(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】半導体装置、及びワイヤボンディング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230612BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230612BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230612BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2020043135
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一哉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 努
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135761(JP,A)
【文献】特開2012-109455(JP,A)
【文献】特開2019-192764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って並ぶ第1パッド及び第2パッドと、
第3パッドと、
前記第1パッドと接する少なくとも1つの第1部分、及び前記第2パッドと接する第2部分、を有する少なくとも1つのワイヤと、
を備え、
前記第1部分の前記第1方向に沿った長さは、前記第2部分の前記第1方向に沿った長さよりも長
く、
前記少なくとも1つの第1部分は、2つの第1部分を含み、
前記2つの第1部分は、前記第1方向に沿って並び、
前記第1パッドは、第1領域及び第2領域を含み、
前記第1パッドの前記第1領域、前記第3パッド、前記第1パッドの前記第2領域、及び前記第2パッドは、前記第1方向に沿ってこの順に並び、
前記ワイヤは、前記2つの第1部分のうちの一方において前記第1領域と接し、前記2つの第1部分のうちの他方において前記第2領域と接する、
半導体装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、
前記第1パッドと接することなく前記第1部分の第1端に接続される第3部分と、
前記第1パッドと接することなく前記第1部分の第2端に接続される第4部分と、
を有する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1部分が、前記第1方向に沿って、前記第1パッドの第1端から第2端まで連続的に接する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワイヤは、前記第1方向と直交する第2方向に沿って並ぶ第1ワイヤ及び第2ワイヤを含み、
前記第1ワイヤの前記第1部分、及び前記第2ワイヤの前記第1部分は、前記第2方向に沿って対向する部分と、前記第2方向に沿って対向しない部分と、を有する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
第1方向に沿って並ぶ第1パッド及び第2パッドと、
前記第1パッドと接する少なくとも1つの第1部分、及び前記第2パッドと接する第2部分、を有する少なくとも1つのワイヤと、
を備え、
前記第1部分の前記第1方向に沿った長さは、前記第2部分の前記第1方向に沿った長さよりも長く、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記第1方向と直交する第2方向に沿って並ぶ第1ワイヤ及び第2ワイヤを含み、
前記第1ワイヤの前記第1部分、及び前記第2ワイヤの前記第1部分は、前記第2方向に沿って対向する部分と、前記第2方向に沿って対向しない部分と、を有する、
半導体装置。
【請求項6】
ボンディングツールに設定されたワイヤを第1パッドの第1面上の第1位置に接合することと、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを前記第1面に平行な第1方向に沿って移動させて、前記ワイヤを前記第1位置から前記第1パッドの前記第1面上の第2位置まで連続的に接合することと、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを前記第2位置から第2パッド上の第3位置まで移動させて、前記ワイヤを前記第3位置に接合することと、
を備えた、ワイヤボンディング方法。
【請求項7】
前記第2位置まで連続的に接合した後、前記ボンディングツールを前記第3位置まで移動させる前に、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを、前記第1パッドの前記第1面上の第4位置まで移動させることと、
前記ワイヤを前記第4位置に接合することと、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを前記第1方向に沿って移動させて、前記ワイヤを前記第4位置から前記第1パッドの前記第1面上の第5位置まで連続的に接合することと、
を更に備えた、
請求項
6記載のワイヤボンディング方法。
【請求項8】
前記ワイヤから、前記第1位置から前記第2位置まで接合され、かつ前記第3位置に接合された部分を切断することと、
前記ボンディングツールに設定された前記ワイヤを前記第1面上の第6位置に接合することと、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを前記第1方向に沿って移動させて、前記ワイヤを前記第6位置から前記第1パッドの前記第1面上の第7位置まで連続的に接合することと、
前記ワイヤを繰り出しながら、前記ボンディングツールを前記第7位置から前記第2パッド上の第8位置まで移動させて、前記ワイヤを前記第8位置に接合することと、
を更に備えた、請求項
6記載のワイヤボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置、及びワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置において、半導体素子と端子とを接続する様々な手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-195459号公報
【文献】特開2019-135761号公報
【文献】特許第3882734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩留まりの低下の抑制や、オン抵抗の増加を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、第1方向に沿って並ぶ第1パッド及び第2パッドと、上記第1パッドと接する少なくとも1つの第1部分、及び上記第2パッドと接する第2部分、を有する少なくとも1つのワイヤと、を備える。上記第1部分の上記第1方向に沿った長さは、上記第2部分の上記第1方向に沿った長さよりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1のII-II線に沿った半導体装置の断面図。
【
図3】実施形態に係る半導体装置のうちの第1接合部を模式的に示す、
図1の領域IIIを拡大した平面図。
【
図4】実施形態に係る半導体装置のうちの第1接合部を模式的に示す、
図2の領域IVを拡大した断面図。
【
図5】実施形態に係る半導体装置のうちの第2接合部を模式的に示す、
図1の領域Vを拡大した平面図。
【
図6】実施形態に係る半導体装置のうちの第2接合部を模式的に示す、
図2の領域VIを拡大した断面図。
【
図7】実施形態に係る半導体装置の製造におけるワイヤボンディング方法を示すフローチャート。
【
図8】実施形態に係る半導体装置の製造におけるワイヤボンディング方法に使用されるボンディングツールの軌跡を示す図。
【
図9】実施形態に係る半導体装置の製造におけるワイヤボンディング方法を実行する際のボンディングツール及び半導体装置の断面図。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿った半導体装置の断面図。
【
図14】その他の実施形態に係る半導体装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。また、以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0008】
1. 実施形態
実施形態に係る半導体装置について説明する。以下では、半導体装置の一例として、半導体素子としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置を示す。しかしながら、半導体装置における半導体素子はMOSFETに限定されるものではない。例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やBJT(Bipolar Junction Transistor)等のその他のトランジスタであってもよい。
【0009】
1.1 構成
まず、実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。
【0010】
1.1.1 半導体装置の全体構成
図1は、実施形態に係る半導体装置の全体構成を示す平面図であり、
図2は、
図1のII-II線における半導体装置の断面図である。なお、図示しないが、半導体装置は公知の樹脂等で封止されていてもよい。
【0011】
図1及び
図2に示すように、半導体装置1は、MOSFET10と、MOSFET10の外部に設けられた端子30と、当該MOSFET10及び端子30間を電気的に接続する複数のワイヤ20(20-1、20-2、20-3、20-4、及び20-5)と、を備える。なお、
図1及び
図2の例では、複数のワイヤ20として5本のワイヤ20-1~20-5を示したが、本数は5本に限定されるものではない。
【0012】
まず、MOSFET10の構成について説明する。MOSFET10は、半導体基板40、ドレイン電極50、ソース電極60、及びゲート電極70を含む。
【0013】
なお、以下で参照される図面において、半導体基板40に平行な平面をx-y平面、x-y平面に垂直かつ半導体基板40からソース電極60に向かう方向をz方向(上方向)と定義する。また、x-y平面において、複数のワイヤ20が並ぶ方向をx方向、x方向に垂直であり、MOSFET10と端子30とが並ぶ方向をy方向と定義する。
【0014】
半導体基板40は、例えば、Si(シリコン)基板、SiC(炭化珪素)基板である。なお、半導体基板40は、GaN(窒化ガリウム)やAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)やInGaN(窒化インジウムガリウム)等の窒化物半導体基板、GaO(酸化ガリウム)基板、ダイヤモンド半導体基板であってもよい。
【0015】
ドレイン電極50は、半導体基板40の下方に設けられ、半導体基板40の下面に電気的に接続される。ドレイン電極50は、例えば、アルミニウム、銅、銀、又は金を含む板状又は薄膜状の電極である。
図2の例では、ドレイン電極50は、導電性ペースト80を用いて、半導体基板40に固定されている。しかし、ドレイン電極50は、半導体基板40の下面と電気的に接続されていればよく、その固定方法は特に限定されない。
【0016】
ソース電極60は、第1パッドの一例であり、半導体基板40の上面上に設けられて半導体基板40の上面に電気的に接続される。ソース電極60は、アルミニウムを含む板状又は薄膜状の電極である。なお、ソース電極60は、銅、銀、又は金等を含む板状又は薄膜状の電極であってもよい。ソース電極60の上面上には、複数のワイヤ20の各々の第1端が接合される。
【0017】
ゲート電極70は、ゲート絶縁膜を介して半導体基板40の上方に設けられる。ゲート絶縁膜は、例えば、酸化シリコンで構成される。
【0018】
図1の例では、ソース電極60は、半導体基板40の上面のうちの中央領域に設けられ、ゲート電極70は、中央領域の外側において、ソース電極60よりも小さい領域に設けられる。このようなMOSFET10は、例えば、スイッチング動作に対する要求が比較的低速である場合に適用され得る。
【0019】
次に、MOSFET10と接続されている端子30について説明する。
【0020】
端子30は、第2パッドの一例であり、MOSFET10とy方向に離れて設けられている。端子30は、例えば、銅で形成されている。なお、端子30は、銀、金、パラジウム、ニッケル又は、アルミニウム等で形成されていてもよい。また、端子30は、例えば、銅等の上面に、銀、金、パラジウム、ニッケル、又はアルミニウム等が被覆されたものであってもよい。端子30の上面上には、複数のワイヤ20の各々の第2端が接合される。
【0021】
次に、ソース電極60と端子30とを接続している複数のワイヤ20について説明する。
【0022】
複数のワイヤ20-1~20-5は、この順にx方向に並び、各々が、上方から見てy方向に延伸する。上述の通り、複数のワイヤ20-1~20-5は、ソース電極60に接合された第1端と、端子30に接合された第2端と、を含む。
【0023】
より具体的には、ワイヤ20-1は、第1端においてソース電極60との接合部20-1a、20-1b、及び20-1cを有し、第2端において端子30との接合部20-1dを有する。接合部20-1d、20-1c、20-1b、及び20-1aは、この順にy方向に沿って並ぶ。ワイヤ20-2は、第1端においてソース電極60との接合部20-2a、及び20-2bを有し、第2端において端子30との接合部20-2dを有する。接合部20-2d、20-2b、及び20-2aは、この順にy方向に沿って並ぶ。ワイヤ20-3は、第1端においてソース電極60との接合部20-3a、20-3b、及び20-3cを有し、第2端において端子30との接合部20-3dを有する。接合部20-3d、20-3c、20-3b、及び20-3aは、この順にy方向に沿って並ぶ。ワイヤ20-4は、第1端においてソース電極60との接合部20-4a、及び20-4bを有し、第2端において端子30との接合部20-4dを有する。接合部20-4d、20-4b、及び20-4aは、この順にy方向に沿って並ぶ。ワイヤ20-5は、第1端においてソース電極60との接合部20-5a、20-5b、及び20-5cを有し、第2端において端子30との接合部20-5dを有する。接合部20-5d、20-5c、20-5b、及び20-5aは、この順にy方向に沿って並ぶ。
【0024】
接合部20-1a、20-1b、20-1c、20-2a、20-2b、20-3a、20-3b、20-3c、20-4a、20-4b、20-5a、20-5b、及び20-5cの各々は、第1部分の一例であり、以下では、第1接合部J1と称する場合がある。また、接合部20-1d、20-2d、20-3d、20-4d、及び20-5dの各々は、第2部分の一例であり、第2接合部J2と称する場合がある。
【0025】
また、複数のワイヤ20の各々は、ソース電極60又は端子30と接合していないループ部分L1及びL2を有する。ループ部分L1は、ソース電極60との接合部同士の間(ワイヤ20-1の例では、接合部20-1aと接合部20-1bとの間、又は接合部20-1bと接合部20-1cとの間)を接続する。ループ部分L2は、ソース電極60との接合部、及び端子30との接合部の間(ワイヤ20-1の例では、接合部20-1cと接合部20-1dとの間)を接続する。
【0026】
また、複数のワイヤ20の各々は、第1端の終端において、ソース電極60と接しない終端部分L0を有する。すなわち、接合部20-1a、20-2a、20-3a、20-4a、及び20-5aは、終端部分L0と、ループ部分L1との間に形成される。このように、複数のワイヤ20の各々は、第1接合部J1が第1端の終端となるボールボンディングではなく、ソース電極60と接しない終端部分L0が第1端の終端となるウェッジボンディングによって、ソース電極60と接合される。
【0027】
なお、複数のワイヤ20は、例えば、銅を含有するが、銅に限らず、金、銀、又はアルミニウムを含有していてもよく、銅、金、銀、及びアルミニウム等を含有する芯材がパラジウム等のコーティング材によって被覆されていてもよい。
【0028】
また、複数のワイヤ20の直径は特に限定されない。上述の通り、本実施形態では、ソース電極60と複数のワイヤ20の各々とがウェッジボンディングによって接合される。しかしながら、本実施形態に係る半導体装置は、ワイヤボンダのうち、比較的太い径(例えば100μm以上)を有するワイヤのボンディングに用いられるワイヤボンダ(ウェッジボンダ)のみならず、比較的細い径(例えば100μm未満)を有するワイヤのボンディングに用いられるワイヤボンダ(ボールボンダ)を用いても製造可能である。このため、実施形態に係る半導体装置の複数のワイヤ20には、直径が100μm以上のワイヤ、及び直径が100μm未満のワイヤのいずれも適用することができる。
【0029】
次に、ソース電極60と複数のワイヤ20との接合部の配置について説明する。
【0030】
ワイヤ20-1の接合部20-1a、20-1b、及び20-1cは、ワイヤ20-1と隣り合うワイヤ20-2の接合部20-2a、及び20-2bのうち少なくともいずれかと、ソース電極面において、x方向に部分的に重なる領域を有する。そのほかのワイヤについても、ワイヤ20-1と同様に、ソース電極60との接合部は、各々のワイヤと隣り合うワイヤの接合部と、x方向に部分的に重なる領域を有する。
【0031】
より具体的には、複数の第1接合部J1は、例えば、千鳥状に配置される。つまり、隣り合う2本のワイヤの一方の第1接合部J1と他方の第1接合部J1と(例えば、接合部20-1a~20-1cと、接合部20-2a及び20-2bと)は、y方向に沿ってずらして配置される。本実施形態では、複数のワイヤ20の各々が有する複数の第1接合部J1のうちの1つのy方向に沿った長さは、ループ部分L1のy方向に沿った長さよりも長い。このため、平面視において、隣り合う2本のワイヤの一方の第1接合部J1と他方の第1接合部J1とは、x方向に沿って互いに対向する部分と、対向しない部分と、を有する。
【0032】
複数のループ部分L1は、上記複数の第1接合部J1と同様、例えば、千鳥状に配置される。つまり、隣り合う2本のワイヤの一方のループ部分L1と他方のループ部分L1と(例えば、ワイヤ20-1によって形成される複数のループ部分L1とワイヤ20-2によって形成される複数のループ部分L1と)は、y方向に沿ってずらして配置される。加えて、上述の通り、1つの第1接合部J1のy方向に沿った長さは、1つのループ部分L1のy方向に沿った長さより長い。このため、平面視において、隣り合う2本のワイヤの一方のループ部分L1と他方のループ部分L1とは、x方向に沿って互いに対向しない。
【0033】
なお、
図1における接合部の配置はあくまで一例であり、その配置は種々の変形が可能である。
【0034】
1.1.2 第1接合部の詳細
次に、第1接合部J1の詳細について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0035】
図3は、
図1の領域IIIを拡大した平面図であり、接合部20-1aの詳細な形状が示される。また、
図4は、
図2の領域IVを拡大した断面図であり、
図3に対応する。なお、
図3及び
図4では、第1接合部J1の例として接合部20-1aを示すが、他の第1接合部J1も接合部20-1aと同等の構成を備えているため、その説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、接合部20-1aは、ワイヤ20-1のうち
図3における破線で囲まれた領域に対応する。ワイヤ20-1は、当該領域において、ソース電極60と接合する。この領域は、y方向に沿って長さD1を有する。すなわち、ワイヤ20-1は、接合部20-1aにおいて、y方向に沿って長さD1に渡ってソース電極60に接合される。また、後述するとおり、ワイヤ20-1は、ボンディングツールによってソース電極60に押圧されて接合されるため、ワイヤ20-1のx方向に沿った幅は、接合部20-1aに対応する領域の方が、ループ部分L1よりも長くなり得る。
【0037】
また、
図4に示すように、ワイヤ20-1の接合部20-1aにおけるz方向の厚さD2は、ワイヤ20-1のループ部分L1における径DWよりも小さく、接合部20-1aに対応する上記領域内においておよそ一定となっている。
【0038】
1.1.3 第2接合部の詳細
次に、第2接合部J2の詳細について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0039】
図5は、
図1の領域Vを拡大した平面図であり、接合部20-1dの詳細な形状が示される。また、
図6は、
図2の領域VIを拡大した断面図であり、
図5に対応する。なお、
図5及び
図6では、第2接合部J2の例として接合部20-1dを示すが、他の第2接合部J2も接合部20-1dと同等の構成を備えているため、その説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、接合部20-1dは、ワイヤ20-1のうち
図5における破線で囲まれた領域に対応する。ワイヤ20-1は、当該領域において、端子30に接合される。この領域は、y方向に沿って長さD3を有する。すなわち、ワイヤ20-1は、接合部20-1dにおいて、y方向に沿って長さD3に渡って端子30に接合される。また、後述するとおり、ワイヤ20-1は、ボンディングツールによって端子30に押圧されて接合されるため、ワイヤ20-1のx方向に沿った幅は、接合部20-1dに対応する領域の方が、ループ部分L2よりも長くなり得る。
【0041】
また、
図6に示すように、接合部20-1dにおけるワイヤ20-1のz方向の厚さD4は、ワイヤ20-1のループ部分L2における径DWよりも小さくなっている。なお、ワイヤ20-1は接合部20-1dにおいて切断されるため、接合部20-1dはワイヤ20-1の第2端の終端を形成する。このため、接合部20-1dの厚さD4は、ワイヤ20-1の第2端の終端に向かって徐々に小さくなり得る。
【0042】
なお、
図3において示した第1接合部J1のy方向に沿った長さD1は、
図5において示した、第2接合部J2のy方向に沿った長さD3よりも大きい。また、
図3において示した第1接合部J1のx方向に沿った長さは、
図5において示した第2接合部J2のx方向に沿った長さと同程度である。このため、第1接合部J1は、第2接合部J2と比較して、大きな接合面積を有している。
【0043】
1.2 ワイヤボンディング方法
次に、実施形態に係る半導体装置の製造方法として、ワイヤボンディング方法の一例を説明する。
【0044】
図7は、実施形態に係る半導体装置の製造におけるワイヤボンディング方法を示すフローチャートである。
図8は、
図7に示したワイヤボンディング方法に用いられるワイヤボンダが備えるボンディングツール(ツール)の軌跡を示す図である。
図9は、
図7に示したワイヤボンディング方法を実行する際のボンディングツール及び半導体装置の断面図である。
図8では、ソース電極60に対する、ボンディングツールの軌跡が模式的に示される。
図9では、第1接合部J1を形成する工程が部分(a)、(b)、及び(c)において模式的に示され、第2接合部J2を形成する工程が部分(d)において模式的に示される。また、
図9では、
図7及び
図8において参照されるボンディングツールがボンディングツール90として図示される。
【0045】
以降、
図7~
図9を参照して、ワイヤボンディング方法を説明する。なお、以降の説明では、ボンディングツール90を備えるワイヤボンダを用いてワイヤボンディングを行うものとする。ボンディングツール90は、ワイヤボンダによって制御され、ワイヤを保持しつつ、当該ワイヤの一部を接合対象の面に接合する機能を有する。
【0046】
まず、MOSFET10及び端子30が形成され、ワイヤボンダに設置される。
【0047】
続いて、
図7に示すように、工程S-1において、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を制御して、複数のワイヤ20の材料となるワイヤ20Aをボンディングツール90の先端から延出させる。
【0048】
工程S-2において、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を下降させ、工程S-1において延出させたワイヤ20Aをソース電極60と接触させる。具体的には、工程S-2において、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を、
図8のt1からt2に向かう矢印のように移動させる。これにより、ボンディングツール90の先端において、ワイヤ20Aは、径方向に沿って、ボンディングツール90の先端とソース電極60との間に挟まれる。
【0049】
工程S-3において、ワイヤボンダは、第1接合部J1の形成を開始する。具体的には、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を、ボンディングツール90の先端で、ソース電極60に対してワイヤ20Aを押圧する。これにより、
図9(a)に示すように、第1位置の一例である接合開始位置Aにおいて、ワイヤ20Aがソース電極60に接合される。なお、ワイヤボンダは、上記押圧動作に加え、必要に応じて、超音波振動、熱、スクラブ動作等を並行して実行することによって、ワイヤ20Aをソース電極60に接合してもよい。
【0050】
工程S-4において、ワイヤボンダは、ボンディングツール90の先端からワイヤ20Aを繰り出しながら、ボンディングツール90を、接合開始位置Aから、x-y平面に対して平行に(例えば、y方向に沿って)移動させる。具体的には、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を
図8のt2からt3に向かう矢印のように移動させる。これにより、ワイヤ20Aは、接合開始位置Aから、ボンディングツール90がx-y平面に沿って平行に移動する間、ボンディングツール90の先端でソース電極60に対して押圧されつつ、ボンディングツール90から繰り出される。このため、
図9(b)に示すように、ワイヤ20Aは、接合開始位置Aから第2位置の一例である接合終了位置Bまで、ソース電極60にy方向に沿って連続的に接合される。なお、ワイヤボンダは、上記押圧動作に加え、必要に応じて、超音波振動、熱、スクラブ動作等を並行して実行することによって、ワイヤ20Aをソース電極60に接合してもよい。
【0051】
工程S-5において、ワイヤボンダは第1接合部J1の形成を終了する。具体的には、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を、
図8のt3からt4に向かう矢印のように上昇させる。これにより、
図9(c)に示すように、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aのうちソース電極60と接合していない部分をボンディングツール90の先端からz方向に沿って繰り出す。
【0052】
工程S-6において、ワイヤボンダは、ソース電極60上に更なる第1接合部J1を形成するか否かを判定する。第1接合部J1(例えば、接合部20-1a)を形成した後、更なる第1接合部J1(例えば、接合部20-1b)を形成すると判定した場合(工程S-6;yes)、処理は工程S-7に進み、形成しないと判定した場合(工程S-6;no)、処理は工程S-8に進む。
【0053】
工程S-7において、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aを繰り出しながらボンディングツール90を接合部20-1aの接合終了位置Bから接合部20-1bの接合開始位置まで移動させる(ワイヤ20Aの第1ルーピング処理)。なお、接合部20-1bの接合開始位置は、第4位置の一例である。当該第1ルーピング処理において、ワイヤボンダは、例えば、ボンディングツール90を、
図8のt4からt5に向かう矢印に示されるような所定の軌跡に沿って移動させる。これにより、接合部20-1aの接合終了位置Bと接合部20-1bの接合開始位置との間にループ部分L1を形成することができる。ループ部分L1の形成後、処理は工程S-3に戻る。そして、工程S-6において更なる第1接合部J1を形成しないと判定されるまで、工程S-3~S-7が繰り返される。
【0054】
具体的には、工程S-7においてボンディングツール90を接合部20-1bの接合開始位置まで移動させた後、工程S-3において、接合部20-1bの接合開始位置に、ワイヤ20Aを接合する。次に、工程S-4において、接合部20-1bの接合開始位置から接合部20-1bの接合終了位置までワイヤ20Aを連続的に接合する。その後、工程S-5において、接合部20-1bの形成が終了する。なお、接合部20-1bの接合終了位置は、第5位置の一例である。
【0055】
以下では、第1接合部J1として、接合部20-1a、20-1b、及び20-1cが順に形成された後、更なる第1接合部J1を形成しないと判定されたものとする。
【0056】
工程S-8において、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aを繰り出しながらボンディングツール90を接合部20-1cの接合終了位置から接合部20-1dの接合位置まで移動させる(ワイヤ20Aの第2ルーピング処理)。当該第2ルーピング処理において、ワイヤボンダは、例えば、ボンディングツール90を、第1ルーピング処理と同様に、所定の軌跡に沿って移動させる。これにより、接合部20-1cの接合終了位置と接合部20-1dの接合位置との間にループ部分L2を形成することができる。
【0057】
工程S-9において、ワイヤボンダは、第2接合部J2の形成を開始する。具体的には、ワイヤボンダは、ボンディングツール90を下降させることで、ボンディングツール90の先端で、端子30に対してワイヤ20Aを押圧する。これにより、
図9(d)に示すように、第3位置の一例である接合位置Cにおいて、ワイヤ20Aが端子30に接合される。なお、ワイヤボンダは、上記押圧動作に加え、必要に応じて、超音波振動、熱、スクラブ動作等を並行して実行することによって、ワイヤ20Aを端子30に接合してもよい。
【0058】
工程S-10において、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aを切断する。具体的には、ワイヤボンダは、ボンディングツール90の先端からワイヤ20Aを繰り出しながら、ボンディングツール90を端子30からz方向に沿って所定量だけ上昇させた後、繰り出されたワイヤ20Aに引っ張り応力を加えて切断する。これにより、少なくとも1つの第1接合部J1を有する第1端と、第2接合部J2を有する第2端と、を含むワイヤ20-1が形成される。なお、ワイヤ20Aの切断動作は上述の例に限らず、ボンディングツール90による端子30への押圧動作によってワイヤ20Aを切断する手法や、ボンディングツール90に備えられたワイヤカッタ等を用いてワイヤ20Aを切断する手法を適用してもよい。
【0059】
工程S-11において、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aを用いて、ソース電極60と端子30との間を更に接続するか否かを判定する。ワイヤ20Aを用いて、ソース電極60と端子30との間を更に接続すると判定された場合(工程S-11;yes)、ワイヤボンダは、ワイヤ20Aを繰り出すことなく、ボンディングツール90をソース電極60と端子30との間を更に接続するワイヤの接合部(例えば、ワイヤ20-2の接合部20-2a)を形成する位置まで移動させる。その後、処理は工程S-2に戻り、工程S-11においてソース電極60と端子30との間を更に接続しないと判定するまで、工程S-2~S-11が繰り返し実行される。
【0060】
ワイヤ20Aを用いて、ソース電極60と端子30との間を更に接続しないと判定された場合(工程S-11;no)、ワイヤボンダは、ワイヤボンディング動作を終了する。
【0061】
このようにして、ソース電極60と端子30との間を複数のワイヤ20でボンディングすることができ、最終的に半導体装置1を製造することができる。
【0062】
以上で説明したワイヤボンディング方法によれば、工程S-4が実行されることにより、第1接合部J1のy方向に沿った長さD1を、第2接合部J2のy方向に沿った長さD3よりも長くすることができる。なお、以上で説明したワイヤボンディング方法は半導体装置1を製造するための一例であり、各工程の間にはその他の処理が挿入されてもよいし、一部の工程が省略されてもよい。また、工程の順番が入れ替えられてもよい。
【0063】
1.3 本実施形態に係る効果
半導体素子を用いた半導体装置においては、電力変換効率を高めるために、半導体装置のオン抵抗の増加を抑制することが有効である。そのため、半導体素子内部に起因する抵抗の増加を抑制するだけでなく、半導体素子のソース電極と、半導体素子の外部端子とを電気的に接続する導電体に起因する抵抗の増加を抑制することが好ましい。
【0064】
本実施形態によれば、半導体装置1は、ソース電極60と端子30との間を電気的に接続する導電体として複数のワイヤ20が用いられる。当該複数のワイヤ20とソース電極60との接合部である複数の第1接合部J1の各々のy方向に沿った長さD1は、当該複数のワイヤ20と端子30との接合部である複数の第2接合部J2の各々のy方向に沿った長さD3よりも長い。これにより、第1接合部J1あたりの接合面積が大きくなり、結果として、ソース電極60と複数のワイヤ20との合計の接合面積が大きくなる。このため、ソース電極60と複数のワイヤ20との接合部分に起因する抵抗の増加を抑制できる。したがって、半導体装置1のオン抵抗の増加を抑制できる。
【0065】
また、複数の第1接合部J1は、ソース電極60上に千鳥状に配置される。これにより、x方向に隣り合う2つのワイヤの一方のループ部分L1と、他方のループ部分L1とがx方向に沿って対向する部分のy方向に沿った長さが低減される。このため、x方向に隣り合う2つのワイヤの一方を接合した後、他方のワイヤを接合する際に、ボンディングツール90と接合済みの一方のワイヤのループ部分L1との干渉を避けるためのマージンを低減できる。したがって、隣り合う2つのワイヤの間の距離を低減したマージンだけ短くすることができ、ソース電極60上にx方向に沿って密に複数の第1接合部J1を配置することができる。
【0066】
特に、
図1の例では、第1接合部J1のy方向に沿った長さD1は、ループ部分L1のy方向に沿った長さより長い。これにより、x方向に隣り合う2つのワイヤの一方のループ部分L1と、他方のループ部分L1とは、x方向に沿って対向する部分を有しない。換言すると、x方向に隣り合う2つのワイヤの一方の第1接合部J1と、他方の第1接合部J1とは、x方向に沿って対向する部分(x方向に沿って重なる部分)と、対向しない部分(x方向に沿って重ならない部分)とのいずれも有する。このため、ボンディングツール90と接合済みのワイヤのループ部分L1との干渉を避けるためのマージンをより低減できる。したがって、半導体装置1のオン抵抗の増加を抑制できる。
【0067】
また、上述の通り、ソース電極60と端子30とは、複数のワイヤ20をワイヤボンディングすることで電気的に接続される。これにより、半導体装置1におけるソース電極と端子との間を電気的に接続する工程をワイヤボンディングに統一することができる。このため、ワイヤボンディングに加え、他の手法を組み合わせて半導体装置1を製造する場合よりも、製造に要する装置を低減することができると共に、工程の増加も抑制することができる。
【0068】
また、実施形態の半導体装置であれば、ソース電極60とワイヤとの接続による抵抗の増加を抑制することができるため、ワイヤ本数の増加を抑制することができる。したがって、半導体装置の組み立て歩留まりを向上することができる。
【0069】
本実施形態によれば、ワイヤボンディングを実行しつつ、オン抵抗の増加を抑制し得る程度に十分な接合面積を有する複数の第1接合部J1を形成することができる。このため、歩留まりの低下を抑制しつつ、オン抵抗の増加を抑制することができる。
【0070】
また、実施形態の半導体装置であれば、ソース電極60における接合部あたりの接合面積が大きいため、接合不良の発生を抑制することができる。このため、半導体装置の接合信頼性を向上することができる。
【0071】
1.4 変形例
なお、上述の実施形態は、種々の変形が可能である。
【0072】
以下に、変形例に係る半導体装置について説明する。以下では、変形例に係る半導体装置について、実施形態に係る半導体装置と相違する点を中心に説明する。変形例に係る半導体装置によっても、実施形態と同様の効果が奏せられる。
【0073】
1.4.1 第1変形例
上述の実施形態では、複数のワイヤ20の各々がソース電極60上において、複数の第1接合部J1を有する場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数のワイヤ20の各々がソース電極60上において、1つの第1接合部J1を有し、当該第1接合部J1がソース電極60のy方向に沿った第1端から第2端まで延伸していてもよい。
【0074】
図10は、第1変形例に係る半導体装置1を上方から見たときの平面図である。
図11は、
図10のXI-XI線における、ワイヤ20-1を含む半導体装置1の断面図である。
【0075】
図10に示すように、ワイヤ20-1は第1接合部J1として接合部20-1aを有し、第2接合部J2として接合部20-1dを有する。ワイヤ20-2は第1接合部J1として接合部20-2aを有し、第2接合部J2として接合部20-2dを有する。ワイヤ20-3は第1接合部J1として接合部20-3aを有し、第2接合部J2として接合部20-3dを有する。ワイヤ20-4は第1接合部J1として接合部20-4aを有し、第2接合部J2として接合部20-4dを有する。ワイヤ20-5は第1接合部J1として接合部20-5aを有し、第2接合部J2として接合部20-5dを有する。このように、複数のワイヤ20の各々は、1つの第1接合部J1でソース電極60と接合している。
【0076】
また、
図11に示すように、ワイヤ20-1の接合部20-1aは、ソース電極60のy方向に沿った第1端から第2端に渡ってソース電極60と接合している。換言すると、ワイヤ20-1は、ソース電極60の上方において、ループ部分L1を有しない。また、接合部20-1aのy方向に沿った長さは、接合部20-1dのy方向に沿った長さよりも長い。なお、
図11では、複数のワイヤ20のうちの1つのワイヤ20-1についてのみ説明したが、その他のワイヤ20-2~20-5についても、ワイヤ20-1と同等の構成を有する。
【0077】
第1変形例によれば、複数のワイヤ20の各々は、1つの第1接合部J1によって、ソース電極60のy方向に沿った第1端から第2端に渡って接合される。これにより、複数のワイヤ20の各々は、ソース電極60の上方においてループ部分L1を含むことなく、ソース電極60と接合されることができ、第1接合部J1の接合面積を、より大きくすることができる。当該構成は、例えば、
図1及び
図10に示したような、ソース電極60が半導体基板40の上面のうちの中央領域に設けられ、ゲート電極70が当該中央領域の外側に設けられる場合に有効であり得る。
【0078】
1.4.2 第2変形例
上述の実施形態及び第1変形例では、ソース電極60が半導体基板40の中央領域に設けられた例を示したが、これに限られない。例えば、ゲート電極70が半導体基板40の中央領域に設けられ、ソース電極60が当該ゲート電極70を挟む(又は囲む)ように設けられてもよい。
【0079】
図12は、第2変形例に係る半導体装置1を上方から見たときの平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII線における、ワイヤ20-1を含む半導体装置1の断面図である。
【0080】
図12及び
図13に示すように、MOSFET10は、半導体基板40の中央領域にゲート電極70が設けられている。また、ソース電極61及び62が、ゲート電極70をy方向に沿って挟むように設けられている。なお、ソース電極61は第1領域の一例である。また、ソース電極62は第2領域の一例である。なお、
図12の例では、ソース電極が2つのソース電極61及び62に分かれて配置される例を示したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、半導体基板40の中央に設けられたゲート電極70等を囲むように、1つのソース電極が配置されてもよい。このようなMOSFET10は、例えば、スイッチング動作に対する要求が比較的高速である場合に適用され得る。
【0081】
ワイヤ20-1は、第1接合部J1として、ループ部分L3を介して接続されたソース電極61との接合部20-1a及びソース電極62との接合部20-1bを有し、第2接合部J2として接合部20-1dを有する。ワイヤ20-2は、第1接合部J1として、ループ部分L3を介して接続されたソース電極61との接合部20-2a及びソース電極62との接合部20-2bを有し、第2接合部J2として接合部20-2dを有する。ワイヤ20-3は、第1接合部J1として、ループ部分L3を介して接続されたソース電極61との接合部20-3a及びソース電極62との接合部20-3bを有し、第2接合部J2として接合部20-3dを有する。ワイヤ20-4は、第1接合部J1として、ループ部分L3を介して接続されたソース電極61との接合部20-4a及びソース電極62との接合部20-4bを有し、第2接合部J2として接合部20-4dを有する。ワイヤ20-5は、第1接合部J1として、ループ部分L3を介して接続されたソース電極61との接合部20-5a及びソース電極62との接合部20-5bを有し、第2接合部J2として接合部20-5dを有する。ループ部分L3は、ゲート電極70の上方を通過して、ソース電極61上の第1接合部J1と、ソース電極62上の第1接合部J1と、を接続する。
【0082】
複数の第1接合部J1の各々のy方向に沿った長さは、複数の第2接合部J2の各々のy方向に沿った長さよりも長い。
【0083】
第2変形例によれば、複数のワイヤ20の各々は、2つの第1接合部J1が、ゲート電極70の上方を通過するループ部分L3によって接続される。これにより、複数のワイヤ20の各々は、ゲート電極70を挟む2つのソース電極61及び62の各々に対して接合されることができ、第1接合部J1の接合面積を、より大きくすることができる。当該構成は、例えば、
図12に示したような、半導体基板40の中央領域にゲート電極70があり、当該中央領域にソース電極を設けることができない場合等に有効である。
【0084】
<その他>
上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例では、ソース電極におけるすべての接合部のy方向に沿った長さが、端子30との接合部のy方向に沿った長さよりも長い場合を示したが、これらに限られるものではない。例えば、半導体装置において、ソース電極上に、端子30との接合部のy方向に沿った長さよりも長い接合部に加えて、ボールあるいはバンプ、端子30との接合部と同様のy方向に沿った長さを有するステッチ等が形成されたものであってもよい。
【0085】
図14は、ソース電極上に、ボールあるいはバンプが形成された、その他の実施形態に係る半導体装置1を上方から見たときの平面図である。
図15は、
図14のXV-XV線における、ワイヤ20-1を含む半導体装置1の断面図である。
【0086】
図14に示すように、ワイヤ20-1は、ボールあるいはバンプ20-1e、第1接合部J1として接合部20-1a、及び20-1bを有し、第2接合部J2として接合部20-1dを有する。ワイヤ20-2は、ボールあるいはバンプ20-2e、第1接合部J1として接合部20-2aを有し、第2接合部J2として接合部20-2dを有する。ワイヤ20-3は、ボールあるいはバンプ20-3e、第1接合部J1として接合部20-3a、及び20-3bを有し、第2接合部J2として接合部20-3dを有する。ワイヤ20-4は、ボールあるいはバンプ20-4e、第1接合部J1として接合部20-4aを有し、第2接合部J2として接合部20-4dを有する。ワイヤ20-5は、ボールあるいはバンプ20-5e、第1接合部J1として接合部20-5a、及び20-5bを有し、第2接合部J2として接合部20-5dを有する。このように、複数のワイヤ20の各々は、ボールあるいはバンプ20-1e~20-5e、及び第1接合部J1でソース電極60と接合している。
【0087】
また、
図15に示すように、ワイヤ20-1のボールあるいはバンプ20-1eは、ワイヤ20-1の第1端の終端に形成される。換言すると、ワイヤ20-1は、ソース電極60の上方において、ループ部分L0を有しない。また、接合部20-1a、20-1bのy方向に沿った長さは、接合部20-1dのy方向に沿った長さよりも長い。なお、
図15では、複数のワイヤ20のうちの1つのワイヤ20-1についてのみ説明したが、その他のワイヤ20-2~20-5についても、ワイヤ20-1と同等の構成を有する。
【0088】
このような構成によっても、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0089】
上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例において、ワイヤの直径は特に限定されないが、直径が100μm以下のものを用いてもよい。このようなものであれば、半導体装置の製造において接合部を形成する際に、ワイヤをソース電極に強く押しつけなくても、接合することができる。このため、半導体素子の損傷、電気短絡の発生がより確実に抑制された半導体装置とすることができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体装置、10…MOSFET、20-1、20-2、20-3、20-4、20-5…ワイヤ、30…端子、40…半導体基板、50…ドレイン電極、60、61、62…ソース電極、70…ゲート電極、80…導電性ペースト、90…ボンディングツール。