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特許7293246微多孔膜、バッテリーセパレータ、及びこれらの製造方法、デバイス及び多層微多孔膜
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  • 特許-微多孔膜、バッテリーセパレータ、及びこれらの製造方法、デバイス及び多層微多孔膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】微多孔膜、バッテリーセパレータ、及びこれらの製造方法、デバイス及び多層微多孔膜
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/15 20060101AFI20230612BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230612BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230612BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20230612BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230612BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20230612BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230612BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20230612BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B32B37/15
B32B5/18 101
B32B27/32 E
H01M50/403 B
H01M50/409
H01M50/417
B01D71/26
B01D69/12
B01D69/02
B01D69/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545681
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019020183
(87)【国際公開番号】W WO2019169210
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】62/637,576
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢明
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321323(JP,A)
【文献】特開平11-329390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M50/40-50/497
B01D53/22
61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層微多孔膜の製造方法であって、前記方法は:
第一樹脂混合物を押出して、第一非多孔性前駆体膜を製造して、次いで、少なくとも縦方向(MD)に前記第一非多孔性前駆体膜を延伸して細孔を形成することと;
別に、第二樹脂混合物を押出して、第二非多孔性前駆体膜を製造して、次いで、少なくとも縦方向(MD)に前記第二非多孔性前駆体膜を延伸して細孔を形成することと;
前記MD延伸第一前駆体と前記MD延伸第二前駆体とを積層することと
を含み、
前記MD延伸第一前駆体を、積層前に圧延する、方法。
【請求項2】
前記第一樹脂混合物は、ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含み、かつ選択的に、前記第二樹脂混合物は、ポリエチレン樹脂及び140℃以下、好ましくは135℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一非多孔性前駆体膜及び前記第二非多孔性前駆体膜の少なくとも1つは、前記第一又は第二樹脂混合物と共に少なくとも1つの他の樹脂混合物を共押出することによって製造された共押出膜であり、前記他の樹脂混合物は前記第一又は第二樹脂混合物と同じであってもよく、異なっていてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一非多孔性前駆体を、積層前に、前記MDおよび横方向(TD)に順次又は同時に延伸する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記MD延伸第一前駆体及び前記MD延伸第二前駆体の少なくとも1つを、積層前に処理して接着性を向上する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体に対する処理は、予備加熱、コロナ処理、プラズマ処理、粗面化、UV照射、エキシマ照射、又は接着剤塗布から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記多層微多孔膜は:
ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む、前記MD延伸第一前駆体の膜と;
ポリエチレン樹脂を含む、前記MD延伸第二前駆体の膜と;
ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む第三膜
を備え、
前記MD延伸第一前駆体の膜、前記MD延伸第二前駆体の膜、前記第三膜の順で、積層される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む樹脂混合物を押出して、第三非多孔性前駆体を製造し、次いで、前記縦方向(MD)に前記第三非多孔性前駆体を延伸して細孔を形成することによって前記第三膜を製造する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記多層微多孔膜は:
ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む、前記MD延伸第一前駆体の膜と
ポリエチレン樹脂を含む、前記MD延伸第二前駆体の膜と;
ポリエチレンを含む第三膜
を備え、
前記MD延伸第一前駆体の膜、前記MD延伸第二前駆体の膜、前記ポリエチレンを含む第三膜の順で、積層される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記多層微多孔膜は、二層微多孔膜、三層微多孔膜、四層以上を備える微多孔膜、ドライプロセス二層微多孔膜、ドライプロセス三層微多孔膜、又はドライプロセス四層以上微多孔膜、のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記、前記第二樹脂混合物は、ポリエチレン樹脂、及び140℃以下、好ましくは135℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも一つを含み、前記第一非多孔性前駆体を、積層前に、MDおよびTDに順次又は同時に延伸し、MDおよびTD延伸された第一前駆体を積層前に圧延する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記MD及びTD延伸第一前駆体並びに前記MD延伸第二前駆体の少なくとも1つを、延伸後だが積層前に処理して接着性を向上する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記MD及びTD延伸第一前駆体と前記MD延伸第二前駆体とを積層した後、この積層物を圧延し、前記MD及びTD延伸第一前駆体並びに前記MD延伸第二前駆体の少なくとも1つを、延伸後だが積層前に処理して接着性を向上する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記MD延伸第一前駆体を、積層前に圧延すること、
前記MD延伸第一前駆体及び前記MD延伸第二前駆体の少なくとも1つを、積層前に圧延すること、
前記MD延伸第一前駆体及び前記MD延伸第二前駆体の両方を、積層前に圧延すること、
前記MD延伸第一前駆体及び前記MD延伸第二前駆体の少なくとも1つを、延伸後、圧延前又は圧延後、及び積層前に処理して接着性を向上すること、
前記MD延伸第一前駆体及び前記MD延伸第二前駆体の両方を、延伸後、圧延前又は圧延後、及び積層前に処理して接着性を向上すること、
のうち少なくとも1つの工程を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって製造された多層微多孔膜であって、前記多層微多孔質膜はドライプロセス多層微多孔膜である、多層微多孔膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規及び/若しくは改良された微多孔膜、セパレータ膜、前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ、セパレータを備えるセル若しくはバッテリー、並びに/又は新規及び/若しくは改良された微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータの製造方法及び/若しくは使用方法を対象にする。例えば、新規及び/又は改良された微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。更に、新規及び/又は改良された方法は、微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータを製造し、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。新規及び/又は改良された微多孔膜、及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、ドライプロセス微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータであり、それぞれ、被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜及び被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜を備えるバッテリーセパレータとの競合力があるか又はこれらより良好である。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、ウェットプロセス微多孔膜は、特定のこれまでのCelgard(登録商標)ドライプロセス膜を備えさえする特定のドライプロセス膜と比較して、いくつかの好ましい特性を有してきた。これらの好ましい特性は、より高い突刺強度、より良好な厚さ均一性、及び/又はより高い絶縁破壊値を含むときもある。しかしながら、ウェットプロセス微多孔膜の欠点があり、ウェットプロセス微多孔膜はより高い製造コストを必要とし、これらのウェット膜の処理において油及び有機溶媒を使用するため、あまり環境に優しくないという事実が挙げられる。ウェットプロセス膜がドライプロセス膜よりコストを要するもうひとつの理由は、ウェットプロセス膜が特定のドライプロセス膜ができるように非被覆で使用することができないからである。これは、ドライプロセス膜と異なり、ウェットプロセス膜は、ポリエチレンがリチウムイオンバッテリーにおいて高電圧にさらされるために酸化しやすいからである。ほとんど全てのウェットプロセス膜は、酸化するポリエチレン樹脂を用いて製造される。いくつかのドライプロセス膜では、膜にポリプロピレンの外層を付加することによってこの問題は解決される。
【0003】
例えば、その強度、厚さ均一性、及び絶縁破壊において、ウェットプロセス膜との競合力があるか又はこれらより良好であるドライプロセス膜を製造するための、いくつかの成功した試みを含む、いくつかの試みが行われてきた。例えば、特許文献1(国際出願第PCT/US2017/061277号)及び特許文献2同第PCT/US2017/060377号)参照。なお、これらの出願の両方は参照により本明細書に完全に組み入れられる。これらの出願におけるセパレータは、ウェットプロセス膜との競合力があるか又はこれらより良好である。しかしながら、各方法は、いくつか又は多くの大幅に改良された特性を有する膜を製造するが、いくつかの改良を必要とする特性もいまだにある。改良された特性及び改良を必要とする特性は、各方法で異なる。消費者又はバッテリー製造者にとってどの特性が重要であるかに応じて、1つの膜は別の膜より望ましいと言える。望ましい特性は、膜が如何に使用されるかなど、いくつかの因子に依存する。例えば、膜がバッテリーに使用される場合、如何にバッテリーを製造するか及び製造されるバッテリーの種類が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際出願第PCT/US2017/061277号
【文献】国際出願PCT/US2017/060377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日使用される多くのドライプロセス膜は、例えば、収縮率及び/又は突刺強度を向上するために被覆されるが、これは追加の工程および層である。
したがって、各個別の顧客ニーズを満足し、及び/又はウェットプロセス膜との競合力があるか若しくはよりコスト的(環境的及び金銭的)に優れた改良された特性を有する新規ドライプロセス膜に対するニーズがある。更に、被覆する必要なく、被覆膜の強度を有する非被覆ドライプロセス膜を製造することが切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも選択された実施形態、態様又は目的によれば、上記切望、ニーズ若しくは問題の少なくともいくつかは、本願、本開示又は本発明の課題であり得、及び/又はウェットプロセス膜性能との競合力があるか若しくは優れる好適である可能性があるドライプロセス微多孔膜を本明細書において提供若しくは説明する。更に、本明細書に記載されている好適である可能性がある膜は、例えば、低減された収縮率を達成するために被覆する必要がない。
【0007】
本願若しくは本発明は、新規及び/若しくは改良された微多孔膜、セパレータ膜、前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ、セパレータを備えるセル若しくはバッテリー、並びに/又は新規及び/若しくは改良された微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータの製造方法及び/若しくは使用方法を対象にする。例えば、新規及び/又は改良された微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。更に、新規及び/又は改良された方法は、微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータを製造し、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。新規及び/又は改良された微多孔膜、及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、ドライプロセス微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータであり、それぞれ、被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜及び被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜を備えるバッテリーセパレータとの競合力があるか又はこれらより良好である。
【0008】
少なくとも特定の実施形態、態様又は目的によれば、本願若しくは本発明は、新規及び/若しくは改良された微多孔膜、セパレータ膜、前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ、セパレータを備えるセル若しくはバッテリー、並びに/又は新規及び/若しくは改良された微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータの製造方法及び/若しくは使用方法を対象にする。例えば、新規及び/又は改良された微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。更に、新規及び/又は改良された方法は、微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータを製造し、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。新規及び/又は改良された微多孔膜、及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータは、好ましくは、ドライプロセス微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータであり、それぞれ、被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜及び被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜を備えるバッテリーセパレータとの競合力があるか又はこれらより良好である。
【0009】
1つの態様では、多層微多孔膜の製造方法を本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、方法は、第一樹脂混合物を押出して、第一非多孔性前駆体膜を製造して、次いで、縦方向(MD)に前記第一非多孔性前駆体膜を延伸して細孔を形成することを含む。したがって、MD延伸第一非多孔性前駆体膜は細孔を有するか、又は多孔性若しくは微多孔性である。別に、方法は、第二樹脂混合物を押出して、第二非多孔性前駆体膜を製造して、次いで、縦方向(MD)に第二非多孔性前駆体膜を延伸して細孔を形成することを含む。したがって、MD延伸第二非多孔性前駆体膜も細孔を有するか、又は多孔性若しくは微多孔性である。次いで、方法は、MD延伸第一前駆体とMD延伸第二前駆体とを積層する工程を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第一樹脂混合物は、ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、第一樹脂混合物は、ポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン以上の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含み、第二樹脂混合物は、ポリエチレン樹脂及び140℃以下、好ましくは135℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第一非多孔性膜及び第二非多孔性前駆体膜の少なくとも1つは、第一又は第二樹脂混合物と共に少なくとも1つの他の樹脂混合物を共押出することによって製造される共押出膜である。他の樹脂混合物は、第一又は第二樹脂混合物と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、第一非多孔性前駆体の製造後、第一非多孔性前駆体を、積層前に、縦方向(MD)及び横方向(TD)に順次又は同時であってよい。この方法で製造されたMD及びTD延伸第一非多孔性前駆体膜は細孔を有するか、又は多孔性若しくは微多孔性である。この方法のいくつかの好ましい実施形態では、押出して第一非多孔性前駆体を製造する第一樹脂混合物は、ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む。
【0013】
他の実施形態では、MD延伸第一非多孔性前駆体の製造後、MD延伸第一非多孔性前駆体を、積層前に圧延する。いくつかの実施形態では、MD及びTD延伸後に、第一非多孔性前駆体と同時に又はその後に、この圧延を行う。例えば、第一非多孔性前駆体をMD延伸してからTD延伸するか、又は同時にMD及びTD延伸してからMD及びTD延伸した第一非多孔性前駆体を、積層前に圧延してよい。MD及びTD延伸及び圧延第一非多孔性前駆体も細孔を有するか、又は多孔性若しくは微多孔性である。この方法のいくつかの好ましい実施形態では、押出して第一非多孔性前駆体を製造する第一樹脂混合物は、ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む。
【0014】
他の実施形態では、積層工程後に圧延を行ってよい。例えば、MD延伸第一非多孔性前駆体及びMD延伸第二非多孔性前駆体を積層後に、圧延を行ってよい。他の実施形態では、MD及びTD延伸第一非多孔性前駆体並びにMD延伸第二非多孔性前駆体を積層後に、圧延を行ってよい。更なる実施形態では、MD及びTD延伸並びに圧延第一非多孔性前駆体並びにMD延伸第二非多孔性前駆体を積層後に、圧延を行ってよい。この実施形態では、2つの圧延工程を行う。積層前のMD及びTD延伸第一非多孔性前駆体の圧延並びにMD及びTD延伸並びに圧延第一非多孔性前駆体並びにMD延伸第二非多孔性前駆体の積層物の圧延。
【0015】
いくつかの実施形態では、MD延伸第一非多孔性前駆体及びMD延伸第二非多孔性前駆体の少なくとも1つを、積層前に処理して接着性を向上する。他の実施形態では、MD及びTD延伸第一非多孔性前駆体並びにMD延伸第二非多孔性前駆体の少なくとも1つを、延伸後だが積層前に処理して接着性を向上する。更なる実施形態では、MD及びTD延伸並びに圧延第一非多孔性前駆体並びにMD延伸第二非多孔性前駆体の少なくとも1つを、延伸及び圧延後だが積層前に処理して接着性を向上する。前駆体に対する処理は、予備加熱、コロナ処理、プラズマ処理、粗面化、UV照射、エキシマ照射、又は接着剤塗布から成る群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法によって製造される多層微多孔膜は、ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下、すなわち、140℃~330℃の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む第一MD延伸非多孔性前駆体膜;ポリエチレン樹脂を含む第二MD延伸非多孔性前駆体膜;並びにポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む第三膜を備え、薄膜はこの順に積層する。ポリプロピレン樹脂及び140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む樹脂混合物を押出(又は共押出)して、第三非多孔性前駆体を製造し、次いで、前記縦方向(MD)に前記第三非多孔性前駆体を延伸して細孔を形成することによって、第三膜を製造してよい。他の実施形態では、第三非多孔性前駆体を、順次又は同時にMD及びTD延伸してよく、他の実施形態では、第三非多孔性前駆体を、順次又は同時にMD及びTD延伸してから圧延してよい。他の実施形態では、圧延してから被覆するか、又は被覆してから圧延するか、又は圧延し、被覆してから再度圧延してよい。更に他の実施形態では、ポリエチレン樹脂を含む樹脂混合物を押出して第三非多孔性前駆体を製造し、次いで、縦方向(MD)に第三非多孔性前駆体を延伸して細孔を形成することによって第三膜を製造してよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、多層微多孔膜は、二層微多孔膜である。例えば、第一MD延伸非多孔性前駆体及び第二MD延伸非多孔性前駆体のみを積層することによって、多層微多孔膜を製造してよい。他の実施形態では、多層微多孔膜は、三層微多孔膜である。例えば、第一MD延伸非多孔性前駆体及び第二MD延伸非多孔性前駆体を第三延伸非多孔性前駆体と共に積層することによって、多層微多孔膜を製造してよい。
【0018】
別の態様では、多層微多孔膜を本明細書に開示する。微多孔膜は、本明細書に記載されているいずれかの方法によって製造される多層微多孔膜であってよい。いくつかの実施形態では、多層微多孔膜は、以下の特性:a)50~400、100~400、150~400、100~300、又は好ましくは100~200のJISガーレー;b)150gf~600gf、300gf~600gf、320gf~600gf、より好ましくは380gf~600gf、最も好ましくは400gf~600gf以上の突刺強度;c)500kg/cm超、600kg/cm超、700kg/cm超、好ましくは1,000kg/cm超のMD強さ;d)300kg/cm超、350kg/cm超、好ましくは500kg/cm超、最も好ましくは600kg/cm超のTD強さ;e)好ましくは30%以上、40%以上、50%以上、又はより好ましくは100%超のMD伸び;f)好ましくは30以上、又は40%、又は50%、又は60%又はより好ましくは70%以上のTD伸び;g)25%未満、より好ましくは20%未満、さらにより好ましくは15%未満;最も好ましくは10%以下である、105℃、120℃、130℃、又は140℃の少なくとも1つにおけるMD収縮率;h)15%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満である、105℃、120℃、130℃、又は140℃の少なくとも1つにおけるTD収縮率;j)良好な均一性、及び結果として、より高い最小絶縁破壊値;k)25ミクロン以下、好ましくは20ミクロン以下、最も好ましくは15ミクロン以下の厚さ;並びに減少された含水率の少なくとも1つを有するものである。膜は、前述の特性の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、又は12全てを有してよい。
【0019】
減少された含水率に関して、本明細書に記載されている膜を被覆する必要がないという事実のためにこの特性は観察される。特に、これらは、雰囲気からの水分(水)を吸着するセラミックコーティングで被覆する必要がない。本明細書に記載されている膜は、カールフィッシャー滴定法により測定される場合、1500ppm以下と低い含水率を有し得る。好ましくは、含水率は、1000ppm未満、900ppm未満、800ppm未満、700ppm未満、600ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、最も好ましくは200ppm未満である。
【0020】
別の態様では、バッテリーセパレータを開示する。バッテリーセパレータは、本明細書に記載されている多層微多孔膜の少なくとも1つを備えてよい。バッテリーセパレータは、その片面又は両面で被覆された少なくとも1つの膜を備えてよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの膜を、対向する2つの面で被覆する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの膜を、1つの面のみで被覆する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの膜を、セラミックコーティングで被覆しない。
【0021】
他の態様では、圧延してから被覆(又は処理)するか、又は被覆してから圧延するか、又は圧延し、被覆してから再度圧延してよい。
【0022】
更に別の態様では、本明細書に記載されているいずれかのバッテリーセパレータを備える二次リチウムイオン電池を開示する。
【0023】
更に別の態様では、二次リチウムイオン電池又はセル用電極と直接接触している本明細書に記載されているいずれかのバッテリーセパレータを備えるコンポジットを開示する。
【0024】
別の態様では、本明細書に記載されているいずれかのセパレータを備える少なくとも1つのバッテリー又はセルを備える乗り物又はデバイスを開示する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本明細書に開示されているいくつかの方法の概略図である。
図2】本明細書に開示されている片面及び両面被覆微多孔膜の概略図である。
図3】リチウムイオン電池の概略図である。
図4】本明細書に記載されている少なくともいくつかの実施形態による微多孔膜の断面SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次の詳細な説明、実施例、及び図を参照することによって本明細書に記載されている実施形態をより容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載されている要素、装置及び方法は詳細な説明、実施例、及び図に示されている特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は単に本発明の原理の例証にすぎないことを認識すべきである。多くの修正及び適応は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者には容易に明らかになるだろう。
【0027】
加えて、本明細書に開示されている全ての範囲はその中に包含されているいずれか及び全ての部分範囲を包含すると理解されるものとする。例えば、「1.0~10.0」の定められた範囲は、最小値1.0以上で始まり、最大値10.0以下、例えば、1.0~5.3、又は4.7~10.0、又は3.6~7.9で終わるいずれか及び全ての部分範囲を含むと見做されるべきである。
【0028】
本明細書に開示されている全範囲は、明示的に別段に定められない限り、範囲の端点を含むと見做されるものとする。例えば、「5~10(between 5 and 10)」、「5~10(from 5 to 10)」、又は「5~10(5-10)」の範囲は、端点5及び10を含むと概して見做されるべきである。
【0029】
更に、言い回し「以下(up to)」は、量(amount)又は量(quantity)との関連で使用され、量は少なくとも検出可能な量(amount又はquantity)であると理解されるものとする。例えば、特定の量「以下(up to)」の量で示される材料は、検出可能な量から特定の量を含んでそれ以下で存在し得る。
【0030】
本明細書において、例えば、リチウムイオン電池用バッテリーセパレータとして又はその一部として使用することができる多層微多孔膜の新規及び改良された製造方法を開示する。方法は、好ましくは「ドライ」法であり、新規及び改良された方法の押出工程において溶媒を使用しないことを意味する。例えば、「ドライ」プロセスは、Celgard(登録商標)ドライプロセスであってよい。方法により製造される多層微多孔膜は、被覆又は非被覆ウェットプロセス膜との競合力があるか又はこれより良好である。本明細書において微多孔膜を備えるバッテリーセパレータも開示する。これらのセパレータを備えるリチウムイオン二次電池及び乗り物又はデバイスも開示する。
【0031】
方法
本明細書に記載されている方法は、以下の工程:(1)第一樹脂混合物を押出することによって第一非多孔性前駆体を製造し、次いで、縦方向(MD)に第一非多孔性前駆体膜を延伸して延伸第一非多孔性前駆体膜を製造する工程;(2)別に、第二非多孔性前駆体膜を製造し、次いで、縦方向(MD)に非多孔性前駆体膜を延伸して第二延伸非多孔性前駆体膜を製造する工程;次いで(3)延伸第一非多孔性前駆体と延伸第二非多孔性前駆体を積層する工程を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。工程(2)を、工程(1)前、後、又は同時に行ってよい。好ましい実施形態では、延伸第一非多孔性前駆体を、第一非多孔性前駆体膜の後あるいは同時に、MD及びTD延伸によって製造する。例えば、第一非多孔性前駆体を、MD延伸してからTD延伸してもよく、MD及びTD延伸を同時に行ってもよい。別の好ましい実施形態では、延伸第一非多孔性前駆体膜を、工程(1)において上記のようにMD及びTD延伸し、次いで、該第一非多孔性前駆体膜を圧延することによって製造してよい。それから、MD及びTD延伸並びに圧延された第一非多孔性前駆体を、MD延伸第二非多孔性前駆体に積層してよい。更なる実施形態では、圧延工程(4)を、積層工程後に行ってよい。他の好ましい実施形態では、工程(1)において製造されたMD延伸第一非多孔性前駆体膜、工程(2)において製造されたMD延伸第二非多孔性前駆体膜、工程(1)において製造されたMD及びTD延伸第一非多孔性前駆体膜、又は工程(1)において製造されたMD及びTD延伸並びに圧延された第一非多孔性前駆体膜のいずれか又は両方に、処理工程(5)を行ってよい。処理工程(5)を、工程(1)及び/又は(2)後だが、積層工程(3)前に行う。例えば、いくつかの実施形態では、工程(1)後だが、第二延伸非多孔性前駆体膜を工程(2)において製造する前に、処理工程を延伸第一非多孔性前駆体膜に行ってよい。いくつかの実施形態では、処理工程を行って、MD延伸第一非多孔性前駆体膜、MD及びTD延伸非多孔性前駆体膜、又はMD及びTD延伸並びに圧延された非多孔性前駆体膜並びに延伸第二非多孔性前駆体膜間の接着性を改良する。
【0032】
他の態様では、圧延してから被覆(又は処理)するか、又は被覆してから圧延するか、又は圧延し、被覆してから再度圧延してよい。
【0033】
本明細書に記載されている方法又はプロセスのいくつかの実施例を図1に示す。図1では、MDOはMD延伸であり、TDOはTD延伸であり、樹脂Xは140℃以上且つ330℃以下の融点を有する樹脂である。図1では、PEを、単独又は140℃未満、好ましくは135℃未満の融点を有する樹脂と押出してよい。あるいは、PEの代わりに、140℃未満、好ましくは135℃未満の融点を有する樹脂。
【0034】
(1)延伸又は延伸及び圧延第一非多孔性前駆体膜の製造
延伸(MD又はMD及びTD)又は延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延第一非多孔性前駆体膜の製造工程は、そのように限定されない。工程は、第一樹脂混合物を押出して非多孔性前駆体膜を製造し、次いで、該非多孔性前駆体膜を延伸(MD又はMD及びTD)するか又は該非多孔性前駆体膜を延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延することを含む、から成る、又はから本質的に成り得る。
【0035】
押出工程は、そのように限定されない。好ましい実施形態では、押出工程はドライ押出工程であり、油も溶媒も使用しないで樹脂混合物を押出することを意味する。他の好ましい実施形態では、押出工程は、2つ以上の樹脂混合物を押出して二層、三層、又は四層以上の非多孔性前駆体膜を製造する共押出を含み得る。2つ以上の樹脂混合物は、それぞれ同じであってもよく、これら全てが異なっていてもよい。
【0036】
工程(1)において使用される樹脂混合物はそのように限定されず、いずれもの押出可能な樹脂、特に、Celgard(登録商標)ドライプロセスなどのドライプロセスの一部として押出可能な樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。いくつかの好ましい実施形態では、工程(1)において使用される樹脂混合物は、ポリプロピレン又はCelgard(登録商標)ドライプロセスなどのドライプロセスに適している高融点樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。例えば、高融点樹脂は、PMP、PETなどのポリエステル、POM、PA、PPS、PEEK、PTFE、又はPBTのいずれか1つであってよい。
【0037】
MD延伸は、そのように限定されない。縦方向(MD)延伸を、一段階工程又は多段階工程として、及び冷延伸、熱延伸又は両方(例えば、多段階実施形態において)として行ってよい。1つの実施形態では、冷延伸を<Tm-50℃において行ってよく、Tmは膜前駆体中のポリマーの融点であり、別の実施形態では、<Tm-80℃であってよい。1つの実施形態では、熱延伸を<Tm-10℃において行ってよい。1つの実施形態では、全縦方向延伸は、50~500%(すなわち、0.5~5倍)の範囲であってよく、別の実施形態では、100~300%(すなわち、1~3倍)であってよい。これは、膜前駆体の幅(MD方向)は、初めの幅、すなわち、延伸前と比較して、MD延伸中50~500%又は100~300%増加する。いくつかの好ましい実施形態では、膜前駆体を、180~250%(すなわち、1.8~2.5倍)の範囲で延伸する。縦方向延伸中、前駆体は、横方向に収縮し得る(従来)。
【0038】
いくつかの実施形態では、TD及び/又はMD緩和を、MD延伸中若しくはMD延伸後、好ましくはMD延伸後、又は多段階工程の場合、MD延伸加工の少なくとも1つの工程中若しくはMD延伸加工の少なくとも1つの工程後、好ましくはMD延伸加工の少なくとも1つの工程後に行い、10~90%MD及び/又はTD緩和、20~80%MD及び/又はTD緩和、30~70%MD及び/又はTD緩和、40~60%MD及び/又はTD緩和、少なくとも20%MD及び/又はTD緩和、50%、その他が挙げられる。いずれもの特定の理論に束縛されることを望まないが、緩和は、MD延伸を原因とする「断面収縮」を低減し、及び/又は最終製品のMD収縮に役立つと考えられる。
【0039】
縦方向(MD)延伸、特に、初期又は第一MD延伸は、非多孔性前駆体中に細孔を形成する。一軸延伸(すなわち、MD延伸のみ)膜前駆体のMD引張強さは高い、例えば、1500kg/cm以上又は200kg/cm以上である。しかしながら、これらの一軸延伸膜前駆体のTD引張強さ及び突刺強度は最適でない。
【0040】
TD延伸もそのように限定されず、本明細書に言及された目的に反しないいずれもの方法で行うことができる。冷工程、熱工程、又は両方の組合せ(例えば、本明細書中以下に記載されている多段階工程TD延伸)として、横方向延伸を行ってよい。1つの実施形態では、全横方向延伸は、100~1200%の範囲、200~900%の範囲、450~600%の範囲、400~600%の範囲、400~500%の範囲などであってよい。1つの実施形態では、制御された縦方向緩和は、5~80%の範囲であってよく、別の実施形態では、15~65%の範囲であってよい。1つの実施形態では、TDを多段階工程で行ってよい。横方向延伸中、前駆体を縦方向に収縮させてもよく、収縮させなくてもよい。いくつかの実施形態では、TD延伸を、MD緩和、TD緩和、又はMD及びTD緩和と共に行ってよい。緩和は、延伸中、延伸前、又は延伸後に起こり得る。
【0041】
例えば、TD延伸を、縦方向(MD)緩和及び/又は横方向(TD)緩和と共に行ってもよく、これらの緩和なしで行ってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、MD及び/又はTD緩和を行い、10~90%MD及び/又はTD緩和、20~80%MD及び/又はTD緩和、30~70%MD及び/又はTD緩和、40~60%MD及び/又はTD緩和、少なくとも20%MD及び/又はTD緩和、50%などが挙げられる。MD及び/又はTD緩和は、例えば、製品のTD収縮を低減し得る。
【0042】
横方向(TD)延伸は横方向引張強さを向上し得、例えば、TD延伸を受けず、縦方向(MD)延伸を受けた微多孔膜、例えば、本明細書に記載されている多孔性一軸延伸膜前駆体と比較して、微多孔膜の割れを減少し得る。厚さを低減してもよく、これは望ましい。しかしながら、TD延伸は、JISガーレー減少、例えば、100未満又は50未満のJISガーレー、及び多孔性一軸(MDのみ)延伸膜前駆体、例えば、本明細書に記載されているMDのみ延伸第二非多孔性前駆体膜多孔性二軸延伸膜前駆体膜と比較して、多孔性二軸延伸膜前駆体の多孔度増加をもたらし得る。TD収縮は、MD延伸非多孔性前駆体のTD延伸によって増大し得るが、これは、緩和によっていくらか減少することができる。
【0043】
延伸非多孔性前駆体膜の圧延もそのように限定されず、本明細書に言及された目的に反しないいずれもの方法で行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、延伸(MD又はMD及びTD)第一非多孔性前駆体膜の厚さを低減する手段として、延伸(MD又はMD及びTD)第一非多孔性前駆体膜の多孔度を低減、及び/又は延伸(MD又はMD及びTD)第一非多孔性前駆体膜の横方向(TD)引張強さ若しくは突刺強度を更に向上する手段として、圧延工程を行ってよい。圧延は、強度、湿潤性、及び/又は均一性も向上し、製造プロセス中、例えば、MD及びTD延伸加工中に取り込まれた表面層欠陥を低減し得る。テクスチャード圧延ロール(texturized calendering roll)の使用は、接着性、例えば、積層工程における延伸(MD又はMD及びTD)若しくは延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延第一非多孔性前駆体膜と延伸第二非多孔性前駆体膜との接着性に役立ち得るか、又は積層工程後のコーティングの接着性を向上し得る。
【0044】
圧延は、冷(室温未満)、環境(室温)、若しくは熱(例えば、90℃)であってよく、制御された方法で厚さを低減するために圧の印加若しくは熱及び圧の印加を含んでよい。加えて、圧延方法は、熱、圧及び感熱性材料の高密度化速度の少なくとも1つを使用してよい。加えて、圧延方法は、感熱性材料の選択的高密度化するため、均一若しくは不均一な圧延条件(滑面ロール、粗面ロール、パターン化ロール、ミクロパターン化ロール、ナノパターン化ロール、速度変化、温度変化、圧変化、湿度変化、ダブルロール工程、複数ロール工程、又はこれらの組合せの使用によってなど)の提供するため、改良された、所望の若しくは唯一の構造、特性、及び/又は性能を得るため、得られた構造、特性、及び/又は性能を得る若しくは制御するためなどの均一若しくは不均一な熱、圧、及び/又は速度を使用してよい。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態では、圧延は、延伸(MD又はMD及びTD)第一非多孔性前駆体の厚さを低減することができる。いくつかの実施形態では、厚さは、30%以上、40%以上、50%以上、又は60%以上減少してよい。いくつかの好ましい実施形態では、厚さを、10ミクロン以下まで、時々、9、又は8、又は7、又は6、又は5、又は4、又は3、又は2ミクロン以下まで低減する。
【0046】
(2)延伸又は延伸及び圧延第一非多孔性前駆体膜の製造
延伸第二非多孔性前駆体膜の製造工程はそのように限定されない。工程は、第二樹脂混合物を押出して非多孔性前駆体膜を製造し、次いで、該非多孔性第二前駆体膜をMD延伸して、とりわけ、細孔を形成することを含む、から成る、又はから本質的に成り得る。
【0047】
押出工程はそのように限定されない。好ましい実施形態では、押出工程はドライ押出工程であり、油も溶媒も使用しないで樹脂混合物を押出することを意味する。他の好ましい実施形態では、押出工程は、2つ以上の樹脂混合物を押出して二層、三層、又は四層以上の非多孔性前駆体膜を製造する共押出を含み得る。2つ以上の樹脂混合物は、それぞれ同じであってもよく、これら全てが異なっていてもよい。
【0048】
工程(2)において使用される樹脂混合物はそのように限定されず、いずれもの押出可能な樹脂、特に、Celgard(登録商標)ドライプロセスなどのドライプロセスの一部として押出可能な樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。いくつかの好ましい実施形態では、工程(2)において使用される樹脂混合物は、ポリエチレン樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。ポリエチレン樹脂はそのように限定されず、いくつかの実施形態では、低分子量又は超低分子量ポリエチレン樹脂を含んでよい。いくつかの特に好ましい実施形態では、工程(1)の樹脂は、ポリプロピレン又は別の高融点樹脂の少なくとも1つを含む、から成る、又はから本質的に成り得、工程(2)の樹脂は、ポリエチレン樹脂又は140℃以下、好ましくは135℃以下の融点を有する樹脂の少なくとも1つを含む、から成る、又はから本質的に成る。
【0049】
MD延伸はそのように限定されない。縦方向(MD)延伸を、一段階工程又は多段階工程として、及び冷延伸、熱延伸又は両方(例えば、多段階実施形態において)として行ってよい。1つの実施形態では、冷延伸を<Tm-50℃において行ってよく、Tmは膜前駆体中のポリマーの融点であり、別の実施形態では、<Tm-80℃であってよい。1つの実施形態では、熱延伸を<Tm-10℃において行ってよい。1つの実施形態では、全縦方向延伸は、50~500%(すなわち、0.5~5倍)の範囲であってよく、別の実施形態では、100~300%(すなわち、1~3倍)であってよい。これは、膜前駆体の幅(MD方向)は、初めの幅、すなわち、延伸前と比較して、MD延伸中50~500%又は100~300%増加する。いくつかの好ましい実施形態では、膜前駆体を、180~250%(すなわち、1.8~2.5倍)の範囲で延伸する。縦方向延伸中、前駆体は、横方向に収縮し得る(従来)。いくつかの実施形態では、MD及び/又はTD緩和を、MD延伸中若しくはMD延伸後、好ましくはMD延伸後、又は多段階工程の場合、MD延伸加工の少なくとも1つの工程中若しくはMD延伸加工の少なくとも1つの工程後、好ましくはMD延伸加工の少なくとも1つの工程後に行い、10~90%MD及び/又はTD緩和、20~80%MD及び/又はTD緩和、30~70%MD及び/又はTD緩和、40~60%MD及び/又はTD緩和、少なくとも20%MD及び/又はTD緩和、50%、その他が挙げられる。いずれもの特定の理論に束縛されることを望まないが、TD緩和と共にMD延伸を行うことは、MD延伸によって形成される細孔を小さいまま保持すると考えられる。他の好ましい実施形態では、TD緩和は行わない。
【0050】
(3)積層工程
積層工程はそのように限定されず、本明細書に言及された目的に反しないいずれもの方法で行うことができる。積層工程は、延伸(MD又はMD及びTD)又は延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延第一非多孔性前駆体膜と延伸第二非多孔性前駆体膜との積層を含む、から成る、又はから本質的に成る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の薄膜を、積層工程においてこれらの2つの薄膜と積層する。例えば、第三MD延伸非多孔性前駆体膜を工程(1)又は(2)と同様に製造してよく、第三MD及びTD延伸非多孔性前駆体膜を工程(1)と同様に製造してよく、又は工程(2)において製造されたものと同様に第三MD及びTD延伸並びに圧延された非多孔性前駆体膜を製造してよく、この第三膜をいずれの順序でも第一及び第二膜と積層してよい。いくつかの実施形態では、第一膜は、ポリプロピレン又は別の高融点樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得、第二膜は、ポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成り得、第三膜は、ポリプロピレン又は別の高融点樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得る。かかる実施形態では、薄膜を、以下の順:第一、第二、第三(PP-PE-PP)で積層してよい。いくつかの他の実施形態では、第一膜は、ポリプロピレン又は別の高融点樹脂を含む、から成る、又はから本質的に成り得、第二膜は、ポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成り得、第三膜は、ポリエチレンを含む、から成る、又はから本質的に成り得、MD延伸のみ行う。かかる実施形態では、薄膜を、以下の順:第二、第一、第三(PE-PP-PE)で積層してよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、積層は、例えば、延伸(MD又はMD及びTD)又は延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延第一非多孔性前駆体膜の表面を延伸第二非多孔性前駆体膜の表面と接触させて、熱、圧、並びに/又は熱及び圧を用いて2つの面を相互に固定することを含む。第三膜を、同じ方法で積層してよい。例えば、共押出膜及び少なくとも1つの他の薄膜のいずれか若しくは両方の面の粘着性を増加する、2つの面を固着させる、又はより充分に接着するために熱を使用して、積層を容易にしてよい。いくつかの好ましい実施形態では、熱及び圧を使用する。他の好ましい実施形態、例えば、処理を使用した実施例では、微小の圧を印加し、熱を印加しない。面を接合するのに充分な圧のみ必要であってよい。
【0052】
(4)積層後の圧延工程
積層後の圧延工程はそのように限定されず、本明細書に言及された目的に反しないいずれもの方法で行うことができる。いくつかの好ましい実施形態では、積層工程(3)後に工程(1)の一部として圧延を行う。他の好ましい実施形態では、積層工程(3)後に圧延工程(4)の一部として圧延のみを行う。工程(4)における圧延条件は、上記工程(2)に記載されている通りである。
【0053】
(5)処理工程
処理工程はそのように限定されず、本明細書に言及された目的に反しないいずれもの方法で行うことができる。処理工程の1つの目的は、積層工程において積層された薄膜の接着性を改良することである。これらの薄膜の少なくとも1つ(又はこれらの薄膜の全て)に対して、これらを製造した後に処理工程を行ってよい。例えば、延伸後の延伸(MD又はMD及びTD)第一非多孔性前駆体膜又は延伸及び圧延後の延伸(MD又はMD及びTD)及び圧延第一非多孔性前駆体膜に対して処理工程を行ってよい。
【0054】
処理工程の例としては、コロナ処理、プラズマ処理、粗面化、UV処理、エキシマ照射、又は薄膜の1つ以上の表面上への接着剤の使用が挙げられる。
【0055】
処理を適用するいくつかの実施形態では、薄膜を積層する積層工程において、僅かな圧しか印加する必要はない。
【0056】
他の態様では、圧延してから被覆(又は処理)するか、又は被覆してから圧延するか、又は圧延し、被覆してから再度圧延してよい。
【0057】
多層微多孔膜
本明細書に開示されている多層微多孔膜はそのように限定されず、本明細書中上記方法のいずれかによって製造されたいずれかの膜であり得る。他の実施形態では、多層微多孔膜は、以下の特性:a)50~400、100~400、150~400、100~300、又は好ましくは100~200のJISガーレー;b)150gf~600gf、300gf~600gf、320gf~600gf、より好ましくは380gf~600gf、最も好ましくは400gf~600gf以上の突刺強度;c)500kg/cm超、600kg/cm超、700kg/cm超、好ましくは1,000kg/cm超のMD強さ;d)300kg/cm超、350kg/cm超、好ましくは500kg/cm超、最も好ましくは600kg/cm超のTD強さ;e)好ましくは30%以上、40%以上、50%以上、又はより好ましくは100%超のMD伸び;f)好ましくは30以上、又は40%、又は50%、又は60%又はより好ましくは70%以上のTD伸び;g)25%未満、より好ましくは20%未満、さらにより好ましくは15%未満;最も好ましくは10%以下である、105℃、120℃、130℃、又は140℃の少なくとも1つにおけるMD収縮率;h)15%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満である、105℃、120℃、130℃、又は140℃の少なくとも1つにおけるTD収縮率;j)良好な均一性、及び結果として、より高い最小絶縁破壊値;k)25ミクロン以下、好ましくは20ミクロン以下、最も好ましくは15ミクロン以下の厚さ;並びに減少された含水率の少なくとも1つを有するものである。膜は、前述の特性の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、又は12全てを有してよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、改良されたMD/TDバランスがあり、例えば、MDとTDとの比は、0.8:1.2~1.2:0.8である。
【0059】
他の実施形態では、多層微多孔膜は、被覆及び/又は非被覆ウェットプロセス膜より良好又は競合力がある特性を有するものである。例えば、多層微多孔膜は、より良好な突刺強度、MD収縮率、又はTD収縮率の少なくとも1つを有し得る。
【0060】
多層は、第一及び第二非多孔性前駆体膜が共押出によって製造される実施形態では、膜は2層以上又は4層以上を有することを意味する。層の各々は、0.1~50ミクロンの範囲の厚さを有してよい。共押出層は、単一押出層より薄くなり得る。
【0061】
本明細書で使用されるとき、微多孔性は、薄膜、膜、又はコーティングの平均細孔径は1ミクロン以下、0.9ミクロン以下、0.8ミクロン以下、0.7ミクロン以下、0.6ミクロン以下、0.5ミクロン以下、0.4ミクロン以下、0.3ミクロン以下、0.2ミクロン以下、、好ましくは0.1ミクロン以下、0.09ミクロン以下、0.08ミクロン以下、0.07ミクロン以下、0.06ミクロン以下、0.05ミクロン以下、0.04ミクロン以下、0.03ミクロン以下、0.02ミクロン以下、又は0.01ミクロン以下であることを意味する。好ましい実施形態では、例えば、Celgard(登録商標)ドライプロセスで行うように、例えば、前駆体膜に対する延伸処理を行うことによって細孔を形成してよい。
【0062】
バッテリーセパレータ
別の態様では、本明細書に開示されている少なくとも1つの多層微多孔膜を備える、から成る、又はから本質的に成るバッテリーセパレータを記載する。いくつかの特に好ましい実施形態では、膜の特性は、例えば、収縮率を改良するためにコーティングを必要としないので、微多孔膜は、コーティング、特にセラミックコーティングを必要としない。セパレータをコーティングしないことは、セパレータの全体的コストを低くする。本明細書中いくつかの実施形態では、より低コストで優れたセパレータを製造し得、含水率を低減する。しかしながら、いくつかの実施形態では、コーティング、例えば、セラミックコーティングを、セパレータの特性をなお更に改良するために付加してよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの微多孔膜を、片面又は両面を被覆して、片面又は両面被覆バッテリーセパレータを形成してよい。本明細書中のいくつかの実施形態による片面被覆セパレータ及び両面被覆バッテリーセパレータを図2に示す。
【0064】
コーティング層は、いずれものコーティング組成物を含み得る、から成り得る、から本質的に成り得る及び/又はから形成し得る。例えば、米国特許第6,432,586号に記載されているいずれものコーティング組成物を使用してよい。コーティング層は、ウェット、ドライ、架橋、非架橋、その他であり得る。
【0065】
1つの態様では、コーティング層はセパレータの最も外側のコーティング層であってよく、例えば、その上に形成される他の異なるコーティング層を有しなくてもよく、コーティング層はその上に少なくとも1つの他の異なるコーティング層を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、異なる高分子コーティング層を、多孔質副層の少なくとも1つの面上に形成されるコーティング層の上又は上部に被覆してよい。いくつかの実施形態では、この異なる高分子コーティング層は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)又はポリカーボネート(PC)の少なくとも1つを含み得る、から成り得る、又はから本質的に成り得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、コーティング層を、微多孔膜の少なくとも1つの面に既に塗布されている1つ以上の他のコーティング層の上に塗布する。例えば、いくつかの実施形態では、微多孔膜に既に塗布されているこれらの層は、無機材料、有機材料、導電性材料、半導電性材料、非導電性材料、反応性材料、又はこれらの混合物の少なくとも1つの薄層、非常に薄い層、又は超薄層である。いくつかの実施形態では、これらの層は、金属又は酸化金属含有層である。いくつかの好ましい実施形態では、金属含有層及び金属酸化物含有層、例えば、金属含有層に使用される金属の金属酸化物を、多孔質副層上に形成した後に、本明細書に記載されているコーティング組成物を含むコーティング層を形成する。これらの既に塗布された層又は複数の層の全厚さは、5ミクロン未満であるときもあれば、4ミクロン未満であるときもあれば、3ミクロン未満であるときもあれば、2ミクロン未満であるときもあれば、1ミクロン未満であるときもあれば、0.5ミクロン未満であるときもあれば、0.1ミクロン未満であるときもあれば、0.05ミクロン未満であるときもある。
【0067】
いくつかの実施形態では、上記本明細書に記載されているコーティング組成物、例えば、米国特許第8,432,586号に記載されているコーティング組成物から形成されるコーティング層の厚さは、約12μm未満であり、10μm未満であるときもあれば、9μm未満であるときもあれば、8μm未満であるときもあれば、7μm未満であるときもあれば、5μm未満であるときもある。少なくとも特定の選択される実施形態では、コーティング層は、4μm未満、2μm未満、又は1μm未満である。
【0068】
コーティング方法はそのように限定されることはなく、本明細書に記載されているコーティング層を、例えば、次のコーティング方法:押出コーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、印刷、ナイフコーティング、エアナイフコーティング、噴霧コーティング、ディップコーティング、又はカーテンコーティングの少なくとも1つによって、本明細書に記載されているように多孔質副層上に被覆してよい。コーティング方法を、室温又は高温で行ってよい。
【0069】
コーティング層は、非多孔質、ナノポーラス、微孔性、メソポーラス又はマクロポーラスのいずれか1つであってよい。コーティング層は、700以下、時々600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、又は100以下のJISガーレーを有してよい。ナノポーラスコーティング層のため、JISガーレーは、800以上、1,000以上、5,000以上、又は10,000以上(すなわち、「無限ガーレー」)であり得る。ナノポーラスコーティング層のため、乾式の場合コーティングはナノポーラスであるが、特に電解液で湿潤する場合、コーティングは良好なイオン導電体である。
【0070】
コンポジット又はデバイス
直接これらと接して提供される、上記本明細書に記載されているいずれかのバッテリーセパレータ並びに1つ以上の電極、例えば、アノード、カソード、又はアノード及びカソードを備えるコンポジット又はデバイス。電極の種類はそのように限定されない。例えば、電極は、リチウムイオン二次電池における使用に適するものであり得る。
【0071】
本明細書におけるいくつかの実施形態によるリチウムイオン電池を図3に示す。
【0072】
適切なアノードは、372mAh/g以上、好ましくは≧700mAh/g、最も好ましくは≧1000mAh/gのエネルギー容量を有してよい。アノードは、リチウム金属箔若しくはリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、又はリチウム金属及び/若しくはリチウム合金及び炭素(例えば、コークス、黒鉛)、ニッケル、銅などの材料の混合物から構成される。アノードは、リチウムを含有するインターカレーション化合物からも、リチウムを含有する挿入化合物からも単独で製造されない。
【0073】
適切なカソードはアノードと互換性いずれものカソードであってよく、インターカレーション化合物、挿入化合物、又は電気化学的に活性な重合体を挙げることができる。適切なインターカレーション物質としては、例えば、MoS、FeS、MnO、TiS、NbSe、LiCoO、LiNiO、LiMn、V13、V、及びCuClが挙げられる。適切な重合体としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオペン(polythiopene)が挙げられる。
【0074】
本明細書中上記いずれかのバッテリーセパレータを、いずれかの乗り物、例えば、e-ビークル、又はデバイス、例えば、完全若しくは部分的に電池式の携帯電話若しくはラップトップに組み込んでもよい。
【0075】
本発明の様々な実施形態を本発明の様々な目的の履行において説明した。これらの実施形態は単に本発明の原理の例証にすぎないことを認識すべきである。例えば、本発明の膜は、バッテリーセパレータに加えて又は越えて、例えば、使い捨てライター、織物、ディスプレイ、コンデンサー、医療関係の品物、ろ過、湿度コントロール、燃料電池などにおいて多くの用途を見出し得る。多くの修正及び適応は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者には容易に明らかになるだろう。
【実施例
【0076】
実施例1 - 161℃の融点を有するPP樹脂を使用することによって、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して10.5μm薄膜を得た。更に、135℃の融点を有するPE樹脂を使用することによって、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して3.5μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して24μm薄膜を得た。
【0077】
実施例2 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して15μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して9μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して7μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して25μm薄膜を得た。
【0078】
実施例3 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して9μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して5.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層をMD延伸して4μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して15μm薄膜を得た。
【0079】
実施例4 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して6.5μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して4μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して7μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して15μm薄膜を得た。
【0080】
実施例5 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して6.5μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して3.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して3μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して10μm薄膜を得た。
【0081】
実施例6 - 164℃の融点を有する樹脂を使用することによって、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して9μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して5.5μm薄膜を得た。更に、135℃の融点を有するPE樹脂を使用することによって、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して4μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して15μm薄膜を得た。
【0082】
実施例7 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して10.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して3.5μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造した。次の加工は、実施例1の加工と同じである。しかしながら、実施例7では、次いで、三層構造PP-PE-PPを圧延して16μm薄膜を得る。
【0083】
実施例8 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PP層を押出し、各々をMD延伸してからTD延伸して12μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して7μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層を押出してから、非多孔性PE層をMD延伸して5.5μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PP層及び延伸PE層を積層し、三層構造PP-PE-PPを製造して20μm薄膜を得た。積層後、薄膜を再度圧延して15μm薄膜を得た。
【0084】
実施例9 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PE層を押出し、各々をMD延伸して3.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PP層を押出してから、非多孔性PP層をMD及びTD延伸して10.5μm薄膜をこの順で得た。次いで、2つの延伸PE層及び延伸PP層を積層し、逆の三層構造PE-PP-PEを製造して16μm薄膜を得た。
【0085】
実施例10 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PE層を押出し、各々をMD延伸して3.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PP層を押出してから、非多孔性PP層をMD及びTD延伸して13μm薄膜をこの順で得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して8μm薄膜を得た。次いで、2つの延伸PE層及び延伸PP層を積層し、逆三層構造PE-PP-PEを製造して15μm薄膜を得た。
【0086】
実施例11 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、2つの非多孔性PE層を押出し、各々をMD延伸して3.5μm薄膜を得た。更に、非多孔性PP層を押出してから、非多孔性PP層をMD及びTD延伸して10.5μm薄膜をこの順で得た。次いで、2つの延伸PE層及び延伸PP層を積層し、逆三層構造PE-PP-PEを製造して16μm薄膜を得た。次の加工は、実施例9の加工と同じである。しかしながら、実施例11では、次いで、逆三層構造PE-PP-PEを圧延して11μm薄膜を得る。
【0087】
実施例12 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、1つの非多孔性PP層を押出し、これをMD延伸してからTD延伸して18μm薄膜を得た。その後、MD&TD延伸膜を圧延して11μm薄膜を得た。更に、非多孔性PE層をMD延伸して4μm薄膜を得た。次いで、延伸PP層及び延伸PE層を積層し、二層構造PP-PEを製造して15μm薄膜を得た。
【0088】
実施例13 - 実施例1と同じPP及びPE樹脂を使用して、1つの非多孔性PE層を押出し、各々をMD延伸して4μm薄膜を得た。更に、非多孔性PP層を押出してから、非多孔性PP層をMD及びTD延伸して18μm薄膜をこの順で得た。次いで、2つの延伸PE層及び延伸PP層を積層し、二層構造PE-PPを製造して22μm薄膜を得た。次いで、二層構造PE-PPを圧延して15μm薄膜を得る。
【0089】
比較例1 - 2つの非多孔性PP層及び1つの非多孔性PE樹脂を押出し、積層して三層構造PP-PE-PPを製造した。次いで、積層物をMD延伸して、14μm薄膜を得た。
【0090】
比較例2 - 2つの非多孔性PP層及び1つの非多孔性PE樹脂を押出し、積層して三層構造PP-PE-PPを製造した。次いで、積層物をMD延伸してからTD延伸して、次いで、圧延して15μm薄膜を得た。
【0091】
比較例3 - PP非多孔性層を押出してから、MD延伸し、TD延伸して10.5μm薄膜を得た。比較例3は、実施例1、7、9、及び11の前駆体材料であってよい。
【0092】
比較例4(3.5μmPE) - PE非多孔性層を押出してから、MD延伸した。比較例4は、実施例1、7、9、10及び11の前駆体材料であってよい。
【0093】
実施例1~3及び比較例1~4の厚さ、JISガーレー、多孔度、基本重量、突刺強度、MD強さ、TD強さ、MD伸び、TD伸び、MD収縮率、及びTD収縮率を測定し、下表1に報告する。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1(図4の上2つ)及び実施例7(図4の下2つ)のSEM断面を図4に示す。
【0096】
本明細書に開示されている方法により、セラミック被覆ウェット製品を含むウェット製品との競合力がある膜を生産することができる。膜は、セラミックコーティングの塗布なしでさえ、被覆又は非被覆ウェットプロセス製品との競合力がある特性を有することができる。特に、ウェットプロセス製品は、ウェットプロセス膜中の暴露されたポリエチレンのせいで酸化を防止するために被覆しなければならない。したがって、本明細書に開示されている膜は、その上、コストの視点からウェットプロセス膜との競合力があるだろう。膜は、コーティングのための追加費用を必要としないで被覆ウェットプロセス膜との競合力がある特性を有する。
【0097】
下表2は、本明細書に開示されている新規及び改良された方法により製造された製品、実施例3及び7;従来方法により製造された比較ドライ製品、比較例1、2及び3、並びに被覆及び非被覆ウェットプロセス膜の間の比較を示す。
【0098】
【表2】
【0099】
以下の15の公報は、参照により本明細書に組み入れられる。本願の改良された膜及びセパレータは、製品のための前駆体、層、膜、基材、ベース薄膜、及び/又はセパレータ又は本明細書に開示されているセパレータとして役立ち得る:米国特許出願公開第2017/362745号、米国特許出願公開第2017/266865号、米国特許出願公開第2017/222281号、米国特許出願公開第2017/222205号、米国特許出願公開第2017/033346号、米国特許出願公開第2017/214023号、米国特許出願公開第2017/084898号、米国特許出願公開第2017/062785号、米国特許出願公開第2017/025658号、米国特許出願公開第2016/359157号、米国特許出願公開第2016/329541号、米国特許出願公開第2016/248066号、米国特許出願公開第2016/204409号、米国特許出願公開第2016/164060号、及び米国特許出願公開第2016/149182号。
【0100】
本明細書において、改良された膜、セパレータ及び/又は改良されたバッテリーセパレータ、特にリチウムイオン二次電池用バッテリーセパレータにおいて使用するための多層微多孔膜の製造方法を開示する。更に、本明細書において、本方法によって製造される多層微多孔膜であって、バッテリーセパレータでも使用することができるウェットプロセス被覆又は非被覆膜との競合力があるか又は越える特性を有する、多層微多孔膜を開示する。多層微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ及び該セパレータを備えるバッテリー、乗り物、又はデバイスも開示する。該方法は、少なくとも以下の工程:(1)第一非多孔性前駆体膜の延伸による細孔を有する延伸第一非多孔性前駆体膜を製造する工程と;(2)別に、第二非多孔性前駆体膜の延伸による細孔を有する第二延伸非多孔性前駆体膜を製造する工程と;(3)延伸第一非多孔性前駆体及び延伸第二非多孔性前駆体を積層する工程とを含み得る。
【0101】
少なくとも選択された実施形態、態様又は目的によれば、本願、本開示若しくは本発明は、新規及び/若しくは改良された微多孔膜、前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ、並びに/又は新規及び/若しくは改良された微多孔膜及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータの製造方法及び/若しくは使用方法を対象にする並びに/又は提供する。例えば、新規及び/又は改良された微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータは、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。更に、新規及び/又は改良された方法は、微多孔膜、及びこれを備えるバッテリーセパレータを製造し、従来の微多孔膜より望ましい特性の良好なバランスを有する。新規及び/又は改良された微多孔膜、及び前記微多孔膜を備えるバッテリーセパレータは、被覆又は非被覆ウェットプロセス微多孔膜及び被覆又は、それぞれ、非被覆ウェットプロセス微多孔膜を備えるバッテリーセパレータとの競合力があるか又はこれらより良好である。
【0102】
本明細書において、改良された膜、セパレータ及び/又は改良されたバッテリーセパレータ、特にリチウムイオン二次電池用バッテリーセパレータにおいて使用するための多層微多孔膜の製造方法を開示する、示す又はクレームする。更に、本明細書において、本方法によって製造される多層微多孔膜であって、好ましくは、バッテリーセパレータでも使用することができるウェットプロセス被覆又は非被覆膜との競合力があるか又は越える特性を有する、多層微多孔膜を開示する。多層微多孔膜を備えるバッテリーセパレータ及び該セパレータを備えるバッテリー、乗り物、又はデバイスも開示する。ドライプロセス方法は、少なくとも以下の工程:(1)第一非多孔性前駆体膜の延伸による細孔を有する延伸第一非多孔性前駆体膜を製造する工程と;(2)別に、第二非多孔性前駆体膜の延伸による細孔を有する第二延伸非多孔性前駆体膜を製造する工程と;(3)延伸第一非多孔性前駆体及び延伸第二非多孔性前駆体を積層する工程とを含み得る。
【0103】
試験方法
厚さ(μm)
Emveco Microgage210-Aマイクロメータ厚さ試験機及び試験手順ASTM D374を使用してミクロメートル、μmで厚さを測定する。
【0104】
JISガーレー(秒/100cc)
ガーレーは、日本工業規格(JISガーレー)と本明細書において定義され、OHKEN透気度試験機を使用して本明細書において測定する。JISガーレーは、100ccの空気が4.9インチの水の定圧において1平方インチの薄膜を通過するのに要する時間(単位:秒)と定義される。
【0105】
105、120、130、及び140℃におけるMD又はTD収縮率%
2枚の紙の間に試験サンプルを入れ、一緒にクリップで留めて紙の間にサンプルを保持し、乾燥機内に吊すことによって収縮率を測定する。105℃、1時間の試験では、サンプルを105℃、1時間乾燥器内に入れる。乾燥器内において指定加熱時間後、各サンプルを取り出し、両面粘着テープを使用して平らなカウンター面に貼り付けて正確な長さ及び幅測定をするためにサンプルを平坦化し平滑化する。縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方で収縮率を測定し、MD収縮率%及びTD収縮率%として表す。
【0106】
MD引張強さ(kgf/cm
縦方向(MD)引張強さを、Instron Model4201を使用して、ASTM-882手順に従って測定する。
【0107】
MD伸び(%)
MD破断点伸び%は、サンプルを破断するのに要する最大引張強さにおいて測定される試験サンプルの縦方向に沿った試験サンプルの伸びのパーセンテージである。
【0108】
TD引張強さ(kgf/cm
横方向(TD)引張強さを、Instron Model4201を使用して、ASTM-882手順に従って測定する。
【0109】
TD伸び(%)
TD破断点伸び%は、サンプルを破断するのに要する最大引張強さにおいて測定される試験サンプルの横方向に沿った試験サンプルの伸びのパーセンテージである。
【0110】
突刺強度(gf)
Instron Model4442を使用して、ASTM D3763に基づいて突刺強度を測定する。微多孔膜の幅方向に測定を行い、突刺強度は試験サンプルを穿刺するのに必要な力と定義される。
【0111】
DB最小値(V)
サンプルの絶縁破壊が観察されるまで、電圧をセパレータ膜に印加する。強いセパレータは、高DBを示す。
【0112】
シャットダウン温度(℃)
サンプルを加熱し、シャットダウン開始温度を100W×cmの抵抗読みにおいて記録し、単位℃で報告する。
【0113】
含水率
カールフィッシャー滴定法によって含水率を測定する。
【0114】
本願は上記実施形態に限定されない。
図1
図2
図3
図4