(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】音響信号を用いた電気化学システムの特性の決定
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20230612BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230612BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20230612BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20230612BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230612BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20230612BHJP
G01N 29/12 20060101ALI20230612BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20230612BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20230612BHJP
G01N 29/50 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01N29/07
H01M10/48 P
G01R31/392
G01R31/396
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
G01N29/11
G01N29/12
G01N29/46
G01N29/48
G01N29/50
(21)【出願番号】P 2020512706
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 US2018048804
(87)【国際公開番号】W WO2019046555
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519157886
【氏名又は名称】リミナル・インサイト・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】LIMINAL INSIGHTS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】500184305
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・プリンストン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF PRINCETON UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】619 Alexander Road, Suite 102, Princeton,NJ 08540-6000 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタインガート、ダニエル・エー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィエス、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスワス、シャウアージョ
(72)【発明者】
【氏名】シー、アンドリュー・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・タッセル、バリー
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドウ、シャン
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-137249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223498(US,A1)
【文献】特開2016-090346(JP,A)
【文献】特開2013-080703(JP,A)
【文献】特開2010-040318(JP,A)
【文献】Davies et al.,State of Charge and State of Health Estimation Using Electrochemical Acoustic Time of Flight Analysis,Journal of The Electrochemical Society,第164巻第12号,2017年09月12日,p.A2746-A2755
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
H01M 10/42-10/48
G01R 31/36-31/44
H02J 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学システムの非侵襲的分析の方法であって、前記方法は、
少なくとも第1のバッテリを、充電/放電サイクルの少なくとも一部におき、
前記充電/放電サイクルの少なくとも前記一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、前記2つ以上の時間インスタンスは、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応しており、前記第1のバッテリの少なくとも一部を介して音響信号を送信し、対応する応答信号を受信し、
前記2つ以上の充電状態における、送信された前記音響信号及び受信した応答信号の少なくとも一部に基づいた、第1の音響データセットを決定し、
前記第1の音響データセットに基づいて、第2の音響データセットを生成し、
前記第2の音響データセットは、前記応答信号を介して受信し、前記第1の音響データセットと比較して、より少ない数のデータポイントを有しており、
前記データポイントは、前記応答信号の1つ以上の特性に対応し、前記応答信号は、処理されると、前記第1のバッテリの物理的特性を示し、
少なくとも前記第2の音響データセットを用いて、前記第1のバッテリの1つ以上の物理的特性を決定し、
前記1つ以上の物理的特性は、前記第1のバッテリの密度、弾性率、体積弾性率、せん断弾性率、多孔性、または厚みの1つ以上を含む、方法。
【請求項2】
前記第2
の音響データセットの前記データポイントは、総信号振幅、周波数成分、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、時間ドメインでの応答信号の減衰率、音響信号の正の振幅下の領域、負の振幅下の領域、のうちの1つに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記第1のバッテリにおいて、少なくとも前記第2の音
響データセットで、第1のデータベースを構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のデータベースは、前記第1のバッテリに関連する非音響のデータを含み、前記非音響のデータは、前記2つ以上の充電状態における、前記第1のバッテリの電圧、電流または温度のうち1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のデータベースには、前記2つ以上の充電状態において前記送信された音響信号または前記応答信号の1つ以上の波形が含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも、前記第1のデータベース、及び第2のバッテリの音響のデータ、または非音響のデータのうち1つ以上を用いて、1つ以上の前記第2のバッテリの特性を決定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の前記第2のバッテリの特性は、充電状態(SOC)、健康状態(SOH)、構成品質、残存寿命、電力状態、安全状態のうち1つ以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記第1のデータベースをトレーニングデータセットとして使用して、機械学習モデルを学習し、
前記機械学習モデルを使用して、前記第1のバッテリ又は前記第2のバッテリの1つ以上の物理的特性を決定する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記音響信号は超音波信号または弾性波を含み、
前記音響信号は1つ以上のトランスデューサによって送信され、
前記応答信号は1つ以上のトランスデューサによって受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電気化学システムの非侵襲的分析の方法であって、前記方法は、
少なくとも第1のバッテリの音響データまたは非音響データのうち1つ以上の第1のデータベースを用いて、1つ以上のバッテリの物理的特性を予測し、
前記1つ以上の物理的特性は、前記1つ以上のバッテリの密度、弾性率、体積弾性率、せん断弾性率、多孔性、または厚みの1つ以上を含み、
前記音響データは、第1のバッテリの第2の音響データセットを変換することにより得られた、少なくとも第1の音響データセッ
トを含み、前記第2の音響データセットは、第1のバッテリの少なくとも一部を介して送信される、1つ以上の音響信号、及び、1つ以上のトランスデューサを使用して
、2つ以上の充電状態において前記送信された信号に対する応答信号、の1つ以上に代表される、1つ以上のデータポイントを含み、
前記第1の音響データセットは、前記応答信号を介して、第2の音響データセットに比較して、より少ない数のデータポイントを有しており、
前記データポイントは、前記応答信号の1つ以上の特性に対応し、前記応答信号は、処理されると、前記1つ以上のバッテリの物理的特性を示す、方法。
【請求項11】
前記応答信号の1つ以上の特性は、前記応答信号の総信号振幅、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、時間ドメインでの応答信号の減衰率、音響信号の正の振幅下の領域、負の振幅下の領域、を少なくとも含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
装置であって、前記装置は、
少なくとも第1のバッテリと、
前記第1のバッテリを充電/放電サイクルの少なくとも一部におくように構成されたバッテリ管理システムと、
1つ以上のトランスデューサであって、前記トランスデューサは、前記充電/放電サイクルの少なくとも一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、第1バッテリの少なくとも一部を介して音響信号を送信し、応答信号を受信し、前記2つ以上の時間インスタンスは、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応している、前記1つ以上のトランスデューサと、
1つ以上のプロセッサを含み、前記プロセッサは、
前記2つ以上の充電状態における、送信された音響信号及び受信した応答信号の少なくとも一部を基にした、第1の音響データセットを決定し、
前記第1の音響データセットを変換して、第2の音響データセットを生成し、前記第2の音響データセットは、前記応答信号を介して受信し、前記第1の音響データセットと比較して、より少ない数のデータポイントを有しており、前記データポイントは、前記応答信号の1つ以上の特性に対応し、前記応答信号は、処理されると、前記第1のバッテリの物理的特性を示し、前記1つ以上の物理的特性は、前記第1のバッテリの密度、弾性率、体積弾性率、せん断弾性率、多孔性、または厚みの1つ以上を含み、
少なくとも前記第2の音響データセットを用いて、前記第1のバッテリの1つ以上の物理的特性を決定する、装置。
【請求項13】
前記データポイントは、タイム・オブ・フライトのシフト、総信号振幅、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、時間ドメインでの応答信号の減衰率、音響信号の正の振幅下の領域、負の振幅下の領域、のうちの1つに対応する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
1つ以上のプロセッサは、さらに、前記第1のバッテリの前記第2の音響データセットにより第1のデータベースを生成する、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
さらに1つ以上のセンサを含み、前記センサは、前記第1のバッテリの温度を決定し、
前記バッテリ管理システムは、前記第1のバッテリの電圧を決定し、
前記第1のデータベースは、さらに、前記第1のバッテリに関連する非音響データを含み、前記非音響データは、前記2つ以上の充電状態での前記第1のバッテリの前記電圧又は温度の1つ以上を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のデータベースには、前記2つ以上の充電状態において前記送信された音響信号または前記応答信号の1つ以上の波形を含む音響データセットが含まれる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
1つ以上の前記プロセッサは、さらに、少なくとも前記第1のデータベース、及び第2のバッテリの音響のデータ、削減された音響のデータ、または非音響のデータのうち1つ以上に基づいて、前記第2のバッテリの1つ以上の特性を予測する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第2のバッテリの1つ以上の特性は、充電状態(SOC)、健康状態(SOH)、構成品質、残存寿命、電力状態、安全状態のうち1つ以上を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記音響信号は、超音波信号または弾性波を含む、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本特許出願は、本願の譲受人に譲渡され、参照によってその全体が本願に明確に組み込まれる、2017年9月1日に出願され係属中の「USE OF ULTRASONIC METHODS FOR THE DETERMINATION OF THE STATE OF CHARGE AND STATE OF HEALTH OF ELECTROCHEMICAL SYSTEMS」と題された米国仮特許出願第62/553,287号の利益を主張するものである。
【連邦支援の研究または開発に関する陳述】
【0002】
本発明は、エネルギー高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency-Energy)により授与された認可番号DEAR0000621の下における米国連邦政府の援助によりなされたものである。米国連邦政府は、この発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
開示された態様は、電気化学システムの検査と診断に関する。より具体的には、例示的な態様は、電気化学システムの充電状態(state of charge(SOC))および健康状態(state of health(SOH))などの特性を決定する際の超音波信号の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
バッテリなどの電気化学システムの充電状態(SOC)、健康状態(SOH)、内部損傷などの追跡特性は、バッテリ寿命の向上、生産効率の向上、故障の早期予測など、さまざまな理由で重要である。しかし、そのような特性を効率よく低コストで確実に追跡または決定する能力が、課題として提示されている。
【0005】
たとえば、従来の実施では、SOC予測には、クーロンカウント(coulomb-counting)(ブックキーピング(bookkeeping))と組み合わせた電圧モニター(直接測定)が含まれる。これにはさまざまな理由で課題が存在する。第1に、電圧測定では、特にリン酸鉄リチウム(LFP)セルのバッテリ容量の大部分における電圧測定値の平坦性が困難である。さらに、電圧劣化、セルの電気インピーダンスの変化、及び放電率の変化は、電圧ベースのSOC測定の精度に影響を与える。第2に、クーロンカウントは不正確な科学でもあるからである。なぜなら放電率、温度などの環境要因、セルの劣化はすべて、特定の放電期間の実際の充電容量に影響を与える可能性があるからである。これにより、酷使のサイクルが発生し、放電状態によりSOCの推定が不正確になる可能性がある。このため、セルが誤って過放電になり、セルに損傷を与え、SOC予測がさらに不正確になり、継続的な過放電とセル損傷が発生する可能性がある。
【0006】
したがって、バッテリの機械的および物理的状態を直接測定して、SOC、SOH、及びセル障害の判定を強化できる、低コストで高精度の技術が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の例示的な態様は、音響信号を使用してバッテリの充電状態(SOH)、健康状態(SOC)およびその他の特性を予測するためのシステムと方法は、2つ以上の充電状態での音響データを決定し、2つ以上の充電状態での音響データを表す削減された音響データセットを決定する。削減された音響データセットには、タイム・オブ・フライト(TOF)シフト、総信号振幅、または充電状態に関連する他のデータポイントが含まれる。機械学習モデルは、他の独立したバッテリの特性を予測するために、少なくとも削減された音響データセットを電圧や温度などの非音響データと組み合わせて用いる。
【0008】
例えば、例示的な態様は、電気化学システムの非侵襲的分析の方法に関し、前記方法は、少なくとも第1のバッテリを、充電/放電サイクルの少なくとも一部におく。前記充電/放電サイクルの少なくとも前記一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、音響信号は、前記第1のバッテリの少なくとも一部を介して送信され、対応する応答信号は受信され、前記2つ以上の時間インスタンスは、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応している。少なくとも削減された音響データセットは決定され、前記削減された音響データセットは1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、前記2つ以上の充電状態における1つ以上の前記送信された音響信号または応答信号を含んでいる。
【0009】
別の例示的な態様は、電気化学システムの非侵襲的分析の方法に関し、前記方法は、少なくとも第1のデータベース、および第2のバッテリの音響データまたは非音響データのうち1つ以上を用いて、前記第2のバッテリの特性を予測し、前記第1のデータベースは、少なくとも削減された音響データセットを含み、前記削減された音響データセットは1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、前記第1のバッテリの少なくとも一部を介して送信される音響信号、前記送信された信号に対する応答信号に代表され、前記送信された信号及び前記応答信号は、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態における信号である。
【0010】
さらに別の例示的な態様は、装置に関し、前記装置は、少なくとも第1のバッテリと、第1のバッテリを充電/放電サイクルの少なくとも一部におくように構成されたバッテリ管理システムと、1つ以上のトランスデューサであって、前記トランスデューサは、前記充電/放電サイクルの少なくとも一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、前記第1バッテリの少なくとも一部を介して音響信号を送信し、応答信号を受信し、前記2つ以上の時間インスタンスは、第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応している。前記装置はさらにコンピュータを備え、前記コンピュータは、削減された音響データセットを決定し、前記削減された音響データセットは、1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、前記2つ以上の充電状態における1つ以上の前記送信された音響信号または応答信号を代表する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面は、本発明の様々な態様の説明を補助するために示され、限定ではなく例示のためだけに提供されるものである。
【0012】
【0013】
【
図2】
図2は、本開示の態様による、バッテリの音響分析を実行するためのシステムを示す。
【0014】
【
図3A】
図3Aは、本開示の態様による、バッテリを介して送信される音響信号の特徴間の相関を示す。
【
図3B】
図3Bは、本開示の態様による、バッテリを介して送信される音響信号の特徴間の相関を示す。
【0015】
【
図4A】
図4Aは、本開示の態様による、機械学習モデルを用いてバッテリのSOC、SOHなどの特性を予測するための方法を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の態様による、機械学習モデルを用いてバッテリのSOC、SOHなどの特性を予測するための方法を示す。
【0016】
【
図5A】
図5Aは、本開示の態様による、バッテリを介して送信される音響信号と非音響データの特徴間の相関を示す。
【
図5B】
図5Bは、本開示の態様による、バッテリを介して送信される音響信号と非音響データの特徴間の相関を示す。
【0017】
【
図6A】
図6Aは、本開示の態様による、TOFシフトおよび総信号振幅を含む音響信号の例示的な特徴と、SOCおよびバッテリ容量を含む特性との間の相関を示す。
【
図6B】
図6Bは、本開示の態様による、TOFシフトおよび総信号振幅を含む音響信号の例示的な特徴と、SOCおよびバッテリ容量を含む特性との間の相関を示す。
【
図6C】
図6Cは、本開示の態様による、TOFシフトおよび総信号振幅を含む音響信号の例示的な特徴と、SOCおよびバッテリ容量を含む特性との間の相関を示す。
【
図6D】
図6Dは、本開示の態様による、TOFシフトおよび総信号振幅を含む音響信号の例示的な特徴と、SOCおよびバッテリ容量を含む特性との間の相関を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、本開示の態様による、バッテリの非侵襲的分析の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の態様は、本発明の特定の態様に向けられた以下の説明および関連図面に開示される。代替の態様は、本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。また、本発明の関連細部を不明瞭にしないために、本発明の周知の要素は詳しく説明されず、または省略される。
【0020】
「典型的な(exemplary)」という言葉は本明細書において、「例、実例、または例証としての役割を果たす」ことを意味するように用いられる。本明細書で「典型的」として説明される任意の態様は、必ずしも他の態様に比べて好適または有利であると解釈されるものではない。同様に、「本発明の態様」という用語は、本発明の全態様が、説明された特徴、利点、または動作モードを含むことを必要とするものではない。
【0021】
本明細書で用いられる用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、本発明の態様を限定することは意図されない。本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が特に明示しない限り、複数形も同様に含むことが意図される。また、「備える」、「備えている」、「含む」、および/または「含んでいる」という用語は、本明細書で用いられる場合、記述された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはこれらのグループの存在または追加を除外するものではないことが理解される。
【0022】
また、多くの態様は、たとえばコンピューティングデバイスの要素によって実行される動作のシーケンスに関して説明される。本明細書で説明される様々な態様は、特定の回路(たとえば特定用途向け集積回路(ASIC))によって、1つ以上のプロセッサによって実行されているプログラム命令によって、または両者の組み合わせによって実行され得ることが認識される。また、本明細書で説明されるこれらの動作のシーケンスは、実行時、本明細書で説明される機能を関連プロセッサに実行させるコンピュータ命令の対応するセットを格納している任意の形式のコンピュータ可読記憶媒体において全体が具体化されるものとみなされ得る。したがって、本発明の様々な態様は、複数の異なる形式で具体化されてよく、それら全ては、特許請求の範囲に記載の主題事項の範囲内であると考えられる。加えて、本明細書で説明される態様の各々について、任意のそのような態様の対応する形式は、たとえば説明される動作を実行する「ように構成された論理」として本明細書で説明され得る。
【0023】
本開示の例示的な態様は、バッテリ等の電気化学システムの1つ以上の特性の決定又は予測に関する。当該特性は、SOH、SOC、構成品質、残存有効寿命、電力状態、安全状態などを含む。いくつかの態様では、音響信号を使用してバッテリを調べることから導出された音響データは、バッテリの特性の上記の決定に使用されてもよい。
【0024】
本開示において、音響信号(acoustic signal)とは、以下の例示的な態様で具体的に説明される、超音波信号などの音信号(sound signal)を指す。同様に、音響信号の波の伝播または波形は、音の伝播を指す。ある態様では、弾性波伝播理論を参照してさらに説明されるように、音響信号の波伝播は弾性波を指し得る。したがって、「音響」(acoustic)、「音」(sound)、「超音波」(ultrasonic)、「弾性」(elastic)などの用語は、例えば、試験中の電気化学システムまたはバッテリを介して伝播する波の文脈で、本開示で交換可能に使用され得る。
【0025】
さらに、いくつかの態様では、バッテリの電圧、インピーダンス、温度、充電/放電の速度などの非音響データは、上記の特性を決定するために音響データと組み合わせることができる。さらに、例示的な態様は、音響信号(およびオプションとして、非音響データ)から構築された削減された音響データセットに関する。削減された音響データセットは、例えばバッテリの各SOCでの音響データセットを示す1つ以上のデータポイントの削減されたセットを含む。削減された音響データセットは、タイム・オブ・フライト(TOF)シフト、総振幅、周波数成分、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、応答信号の減衰率、または時間ドメイン他のデータポイント、例えば、正振幅下の領域、負の振幅の下の領域等、のうち1つ以上を含む。削減された音響データセットは、音響波形の全てから得られた生の音響データと比較して、含まれるデータポイントが非常に少ない数であるため、開示された技術の効率が向上する。
【0026】
上記のバッテリ特性を決定することに加えて、態様は弾性波伝搬理論の応用に基づく、体積弾性率、密度等のバッテリの物理的特性(アノード、カソード、セパレータ、電解質等のバッテリ部品)を決定することにも関する。上記の分析は、異なる充電状態でデータポイントを取得するために、バッテリに充電/放電サイクルを行うことによって実行されてもよい。以下で詳しく説明する機械学習モデルにより、バッテリの特性および/または物理的特性は、バッテリの使用中(例えば、充電/放電サイクル中のさまざまな充電状態)または分離/静的状態(すなわち、使用中以外)で予測できる。様々なバッテリは、これらの技術を使用して、例えば、構成品質、欠陥状態、劣化状態などに基づいて分類できる。開示された技術を使用したSOC、SOHモニタリング及び分類を超えた他のアプリケーションも本開示の範囲内である。
【0027】
開示された技術は、バッテリ(またはその一部)を通る超音波伝搬、及び、バッテリの機械的電気化学的特性の変化の関係(物理学については、以下で詳述する)に基づいている(「バッテリ」(battery)及び「セル」(cell)への言及は、本明細書で説明する例示的態様の範囲への変更を意図することなく、本開示において交換可能に使用できることに留意されたい)。逆に、機械的電気化学的特性の変動は、超音波信号の測定された伝播時間、散逸、振幅、減衰、周波数成分などの音響データの変動につながる。
【0028】
例示的な態様において、バッテリの電気化学的機械的関係は、超音波信号(例えば、高周波)を使用して研究される。適切な周波数で超音波信号を送信し、送信された信号に対する応答を検知するために、任意の適切なデバイスを使用できるが、例示的な態様で使用される得る例示的に言及されるデバイスは少数である。超音波信号を送受信するためのトランスデューサは、低コストで小型のオプションを提供する。なぜならトランスデューサの能動素子の厚さは、生成された超音波信号の波長に反比例するからである。微小電気機械システム(Microelectromechanical systems(MEMS))圧電トランスデューサは、バッテリ(またはその一部)を介して超音波信号を送信し、および/またはその応答信号を受信するように構成できるトランスデューサの例の1つである。他の例では、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(capacitive micromachined ultrasonic transducers(CMUTs)、巨視的圧電トランスデューサなど、他のタイプのトランスデューサも使用できる 。他の例では、加速度センサ、光学/レーザベースのセンサ、歪ベースのセンサなども、応答信号の受信に使用できる。
【0029】
一例では、バッテリの特性(例えば、SOC及びSOH)の変化は、バッテリを通る超音波の最初の到達時間またはタイム・オブ・フライト(TOF)などの音響データの変動の関数として表され得る。説明すると、弾性波伝播理論によると、物質を通る音響信号または音波の伝播速度は、材料の体積弾性率、せん断弾性率、密度などの物理的特性に依存する。バッテリの複数の層または成分材料内の電気化学的変化は、例えばバッテリが充電/放電サイクルを経るにつれて、物理的特性の変化をもたらす。このような変化は、バッテリが充電/放電サイクルを経ることにより起こり、サイクル内でもまた起こることがある。バッテリの経年変化や外部の変化に応じて、バッテリの材料に他の変化が生じる場合がある。例えば、劣化(例えば、高温への暴露による)または製造プロセスと内部成分の違いもまた、バッテリの全体的な物理的特性の変化をもたらし得る。従って、物理的特性の変化は、バッテリの劣化や外部条件の変化に応じて、複数の充電/放電サイクルにわたって発生する場合がある。従って、物理的特性の変化は、送信および/または反射超音波信号のシフトという形で、バッテリを介して送信される音響信号に関する音響データの変化をもたらす。
【0030】
上記の機械学習アルゴリズムについてさらに詳しく説明する。削減された音響データセットは、バッテリの特性を効率的かつ低コストで予測するための機械学習アルゴリズムのトレーニングに使用できる。削減された音響データセットは、例えば超音波信号伝搬の測定に基づいて、音響データ(より一般的には、音響応答信号)から導出されてもよい。このような測定には、タイム・オブ・フライト、振幅、波形形状の変化、波形特性と基準波形の比較、周波数成分の分析、分散、減衰などが含まれる。上記の削減された音響データセットを音響データから抽出することに加えて、バッテリセル内の個々の層またはコンポーネント(アノード、カソード、集電体、セパレータ、電解質など)の物理的特性(音速、密度、弾性率、体積弾性率、せん断弾性率、多孔性、厚さなど)も音響データから推定できる。前述のように、これらの物理的特性は、弾性波伝搬理論に基づくモデルを使用して推定できる。
【0031】
音響データのライブラリ/データベース、または場合によってはライブラリ/データベースの削減された音響データセットは、2つ以上のバッテリ(例:同様のセル)に対して生成される。例示的な技法に従って、削減された音響データセットが抽出される前に、音響データが最初にフィルタリングまたはウィンドウ化され得る。削減された音響データセットは、機械学習アルゴリズムに入力される。機械学習アルゴリズムの出力は、異なるバッテリ間のバッテリ性能とサイクル履歴のばらつきにもかかわらず、異なるバッテリ間のSOC、SOH、バッテリ寿命、バッテリ損傷、安全性リスクなどの特性予測に使用できる。
【0032】
図2を参照すると、バッテリ202などの電気化学システムの分析のための例示的なシステム200が示されている。バッテリ202は、一般にエネルギー貯蔵装置(例えば、リチウムイオンセル)であり得るが、これに限定されない。本明細書に開示された態様の解明のために特定の例において特定のタイプのバッテリセルが参照されてもよい。
【0033】
センサ216は、バッテリ202に結合されて、バッテリ202に関連する非音響データを検出することができる。そのような非音響特性データには、バッテリ202の温度、外部温度または環境温度などが含まれる。バッテリ管理システム208は、バッテリ202を動作させる(例えば充電/放電する)ための制御部を表し、バッテリ202の端子を介してバッテリ202に接続することができる。同様に、バッテリ管理システム208は、バッテリ202に印加される電圧など、バッテリ202に関連する他の非音響データを検出するためにも使用され得る。
【0034】
一対のトランスデューサ204、206は、バッテリ202の表面上の2つの位置(例えば、反対側)に接触しているように示されている。トランスデューサ204、206は、別個のホルダまたは統合されたトランデューサシステムなどの任意の結合機構を介してバッテリ202に固定されてもよい。この例ではトランスデューサを示して説明しているが、上述のように、トランスデューサ204、206の一方または両方が、音響信号を送信および/または受信するための様々な他のデバイスによって置き換えられることは理解され得る。
【0035】
音響信号発生器および検知機構(それらの別個のブロックまたは組み合わされたブロックのいずれか)は、トランスデューサ204、206に結合された超音波パルサー受信機210として代表的に示されている。超音波パルサー受信機210の制御に基づいて、トランスデューサ204、206の1つは、超音波信号を送信するように構成されてもよいし、トランスデューサ204、206の1つまたは両方は、送信、反射、または屈折した超音波信号から生成された応答を受信するように構成されていてもよい。
図2における1つの態様を例示するために、トランスデューサ204は、送信機(T)として示されており、トランスデューサ206は、受信機(R)として示されている。バッテリ管理システム208は、超音波パルサー受信機210に制御信号を供給して、上記のように超音波信号の生成/検知を実行させることができる。
【0036】
図2では、コンピュータ224も上記のブロックとともに示されている。例示的な態様を説明するために、コンピュータ224の別個のブロックが示されているが、コンピュータ224の異なるブロックの機能は、ハードウェア要素とソフトウェア要素の任意の適切な組み合わせで実装できることは理解され得る。一例では、超音波パルサー受信機210によって測定された音響信号の波形は、上述の音響データを形成する。音響データは、センサ216、バッテリ管理システム208からの非音響データとともにコンピュータ224に送信される。ブロック212では、オプションの調整ステップを実行することができ、ここで、音響データをウィンドウ化、リサンプリング、フィルタリングなどして、調整済みデータセットを生成することができる。条件付けられたデータセットはブロック214に送られ、そこで削減された音響データセットが生成される(あるいは、ブロック212が存在しない場合、削減された音響データセットは音響データから生成されてもよい)。ブロック214は、削減された音響データセットの生成において、様々な信号分析技術、特徴抽出、および特徴選択を実施することができ、その例示的なプロセスは、例えば、
図4A-Bを参照して以下のセクションで詳細に説明される。次いで、ブロック214からの削減された音響データセットは、センサ216(例えば、セル温度、環境温度)、バッテリ管理システム208(例えば、充電/放電レート、電圧、セルインピーダンス)などからの非音響データと組み合わされ、ブロック218に供給される。ブロック218は、ブロック220とともに示される双方向通信を有しており、それは、既知のシステム動作条件およびパラメータ、例えば、他のバッテリからの削減された音響データセット、非音響データなどのライブラリ/データベースを含んでいる。ブロック220のデータベース/ライブラリは、以下でさらに説明される機械学習、相関、および物理モデルで構築されてもよい。ブロック214から受信した音響データセットと、センサ216およびバッテリ管理システム208からの非音響データは、ブロック220からのライブラリ/データベースと比較または相関される。これにより、バッテリ202の特性、例えばSOC、SOH、セルの安全マージン、残存寿命、材料特性、製造品質などの予測222が生成される。また、予測222はいくつかの態様において、バッテリ202の動作を最適化するための情報を提供するためにバッテリ管理システム208にフィードバックされてもよい。
【0037】
図2のシステムにおける弾性波伝搬理論の応用について説明する。一例では、トランスデューサ204は、超音波または音響信号の送信機(パルサーとも呼ばれる)であり、例えばバッテリ202を介して超音波周波数で信号を送信するように構成される。送信信号の形状は、一例では包絡正弦波圧縮パルスであり得るが、矩形波などの他の形状において、任意の他のタイプの正弦波なども使用され得る。送信された信号に対する応答は、トランスデューサ206によって受信され得る。送信された信号は、数十ミクロンの厚さを有するいくつかの薄い材料層(すなわち、アノード、カソード、セパレータ、集電体等)を含み得るバッテリ202を通って伝播する。アノード、カソード、セパレータなどのバッテリ202の特定の層は、一般に多孔質材料であり、よく構成されたバッテリでは、細孔は電解質(通常、ただしこれに限定されないが、液体または流体の電解質)で満たされている。各層における、例えば、圧縮波の形状の送信された音響信号の伝播速度は、波が通過する層の材料特性に依存する。等方性弾性材料の場合、送信信号の速度は、
図1Aの式1に示されているとおりである。ここで、KとGはそれぞれ材料の体積弾性率とせん断弾性率であり、pは材料密度である。層間の界面では、送信された信号の波の一部が反射され、一部が送信される。透過と反射は、界面を形成する2つの材料/層の音響インピーダンス間の不整合の程度に依存する。音響インピーダンスは、密度や伝播速度などの材料の物理的特性にも依存する。ある角度で界面にぶつかる波は、モード変換され、部分的にせん断波として伝播する。例えば、トランスデューサ204が圧縮波トランスデューサである場合、応答信号は、一対の整列したトランスデューサ(代表的にはトランスデューサ206)で測定することができる。整列したトランスデューサは、圧縮波から(および関連する場合においては、せん断波からも)の寄与を測定することができる。
【0038】
リチウムイオンバッテリなどの微細な層状構造を通る波の挙動は、非微細な層状構造を通る波の挙動とは異なることが知られている。層の厚さlよりはるかに大きい波長λ(すなわちλ>>l)の波にとって、純然たる厚さを通る場合の伝播速度は、波の伝播速度とは大きく異なる場合がある。当該波の伝播速度においては、波が平均波速度で層の単純集合を伝播することが想定されている。波速度において20%以上のオーダーの違いは珍しくなく、これはバッカス平均化とされる。そのような効果により、例えば、層の単純な集合に基づく予想到達時間と比較して、トランスデューサ204から、微細な層状構造を含むバッテリ202を介して送信される第1波が、トランスデューサ206へ到達する到達時間が遅れることがある。本開示の態様では、異なる層構成に基づく波の到達時間での上記の違いは、絶対波到達時間(例えば、TOF)ではなく、波伝播時間の変化(例えば、タイム・オブ・フライト(TOF)シフト)に焦点を当てれば、無視または見落してもよい。TOFシフトは、削減された音響データの例を示しており、波形全体の波の伝播時間を代表しつつ、それよりもはるかに単純である。TOFシフトは、バッテリ202の異なる電気化学状態、例えば充電状態について決定され、削減された音響データセットとして収集/保存され得る。全ての音響データセットの作成と利用における最初の到達時間ではなく、削減された音響データセットの使用は、バッカス平均化効果による変動を無視または見落とし得るという利点もある。一態様では、バッカス平均化により、音響信号の重心周波数の相対的変化(絶対重心周波数値ではなく)など、他の音響特性の相対的変化は、上記で説明したTOFシフトに加えて、またはその代わりに、削減された音響データセットを形成するためにも使用できる。
【0039】
さらに、バッテリ202の物理的特性は、削減された音響データセットの生成にも使用され得る。例えば、バッテリ202の正極および負極活物質、バインダおよび導電性添加剤などの機械的特性について既知または所定の値を使用し、バッテリの物理的特性の一連の値、例えば、バッテリ202の複合電極の体積弾性率やせん断弾性率など、は、バッテリ管理システム208によって供給される充電の状態を変えることで測定できる。バッテリ管理システム208は、前述のようにコンピュータ224から受信した予測222に基づいて、バッテリ202を充電/放電サイクルにおくように構成することができる。いくつかの例示的な態様では、例えば、一連の体積弾性率およびせん断弾性率を含むこれらの物理的特性は、TOFシフトなどの削減された音響データセットの決定に使用され得る。
【0040】
より詳細には、弾性率とポアソン比から、材料の体積弾性率とせん断弾性率を、それぞれ
図1B-Cの式2と3に従って推定できる。ここで、前述のように、KとGはそれぞれ体積弾性率、せん断弾性率、νはポアソン比である。例示的な態様では、バッテリ202の材料は、等方性、または実質的に等方性であるランダムに配向された多結晶の集合体であると仮定する。バッテリ202の正極および負極は、典型的には、活物質、バインダ、および電解質で満たされた導電性添加剤の多孔質複合体である。これに基づいて、(地球物理学または材料科学コミュニティからの)複合材料の効果的なメディアモデルを使用して、効果的な電極剛性を推定することができる。例として、Hashin-Shtrikmanの物性における境界は、複合材料においてVoigtおよびReussの境界よりも厳しい。以下に説明するように、Hashin-Shtrikman境界は、構成材料の球とシェルの集合体で構成される複合体を表す。
【0041】
図1D-Gの式4-7は、構成成分の特性に基づいて、複合電極の体積弾性率およびせん断弾性率の最大および最小境界について示すものである。理論計算のためにそれぞれの弾性率(モジュラス)の単一の値を推定するために、体積弾性率およびせん断弾性率の最大および最小HS境界の平均は、1つのプロセス例で計算される。研究中のバッテリ202の各SOC状態で、体積弾性率およびせん断弾性率を含む物理的特性が各複合電極または層について計算される。構成材料の特性が変わると、体積弾性率およびせん断弾性率はSOCによって変わる。次に、式1を使用して、各SOCの一次波速度を決定する。波の伝播時間の変化、またはTOFシフトは、SOCと相関する。
【0042】
図1H-Jの式8-10は、上記の式4-7で参照されている関数ラムダ、ガンマ、ゼータである。式8および9において、項K(r)およびG(r)は、電極を通る構成材料の空間的に変化する弾性率を表す。変数zは、それぞれの方程式によって生成される。式6-7の場合、この変数はゼータの関数でもある。式8および9の期待値の計算は、体積分率加重平均である。
【0043】
物理的には、体積弾性率およびせん断弾性率の最大および最小分析値は、バッテリ202の複合材料の球またはシェルび構成材料に依存する可能性がある。しかしこれらの最大および最小分析値は、ここでの説明と密接な関係はない。
【0044】
ここで
図3A-Bを参照して、上記の概念の応用例を示す。特に、
図3-ABは、タイム・オブ・フライト(TOF)の決定手法300を示している。ここで応答信号302(例えば、所望/既知のSOCで、バッテリ202を介してトランスデューサ204によって送信される、超音波信号に応答して、トランスデューサ206で受信される)が、すべての時間シフトτについて基準信号306と相関して、相関波形308が生成される。
図3Aには、様々な波形302、306、308の振幅のプロットがTOFの関数として示されている。最良の相関点で(すなわち、τにおいては、相関信号308の振幅が最大である場合)、TOFシフト304が計算される。次に、TOFシフト304は、バッテリ202の対応するSOCに相関する。
【0045】
図3Bは、時間の関数としてのTOFのヒートマップを示す。
図3Bは、バッテリ管理システム208によって制御された充電サイクルの間における、バッテリ202を介して送信される超音波信号の進化を示している。線312および316は、
図3Aのそれぞれの基準および相関波形302および308が取られる時点を表している。ヒートマップ中、参照符号322で識別されるプロットは正の振幅を表し、参照符号324で識別されるプロットは負の振幅を表す。
【0046】
試験中のバッテリ202の充電サイクル中の波形のシフトを決定するために、相互相関手法が使用され得る。そこでは、波形データは最初に補間され(たとえば、3次スプラインフィット)、離散化されたデータをアップスケールし、より正確なTOF決定を可能にする。基準信号306は、後続の波形の相互相関およびTOFシフトの決定のためのゼロ点基準として選択されてもよい。あるいは、充電サイクル中の任意のポイントは、上記のシフトが相対的であるため、基準信号306が取得されるSOCとして選択されてもよい。
【0047】
そのため、上記のヒートマップ生成の各スナップショットは、選択された基準信号306に対して時間的にシフトすることができる。そして、すべてのTOFシフト304について曲線の積の面積が計算される。
図1Kの式11は、所望のTOFシフト304の相互相関計算式を示している。最大相関点、つまり積分が最大になるτが決定される。この最大相関点により、正確な測定を行うことができ、そこでは前述のようにTOFシフト304を計算する。サインコンベンションのために、正のTOFシフトは、電流波形302が基準信号306より長いTOFを有していることを示している。また負のTOFシフトは、電流波形302が基準信号306よりも短いTOFを有していることを示している。
図3Aは、相互相関手法をグラフで示している。相関は測定の完全なセットを使用して実行できるが、データセットのサブセットを使用して上記のTOFシフトを取得することができる。
【0048】
いくつかの態様では、上述のTOFシフト測定に加えて、またはその代わりに、応答信号302の総信号振幅を測定することができる。総信号振幅は、
図1Lの式12に表されるように、全波形にわたって、各時間インスタンスでの信号振幅の絶対値を積分することにより決定され得る。ここで、Aは波形の全振幅、f(t)は波形、ti-tfは波形測定ウィンドウである。
【0049】
したがって、音響データ、より具体的には、削減された音響データセットに基づいて、バッテリ202の特性が予測されてもよい。そのような特性には、バッテリのSOC、SOH、電力の状態、安全性の状態、構造の品質などのうちの1つ以上を含む。上記の総信号振幅またはTOFシフトに加えて、またはそれに代えて、削減された音響データセットには、最初のブレーク時間(すなわち、入力信号からの応答が受信トランスデューサ206に最初に到着する時間);重心周波数(つまり、応答信号の平均強度加重周波数);時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅;周波数領域のメインピークの半値全幅;周波数分布の標準偏差、歪度、または尖度;時間ドメインでの応答信号の減衰率;または、正の振幅下の領域、負の振幅下の領域など、時間ドメインの他のメトリック、のうち1つ以上が含まれる場合がある。削減された音響データセットは、バッテリの電圧、温度(例えば周囲温度とセル温度(表面および内部))、内部抵抗、バッテリを通過した総容量、バッテリの厚さなどの非音響データと組み合わせて使用でき、以下でさらに説明するように、機械学習技術を構築および使用する場合において使用可能である。
【0050】
機械学習手法の一例として、サポートベクトル回帰(SVR)メソッドについて述べる。本開示では、SVR方法などの機械学習技術は、入力としてトレーニングセットを利用し、そこでは、トレーニングセットは、任意選択で非音響データと併せて、音響データセットまたは例示的な態様では削減された音響データセットを含み得る。トレーニングセットには、上記で説明した弾性波伝搬理論に基づいた音響データの分析から推定される物理的特性も含まれる場合がある。場合によっては、トレーニングセットが正規化されることがある。例えば、削減された音響データセットを正規化すると、入力ベクトルが0から1の間になることを意味する場合がある。完全な波形からの音響データがトレーニングに使用される場合、トレーニングデータを正規化すると、入力ベクトルが-1から1の間になることがある。
【0051】
図4Aは、機械学習手法を使用してバッテリ402xのSOC、SOHなどの特性を予測する方法400の概略図を示す。入力データセットを生成するために、1つ以上のトレーニングバッテリ402a-nを使用してもよい。入力データセットは、トレーニングモデル404を使用してトレーニングできる。予測モデル406、およびバッテリ402xの入力データに基づいて、ブロック402でバッテリ402xの特性を予測することができる。
【0052】
さらに詳細には、バッテリ402a-nのそれぞれの入力データセットは、特性、音響データセット、削減された音響データセット、非音響データ、物理的特性、およびそれぞれのバッテリの条件(例えば、ガス発生、故障など)の任意の1つ以上を含み得る。予測されるバッテリ402xの場合、瞬時サイクリングデータ(例えば、電圧、電流など)、音響データ、削減された音響データ、非音響データ、物理特性などの入力データを取得できる。トレーニングモデル404は、機械学習技術(例えば、SVM、ランダムフォレスト、クラスタリングなど)を使用し、バッテリ402a-nからの入力データセット間の相関を決定し、次元削減アルゴリズムなどを適用することができる。予測モデル406は、上記入力データセットおよびトレーニングモデル404からの情報に基づいて所望の特性を予測し、ブロック408においてバッテリ402xの特性(例えば、SOC、SOH、安全マージン、ガス発生、製造品質など)の予測を生成し得る。
【0053】
図4Bは、方法400で使用される機械学習の例を示しており、それは450として示される。方法450では、生(raw)の音響データ452(例えば、時間ドメインの全波形)が、例えばバッテリ402a-nから収集され、関連するメタデータとともにデータベース453に格納される。TOFシフトや総信号振幅などの削減された音響データを抽出する前に、生の音響データセット452は、ブロック454において前処理されてもよい。当該前処理には、可能性のある機器ノイズを修正し、解像度を改善するために、ウィンドウ化、フィルタリング、リサンプリングなどが含まれる場合がある。音響データセット452に関しては、測定時間ウィンドウの開始および終了時の信号振幅は実質的にゼロであると認識される。これは、測定ウィンドウに出入りする波によるさまざまなメトリックの変化への寄与が無視できることを意味する。したがって、音響データセットを簡略化して、関心領域の波形の変化の測定を含む削減された音響データセットにすることで、トレーニングデータを簡略化できる。
【0054】
ブロック456において、時系列の周波数スペクトルと時間周波数スペクトログラムへの変換を実行して、ブロック458における、周波数コンテンツ、分散、TOFシフト、総信号振幅などの削減された音響データセットを形成する特徴の抽出を容易にすることができる。
【0055】
ブロック458では、TOFシフトと総信号振幅に加えて、他の多くの削減された音響データセットの特徴は、時間-、周波数-、および時間周波数ドメインから抽出可能である。これらはたとえば、統計(たとえば、平均、分散、歪度)、時間ドメイン(たとえば、最初のブレーク時間、二乗平均平方根振幅)、スペクトル(たとえば、重心周波数、スペクトル幅)、および高レベル(たとえば、エントロピー、複雑さ、ハースト指数)を含んでいる。これらの抽出された特徴は、特徴データベース459に保存される。
【0056】
削減された音響データセットの生成のための特徴抽出に続いて、選択ブロック460を使用して、ノイズの多いまたは無関係な特徴を最小化または排除することができる。このブロックでは、モデルベースの方法と次元削減アルゴリズム(たとえば、主成分分析(PCA))を使用して、さらに簡略化/凝縮されたデータセットを生成し、機械学習ステップで評価する。
【0057】
機械学習ブロック462は、
図4Aのトレーニングモデル404と予測モデル406との組み合わせた一実施を含み得る。ブロック462は、以下の例示的な機能のうちの1つ以上の機能を有する。すなわち、音響機能から容量劣化、SOC、SOH、またはバッテリの残存有効寿命などの特性を予測する。そして、音響の類似性に基づいて、構造の品質、欠陥または劣化状態、または汎用性によってバッテリを分類する。SOCを予測する第1態様は、管理された学習を使用して実行できる。SOCなどの予測に使用される回帰手法では、平均二乗誤差(Mean Squared Error(MSE))と決定係数を使用して予測精度を測定できる。
【0058】
バッテリの分類の第2態様は、管理された分類の問題と管理されないクラスタリングが含まれる。管理された分類において、容量劣化や抵抗などの電気的メトリクスは、最初にクラスA、B、Cなどの個別のラベルのセットに変換され、機械学習パイプラインに供給される。あるいは、音響特性に基づいてバッテリをグループ化またはクラスタ化し、クラスタリング結果を解釈するためのグラウンドトゥルースとして電気的メトリクスを使用することもできる。上記のすべてについて、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン(Support Vector Machine(SVM))などの機械学習手法を利用できる。
【0059】
図5A-Bを参照して、削減された音響データセットを使用することの例示的な利点を説明する。
図5Aは、充電/放電サイクル中に試験中のバッテリ(例えば、バッテリ202)にわたって測定された電流502および電圧504の値、ならびにTOF値506を含む対応する音響データセットも示す。示されるように、TOF値506には明確で反復可能な傾向があり、これは周期的に変化し、電気化学的電荷サイクリングと同期している。波形シフトは、
図5AのTOF値506に示される。これは、バッテリが充電される(すなわち、電圧502が増加する)につれて、TOF値506の波形は、より低いTOFにシフトし、TOF506aは、典型的には、低い点として示され、(TOF値は、この上から下に増加することに留意する)、これはサイクル中の最高電圧値に対応している。バッテリが放電する(すなわち、電圧502が減少する)と、TOF値506の波形は、より高いTOFにシフトし、TOF506bは、代表的には、同じサイクルの高点として示される。したがって、TOF値506を表す波は、バッテリの充電中はより低いTOF値に向かって移動し、バッテリの放電中はより高いTOF値に向かって移動するように示されている。
【0060】
図5Bは、
図5Aに示される同じ充電/放電サイクルにおける、総信号振幅値508(例えば、上記の積分技術を使用する)とTOFシフト値510(例えば、上記の相互相関技術を使用する)とを含む、削減された音響データセットを示している。しかし当該音響データセットを、TOF値506を含む音響データセットに置き換えている。総振幅値508とTOFシフト値510を含む削減された音響データセットの波形は、サイクリング中に発生するシフトをより適切に示すとともに、繰り返し可能な周期的な性質を示している。
【0061】
ここで、
図6A-Dを参照し、TOFシフトとSOCとの間の相関についてさらに詳細に述べる。
図6Aは、単一の代表的なサイクルについてのTOFシフト(y軸)とバッテリ容量(x軸)との間の関係を示している。充電の上部から進んでいくと、充電が減少するにつれて(放電602)、TOFシフトの全体的な波形が増加し、充電が再び増加する(充電604)と、TOFシフトの全体的な波形が減少することが分かる。そのため、特定の充電/放電サイクル中のTOFシフトにはヒステリシスが存在する。放電602の終わりに向かって、TOFシフトに平坦域が見られ、次いで、TOFシフトは、バッテリが放電するときに急速にスパイクする前に、
図6Aにおいて606として識別される「ダブルディップ」パターンを経る(つまり、容量はx軸で0niAhになる傾向を示す)。
【0062】
図6Bは、試験中の例示的なバッテリの複数の充電/放電サイクルにわたる、
図6AのTOFシフトの集約を示している。具体的には、放電602は、波形が各サイクル中に実質的に同じパターンまたは一般的な傾向に従うことを示している。サイクルにわたる見かけ上の変化には、異なるサイクルにわたって波形がより高いTOF値にシフトすることが含まれている。このシフトは、バッテリのSOHなどの特性と相関している可能性がある。
【0063】
図6C-Dは、同様に、単一の充電/放電サイクル(
図6C)についてのSOC(x軸)の関数としての総信号振幅608(y軸)を示し、複数のサイクルにわたって集約されている(
図6D)。
図6A-BでのTOFシフトと同様に、総信号振幅608にもサイクル内の繰り返し可能な傾向が見られる。SOCの約25%以下では、総信号振幅608の大幅な低下、次いで、参照符号610a-bで識別される、充電の底部における総信号振幅608のスパイクが観察される。
図6Aの606におけるTOFシフトの重大かつ急速な変化、および610a-bでの総信号振幅608の変化は、これらのSOC値で重大な構造変化が発生していることを示している。これらの急速な変化606、610a-bは、バッテリの過放電を示すように見える。したがって、そのような急速な変化において、TOFシフトおよび総信号振幅測定を組み合わせてモニターすることで、例えば、バッテリ管理システムにおける過放電の開始の兆候を知ることができる。さらに、
図6Dのサイクルにわたって見られる総信号振幅610は、バッテリの充電/放電サイクル数が増加するにつれて、総信号振幅610がわずかに減衰することを示している。
【0064】
TOFシフトと総信号振幅を含む削減された音響データセットの繰り返し可能な性質の上記の観察から、削減された音響データセットを使用して、バッテリのSOC、SOHなどの特性を正確に予測できることが分かる。特に、サイクル内の電気化学的変化、したがって材料の機械的特性は、バッテリの充電サイクル中に超音波波形で観察可能なシフトを引き起こす。電気化学的機械的結合から、超音波信号から導出された音響データを使用した上記の予測の基礎を得られる。さらに、材料特性がサイクリングを通じて連続的に変化することを考えると、バッテリの材料状態の明確な変化(観察するのが難しい非常に小さな変化のみしか示されない、電圧などの電気化学的測定とは対照的に)を区別する機能も有している。次のセクションでは、SOCの変化に伴うSOC予測と信号の変化のさらなる態様について説明する。
【0065】
バッテリのSOCに関するTOFシフトと総信号振幅の両方における、上記の繰り返し可能な傾向に加えて、複数のバッテリにわたって同じまたは同様の傾向が見られる。しかしながら、測定中のセルの変動性とノイズは、いくつかの変動につながり、総信号振幅とTOFシフトの入力に関してバッテリのSOCを直接推論することを複雑にする可能性がある。総信号振幅、TOFシフト、および電圧などの上記のその他の非音響データを含む、利用可能な測定データセットの集約により、例示的な態様は、上記の変動に基づく複雑さを克服しながら、バッテリのSOCの推定を行う。
【0066】
前述のように、
図4A-Bに示される方法400、450の機械学習手法は、2つ以上のバッテリ402a-nからの入力データを使用して、バッテリ402xの特性を予測することができる。方法400、450を使用するこの方法は、予測が行われているバッテリ402x自体でアルゴリズムをトレーニングする必要なく、これらの機械学習モデルの精度の独立した検証を行うことができる。バッテリ402xの特性の予測は、入力データセットがトレーニングデータを含んだ各時点で行うことができる。これも前述したように、TOFシフトと総信号振幅は、値0と1の間に収まるように正規化できる。バッテリ402a-nからのある時点のこれらの正規化された値により、その時点のバッテリ402xの瞬時SOCは、サイクリング中に前の時間インスタンスからのデータを必要とすることなく予測することができる。これらの例示的な技法は、SOCの予測を行う際に、他の前の時間インスタンスからの履歴/データにさらに大きく依存する可能性がある、クーロンカウントなどの従来の方法とは、区別される。例示的な技法が同様に履歴に依存しないことは、例示的なSOC予測における堅牢性の点で利点を有する。それはより少ない情報でより正確に予測し、バッテリの充電/放電履歴または状態に関する以前の情報に依存しないということである。さらに、SOC予測のための上記の手法は、予期されない、及びレーニングされていないサイクリング履歴や、セル損傷の可能性がある場合でも、堅牢であると見られている。
【0067】
SOCの予測に加えて、バッテリ、例えば、バッテリ402xのSOHなどの他の特性も、入力/トレーニングデータセットを使用して予測され得る。例えば、各サイクルの充電の最上部からのデータを使用してSOHを予測することができ、例えば
図6Aを参照できる(詳細は説明しないが、SOH予測は充電の他の中間状態でも行うことができる)。SOH予測の場合、方法400などの同様の方法を使用することができる。そこでは、この場合のトレーニングモデル404の入力には、単一のセル基準信号(例えば、サイクル中の充電の最上位にあるバッテリ402aの場合)に相関するTOFシフト、総信号振幅、電圧、および超音波スナップショットと呼ばれるその他の音響データが含まれる。超音波スナップショットは、スナップショットが互いに重ね合わせ、TOFシフトなしでスナップショット形状の変化をキャプチャするように削除された、TOFオフセットが含まれる。超音波スナップショットは、例えば範囲[-1,1]に正規化されている可能性がある。そして、残りのパラメータは、範囲[0,1]に正規化できる。バッテリごとに、波形の到達の絶対時間にばらつきがある場合がある。これは、バッテリの厚さのばらつき、パッケージングまたは材料の違い、バッテリへのトランスデューサの取り付けのばらつきなどに基づく場合がある。また波形の振幅は、バッテリの振幅とともに、到達時間に関して上記で論議されたようなセルの同様の特性に基づいている場合もある。したがって、音響データ(到達時間、振幅など)の直接比較は困難である。エラーを減らし、より良い波形比較を可能にするために、充電のトップでの波形を正規化して、単一の到着時間に戻せばよい(すなわち、異なるセルからの波形は、正規化されると同時に到達するように見える。換言すると、波形はすべて重ね合される)。さらに、波形の振幅は-1と1の間に収まるように正規化されているため、振幅の変動も排除される。その結果、さまざまな波形がバルク音響データ(例えば、到達時間、振幅)に関して重複して表示される。しかし、波形形状等の違いは、削減された音響データセットにより明らかになる。独立したバッテリ402xのトレーニングは、前のセクションで概説したように進めることができる。
【0068】
前述のように、超音波信号は、超音波信号が通るバッテリの構造的な違いに敏感なので、例示的な技術は、バッテリ管理、セカンドライフアプリケーション(つまり、再利用)、パックの改修、バッテリの製造または組み立てプロセスの開発とモニタリング、および不良セルの識別におけるさまざまな態様で使用できる。SOH予測はまた、単一の超音波測定のみで実行されてもよく、例えば、バッテリの充電のトップに対応する時間インスタンスで行われる。つまり、バッテリの履歴の情報は必要ない。しかしながら、SOH予測はまた、バッテリが使用されていないときにも実行されてもよく、したがって、本明細書で論じられる例示的な態様について充電レベルまたは充電条件を必要としないことは理解されるであろう。したがって、例示的な技法は、低コストで高精度の解決をもたらすものである。
【0069】
したがって、例示的な態様は、本明細書で開示されるプロセス、機能、及び/またはアルゴリズムを実行するための様々な方法を含むことが理解されるであろう。例えば、
図7は、電気化学システムの非侵襲的分析の方法700を示す。
【0070】
方法700のブロック702は、少なくとも第1のバッテリを充電/放電サイクルの少なくとも一部におくことを含み得る(例えば、バッテリ202または402aをバッテリ管理システム208を使用して充電/放電サイクルにおく)。
【0071】
ブロック704は、充電/放電サイクルの少なくとも一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、当該2つ以上の時間インスタンスは第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応し、第1のバッテリの少なくとも一部を通して音響信号を送信し、対応する応答信号を受信する(例えば、
図3A-Bに示されるように、トランスデューサ204、206を使用して、音響信号を送信、受信し、音響データセットを作成する)。
【0072】
ブロック706は、少なくとも削減された音響データセットを決定することを含んでおり、当該削減された音響データセットは、1つ以上のデータポイントを含んでおり、当該データポイントは、2つ以上の充電状態における、1つ以上の送信された音響信号または応答信号を表している(例えば、
図5Bに示される、TOFシフト510、総信号振幅508)。
【0073】
また、当業者が理解するように、本明細書に開示される態様に関連して説明された様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両者の組み合わせとして実装され得る。このハードウェアとソフトウェアとの相互置換性を明確に説明するために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップは、それらの機能に関して一般的に上述されている。そのような機能がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途およびシステム全体に課された設計制約に依存する。当業者は、各特定の用途のために様々な方法で説明された機能を実装し得るが、そのような実装の決定は、本発明の範囲から逸脱させるものとして解釈されてはならない。
【0074】
本明細書に開示される態様に関連して説明された方法、シーケンス、および/またはアルゴリズムは、ハードウェアにおいて直接的に、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールにおいて、またはそれら2つの組み合わせにおいて具体化され得る。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または当該技術において知られている他の任意の形式の記憶媒体に常駐し得る。典型的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体へ情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合される。
【0075】
したがって、本発明の態様は、音響信号を用いて電気化学的システムを分析するための方法を具体化するコンピュータ可読媒体を含んでよい。したがって、本発明は、説明された例に限定されるものではなく、本明細書で説明される機能を実行するための任意の手段が本発明の態様に含まれる。
【0076】
上記開示は、本発明の例示的な態様を示すが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更および修正がなされ得ることに留意すべきである。本明細書で説明された本発明の態様に係る方法クレームにおける機能、ステップ、および/または動作は、任意の特定の順序で実行される必要はない。また、本発明の要素は単数形で説明され特許請求の範囲に記載されるが、単数形が明示される限定がない限り、複数形が考慮される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
電気化学システムの非侵襲的分析の方法であって、前記方法は、
少なくとも第1のバッテリを、充電/放電サイクルの少なくとも一部におき、
前記充電/放電サイクルの少なくとも前記一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、前記2つ以上の時間インスタンスは、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応しており、前記第1のバッテリの少なくとも一部を介して音響信号を送信し、対応する応答信号を受信し、
少なくとも削減された音響データセットを決定し、前記削減された音響データセットは1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、前記2つ以上の充電状態における1つ以上の前記送信された音響信号または応答信号を含む、方法。
[2]
前記削減された音響データセットは、前記音響信号に関連する1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、タイム・オブ・フライトのシフト、総信号振幅、周波数コンテンツ、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、時間ドメインでの応答信号の減衰率、音響信号の正の振幅下の領域、負の振幅下の領域、を含む、[1]に記載の方法。
[3]
さらに、前記削減された音響のデータセットから、前記2つ以上の充電状態で、前記第1のバッテリの1つ以上の物理的特性を決定し、前記1つ以上の物理的特性は、前記第1のバッテリの密度、弾性率、体積弾性率、せん断弾性率、多孔性、または厚みの1つ以上を含む、[1]に記載の方法。
[4]
さらに、前記第1のバッテリにおいて、少なくとも前記削減された音響のデータセットで、第1のデータベースを構築する、[1]に記載の方法。
[5]
さらに、前記第1のデータベースへの前記第1のバッテリに関連した非音響のデータの入力を含み、前記非音響のデータは、前記2つ以上の充電状態における、前記第1のバッテリの電圧、電流または温度のうち1つ以上を含む、[4]に記載の方法。
[6]
さらに、前記第1のデータベースには、前記2つ以上の充電状態において前記送信された音響信号または前記応答信号の1つ以上の波形を含む音響データセットが含まれる、[5]に記載の方法。
[7]
少なくとも、前記第1のデータベース、及び第2バッテリの音響のデータ、削減された音響のデータまたは非音響のデータのうち1つ以上を用いて、前記第2のバッテリの特性を予測する、[6]に記載の方法。
[8]
前記予測された第2のバッテリの特性は、充電状態(SOC)、健康状態(SOH)、構成品質、残存寿命、電力状態、安全状態のうち1つ以上を含む、[7]に記載の方法。
[9]
少なくとも前記第1のデータベースをトレーニングデータセットとして使用して、機械学習モデルで実行する、[7]に記載の方法。
[10]
前記音響信号は超音波信号または弾性波を含み、前記音響信号は1つ以上のトランスデューサによって送信され、前記応答信号は1つ以上のトランスデューサによって受信される、[1]に記載の方法。
[11]
電気化学システムの非侵襲的分析の方法であって、前記方法は、
少なくとも第1のデータベース、および第2のバッテリの音響データまたは非音響データのうち1つ以上を用いて、前記第2のバッテリの特性を予測し、
前記第1のデータベースは、少なくとも削減された音響データセットを含み、前記削減された音響データセットは1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、前記第1のバッテリの少なくとも一部を介して送信される音響信号、前記送信された信号に対する応答信号に代表され、前記送信された信号及び前記応答信号は、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態における信号である、方法。
[12]
前記削減された音響データセットは、前記音響信号のタイム・オブ・フライトのシフトまたは応答音響信号の総信号振幅の1つ以上を含む、[11]に記載の方法。
[13]
装置であって、前記装置は、
少なくとも第1のバッテリと、
前記第1のバッテリを充電/放電サイクルの少なくとも一部におくように構成されたバッテリ管理システムと、
1つ以上のトランスデューサであって、前記トランスデューサは、前記充電/放電サイクルの少なくとも一部の間の2つ以上の時間インスタンスにおいて、第1バッテリの少なくとも一部を介して音響信号を送信し、応答信号を受信し、前記2つ以上の時間インスタンスは、前記第1のバッテリの2つ以上の充電状態に対応している、前記1つ以上のトランスデューサと、
コンピュータであって、前記コンピュータは、削減された音響データセットを決定し、前記削減された音響データセットは、1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、2つ以上の充電状態における1つ以上の送信された音響信号または応答信号を代表する、前記コンピュータと、
を備える、装置。
[14]
前記削減された音響データセットは、音響信号に関連する1つ以上のデータポイントを含み、前記データポイントは、タイム・オブ・フライトのシフト、総信号振幅、周波数コンテンツ、最初のブレーク時間、重心周波数、時間ドメインのメイン応答ピークの半値全幅、周波数ドメインのメインピークの半値全幅、周波数分布の標準偏差、歪度、尖度、時間ドメインでの応答信号の減衰率、音響信号の正の振幅下の領域、負の振幅下の領域、を含む、[13]に記載の装置。
[15]
前記コンピュータはさらに、少なくとも前記第1のバッテリについての前記削減された音響データセットを有する第1のデータベースを含む、[13]に記載の装置。
[16]
前記第1のバッテリの温度を決定する、1つ以上のセンサをさらに有し、前記バッテリ管理システムは、さらに前記第1のバッテリの電圧を決定し、前記第1のデータベースは、前記第1のバッテリに関連する非音響データをさらに含み、前記非音響データは、前記2つ以上の充電状態における前記第1のバッテリの前記電圧または温度のうちの1つ以上を含む、[15]に記載の装置。
[17]
前記第1のデータベースはさらに、音響データセットを含み、前記音響データセットは、前記2つ以上の充電状態における前記送信された音響信号または前記応答信号の1つ以上の波形を含む、[16]に記載の装置。
[18]
前記コンピュータは、少なくとも前記第1のデータベース、及び第2のバッテリの音響データ、削減された音響データ、または非音響データのうちの1つ以上に基づいて、前記第2のバッテリの特性を予測する、[17]に記載の装置。
[19]
前記予測された前記第2のバッテリの特性は、充電状態(SOC)、健康状態(SOH)、構成品質、残存寿命、電力状態、安全状態のうち1つ以上を含む、[18]に記載の装置。
[20]
前記音響信号は、超音波信号または弾性波を含む、[12]に記載の装置。