(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】組織学的画像の自動化パターン認識及びスコア化方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230612BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230612BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230612BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20230612BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
G01N33/48 P
G01N33/483 C
G06T7/00 630
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2020542685
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2018078711
(87)【国際公開番号】W WO2019077108
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ブロゼック
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・ドゥガレ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ノエル
(72)【発明者】
【氏名】エルトン・レジェパ
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115194(JP,A)
【文献】特開2014-2166(JP,A)
【文献】特開2013-108926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0339816(US,A1)
【文献】国際公開第2016/093090(WO,A1)
【文献】NAFLD/NASH診療ガイドライン2014,日本消化器病学会,2014年04月,p.80-83,96-104
【文献】石川雅浩, 外6名,“HE染色肝病理組織標本における方位選択性フィルタを用いた類洞抽出法の提案”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2012年01月12日,第111巻, 第389号,p.337-342
【文献】吉野進也, 外4名,“慢性肝炎の生検組織像における線維化の定量的評価”,電気学会論文誌C,日本,社団法人電気学会,1995年11月20日,第115-C巻, 第12号,p.1460-1467
【文献】Cristian Vicas, 外3名,"Deep convolutional neural nets for objective steatosis detection from liver samples",2017 13th IEEE International Conference on Intelligent Computer Communication and Processing (ICCP),2017年09月09日,p.385-390
【文献】Manish Mishra, 外7名,"Structure-based assessment of cancerous mitochondria using deep networks",2016 IEEE 13th International Symposium on Biomedical Imaging (ISBI),2016年04月16日,p.545-548
【文献】Scott Vanderbeck, 外5名,"Automatic quantification of lobular inflammation and hepatocyte ballooning in nonalcoholic fatty liver disease liver biopsies",Human Pathology,第46巻, 第5号,2015年05月,p.767-775
【文献】Pierre Bedossa, 外1名,"Utility and appropriateness of the fatty liver inhibition of progression (FLIP) algorithm and steatosis, activity, and fibrosis (SAF) score in the evaluation of biopsies of nonalcoholic fatty liver disease",Hepatology,第60巻, 第2号,2014年08月,p.565-575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 33/48
G01N 33/483
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に由来する肝生検の肝細胞小葉炎症を決定及びスコア化するための方法であって、
- 前記対象に由来する肝生検スライドを準備する工程、
- 深層学習モデル
を使用して、
- 前記肝生検スライド
のデジタル化スライド上で複数のFOV(field of view)を決定し、
- 前記複数のFOVのサブセットを選択し、前記複数のFOVのサブセット内で炎症
細胞のパターンを
識別する工程、
- 前記識別した炎症細胞パターンに基づいて、前記肝生検スライド
について肝細胞小葉炎症
(LI)スコア
を決定する工程を含み、
前記LIスコアが0から3までの範囲であり、LI=0
が、炎症なし
に対応し、LI=1
が、軽度の炎症
に対応し、LI=2
が、中等度の炎症
に対応し、及びLI=3
が、重度の炎症
に対応する、方法。
【請求項2】
深層学習モデルは、炎症細胞及び正常肝細胞を含む肝生検画像化データから得られた訓練データに基づい
て訓練され
たモデルを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
対象
がNASH
対象であるかどうかを
決定するための方法であって、
- 前記対象に由来する肝生検スライドを準備する工程、
- 深層学習モデルを使用して、
- 前記肝生検スライドのデジタル化スライド上で複数のFOV(field of view)を決定し、
- 前記複数のFOVのサブセットを選択し、前記複数のFOVのサブセット内で炎症細胞のパターンを識別し、
- 肝細胞風船化(HB)のパターンを識別し、肝細胞風船化をスコア化する工程、
- 前記識別した炎症細胞パターンに基づいて、前記肝生検スライドについて肝細胞小葉炎症(LI)スコアを決定する工程を含み、
前記LIスコアが0から3までの範囲であり、LI=0が、炎症なしに対応し、LI=1が、軽度の炎症に対応し、LI=2が、中等度の炎症に対応し、及びLI=3が、重度の炎症に対応し、
前記HBスコアが0から2までの範囲であり、H
B=0が、肝細胞風船化なしに対応し、HB=1が、中等度の肝細胞風船化に対応し、HB=2が、重度の肝細胞風船化に対応し、前記HBスコア及び
前記LIスコアが加算されて0から5までの格付けの活動性指数(AI)が決定され、対象
が、AI≧2、HB≧1及びLI≧1である場合、NASH対象と
決定される方法。
【請求項4】
HBスコアが少なくとも1であり
、LIスコアが少なくとも1であり、同じ対象の脂肪症スコアが少なくとも1である場合、NASHが
決定される
、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象のNASH線維症又は肝線維症を決定及びスコア化するための方法であって、
- 前記対象に由来する肝生検スライドを準備する工程、
- 深層学習モデル
を使用して、
- 前記肝生検スライド
のデジタル化スライド上で複数のFOV(field of view)を決定し、
- 前記複数のFOVのサブセットを選択し、前記複数のFOVのサブセット内で、肝線維症のパターンを
識別し、及び/又はコラーゲン比例面積(CPA)を測定
する工程、
- 前記識別したパターン及び/又は測定したCPAに基づいて、前記肝生検スライドについて肝線維
症スコア
を決定する工程を含み、
肝線維症
(F)は、
以下:
F=0
が肝線維症なし
に対応し、F=1
が最小限の肝線維症
に対応し、F=2
が有意な肝線維症
に対応し、F=3
が中等度の肝線維症
に対応し、及びF=4
が重度の肝線維症
に対応する
のようにスコア化される
、方法。
【請求項6】
深層学習モデルは、正常組織及びコラーゲン含有組織を含む肝生検画像化データから得られた訓練データに基づい
て訓練され
たモデルを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
訓練データは、
正常
なFOV
(field of view)(コラーゲンなし)、
類洞周囲FOV(コラーゲンが類洞の周囲で分岐する)、
門脈周囲FOV(コラーゲンが門脈区域の周囲で分岐する)、
門脈FOV(コラーゲンが門脈区域に存在する)、及び
架橋FOV(コラーゲンが、主要血管構造門脈区域と中心静脈とを架橋した形態で存在する)
に由来する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
対象の肝脂肪症又は肝臓脂肪症を決定及びスコア化するための方法であって、
- 前記対象に由来する肝生検スライドを準備する工程、
- 深層学習モデルを使用して、
- 前記肝生検スライドのデジタル化スライド上で複数のFOV(field of view)を決定し、
- 前記複数のFOVのサブセットを選択し、前記複数のFOVのサブセット内で肝臓脂肪症又は肝脂肪症のパターンを
識別する工程
、
- 前記識別した肝臓脂肪症又は肝脂肪症のパターンに基づいて、肝臓脂肪症又は肝脂肪症(S)スコアを決定する工程を含み、
肝臓脂肪症又は肝脂肪症
(S)は、
以下:
S=0
が5%未満の脂肪症
に対応し、S=1
が6%~33%の脂肪症
に対応し、S=2
が34%~66%の脂肪症
に対応し、S=3
が66%超の脂肪症
に対応する
のようにスコア化される
、方法。
【請求項9】
コンピュータにより実行されると、コンピュータに、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織学的画像の自動化パターン認識及びスコア化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の有病率は、急速に増加しつつあり、NASHが進行性線維症蓄積を駆動し、最終的には肝硬変及び肝細胞癌(HCC)に結び付くという知識に鑑みると、重大な公衆衛生問題である。
【0003】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、超音波技法を使用して肝臓への脂肪蓄積の存在を検出することにより診断することができるが、NASH及びNASH関連肝線維症は、今日では肝生検の組織学的検査によってでしか診断することができない。組織学的スコア化/病期分類方式が、NAFLD活動性レベル及び線維症病期を評価するために、並びに臨床的肝臓転帰への進展リスクを評価するために開発されている。NALFD活動性スコア(NAS)が、この疾患の活動性を評価するために開発されている。
【0004】
NASは、生検の脂肪症(0~3)、小葉炎症(0~2)、肝細胞性風船化(0~2)の個々のスコアの合計、又は重みなしの個々の生検の個々のスコアの合計である。
【0005】
Kleinerら(Hepatology、2005年;41巻:1313~21頁)(Kleinerら、2005年)によると、NAは、肝生検切片から作成される3つの組織学的スコアの合計である:
- 脂肪症スコア: 0:<5%、1:5~33%、2:34~66%、3:>66%
- 小葉炎症スコア(病巣/×20視野): 0:なし、1:<2、2:2~4、3 >4
- 風船化変性スコア: 0:なし、1:少数、2:多数。
【0006】
このスコア化方式を使用すると、NASHを有する患者は、NAS≧3、並びに脂肪症では少なくとも1点、小葉炎症では少なくとも1点、及び肝細胞風船化では少なくとも1点を有する。患者は、NAS≧4を有し、脂肪症が少なくとも1点であり、炎症が少なくとも1点であり、肝細胞風船化が少なくとも1点である場合に活動性NASHを有するとみなされる。
【0007】
組織学的検査における線維症の位置特定及び範囲は、この疾患の重症度(進行)の徴候であり、NASH-CRNは、専用の線維症病期分類方式を開発している(Kleinerら、Hepatology、2005年;41巻:1313~21頁)。
【0008】
【0009】
この線維症病期分類方式を使用すると、線維症がないか又は最小限である患者(F=0~1)は、一般に肝硬変、HCC、又は肝臓死のリスクがあるとはみなされない。有意な線維症(F=2)を有する患者及び中等度の線維症(F=3)を有する患者は、肝硬変、肝不全、HCC、及び肝臓死を発症するリスクが増加している。代償性肝硬変を有する患者は、重度の線維症(F=4)を有し、肝不全(非代償性肝硬変)、HCC、及び肝臓死のリスクが高い。
【0010】
最近、こうした広く受け入れられている2つのスコア化及び病期分類方式から導き出された、小葉炎症スコア及び肝細胞風船化スコアの合計として規定することができる活動性指数(AI)に、特別の注意が払われている。加えて、Munteanuら、Aliment Pharmacol Ther.、2016年、44巻(8号):877~89頁、(Munteanuら、2016年)は、脂肪症、疾患活動性、及び線維症のスコアを個別に報告するためのSAFシグネチャ(SAF signature)を提案している。脂肪症スコア(S)は、泡沫状微小胞を除く大型~中型サイズの脂質滴の量を評価し、それらを0~3に格付けする(S0: <5%; S1: 5~33%、軽度; S2: 34~66%、中等度; S3: >66%、顕著)。活動性等級(A、0~4)は、肝細胞風船化(0~2)及び小葉炎症(0~2)の重みなしの加算である。A0(A=0)を有する症例は活動性を有していなかった。A1(A=1)は軽度の活動性を有していた。A2(A=2)は中等度の活動性を有していた。A3(A=3)は重度の活動性を有していた。A4(A=4)は非常に重度の活動性を有していた。線維症病期(F)は、Kleinerに記載のスコアを使用して、以下の通りに評価された:病期0(F0)=なし;病期1(F1)=1a又は1b類洞周囲帯3又は1c門脈線維症;病期2(F2)=架橋なしの類洞周囲及び門脈周囲線維症;病期3(F3)=架橋線維症、及び病期4(F4)=肝硬変。
【0011】
Brunt方式は、主にNASHの重症度を等級付けするための方法として提案されたものであり、脂肪性肝炎の最低基準を満たさなかった症例に適用されることは意図されていなかった。脂肪性肝炎の軽度、中程度、及び重度への等級付けは、脂肪症、炎症、及び風船化の重症度の全体的な印象に基づいていたが、重みのほとんどは、風船化に与えられていた(Bruntら、1999年)。
【0012】
こうした方式間の個々の組織学的特徴の等級付け及び病期分類の比較は、Table 1(表2)に示されている。
【0013】
【0014】
病理学は、診断、研究、又は他の目的のために、組織試料の臨床検査に取り組む科学の分野である。病理学者並びに医学的又は生物学的研究に従事する他の者は、ヒト組織、動物組織、花組織、又は他の組織を検査して、疾患状態を評価するか又は生物学的特徴を理解する。病理学の一態様では、組織が、分析のために患者から生検され、スライドガラスに固定され、光学顕微鏡下で観察される。しかしながら、組織評価のそのような形態は、種々の理由で影響を受けやすい。例えば、そのような欠点の幾つかとしては、主観性及び低スループットが挙げられる。別の問題は、高品質の診断には、複数の試料を分析することが必要とされることが多く、単一の読取り者では難しいことである。また、多数の似たような試料に直面する手動読取り者は、疲労を経験し、読取り値に食い違いが生じる場合がある。
【0015】
組織学的特徴の評価における観察者変動性の定量化を試みた幾つかの研究では、線維症の等級付けの場合は、中程度~かなりの合致を示すと結論付けられている。加えて、肝細胞炎症及び風船化は、病理学者間で良好な合致を示さず、全体的な病理学的診断では63%の観察者間一致に結び付いた(Younossiら、1998年)。患者(減量手術を施された病的肥満患者)の適度に均質な群におけるNASHの有病率の調査分析では、手術時に得られた外科的生検の組織病理学的分析に基づくNASHの有病率は24から98%までの範囲だったと結論付けられた(Machadoら、2006年)。
【0016】
病理学者スコアは、生検切片のミクロ/マクロ組織学的パターンの解釈に基づく。こうした臨床パラメーターをスコア化するための現行標準は、依然として、病理学者又は訓練された組織学者による肝生検切片の手動解釈及びスコア化のままである。手動スコア化は、手間がかかる(例えば、風船化)ことの他に、主として組織学的パターンの解釈における主観性のため、観察者間一致が中程度であることが知られている(脂肪症:κ(合致係数)=0.6、炎症:κ=0.5、風船化:κ=0.7、線維症:κ=0.5)(Bedossa、2014年)。
【0017】
このバイアスは、各パラメーターを個々に考慮する場合、更に増強される:
I)肝細胞風船化:そのような頻繁には起こらない事象では、スクリーニングが非網羅的であるため、ある細胞が見逃されてしまう場合がある。また、完全に変性した風船化肝細胞(大きな細胞)からプレ風船化肝細胞(小さな細胞)を判別するために使用されることが多い細胞サイズには、主観的評価が行われる。
II)肝臓又は肝細胞小葉炎症:HPF(高倍率視野)選択による主観性は、スコア化プロセスを再現することが困難であり、潜在的なバイアスに曝されている。
III)肝線維症:肝臓線維症の評価も、1)コラーゲン比例面積(CPA、collagen proportion area)の定量化に対する組織病理学的要因の影響及び2)線維症病期分類の人間による主観的解釈のため難しい(中程度の観察者間一致(Bedossa、2014年)。CPA定量化には、染色変動性(組織学及び画像化に必然的に伴う)に対してロバストであり、かつコラーゲンの非病理的染色(血管領域)を除外する方法が必要である。
IV)脂肪症:脂肪の細胞内空胞を含む肝細胞の割合の視覚的推定及び幅広い階層区分の重症度への脂肪症の等級付け:等級0(正常)=影響を受けた細胞が5%まで、等級1(軽度)=影響を受けた細胞が5~33%、等級2(中等度)=影響を受けた細胞が34~66%、及び等級3(重度)=影響を受けた細胞が67%以上は、かなり主観的であり、組織病理学での脂肪症等級付けには、かなりの個人間及び個人内変動性が存在する。
【0018】
更に、現在の正確性、再現性、及びスループットの問題に取り組むには、完全自動化された方法が決定的に必要である。臨床応用及び研究応用のための全スライドイメージング(WSI、whole slide imaging)システムが普及して以来、組織病理学的データに適用される機械学習応用の開発は、近年、非常に活発な研究領域である(LeCunら、2015年)。深層学習(DL)パターン認識アルゴリズムは、最近、ミクロ及びマクロ組織パターンを両方とも正確に捕捉し、更に、病理学者の診断ワークフローを模倣することができることが示されている。そのような技術を使用すると、組織学的パターンを自動的に予測することができ、NASH診断及び肝臓線維症スコア化の再現性を向上させることができる。加えて、NASH特異的線維症組織学的パターンの認識は、コラーゲン形態学的特徴(隔壁)及びコラーゲン比例面積(CPA)のより正確な定量化を可能にするだろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【文献】Kleinerら、Hepatology、2005年; 41巻: 1313~21頁
【文献】Munteanuら、Aliment Pharmacol Ther.、2016年、44巻(8号): 877~89頁
【文献】Kliener、2005年、6巻:1313~1321頁
【文献】Rexhepajら、Eur Respir J.、2015年12月;46巻(6号):1762~72頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
NASH組織学的解釈を完全に自動化するために、本発明者らは、NASH疾患活動性、NASH線維症スコア、及び肝臓線維症を評価するための統合型自動化データ管理及び分析パイプラインを確立した。彼らは、低い~重要なコホート内及びコホート間色素強度変動性を補償するためのロバストな染色正規化方法を開発した。また、本発明者らは、NASHスコア化(炎症、風船化、及び線維症)を自動化するための、3つの独特な完全自動化機械学習応用によるDL及び形態測定学的分析の使用を調査した。画像分析方法を使用した脂肪症定量化も、NAFLD診断及びNASHスコア化の自動化プロセスを完成させるための分析に更に含まれていた。脂肪症定量化方法はDL方法であってもよい。
【0021】
各臨床パラメーターの病理学的及び組織学的性質が異なることを考慮して、本発明者らは、個々の分析パイプラインに向けられた開発プロセスを実施した。
I. 前処理(観察野(FOV)抽出、組織区分化、正規化)を行う。
II. NASH病理学的ミクロ/マクロパターンDL(炎症性、風船化細胞/肝線維症FOVタイプ)を予測し、脂肪症面積を定量化する。
III. 生検レベルへとデータを集約する。
【0022】
各NASH臨床成分の定量化パイプラインの一般化特性を、開発、試験、及び検証のための独立コホートを使用して評価した。最終目標は、ミクロ/マクロ予測及び定量化(CPA/隔壁形態学的特徴)を、臨床的に関連する情報へと翻訳し、参照病理学者注釈に対して検証することだった。
【0023】
したがって、本発明は、肝生検に由来する免疫化学画像のロバストな自動化パターン認識方法及びスコア化方法を提供する。
【0024】
こうした方法は、重要なNASHの個々のパラメータースコア化(炎症、風船化、及び線維症)を自動化するための3つの独特な完全自動化機械学習応用による深層学習及び形態測定学的分析に基づく。また、本方法は、脂肪症定量化を自動化するための第4の完全自動化応用で終了してもよい。
【0025】
本発明の方法では、肝細胞風船化(HB)は、DLを使用して、病理学的に関連する細胞パターン(つまり、風船化肝細胞、細胞サイズ)を予測することにより評価される。第2の工程では、こうした予測を肝生検試料レベルで集約してもよい。
【0026】
本発明の方法では、小葉炎症(LI)は、DLを使用して、病理学的に関連する細胞パターン(つまり、炎症細胞)を予測することにより評価される。第2の工程では、こうした予測を肝生検試料レベルで集約してもよい。
【0027】
本発明の方法では、線維症は、DLを使用して、特に以下のCPA及び線維症隔壁形態測定学的定量化により更に確認することができる病理学的に関連する肝線維症領域を予測することにより評価される。線維症スコア化は、線維症の臨床予後を可能にすることができる。それは、本発明の自動化読取り及びスコア化方法による肝線維症のロバストなスコア化に基づく、NAFLD又はNASH患者の肝硬変及び肝臓転帰への肝線維症進展リスクの予知である。
【0028】
本発明の方法では、脂肪症(S)評価は、特にDLモデルを使用して病理学的に関連する細胞構造を予測することによる自動化プロセスであってもよい。
【0029】
そのようなパターンは、脂質胞を含む脂肪肝細胞のパーセンテージ又は脂肪症の面積(AOS)であってもよい。
脂肪症の面積は、空胞型構造であってもよい。
特定の実施形態では、空胞サイズは、少なくとも核のサイズである。
特定の実施形態では、脂肪症は、脂肪症の面積の自動測定により評価される。
第2の工程では、こうした予測を肝生検試料レベルで集約してもよい。
【0030】
機械学習応用全てについて、客観的であり、正確であり、及び再現可能な結果をもたらすように各DLモデル特性を批判的に設計した。
【0031】
したがって、特定の実施形態では、対象の肝細胞風船化の検出及び定量化は、パターン認識及びスコア化に基づく。HB=0:肝細胞風船化なしHB=1:中等度の肝細胞風船化、HB=2:重度の肝細胞風船化(Kleiner及びMakhlouf、2016年)。
【0032】
特定の実施形態では、対象の小葉炎症の検出及び定量化は、パターン認識及びスコア化に基づく。LI=0:小葉炎症なし、LI>0:小葉炎症あり、等級付けは、LI=1:軽度の小葉炎症、LI=2:中等度の小葉炎症、LI=3:重度の小葉炎症(Kleiner及びMakhlouf、2016年)。
【0033】
また、更なる実施形態では、本発明は、肝細胞風船化及び小葉炎症の個々のスコアを加算することにより、NASH活動性指数(AI)を決定及び病期分類するための方法を提供する:AI=0又は1:NASHなし、AI>1:少なくともHB=1及びLI=1である。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、肝生検の脂肪症スコアの決定及び最小脂肪症スコアが1であることに基づき、健康対象又は患者におけるNAFLDの臨床診断を可能にする。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、NAFLD患者の肝生検の活動性指数の決定に基づき、対象の、特にNAFLD患者におけるNASHの臨床診断を可能にする。AI≧2:少なくともHB=1及びLI=1である。
【0036】
別の実施形態では、対象の肝線維症の検出及び定量化は、肝生検のパターン認識及びスコア化に基づく。F=0:線維症なし、F>0:線維症検出、等級付けは、F=1:最小限の線維症、F=2:有意な線維症、F=3:中等度の線維症、F=4:重度の線維症。
【0037】
特定の実施形態では、対象の肝脂肪症の検出及び定量化は、肝生検のパターン認識及びスコア化に基づく:S=0:5%未満の脂肪症、S=1:6%~33%の脂肪症、S=2:34%~66%の脂肪症、S=3:66%超の脂肪症(Kleiner及びMakhlouf、2016年)。
【0038】
更なる特定の実施形態では、対象のミクロ脂肪症及びマクロ脂肪症の特徴付けは、肝生検のパターン認識、細胞サイズ及び形態学的分析、並びにスコア化に基づく。
【0039】
更なる実施形態では、門静脈、類洞、小葉静脈、又は他の部分構造に関する特定の組織学的パターンの位置特定及び配置は、肝臓病理に関する貴重な補完的情報を提供することができる。
【0040】
特定の実施形態では、組織学的プロファイルの分析を、完全に自動化することができる。別の実施形態では、組織学的NASHパラメーターの定量化を、自動化することができる。更なる実施形態では、組織学的NASHパラメーターの定量化を、バイオ画像分析ソフトウェア(特にQuPathプラットフォーム)で自動化及び統合することができる。
【0041】
更なる目的によると、本発明は、下記で規定されているNAFLD患者の活動性指数及び線維症並びにTBT患者とNTBT患者と間の差次的分析の、本明細書に提示されている自動化方法による信頼性の高い検出及び定量化に基づいて、対象を、NAFLD、NASH、又は肝線維肪症の治療の潜在的受容者(治療すべき(to be treated)、又はTBT)又は非受容者(治療しない(not to be treated)、又はNTBT)として分類するための方法に関する。
【0042】
また、別の態様によると、本発明は、線維症の臨床予後を可能にする。これは、肝生検の組織学的スライドに対する線維症DLモデル及び肝臓線維症形態測定学的モデル応用に基づく、NAFLD又はNASH患者の肝硬変及び肝臓転帰への肝線維症進展リスクの予知である。
【0043】
また、本発明は、対象の肝生検の組織学的スライドのDLモデルによるパターン認識及びスコア化、並びに同じ対象の過去に収集された生検との差次的分析に基づき、NAFLD活動性、NASH活動性、及び/又は肝線維症病期の進展をモニターするための方法を提供する。本方法には、自動化脂肪症スコア化が更に含まれていてもよい。
【0044】
また、本発明は、対象の肝生検のパターン及びスコアと同じ対象の過去に収集された別の生検のパターン及びスコアとの差次的分析による、肝生検の免疫組織学的(immunohitological)スライドに対する肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、線維症DLモデル、及び肝臓線維症形態測定学的モデル応用に基づき、対象のNAFLD、NASH、又は肝線維症の治療の効率を決定するための方法を提供する。本方法には、自動化脂肪症スコア化が更に含まれていてもよい。
【0045】
本発明は、肝生検の免疫組織学的スライドに対する肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、線維症DLモデル、及び肝臓線維症形態測定学的モデル応用、並びに応答者と不応答者との比較に基づき、特定の治療に対する対象の応答(応答対象)を予測する(NAFLD、NASH活動性、及び肝線維症病期の変化を予測する)ための方法を更に提供する。本方法には、自動化脂肪症スコア化が更に含まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】パターン認識及びスコア化方法開発のためのプロトコールの概略的全体像。 物理的スライドガラスの受付けから、自動化NASH及び肝臓スコアの予測までの計算病理学パイプラインの全体像。 第I段階:全スライドイメージング(WSI)。スライドをスライドガラススキャナーで走査し、保存、観察、及び分析を容易にするためにDICOM推奨に従って大きな多分解能多平面画像で保存する。 第II段階:WSIの前処理。5×のスライド表示を使用して、画像アーチファクト(気泡、埃、カバーガラス残屑)及び組織処理アーチファクト(組織折返し、組織残屑)を自動的に見出す。 第III段階:WSIからの生物医学的に関連する画像の抽出。ミクロパターン(細胞)及びマクロパターン(組織領域)のいずれかを示す画像を抽出して分析する。 第IV段階:NASH及び肝臓線維症自動スコア化。予測モデルを、まず、ミクロパターン(風船化及び炎症)及びマクロパターン(NASH線維症、肝臓線維症)で訓練する。次いで、こうしたモデルを、個々のミクロ及びマクロパターン画像に適用して、各生検スライドガラスについて、風船化肝細胞の数、炎症細胞の数、NASH線維症パターン、肝臓線維症コラーゲン比例面積、及び肝臓線維症形態学的指標(各マクロパターン毎の)を予測する。次いで、ミクロ及びマクロパターン定量化を、風船化スコア、炎症スコア、線維症スコア、肝臓コラーゲン比例面積、及び形態学的指数に変換する。
【
図2】炎症、風船化、線維症、及び肝臓線維症形態測定学的分析のための深層学習モデルを生成するために使用した患者試料及び画像データの詳細。
【
図3】全スライドイメージング(WSI)データ管理分析及び視覚化をカバーする、自家開発した計算病理学パイプラインの全体像。
【
図4】炎症、風船化、及び線維症深層学習モデルを開発するための訓練セット及び検証セットを示す細胞に基づく画像及び観察野(FOV)画像の例示。 A)左パネル、炎症モデルの訓練及び検証に使用した炎症細胞及び正常肝細胞核の訓練及び検証セットを示す細胞画像を例示する。右パネルは、風船化モデルの検証に使用した風船化肝細胞及び正常肝細胞の少数の例を例示する。B)深層学習線維症モデルにより自動的に認識される、訓練及び検証データセットにおける5つのパターンを表すFOVの例。バックグラウンドノイズ又はごくわずかな生検物質(<=5%)しか示さないFOVは全て、本発明者らの計算病理学パイプラインの初期前処理工程で自動的にフィルタリングされる。C)線維症形態測定学的分析の例示。左から右に、生画像(第1のグラフィック)を正規化し、前景コラーゲン染色(第2のグラフィック)を、バックグラウンドから抽出する。次いで、正規化したコラーゲン画像(第3のグラフィック)を分析して、線維症隔壁(第4のグラフィック)及びCPA測定(第5のグラフィック、青色円は、非隔壁コラーゲン区域を示す)の形態学的特性を抽出する。
【
図5】炎症、風船化、及び線維症の深層学習モデルの開発及び検証プロセスの結果。 A)左パネルは、学習サイクル反復に従って学習速度を動的に順応させるために使用した手法を概略的に示す。赤色実線は、費用/損失関数(つまり、陰性尤度)を学習サイクル反復の関数として表し、青色実線は、局所最小値に接近すると共に学習速度が順応すること(つまり、動的減少)を示す。強調されている赤色実線は、局所最小値パラメーターを精緻化するために実施された第2の学習プロセスであって、最適解にできるだけ近づくために数回繰り返されたプロセスを示す。B)学習反復サイクルの関数としての、訓練及び検証セットでの風船化モデルの性能。C)訓練及び検証セットでの訓練及び検証の強度レベル(本研究の全試料にわたる1強度レベル毎の1つの線がX軸に示されている)。D)訓練コホートにおけるCPAの半自動及び完全自動測定の相関性。
【
図6】自動化炎症スコア化パイプラインの検証の結果。A)10個の高倍率視野(HPF)の自動無作為選択の例示。(左から右に)第1の画像は、生肝生検画像(ヘマトキシリン及びエオシン、H&Eで染色)の例を示し、第2の画像は、顕微鏡下20×におけるHPFに相当する全ての考え得るHPFの生成を示し(バックグラウンド及び血管領域の大部分を示すHPFは青色で強調されており、炎症評価に有効なHPFは赤色で強調されている)、第3の画像は、炎症スコア化(つまり、自動及び手動)で選択された20個の無作為に選択されたHPF(全ての有効なHPF中から)を示す。B)WSI手法を使用した場合と標準的顕微鏡の場合との間の、10個の無作為に選択されたHPFにおける病巣の平均数の手動計数の相関性。C)顕微鏡法に基づく炎症スコアとWSIに基づく炎症スコアとの一致を示す表(ガイドライン(Kliener、2005年、6巻:1313~1321頁)により規定された平均病巣数から変換された)。D)各炎症スコアカテゴリー(X軸群)の1患者当たり(コホートI)の炎症細胞の総数(DLモデルにより自動的に認識されたような)の分布を示すグラフ。
【
図7】肝臓線維症CPA測定の開発及び検証プロセスの結果。 A)各線維症スコア患者群(コホートVI)の完全自動化CPA測定値の分布。B)中等度(F1及びF2)及び進行性(F3)線維症スコアを有する患者(コホートVI)の完全自動化隔壁形態学的特徴の分布。
【
図8】自動活動性スコア化パイプラインのデータワークフローの概略図。 A)自動スコア化パイプラインを検証するために使用した様々な研究コホートの例示。B)定量化プロセス前のQuPathオープンソースフレームワーク内の画像操作ワークフローの概略図。C)検証しようとする又は診断補助として使用しようとする炎症及び活動性スコア化のユーザに対する視覚的マッピングの例示。低分解能組織切片画像の円は、光学顕微鏡下20×拡大率の観察野のサイズ及び形状に相当する。この切片の下方部分には、炎症病巣及び風船化肝細胞事象が、エンドユーザが検証又は修正するために、QuPathにおいてどのように注釈されるかの例が図示されている。
【
図9】脂肪症、炎症、及び風船化結果のオープンソースプラットフォームQuPathへの統合。 A)ブラウジング、プロジェクトWSI管理、画像分析、パターン認識、及びデータ分析を可能にするQuPathユーザインタフェースの図。B)QuPathのデータ抽出及び分析能力を示す、H&Eで染色された肝臓切片に関する様々な画像分析出力。C)デジタルスライドにマッピングした、細胞に基づく結果(例えば脂質胞)の例示。
【
図10】NASH及び肝臓線維症自動スコア化の第IV段階の詳細及びワークフロー。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明者らは、組織学的画像の自動化パターン認識及びスコア化方法のための新しい方法を提供する。
【0048】
本発明は、肝細胞風船化、肝臓小葉炎症、NASH線維症、及び肝臓線維症組織学的パターンをFOVレベルで自動的に認識及びスコア化するための、デジタル化スライドでの深層学習フレームワークを提供する。
【0049】
このフレームワークは、デジタル化スライドでの脂肪症認識、定量化、スコア化、及び/又は位置特定に更に拡張することができる。
【0050】
本発明によると、用語「肝生検」は、損傷又は疾患の徴候を顕微鏡で検査するために、肝臓組織の小片を採取することを含む手順である。
【0051】
本発明によると、用語「組織学的画像」は、特定の細胞又は組織特徴の観察に好適な染色剤で染色された組織病理学的スライドである。例示的な染色は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)である。明視野顕微鏡で視覚化すると、ヘマトキシリンは核酸を染色して青色/紫色を呈し、エオシンはタンパク質を染色し、ピンク色/赤色を呈する。したがって、ほとんどの組織では、細胞核は青色であり、細胞質は、その構成物質に応じて無色~赤色~紫色と様々であり得る。
【0052】
本発明によると、用語「脂肪症」は、通常、光顕微鏡レベルにてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色に基づき、脂質を含む無色空胞として規定される。肝細胞性脂肪症は、NAFLDの証であり、現在、NAFLDの診断には、5%超の肝細胞での脂肪症が必要である。
【0053】
本発明によると、用語「マクロ脂肪症」又は「大滴性脂肪症」は、脂肪変性の最も一般的な形態に対応し、脂質の供給過剰により引き起こされる場合がある。
【0054】
本発明によると、用語「ミクロ脂肪症」又は「小滴性脂肪症」は、細胞に蓄積する小さな細胞質内脂肪空胞(リポソーム)により特徴付けられる。一般的な原因は、テトラサイクリン、妊娠時急性脂肪肝、ライ症候群、及びC型肝炎である。
【0055】
本発明によると、細胞又は組織構造の「参照画像」は、病理学者により決定される、前記細胞又は組織構造を代表するスナップショットである。そのような参照画像を様々な画像処理に供して、肝生検のスライドに存在する可能性が高い様々な細胞パターンを示す画像を得ることができる。例えば、参照画像を、拡大縮小、着色、及び/又は形態学的変換に供してもよい。更に、1つ又は複数の参照画像から、1セットの参照画像を生成してもよい。例えば、1つの参照画像を以前に言及したように変換して、1セットの参照画像を構成する、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9個、又は少なくとも10個の異なる変換画像を得ることができる。例示として、拡大縮小、着色、及び形態学的改変により、100個の個々の細胞又は組織参照画像から、各々が考え得る細胞又は組織パターンを表す1000個の参照画像のセットを生成することができる。
【0056】
拡大縮小、着色、及び形態学的線形改変は、参照画像の0から20%までの範囲であってもよい。
特定の実施形態では、拡大縮小、着色、及び形態学的線形改変は、参照画像の0から20%までの範囲であってもよい。
特定の実施形態では、形態学的及び拡大縮小改変は、つまり、0から20%までの線形及びアフィン変換の形態で適用されてもよい。
より特定の実施形態では、形態学的及び拡大縮小改変は、つまり、0から10%までの線形及びアフィン変換の形態で適用されてもよい。
特定の実施形態では、着色改変は、0から5%までの色度の無作為変換であってもよい。
【0057】
本発明によると、「染色及びパターン注釈に特異的な参照画像」は、組織の1病理学的特徴毎の染色正規化に使用される画像である。
【0058】
本発明によると、「染色及びNASHパラメーターに特異的な参照画像」は、1つのNASHパラメーター毎の染色正規化に使用される画像である。
【0059】
本発明によると、「パターン注釈」は、組織の病理学的特徴として規定される。NAFLD患者では、肝臓組織の特定の病理学的特徴は、肝細胞風船化、小葉炎症、脂肪症、肝線維症、又はNASH線維症であってもよい。
【0060】
本発明によると、「ミクロパターン」は、細胞構造、つまり風船化細胞、炎症細胞として規定される。
【0061】
本発明によると、「マクロパターン」は、隣接組織区域、つまり線維症として規定される。
【0062】
本発明によると、用語「肝細胞性風船化」は、通常、光学顕微鏡レベルにて、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色に基づき、正常肝細胞直径の1.5~2倍の、細胞質が希薄になった細胞拡大として規定される。肝細胞性風船化は、より一般的には、肝細胞細胞死のプロセスを指す。無論、本発明では、H&E以外の他の染色を使用して、前記特徴の存在を決定してもよい。
【0063】
本発明によると、用語「小葉炎症」は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された肝生検切片の顕微鏡検査で小葉炎症病巣(群化した炎症細胞)が存在することを指す。無論、本発明では、H&E以外の他の染色を使用して、前記特徴の存在を決定してもよい。
【0064】
本発明によると、用語「線維症」又は「肝線維症」は、染色された(例えば、ヘマトキシリン及びエオシン及びサフラン(Safran)(HES)染色、トリクローム染色、シリウスレッド染色、又はピクロシリウスレッド染色)肝生検切片の顕微鏡検査で線維性結合組織が存在することを指す。
【0065】
本発明によると、「活動性指数」は、肝細胞性風船化スコア及び小葉炎症スコアの合計を指す。
【0066】
本発明によると、「NAFLD活動性指数」又は「NAS」は、以下の通り、脂肪症スコア、肝細胞性風船化スコア、及び小葉炎症スコアの合計を指す。
- 脂肪症スコア: 0:<5%、1:5~33%、2:34~66%、3:>66%、
- 小葉炎症スコア(病巣/×20視野): 0:なし、1:<2、2:2~4、3 >4、
- 風船化変性スコア: 0:なし、1:少数、2:多数。
【0067】
本発明によると、用語「NAFLD」又は「非アルコール性脂肪肝疾患」は、過剰アルコール消費の非存在下で、炎症及び線維症の徴候の有無に関わらず、脂肪が肝臓に沈着している状態(肝臓脂肪症)を指す。
【0068】
本発明によると、用語「NAFLD活動性レベル」は、NAFLD進行を指し、本明細書で規定されている通りの脂肪症スコアの増加により規定される。また、NAFLD活動性レベルは、NASH又は線維症へと向かうNAFLD進行、及びNASH重症度を指す。
【0069】
本発明によると、用語「NASH」又は「非アルコール性脂肪性肝炎」は、過剰アルコール消費の非存在下で、及びウイルス性肝炎(HCV、HBV)のような他の肝臓疾患を除外した後で、組織学的検査において、肝脂肪症、肝細胞風船化、及び肝臓炎症が同時に存在すること(つまり、NAS≧3、脂肪症が少なくとも1点、小葉炎症が少なくとも1点、及び肝細胞風船化スコアが少なくとも1点)により特徴付けられるNAFLD状態を指す。
【0070】
本発明によると、用語「NASH活動性レベル」は、NASH進行を指し、S=1、LI=1、及びHB=1である、NASHを規定するための最小限のパラメーターを超えて、NASスコアが増加することにより規定される。また、NASH活動性レベルは、不可逆的なNASH及び/又は線維症へと向かうNASH進行及びNASH重症度を指す。
【0071】
本発明によると、用語「活動性NASH」は、脂肪症が少なくとも1点、小葉炎症が少なくとも1点、及び肝細胞風船化スコアが少なくとも1点である、NAS≧4により特徴付けられるNASHを指す。
【0072】
本発明によると、「治療すべき対象」又は「TBT対象」は、その疾患活動性スコア(例えば、NAS又は活動性指数)及び/又は肝線維症病期により、対象がNAFLD、NASH、及び/又は肝線維症の治療に適格であるとされる対象である。反対に、「治療しない対象」又は「NTBT対象」は、その疾患活動性スコア(例えば、NAS又は活動性指数)及び/又は肝線維症病期が、NAFLD、NASH、及び/又は肝線維症の治療を受けるに足るほど高くない対象である。したがって、TBT対象は、NAFLD、NASH、及び/又は肝線維症治療のための「受容者」又は「潜在的受容者」とも呼ばれる。本発明では、優先的なTBT対象は、以下の通りである:
i)NASHを有する対象、
ii)活動性NASHを有する対象、
iii)肝臓の有意な、中等度の、又は重度の線維症を有する対象、
iv)NASH及び線維症を有する対象。
【0073】
この規定は、本発明の様々な変形形態を画定する種々のNASH活動性値及び線維症病期を包含する。
【0074】
本発明の優先的な変形形態は、以下の通り詳述される。
【0075】
第1のTBT変形形態(TBT2):
TBT2対象は、以下の肝生検由来等級を示す対象として規定される:
- 脂肪症スコア≧1
- 肝細胞風船化スコア≧1
- 小葉炎症スコア≧1
- NAS(NAFLD活動性スコア)≧4
- 線維症病期≧2(2、3、又は4に等しい、特に2又は3の線維症病期等)。
【0076】
その延長線上で、NTBT2対象は、脂肪症スコア、肝細胞風船化スコア、小葉炎症スコア、NAS、及び/又は線維症病期が少なくとも1点未満の等級である点で、TBT2対象と異なる。
【0077】
第2のTBT変形形態(TBT1):
TBT1対象は、以下の肝生検由来等級を示す対象として規定される:
- 脂肪症スコア≧1
- 肝細胞風船化スコア≧1
- 小葉炎症スコア≧1
- NAS(NAFLD活動性スコア)≧4
- 線維症病期≧1(1、2、3、又は4に等しい線維症病期等)。
【0078】
その延長線上で、NTBT1対象は、脂肪症スコア、肝細胞風船化スコア、小葉炎症スコア、NAS、及び/又は線維症病期が少なくとも1点未満の等級である点で、TBT1対象と異なる。
【0079】
第3のTBT変形形態(TBT7):
TBT7対象は、以下の肝生検由来等級を示す対象として規定される:
- 脂肪症スコア≧1
- 肝細胞風船化スコア≧1
- 小葉炎症スコア≧1
- NAS(NAFLD活動性スコア)≧4
- 線維症病期=1b、1c、2、3、又は4。
【0080】
その延長線上で、NTBT7対象は、脂肪症スコア、肝細胞風船化スコア、小葉炎症スコア、NAS、及び/又は線維症病期が少なくとも1点未満の等級である点で、TBT7対象と異なる。
【0081】
本発明によると、用語「CPA」又は「コラーゲン比例面積」は、コラーゲン染色面積の総組織面積に対する合計割合である。標識は、ピクロシリウスレッド又は他の色素(つまり、トリクローム)であってもよい。CPAは、総病理学的コラーゲン面積の総生検組織面積に対する比として、生検レベルで報告される。CPAは、非アルコール性脂肪肝疾患を有する患者の長期転帰の独立予測因子である。
【0082】
本発明によると、用語「DL」又は「深層学習」は、機械学習研究の新しい分野であり、機械学習をその元々の目標の1つ:人工知能へとより近づける目的で導入されている。深層学習は、パターン分析及び分類のための、画像等のデータの解明を支援する多レベルの象徴化及び抽象化の学習に関する。
【0083】
本発明によると、用語「CNN」又はコンボリューションニューラルネットワークは、視覚的画像類の分析(画像認識及び分類)に適用されている機械学習の深層フィードフォワード人工ニューラルネットワークの一クラスである。
【0084】
本発明によると、用語「DLモデル」は、パターン認識又は分析及び分類のためにCNNを使用することができる。
【0085】
本発明は、対象の肝細胞風船化の発症及び等級を特徴付けるための方法であって、肝細胞風船化DLモデルを使用して、前記対象の肝生検の肝細胞風船化スコアを決定する工程を含む方法に関する。
【0086】
また、本発明は、対象の肝細胞小葉炎症の発症及び等級を特徴付けるための方法であって、小葉炎症DLモデルを使用して、前記対象の肝生検の小葉炎症スコアを決定する工程を含む方法に関する。
【0087】
本発明は、対象の脂肪症の発症及び等級を特徴付けるための方法であって、自動化プロセスを使用して、前記対象の肝生検の脂肪症スコアを決定する工程を含む方法に関する。
【0088】
また、本発明は、脂肪症、肝細胞風船化、小葉炎症、NASH線維症、及び肝線維症のための専用正規化方法に関する。
【0089】
本発明は、肝生検のパターン認識、細胞サイズ及び形態学的分析、並びにスコア化に基づく、対象のミクロ脂肪症及びマクロ脂肪症の特徴付けに関する。
【0090】
また、本発明は、門静脈、類洞、小葉静脈、又は他の部分構造に関する特定の組織学的パターンの位置特定及び配置に関し、肝臓病理に関する貴重な補完的情報を提供することができる。
【0091】
本発明は、組織学的プロファイル分析の完全自動化に関する。
【0092】
また、本発明は、組織学的NASHパラメーターの定量化の自動化に関する。
【0093】
本発明は、バイオ画像分析ソフトウェア(特に、QuPathプラットフォーム)での、組織学的NASHパラメーターの定量化の自動化及び統合に更に関する。
【0094】
また、本発明は、対象のNASH活動性指数を決定及びスコア化するための方法であって、前記対象の肝生検の肝細胞風船化スコア及び小葉炎症スコアを決定する工程を含む方法に関する。
【0095】
また、本発明は、NAFLD患者のNASHを診断するための方法であって、DLモデルを使用して、前記対象の肝生検の肝細胞風船化スコア及び小葉炎症スコアを決定する工程を含む方法に関する。AI=0又は1:NASHなし、AI>1:少なくともHB=1及びLI=1。
【0096】
また、本発明は、対象の発症及び肝線維症病期を決定するための方法であって、前記対象の肝生検のDL分析のための線維症スコア、NASH線維症スコア、並びにCPA及び形態測定学的分析のための肝臓線維症スコアを決定する工程を含む方法に関する。
【0097】
肝線維症は、ほとんどの慢性肝臓疾患の共通の結果であるため、本発明は、ウイルス性肝炎(HBV、HCV...)、アルコール性脂肪性肝炎、胆道疾患(原発性胆道胆管炎、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、ウイルソン病、アルファ1アンチトリプシン欠損症)等の他の線維症肝臓疾患による有意な又は進行性の肝線維症を診断及び検出することにも関する。
【0098】
また、本発明は、対象を、NASH及び/又は線維症の治療の潜在的受容者(TBT)又は非受容者(NTBT)として分類するための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0099】
また、本発明は、対象の治療の非存在下でのNAFLD又はNASH活動性進展のリスクを予知するための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0100】
また、本発明は、対象の治療の非存在下での肝硬変及び肝臓臨床転帰への線維症進展のリスクを予知するための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0101】
また、本発明は、対象のNAFLD又はNASH活動性の進展(つまり、進行又は後退)をモニターするための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0102】
また、本発明は、対象の肝線維症の進展(つまり、進行又は後退)をモニターするための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0103】
また、本発明は、対象のNAFLD、NASH、及び/又は肝線維症の特定の治療に対する患者の応答を予測するための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用する工程を含む方法に関する。
【0104】
したがって、本発明は、対象のNAFLDを診断及び検出するための方法であって、肝細胞風船化DLモデル、小葉炎症DLモデル、及び線維症DLモデル、線維症形態測定学的モデル、並びに脂肪症定量化を、前記対象の肝生検に適用することに基づく方法に関する。
【0105】
本発明によると、
- 肝臓脂肪症の発症を特徴付けるための
- 対象の肝細胞性又は肝細胞風船化の発症を特徴付けるための
- 対象の小葉炎症の発症を特徴付けるための
- 対象の肝線維症及びNASH線維症の発症を特徴付けるための
- 対象のNASHの発症を特徴付けるための
方法が提供される。
【0106】
したがって、本発明によると、
- 対象の肝細胞性又は肝細胞風船化の発症を特徴付けるための
- 対象の小葉炎症の発症を特徴付けるための
- 対象の肝線維症及びNASH線維症の発症を特徴付けるための
- 対象のNASHの発症を特徴付けるための
方法が提供される。
【0107】
加えて、本発明によると、
- 対象を、脂肪症及び/又はより進行性の肝臓脂肪症を有すると診断するための、
- 対象を、肝細胞性風船化及び/又はより進行性の肝細胞性風船化スコアを有すると診断するための、
- 対象を、小葉炎症及び/又はより進行性の小葉炎症スコアを有すると診断するための、
- 対象を、肝線維症及び/又はより進行性の肝線維症病期並びにNASH線維症を有すると診断するための、
- NAFLD患者の中で対象を、NASHを有すると診断するための、
方法が提供される。
【0108】
更に、本発明によると、
- 対象を、肝細胞性風船化及び/又はより進行性の肝細胞性風船化スコアを有すると診断するための、
- 対象を、小葉炎症及び/又はより進行性の小葉炎症スコアを有すると診断するための、
- 対象を、肝線維症及び/又はより進行性の肝線維症病期並びにNASH線維症を有すると診断するための、
- NAFLD患者の中で対象を、NASHを有すると診断するための、
方法が提供される。
【0109】
更に、本発明による方法は、
- 脂肪症スコアを決定すること、
- 肝細胞風船化スコアを決定すること、
- 小葉炎症スコアを決定すること、
- NASH関連活動性指数を決定すること、
- 対象のNASH線維症病期を決定すること、
- 対象の肝臓線維症病期を決定すること、
- 対象のNASHの重症度を決定すること、
- NASH患者の病理の進行又は後退を決定すること
を可能にする。
【0110】
更に、本発明による方法は、
- 肝細胞風船化スコアを決定すること、
- 小葉炎症スコアを決定すること、
- NASH関連活動性指数を決定すること、
- 対象のNASH線維症病期を決定すること、
- 対象の肝臓線維症病期を決定すること、
- 対象のNASHの重症度を決定すること、
- NASH患者の病理の進行又は後退を決定すること
を可能にする。
【0111】
加えて、本発明によると、
- ミクロ脂肪症又はマクロ脂肪症を決定するための
- 小葉炎症又は門脈炎症を決定するための
- 類洞周囲線維症、門脈周囲線維症、門脈線維症を決定するための
- 組織生検のNASHパラメーターの具体的な位置(病巣の位置、風船化細胞の位置...)を決定するための
- 興味深い生物学的情報の定性的マッピングを決定するための
方法が提供される。
【0112】
更に、本発明による方法は、
- 対象を、NAFLD治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、NASH治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、肝線維症治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、肝細胞性風船化治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、小葉炎症治療の受容者又は非受容者に分類すること
を可能にする。
【0113】
更に、本発明による方法は、
- 対象を、NASH治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、肝線維症治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、肝細胞性風船化治療の受容者又は非受容者に分類すること、
- 対象を、小葉炎症治療の受容者又は非受容者に分類すること
を可能にする。
【0114】
更に、本発明による方法は、
- NAFLD疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- NASH疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 線維症疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 肝細胞性風船化疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 小葉炎症疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること
を可能にする。
【0115】
更に、本発明による方法は、
- NASH疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 線維症疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 肝細胞性風船化疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること、
- 小葉炎症疾患を治療するための薬物投与に基づく医学的治療の有効性を評価すること
を可能にする。
【0116】
更に、本発明による方法は、
- 医学的治療の投与後のNAFLD患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後のNASH患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の線維症を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の肝細胞性風船化疾患を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の小葉炎症疾患を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること
を可能にする。
【0117】
更に、本発明による方法は、
- 医学的治療の投与後のNASH患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の線維症を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の肝細胞性風船化を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること、
- 医学的治療の投与後の小葉炎症疾患を罹患している患者の病理の進行又は後退を決定すること
を可能にする。
【0118】
更に、本発明による方法は、
- 患者が、NAFLD疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、NASH疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、肝線維症を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、肝細胞性疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、小葉炎症疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること
を可能にする。
【0119】
更に、本発明による方法は、
- 患者が、NASH疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、肝線維症を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、肝細胞性疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること、
- 患者が、小葉炎症疾患を治療するための医学的治療に対して受容性となるか否か、つまり(潜在的な)応答者であるか又は(潜在的な)不応答者であるかを予測すること
を可能にする。
【0120】
一部の実施形態では、対象がNAFLDを有するか否かを決定するための方法は、対象、特に評価された状態を有することが疑われる対象から肝生検を準備する工程、及びDLモデルを、評価された状態の存在を示す脂肪症パラメーターに適用する工程を含む。
【0121】
一部の実施形態では、対象が、NASHを有するか、活動性NASHを有するか、若しくは有意な肝線維症を有するか、若しくは小葉炎症を有するか、若しくは肝細胞風船化を有する否かを決定するための、又は対象が、特定の薬物に対する薬物受容者であるか(TBT)若しくは潜在的な応答者であるかを決定するための方法は、評価された状態を有することが疑われる対象から肝生検を準備する工程、及びDLモデルを、評価された状態の有無、又は対象をNASH、若しくは有意な肝線維症、若しくは小葉炎症、若しくは肝細胞風船化を有すると診断すること、又は対象が潜在的な薬物受容者(TBT)又は応答者であることを示す個々の組織学的パラメーターに適用する工程を含む。
【0122】
特定の実施形態では、対象はNAFLDを罹患しており、本発明の方法は、それによりNAFLD疾患を治療するための薬物の有効性を決定すること、対象をNAFLD治療に対する応答者/不応答者に分類すること、又は対象のNAFLD状態の進展をモニターすることを可能にする。
【0123】
特定の実施形態では、対象はNASHを罹患しており、本発明の方法は、それによりNASH疾患を治療するための薬物の有効性を決定すること、対象をNASH治療に対する応答者/不応答者に分類すること、又は対象のNASH状態の進展をモニターすることを可能にする。
【0124】
パターン認識までの組織学的画像の前処理:
本発明の方法は、組織学的画像を分析する。
【0125】
組織学的画像は、染色された組織病理学的スライドである。当業者であれば、そのような画像を生成する方法を知っている。主要な工程は、組織収集、化学的及び物理的に組織を安定させることを含む処理、支持材料のブロックでの包埋、切片化、及び染色して造影することである。
【0126】
特定の実施形態では、染色の実施は、細胞の成分又は構成物質の区別を可能にする。例えば、染色は、核、サイトゾル、及び組織成分の区別を可能にするのに好適であってもよい。
【0127】
例示的な染色としては、オイルレッドO、ヘマトキシリン及びエオシン、シリウスペッド(Sirius Ped)、トリクローム、ヘマトキシリン/エオシン/サフラン(HES)、ピクロシリウスレッド、ケラチン18、蛍光染色剤、及び免疫染色が挙げられる。
【0128】
特定の実施形態では、本発明で実施される染色は、第1のスライドではヘマトキシリン及びエオシン(H&E)であり、第2のスライドではピクロシリウスレッドである。
特定の実施形態では、染色は、1つのスライドではトリクロームであってもよい。
【0129】
次いで、組織学的画像はデジタル化される。
【0130】
画像デジタル化
本発明の方法は、肝生検のデジタル化画像の分析に基づく。画像取得は、任意の画像取得手段により実施することができる。例えば、画像は、全スライドスキャナー又はカメラでデジタル化される。
【0131】
特定の実施形態では、取得は、高解像度全スライドイメージング(WSI)を生成する。そのような高解像度は、2,000×2,000ピクセル~2,000×200,000ピクセル等の1,000×1,000ピクセル~1,000×200,000ピクセル、例えば10,000×20,000ピクセル~10,000×150,000ピクセル等の3,000×5,000ピクセル~3,000×150,000ピクセルの範囲であってもよい。例えば、1ピクセル当たり0.25μmの分解能の5mm×35mmスライドの場合、20,000×140,000ピクセルの解像度を有する画像を生成することができる。
【0132】
別の実施形態では、独自フォーマット(例えばsvs(Leica社)型又はmrx(3DHistech社)型)でデジタル化を実施し、次いでデジタル画像を、計算病理学ワークフローにより好適な別のフォーマットに(特に、タイルベースのDICOMフォーマット)変換してもよい。そのような好適なフォーマットとしては、DICOMフォーマット等のタイルベースのフォーマットが挙げられる。
【0133】
別の実施形態では、デジタル化は、タイルベースのフォーマット、例えばDICOMフォーマット等の、計算病理学ワークフロー又はバイオ画像分析ソフトウェアに好適なフォーマットで直接実施される。
【0134】
次いで、デジタル化スライドを、より低いサイズのタイルに分解する。例えば、デジタル化スライドを、そのサイズが目的の組織又は細胞パターンに相当するタイルに分解してもよい。特定の実施形態では、タイルは、細胞の期待サイズよりもわずかにより大きなサイズである(細胞が、風船化して、正常細胞よりも2倍大きなサイズを有する可能性があるという事実、又は生検スライド調製により細胞が変形する場合があるという事実を考慮に入れて)。例えば、512×512ピクセルのサイズを有するタイルを生成してもよい。
【0135】
目的領域の識別
分析には、変動性の各原因が重要な障害であり得る。固定が不良な組織は良好に切断されず、ぼやけた外観を有し、縁端等の重要な手がかりが除去されてしまう場合がある。乾燥した組織は、収縮する場合があり、形態学的特徴及び染色造影が不良になる場合がある。切片化アーチファクトは、最も一般的に遭遇するものの一部であり、組織の折返し、切れない刃によるチャッタリングアーチファクト(明領域及び暗領域の繰り返しとして見られる)、又は組織片の欠失をもたらす場合がある。
【0136】
本発明の方法は、分析しようとする組織学的画像の選択された組織帯に対して実施される。
【0137】
特定の実施形態によると、組織とスライドのバックグラウンド総面積(例えば、mm2で表される)との区別を可能にするために、パターン認識モデルが、スライド画像に対して実施される。空洞を除く生検部分の外郭線及びスライドの非組織区域が画定され、組織生検総面積が示される。組織生検区域の補部分が、スライドバックグラウンド総面積として画定される。
【0138】
特定の実施形態では、パターン認識は、全スライド画像に適用される。
更に特定の実施形態では、パターン認識は、全スライド画像の5×表示に対して実施される。
【0139】
別の特定の実施形態では、パターン認識は、ピクロシリスレッド(Picrosirus Red)等で細胞区画及び/又は線維症を区別するために染色された全スライド画像の5×表示に適用される。
【0140】
パターン認識モデルは、組織折返しアーチファクト並びに気泡、組織残屑、及び埃を表す小さな隔離された区域を除外するために適用される。
【0141】
本発明の方法は、分析しようとする組織学的画像の選択された組織帯を提供する。
【0142】
染色正規化
染色は、スライドに色及び造影を生成するため、変動性の重要な原因であり得る。染色アーチファクトとしては、ヘマトキシリン又はエオシンのいずれかによる弱い染色、又はヘマトキシリンの沈殿(顕微鏡下では青色の塊として見られる)、又はヘマトキシリン、エオシン、又は両方のいずれかによる染色の欠如を挙げることができる。こうしたアーチファクトは、病理学者により十分に理解されるが、色に依存する自動化組織学的分析システムでは問題となる場合がある。したがって、自動化組織学的画像分析の場合、好ましくは染色正規化が実施される。
【0143】
特定の実施形態では、染色正規化には、ヒストグラム平坦化等の色正規化技法が使用される。
別の特定の実施形態では、組織学的画像を、ヘマトキシリンのみ(Hのみ)の画像及びエオシンのみ(Eのみ)の画像に分離し(色デコンボリューションと呼ばれることもある)、次いでそうした画像を別々に正規化し、次いで再結合する。
別の実施形態では、異なる手法が、単一染色画像を直接評価することになる。
別の実施形態では、異なる手法は、色反転技法である。
【0144】
好ましい実施形態では、20×の画像にて、染色を任意の追加の染色、対比染色からデコンボリューションし、その染色及びパターン注釈に特異的な参照画像に対して正規化する。
好ましい実施形態では、標準化された画像は、自動化分析を可能にする。
【0145】
細胞構造の識別
本発明の方法は、標準化された組織学的画像の細胞構造を識別することができる。
【0146】
核検出
組織学的画像における核検出は、核が密接にクラスター化し、細胞タイプに応じてサイズ、形状、及び色が様々であり得るため、困難である。核検出に対する基本的な手法は、ピクセルの色クラスタリングを含む。
【0147】
特定の実施形態では、20×の画像にて、細胞核の染色を、任意の追加の染色、対比染色からデコンボリューションする。
【0148】
核染色形態学的操作を適用して、円形、丸形の構造を増強する。
【0149】
別の実施形態では、能動輪郭を使用する他の手法を使用して、核の初期色区分化を精緻化するか、核シード点を検出するか、又は核検出を分類問題としての枠組みとしてとらえる。
【0150】
特定の実施形態では、面積がある閾値(10ピクセル)未満の核は、円形(完全な真円性との相関性=0.7)か又は丸形(完全な真円性との相関性=0.7)かに関わらず、フィルタリングされる。
【0151】
好ましい実施形態では、核染色形態学的操作を適用して、円形、丸形の構造を増強し、得られた画像を、全ての細胞核を区分するための適応性でロバストなバックグラウンド区分化アルゴリズムに供する。面積がある閾値未満の円形及び丸形の核をフィルタリングする。
【0152】
サイトゾル拡大位置特定
サイトゾル拡大を見出すための手法は、ピクセルの色クラスタリングを含む。
特定の実施形態では、核の中心を使用して、反復マスク漸増プロセス(iterative mask growing process)によりサイトゾルの拡大をシミュレートし、染色がもはやないこと又は近隣細胞の境界に到達したことを提供する。
別の実施形態では、核の中心及び追加の染色を使用して、反復マスク漸増プロセスによりサイトゾルの拡大をシミュレートし、染色がもはやないこと又は近隣細胞の境界に到達したことを提供する。
拡大した細胞区域を元の画像から抽出し、細胞スナップショット画像を画定する。細胞スナップショットは、境界ボックスとして画定される。
【0153】
個々の細胞画像(ミクロパターン)の抽出
本発明の方法は、標準化された組織学的画像の細胞構造から個々の細胞画像を抽出する。
細胞スナップショットを抽出するための現行方法は、組織学的に特異的な特徴に依存する。
特定の実施形態では、正規化は、細胞構造の参照画像を用いて個々の画像に対して実施される。
好ましい実施形態では、細胞スナップショットが抽出され、参照画像色度プロファイル(1染色組合せ毎に1つのプロファイル)に対して正規化される。
例示的な正規化プロセスは、細胞スナップショットの主要な染色色度チャネルのデコンボリューション、参照プロファイル染色(stining)色度チャネルのデコンボリューション、参照プロファイルに関する細胞スナップショットの各チャネルのロバストなzスコア化、及び正規化されデコンボリューションされたチャネルの1つの細胞スナップショット画像への融合を含む。
【0154】
隣接組織区域(マクロパターン)の抽出
また、本発明の方法は、標準化された組織学的画像の細胞構造から隣接細胞組織区域を抽出することができる。
隣接組織を見出すための基本的な手法は、ピクセルの色クラスタリングを含む。
特定の実施形態では、各細胞画像又はFOVを、参照画像で正規化する。
特定の実施形態では、正規化は、参照画像色度プロファイルを用いて個々の画像に対して実施される。
好ましい実施形態では、ミクロパターンが抽出され、参照画像色度プロファイル(1染色組合せ毎に1つのプロファイル)に対して正規化される。
正規化プロセスは、隣接細胞組織区域の主要な染色色度チャネルのデコンボリューション、参照プロファイル染色色度チャネルのデコンボリューション、参照プロファイルに関する隣接細胞組織区域の各チャネルのロバストなzスコア化、及び正規化されデコンボリューションされたチャネルの1つの隣接細胞組織区域画像への融合を含む。
【0155】
肝細胞風船化をスコア化するための方法
画像取得、デジタル化、目的領域の識別、正規化、並びにミクロ及びマクロパターンの位置特定が、事前に実施される。
好ましい実施形態では、染色は、H&Eで実施される。
更に特定の実施形態では、読取りは、×20倍率の画像で実施される。
【0156】
本発明の方法は、自動的に、風船化細胞を識別し、風船化細胞の数を定量化し、正規化された組織学的全組織画像の肝細胞風船化をスコア化することができる。風船化肝細胞のパターン認識モデル及び形態学的基準に基づいて風船化肝細胞と正常肝細胞とを区別するためのパターン認識手法及び風船化細胞検出DLモデルが適用される。
ミクロパターン風船化肝細胞のモデルが、全ての細胞スナップショットに対して適用され、細胞構造の参照画像に対するクラス確率及び予測クラスラベル(最も確率が高いラベル)が計算される。
特定の実施形態では、最適な風船化細胞検出DLモデルで風船化肝細胞を識別する予測確率は、90%よりも高い。
好ましい実施形態では、最適な風船化細胞検出DLモデルで風船化肝細胞を識別する予測確率は、95%よりも高い。
特定の実施形態では、細胞質のケラチン8/18免疫染色の喪失により、風船化細胞の識別を確認することができる。
【0157】
風船化細胞の総数は、細胞の総数に対する風船化細胞のパーセンテージとして、又はNASH臨床研究ネットワーク(CRN)による肝細胞風船化(Balloning)スコアとして表すことができる。肝細胞風船化スコア=0は、NAFLD活動性スコアの「なし」に相当し、肝細胞風船化スコア=1は、「少数の風船化細胞」に相当し、肝細胞風船化スコア=2は、「多数の細胞/顕著な風船化(balloning)」に相当する。
【0158】
特定の実施形態では、肝細胞風船化スコア=0は、全肝細胞中の風船化肝細胞が平均0.02%であることに相当してもよく、肝細胞風船化スコア=1は、風船化肝細胞が平均0.11%であることに相当してもよく、肝細胞風船化スコア=2は、風船化肝細胞が平均0.51%であることに相当してもよい。
【0159】
肝細胞風船化のパターン認識及びスコア化風船化細胞DLモデルは、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合してもよい。
【0160】
風船化細胞の位置は、興味深い生物学的情報を提供することができる。
特定の実施形態では、パターン認識及びスコア化風船化細胞DLモデル(風船化パイプライン)が、計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合されている場合、興味深い生物学的情報の定性的マッピングを実施することができる。
【0161】
小葉炎症をスコア化するための方法
画像取得、デジタル化、目的領域の識別、正規化、並びにミクロ及びマクロパターンの位置特定が、事前に実施される。
好ましい実施形態では、染色は、H&E又はH&E及びピクロシリウスレッドで実施される。
更に特定の実施形態では、読取りは、×20倍率の画像で実施される。
特定の実施形態では、顕微鏡下の20×高倍率視野に相当する全てのFOVが決定される。
【0162】
目的の領域を有する観察野(FOV)は、コンピュータにより全スライド画像で無作為に決定される。
【0163】
特定の実施形態では、全スライド画像の全てのFOVが決定される。特に、前記FOVは、顕微鏡下の20×高倍率視野に相当する。
【0164】
更に特定の実施形態では、FOVの数は、コンピュータプログラムにより自動的に及び無作為に選択される。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は40個よりも多くのFOVを、無作為に選択してもよい。特定の実施形態では、選択されるFOVの数は、5~15個のFOVの範囲である。特定の実施形態では、この数は、全スライド画像で選択される目的の領域を有する10個のFOV等、8から12個までのFOV、特に9~11個のFOVの範囲である。
【0165】
こうした無作為に選択されたFOVは、その関心が、実験された操作者(experimented operator)により更に検証され、それにより実験された操作者への支援を提供することができるか、又は本発明のモデルにより自動的に検証することができる更なる研究の潜在的な領域の自動選択を表す。
【0166】
特定の実施形態では、FOVの選択は、1人又は複数のユーザにより手動で指定されたFOVを更に含む。
【0167】
門脈領域が、小葉炎症の読取りから除外される。
特定の実施形態では、目的の領域を有する観察野は、非門脈領域の1セットの無作為に生成されたFOVから選択される。
より特定の実施形態では、目的の領域を有する観察野は、小葉内領域の1セットの無作為に生成されたFOVから選択される。
【0168】
特定の実施形態では、観察野は、モデルにより選択され、モデルにより又は実験された操作者により検証される。
【0169】
特定の実施形態では、観察野は、炎症細胞DLモデルにより小葉内領域で生成され、選択された視野、特に10個の視野を検証するために実験された注釈者に対して無作為に提案される。
【0170】
本発明の方法は、自動的に、炎症病巣と識別し、炎症病巣の数を定量化し、正規化された組織学的画像の小葉炎症をスコア化することができる。炎症細胞と他の細胞とを区別するためのパターン認識手法及び炎症細胞DLモデルが適用される。デジタル化された生検画像から門脈領域面積を認識するためのパターン認識手法及びモデルが適用される。
ミクロパターン炎症細胞のモデルが全ての細胞スナップショットに対して適用され、細胞構造の参照画像に対するクラス確率及び予測クラスラベル(最も確率が高いラベル)が計算される。
【0171】
特定の実施形態では、最適な炎症細胞検出モデルで炎症細胞又は病巣を識別する予測確率は、90%よりも高い。
好ましい実施形態では、最適な炎症細胞検出モデルで炎症細胞又は病巣を識別する予測確率は、95%よりも高い。
【0172】
10個の選択された観察野での炎症病巣の平均数は、小葉炎症スコアとして変換される。特定の実施形態では、スコアは、NASH臨床リサーチネットワーク(CRN)によるものである。小葉炎症スコア=0はNAFLD活動性スコアでの「病巣なし」に相当し、小葉炎症スコア=1は「病変2個未満/200×」に相当し、小葉炎症スコア=2は「病巣2~4個/200×」に相当し、小葉炎症スコア=3は「病巣4個超/200×」に相当する。
【0173】
特定の実施形態では、10個のFOVでの炎症病巣の平均数は、スコアとして変換されず、線形発展に従う。
【0174】
肝臓炎症のパターン認識及びスコア化炎症細胞DLモデル化は、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合してもよい。
【0175】
炎症細胞又は病巣の位置は、興味深い生物学的情報を提供することができる。
特定の実施形態では、パターン認識及びスコア化炎症細胞DLモデル(炎症パイプライン)が、計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(特にQuPath)に統合されている場合、興味深い生物学的情報の定性的マッピングを実施することができる。
【0176】
脂肪症をスコア化するための方法
画像取得、デジタル化、目的領域の識別が実施される。
好ましい実施形態では、染色は、H&Eで実施される。
更に特定の実施形態では、読取りは、×5倍率の画像で実施される。
【0177】
各観察野について染色正規化が実施され、細胞構造と空胞とを区別するための閾値が決定される。
本発明の方法は、自動的に、脂質胞を識別し、脂質の面積を定量化し、正規化された組織学的画像の脂肪症をスコア化する。脂肪症区域をパターン認識及びスコア化するための方法は、脂質胞のパターン認識モデル及び形態学的基準に基づいて、脂質胞と白色区域とを区別する。全ての細胞スナップショットに対してミクロパターン脂質胞のモデルが適用される。
特定の実施形態では、脂質胞と細胞構造とを区別するために、1観察野毎に1つの閾値が決定される。
パターン認識手法及び脂肪症面積モデルのスコア化は、形態学的に脂質胞と類似しない白色区域(小さ過ぎるか又は大き過ぎて、事前に規定されている形態学的特性に相当しない)を選択的にフィルタリングして取り除く。
【0178】
脂肪症の総面積は、NASH臨床研究ネットワーク(CRN)に従って脂肪症スコアとして表される。脂肪症スコア=0はNAFLD活動性スコアでの「<5%」に相当し、脂肪症スコア=1は「5~33%」に相当し、脂肪症スコア=2は「33~66%」に相当し、脂肪症スコア=3は「>66%」に相当する。
【0179】
特定の実施形態では、脂肪症の総面積は、組織領域全体のパーセンテージとして表される。
特定の実施形態では、ミクロ脂肪症を、マクロ脂肪症と区別してもよい。
特定の実施形態では、脂肪症の位置は、興味深い生物学的情報を提供することができる。
【0180】
別の特定の実施形態では、脂肪症細胞数を、脂肪症の総面積の代わりにしてもよい。
【0181】
脂肪症のパターン認識及びスコア化脂肪症面積モデルは、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合してもよい。
【0182】
特定の実施形態では、パターン認識及びスコア化脂肪症面積DLモデルが、計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合されている場合、興味深い生物学的情報の定性的マッピングを実施することができる。
【0183】
NASH線維症をスコア化するための方法
画像取得、デジタル化、目的領域の識別、正規化、並びにミクロ及びマクロパターンの位置特定が、事前に実施される。
好ましい実施形態では、染色は、H&E又はH&E及びピクロシリウスレッドで実施される。
更に特定の実施形態では、読取りは、×5倍率の画像で実施される。
【0184】
全スライド画像の事前に正規化されたFOV全てに、マクロパターンNASH線維症に対するパターン認識及びスコア化NASH線維症モデルが適用される。
【0185】
NASH CRN/Kleinerに基づくNASH線維症スコアが規定される:線維症病期=0「なし」、線維症病期=1「類洞周囲(軽度~中等度)又は門脈周囲」、線維症病期=2「類洞周囲及び門脈周囲」、線維症病期=3「架橋線維症」、線維症病期=4「肝硬変」。
【0186】
特定の実施形態では、門脈及び門脈周囲線維症を、類洞又は類洞周囲線維症と区別してもよい。
更に特定の実施形態では、架橋線維症を診断することができる。
【0187】
NASH線維症のパターン認識及びスコア化モデルは、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合してもよい。
【0188】
NASH線維症の位置は、興味深い生物学的情報を提供することができる。
特定の実施形態では、パターン認識及びスコア化NASH線維症DLモデル(炎症パイプライン)が、計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合されている場合、興味深い生物学的情報の定性的マッピングを実施することができる。
【0189】
肝臓線維症をスコア化するための方法
画像取得、デジタル化、目的領域の識別、正規化、並びにミクロ及びマクロパターンの位置特定が、事前に実施される。
好ましい実施形態では、染色は、H&E又はH&E及びピクロシリウスレッドで実施される。
更に特定の実施形態では、読取りは、×5倍率の画像で実施される。
【0190】
全スライド画像の事前に正規化されたFOV全てに、マクロパターン肝臓線維症のパターン認識及びスコア化モデルが適用される。
【0191】
肝臓線維症スコアは、全てのFOVの平均フラクタル指数(mean fractal index)、門脈区域であると予測されたFOVを除く全てのFOVの平均フラクタル指数、又は1カテゴリーのFOV毎の平均フラクタル指数として規定される。
【0192】
肝臓線維症のパターン認識及びスコア化モデルは、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合してもよい。
【0193】
肝臓線維症の位置は、興味深い生物学的情報を提供することができる。
特定の実施形態では、パターン認識及びスコア化肝臓線維症DLモデル(炎症パイプライン)が、計算病理学ソフトウェア又はバイオ画像分析ソフトウェア(QuPath等)に統合されている場合、興味深い生物学的情報の定性的マッピングを実施することができる。
【0194】
特定の実施形態によると、肝臓組織学的スライドのこの新規パターン認識及びスコア化自動化方法の連続操作が提供され、計算病理学パイプラインの革新的な機能性が記載される。説明のために、下記の第1~4段階が、本発明により実施される完全分析の例として提供される。
【0195】
第1段階:
デジタル化:スライドガラスをデジタル化する。本発明者らは、svs(Leica社)型又はmrxs(3DHistech社)型の独自フォーマットでスライドをデジタル化したが、データ取得は、任意の他の画像読取装置で実施することができる。別の実施形態によると、デジタル化は、タイルベースであるDICOMフォーマット等の、計算病理学ワークフローに好適なフォーマットで実施される。
【0196】
保存:次いでデジタルファイルを、データベースの生物医学的に関連する情報にリンクさせる。
【0197】
再フォーマット:デジタル化を独自フォーマットで実施した場合、独自フォーマットのデジタル画像を、例えば、フリーソフトウェア(OpenSlide等)を使用した計算病理学ワークフローにより好適な別のフォーマット(タイルベースのDICOMフォーマット等)に変換する。
【0198】
第2段階:
組織を見出す:パターン認識モデルを、WSI(標準的H&E/ピクロ-シリアス(Picro-sirious)で染色されたスライド)の5×表示に適用する。空洞を除く生検部分の外郭線及びスライドの非組織区域を画定する。
【0199】
スライドバックグラウンドを見出す:パターン認識モデルを、WSI(標準的H&E/ピクロ-シリアスで染色されたスライド)の5×表示に適用する。空洞を除く生検部分の外郭線及びスライドの非組織区域を画定する。総WSI面積から、スライドバックグラウンド総面積(mm2)の補部分を、組織生検総面積として画定する。
【0200】
組織及びスライドアーチファクトを見出す:パターン認識モデルを、WSI(標準的H&E/ピクロ-シリアスで染色されたスライド)の5×表示に適用する。組織折返し及び染色アーチファクト、並びに気泡、組織残屑、及び埃を表す小さな隔離された区域が、自動的に識別及び外郭線化される。
【0201】
第3段階:
細胞核を見出す:
20×の元の画像にて、細胞核の染色を、任意の追加の染色、対比染色からまずデコンボリューションする。
核染色に形態学的操作を適用して、円形、丸形の構造を増強する。
前工程で得られた画像に対して、適応性でロバストなバックグラウンド区分化アルゴリズムを適用して、細胞核を全て区分化する。
面積がある閾値未満の円形及び丸形の核をフィルタリングする。
各核の周囲に境界ボックスを画定する。
【0202】
細胞サイトゾル拡大を見出す:
核の中心及び追加染色を使用して、反復マスク漸増プロセスによりサイトゾルの拡大をシミュレートして、染色がもはやないこと又は近隣細胞の境界に到達したことを提供する。
最大の境界ボックスを、拡大した細胞面積に基づいて画定し、元の画像から抽出し、細胞スナップショット画像を画定する。
細胞スナップショット画像を、境界ボックスとして画定する。
【0203】
個々の細胞画像(ミクロパターン)を抽出する:
細胞スナップショットを抽出し、参照画像色度プロファイル(1染色組合せ毎に1つのプロファイル)に対して正規化する。
正規化工程は下記工程を含む。
細胞スナップショットの主要な染色色度チャネルをデコンボリューションする。
参照プロファイル染色色度チャネルをデコンボリューションする。
参照プロファイルに関する細胞スナップショットの各チャネルのロバストなz-スコア化を行う。
正規化されデコンボリューションされたチャネルを、1つの細胞スナップショット画像に融合し、更なる処理のために物理的ファイルでローカルに保存する。
境界ボックスを取り外した後、正規化されデコンボリューションされたチャネルを1つの核スナップショット画像に融合する。
核スナップショットをローカルな物理的ファイルに保存する。
【0204】
隣接組織領域(マクロパターン)を抽出する
前工程の各細胞画像について、それがそこから抽出されたFOV(画像タイル)を、ミクロパターンに関する正規化工程の後で正規化する。
正規化後、FOV画像を物理的なローカルファイルに保存する。
【0205】
第4段階:
ミクロパターン風船化肝細胞でモデルを訓練する:
経験を積んだユーザが、正常肝細胞及び風船化肝細胞を示す1セットの細胞スナップショット画像を手動で選択する。
ImageNetデータセットに対して以前に訓練された深層学習モデルを、以前に画定された1セットの細胞スナップショット画像に適応させる。
熟練ユーザが、勾配降下を使用して、風船化細胞スナップショットパターン認識に最適な深層学習構成を画定する。
【0206】
ミクロパターン炎症細胞でモデルを訓練する:
炎症細胞及び正常肝細胞細胞核スナップショットについての訓練工程を繰り返す。
【0207】
マクロパターンNASH線維症でモデルを訓練する:
経験を積んだユーザが、以下のものを示す線維症染色WSI画像から1セットの細胞FOV画像を手動で選択する:
正常なFOV(コラーゲンなし)
類洞周囲(Peri-sinousoidal)FOV(コラーゲンが類洞(sinousoid)の周囲で分岐する)
門脈周囲FOV(コラーゲンが門脈区域の周囲で分岐する)
門脈FOV(コラーゲンが門脈区域に存在する)
架橋FOV(コラーゲンが、主要血管構造門脈区域と中心静脈とを架橋した形態で存在する)。
ImageNetデータセットに対して以前に訓練された深層学習モデルを、以前に画定された1セットのFOV画像に適応させる。
熟練ユーザが、勾配降下を使用して、NASH線維症パターン認識に最適な深層学習構成を画定する。
【0208】
マクロパターン肝臓線維症でモデルを訓練する:
経験を積んだユーザが、以下のものを示す線維症染色WSI画像から1セットの細胞FOV画像を手動で選択する:
正常なFOV(コラーゲンなし)
類洞周囲(Peri-sinousoidal)FOV(コラーゲンが類洞(sinousoid)の周囲で分岐する)
門脈周囲FOV(コラーゲンが門脈区域の周囲で分岐する)
門脈FOV(コラーゲンが門脈区域に存在する)
架橋FOV(コラーゲンが、主要血管構造門脈区域と中心静脈とを架橋した形態で存在する)。
デコンボリューションを、以前に画定されたデータセットに適用して、線維症染色を任意の他の追加染色から分離する。
経験を積んだユーザにより選択されたFOV画像で画定された各FOVタイプの形態学的特性を特徴付けるために、フラクタル分析を適用する。
「ドラゴン曲線」を基本パターンとして使用して、フラクタル分析を線維症デコンボリューションチャネルに適用する。
経験を積んだユーザにより選択されたFOV画像にて画定されたFOVの各サブセットに統計分析を実施して、平均、中央値、最低値、最大値、標準偏差を測定する。
フラクタル指数に基づき各FOVの分類境界を画定する閾値を、平均+/- 2×Stdとして規定する。
【0209】
典型的なWSI画像に対してモデルを適用する:
ミクロ及びマクロパターンを抽出する:第3段階の規定に従って画像を抽出及び正規化する。
【0210】
風船化
全ての細胞スナップショットに対してモデルを適用し、クラス確率及び予測クラスラベル(最も確率が高いラベル)を計算する。
WSIの風船化スコア細胞数は、予測ラベル「風船化細胞」及び>95%の予測確率を有する風船化細胞の数として規定される。
WSIの風船化スコア細胞割合は、風船化細胞数の細胞総数に対する比として規定される。
【0211】
炎症
Rexhepajら(Eur Respir J.、2015年12月;46巻(6号):1762~72頁)の方法を使用して、WSIの生検部分に由来するFOVのみを無作為化する。
大きな血管構造を有するFOVをフィルタリングして取り除く。
経験を積んだユーザが、第1の10個のFOVを選択する。
上記のFOVに由来する全ての細胞スナップショットに対してモデルを適用し、クラス確率及び予測クラスラベル(最も確率が高いラベル)を計算する。
WSIの炎症スコア細胞数は、予測ラベル「炎症細胞」及び>95%の予測確率を有する炎症細胞の数であると規定される。
Kleinerら(2005年)により規定された通りの炎症スコアは、10個のFOVに対して、経験を積んだユーザにより手動で画定される。
【0212】
NASH線維症
マクロパターンNASH線維症の訓練モデルで画定されたモデルを、事前に正規化されたFOV全てに適用する。
Kleinerら(2005年)のガイドラインに基づいてNASH線維症スコアを画定する。
【0213】
肝臓線維症
マクロパターン肝臓線維症の訓練モデルで画定されたモデルを、事前に正規化されたFOV全てに適用する。
肝臓線維症スコアを
全FOVの平均フラクタル指数、
門脈区域であると予測されたFOV以外の全てのFOVの平均フラクタル指数として画定する。
平均フラクタル指数は、1カテゴリーのFOV毎に画定される。
【0214】
また、更なる態様によると、本発明は、脂肪症パターン認識及びスコア化を含む、完全自動化及び/又はデジタル化に関する。脂肪症スコアは、古典的な方法により決定してもよく、又はDL方法を使用したパターン認識及びスコア化により決定してもよい。
【0215】
最後に、本発明は、計算病理学パイプラインの革新的な機能性を提供する。それらは以下の通りである。
【0216】
1)パターン認識
・脂肪症:
- 形態学的に脂質胞と類似する偽陽性領域(脂質胞と似ているように見えるが、血管構造に属する白色空間)をフィルタリングするアルゴリズム。
- 形態学的に脂質胞と類似しない白色領域(小さ過ぎるか又は大き過ぎて、事前に規定されている形態学的特性に対応しない)を選択的にフィルタリングして取り除くアルゴリズム。
- 基礎脂肪症のよりロバストな推定を提供する点でヒト注釈者を支援するための半自動補助方法。
【0217】
・炎症
- 炎症細胞核と正常肝細胞核とを区別するための新規なパターン認識手法及びモデル。
- デジタル化された生検画像から門脈領域面積を認識するための新規なパターン認識手法及びモデル。
- 細胞に基づく予測を臨床炎症スコアに翻訳するための手法。
【0218】
・風船化
- 肝細胞のパターン認識モデル及び形態学的基準に基づいて、風船化核と正常肝細胞とを区別するための新規なパターン認識手法及びモデル。
【0219】
・線維症
- 生検切片中の主要な線維症パターンを区別するための新規なパターン認識手法及びモデル。
- 非病理学的コラーゲン陽性区域に由来するバイアス(biais)を回避するために、スライドの領域をフィルタリングして取り除くための新規な手法。
- 隔壁分析を使用した亜群分析のために線維症スコア3及び4の粒状度を増加させるための新規な手法。
【0220】
2)データ管理及び分析
- 以前の組織病理学的及び分析的知識に基づいて、本著者らは、重要なパターン及び細胞タイプを表すための数理モデルを画定した。
- 誤って解釈される可能性のあるデータに結び付く実験作業中の潜在的アーチファクトのモデル
- 染色変動性に取り組み、上記のパターン認識モデル全ての一般化を容易にするために開発され、ワークフローに統合された新しい手法。
- 上記の研究のほとんどは、以前のデータ分析分野及び組織病理学分野の知識に基づいて適応/改変された従来技術に基づく。
- 以前の方法は全て、完全な活用及び商業化を可能にするライセンスにより保護される。
【0221】
一部の実施形態では、本発明の方法のおかげで、対象に対してライフスタイルの推薦を行うか、又は少なくとも1つのNAFLD、NASH、若しくは肝線維症療法を投与するための判断をなすことができる。対象を受容者又はTBT患者にそのように分類することは、(NTBT)と比較した、肝細胞風船化、小葉炎症、及び線維症のDLモデル適用及びスコア化に基づく。
【0222】
したがって、本発明は、それを必要とする対象のNAFLD、NASH、又は肝線維症を治療するための方法であって、対象は本発明による方法により識別されている方法で使用するための抗NAFLD、抗NASH、又は抗線維症化合物に更に関する。
【0223】
例示的な抗NASH及び抗線維症化合物を下記に列挙する。
- 式(I)の化合物
【0224】
【0225】
(式中、
X1は、ハロゲン、R1、又はG1-R1基を表し、
Aは、CH=CH又はCH2-CH2基を表し、
X2は、G2-R2基を表し、
G1及びG2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、酸素又は硫黄の原子を表し、
R1は、ハロゲン原子、非置換アルキル基、1つ又は複数のハロゲン原子により置換されているアリール基又はアルキル基、アルコキシ又はアルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルチオ基、又は複素環基を表し、
R2は、少なくとも-COOR3基(式中R3は水素原子を表す)により置換されているアルキル基、1つ又は複数のハロゲン原子により置換されているか又はされていないアルキル基、シクロアルキル基、又は複素環基を表し、
R4及びR5は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、1つ又は複数のハロゲン原子により置換されているか又はされていないアルキル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。)
又はその薬学的に許容される塩。
- GS-0976、ND-654、AC-8632、及びPF05175157のようなアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤。
- IMM-124-Eのような抗LPS抗体
- A-4250、ボリキシバット、以前は(formely)SHP-625であったマラリキシバット(maralixibat)、GSK-2330672、エロビキシバット、及びCJ-14199のようなアピカルナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤。
- 5-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-HEPE、DS-102)、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸のような生物活性脂質。
- GRC-10801、MRI-1569、MRI-1867、DBPR-211、AM-6527: AM-6545、NESS-11-SM、CXB-029、GCC-2680、TM-38837、Org-50189、PF-514273、BMS-812204、ZYO-1、AZD-2207、AZD-1175、オテナバント、イビピナバント、スリナバント、リモナバント、ドリナバント(drinabant)、SLV-326、V-24343、及びO-2093のようなカンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト。
- エムリカサン、ベルナカサン(belnacasan)、ニボカサン(nivocasan)、IDN-7314、F-573、VX-166、YJP-60107、MX-1122、IDN-6734、TLC-144、SB-234470、IDN-1965、VX-799、SDZ-220-976、及びL-709049のようなカスパーゼ阻害剤。
- VBY-376、VBY-825、VBY-036、VBY-129、VBY-285、Org-219517、LY3000328、RG-7236、及びBF/PC-18のようなカテプシン阻害剤。
- セニクリビロック(CCR2/5アンタゴニスト); PG-092、RAP-310、INCB-10820、RAP-103、PF-04634817、及びCCX-872のようなCCRアンタゴニスト。
- 以前はISIS-DGAT2RxだったIONIS-DGAT2Rx、LY-3202328、BH-03004、KR-69530、OT-13540、AZD-7687、及びABT-046のようなジアシルグリセロール-O-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤。
- エボグリプチン、ビダグリプチン(vidagliptin)、ホタグリプチン(fotagliptin)、アログリプチン、サキサグリプチン、チログリプチン(tilogliptin)、アナグリプチン、シタグリプチン、レタグリプチン(retagliptin)、メログリプチン、ゴソグリプチン、トレラグリプチン、テネリグリプチン、ズトグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、ヨグリプチン(yogliptin)、ベータグリプチン(betagliptin)、イミグリプチン、オマリグリプチン、ビダグリプチン、及びデナグリプチンのようなジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP4)阻害剤。
- 以前はGKT137831だったGKT-831(2-(2-クロロフェニル)-4-[3-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3,6(2H,5H)-ジオン)、及びGKT-901のような二重NOX(NADPHオキシダーゼ)1&4阻害剤。
- CNX-024、CNX-025、及びSB-030のような細胞外マトリックスタンパク質修飾因子。
- TVB-2640、TVB-3664、TVB-3166、TVB-3150、TVB-3199、TVB-3693; BZL-101、2-オクタデシン酸、MDX-2、ファスナル(Fasnall)、MT-061、G28UCM、MG-28、HS-160、GSK-2194069、KD-023、及びシロスタゾールのような脂肪酸シンターゼ阻害剤。
- ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート(FABAC);
- オベチコール酸、GS-9674、LJN-452、及びEDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、Px-103、及びSR-45023のようなファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト。
- NGM-282のような繊維芽細胞増殖因子19(FGF-19)組換え体
- 以前はBMS-986036だったPEG-FGF21、YH-25348、BMS-986171、YH-25723、LY-3025876、及びNNC-0194-0499のような繊維芽細胞増殖因子21(FGF-21)アゴニスト。
- GR-MD-02、TD-139、ANG-4021、ガレクチン-3C、LJPC-201、TFD-100、GR-MD-03、GR-MD-04、GM-MD-01、GM-CT-01、GM-CT-02、Gal-100、及びGal-200のようなガレクチン3阻害剤。
- セマグルチド、リラグルチド、エクセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、リキシセナチド、ロキセナチド(loxenatide)、エフペグレナチド(efpeglenatide)、タスポグルチド、MKC-253、DLP-205、及びORMD-0901のようなグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似体。
- GLP-1受容体アゴニスト。
- CNX-023のようなGタンパク質共役受容体(GPCR)修飾因子。
- インテグリン阻害剤; Indalo Therapeutics社のインテグリン阻害剤のようなPliant Therapeutic社のインテグリン阻害剤、セントルイス大学のインテグリン阻害剤、ProAgio、及びGSK-3008348。
- チペルカスト(以前はMN-001)、トメルカスト、スルカスト、マシルカスト(masilukast)、ザフィルルカスト、プランルカスト、モンテルカスト、ゲミルカスト、ベルルカスト、アクルカスト(aklukast)、ポビリカスト(pobilikast)、シナルカスト、及びイラルカスト(iralukast)のようなロイコトリエン(LT)/ホスホジエステラーゼ(PDE)/リポキシゲナーゼ(LO)阻害剤。
- ソリスロマイシン、アジスロマイシン、及びエリスロマイシンのようなマクロライド。
- 以前はAZD4076だったRG-125、RGLS-5040、RG-101、MGN-5804、及びMRG-201のようなmiRNAアンタゴニスト。
- Elastomic Ab社のMMP9刺激因子のようなMMP9刺激因子
- ベルチリムマブ(bertilimumab)、NGM-313、IL-20標的mAb、以前はGC1008だったフレソリムマブ(antiTGFβ)、以前はBTT-1023だったチモルマブ(timolumab)、ナマシズマブ(namacizumab)、オマリズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、レブリキズマブ(lebrikizumab)、エピラツズマブ、フェルビズマブ(felvizumab)、マツズマブ、モナリズマブ(monalizumab)、レスリズマブ、イネビリズマブ(inebilizumab)、ホラルマブ(foralumab)(NI-0401、抗CD3)、LOXL2に対するシムチズマブ(simtizumab)(GS-6624)mAb、及びウステキヌマブ抗TNF抗体のようなモノクローナル抗体。
- MSDC-0602、SVPシロリムスと共投与されるAAV遺伝子療法剤のようなmTOR修飾因子。
- 以前はDV928だったDUR-928のような核内受容体リガンド。
- CER-209のようなP2Y13タンパク質アゴニスト
- PZ-235及びNP-003のようなプロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2アンタゴニスト。
- CNX-014、MB-11055、ALF-1、マンギフェリン、アンレキサノクス、GS-444217、REG-101、及びバリンのようなプロテインキナーゼ修飾因子。
- フェノフィブラート、シプロフィブラート、ペマフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、ビニフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブリン酸、ニコフィブラート、ピリフィブラート、プラフィブリド、ロニフィブラート、テオフィブラート、トコフィブラート、及びSR10171のようなPPARアルファアゴニスト;
- ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001、及びALL-4のようなPPARガンマアゴニスト。
- GW501516(エンズラボル(Endurabol)又は({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))、又はMBX8025(セラデルパル(Seladelpar)又は{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[l,2,3]トリアゾール-4-イルメチルシルファニル]-フェノキシ}-酢酸)、又はGW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾリル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)、又はL165041、又はHPP-593、又はNCP-1046のようなPPARデルタアゴニスト。
- サログリタザル、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザール、及びDSP-8658のようなPPARアルファ/ガンマアゴニスト。
- エラフィブラノル、T913659のようなPPARアルファ/デルタアゴニスト。
- T3D-959のような共役リノール酸(CLA)のようなPPARガンマ/デルタ。
- IVA337、又はTTA(テトラデシルチオ酢酸)、又はババキニン、又はGW4148、又はGW9135、ベザフィブラート、又はロベグリタゾン、又はCS038のようなPPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト又はPPAR汎アゴニスト。
- KD-025、TRX-101、BA-1049、LYC-53976、INS-117548、及びRKI-1447のようなRho関連プロテインキナーゼ2(ROCK2)阻害剤。
- GS-4997のようなシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤
- レモグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、イプラグリフロジン、チアナグリフロジン(tianagliflozin)、カナグリフロジン、トホグリフロジン、ジャナグリフロジン(janagliflozin)、ベキサグリフロジン、ルセオグリフロジン、セルグリフロジン、HEC-44616、AST-1935、及びPLD-101のようなナトリウム-グルコース輸送体(SGLT)2阻害剤。
- アラムコール、GRC-9332、ステアムコール(steamchol)、TSN-2998、GSK-1940029、及びXEN-801のようなステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート。
- VK-2809、MGL-3196、MGL-3745、SKL-14763、ソベチローム、BCT-304、ZYT-1、MB-07811、及びエプロチロームのような甲状腺ホルモン受容体β(THRβ)アゴニスト。
- ナルトレキソン、JKB-121、M-62812、レサトルビド、デンドロフィリン(dendrophilin)、CS-4771、AyuV-1、AyuV-25、NI-0101、EDA-HPVE7、及びエリトランのようなToll様受容体2及び4(TLR-2及びTLR-4)アンタゴニスト。
- チロシンキナーゼ受容体(RTK)修飾因子;CNX-025及びKBP-7018
- PXS-4728A、CP-664511、PRX-167700、ASP-8232、RTU-1096、RTU-007、及びBTT-1023のような血管接着タンパク質-1(VAP-1)阻害剤。
- カルシフェロール、アルファカルシドール、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、ビタミンD2、ビタミンD3、カルシトリオール、ビタミンD4、ビタミンD5、ジヒドロタキステロール、カルシポトリオール;タカルシトール 1,24-ジヒドロキシビタミンD3、及びパリカルシトールのようなビタミンD受容体(VDR)アゴニスト。
【0226】
- GS-0976、ND-654、AC-8632、及びPF05175157のようなアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤。CP640186、ゲムカベン、及びMK-4074のような他のアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤。
- 2-(1-ヘキシニル)-N-メチルアデノシン、ピクリドンソン(Piclidenoson) CF101(IB-MECA)、ナモデノソン(Namodenoson) CF-102、2-Cl-IB-MECA、CP-532,903、イノシン、LUF-6000、及びMRS-3558のようなアデノシンA3受容体アゴニスト。
- アパラレノン(MT3995)、アミロライド、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン及びカンレノ酸カリウム、プロゲステロン、ドロスピレノン、ゲストデン、及びベニジピンのようなアルドステロンアンタゴニスト及びミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト。
- PXL-770、MB-11055 Debio0930B メトホルミン、CNX-012、O-304、マンギフェリンカルシウム塩、エルトロンボパグ、カロツキシマブ(carotuximab)、及びイメグリミンのようなAMP活性化プロテインキナーゼ刺激因子。
- アミリン受容体アゴニスト及びカルシトニン受容体アゴニストとしては、これらに限定されないが、KBP-042及びKBP-089が挙げられる。
- 形質転換増殖因子ベータ2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、ASPH-0047、IMC-TR1、及びISTH-0047が挙げられる。
- ARO-ANG3、IONIS-ANGGPTL3-LRx、又はAKCEA-ANGPTL3LRx、エビナクマブ(evinacumab)、及びALN-ANGのようなアンジオポエチン関連タンパク質-3阻害剤。
- IMM-124-Eのような抗LPS抗体
- A-4250、ボリキシバット、以前はSHP-625であったマラリキシバット、GSK-2330672、エロビキシバット、及びCJ-14199のようなアピカルナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤。
- 無水ベタイン又はRM-003;
- オベチコール酸(OCA)及びUDCA、ノルウルソデオキシコール酸、及びウルソジオールのような胆汁酸。
- 5-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-HEPE、DS-102)のような生物活性脂質
- GRC-10801、MRI-1569、MRI-1867、DBPR-211、AM-6527: AM-6545、NESS-11-SM、CXB-029、GCC-2680、TM-38837、Org-50189、PF-514273、BMS-812204、ZYO-1、AZD-2207、AZD-1175、オテナバント、イビピナバント、スリナバント、リモナバント、ドリナバント、SLV-326、V-24343、及びO-2093のようなカンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト。
- アナバスム(anabasum)(レスナブ(Resunab)、JKT-101)のようなカンナビノイドCB2受容体模倣体。
- エムリカサン、ベルナカサン、ニボカサン、IDN-7314、F-573、VX-166、YJP-60107、MX-1122、IDN-6734、TLC-144、SB-234470、IDN-1965、VX-799、SDZ-220-976、及びL-709049のようなカスパーゼ阻害剤。
- VBY-376、VBY-825、VBY-036、VBY-129、VBY-285、Org-219517、LY3000328、RG-7236、及びBF/PC-18のようなカテプシン阻害剤。
- セニクリビロック(CCR2/5アンタゴニスト)のような、PG-092、RAP-310、INCB-10820、RAP-103、PF-04634817、及びCCX-872のようなCCRアンタゴニスト。
- CCR3ケモカイン修飾因子及びエオタキシン2リガンド阻害剤。
- 以前はISIS-DGAT2RxだったIONIS-DGAT2Rx、LY-3202328、BH-03004、KR-69530、OT-13540、AZD-7687、及びABT-046のようなジアシルグリセロール-O-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤。
- エボグリプチン、ビダグリプチン、ホタグリプチン、アログリプチン、サキサグリプチン、チログリプチン、アナグリプチン、シタグリプチン、レタグリプチン、メログリプチン、ゴソグリプチン、トレラグリプチン、テネリグリプチン、ズトグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、ヨグリプチン、ベータグリプチン、イミグリプチン、オマリグリプチン、ビダグリプチン、及びデナグリプチンのようなジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP4)阻害剤。
- 以前はGKT137831だったGKT-831、GKT-901のような二重NOX(NADPHオキシダーゼ)1&4阻害剤。
- 細胞外マトリックスタンパク質修飾因子:CNX-024、CNX-025、SB-030。
- ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート(FABAC);
- オベチコール酸、GS-9674、LJN-452、EDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、Px-103、SR-45023のようなファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト。
- オメガ-3脂肪酸、オマコール又はMF4637、魚油、ポリ不飽和(unsatured)脂肪酸(エファマックス(efamax)、optiEPA)のような脂肪酸。
- TVB-2640;TVB-3199,TVB-3693BZL-101、2-オクタデシン酸、MDX-2、ファスナル、MT-061、G28UCM、MG-28、HS-160、GSK-2194069、KD-023、及びシロスタゾールのような脂肪酸シンターゼ(FAS)阻害剤。
- 繊維芽細胞増殖因子19(FGF-19)受容体リガンド又はFGF-19の機能性遺伝子操作変異体
- NGM-282のような繊維芽細胞増殖因子19(FGF-19)組換え体
- 以前はBMS-986036だったPEG-FGF21、YH-25348、BMS-986171、YH-25723、LY-3025876、NNC-0194-0499のような繊維芽細胞増殖因子21(FGF-21)アゴニスト。
- GR-MD-02、TD-139、ANG-4021、ガレクチン-3C、LJPC-201、TFD-100、GR-MD-03、GR-MD-04、GM-MD-01、GM-CT-01、GM-CT-02、Gal-100、Gal-200のようなガレクチン3阻害剤。
- セマグルチド、リラグルチド、エクセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、リキシセナチド、ロキセナチド、エフペグレナチド、タスポグルチド、MKC-253、DLP-205、ORMD-0901のようなグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似体。
- LY-3305677、及び長期作用型オキシントモジュリンのようなGLP-1受容体アゴニスト。
- CNX-023のようなGタンパク質共役受容体(GPCR)修飾因子。
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283、及びPBI-4299のような、Gタンパク質共役受容体84アンタゴニスト(GPR84アンタゴニスト)、結合組織増殖因子リガンド阻害剤、及び遊離脂肪酸受容体1アゴニスト(FFAR1アゴニスト)。
- 成長ホルモン
- ビスモデギブ、TAK-441、IPI-926、サリデギブ、ソニデギブ/エリスモデギブ、BMS-833923/XL139、PF-04449913、タラデギブ/LY2940680、ETS-2400、SHR-1539、及びCUR61414のようなヘッジホッグ細胞シグナル伝達経路阻害剤。
- A-4250、GSK-2330672、ボリキシバット、CJ-15 14199、及びエロビキシバットのような回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤。
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283、PBI-4299、及びAIC-649のような免疫調節剤。
- MSDC-0602k、MSDC-0602、CSTI-100、及びAMRIのようなインスリン感受性改善薬及びMCH受容体-1アンタゴニスト。
- Pliant Therapeutic社のインテグリン阻害剤、Indalo Therapeutics社のインテグリン阻害剤、セントルイス大学のインテグリン阻害剤、ProAgio、GSK-3008348のようなインテグリン阻害剤。
- JNJ-28165722、JNJ-42065426;JNJ-42152981、JNJ-42740815、JNJ-42740828、及びPF-06835919のようなケトヘキソキナーゼ阻害剤。
- チペルカスト(以前はMN-001)、トメルカスト、スルカスト、マシルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、モンテルカスト、ゲミルカスト、ベルルカスト、アクルカスト、ポビリカスト、シナルカスト、イラルカストのようなロイコトリエン(LT)/ホスホジエステラーゼ(PDE)/リポキシゲナーゼ(LO)阻害剤。
- ラパポート、インターミューン(InterMune)、ファルマキシス(Pharmaxis)、AB-0023、シムツズマブ(Simtuzumab)、PXS-5382A、及びPXS-5338のようなリシルオキシダーゼ相同体2阻害剤。
- ソリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンのようなマクロライド。
- 以前はAZD4076だったRG-125、RGLS-5040、RG-101、MGN-5804、及びMRG-201のようなmiRNAアンタゴニスト。
- AB-0023、MT-1001、[18F]FB18mHSA、Xemys、テクネチウムTc 99mチルマノセプト、及びCDX-1307のようなマクロファージマンノース受容体修飾因子。
- メチルCpG結合タンパク質2修飾因子及びトランスグルタミナーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、システアミン、ECシステアミン、腸溶性システアミン酒石酸水素塩、システアミン酒石酸水素塩(腸溶性)、ベンヌ(Bennu)、システアミン酒石酸水素塩(腸溶性)、ラプター(Raptor)、システアミン酒石酸水素塩、DRシステアミン、遅延放出腸溶性システアミン酒石酸水素塩、メルカプタミン、メルカプタミン(腸溶性)、ベンヌ、メルカプタミン(腸溶性)、ラプター、RP-103、RP-104、PROCYSBI、及びメルカプタミン(腸溶性)が挙げられる。
- Elastomic Ab社のMMP9刺激因子のようなメタロプロテイナーゼMMP9刺激因子
- ミトコンドリア担体ファミリー阻害剤及びミトコンドリアリン酸担体タンパク質阻害剤としては、これらに限定されないが、TRO-19622、トロホス(Trophos)、オレソキシム、RG-6083、又はRO-7090919が挙げられる。
- ミエロペルオキシダーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、PF-06667272が挙げられる。
- ベルチリムマブ、NGM-313、IL-20標的mAb、以前はGC1008だったフレソリムマブ(antiTGFβ)、以前はBTT-1023だったチモルマブ、ナマシズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、レブリキズマブ、エピラツズマブ、フェルビズマブ、マツズマブ、モナリズマブ、レスリズマブ、イネビリズマブのようなモノクローナル抗体。
- MSDC-0602、SVPシロリムスと共投与されるAAV遺伝子療法剤のようなmTOR修飾因子。
- NS-0200のようなNAD依存性デアセチラーゼサーチュイン刺激因子、PDE5阻害剤。
- LC-280126のようなNFカッパB阻害剤。
- ナイアシン又はビタミンB3のようなニコチン酸
- ARI-3037MO、MMF、LUF6283、アシフラン、IBC293、MK-1903、GSK256073、MK-6892、MK-0354、SLx-4090、ロミタピド、レキシブリン、アパベタロン、アシフラン、ラロピプラント、ダポリナド(daporinad)、アナセトラピブ、INCB-19602、ST-07-02、ロメフロキサシン、ナイアシン、及び放出制御/ラロピプラントのようなニコチン酸受容体(GPR109)アゴニスト、
- ニタゾキサニド(NTZ)、その活性代謝物チゾキサニド(TZ)又はRM-5061等のTZの他のプロドラッグ、
- 非ステロイド抗炎症薬(NSAID)としては、これらに限定されないが、F-351、サリチラート(アスピリン)、アセトアミノフェン、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン)、酢酸誘導体(インドメタシン、ジクロフェナク)、エノール酸酸誘導体(ピロキシカム、フェニルブタゾン)、アントラニル酸誘導体(メクロフェナルム酸(meclofenalmic acid)、フルフェナム酸)、選択的25 COX-2阻害剤(セレコキシブ、パレコキシブ)、及びスルホンアニリド(ニメスリド)が挙げられる。
- 以前はDV928だったDUR-928のような核内受容体リガンド。
- CER-209のようなP2Y13タンパク質アゴニスト
- BOT-501及びBOT-191のようなPDGFR修飾因子。
- ペグバリアーゼ、サプロプテリン、AAV-PAH、CDX-6114、セピアプテリン、RMN-168、ALTU-236、ETX-101、ヘパステム(HepaStem)、ロリプラム、及びアルプロスタジルのようなフェニルアラニンヒドロキシラーゼ刺激因子
- PZ-235、NP-003のようなプロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2アンタゴニスト。
- CNX-014、MB-11055、ALF-1、マンギフェリン、アンレキサノクス、GS-444217、REG-101、バリンのようなプロテインキナーゼ修飾因子。
- フェノフィブラート、シプロフィブラート、ペマフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、ビニフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブリン酸、ニコフィブラート、ピリフィブラート、プラフィブリド、ロニフィブラート、テオフィブラート、トコフィブラート、SR10171のようなPPARアルファアゴニスト;
- ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001、ALL-4のようなPPARガンマアゴニスト。
- GW501516(エンズラボル又は({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))、又はMBX8025(セラデルパル又は{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[l,2,3]トリアゾール-4-イルメチルシルファニル]-フェノキシ}-酢酸)、又はGW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾリル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)、又はL165041、又はHPP-593、又はNCP-1046のようなPPARデルタアゴニスト。
- サログリタザル、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザール、DSP-8658のようなPPARアルファ/ガンマアゴニスト。
- エラフィブラノル、T913659のようなPPARアルファ/デルタアゴニスト。
- 共役リノール酸(CLA)、T3D-959のようなPPARガンマ/デルタ。
- IVA337、又はTTA(テトラデシルチオ酢酸)、又はババキニン、又はGW4148、又はGW9135、ベザフィブラート、又はロベグリタゾン、又はCS038のようなPPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト又はPPAR汎アゴニスト。
- KD-025、TRX-101、BA-1049、LYC-53976、INS-117548、RKI-1447のようなRho関連プロテインキナーゼ2(ROCK2)阻害剤。
- GS-4997のようなシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤
- レモグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、イプラグリフロジン、チアナグリフロジン、カナグリフロジン、トホグリフロジン、ジャナグリフロジン、ベキサグリフロジン、ルセオグリフロジン、セルグリフロジン、HEC-44616、AST-1935、PLD-101のようなナトリウム-グルコース輸送体(SGLT)2阻害剤。
- アラムコール、GRC-9332、ステアムコール、TSN-2998、GSK-1940029、XEN-801のようなステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート。
- VK-2809、MGL-3196、MGL-3745、SKL-14763、ソベチローム、BCT-304、ZYT-1、MB-07811、エプロチロームのような甲状腺受容体β(THRβ)アゴニスト。
- ナルトレキソン、JKB-121、M-62812、レサトルビド、デンドロフィリン、CS-4771、AyuV-1、AyuV-25、NI-0101、EDA-HPVE7、エリトランのようなToll様受容体4(TLR-4)アンタゴニスト。
- CNX-025、KBP-7018のようなチロシンキナーゼ受容体(RTK)修飾因子
- PXS-4728A、CP-664511、PRX-167700、ASP-8232、RTU-1096、RTU-007、BTT-1023のような血管接着タンパク質-1(VAP-1)阻害剤。
- カルシフェロール、アルファカルシドール、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、ビタミンD2、ビタミンD3、カルシトリオール、ビタミンD4、ビタミンD5、ジヒドロタキステロール、カルシポトリオール;タカルシトール 1,24-ジヒドロキシビタミンD3、及びパリカルシトールのようなビタミンD受容体(VDR)アゴニスト。
- ビタミンE及びアイソフォーム、ビタミンC及びアトルバスタチンと組み合わせたビタミンE。
【0227】
特定の実施形態では、FAS阻害剤は、以下の化合物のリストにて選択される化合物である。
【0228】
【0229】
及びTVB-2640。
【0230】
別の特定の実施形態では、FAS阻害剤は、以下のものから選択される。
【0231】
【0232】
及びTVB-2640。
【0233】
特定の実施形態では、FAS阻害剤は、TVB-2640である。
【0234】
他の抗NASH作用剤としては、KB-GE-001、及びNGM-386、及びNGM-395、及びNC-10、及びTCM-606Fが挙げられる。更なる抗NASH作用剤としては、イコサブテート(icosabutate)、NC-101、及びNAIA-101コレセベラム、及びPRC-4016が挙げられる。
【0235】
本発明の実施に有用な例示的で非限定的な抗線維症剤としては、以下のものが挙げられる。
- アンジオテンシンII受容体遮断剤としては、これに限定されないがイルベサルタンが挙げられる;
- 形質転換増殖因子ベータ2(TGF-β2)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド;
- 生物活性脂質;
- カスパーゼ阻害剤;
- 二重ファルネソイドX受容体(FXR)/TGR5アゴニスト;
- 二重NOX(NADPHオキシダーゼ)1&4阻害剤等のNOX(NADPHオキシダーゼ)阻害剤;
- ガレクチン3阻害剤;
- 免疫調節物質;
- インテグリン阻害剤;
- マクロファージマンノース受容体修飾因子;
- メタロプロテアーゼ-9(MMP-9)刺激因子;
- モノクローナル抗体;
- NFカッパB阻害剤;
- 非ステロイド抗炎症薬(NSAID);及び
- PDGFR修飾因子。
【0236】
他の抗線維症剤としては、HEC-585、INV-240、RNAi療法剤(例えば、Silence Therapeutics社)及びSAMiRNAプログラム(Bioneer Corp社)が挙げられる。
【0237】
他の例示的な抗線維症剤としては、ニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI等のピルフェニドン又は受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、又はアンジオテンシンII(AT1)受容体遮断剤、又はCTGF阻害剤、又はMMP2、MMP9、THBS1、若しくは細胞表面インテグリン等の不顕性TGFβ複合体の活性化因子を含むTGFβ及びBMP活性化経路、TGFβ受容体タイプI(TGFBRI)又はタイプII(TGFBRII)及びTGFβ、アクチビン、インヒビン、Nodal、抗ミュラー管ホルモン、GDF、若しくはBMP等のそれらのリガンド、補助共受容体(タイプIII受容体としても知られている)を妨害し易い任意の抗線維症化合物、又は制御性若しくは阻害性SMADタンパク質を含むSMAD依存性標準経路の成分、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル経路、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘導性EMTプロセスの種々の分岐部を含むSMAD非依存性若しくは非標準経路のメンバー、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む標準及び非標準ヘッジホッグシグナル伝達経路、又はWNTの任意のメンバー、又はTGFβに影響を及ぼし易いNotch経路。
【0238】
特定の実施形態によると、抗線維症剤は、以下のものから選択される作用剤ではない:ニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI等のピルフェニドン若しくは受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、又はアンジオテンシンII(AT1)受容体遮断剤、又はCTGF阻害剤、又はMMP2、MMP9、THBS1、若しくは細胞表面インテグリン等の不顕性TGFβ複合体の活性化因子を含むTGFβ及びBMP活性化経路、TGFβ受容体タイプI(TGFBRI)若しくはタイプII(TGFBRII)及びTGFβ、アクチビン、インヒビン、Nodal、抗ミュラー管ホルモン、GDF、若しくはBMP等のそれらのリガンド、補助共受容体(タイプIII受容体としても知られている)を妨害し易い任意の抗線維症化合物、又は制御性若しくは阻害性SMADタンパク質を含むSMAD依存性標準経路の成分、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル経路、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘導性EMTプロセスの種々の分岐部を含むSMAD非依存性若しくは非標準経路のメンバー、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む標準及び非標準ヘッジホッグシグナル伝達経路、又はWNTの任意のメンバー、又はTGFβに影響を及ぼし易いNotch経路。
【0239】
特定の実施形態では、NASH又は肝線維症の治療は、以下のものからなる群にて選択される式(I)の化合物を投与することを含む:1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-イソプロピルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチルプロパン酸、及び2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチル-プロパン酸イソプロピルエステル、又はそれらの薬学的に許容される塩。本発明の更に特定の実施形態では、式(I)の化合物は、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩である。
【0240】
上記の記載並びに以下の例は、例示であり、本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点、及び改変は、本発明が関する当業者であれば明白であろう。
【実施例】
【0241】
物質及び方法
前臨床研究設計
発症コホートI(N=111)から選択したH&Eで染色した生検試料の細胞スナップショットを使用して、風船化及び炎症予測モデルを訓練、試験、及び検証した。
これらのモデルの独立検証のために、本発明者らは、コホートII(N=92)に由来する1セットの細胞スナップショットを使用した(
図2)。
コホート(III~V)の訓練、試験、検証では、線維症を誘導するためにコレステロールで補完したコリン欠乏Lアミノ酸限定餌(CDAA/chol餌)で、動物を飼育した。
コホートIII(N=72)を使用して、線維症病期予測手法を訓練及び較正した。
コホートIV(N=28)及びV(N=105)を独立検証に使用した(
図2)。並行して、専門家ユーザが、研究に含まれていた全ての組織学的試料のNASH活動性(つまり、炎症及び風船化肝細胞)及びKleiner線維症病期を評価した。
1つの追加コホート(コホートVI、N=79)を、炎症定量化パイプラインの独立検証に使用した。
炎症、風船化、及び線維症病期分類の注釈は全て、専門家組織学者により実施された。風船化パラメーターの場合、専門家ユーザが、存在する全ての風船化肝細胞及び少数の隣接正常肝細胞をデジタル的に注釈した(生検試料全てにおいて)。
【0242】
画像化
デジタル化されたスライドは全て、自家開発したデータ管理パイプラインを使用して512×512ピクセルのタイルに分解した(
図3)。NASH活動性をスコア化するために、20×の個々の細胞スナップショットを幾つかの切片から選択して、炎症細胞及び風船化肝細胞を表示した。正常肝細胞の同数のスナップショットを、各モデルの陰性対照として選択した(
図4A)。肝臓線維症をスコア化するために、肝臓線維症の主要な組織学的パターンを示す510個の観察野(FOV)を、訓練セットとして選択した(
図4B)。173個のFOVの個別の試験セットを使用して、更なる検証に最適なモデルを選択した。次いで、肝臓線維症DLモデルにより画定された、病理学的に関連するFOV(陰性、類洞周囲(peri-sinousoidal)、門脈周囲、架橋)を、コラーゲン形態測定学的測定のために選択した。自家開発(染色非依存性)アルゴリズムを開発して、全ての組織学的画像(所与の分解能の)を参照画像に対して正規化した。この正規化工程後、本発明者らは、隔壁形態学的測定アルゴリズム及びCPA定量化を、病理学的に関連するFOVに適用した(
図4C)。重要な血管領域を手動で除外した後、専門家注釈者が、訓練コホートの全ての試料についてCPAレベルを独立して定量化した(3DHistotech社、QuantCenter)。
【0243】
デジタル化した後、デジタルスライドガラスを処理して、高倍率表示(20×0.5μm)及び低倍率表示(4×2μm)を抽出した。線維症CPAの半自動定量化の場合、専門家注釈者が、重要な血管区域を各試料デジタル表示から手動で除外した。考え得る最良の定量化結果(3DHistotech社、QuantCenter)を達成するために、バックグラウンド染色からコラーゲンを分離するための半自動強度閾値を、画像分析の前に手動で調整した。各生検試料について、全てのFOVをDL線維症病期分類パターン認識した後、完全自動化CPA及び隔壁分析パイプラインを独立に適用して、コラーゲン形態学的特徴及び総発現を定量化した。DL予測を使用して、非病理学的FOVをフィルタリングして取り除いた。完全自動化を、炎症の手動スコア化と比較することができるように、特別な工程を炎症パイプラインに追加して、以下を実施した。
a)WSIの組織領域を見出す。
b)顕微鏡下の20×高倍率視野に相当する全てのFOVを見出す。
c)重要な門脈領域もまた含まない検出された組織区域にて自動的に及び無作為に20個のFOVを選択する。第2の手動工程では、専門家注釈者が、最初の10個のFOVを選択し、確立されたスコア化基準を確認することができる(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)。
d)選択されたFOVを使用して、DL炎症モデルを、20×にて抽出された個々の細胞核に適用した。
【0244】
組織学者が、同じFOVを、ガイドライン(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)により規定される通りに手動でスコア化して、自動スコア化と比較した。
【0245】
統計学的学習
コンボリューションニューラルネットワーク(CNN)を使用して、炎症細胞、風船化肝細胞を検出するための個々のモデル、及びNASH線維症の組織学的パターンを認識するための第3のモデルを構築した。全てのCNNでは、ImageNetデータセット(Deng、2009年)に対して訓練された以前のネットワーク(Szegedy、2015年)からの初期重み及びアーキテクチャーを適用した。次いで、FOV予測をNASH Kleiner線維症病期に変換して、相当する病理学者スコアと比較した。
【0246】
DL肝臓線維症スコア化からのFOV予測を、ガイドライン(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)に規定されている通りにNASH Kleiner線維症スコアに変換して、相当する病理学者スコアと比較した。CPAを、総病理学的コラーゲン面積の総生検組織面積に対する比として、生検レベルで報告した。コーエンのカッパを使用して、全ての利用可能なコホートにおける手動線維症スコアと完全自動線維症スコアとの一致を定量化した。
【0247】
結果
NASH小葉炎症DLモデルの開発
第1の学習反復では、学習工程の段階的な反復を採用した(
図5A)。損失関数の幾つかの局所最小値(つまり、陰性尤度)を識別及び探究した。独立データセット(コホートI)において正常肝細胞から炎症細胞を判別するための優れた正確性(91%)を示した最も最適なネットワーク(訓練損失と検証損失とのトレードオフが最良である)を、最終モデルとして選択した。
【0248】
NASH肝細胞風船化DLモデルの開発
炎症と同様の開発手法を、このCNNのモデルに使用した。興味深いことに、第2の反復の局所最小値の非常により良好な探究が達成された(
図5B)。この場合も正常肝細胞から風船化細胞を判別するための優れた正確性(98.2%)が示される(コホートI)。更に、571個の風船化肝細胞の独立データセットでは、526個の風船化肝細胞(92.1%)が正確に認識された(コホートII)。
【0249】
肝臓線維症DLモデルの開発
炎症及び風船化のモデルに関して、CNNパラメーター空間を最適に探究した。最終モデルは、独立検証セット(コホートIII)の線維症パターン全ての認識に優れた正確性を示した:(a)コラーゲン陰性領域(40個のFOVにわたって99.24%の正確性)、(b)コラーゲン陽性類洞(35個のFOVにわたって79%の正確性)、(c)血管領域(35個のFOVにわたって86%の正確性)、(d)コラーゲン陽性門脈三管(26個のFOVにわたって88%の正確性)、(e)架橋線維症(37個のFOVにわたって92.24%の正確性)。
【0250】
肝臓線維症形態測定学的モデルの開発
コラーゲン強度レベルのコホート内及びコホート間変動性の初期評価は、有意差を示した(
図5C)。これは、コラーゲン形態測定学的測定にバイアスをかける影響があり得ること、及び正規化工程が必要性であることを示す。正規化工程の後、訓練コホートでの半自動CPA測定及び完全自動CPA測定を比較すると、良好な相関性レベルが示された(
図5D)。2つのセット間で結果が異なるのは、非病理学的領域及びバックグラウンド染色が完全自動手法により除去されたためである。
【0251】
線維症モデルの臨床検証
異なる線維症スコア(コホートV)にわたるCPAレベルの分散に関する分析は、F0とF1(p値=0.006)又はF2(p値=0.032)との間に、完全自動CPA測定でのみ見られる有意差があることを示した(
図6A~
図6B)。コラーゲン隔壁の形態学的分析(
図6C)は、異なるタイプのFOV間(つまり全ての病理学的FOVにわたって)に有意差があることを示した。疾患重症度(線維症病期)ではコラーゲン発現の形態学的変化が予想されるため、こうした相違によりDL予測の正確性が確認される。更に、Kleiner線維症病期(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)に従って変換されたFOV DLパターン予測と、十分な訓練を受けた組織学者らにより手動で決定された線維症スコアとの間には良好な一致が観察された(訓練セットではk=0.77)。
【0252】
NASH肝細胞風船化パターン認識モデルの検証
最も最適な風船化細胞検出DLモデル(正確性=98%、コホートI)を選択して、検証コホート(コホートII)の全ての利用可能な生検に細胞レベルで適用した。
全ての注釈された風船化(N=422)及び隣接正常肝細胞(N=149)でのモデルの検証を調査した。結果は、このコホート非依存性の細胞セットでの予測正確性(93.8%)が優れていることを示した(Table 1(表3))。独立した注釈者が、偽陽性(FP)が予測された細胞及び偽陰性(FN)が予測された細胞を再検討して、ラベルが間違っていた細胞注釈を調査した(Table 1(表3))。FNでは、第2の再検討者は、21/23個の細胞が風船化肝細胞であるとみなした。
【0253】
【0254】
次の工程は、パイプラインを完全な生検に適用して、手動注釈と比較することだった。炎症の定量化に関しては、風船化モデルを、検証コホートのサブセット(N=19)に適用した。本発明者らは、スコア全体にわたって風船化細胞数に差異があること、及び手動風船化スコアと自動風船化スコアとの間に一致があることを観察した(Table 2 (表4))。
【0255】
【0256】
NASH自動化肝細胞小葉炎症パイプラインの検証
炎症パイプラインを、まず20個の代表的な試料(コホートVI)に適用して、炎症のスコア化について10個のHPFの自動化選択のプロセスを検証した(
図6)。顕微鏡法に基づくスコア化とWSIに基づくスコア化と間の平均病巣数の比較は、優れた相関性を示した(R=0.907)。更に、#病巣をスコアに変換すると(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)、完全な一致があった。こうした結果は、後者の方法が、追跡研究における残り全ての検証生検(コホートVI)の大規模分析に好適であることを示した。
【0257】
炎症細胞パターン認識モデルの検証
最も最適な炎症細胞検出DLモデル(正確性=91%、コホートI)を選択して、完全なコホート(コホートI及びVI)に適用した。
1試料当たりの重要な細胞数(約106個)を考慮し、及び完全なデータ(つまり、生検全体)を有するという関心において、炎症分析を、全ての炎症スコアを示す少数の試料(N=31)に適用した(コホートI)。小葉炎症全体の分布を見ると、低スコアと高スコアとの間に有意差(p値<0.001)が観察された。
【0258】
線維症パターン認識モデルの臨床検証
深層学習アルゴリズムは、FOVレベルでの線維症組織学的パターンの予測に優れた正確性を示した(正確性=88%、コホートIII)。更に、Kleiner線維症病期(Kleiner、2005年、41巻:1313~1321頁)に従って変換されたFOV値と、十分な訓練を受けた組織学者らにより手動で決定された線維症スコアとの間には良好な一致が観察された(訓練セットではk=0.77及び検証研究ではk=0.93、k=0.70)(Table 3(表5))。
【0259】
【0260】
NASH線維症形態測定学的分析パイプラインの検証
DL線維症パターンモデルを、全ての利用可能な生検試料FOVに適用した(コホートIII~V)。線維症自動スコア化予測に際して、こうしたデータを手動線維症スコアと比較した(Table 3(表5))。コラーゲン発現に関して、線維症の異なる病期にわたって形態測定学的測定の分布を調査した(コホートV)。以前に示されているように(Huang、2013年)、F0、F1&F2、及びF3間のCPA平均レベルには有意差がある(
図7A)。しかしながら、F1及びF2の検出CPAレベルは、基本的な生検切片におけるコラーゲンの観察量に有意な変化がないため類似したままである。隔壁形態学的分析の分布を調査したところ(
図7B)、この測定基準が、F1&F2間の相違を良好に分離することが観察された(p値=0.042)。
【0261】
QuPath等のバイオ画像分析ソフトウェアへの統合。
QuPathは、セルフサービスアプリケーション内の人工知能(AI)アルゴリズムの最終ユーザ経験を向上させるプラグインを開発する能力を提供する(Bankheadら、2017年)。本著者らは、ユーザ受入れ及び経験を増加させるために、オープンソース計算病理学ソフトウェア(QuPAth等)にDLモデルを如何にして統合することができるかを示す(
図8)。
【0262】
パイプラインを全て、オープンソースプラットフォームQuPathに統合し、ユーザが、自動活動性スコア化を再検討及び検証し(しかしながらそれだけでなく、線維症及び脂肪症パイプラインも統合されている)、組織切片のデジタル表示に対する目的の領域(例えば、脂肪症空胞、炎症病巣、風船化細胞、コラーゲン繊維)のマッピングを、スコア化/診断補助として使用することを可能にする(
図9)。
【0263】
結論:
深層学習パラダイムを使用して、NASH組織学的解釈を自動化するための優れた性能を有するモデルを生成することができる。そのような自動化された解釈は、ミクロ又はマクロ細胞(FOV)レベル並びに生検レベルの両方で正確である。全てのパイプラインにおいてロバストな正規化工程を統合することにより、この定量化プロセスは、いかなる改変も施さずに新しいコホートに拡張可能になる。
【0264】
風船化のスコア化を高い正確性で完全に自動化することができ、風船化肝細胞が見逃されないことを保証するスコア化補助(潜在的な風船化肝細胞を強調する)として使用することができる。
【0265】
炎症をスコア化するためには、WSIに基づく手法が、顕微鏡法に基づく手法の代替であり得る。この手法を、DL炎症細胞パターン認識及び病巣数と組み合わせて、スコア化プロセスを完全に自動化することができる。
【0266】
線維症モデルに関しては、生検レベルでの予測を集約した後、予測臨床スコアの正確性を、人間の専門家注釈と比較して検証した。線維症FOVパターンの予測は、生検切片の病理学的に関連する区域に特に集中させることができるCPA及び隔壁定量化に対する付加価値でもある。CPA及び隔壁形態学的特徴を、全ての線維症スコアのより良好な判別に使用することができる。
【0267】
生検画像からのコラーゲン発現パターン(CPA、隔壁形態学的特徴)の定量化を自動化するための方法は幾つか提案されているが、NASH線維症スコアのスコア化を自動化するための実現可能性を示す以前の研究はない。本発明者らは、このプロセスを如何にして完全自動化することができるかを、及び更には、DL予測情報を如何にして探究して、病理学的に関連する区域のコラーゲン発現の定量化に集中させるか示す。
【0268】
最後に、NASH活動性のレベルを線維症進展のリスクと関連付け、線維症病期を長期的肝臓転帰(肝硬変、肝移植、HCC、又は肝臓死)のリスクと関連付ける最先端の技術は、肝硬変への線維症進展のリスクを評価するための、及び長期的な重症合併症のリスクを評価するためのDLの使用を支持する。
【0269】
炎症及び風船化パイプラインをQuPathに統合し、ユーザに、定量的な結果並びに興味深い生物学的情報(つまり、病巣の位置、風船化細胞の位置、脂肪症の位置...)の定性的マッピングを提供した。
【0270】
手動注釈と比較すると、QuPathに統合されたDLに基づくスコア化方式は、生検中の全ての細胞の網羅的で再現可能な分析を可能にする。例えば、本スコア化方式では、専門家による解釈がより困難である特定の細胞領域に特別の注意が払われる。そうした予測スコアを、前臨床研究でのハイスループット活動性スコア化に、及び将来的には臨床応用のためのコンパニオン診断ツールとして使用することができる。
【0271】