(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20230612BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230612BHJP
【FI】
G06Q30/0201
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2020124024
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2021-08-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪内 孝太
(72)【発明者】
【氏名】金森 研太
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171876(JP,A)
【文献】特開2013-218409(JP,A)
【文献】特開2019-109908(JP,A)
【文献】特開2017-005932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0335920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの行動を示す行動情報を取得する取得部と、
前記ユーザの前記行動に対して影響を与える特定の事象であって、一時的に発生する特定の事象を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記事象が関係する事象期間の前記行動情報に基づいて、前記ユーザのコンテキストを推定する推定部と
、
を備え
、
前記推定部は、
前記事象期間の前記行動情報に基づき推定した第1の前記コンテキストと、前記事象期間以前の期間における前記行動情報に基づき推定した第2の前記コンテキストと比較結果により、前記第2のコンテキストの正否を判定すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、
前記行動情報として位置情報を取得し、
前記推定部は、
前記コンテキストとして前記ユーザの拠点を推定すること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ユーザの拠点には、少なくとも自宅および職場が含まれること
を特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、
前記事象期間以外の期間における前記行動情報に基づき推定した前記コンテキストにおいて、当該コンテキストの前記事象期間における第1情報と、当該コンテキストの前記事象期間以外の期間における第2情報との差異に基づいて、前記コンテキストの正否を判定すること
を特徴とする請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、
前記第1情報と前記第2情報との差異が所定の閾値条件を満たす場合に、推定した前記コンテキストの推定結果が誤りであると判定し、前記差異に基づいて前記コンテキストの推定結果を補正すること
を特徴とする請求項
4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部によって推定された前記コンテキストに基づいて、前記ユーザにコンテンツを提供する提供部をさらに備えること
を特徴とする請求項1~
5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザの行動を示す行動情報を取得する取得工程と、
前記ユーザの前記行動に対して影響を与える特定の事象であって、一時的に発生する特定の事象を検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された前記事象が関係する事象期間の前記行動情報に基づいて、前記ユーザのコンテキストを推定する推定工程と
、
を含
み、
前記推定工程は、
前記事象期間の前記行動情報に基づき推定した第1の前記コンテキストと、前記事象期間以前の期間における前記行動情報に基づき推定した第2の前記コンテキストと比較結果により、前記第2のコンテキストの正否を判定すること
を特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
ユーザの行動を示す行動情報を取得する取得手順と、
前記ユーザの前記行動に対して影響を与える特定の事象であって、一時的に発生する特定の事象を検出する検出手順と、
前記検出手順によって検出された前記事象が関係する事象期間の前記行動情報に基づいて、前記ユーザのコンテキストを推定する推定手順と
、
をコンピュータに実行させ
、
前記推定手順は、
前記事象期間の前記行動情報に基づき推定した第1の前記コンテキストと、前記事象期間以前の期間における前記行動情報に基づき推定した第2の前記コンテキストと比較結果により、前記第2のコンテキストの正否を判定すること
を特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の情報に基づいてユーザの情報を推定する技術が知られている。このような技術の一例として、ユーザが使用する端末装置が取得した位置情報に基づいて、ユーザの自宅や職場等といった拠点を推定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術では、ユーザの情報を高精度に推定する点で改善の余地があった。例えば、従来技術では、位置情報に基づく滞在時間の長さに応じてユーザの自宅や職場を推定するため、不規則な行動をするユーザについてはユーザの拠点を高精度に推定できないおそれがあった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザの情報を高精度に推定することができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る情報処理装置は、ユーザの行動を示す行動情報を取得する取得部と、前記ユーザの前記行動に対して影響を与える特定の事象を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記事象が関係する事象期間の前記行動情報に基づいて、前記ユーザのコンテキストを推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、ユーザの情報を高精度に推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る情報処理システムの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るユーザ端末の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、推定部の推定処理を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る情報処理装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
(実施形態)
〔情報処理の概要〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る情報処理方法の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。
【0011】
図1では、ユーザが所有する端末装置100と、情報処理装置1とを示している。実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置1によって実行される。具体的には、情報処理方法では、特定の事象が発生した期間におけるユーザの行動を元に、ユーザのコンテキストを推定する。
【0012】
なお、
図1では、情報処理方法の一例として、ユーザの位置情報からユーザの自宅および職場を推定する場合について説明する。
【0013】
ここで、従来技術では、ユーザの位置情報から自宅および職場を推定する場合、ユーザの滞在時間の長さに応じて自宅および職場を推定していた。または、一般に、ほとんどのユーザは昼の時間帯は職場に滞在している場合が多く、夜の時間帯は自宅に滞在している場合が多いため、位置情報の時間帯により自宅および職場を推定する従来技術もあった。
【0014】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば、学生等のような、生活が不規則で位置情報がばらつきやすいユーザや、昼夜逆転型の生活をするユーザ、つまり、昼は自宅に滞在し、夜は職場に滞在するユーザ等については自宅および職場の推定精度が低下するおそれがあった。
【0015】
そこで、実施形態に係る情報処理方法では、ユーザの行動に対して影響を与える特定の事象が発生している期間の行動情報を基に、ユーザのコンテキスト(自宅および職場)を推定する。
【0016】
図1では、特定の事象として、ウィルスのパンデミックを防ぐために発令された外出自粛要請を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示すように、情報処理装置1は、まず、各ユーザから端末装置100を介して位置情報を取得する(ステップS1)。情報処理装置1は、位置情報を定期的に取得し、蓄積していく。
【0018】
なお、
図1では、ユーザの行動を示す行動情報の一例として、位置情報を挙げたが、行動情報は、ユーザのネットワークにおける行動(検索行動や、購買行動等)の情報等といったユーザの行動に関する情報であれば任意の情報であってもよい。
【0019】
つづいて、情報処理装置1は、ユーザの行動に影響を与える特定の事象を検出する(ステップS2)。
図1に示す例では、ウィルスのパンデミックを防ぐために発令された外出自粛要請を特定の事象として検出する。なお、かかる特定の事象は、例えば、ニュースを配信するサーバ装置等の外部装置から取得可能な情報に基づいて検出可能である。
【0020】
つづいて、情報処理装置1は、特定の事象が関係する事象期間の行動情報に基づいて、ユーザのコンテキストを推定する(ステップS3)。例えば、情報処理装置1は、外出自粛要請が発令されている期間を事象期間とし、かかる事象期間の位置情報からユーザの自宅および職場を推定する。
【0021】
例えば、情報処理装置1は、事象期間の位置情報と、事象期間以外の期間における位置情報とを比較し、事象期間の位置情報において増加した拠点を自宅と推定する。つまり、情報処理装置1は、外出自粛要請によりユーザの自宅で滞在時間が増加することに着目することで、ユーザのコンテキストとして自宅を推定する。
【0022】
なお、詳細は後述するが、情報処理装置1は、事象期間以外の期間における行動情報に基づいて推定したコンテキストの正否を、事象期間の行動情報に基づいて判定することが可能である。つまり、情報処理装置1は、外出自粛期間以外の通常期間における位置情報により推定したユーザの自宅の正否を、外出自粛期間の位置情報に基づいて判定する。
【0023】
このように、実施形態に係る情報処理方法によれば、特定の事象によりユーザが特定の行動をすることに着目してユーザのコンテキストを推定することで、ユーザの情報を高精度に推定することができる。
【0024】
なお、
図1では、コンテキストとして、位置情報に基づきユーザの自宅もしくは職場を推定する場合を示したが、コンテキストを推定する他の例としては、ユーザが自家用車を所有しているか否かを推定する例がある。
【0025】
具体的には、情報処理装置1は、行動情報として、検索クエリの情報や、位置情報、乗換アプリ等の使用状況に関する情報等を取得する。そして、情報処理装置1は、これらの行動情報に基づいて、ユーザのコンテキストである自家用車の所有の有無を推定する。
【0026】
例えば、情報処理装置1は、通常期間(事象期間以外の期間)には行動情報から電車移動が多く、コンテキストとして自家用車を所有していないとする。そして、情報処理装置1は、ウィルスのパンデミックが発生している事象期間には電車移動が減り自動車での移動が増える行動情報が得られた場合、(車道を所定速度以上で移動や、位置情報が駅に点在しない等)がかかるユーザが自家用車を所有していると補正する。
【0027】
このように、情報処理装置1は、事象期間および事象期間以外の期間の行動情報の比較から様々コンテキストを推定することができる。
【0028】
〔情報処理システム〕
次に、
図2を用いて、上記の情報処理装置1を含む情報処理システムについて説明する。
図2は、実施形態に係る情報処理システムSの構成を示す図である。
図2に示すように、実施形態に係る情報処理システムSには、情報処理装置1と、複数台のユーザ端末100とが含まれる。これらの各種装置は、インターネット等の所定のネットワークNを介して、有線又は無線により通信可能に接続される。
【0029】
情報処理装置1は、上述した情報処理を実行する情報処理装置であり、例えば、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。例えば、情報処理装置1は、ユーザ端末100から行動情報を取得し、取得した行動情報を用いて、ユーザのコンテキストを推定する処理や、コンテキストを用いてコンテンツを提供する処理等を実行する。
【0030】
ユーザ端末100は、ユーザによって利用される端末装置である。ユーザ端末100は、例えば、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PCや、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA等により実現される。なお、以下では、ユーザ端末100を端末装置100と記載する場合がある。
【0031】
ユーザ端末100は、自己が備えるセンサにより行動情報を検出する処理や、行動情報を情報処理装置1へ送信する処理を実行する。
【0032】
〔ユーザ端末の構成〕
次に、
図3を用いて、実施形態に係るユーザ端末100の構成について説明する。
図3は、実施形態に係るユーザ端末100の構成例を示す図である。
図3に示すように、ユーザ端末100は、通信部200と、制御部300と、記憶部400と、入力部500と、表示部600とを有する。
【0033】
入力部500は、ユーザから各種操作を受け付ける。例えば、入力部500は、キーボードやマウス等で構成される。表示部600は、各種情報を表示する。例えば、表示部600は、液晶ディスプレイ等で構成される。
【0034】
通信部200は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部200は、ネットワークNと有線または無線で接続され、情報処理装置1との間で情報の送受信を行う。
【0035】
記憶部400は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0036】
(制御部)
制御部300は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、端末装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部300は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0037】
図3に示すように、制御部300は、取得部310と、送信部320とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0038】
(取得部)
取得部310は、ユーザの行動に関する行動情報を取得する。例えば、行動情報には、ユーザの実際の行動に関する情報や、ユーザのネットワーク上での行動に関する情報が含まれる。
【0039】
ユーザの実際の行動に関する情報とは、例えば、ユーザの現在地を示す位置情報(あるいは位置情報の変遷)である。取得部310は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星の受信信号に基づき測位される位置や、ユーザの周辺に配置されたビーコンを利用した位置を位置情報として取得する。
【0040】
また、ユーザのネットワーク上での行動に関する情報とは、例えば、所定の検索サービスにおける検索行動の情報(検索クエリ等)や、電子商取引サービスにおける購買行動に関する情報(購入した物品や、検索した物品等)、配信されたコンテンツに対するユーザの応答行動に関する情報(動画の視聴や、広告の閲覧、メールの開封等)である。
【0041】
(送信部)
送信部320は、取得部310が取得した行動情報を情報処理装置1へ送信する。送信部320による行動情報の送信タイミングは、任意であってよい。例えば、送信部320は、行動情報を取得する都度、情報処理装置1へ送信してもよく、一定間隔毎(例えば、1日毎)に行動情報をまとめて情報処理装置1へ送信してもよい。
【0042】
〔情報処理装置の構成〕
次に、
図4を用いて、実施形態に係る情報処理装置1の構成について説明する。
図4は、実施形態に係る情報処理装置1の構成例を示す図である。
図4に示すように、情報処理装置1は、通信部2と、制御部3と、記憶部4とを有する。
【0043】
通信部2は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部2は、ネットワークNと有線または無線で接続され、ユーザ端末100との間で情報の送受信を行う。
【0044】
記憶部4は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
図4に示すように、記憶部4は、ユーザ情報40と、行動情報41とを記憶する。
【0045】
ユーザ情報40は、ユーザに関する情報である。
図5は、ユーザ情報40の一例を示す図である。
図5に示すように、ユーザ情報40には、「ユーザID」および「コンテキスト情報」といった項目が含まれる。
【0046】
「ユーザID」は、ユーザを識別する識別情報である。「コンテキスト情報」は、ユーザのコンテキストを示す情報であり、後述する推定部32によって推定されるコンテキストである。
【0047】
ここで、コンテキストは、ユーザの状況や、ユーザの環境を示す情報である。具体的には、コンテキストには、ユーザのジオグラフィック属性(自宅の位置や、職場の位置、頻繁に利用する施設の位置等)や、デモグラフィック属性(年齢や、収入、職業等)、サイコグラフィック属性(価値観や、ライフスタイル、性格、好み等)が含まれる。
【0048】
行動情報41は、複数のユーザ端末100から取得した各ユーザの行動に関する行動情報である。
図6は、行動情報41の一例を示す図である。
図6に示すように、行動情報41には、「ユーザID」および「行動情報」といった項目が含まれる。
【0049】
「ユーザID」は、ユーザを識別する識別情報である。「行動情報」は、取得部30がユーザ端末100から取得した各種の行動情報が含まれる情報である。
【0050】
例えば、「行動情報」には、上記したユーザ端末100から取得する行動情報が含まれる。具体的には、行動情報には、上述したユーザの実際の行動に関する情報や、ユーザのネットワーク上における行動に関する情報が含まれる。
【0051】
(制御部)
制御部3は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報処理装置1内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部3は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0052】
図4に示すように、制御部3は、取得部30と、検出部31と、推定部32と、提供部33とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0053】
(取得部)
取得部30は、ユーザの行動に関する行動情報を取得する。例えば、取得部30は、ユーザ端末100の取得部310が取得した行動情報を取得する。また、取得部30は、所定のサービスを提供するサーバ装置から、サービスにおける行動情報、すなわち、ユーザのネットワーク上における行動に関する情報を取得してもよい。
【0054】
(検出部)
検出部31は、ユーザの行動に影響を与える特定の事象を検出する。検出部31は、特定の事象として、例えば、自然的に発生した災害(地震、台風、大規模火災、土砂崩れ、津波、感染病のパンデミック等)や、人為的に発生した災害(大気汚染等の公害や、交通事故、戦争等)等を検出する。
【0055】
また、検出部31は、上記した災害に伴う対策(外出自粛要請や避難要請等)を特定の事象として検出してもよい。また、検出部31は、映画や、ドラマ、音楽、ファッションといった各種流行(いわゆるブーム)を特定の事象として検出してもよい。
【0056】
上述した災害や、災害に伴う対策、各種流行は、ユーザの実際の行動や、ネットワーク上における行動(検索行動や購買行動)において、複数のユーザが同じ行動をとりやすくさせる。
【0057】
つまり、検出部31は、ユーザの同じ行動をとりやすくなるような事象を特定の事象として検出する。なお、検出部31は、各種ニュースを提供するサーバ装置や、ソーシャルネットワークサービスを提供するサーバ装置等から取得した情報に基づいて特定の事象を検出することができる。
【0058】
また、検出部31は、検出した特定の事象が関係する事象期間を検出する。例えば、検出部31は、特定の事象が発生したタイミングを含む前後の所定期間内を事象期間として検出する。また、検出部31は、例えば、特定の事象に関して外部装置等で指定した期間を事象期間として検出してもよい。また、検出部31は、外部装置から取得した情報に基づいて事象期間を予測してもよい。
【0059】
(推定部)
推定部32は、取得部30が取得した行動情報に基づいてユーザのコンテキストを推定する。例えば、推定部32は、コンテキストとして、ユーザの状況や、ユーザの環境を推定する。具体的には、推定部32は、コンテキストとして、ユーザのジオグラフィック属性(自宅の位置や、職場の位置、頻繁に利用する施設の位置等)や、デモグラフィック属性(年齢や、収入、職業等)、サイコグラフィック属性(価値観や、ライフスタイル、性格、好み等)を推定する。
【0060】
例えば、推定部32は、特定の事象である外出自粛要請の事象期間の位置情報の履歴に基づいて、ユーザの自宅や職場といった拠点を推定する。具体的には、推定部32は、位置情報の履歴において、滞在時間が最も長い位置を自宅と推定し、2番目に滞在時間が長い位置を職場と推定し、3番目に滞在時間が長い位置をライフライン関連の位置(スーパーやコンビニエンスストア等)と推定する。
【0061】
また、推定部32は、特定の事象である所定の流行(例えば、A歌手のB曲が大ヒット)の事象期間のユーザの検索行動から、ユーザの年齢や性別、流行に敏感が否か等の属性を推定する。具体的には、推定部32は、事象期間において、ユーザがA歌手やB曲に関連するキーワードを検索クエリとして指定し、検索結果の中からA歌手やB曲の情報を選択した場合に、かかるユーザが20代で、かつ、流行に敏感であると推定することができる。
【0062】
また、推定部32は、高所得者の中で所定の高額商品が流行している事象期間において、ユーザがかかる高額商品を購入する行動情報が得られた場合には、ユーザが高所得者(年収が所定値以上)であると推定する。
【0063】
また、推定部32は、例えば、事象期間以外の期間(通常期間)における行動情報に基づき推定したコンテキストの正否を、事象期間の行動情報に基づいて判定することが可能である。
【0064】
具体的には、推定部32は、事象期間以外の期間における行動情報に基づき推定したコンテキストにおいて、かかるコンテキストの事象期間における第1情報と、コンテキストの事象期間以外の期間における第2情報との差異に基づいて、コンテキストの正否を判定する。ここで、かかる点について、
図7を用いて説明する。
【0065】
図7は、推定部32による推定処理を示す図である。なお、
図7では、特定の事象として、外出自粛要請を例に挙げて説明する。
図7では、ユーザのコンテキストである自宅および職場の滞在時間に関するグラフを示している。なお、
図7に示す「自宅」および「職場」のコンテキストは、事象期間以外の期間(通常期間)の位置情報を基に推定されている。
【0066】
また、
図7のグラフでは、横軸に自宅での滞在時間の差異を示し、縦軸に職場での滞在時間の差異を示している。具体的には、自宅滞在時間の差異は、事象期間の位置情報に基づく自宅滞在時間(第1情報の一例)と、事象期間以外の期間の位置情報に基づく自宅滞在時間(第2情報の一例)との差異を示す。より具体的には、
図7に示す自宅滞在時間の差異は、第2情報である自宅滞在時間から第1情報である自宅滞在時間への変化量(差分)を所定条件に従って正規化した値である。
【0067】
また、職場滞在時間の差異は、事象期間の位置情報に基づく職場滞在時間(第1情報の一例)と、事象期間以外の期間の位置情報に基づく職場滞在時間(第2情報の一例)との差異を示す。より具体的には、
図7に示す職場滞在時間の差異は、第2情報である職場滞在時間から第1情報である職場滞在時間への変化量(差分)を所定条件に従って正規化した値である。
【0068】
かかる値が0の場合、第1情報および第2情報の間で変化が無いことを示し、値が正側に大きくなるほど、第1情報、すなわち、外出自粛中の自宅(もしくは職場)滞在時間が通常時よりも大きくなり、値が負側に大きくなるほど外出自粛中の自宅(もしくは職場)滞在時間が通常時よりも小さくなることを示す。
【0069】
ここで、一般的には、外出自粛期間中は、旅行等の不要不急な外出が減り自宅滞在時間が増える傾向にある。また、外出自粛期間中は、企業などでも在宅勤務が導入されて職場滞在時間が減る(もしくは変わらない)傾向にある。
【0070】
しかしながら、
図7のグラフでは、外出自粛期間中の自宅滞在時間が減る一方で、職場滞在時間が増えているユーザが一定数存在することになっている。すなわち、
図7のグラフでは、外出自粛期間中にも関わらず、一般的なユーザの行動とは真逆の行動をとるユーザが存在していることになる。
【0071】
ここで、発明者らは、このような真逆の行動をとると推定されたユーザの自宅および職場を確認したところ、コンテキストの推定結果が実際のコンテキストと異なっていることが判明した。つまり、推定したコンテキストである自宅が実際には職場で、推定したコンテキストである職場が自宅であることが判明した。すなわち、事象期間以外の期間の位置情報に基づき推定したコンテキストに誤りがあった。
【0072】
推定部32は、かかる点に着目し、特定の事象においてユーザがとりやすい行動と逆の行動をとっていた場合には、推定結果であるコンテキストが誤りであると判定する。具体的には、推定部32は、第1情報と第2情報との差異が所定の閾値条件を満たす場合に、事象期間以外の期間の行動情報に基づき推定したコンテキストの推定結果が誤りであると判定する。
【0073】
図7に示す例では、推定部32は、自宅滞在時間の差異が第1閾値TH未満、または(かつ)、職場滞在時間の差異が第2閾値TH以上であるユーザについてはコンテキストの自宅および職場の推定結果が誤りであると判定する。
【0074】
そして、推定部32は、推定結果が誤りである判定した場合、上記した差異に基づいてコンテキストを補正する。例えば、推定部32は、自宅滞在時間の差異および職場滞在時間の差異に基づいて、コンテキストの自宅および職場を入れ替える補正を行う。これにより、最終的な推定結果(補正後のコンテキスト)の精度を高めることができる。
【0075】
なお、推定部32は、第1情報および第2情報の差異に基づきコンテキストの正否を判定する場合に限らず、例えば、事象期間の行動情報に基づき推定した第1のコンテキストと、事象期間以外の期間における行動情報から推定した第2のコンテキストとの比較結果により、第2のコンテキストの正否を判定してもよい。
【0076】
具体的には、推定部32は、第1のコンテキストおよび第2のコンテキストが同じである場合、第2のコンテキストが正しいと判定し、第1のコンテキストおよび第2のコンテキストが異なる場合、第2のコンテキストが誤りであると判定する。かかる場合、推定部32は、第2のコンテキストを第1のコンテキストに補正する。
【0077】
なお、推定部32は、第2のコンテキストの推定処理を省略し、第1のコンテキストの推定処理のみを行ってもよい。
【0078】
また、
図7では、事象期間以外の期間における行動情報に基づき推定したコンテキストの正否を判定する場合を示したが、例えば、事象期間以外の期間における行動情報に基づくコンテキストの推定処理を省略し、事象期間および事象期間以外の期間それぞれの行動情報の比較結果により直接コンテキストを推定してもよい。
【0079】
具体的には、推定部32は、事象期間の行動情報と、事象期間の行動情報との差分にも基づいてコンテキストを推定する。より具体的には、推定部32は、特定の位置(場所、エリア)において、外出自粛期間である事象期間の滞在時間が事象期間以外の期間の滞在時間よりも増えた(増加率が最も高い)場合、自宅と推定する。
【0080】
(提供部)
提供部33は、推定部32によって推定されたコンテキストに基づいて、ユーザへコンテンツを提供する。具体的には、提供部33は、推定部32によって補正後の推定結果であるコンテンツに基づいて決定したコンテンツを提供する。
【0081】
提供部33によるコンテンツの提供方法は、例えば、プッシュ通知により提供部33から自発的にユーザへコンテンツを提供してもよく、ユーザの行動に対する応答としてコンテンツを提供する、つまり、受動的にコンテンツを提供してもよい。
【0082】
〔処理手順〕
次に、
図8を用いて、実施形態に係る情報処理装置1が実行する処理の手順について説明する。
図8は、実施形態に係る情報処理装置1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【0083】
図8に示すように、まず、取得部30は、ユーザ端末100からユーザの行動に関する行動情報を取得する(ステップS101)。
【0084】
続いて、推定部32は、事象期間以外の期間の行動情報に基づくコンテキストを推定する(ステップS102)。
【0085】
続いて、推定部32は、推定したコンテキストの事象期間における第1情報と、かかるコンテキストの事象期間以外の期間における第2情報とを生成する(ステップS103)。
【0086】
続いて、推定部32は、第1情報および第2情報の差異を算出する(ステップS104)。
【0087】
続いて、推定部32は、かかる差異が所定の閾値条件を満たすか否かを判定する(ステップS105)。
【0088】
推定部32は、差異が閾値条件を満たす場合(ステップS105:Yes)、ステップS102で推定したコンテキストを補正し(ステップS106)、処理を終了する。
【0089】
一方、推定部32は、差異が閾値条件を満たさない場合(ステップS105:No)、処理を終了する。つまり、推定部32は、ステップS102で推定したコンテキストを最終的な推定結果とする。
【0090】
〔効果〕
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置1は、取得部30と、検出部31と、推定部32とを備える。取得部30は、ユーザの行動を示す行動情報を取得する。検出部31は、ユーザの行動に対して影響を与える特定の事象を検出する。推定部32は、検出部31によって検出された特定の事象が関係する事象期間の行動情報に基づいて、ユーザのコンテキストを推定する。
【0091】
これにより、ユーザの情報(コンテキスト)を高精度に推定することができる。
【0092】
また、取得部30は、行動情報として位置情報を取得する。推定部32は、コンテキストとしてユーザの拠点を推定する。
【0093】
これにより、ユーザのコンテキストとしてユーザの拠点を高精度に推定することができる。
【0094】
また、ユーザの拠点には、少なくとも自宅および職場が含まれる。
【0095】
これにより、ユーザのコンテキストとして自宅および職場を高精度に推定することができる。
【0096】
また、推定部32は、事象期間の行動情報と、事象期間以外の期間における行動情報との比較結果に基づいて、コンテキストを推定する。
【0097】
これにより、ユーザのコンテキストを高精度に推定することができる。
【0098】
また、推定部32は、事象期間の行動情報に基づき推定した第1のコンテキストに基づいて、事象期間以前の期間における行動情報に基づき推定した第2のコンテキストの正否を判定する。
【0099】
これにより、第2のコンテキストの推定結果の正否を高精度に判定することができる。
【0100】
また、推定部32は、事象期間以外の期間における行動情報に基づき推定したコンテキストにおいて、コンテキストの事象期間における第1情報と、コンテキストの事象期間以外の期間における第2情報との差異に基づいて、コンテキストの正否を判定する。
【0101】
これにより、事象期間以外の期間の行動情報に基づいて推定したコンテキストの正否を高精度に判定することができる。
【0102】
また、推定部32は、第1情報と第2情報との差異が所定の閾値条件を満たす場合に、推定したコンテキストの推定結果が誤りであると判定し、差異に基づいてコンテキストの推定結果を補正する。
【0103】
これにより、補正後のコンテキストの精度を高めることができる。
【0104】
また、実施形態に係る情報処理装置1は、提供部33をさらに備える。提供部33は、推定部32によって推定されたコンテキストに基づいて、ユーザにコンテンツを提供する。
【0105】
これにより、ユーザのコンテキストに合致したより適切なコンテンツを提供することができる。
【0106】
〔プログラム〕
また、上述してきた実施形態に係る情報処理装置1は、例えば
図9に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図9は、実施形態に係る情報処理装置1の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0107】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0108】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、ネットワーク(例えば、ネットワークN)を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、ネットワークNを介して他の機器へ送信する。
【0109】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置といった入出力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを、入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0110】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0111】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置1として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部3の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部4内のデータが格納される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを、記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、ネットワークNを介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0112】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0113】
〔その他〕
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0114】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0115】
また、上述してきた実施形態に記載した各処理は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0116】
また、上記してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、取得部30は、取得手段や取得回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 情報処理装置
2、200 通信部
3、300 制御部
4、400 記憶部
30、310 取得部
31 検出部
32 推定部
33 提供部
100 端末装置(ユーザ端末)
320 送信部
500 入力部
600 表示部
S 情報処理システム