2領域R2は、当該第2閾値以下の輝度値を有する画素で構成される。第1閾値と第2閾値は例えば同じであるが、互いに異なってもよい。
【0054】
本実施形態において、上述の検長モジュール40bは、第1合成画像Wにおける第1領域R1の端部の位置と、第2合成画像Bにおける第2領域R2の端部の位置とに基づいてコイルばね30の長さを検出する。以下、当該検出に関する処理の一例について説明する。
【0055】
先ず、検長モジュール40bは、第1合成画像Wにおいて第1領域R1の端部を検出する。本実施形態においては、予め設定された関心領域ROIにおいて、第1領域R1に含まれる画素のうちZ方向の最端(図中右端)の画素の位置が第1領域R1の端部となる。図6においては、第1領域R1の端部にラインLN1が付されている。
【0056】
さらに、検長モジュール40bは、検出した第1領域R1の端部をコイルばね30の端部とみなしてコイルばね30の第1長さK1を検出する。第1長さK1は、第1合成画像Wに映し出された第1領域R1のZ方向における長さK10に対し、第1合成画像Wに映し出されていないコイルばね30の長さK0を足すことで算出できる。長さK10は、第1領域R1の端部の座標を予め設定された条件で長さに換算することにより得ることができる。長さK0は、例えばカメラ5の撮像範囲の端部からコイルばね30の切断位置CPまでの距離であり、予め実測した値を用いることができる。
【0057】
続いて、検長モジュール40bは、第2合成画像Bにおいて第2領域R2の端部を検出する。本実施形態においては、上述の関心領域ROIにおいて、第2領域R2に含まれる画素のうちZ方向の最端(図中右端)の画素の位置が第2領域R2の端部となる。図7においては、第2領域R2の端部にラインLN2が付されている。
【0058】
さらに、検長モジュール40bは、検出した第2領域R2の端部をコイルばね30の端部とみなしてコイルばね30の第2長さK2を検出する。第2長さK2は、第2合成画像Bに映し出された第2領域R2のZ方向における長さK20に対し、第2合成画像Bに映し出されていないコイルばね30の長さK0を足すことで算出できる。長さK20は、第2領域R2の端部の座標を予め設定された条件で長さに換算することにより得ることができる。
【0059】
検長モジュール40bは、このように検出した第1長さK1および第2長さK2に基づいて、コイルばね30の最終的な長さKを決定する。例えば、長さKは、第1長さK1と第2長さK2の間の値である。一例では長さKは第1長さK1と第2長さK2の単純平均であるが、加重平均などの他の手法で算出される値であってもよい。
【0060】
成形直後かつワイヤ3から切断前のコイルばね30には種々の振幅、周波数、方向の振動が生じ得る。一例として、検長に最も影響し得る振動の周波数は35Hz程度である。また、カメラ5のフレームレートは130fpsである。検長の精度を高める観点からは、カメラ5のフレームレートが振動の周波数よりも大きいことが好ましい。フレームレートがより大きいほど検長の精度向上が期待できる。また、振動するコイルばね30の長さが最長となる点と、最短となる点とを含む範囲(振動の1/2周期以上)で撮像された複数の画像IMGに基づいて第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成されることが好ましい。
【0061】
ここで、コイリングマシン1および検長システム2の一連の動作(検長方法)について説明する。図8は、コイリングマシン1および検長システム2の動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す動作は、1つのコイルばね30を製造し、かつ当該コイルばね30の長さを検出するためのものである。当該フローチャートに示す動作が繰り返されることにより、複数のコイルばね30が順次に製造されるとともに、これらコイルばね30の長さが検出される。コイリングマシン1の動作は、主にコントローラ18の制御の下で実行される。また、検長システム2の動作は、主にコントローラ40の制御の下で実行される。
【0062】
コイリングマシン1においては、先ずワイヤ3からコイルばね30が成形される(ステップS101)。具体的には、フィードモータ19が駆動ローラ10を回転させてワイヤ3を送り出し、このワイヤ3が第1成形ローラ13、第2成形ローラ14およびピッチツール15によって螺旋状に成形される。予め定められた成形条件が示す長さに相当する分だけワイヤ3が送り出されると、フィードモータ19が停止する(ステップS102)。
【0063】
フィードモータ19の停止後、コイリングマシン1から検長装置4に検長実行のトリガ(信号)が出力される(ステップS103)。その後、カッタ駆動機構22がカッタ17を下降させてワイヤ3を切断する(ステップS104)。これにより、1つのコイルばね30が製造される。
【0064】
その後、コイリングマシン1は、検長装置4から補正データを受信したかを判定する(ステップS105)。補正データは、後述のステップS209において検長装置4から送信されるものであり、例えば検出されたコイルばね30の長さKと基準値の差分を表す。
【0065】
補正データを受信した場合(ステップS105のYES)、コイリングマシン1は、当該補正データに基づき成形条件の補正が必要か否かを判定する(ステップS106)。例えば補正データが表す上記差分が予め定められた閾値よりも大きい場合などには、コイリングマシン1は補正が必要と判定する(ステップS106のYES)。補正が必要か否かの判定には、その他にも種々の方法を採用し得る。補正が必要と判定した場合、コイリングマシン1は、受信した補正データに基づいて上記差分が小さくなるように成形条件を補正する(ステップS107)。一方、補正が必要でないと判定した場合(ステップS106のNO)、成形条件の補正を経ることなくコイリングマシン1の動作はステップS101に戻り、次のコイルばね30が製造される。
【0066】
検長装置4においては、カメラ5がコイリングマシン1で成形されるコイルばね3を撮像して画像IMGを生成する(ステップS201)。さらに、画像合成モジュール40aが第1合成画像Wを生成するとともに(ステップS202)、検長モジュール40bが当該第1合成画像Wから第1長さK1を検出する(ステップS203)。ステップS202,S203と並行して、画像合成モジュール40aが第2合成画像Bを生成するとともに(ステップS204)、検長モジュール40bが当該第2合成画像Bから第2長さK2を検出する(ステップS205)。
【0067】
検長モジュール40bは、ステップS203で検出した第1長さK1とステップS205で検出した第2長さK2に基づき、コイルばね30の長さKを決定する(ステップS206)。検長モジュール40bは、当該長さKをラッチする。検長装置4はコイリングマシン1からのトリガの入力を待っており(ステップS207)、トリガが入力されるまでステップS201~S206の処理が繰り返される(ステップS207のNO)。
【0068】
ステップS202における第1合成画像Wの生成およびステップS204における第2合成画像Bの生成には、直前のステップS201で生成された画像IMGおよび前回以前のループ(ステップS201~S206)におけるステップS201で生成された画像IMGが用いられる。例えば第1合成画像Wおよび第2合成画像Bを得るための合成回数が3回に設定されている場合、直前のステップS201で生成された画像IMGと、1~3つ前のループのステップS201で生成された3つの画像IMGとに基づいて第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成される。
【0069】
ステップS103にてコイリングマシン1から出力されるトリガが検長装置4に入力されると、検長装置4は、直前のステップS206において検長モジュール40bにより検出され、ラッチされた長さKが正常であるかを判定する(ステップS208)。例えば、長さKが予め定められたコイルばね30の正常長さ範囲内である場合、検長装置4は長さKが正常であると判定する(ステップS208のYES)。このとき、検長装置4は、成形条件の補正データをコイリングマシン1に送信する(ステップS209)。この補正データは、例えば上述の通り、ステップS206にて検出されたコイルばね30の長さKと基準値の差分を表す。ステップS209の後、検長装置4の動作はステップS201に戻り、次のコイルばね30に対する処理が実行される。
【0070】
一方、上記正常長さ範囲の上限値よりも長さKが大きい場合や、当該範囲の下限値よりも長さKが小さい場合、検長装置4は長さKが正常でないと判定する(ステップS208のNO)。このとき、検長装置4は、コイルばね30の長さの異常を示す異常信号を送信する(ステップS210)。この異常信号は、例えばコイリングマシン1または他の装置により受信され、異常が報知される。異常の報知は、例えばディスプレイへのメッセージの表示やスピーカによる警告音の発生により行うことができる。また、異常の発生に伴い、コイリングマシン1および検長システム2の動作が停止されてもよい。
【0071】
以上の本実施形態においては、コイリングマシン1により成形されてワイヤ3から切断される前のコイルばね30をカメラ5により撮像した複数の画像IMGの合成画像に基づいてコイルばね30の長さが検出される。仮に1つの画像IMGからコイルばね30の長さを検出する場合、コイルばね30の振動により正確な長さを得ることが困難である。これに対し、時系列の複数の画像IMGの合成画像においては振動の影響が緩和されるため、検長の精度を高めることができる。
【0072】
特に本実施形態においては、第1合成画像Wおよび第2合成画像Bに基づいてコイルばね30の長さが検出される。第1合成画像Wは、合成元となる複数の画像IMGの全てにおいてコイルばね30が映し出された領域である第1領域R1を含む。このような第1合成画像Wにおいては、画像IMGに一時的に表れる油煙やスケール等の異物が映し出されにくい。したがって、異物等の影響を抑制してコイルばね30の長さを検出することができる。
【0073】
一方、第2合成画像Bは、合成元となる複数の画像IMGの1つにでもコイルばね30が映し出された領域である第2領域R2を含む。このような第2合成画像Bにおいては、複数の画像IMGに含まれるコイルばね30の軌跡が映し出される。したがって、コイルばね30の振動が大きい場合であっても安定してコイルばね30の長さを検出することができる。
【0074】
このように異なる性質を有した第1合成画像Wおよび第2合成画像Bのそれぞれから検出した長さに基づき最終的なコイルばね30の長さを決定することで、高精度な検長が可能となる。
【0075】
なお、仮にコイルばね30の振動がある程度減衰するのを待ったり、コイルばね30に何らかの部材を接触させて機械的に振動を停止させたりすれば、1つの画像IMGからでも正確な検長が可能となる。しかしながら、この場合においては成形後のコイルばね30を切断するまでの時間が長くなり、製造時間の遅延が生じる。これに対し、本実施形態のように振動した状態のコイルばね30の長さを正確に検出できれば、製造時間の大幅な短縮が可能となる。
【0076】
発明者らは、本実施形態にて開示したように合成画像を用いてコイルばねの長さを検出する方法の精度を検証すべく実験を行った。当該実験においては、コイリングマシンにより成形されるコイルばねの長さを第1合成画像Wおよび第2合成画像Bを用いる本実施形態に係る検出方法にて検出した。
【0077】
第1合成画像Wおよび第2合成画像Bを得るために画像IMGを合成する回数は、3回、5回、7回、9回と変化させた。なお、合成回数が3回の場合には時系列に撮像された4つの画像IMGに基づき第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成され、合成回数が5回の場合には時系列に撮像された5つの画像IMGに基づき第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成され、合成回数が7回の場合には時系列に撮像された7つの画像IMGに基づき第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成され、合成回数が9回の場合には時系列に撮像された9つの画像IMGに基づき第1合成画像Wおよび第2合成画像Bが生成される。カメラ5のフレームレートは130fpsである。
【0078】
また、本実施形態に係る検出方法に加え、画像合成に用いた1つの画像IMGから画像処理にてコイルばねの長さを検出するとともに、静電容量式のセンサによってコイルばねの長さを実測した。
【0079】
図9図11図13および図15は、それぞれ合成回数が3回、5回、7回および9回の場合において、1つの画像IMGからコイルばねの長さを検出した結果(「合成無し」)、本実施形態に係る検出方法でコイルばねの長さを検出した結果(「合成」)、および、コイルばねの長さを実測した結果(「実測」)を示すグラフである。横軸は実験回数(n回)であり、縦軸は検出または実測されたコイルばねの長さ(mm)である。
【0080】
図10図12図14および図16は、それぞれ図9図11図13および図15における「合成無し」および「合成」の値から「実測」の値をそれぞれ減じた差分を示すグラフである。
【0081】
図9図11図13および図15から分かるように、「合成無し」、「合成」および「実測」のいずれの値も回ごとに同様の傾向にて変化するが、これらの値が大きく乖離する箇所も存在する。
【0082】
また、図10図12図14および図16から分かるように、「合成無し」の値と「実測」の値の差分は回ごとに大きく変化するが、「合成」の値と「実測」の値の差分は比較的安定しており、全体として「実測」の値に近いと言える。すなわち、本実施形態に係る検出方法でコイルばねの長さを検出すれば、1つの画像IMGから当該長さを検出する場合に比べ、実測値に近い結果を安定して得られることが確認された。
【0083】
さらに、発明者らは、図10図12図14および図16における「合成」の値に基づき、合成回数が3回、5回、7回および9回の場合のそれぞれにおけるばらつきσ[mm]を算出した。その結果、合成回数が3回の場合はσ=0.023mm、合成回数が5回の場合はσ=0.024mm、合成回数が7回の場合はσ=0.024mm、合成回数が9回の場合はσ=0.027mmとなった。
【0084】
このことから、合成回数が3回~7回であれば同程度の検長結果を得ることができ、合成回数の増加が必ずしも精度の向上に繋がらないことが確認された。なお、合成回数が9回の場合のばらつきσが大きくなった理由としては、合成元の画像IMGの一部に成形途中のコイルばねが映し出されたこと、あるいは成形直後で振動の強いコイルばねが映し出されたことが考えられる。
【0085】
以上の実施形態にて開示した発明を実施するに当たっては、コイリングマシン1および検長システム2の構成や動作を種々の態様に変更できる。
例えば、上記実施形態においては複数の画像IMGに基づいて第1合成画像Wと第2合成画像Bを生成し、これら合成画像に基づいてコイルばねの最終的な長さを検出する方法を例示した。しかしながら、第1合成画像Wおよび第2合成画像Bのいずれか一方に基づいてコイルばねの最終的な長さが検出されてもよい。
【0086】
すなわち、上記実施形態の他の例として、第1合成画像Wから検出される上述の第1長さK1がコイルばねの最終的な長さKに決定されてもよい。上述のように第1合成画像Wには油煙やスケール等の異物が映し出されにくいことから、第1合成画像Wにのみ基づいてコイルばねの長さを検出する場合であっても、1つの画像IMGからコイルばねの長さを検出する場合に比べ検長の精度向上が期待できる。
【0087】
さらに他の例として、第2合成画像Bから検出される上述の第2長さK2がコイルばねの最終的な長さKに決定されてもよい。上述のように第2合成画像Bはコイルばねの振動が大きいときに有利であることから、第2合成画像Bのみに基づいてコイルばねの長さを検出する場合であっても、1つの画像IMGからコイルばねの長さを検出する場合に比べ検長の精度向上が期待できる。
【0088】
コイルばねの長さの検出に用いる合成画像は、第1合成画像Wおよび第2合成画像B以外の方法で合成された画像であってもよい。また、このような合成画像とともに第1合成画像Wおよび第2合成画像Bの少なくとも一方を用いてコイルばねの長さが検出されてもよい。
【0089】
第1合成画像Wおよび第2合成画像Bは、合成元の複数の画像IMGの全ての領域を合成したものでなく、例えば関心領域ROIのみ合成したものであってもよい。この場合においては、画像合成に関する演算速度の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0090】
1…コイリングマシン、2…検長システム、3…ワイヤ、4…検長装置、5…カメラ、6…光源、30…コイルばね、40a…画像合成モジュール、40b…検長モジュール、IMG…画像、W…第1合成画像、B…第2合成画像、R1…第1領域、R2…第2領域、K1…第1長さ、K2…第2長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16