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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ヘッドアップ表示装置及びその表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230612BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230612BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/00 Z
B60K35/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020528017
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2019073436
(87)【国際公開番号】W WO2020001021
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】201810696269.6
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 彦均
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0035103(US,A1)
【文献】国際公開第2015/190157(WO,A1)
【文献】特開2017-056844(JP,A)
【文献】特開平08-197981(JP,A)
【文献】特開2010-256867(JP,A)
【文献】特開2005-129983(JP,A)
【文献】特開平09-043401(JP,A)
【文献】特開2010-156841(JP,A)
【文献】米国特許第05090824(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 3/00-3/14
G02B 5/00-5/136
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップ表示装置であって、
画像情報を有する光を発生して射出するための画像源と、
前記光を受光し、前記光を第1の偏光、又は前記第1の偏光と異なる偏光方向を有する第2の偏光に変換する第1の偏光制御装置と、
前記第1の偏光及び前記第2の偏光を透過させるとともに、前記第1の偏光と前記第2の偏光とに対して異なる偏向作用を有する焦点距離切替装置であって、この焦点距離切替装置を通した前記第1の偏光と前記第2の偏光を投影スクリーンに投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させる焦点距離切替装置と、
前記ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出して速度情報を送信する速度モニタ装置と、
所望の画像情報を発生させるように前記画像源を制御するとともに、前記速度情報を受信し、前記光を前記第1の偏光又は前記第2の偏光に変換するように前記速度情報に基づいて前記第1の偏光制御装置を制御するシステム制御装置と、
を含む、ヘッドアップ表示装置。
【請求項2】
前記焦点距離切替装置は複屈折率焦点距離切替素子を含み、
前記複屈折率焦点距離切替素子は第1の層と第2の層とを含み、
前記第1の層は前記第1の偏光制御装置に向かって設けられるとともに、複屈折率材料を含み、
前記複屈折率材料は前記第1の偏光に対して第1の屈折率を有し、前記第2の偏光に対して前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有し、前記第2の層は前記第1の層の前記第1の偏光制御装置に遠い側に設けられ、前記第2の層は前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対して第3の屈折率を有し、前記第3の屈折率は前記第1の屈折率及び前記第2の屈折率のうちの1つと同じである、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項3】
前記複屈折率材料は、長軸が所定方向に沿って配列される液晶を含む、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項4】
前記第1の層は有限焦点距離を有するレンズに等価し、前記有限焦点距離を有するレンズは凸レンズ、バイナリ光学素子、スーパーレンズ及び二次位相板のうちの1種を含む、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項5】
前記複屈折率焦点距離切替素子は平板状を呈する、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項6】
前記第1の屈折率がn1であり、前記第2の屈折率がn2であり、前記第3の屈折率がn1であり、n2<n1の関係を満たす、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項7】
前記システム制御装置は、
走行速度が閾値よりも大きいときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第1の偏光に変換し、前記第1の偏光が前記複屈折率焦点距離切替素子を経過して前記投影スクリーン上に投影して第1の虚像を呈し、前記第1の虚像と前記投影スクリーンとの間には第1の距離を有し、
走行速度が閾値以下であるときに応じて、第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第2の偏光に変換し、前記第2の偏光が前記複屈折率焦点距離切替素子を経過して前記投影スクリーン上に投影して第2の虚像を呈し、前記第2の虚像と前記投影スクリーンとの間には第2の距離を有し、
前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さいように配置される、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項8】
前記第1の虚像を呈するときの画像源発光領域の寸法は下記式:
【数1】
Oは前記第2の虚像を呈するときの画像源発光領域寸法であり、iは第2の距離であり、iは第1の距離であり、SE’は第1の虚像の寸法であり、Sは第2の虚像の寸法である、
により導出される、請求項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項9】
第1の偏光はS光であり、第2の偏光はP光である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項10】
前記焦点距離切替装置の出光側に設けられる第2の偏光制御装置をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項11】
前記焦点距離切替装置と前記投影スクリーンとの間に設けられる反射鏡群をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項12】
前記反射鏡群は、自由曲面設計を用いる2つの反射鏡を含む、請求項11に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項13】
前記焦点距離切替装置と前記投影スクリーンとの間に設けられる透明カバーをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項14】
前記焦点距離切替装置は、前記第1の偏光と前記第2の偏光を異なる光路に従って進行させる複屈折プリズムを含み、
前記焦点距離切替装置は、第1のパワーを有する第1の反射部分と第2のパワーを有する第2の反射部分とを有する反射鏡をさらに含み、
前記第1の偏光は前記第1の反射部分に反射されて投影スクリーン上に第1の虚像を呈し、第1の虚像と投影スクリーンとの間に第1の距離を有し、
前記第2の偏光は前記第2の反射部分に反射されて投影スクリーン上に第2の虚像を呈し、第2の虚像と投影スクリーンとの間に第2の距離を有し、
前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さい、請求項1に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項15】
前記ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出して速度情報を送信する速度モニタ装置と、
所望の画像情報を発生させるように前記画像源を制御するとともに、前記速度情報を受信し、前記光を前記第1の偏光又は前記第2の偏光に変換するように前記速度情報に基づいて前記第1の偏光制御装置を制御するシステム制御装置と、
をさらに含む、請求項14に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項16】
前記複屈折プリズムは、ニコルプリズム又はウォラストンプリズムを含む、請求項14に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項17】
前記画像情報は、第1の画像情報と第2の画像情報とを含み、
前記ヘッドアップ表示装置は、前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを交互に発生させるように画像源を制御するシステム制御装置をさらに含み、
画像源が前記第1の画像情報を発生させることに応じて、前記システム制御装置は、前記光を前記第1の偏光に変換するように前記第1の偏光制御装置を制御し、
画像源が前記第2の画像情報を発生させることに応じて、前記システム制御装置は、前記光を前記第2の偏光に変換するように前記第1の偏光制御装置を制御する、請求項14に記載のヘッドアップ表示装置。
【請求項18】
ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出するステップと、
走行速度が入る速度ゾーンに応じて、第1の偏光制御装置を制御して偏光モードを切り替え、画像源による画像情報を有する光を第1の偏光又は前記第1の偏光と異なる偏光方向を有する第2の偏光に変換するステップと、
焦点距離切替装置による前記第1の偏光と前記第2の偏光とに対する異なる偏向作用により、前記焦点距離切替装置を経過した前記第1の偏光と前記第2の偏光を投影スクリーン上に投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させるステップと、を含む、ヘッドアップ表示装置の表示方法。
【請求項19】
走行速度が閾値よりも大きいときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第1の偏光に変換し、前記第1の偏光が前記焦点距離切替装置を経過して前記投影スクリーン上に投影して第1の虚像を呈し、前記第1の虚像と前記投影スクリーンとの間には第1の距離を有するステップと、
走行速度が閾値以下であるときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第2の偏光に変換し、前記第2の偏光が前記焦点距離切替装置を経過して前記投影スクリーン上に投影して第2の虚像を呈し、前記第2の虚像と前記投影スクリーンとの間には第2の距離を有するステップと、
をさらに含み、
前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さい、請求項18に記載のヘッドアップ表示装置の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップ表示の技術分野に関し、具体的には、ヘッドアップ表示装置及びその表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車速が増加し続けるにつれて、運転者の視点焦点距離も相応的に増加するので、運転者の視野が狭くなる。低速走行時においてヘッドアップ表示される虚像の寸法及び距離が適宜であれば、車速が増加するにつれて、運転者の視点焦点距離が増加し、相応的には、虚像表示画面に対する視距離調節が行われないと運転者の目が疲れやすく、そして、運転者の視野が狭くなるので、視野における虚像表示画面の割合が大きくなり、視認に不快感を与える。
【発明の概要】
【0003】
本開示の1実施例は、画像情報を有する光を発生して射出するための画像源と、前記光を受光し、前記光を第1の偏光、又は前記第1の偏光と異なる偏光方向を有する第2の偏光に変換する第1の偏光制御装置と、前記第1の偏光及び前記第2の偏光を透過させるとともに、前記第1の偏光と前記第2の偏光とに対して異なる偏向作用を有する焦点距離切替装置であって、この焦点距離切替装置を通した前記第1の偏光と前記第2の偏光を投影スクリーンに投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させる焦点距離切替装置とを含む、ヘッドアップ表示装置を提供する。
いくつかの実施例において、前記ヘッドアップ表示装置は、前記ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出して速度情報を送信する速度モニタ装置と、所望の画像情報を発生させるように前記画像源を制御するとともに、前記速度情報を受信し、前記光を前記第1の偏光又は前記第2の偏光に変換するように前記速度情報に基づいて前記第1の偏光制御装置を制御するシステム制御装置とをさらに含む。
【0004】
いくつかの実施例において、前記焦点距離切替装置は複屈折率焦点距離切替素子を含み、前記複屈折率焦点距離切替素子は第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層は前記第1の偏光制御装置に向かって設けられるとともに、複屈折率材料を含み、前記複屈折率材料は前記第1の偏光に対して第1の屈折率を有し、前記第2の偏光に対して前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有し、前記第2の層は前記第1の層の前記第1の偏光制御装置に遠い側に設けられ、前記第2の層は前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対して第3の屈折率を有し、前記第3の屈折率は前記第1の屈折率及び前記第2の屈折率のうちの1つと同じである。
【0005】
いくつかの実施例において、前記複屈折率材料は、長軸が所定方向に沿って配列される液晶を含む。
【0006】
いくつかの実施例において、前記第1の層は有限焦点距離を有するレンズに等価し、前記有限焦点距離を有するレンズは凸レンズ、バイナリ光学素子、スーパーレンズ及び二次位相板のうちの1種を含む。
【0007】
いくつかの実施例において、前記複屈折率焦点距離切替素子は平板状を呈する。
【0008】
いくつかの実施例において、前記第1の屈折率がn1であり、前記第2の屈折率がn2であり、前記第3の屈折率がn1であり、n2<n1の関係を満たす。
【0009】
いくつかの実施例において、前記システム制御装置は、走行速度が閾値よりも大きいときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第1の偏光に変換し、前記第1の偏光が前記複屈折率焦点距離切替素子を経過して前記投影スクリーン上に投影して第1の虚像を呈し、前記第1の虚像と前記投影スクリーンとの間には第1の距離を有し、走行速度が閾値以下であるときに応じて、第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第2の偏光に変換し、前記第2の偏光が前記複屈折率焦点距離切替素子を経過して前記投影スクリーン上に投影して第2の虚像を呈し、前記第2の虚像と前記投影スクリーンとの間には第2の距離を有し、前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さいように配置される。
【0010】
いくつかの実施例において、前記第1の虚像を呈するときの画像源発光領域の寸法は下記式:
【数1】
(式中、Oは前記第2の虚像を呈するときの画像源発光領域寸法であり、iは第の距離であり、iは第1の距離であり、SE’は第1の虚像の寸法であり、Sは第2の虚像の寸法である)により導出される。
【0011】
いくつかの実施例において、第1の偏光はS光であり、第2の偏光はP光である。
【0012】
いくつかの実施例において、前記ヘッドアップ表示装置は、前記焦点距離切替装置の出光側に設けられる第2の偏光制御装置をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施例において、前記ヘッドアップ表示装置は、前記焦点距離切替装置と前記投影スクリーンとの間に設けられる反射鏡群をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施例において、前記反射鏡群は、自由曲面設計を用いる2つの反射鏡を含む。
【0015】
いくつかの実施例において、前記ヘッドアップ表示装置は、前記焦点距離切替装置と前記投影スクリーンとの間に設けられる透明カバーをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施例において、前記焦点距離切替装置は、前記第1の偏光と前記第2の偏光を異なる光路に従って進行させる複屈折プリズムを含み、前記焦点距離切替装置は、第1のパワーを有する第1の反射部分と第2のパワーを有する第2の反射部分とを有する反射鏡をさらに含み、前記第1の偏光は前記第1の反射部分に反射されて投影スクリーン上に第1の虚像を呈し、第1の虚像と投影スクリーンとの間に第1の距離を有し、前記第2の偏光は前記第2の反射部分に反射されて投影スクリーン上に第2の虚像を呈し、第2の虚像と投影スクリーンとの間に第2の距離を有し、前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さい。
【0017】
いくつかの実施例において、前記ヘッドアップ表示装置は、前記ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出して速度情報を送信する速度モニタ装置と、所望の画像情報を発生させるように前記画像源を制御するとともに、前記速度情報を受信し、前記光を前記第1の偏光又は前記第2の偏光に変換するように前記速度情報に基づいて前記第1の偏光制御装置を制御するシステム制御装置とをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施例において、前記複屈折プリズムはNIKKORプリズム又はウォラストンプリズムを含む。
【0019】
いくつかの実施例において、前記画像情報は第1の画像情報と第2の画像情報とを含み、前記ヘッドアップ表示装置は、前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを交互に発生させるように画像源を制御するシステム制御装置をさらに含み、画像源が前記第1の画像情報を発生させることに応じて、前記システム制御装置は、前記光を前記第1の偏光に変換するように前記第1の偏光制御装置を制御し、画像源が前記第2の画像情報を発生させることに応じて、前記システム制御装置は、前記光を前記第2の偏光に変換するように前記第1の偏光制御装置を制御する。
【0020】
本開示の1実施例は、ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出することと、走行速度が入る速度ゾーンに応じて、第1の偏光制御装置を制御して偏光モードを切り替え、画像源による画像情報を有する光を第1の偏光又は前記第1の偏光と異なる偏光方向を有する第2の偏光に変換することと、焦点距離切替装置による前記第1の偏光と前記第2の偏光とに対する異なる偏向作用により、前記焦点距離切替装置を経過した前記第1の偏光と前記第2の偏光を投影スクリーン上に投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させることとを含む、ヘッドアップ表示装置の表示方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施例において、前記表示方法は、走行速度が閾値よりも大きいときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第1の偏光に変換し、前記第1の偏光が前記焦点距離切替装置を経過して前記投影スクリーン上に投影して第1の虚像を呈し、前記第1の虚像と前記投影スクリーンとの間には第1の距離を有することと、走行速度が閾値以下であるときに応じて、前記第1の偏光制御装置を制御して前記光を前記第2の偏光に変換し、前記第2の偏光が前記焦点距離切替装置を経過して前記投影スクリーン上に投影して第2の虚像を呈し、前記第2の虚像と前記投影スクリーンとの間には第2の距離を有することとをさらに含み、前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きく、前記第1の虚像の寸法は前記第2の虚像の寸法よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a】関連技術における運転者の視点焦点距離及び視野が車速に従って変化することを示す模式図である。
図1b】関連技術における運転者視野の高速における視野範囲模式図である。
図1c】関連技術における運転者視野の低速における視野範囲模式図である。
図2】関連技術における1種の機械的切替制御構造模式図である。
図3】関連技術における別の1種の機械的切替制御構造模式図である。
図4】本開示の1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。
図5】第1の偏光が複屈折率焦点距離切替素子を経由する光路模式図である。
図6】第2の偏光が複屈折率焦点距離切替素子を経由する光路模式図である。
図7】本開示のいくつかの実施例による画像源発光領域制御原理模式図である。
図8】本開示の別の1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。
図9】本開示のさらなる1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の目的、技術案及びメリットをより明白にするために、以下、具体的な実施例を結合しながら、図面を参照して本開示をさらに詳しく説明する。
【0024】
なお、本開示実施例における「第1の」及び「第2の」を用いるすべての表現は、同じ名称を有する2つの異なる構成又は異なるパラメータを区別させるためのものである。したがって、「第1の」、「第2の」は表現の便宜上に使われるものであり、本開示実施例に対する限定であると理解されるべきではない。後述の実施例において、これについて一一説明しない。
【0025】
図1aは運転者の視点焦点距離及び視野が車速に従って変化することを示す模式図である。図1aからわかる通り、車速が増加し続けるにつれて、運転者が感じる視点焦点距離は長くなりつつあり、視野は狭くなりつつある。図1b及び図1cはそれぞれ運転者視野の高速及び低速における視野範囲模式図である。2つの図を比較すればわかる通り、運転者の高速(例えば90km/h)における視野範囲Vは低速(例えば40km/h)における視野範囲V’よりも明らかに小さくなっている。この場合、通常のヘッドアップ表示装置による投影図が変わらないままであると、運転者の視認に不快感を与えるとともに、視距離が変化するので運転者の目が疲れ、運転に不利である。
【0026】
これについて、関連技術の解決手段として、機械的制御によって補助表示の距離及び大きさの表示を調節する。例えば、図2に示すように、自動車ヘッドアップ表示装置は、機械的回転デバイスとシフト装置を制御することにより光路を偏向させ、そして車速に基づいて虚像の結像距離を切り替える。また、図3に示すように、反射デバイスを光路に対して移し入れる又は移し出すことのできるヘッドアップ表示装置において、光線を画像源から第1の平面反射鏡上に射出し、この平面反射鏡上に凹面鏡を積み重ねる又は凹面鏡を取り除くことにより虚像の距離及び大きさを制御することで、車速に基づいて虚像の結像距離を切り替える。駆動装置の駆動によって凹面反射鏡が光路中に置かれるとき、虚像が拡大して虚像結像面が遠くなり、凹面反射鏡が光路から取り除かれるとき、虚像結像面が近くなる。
【0027】
上記2種の案はいずれも虚像結像距離の遠近切替を実現できるが、この2種の案はいずれも機械的回転や移動の方式を採用しているため、システムの構造が複雑であり、応答時間が長く、そしてこのような機械的回転・駆動デバイスの制御安定性が低い。この外、高速走行時において、画像源による虚像の距離が増加するが、虚像寸法が同時に拡大する。これは、車速が増加するにつれて運転者視野が狭くなるので虚像縮小の要求を有する状況に反し、同様に運転者の視認に不快感を与える。関連技術における機械的焦点制御切替方式は、正確で効果的な視野調整を運転者に提供しにくく、表示効果に影響する。
【0028】
そこで、上記関連技術における課題に鑑み、本開示は、関連技術における上記課題のうちの少なくとも1つを軽減又は解消できるヘッドアップ表示装置及び相応の表示方法を提供する。
【0029】
図4は本開示の1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。図4からわかる通り、本開示の1実施例によるヘッドアップ表示装置100は、画像源10、第1の偏光制御装置20及び焦点距離切替装置30を含む。
【0030】
画像源10は、画像情報を有する光を発生して射出する。第1の偏光制御装置20は受光し、光を例えばS光のような第1の偏光、又は第1の偏光と異なる偏光方向を有する例えばP光のような第2の偏光に変換する。
【0031】
焦点距離切替装置30は第1の偏光と第2の偏光とに対して異なる偏向作用を有し、焦点距離切替装置を通した第1の偏光と第2の偏光を投影スクリーンに投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させる。
【0032】
図4に示すように、本開示の1実施例によるヘッドアップ表示装置100は速度モニタ装置40及びシステム制御装置50をさらに含む。
【0033】
速度モニタ装置40は、ヘッドアップ表示装置100を搭載した例えば車両であるキャリアの走行速度を検出し、検出した速度情報をシステム制御装置50に送信する。上記車両はカー、バス、サブウェイなどの任意種類の車両であってもよく、同時に、速度モニタ装置40は例えば単独に設置する、又は車両本体に集積される速度センサであり、本開示の実施例はそれらを限定しない。この外、本開示実施例は、飛行機、列車などのほかの交通機関に応用されてもよい。
【0034】
システム制御装置50は、異なる偏光方向の出力を実現するように速度情報に基づいて第1の偏光制御装置20を制御し、かつ、相応の画像情報を有する光を出力するように画像源10を制御する。システム制御装置50は、従来の任意の制御チップ又は制御デバイスによって画像源10及び第1の偏光制御装置20を制御することができる。本開示実施例は、具体的な設置形態及び制御するパラメータなどを限定しない。
【0035】
画像源10はシステム制御装置50の制御に従って、表示予定の画像情報を有する光を発する。表示予定の画像情報は車速、走行距離等を含んでもよく、歩行者警報、車両警報、レーンライン警報などの環境情報を含んでもよい。運転者への運転補助作用を奏することができれば、本開示実施例は画像情報の具体的な内容を限定しない。
【0036】
第1の偏光制御装置20はシステム制御装置50の制御に従って、表示予定の画像情報を有する光を異なる偏光方向の偏光に変換し、かつそれを焦点距離切替装置に入射させる。本実施例において、記載の便宜上、異なる偏光方向の偏光を第1の偏光及び第2の偏光で示すことができ、例えば、第1の偏光はS光であってもよく、第2の偏光はP光であってもよい。選択的には、第1の偏光制御装置20はシステム制御装置50の制御によって、異なる偏光方向の偏光を変換して出力することができ、一般的にはS光又はP光を出力する。いくつかの実施例において、ほかの異なる偏光方向の偏光、例えば2種を超える偏光を出力するために、ほかのデバイスを含んでもよく、本開示実施例はそれを限定しない。
【0037】
例えば、第1の偏光制御装置20は偏光子と制御可能な旋光器とを含んでもよく、偏光子は、例えば画像情報を含む光である自然光を偏光に変換し、偏光子は例えば偏光シート、偏光板などであり、制御可能な旋光器は偏光の偏光方向を調整するためのものであり、制御可能な旋光器は例えば液晶板等である。
【0038】
焦点距離切替装置30は、第1の偏光制御装置20が発する偏光を受光して射出する。焦点距離切替装置30は、異なる偏光方向の偏光を異なる光路に沿って伝播させ、又はその偏向程度を異ならせることにより、異なる光路の切替を実現することができる。
【0039】
画像情報を有する光は画像源10から射出され、第1の偏光制御装置20及び焦点距離切替装置30をこの順に経過し、最後に投影スクリーン60上に投影されて表示補助をする。選択的には、投影スクリーン60は、フロントガラス又は独立した表示補助ガラスであってもよく、本開示実施例はそれを限定しない。
【0040】
いくつかの選択的な実施例において、焦点距離切替装置30は複屈折率焦点距離切替素子30’である。図5は第1の偏光が複屈折率焦点距離切替素子を経由する光路模式図であり、図6は第2の偏光が複屈折率焦点距離切替素子を経由する光路模式図である。
【0041】
図5図6に示すように、複屈折率焦点距離切替素子30’は第1の層31と第2の層32とを含んでもよい。第1の層31は第1の偏光制御装置20に向かって設けられるとともに、複屈折率材料を含み、複屈折率材料は配向性の液晶を含み、即ち、液晶中の液晶分子の長軸は1つの所定方向に沿って配列される。複屈折率材料は、例えばS光である第1の偏光に対して第1の屈折率n1を有し、例えばP光である第2の偏光に対して第1の屈折率n1と異なる第2の屈折率n2を有し、第2の層32は第1の層31の第1の偏光制御装置20に遠い側に設けられ、第2の層32は第1の偏光及び第2の偏光に対して同じ第3の屈折率n3を有し、第3の屈折率n3は第1の屈折率n1及び第2の屈折率n2のうちの1つと同じである。例えば、第3の屈折率n3は第1の屈折率n1と同じであり、即ちn3=n1。図5と6に示すように、第1の層31は有限焦点距離を有するレンズに等価し、有限焦点距離を有するレンズは焦点距離が限られ、凸レンズ、バイナリ光学素子、スーパーレンズ及び二次位相板のうちの1種であり、選択的には、複屈折率焦点距離
【0042】
切替素子30’は平板状を呈する。
具体的には、図5に示すように、車両の高速走行時における制御状態では、システム制御装置40は第1の偏光制御装置20の出力光線を例えばS光である第1の偏光とする。このとき、S光の偏光方向は複屈折率焦点距離切替素子における複屈折率材料(例えば液晶)分子の長軸に垂直であり、S光の第1の層31における屈折率とその第2の層32における屈折率とは同じであり、いずれもn1である。したがって、第1の層31と第2の層32との界面には位相ステップがなく、複屈折率焦点距離切替素子30’は平板ガラスに等価し、その射出する光線の拡散角度が変わらず、虚像は遠い位置に結像される。これで、高速状態において運転者の視距離が増加する状態に適合する。
【0043】
図6に示すように、車両の低速走行時における制御状態では、システム制御装置40は第1の偏光制御装置20の出力光線を例えばP光である第2の偏光とする。このとき、P光の偏光方向は複屈折率焦点距離切替素子における複屈折率材料(例えば液晶)分子の長軸に平行であり、P光の第1の層31における屈折率n2はその第2の層32における屈折率n1と異なり、かつn2<n1。複屈折率焦点距離切替素子30’はP光を収束する作用を奏し、虚像を近い位置に結像させる。これで、低速状態において運転者の視距離が減少する状態に適合する。したがって、上記調節制御により、表示画像の結像距離を運転者の異なる車速における視距離に適合させ、運転者が表示画像を視認するときの快適性を大いに向上した。
【0044】
同時に、光路の相違により結像位置が変化するため、画像源10の発光領域を調節する必要があり、具体的には、システム制御装置40は光線の偏光状態を制御することで焦点距離の切替を行うと同時に、高速及び低速の状態における運転者視野範囲に基づいて画像源10の発光領域を相応的に制御し、即ち、画像源10の画面を表示するための画素数を調整することにより、虚像が運転者視野において適切な割合を占める状態を確保する。
【0045】
図7は本開示の1実施例による画像源発光領域制御原理模式図である。図7に示すように、複屈折率焦点距離切替素子30’はレンズLに等価し、ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの低速走行時において、例えば走行速度が閾値以下であるとき、例えばP光である第2の偏光が例えばフロントガラスである投影スクリーン上に投射されて第2の虚像を呈し、画像源10の発光領域の寸法がOであり、結像距離がiであり、第2の虚像の結像寸法がSである。ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの高速走行時において、例えば走行速度が閾値を超えるとき、例えばS光である第1の偏光が例えばフロントガラスである投影スクリーン上に投射されて第1の虚像を呈し、画像源10の発光領域の寸法がOE’に縮小され、結像距離がiに切り替えられ、結像寸法が(視野が狭くなるため)SE’に縮小され、即ち第1の虚像の寸法がSE’である。図7に基づき、高速走行状態と低速走行状態とにおける画像源発光領域寸法/画素の割合関係を導出することができ、この割合関係は下記の式によって得られることができる。
【数2】
式中、S’は、画像源10の発光領域の寸法をOとし、例えばS光である第1の偏光が例えばフロントガラスである投影スクリーン上に投射されて呈する虚像の寸法である。
【0046】
これにより、高速走行状態における画像源10の適切な発光領域寸法
【数3】
と導出することができる。
【0047】
また、上記実施例は偏光原理を利用しているため、光路の損失を招く。したがって、画像源の輝度をさらに調節して補償することにより、はっきりした表示画像を運転者に提供することができる。
【0048】
いくつかの実施例において、焦点距離切替装置30は複数の重なる複屈折率焦点距離切替素子をさらに含み、隣り合う複屈折率焦点距離切替素子の間に旋光器を設けるようにしてもよい。このように、多層制御によってより多くの光路状態の切替制御を実現することができ、即ちより多くの異なる速度ゾーンに適合することができる。例えば、焦点距離切替装置は互いに重なる第1の複屈折率焦点距離切替素子と第2の複屈折率焦点距離切替素子を含み、第1の複屈折率焦点距離切替素子と第2の複屈折率焦点距離切替素子との間には、偏光の偏光方向を変更するための制御可能な旋光器を設ける。このとき、焦点距離切替装置は下記の4種の焦点距離切替を実現することができる。
【0049】
第1種:第1の偏光制御装置はS光を発し、S光が第1の複屈折率焦点距離切替素子(平板ガラスに等価する)を通し、制御可能な旋光器はS光の偏光方向を変更せず、S光が第2の複屈折率焦点距離切替素子(平板ガラスに等価する)を通して投影する;
第2種:第1の偏光制御装置はS光を発し、S光が第1の複屈折率焦点距離切替素子(平板ガラスに等価する)を通し、制御可能な旋光器はS光をP光に変換し、P光が第2の複屈折率焦点距離切替素子(収束レンズに等価する)を通して投影する;
第3種:第1の偏光制御装置はP光を発し、P光が第1の複屈折率焦点距離切替素子(収束レンズに等価する)を通し、制御可能な旋光器はP光の偏光方向を変更せず、P光が第2の複屈折率焦点距離切替素子(収束レンズに等価する)を通して投影する;
第4種:第1の偏光制御装置はP光を発し、P光が第1の複屈折率焦点距離切替素子(収束レンズに等価する)を通し、制御可能な旋光器はP光をS光に変換し、S光が第2の複屈折率焦点距離切替素子(平板ガラスに等価する)を通して投影する。
【0050】
本開示のいくつかの選択的な実施例において、図4に示すように、ヘッドアップ表示装置100は、例えば制御可能な旋光器である第2の偏光制御装置70をさらに含み、第2の偏光制御装置70は焦点距離切替装置30の出光方向に設けられ、表示画像の光強度を調節する。第1の偏光制御装置20及び例えば複屈折率焦点距離切替素子である焦点距離切替装置30を経過した後の光線はP光又はS光である可能性がある。フロントガラスでは、光線が所定の角度で入射して人の目までに反射され、ブリュースター反射(Brewster reflection)原理からわかる通り、光線がブリュースターポイントで入射すると、P光の反射光強度が0に減衰される。したがって、このとき、人の目までに反射される光の強度が影響されることを避けるために、第2の偏光制御装置70によってP光をS光に調節する必要がある。
【0051】
本開示のいくつかの選択的な実施例において、ヘッドアップ表示装置100は、焦点距離切替装置30と投影スクリーン60(例えばフロントガラス)との間に設けられて光路を調節する反射鏡群80をさらに含む。車両内の環境が相対的に固定であるとき、前述実施例におけるヘッドアップ表示装置100は、光路を表示予定の位置に導きにくい可能性があり、このとき、1つの反射鏡群によって光路の調節を実現する必要がある。例えば、図4に示すように、反射鏡群80は第1の反射鏡81及び第2の反射鏡82という2つの反射鏡を含み、選択的には、2つの反射鏡81、82はいずれも自由曲面の設計を用い、光路中に導入される歪みと収差を補正することができる。
【0052】
図8は本開示の別の1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。前述実施例に比べて、この実施例は基本的な構造がほぼ同じであるが、焦点距離切替装置30が複屈折プリズムを含む点において異なる。例えば、複屈折プリズムはNIKKORプリズム又はウォラストンプリズムである。このように、複屈折プリズムの分光特性を利用し、異なる偏光方向を有する偏光、例えばS光とP光に対して異なる方向に従って光路の屈折を行い、相応的には、反射鏡群によって光路調節を行うことで、最終的には、フロントガラス上で異なる光路の表示を実現する。本実施例における反射鏡群80’は第3の反射鏡83及び第4の反射鏡84を含み、第3の反射鏡83は第1のパワーを有する第1の反射部分831と第2のパワーを有する第2の反射部分832とを含み、第1の反射部分831の第1のパワーは第2の反射部分832の第2のパワーよりも小さい。本実施例において、第1のパワーを有する第1の反射部分831はパワーがマイナスである凸面反射部分であってもよく、第2のパワーを有する第2の反射部分832はパワーが0である平面反射部分832であってもよい。具体的には、図8に示すように、ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの高速状態において、第1の偏光制御装置20からS光は出力され、複屈折プリズム30”を経過して第1の光路aに沿って進行し、第1の反射部分831及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投影し、投影スクリーン60から遠い第1の虚像を形成する。ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの低速状態において、第1の偏光制御装置20からP光は出力され、複屈折プリズム30”を経過して第2の光路bに沿って進行し、第2の反射部分832及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投影し、投影スクリーン60に近い第2の虚像を形成する。このように、より簡単な複屈折プリズムを用いることにより、プロセスの複雑度及び加工コストを低減することができる。本実施例において、複屈折プリズムと第3の反射鏡との共同作用では、異なる偏光方向を有する光が投影スクリーンとの距離が異なる虚像を実現し、複屈折プリズムと第3の反射鏡とは共同で本実施例における焦点距離切替装置を構成する。
【0053】
図8は本開示の別の1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。前述実施例に比べて、この実施例は基本的な構造がほぼ同じであるが、焦点距離切替装置30が複屈折プリズムを含む点において異なる。例えば、複屈折プリズムはNIKKORプリズム又はウォラストンプリズムである。このように、複屈折プリズムの分光特性を利用し、異なる偏光方向を有する偏光、例えばS光とP光に対して異なる方向に従って光路の屈折を行い、相応的には、反射鏡群によって光路調節を行うことで、最終的には、フロントガラス上で異なる光路の表示を実現する。本実施例における反射鏡群80’は第3の反射鏡83及び第4の反射鏡84を含み、第3の反射鏡83は第1のパワーを有する第1の反射部分831と第2のパワーを有する第2の反射部分832とを含み、第1の反射部分831のパワーは第2の反射部分832のパワーよりも小さい。本実施例において、第1のパワーを有する第1の反射部分831はパワーがマイナスである凸面反射部分であってもよく、第2のパワーを有する第2の反射部分832はパワーが0である平面反射部分832であってもよい。具体的には、図8に示すように、ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの高速状態において、第1の偏光制御装置20からS光は出力され、複屈折プリズム30”を経過して第1の光路aに沿って進行し、第1の反射部分831及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投影し、投影スクリーン60から遠い第1の虚像を形成する。ヘッドアップ表示装置を搭載した例えば車両であるキャリアの低速状態において、第1の偏光制御装置20からP光は出力され、複屈折プリズム30”を経過して第2の光路bに沿って進行し、第2の反射部分832及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投影し、投影スクリーン60に近い第2の虚像を形成する。このように、より簡単な複屈折プリズムを用いることにより、プロセスの複雑度及び加工コストを低減することができる。本実施例において、複屈折プリズムと第3の反射鏡との共同作用では、異なる偏光方向を有する光が投影スクリーンとの距離が異なる虚像を実現し、複屈折プリズムと第3の反射鏡とは共同で本実施例における焦点距離切替装置を構成する。
【0054】
なお、本実施例において、S光とP光は異なる光路に沿って進行するので、第1の虚像と第2の虚像は例えばフロントガラスである投影スクリーン60の異なる領域に投影される。前述の実施例において、S光とP光は基本的に同じ光路に沿って進行し、収束するか否かについてのみが異なるため、前述実施例における第1の虚像と第2の虚像は投影スクリーン60の基本的に同じ領域に担載される。
【0055】
なお、本実施例と前述実施例とにおいて、光路が異なるため、反射鏡群の構造及び位置を適応的に調整する必要がある。
【0056】
図9は本開示のさらなる1実施例によるヘッドアップ表示装置の構造模式図である。図9に示すように、本実施例によるヘッドアップ表示装置は図8に示すヘッドアップ表示装置と類似の構造を有し、焦点距離切替装置30は同様に複屈折プリズムを含む。第1の偏光制御装置20から出力されるS光は複屈折プリズム30”を経過して第1の光路aに沿って進行し、パワーを有する反射部分831及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投射し、投影スクリーン60から遠い第1の虚像を形成する。第1の偏光制御装置20から出力されるP光は複屈折プリズム30”を経過して第2の光路bに沿って進行し、パワーを有しない平面反射部分832及び第4の反射鏡84に反射されて投影スクリーン60上に投射し、投影スクリーン60に近い第2の虚像を形成する。本実施例によるヘッドアップ表示装置と図8に示すヘッドアップ表示装置との相違点は、本実施例には速度モニタ装置が存在せず、システム制御装置50によって画像源10及び第1の偏光制御装置20を直接制御することで投影表示を行うことにある。上記2つの光路が呈する2つの虚像を利用しながら、時分割多重化を利用して二重層表示を実現する。二重層表示は、例えば現実補強表示と状態情報表示とを含む。即ち、時分割多重化と偏光制御を合わせて利用することで、二重層ヘッドアップ表示結像を実現することができる。具体的には、システム制御装置50は第1の偏光制御装置20を例えばS光である第1の偏光を出力するように制御するとき、光線が第1の光路aに沿って進行し、第1の虚像を呈し、第1の虚像は遠層表示画像であり、例えば速度、キロメートルなどの状態情報を表示することができる。システム制御装置50は第1の偏光制御装置20を例えばP光である第2の偏光を出力するように制御するとき、光線が第2の光路bに沿って進行し、第2の虚像を呈し、第2の虚像は近層表示画像であり、例えば走行路線指示などの補強表示情報を表示することができる。
【0057】
本開示による1実施例は、下記のステップを含むヘッドアップ表示装置の表示方法をさらに提供する。
【0058】
ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアの走行速度を検出するステップ。
【0059】
走行速度が入る速度ゾーンに応じて、システム制御装置により第1の偏光制御装置を制御して偏光モードを切り替え、画像源による画像情報を有する光を第1の偏光又は第1の偏光と異なる偏光方向を有する第2の偏光に変換する;及び
焦点距離切替装置による第1の偏光と第2の偏光とに対する異なる偏向作用により、焦点距離切替装置を経過した第1の偏光と第2の偏光を投影スクリーン上に投射し、それぞれ、投影スクリーンとの距離が異なる虚像を呈させる。
【0060】
具体的には、走行速度が閾値以下であるときに応じて、システム制御装置は第1の偏光制御装置を制御して光をP光に変換し、P光が焦点距離切替装置を経過して投影スクリーン上に投影して第の虚像を呈し、第の虚像と投影スクリーンとの間には第の距離を有する。
【0061】
走行速度が閾値よりも大きいときに応じて、システム制御装置は第1の偏光制御装置を制御して光をS光に変換し、S光が焦点距離切替装置を経過して投影スクリーン上に投影して第の虚像を呈し、第の虚像と投影スクリーンとの間には第の距離よりも大きい第の距離を有する。
【0062】
1実施例において、ヘッドアップ表示装置を搭載したキャリアが車両である場合を例とし、ヘッドアップ表示方法は下記のステップを含む。
【0063】
現時点車速を検出して現時点車速が入る車速ゾーンを判定するステップ。
【0064】
現時点車速が入る車速ゾーンに基づき、相応的には、システム制御装置によって第1の偏光制御装置を制御して偏光モードを切り替えることにより、第1の偏光制御装置から出力される偏光及び画像源の表示領域を車速ゾーンが対応する運転者の視距離に適合させる。各々の異なる車速ゾーンはそれぞれ第1の偏光制御装置及び画像源に対応して異なる制御方式を有し、対応関係に従って相応的に制御すれば、運転者に良好な表示体験を与えることができる。
【0065】
例えば、車速ゾーンを高速モードと低速モードに設定し、高速モードと低速モードとの間には例えば車速臨界値である1つの閾値を設定する。
【0066】
現時点車速が設定の車速臨界値以下である場合、システム制御装置により第1の偏光制御装置を制御して低速モードに切り替えることで、第1の偏光制御装置からP光が出力され、画像源が低速表示領域に切り替わるように制御する。低速表示領域は低速走行時における視野の大きさに適合する画像表示領域であり、即ち第2の虚像を呈するときの画像源の発光領域である。
【0067】
現時点車速が設定の車速臨界値よりも大きい場合、システム制御装置により第1の偏光制御装置を制御して高速モードに切り替えることで、第1の偏光制御装置からS光が出力され、画像源が高速表示領域に切り替わるように制御する。高速表示領域は高速走行時における視野の大きさに適合する画像表示領域であり、即ち第1の虚像を呈するときの画像源の発光領域である。高速表示領域の寸法は低速表示領域の寸法よりも小さい。図7からわかる通り、低速時に結像距離が近いので、比較的に大きい低速表示領域を用いることで運転者に良い表示体験を与えることができ、高速時に結像距離が遠いので、拡大投影で拡大する倍数も増大し、低速表示領域のままであると、運転者の視線が表示画像に完全に覆われることになり妨害を招き、ゆえに、表示領域を縮小してからより大きく拡大することにより、運転者に同様に快適な表示体験を与えることができる。なお、ここの低速表示領域と高速表示領域は相対的なものであり、本実施例は具体的な領域の設置を限定しない。
【0068】
補助表示が閉じられるまで、設定の時間間隔に従って上記判定過程を絶えずに実行する。
上記方法は装置と同じ効果を有するので、ここでは贅言しない。
【0069】
当業者であれば理解できるように、上記のすべての実施例は例示的なものに過ぎず、本開示の範囲(請求項を含む)を制限するためのものではない。本開示の構想に従って、上記の実施例もしくは異なる実施例における技術特徴の間を適宜組み合わせ、ステップを任意の順序に従って実現することができ、上記本開示の異なる面においてほかの多くの変更も存在する。便宜上、その細部について提示しなかった。
【0070】
なお、当業者であれば容易に分かるように、具体的な細部(例えば、回路)を述べて本開示の例示的な実施例を記載する場合、これら具体的な細部がなくても、あるいは、これら具体的な細部が変更した場合においても本開示を実施することができる。したがって、これら記載は説明的なものであり、限定的なものではない。
【0071】
本開示の具体的な実施例を結合しながら本開示を記載したが、前述の記載に基づき、これら実施例の多くの置換え、補正及び変形は当業者にとって容易になしうるものである。
【0072】
本開示の実施例は、添付の請求の範囲に入るすべての置換え、補正及び変形を含む旨である。したがって、本開示の精神及び原則に従って行われるすべての省略、補正、等価代替、改善などは、本開示の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0073】
10 画像源
20 第1の偏光制御装置
30 複屈折プリズム
30 焦点距離切替装置
31 第1の層
32 第2の層
40 速度モニタ装置
50 システム制御装置
60 投影スクリーン
70 第2の偏光制御装置
80 反射鏡群
81 第1の反射鏡
82 第2の反射鏡
83 第3の反射鏡
84 第4の反射鏡
90 透明カバー
100 ヘッドアップ表示装置
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9