(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】物理蒸着バイオセンサー部品
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20230612BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01N27/30 B
G01N27/30 311Z
G01N27/416 338
(21)【出願番号】P 2020564860
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019033060
(87)【国際公開番号】W WO2019226517
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ホックステットラー,スペンサー・エリック
(72)【発明者】
【氏名】アシュフォード,デニス・リー
(72)【発明者】
【氏名】サムバンダム,センティル・ネイサン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503080(JP,A)
【文献】国際公開第2018/052711(WO,A1)
【文献】特表2012-524903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184534(US,A1)
【文献】米国特許第03264074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/30
G01N 27/416
C22C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料の分析において使用するためのバイオセンサー部品であって、
前記バイオセンサー部品は、
基材;
前記基材上に堆積された複合体層;及び
前記生物学的試料と電気化学的に反応させるための生物学的反応物質;
を含み;
前記複合体層は、導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み;
前記導電性金属成分は
実質的にクロム又はモリブデンからなり;
前記複合体層中の抵抗材料成分の
含有量は20原子%より多
く;
前記抵抗材料成分は炭素又はケイ素を含む、上記バイオセンサー部品。
【請求項2】
前記バイオセンサー部品が、作用電極、又は参照電極、或いは対電極から選択される電極を含む、請求項1に記載のバイオセンサー部品。
【請求項3】
前記バイオセンサーが血糖センサーであり、前記バイオセンサー部品が試験片を含む、請求項1に記載のバイオセンサー部品。
【請求項4】
前記導電性金属成分がクロムである、請求項1に記載のバイオセンサー部品。
【請求項5】
前記抵抗材料成分が炭素を含み、前記基材が可撓性の非導電性フィルムを含み、前記バイオセンサー部品が20%以下の可視光透過率を有する、請求項1~
4のいずれかに記載のバイオセンサー部品。
【請求項6】
(a)基材を用意すること;
(b)複合体材料ターゲットを用意すること、ここで、前記複合体材料ターゲットは導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、前記導電性金属成分は
実質的にクロム又はモリブデンからなり、前記複合体材料ターゲット中の抵抗材料成分の
含有量は20原子パーセントより多く
、前記抵抗材料成分は炭素又はケイ素を含む;
(c)前記基材の少なくとも一部に、前記複合材料ターゲットからの材料を物理蒸着して、それによって前記基材上に複合体層を形成すること;
を含む、バイオセンサーのための電極を形成する方法。
【請求項7】
前記基材がポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記基材が25~500μmの範囲の厚さを有し、前記複合体層が15~400nmの範囲の厚さを有し、前記電極が20%以下の可視光透過率を有し、前記バイオセンサーが血糖センサーを含み、前記抵抗材料が炭素を含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は一般に、電極、例えば、バイオセンサーにおいて見られるような電極用の物理蒸着部品に関する。より詳細には、本発明は、非貴金属合金、例えばバイオセンサー部品において見られるもので形成された電極に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]生物学的試料の分析において使用するためのバイオセンサーは、ますます普及するようになっている。例えば、世界の人口における糖尿病の症例の増加に伴って、血糖を測定するためのバイオセンサーに対する必要性が劇的に増加している。かかるバイオセンサーは、一般に血糖計として知られており、血糖計に付随する試験片上にユーザーが一滴の血液を配置することによって操作される。試験片は、一滴の血液中のグルコースの量に対して反応性であるように構成されていて、血糖計によってユーザーの血液の血糖値を検出して表示することができるようになっている。
【0003】
[0003]血糖計タイプのバイオセンサーのための試験片は、一般に基材上に形成されている2以上の電極(例えば作用電極と対電極)で形成されている。更に、生物学的試料と反応する生物学的反応物質、例えば酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなど)、及びメディエーター(例えば、フェリシアニド、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、キノン類、フェノチアジン類、フェノキサジン類など)が、一方又は両方の電極、例えば作用電極上に形成される。血糖計タイプのバイオセンサーの操作においては、一滴の血液を試験片に施す。その後、作用電極上で、血液中のグルコースの量に比例する電気化学反応を起こす。より詳しくは、グルコースはまず生物学的反応物質、例えば酵素(グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなど)、及び時には酵素補因子(PQQ、FADなど)と反応してグルコン酸に酸化される。生物学的反応物質、例えば酵素、補因子、又は酵素-補因子複合体は、グルコースから酵素、補因子、又は酵素-補因子複合体に移動する2つの電子によって一時的に還元される。次に、還元された生物学的反応物質、例えば酵素、補因子、又は酵素-補因子複合体はメディエーターと反応して、1電子プロセスで還元されるメディエーターの場合には1つの電子が2つのメディエーター種(分子又は錯体)のそれぞれに移動する。メディエーター種が還元される際には、酵素、補因子、又は酵素-補因子複合体は、それにしたがってその元の酸化状態に戻る。次に、還元されたメディエーターが電極表面に拡散して、そこで所定の十分に酸化性の電位をバイオセンサーに印加して、還元されたメディエーターが酸化されてそれらの元の酸化状態に戻るようにする。バイオセンサーによってメディエーター種の酸化によって生成する電流を測定し、血液中のグルコースの量に比例して関連づける。
【0004】
[0004]作用電極の品質は、血液の血糖値の正確な測定において重要な役割を果たす。具体的には、電極の電気活性表面積の再現性、特定のグルコース測定配置における電極の電子移動速度のロット間再現性、及びアッセイの操作中に電極から電気化学信号が生成するようになるための保管中の電極材料の長期間安定性は、全て血糖試験片の向上した正確性をもたらすファクターである。特に、電極の電気活性から生成する電気信号を最小にして、生物学的試料の測定及び分析におけるバイアス又はノイズを阻止することは重要である。通常は、これは、金、パラジウム、白金、イリジウムなどのような実質的に熱力学的に不活性の電極材料を使用することによって達成される。したがって、殆どの現在の血糖計は、作用電極として作動させるため、及び製造を容易にするために、しばしば対電極のため、或いは対電極及び参照電極の複合電極のために、一般に商業的に実用可能な最も純粋な形態のパラジウム、金、又は他の貴金属で被覆された基材から形成される電極を使用している。かかる貴金属は妨害物質との反応性が最小であり、その結果、安定で正確な測定のための向上した耐化学薬品性を与える。しかしながら、電極においてかかる貴金属を使用するコストは非常に高い場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]バイオセンサーの製造コストを減少させるために非貴金属で形成された電極を使用する幾つかの試みが存在している。しかしながら、かかる非貴金属電極は一般に、貴金属で形成されている電極の電気化学応答から大きく偏位する電気化学応答(例えば用量応答(dose-response))を有する。非貴金属材料は、通常はバイオセンサーの通常の電圧において操作する際に生成する高いバックグラウンド電流のために、電気化学的試験片のために使用するのに十分にアノード安定性ではない。更に、非貴金属材料は、通常は所望の分析対象物とのスムースな不均一電子移動を与えない。したがって、非貴金属で形成された電極は、一般に多くのタイプのバイオセンサーのための試験片において貴金属に対する直接的な代替物として使用するのには不適当である。低い電気応答を有することに加えて、バイオセンサー電極はメディエーターとの十分な電子移動速度を有することもまた望ましい。一部の提案されている非貴金属は比較的低い電気化学応答(又は妥当なアノード安定性)を有するが、これらはまたメディエーターとの許容しうる電子移動速度を有しない。
【0006】
[0006]したがって、例えばバイオセンサーにおいて貴金属の使用に対するコスト効率の良い代替物を与えながら、安定で正確な測定を与えることができる電極に対する必要性が存在する。特に、バイオセンサー部品において使用して生物学的試料を安定且つ正確に測定することができる非貴金属合金から形成された電極に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]基材フィルム上に導電性非貴金属を堆積させて導電層を形成することによって形成される電極は、導電性非貴金属をバイオセンサー用途のための抵抗材料との複合体の形態で堆積させることによって大きく改良することができることが見出された。
【0008】
[0008]本発明の1以上の実施形態は、基材、及び基材上に堆積された少なくとも1つの複合体層を含んでいてよく、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、導電性金属成分は少なくとも1種類の非貴金属を含み、抵抗材料成分は少なくとも1種類の抵抗材料を含み、抵抗成分の量は複合体層の総重量を基準として少なくとも20重量%である電極に関することができる。一実施形態においては、導電性金属成分はクロムを含み、抵抗材料層は炭素を含む。
【0009】
[0009]本発明の第1の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、Ni、Cr、Mo、Mn、Cu、Ti、Co、Al、Fe、W、S、P、V、Nb、Zr、又はこれらの組み合わせから選択される金属を含ませることができる。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、Cr、Ni、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態においては、導電性金属成分はCrを含む。一実施形態においては、導電性金属成分はCrである。幾つかの実施形態においては、導電層にはニッケル及びクロムを含ませることができ、導電層中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電層の総重量を基準として、少なくとも24重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%であってよい。幾つかの実施形態においては、導電層には、導電層の総重量を基準として、80重量%未満の量のニッケル及び20重量%より多い量のクロムを含ませることができる。幾つかの実施形態においては、導電層にはニッケル及びクロムを含ませることができ、導電層の重量を基準として、ニッケルは、少なくとも4重量%、又は5重量%、又は6重量%、或いは8重量%の量で存在し、クロムは少なくとも10重量%の量で存在する。一実施形態においては、抵抗材料層の厚さは20nm未満である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料層は、外部の液体、例えば食塩水又はバイオ反応物質を含む液体被覆と、導電層との間の流体連絡を可能にする。
【0010】
[0010]一実施形態においては、導電層にはニッケル及びクロムを含ませることができ、導電層の総重量を基準として、導電層中のニッケル及びクロムの合計重量%は24又は25重量%乃至95重量%未満で、少なくとも10重量%のクロム、及び少なくとも4、又は5、又は6、又は8重量%のニッケルの範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電層にはまた鉄を含ませることができ、鉄は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する。幾つかの実施形態においては、導電層に、0乃至20重量%未満、又は0~17重量%、又は0~13重量%、又は0~10重量%、又は0~9重量%、又は0~8重量%、又は0~7重量%、又は0~6重量%、又は0~5重量%、又は0~4重量%、又は0~3重量%、又は0~2重量%、又は0~1重量%、又は0~0.5重量%、又は0~0.1重量%のモリブデンを含ませることができる。幾つかの実施形態においては、導電層に、2~10重量%、又は2~8重量%、又は2~7.5重量%、又は2~7.0重量%、又は2~6.5重量%、又は2.5~8重量%、又は2.5~7.5重量%、又は2.5~7.0重量%、又は2.5~6.5重量%、又は3~8重量%、又は3~7.5重量%、又は3~7.0重量%、又は3~6.5重量%、又は3.5~8重量%、又は3.5~7.5重量%、又は3.5~7.0重量%、又は3.5~6.5重量%、又は4~8重量%、又は4~7.5重量%、又は4~7.0重量%、又は4~6.5重量%、又は4.5~8重量%、又は4.5~7.5重量%、又は4.5~7.0重量%、或いは4.5~6.5重量%のモリブデンを含ませることができる。幾つかの態様においては、導電層に、2~6.5重量%、又は2~6重量%、又は2~5.5重量%、又は2~5重量%、又は2~4.5重量%、又は2~4重量%、又は2.5~6.5重量%、又は2.5~6.0重量%、又は2.5~5.5重量%、又は2.5~5重量%、又は2.5~4.5重量%、又は2.5~4重量%、又は3~6.5重量%、又は3~6.0重量%、又は3~5.5重量%、又は3~5重量%、又は3~4.5重量%、又は3~4重量%、又は3.5~6.5重量%、又は3.5~6.0重量%、又は3.5~5.5重量%、又は3.5~5重量%、又は3.5~4.5重量%、又は4~6.5重量%、又は4~6.0重量%、又は4~5.5重量%、又は4~5重量%、又は4.5~6重量%、又は4.5~5.5重量%、或いは5~6重量%のモリブデンを含ませることができるい。本明細書の大部分はバイオセンサー部品として使用される電極に関するが、電極を他の最終用途において同様に使用することができると意図される。その結果、バイオセンサーにおいて使用される電極に関係する本明細書における任意の開示は、ここではこの技術を当業者によって適切に適用することができる全ての電極に対する適用性を包含すると意図される。
【0011】
[0011]本発明の第2の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量を基準として少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%であってよい。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量を基準として、80重量%未満の量のニッケル、及び20重量%より多い量のクロムを含ませることができる。
【0012】
[0012]第3の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分の重量を基準として、ニッケルは少なくとも4重量%、又は5重量%、又は6重量%、又は8重量%の量で存在し、クロムは少なくとも10重量%の量で存在する。
【0013】
[0013]第3の態様の一実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分の総重量を基準として、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は24乃至95重量%未満の範囲で、少なくとも10重量%のクロム、及び少なくとも4重量%、又は5重量%、又は6重量%、又は8重量%のニッケルであってよい。ニッケル及びクロムに加えて、幾つかの実施形態においては、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、鉄は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する。
【0014】
[0014]第4の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24~95重量%、25~90重量%、又は26~89重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、導電性金属成分中の鉄の重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く75重量%未満、又は約6~約74重量%の範囲であってよい。
【0015】
[0015]第4の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に7重量%より多い範囲のニッケル及び13重量%より多く21重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、24重量%より多く95重量%未満、又は25重量%より多く90重量%未満、又は26~89重量%の範囲である。
【0016】
[0016]第5の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、80重量%乃至95重量%未満、又は81~94重量%、又は82~94重量%、又は83~94重量%、又は85~94重量%、又は86~94重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、導電性金属成分中の鉄の重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く12重量%未満、又は約6~約11重量%、又は6~11重量%、又は6~10重量%、又は6~9重量%、又は7~10重量%、又は7~9重量%の範囲、又は約9重量%であってよい。
【0017】
[0017]第5の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に70重量%より多い範囲のニッケル及び13重量%より多く20重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、80重量%より多く95重量%未満、又は81重量%~94重量%、又は82重量%~94重量%、又は83重量%~94重量%、又は85重量%~94重量%、又は86重量%~94重量%の範囲である。
【0018】
[0018]第6の態様においては、導電層にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電層中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24又は25~90重量%、又は26~89重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電層にはまた鉄を含ませることもでき、導電層中の鉄の重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く75重量%未満、又は約6~約74重量%の範囲であってよい。
【0019】
[0019]第6の態様の幾つかの実施形態においては、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電層に、7重量%より多い範囲のニッケル、及び13重量%より多く25重量%未満、又は21重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電層中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は24重量%より多いか又は25重量%より多く90重量%未満、又は26重量%~89重量%の範囲である。
【0020】
[0020]第6の態様の更なる実施形態においては、導電層の合計重量(100重量%に等しい)を基準として、導電層に、8~72重量%の範囲のニッケル、約14~約25重量%、又は14~約20重量%の範囲のクロム、及び約6~約74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電層中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、約24又は約25重量%~約90重量%、又は26~89重量%の範囲である。
【0021】
[0021]第6の態様の幾つかの実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~25重量%又は14~20重量%の範囲のクロム、及び6~74重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0022】
[0022]第6の態様の幾つかの実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~25重量%又は14~20重量%の範囲のクロム、6~74重量%の範囲の鉄、及び0~10重量%の範囲のモリブデンを含ませることができ、導電層は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、6重量%より多く、又は5重量%より多く、又は4重量%より多く、又は3重量%より多く、又は2重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電層は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~7.0重量%の範囲のモリブデン、及び0.01~6.0重量%の範囲のマンガンを更に含み、1.5重量%より多く、又は1.0重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電層は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガンを更に含み、1.0重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0023】
[0023]第6の態様の幾つかの実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~24重量%又は14~20重量%の範囲のクロム、及び6~74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電層は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガン、0.01~1.0重量%の範囲のケイ素、0~3.0重量%の範囲のモリブデン、及び0~0.5重量%の範囲の銅を更に含む。一実施形態においては、導電層は、0.2重量%未満の次の元素種:炭素、硫黄、リン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素のそれぞれを含む。一実施形態においては、導電層は、次の元素種:ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。一実施形態においては、導電層は、次の元素種:ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まない。一実施形態においては、導電層は、0.2重量%未満の次の元素種:炭素、硫黄、リン、モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素のそれぞれを含む。一実施形態においては、導電層は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。一実施形態においては、導電層は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まない。
【0024】
[0024]第7の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24~55重量%、又は25~33重量%、又は25重量%より多く33重量%未満、又は25重量%乃至32重量%未満、又は26~31重量%、又は26~30.5重量%の範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、導電層中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、25重量%乃至32重量%未満、又は26~31重量%、又は26~30.5重量%、又は28~32重量%、又は38~49重量%、又は42~47重量%の範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、導電層中のニッケルとクロムとの合計重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、25重量%乃至33重量%未満、又は26~32重量%の範囲であってよい。
【0025】
[0025]この第7の態様においては、ニッケル及びクロムに加えて、導電層に鉄を含ませることもでき、導電層中の鉄の重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、少なくとも35重量%、又は少なくとも44重量%、又は少なくとも60重量%乃至75重量%未満、又は60重量%より多く75重量%未満、又は61重量%より多く75重量%未満、又は61重量%より多く74重量%までの範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、導電層中の鉄の重量%は、61~75重量%、又は65~75重量%、又は65重量%より多く75重量%未満、又は66重量%乃至75重量%未満、又は66重量%より多く74重量%までの範囲である。幾つかの実施形態においては、導電層中の鉄の重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、60~73重量%、60重量%より多く73重量%未満、又は61重量%より多く73重量%未満、又は61.5重量%より多く72重量%以下、又は約61.85~約72重量%である。幾つかの実施形態においては、導電層中の鉄の重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、44~73重量%、又は44~50重量%、又は44~48重量%、又は44~46重量%である。
【0026】
[0026]第7の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に7重量%乃至12重量%未満の範囲のニッケル及び16重量%より多く22重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、25重量%乃至32重量%未満、又は26~31重量%、又は26~30.5重量%の範囲である。
【0027】
[0027]第7の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として8~10.5重量%の範囲のニッケル、18~20重量%の範囲のクロム、及び66~74重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0028】
[0028]第8の態様においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、10~30重量%、又は10重量より多く30重量%未満、又は11~29重量%の範囲のニッケル;17~26重量%、又は17重量%より多く26重量%未満、又は18~25重量%の範囲のクロム;及び2~8重量%、2重量%より多く8重量%未満、又は2.5~7重量%の範囲のモリブデン;を含ませることができる。
【0029】
[0029]第8の態様の複数の実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、10~16重量%、10重量%より多く16重量%未満、又は11~15重量%の範囲のニッケル;17~21重量%、又は17重量%より多く21重量%未満、又は18~20重量%の範囲のクロム;2~5重量%、又は2重量%より多く5重量%未満、又は3~4重量%の範囲のモリブデン;及び55~70重量%、又は55重量%より多く70重量%未満、又は57~68重量の範囲の鉄;を含ませることができる。
【0030】
[0030]第8の態様の複数の実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、12.5~29重量%、又は12.5重量%より多く29重量%未満、又は13.5~28重量%の範囲のニッケル;16~24重量%、又は16重量%より多く24重量%未満、又は17~23重量の範囲のクロム;3~6重量%、又は3重量%より多く6重量%未満、又は4~5重量%の範囲のモリブデン;及び46~66重量%、又は46重量%より多く66重量%未満、又は47~65重量%の範囲の鉄;を含ませることができる。
【0031】
[0031]第8の態様の複数の実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、16~26.5重量%、又は16重量%より多く26.5重量%未満、又は17~25.5重量%の範囲のニッケル;18~23重量%、又は18重量%より多く23重量%未満、又は19~22重量%の範囲のクロム;5~8重量%、又は5重量%より多く8重量%未満、又は6~7重量%の範囲のモリブデン;及び41~62重量%、又は41重量%より多く62重量%未満、又は42~61重量%の範囲の鉄;を含ませることができる。
【0032】
[0032]第8の態様の複数の実施形態においては、導電層は、(上記で特定されたものに加えて)導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電層は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガン及び0.01~1.0重量%の範囲のケイ素を更に含み、0.2重量%より多く、又は0.1重量%より多く、又は0.05重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0033】
[0033]本発明の複数の実施形態においては、導電層は、次の合金:ステンレス鋼(SS)354SMO、SS304、SS316、SS317L、SS317LM、SS317LMN、SS904、SS-AL-6XN、又はSS合金24の1以上を含むか、又はそれらから製造される金属である。本発明の複数の実施形態においては、導電層は、次の合金:ステンレス鋼(SS)354SMO、SS304、SS316、SS317L、SS317LM、SS317LMN、SS904、SS-AL-6XN、又はSS合金24の1以上から選択される金属である。
【0034】
[0034]本発明の種々の態様の複数の実施形態においては、抵抗材料は炭素を含む。幾つかの実施形態においては、抵抗材料はスパッタリングによって堆積された炭素である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は、固体炭素成分及び導電性金属成分の両方を含む複合ソースを使用してスパッタリングして複合体層を形成することによって堆積された炭素である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は、固体炭素源を別の導電性金属源と共に使用してスパッタリングして複合体層を形成することによって堆積された炭素である。
【0035】
[0035]本発明の幾つかの実施形態においては、複合体層は、ポリカーボネート、シリコーンポリマー、アクリル樹脂、PET、変性PET、例えばPETG、又はPCTG、PCT、変性PCT、TMCD及びCHDMを含むポリエステル、PCCD、又はPENなど(しかしながらこれらに限定されない)の当該技術において記載されており、及び/又は本明細書中に記載されている少なくとも1種類の任意のポリマーから構成することができる基材上に、物理蒸着によって被覆することができる。
【0036】
[0036]本発明の幾つかの実施形態においては、抵抗材料成分に、基材層の表面上に複合体層の形態で導電性金属成分と共に堆積されている抵抗材料を含ませることができる。「抵抗材料」という用語は、導電性金属成分よりも電気的に抵抗性であり、一定の電位を印加することによって電流を流すことができ、基材層上に導電性金属成分及び抵抗材料成分の複合体層を有する薄膜電極に成形した際に、タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験によって求めて、導電性金属成分の層のみを有する同様の電極と比べて、電極のアノード安定性を増加させ、及び/又は電子移動速度を増加させる材料を意味する。
【0037】
[0037]幾つかの実施形態においては、抵抗材料に、炭素、ケイ素、ホウ素、酸素、及びそれらの組合せから選択される1種類以上の元素を含ませることができる。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は炭素を含む。幾つかの実施形態においては、抵抗材料はアモルファス炭素を含む。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は、スパッタリングによって堆積されたアモルファス炭素である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は、炭素又は炭素含有ソースを使用してスパッタリングすることによって堆積されたアモルファス炭素である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は、炭素及び導電性金属の両方を含む複合ソースを使用してスパッタリングすることによって堆積されたアモルファス炭素である。幾つかの実施形態においては、抵抗材料は同時スパッタリングによって堆積された炭素であり、同時スパッタリングは、2以上の別のソースを使用し、金属又は金属合金ターゲットを1つのソース又は複数のソース中でスパッタリングし、同時に且つ同じ堆積ゾーンにおいて炭素ターゲットを別のソース又は複数のソース中でスパッタリングして、金属及び炭素を基材上に密に同時堆積して、かかる基材上に金属-炭素複合体膜を形成することによって行うことができる。ソースは別々であるので、それらは、同様か又は異なる電圧、電流、又は周波数特性を使用して、あるいは更には、直流、パルスマグネトロン、又は無線周波数スパッタリングなどの異なる操作モードで操作することができる。
【0038】
[0038]幾つかの実施形態においては、抵抗材料成分は、主としてsp2混成炭素、sp3混成炭素、又はこれらの組合せから構成されるアモルファス炭素を含む。幾つかの実施形態においては、主としてsp2混成炭素、sp3混成炭素、又はこれらの組合せから構成されるアモルファス炭素層は、炭素を導電性金属成分と同時スパッタリングすることを除いて、Onoprienko, A.A., Shaginyan, L.R., Role of microstructure in forming thin carbon film properties. Diamond Relat. Mater. 1994, 3, 1132-1136;Onoprienko, Carbon, The Future Material for Advanced Technology Applications;Messina, G., Santangelo, S.編, Springer Berlin Heidelberg, 2006;又はCho., N.H.; Krishnan, K.M.; Veirs, D.K.; Rubin, M.D.; Hopper, C.B.; Bhushan, B.; Bogy, D.B., Chemical structure and physical properties of diamond-like amorphous carbon films prepared by magnetron sputtering, J. Mater. Res. 1990, 5, 2543-2554;によって示唆されている技術/方法を使用して形成することができる。
【0039】
[0039]本発明の幾つかの実施形態においては、複合体層は5~400nmの範囲の厚さを有し得、基材は25~500μmの範囲の厚さを有し得る。幾つかの実施形態においては、複合体層は5nm乃至300nm未満の範囲の厚さを有し得、基材は25~500μmの範囲の厚さを有し得る。幾つかの実施形態においては、バイオセンサー部品はまた、ASTM-D1003によって測定して、20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下、又は0.01~20%、又は0.01~15%、又は0.01~10%、又は0.01~5%の可視光透過率を有し得る。
【0040】
[0040]本発明の幾つかの実施形態においては、複合体層は、5~400nm、又は5nm乃至300nm未満の範囲の厚さを有し得、基材は25~500μmの範囲の厚さを有し得、バイオセンサー部品は20%以下の可視光透過率を有する。
【0041】
[0041]幾つかの実施形態においては、複合体層は、5~400nm、又は5~200nm、又は5~100nm、又は5~80nmの範囲の厚さを有する。
[0042]一態様においては、本発明の幾つかの実施形態は、基材、及び物理蒸着など(しかしながらこれに限定されない)の当該技術において公知の任意の手段によって基材上に堆積された複合体層を含み、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、導電性金属成分は少なくとも1種類の非貴金属を含み、抵抗材料成分は少なくとも1種類の抵抗材料を含み、抵抗材料には炭素を含ませることができ、導電性金属成分には上記で議論した種々の態様のいずれかによる1種類以上の非貴金属元素を含ませることができ、基材には、ポリカーボネート、シリコーンポリマー、アクリル樹脂、PET、変性PET、例えばPETG又はPCTG、PCT、PCTA、TMCD及びCHDMを含むポリエステル、PCCD、又はPENなど(しかしながらこれらに限定されない)の、当該技術において記載され、及び/又は本明細書で説明される任意のポリマーの少なくとも1つを含ませることができるバイオセンサー部品に関する。複合体層は5~400nm、又は5nm乃至200nm未満の範囲の厚さを有し、基材は25~500μmの厚さを有して、バイオセンサー部品が20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下の可視光透過率を有するようにすることができる。
【0042】
[0043]本発明の1以上の実施形態は、基材、及び基材上に堆積された複合体層を含むバイオセンサー用の電極に関することができる。幾つかの実施形態においては、複合体層は炭素及びクロムとの組合せであり、複合体層は、タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験(実施例セクションにおいて議論する)において求めて、450ミリボルト(mV)未満、又は400mV未満、又は375mV未満、又は350mV未満、又は325mV未満、又は300mV未満、又は275mV未満のFe(II)[CN]6メディエーターに関する酸化波電圧(以下、Epeak,anodicと規定する)を有し得る。
【0043】
[0044]基材は、ナイロン、ポリエステル、コポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド;ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、スチレンアクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリルコポリマー、ポリイミド、ポリ(エーテル-イミド);ポリフェニレンオキシド、又はポリ(フェニレンオキシド)/ポリスチレンブレンド、ポリスチレン樹脂;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンスルフィド/スルホン;ポリ(エステル-カーボネート);ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリスルホンエーテル;及びポリ(エーテル-ケトン);或いは任意の他の上記のポリマーの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーなど(しかしながらこれらに限定されない)の当該技術において公知の任意のポリマー組成物から構成することができる。
【0044】
[0045]一実施形態においては、基材は、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つのグリコールの残基を含む少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0045】
[0046]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートの残基、並びにエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種類のグリコールの残基を含む少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0046】
[0047]本発明の1つ以上の実施形態は、バイオセンサーのための電極を形成する方法に関する。この方法は、(a)基材を用意すること;(b)導電性金属成分及び抵抗材料成分を含む複合体層ターゲットを用意すること;(c)かかる基材の少なくとも一部に複合体層ターゲットからの材料を物理蒸着して、それによって基材の反対側に面する複合体層表面を有する複合体層をかかる基材上に形成すること;を含む。導電性金属成分には、1種類以上の非貴金属元素を含ませることができる。一実施形態においては、導電性金属成分にクロムを含ませることができる。別の実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができる。更に別の実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%であってよい。幾つかの実施形態においては。抵抗材料成分に炭素を含ませることができ、複合体層は、5~400nm、又は5~200nmの範囲の厚さを有し得る。幾つかの実施形態においては、導電性材料成分に、本発明の種々の態様に関して本明細書に記載される金属のいずれか又は複数の金属の組み合わせを含ませることができ、抵抗材料成分にはアモルファス炭素を含ませることができ、複合体層は5~400nmの範囲の厚さを有し得る。更に、複合体層は、2000オーム/スクエア未満のシート抵抗を有し得る。
【0047】
[0048]本発明の1以上の実施形態は、バイオセンサーのための電極を形成する方法に関する。複合体層は、ASTM-F1711-96によって測定して、5000オーム/スクエア以下、2000オーム/スクエア以下、100オーム/スクエア以下、80オーム/スクエア以下、60オーム/スクエア以下、50オーム/スクエア以下、40オーム/スクエア以下、20オーム/スクエア以下、10オーム/スクエア以下、又は5オーム/スクエア以下のシート抵抗を有し得る。幾つかの実施形態においては、この層は、ASTM-F1711-96によって測定して、1~5000オーム/スクエア、1~4000オーム/スクエア、1~3000オーム/スクエア、1~2000オーム/スクエア、1~1000オーム/スクエア、1~500オーム/スクエア、5~100オーム/スクエア、5~20オーム/スクエア、5~15オーム/スクエア、5~10オーム/スクエア、10~80オーム/スクエア、20~60オーム/スクエア、又は40~50オーム/スクエアのシート抵抗を有し得る。この層は、2000オーム/スクエア未満のシート抵抗を有し得る。
【0048】
[0049]本開示の大部分はバイオセンサー部品として使用される電極に関するが、電極は他の最終用途においても同様に使用することができることが意図される。その結果、バイオセンサーにおいて使用される電極に関する本明細書中の開示は、この技術を当業者によって合理的に適用することができる全ての電極への適用可能性を本明細書に組み込むと意図される。
【0049】
[0050]ここで、以下の図面を参照して本発明の複数の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】[0051]
図1は、本発明の複数の実施形態の薄膜電極バイオセンサー部品の断面概略図である。
【
図2】[0052]
図2は、本発明の複数の実施形態の試験片バイオセンサー部品の概略図である。
【
図3】[0053]
図3は、メディエーター含有溶液中における薄膜電極のリニアスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図4】[0054]
図4は、緩衝液中の種々のCr膜とCrC複合体膜を比較する薄膜電極のリニアスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図5】[0055]
図5は、緩衝液中の種々のCr膜とCrC複合体膜を比較する薄膜電極のリニアスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図6】[0056]
図6は、それぞれFe(II)[CN]
6メディエーター含有緩衝液中のCr膜と種々の量のCを含むCrC複合体膜を比較する薄膜電極のサイクリックスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図7】[0057]
図7は、それぞれFe(II)[CN]
6メディエーター含有緩衝液中のCr膜と種々の量のCを含むCrC複合体膜を比較する薄膜電極のサイクリックスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図8】[0058]
図8は、それぞれ[RuIII(NH
3)
6]Cl
3メディエーター含有緩衝液中のMo膜と種々の量のCを含むMoC複合体膜を比較する薄膜電極のサイクリックスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図9】[0059]
図9は、緩衝液中のCr膜と50:50原子%のCr:Si複合体膜を比較する薄膜電極のサイクリックスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【
図10】[0060]
図10は、[RuIII(NH
3)
6]Cl
3メディエーター含有緩衝液中のCr膜と種々の量のCを含む50:50原子%のCr:Si複合体膜を比較する薄膜電極のサイクリックスイープボルタモグラムプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[0061]本発明は概して、バイオセンサーにおいて使用されるもののような電極のための部品に関する。本明細書において使用する「バイオセンサー」という用語は、生物学的試料を分析するためのデバイスを示す。幾つかの実施形態においては、
図1に示されるように、バイオセンサー部品は層状の薄膜電極100であってよく、広範には、基材102、及び基材102の少なくとも一部の上に堆積された複合体層104を含ませることができ、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分の複合体である。幾つかの実施形態においては、バイオセンサーはグルコース測定システムのような医用センサーであってよく、バイオセンサー部品はバイオセンサーと共に使用するための試験片であってよい。本明細書において使用する「医用センサー」という用語は、医用モニタリング及び/又は診断のために使用されるバイオセンサーを示す。例えば、
図2に示されるように、幾つかの実施形態は、バイオセンサー部品が、反応スペース112によって第2の電極100aから離隔している第1の電極100を含む試験片110を含むことを意図している。第1の電極100は作用電極を構成していてよく、第2の電極100aは、参照電極、又は対電極、或いは参照電極と対電極の組合せを構成していてよい。したがって、1滴の血液のような生物学的試料を反応スペース112内に配置して、分析のために第1及び第2の電極100及び100aと電気接触させることができる。
図2は限定を意図してはおらず、試験片に関する1つの可能性のある実施形態を示していることを理解すべきである。試験片に関する他の実施形態には、例えばコプラナー電極構造のような複数の電極に関する異なる構造を含ませることができる。本明細書において使用する「血糖センサー」という用語は、血液中のグルコースの濃度を求めるために使用される医用センサーを示す。更に、生物学的試料と反応する生物学的反応物質、例えばタンパク質、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなど)、並びにメディエーター(例えば、フェリシアニド、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、キノン類、フェノチアジン類、フェノキサジン類など)を、電極の1つ又は両方、例えば作用電極上に形成することができる。
【0052】
[0062]通常はパラジウム及び/又は金のような貴金属を含み、及び/又はこれを使用する従来の物理蒸着バイオセンサー部品と異なり、ここに記載するバイオセンサー部品は、クロム、又はニッケルとクロムの合金を含むもののような非貴金属又は合金から形成することができる。それにもかかわらず、ここに記載する抵抗材料との複合体の非貴金属又は合金から形成される薄膜電極のようなバイオセンサー部品は、生物学的試料を測定する際に優れた安定性及び正確性を示すことができる。而して、ここに記載する非貴金属又は合金及び抵抗材料の複合体から構成されるバイオセンサー部品を使用することによって、バイオセンサー部品の製造及び使用に通常関係する材料及び製造コストを大きく減少させることができる。
【0053】
[0063]本発明の複数の実施形態は、概して非導電性であり、ここに記載する意図する化学反応に対して化学的に不活性である可撓性又は剛性のいずれかの任意のタイプの材料から形成される基材102を提供する。幾つかの実施形態においては、バイオセンサー部品の基材102には、ポリマーフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのようなポリマーを含む可撓性の非導電性フィルムを含ませることができる。幾つかの具体的な実施形態においては、基材102にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含ませることができる。本発明の複数の実施形態は、基材102は少なくとも25μm、125μm、又は250μm、及び/又は800μm以下、500μm以下、又は400μm以下の厚さを有し得ると意図する。幾つかの実施形態においては、基材102は、25~800μm、25~500μm、又は25~400μmの間、125~800μm、125~500μm、又は125~400μmの間、或いは250~800μm、250~500μm、又は250~400μmの間の厚さを有し得る。
【0054】
[0064]基材102上に被覆される導電層104には、1種類以上の非貴金属及び1種類以上の抵抗材料を含ませることができる。かかる複合体層104は、スパッタ被覆(例えば、マグネトロンスパッタリング、非平衡マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット式スパッタリングなど)、熱蒸着、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション、アーク蒸着、共蒸着、イオンプレーティングなどのような1以上の物理蒸着技術によって基材102上に被覆することができる。複合体層104は、基材102上に、少なくとも1nm、10nm、15nm、又は30nm、及び/又は1000nm以下、400nm以下、200nm以下、100nm以下、又は50nm以下の厚さに被覆することができる。幾つかの実施形態においては、導電層104は、1~1000nm、1~400nm、1~200nm、1~100nm、又は1~50nmの間、10~1000nm、10~400nm、10~200nm、10~100nm、又は10~50nmの間、15~1000nm、15~400nm、15~200nm、15~100nm、又は15~50nmの間、或いは30~1000nm、30~400nm、30~200nm、30~100nm、又は30~50nmの間の厚さを有し得る。
【0055】
[0065]複合体層104は、得られる薄膜電極100が可視光に対して概して不透明になるように基材102上に堆積させることができる。例えば、得られる薄膜電極100は、ASTM-D1003によって測定して、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下の可視光透過率を有し得る。幾つかの実施形態においては、得られる薄膜電極100は、1~50%の間、10~40%の間、15~30%の間、又は約20%の可視光透過率を有し得る。更に、得られる薄膜電極100は、ASTM-F1711-96によって測定して5000オーム/スクエア以下、2000オーム/スクエア以下、100オーム/スクエア以下、80オーム/スクエア以下、60オーム/スクエア以下、50オーム/スクエア以下、40オーム/スクエア以下、20オーム/スクエア以下、10オーム/スクエア以下、又は5オーム/スクエア以下のシート抵抗を有し得る。幾つかの実施形態においては、得られる薄膜電極100は、1~5000オーム/スクエア、2~2000オーム/スクエア、5~100オーム/スクエア、10~80オーム/スクエア、20~60オーム/スクエア、又は40~50オーム/スクエアの間のシート抵抗を有し得る。
【0056】
[0066]本発明の複数の実施形態においては、複合体層は、1種類以上の金属(例えば、非貴金属)及び1種類以上の抵抗材料を含む複合体から形成される。「複合体」という用語は、マトリクス内に導入されるか又は混合される別個の成分のマトリクスの形態の複数の異なる元素から構成される材料を意味する。マトリクスは、異なる成分の均質な配列であってよく、又は1つ又は複数の他の成分と比較して比較的高い濃度の1つの成分の領域を含んでいてもよい。本発明の複数の実施形態においては、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分を含む。一実施形態においては、複合体層は、導電性金属成分と抵抗材料成分の均質なマトリクスの形態である。複数の実施形態においては、複合体層は、導電性金属及び抵抗材料の組み合わされた複数の元素の種、例えば、CrC又はNiCのような化学反応した複数の組み合わされた種を含む。幾つかの実施形態においては、複合体層は、導電性金属成分及び/又は抵抗材料成分と共に、導電性金属及び抵抗材料の組み合わされた複数の元素の種を含む。
【0057】
[0067]本発明の第1の態様の複数の実施形態においては、複合体層104の導電性金属成分を形成する本明細書に記載の非貴金属は、Ni、Cr、Mo、Mn、Cu、Ti、Co、Al、Fe、W、S、P、V、Nb、Zr、又はそれらの2以上の組合せの1以上から選択される金属又は合金から構成することができる。幾つかの実施形態においては、非貴金属は、Cr、Ni、又はCrとNiの合金から構成することができる。一実施形態においては、導電性金属成分はCrを含む。一実施形態においては、導電性金属成分はCrである。
【0058】
[0068]本発明の第1の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分はニッケルとクロムの合金を含む。例えば、少なくとも5重量%のニッケル及び少なくとも5重量%のCrを含む非貴金属合金を、バイオセンサー部品の複合体層104中に含ませることができる。100:0~0:100のNi:Cr(重量)比の範囲のニッケル及びクロムを含む種々の合金を導電性金属成分のために使用して、導電性金属成分及び抵抗材料成分の複合体層を含む電極を製造することができる。
【0059】
[0069]第1の態様の幾つかの実施形態においては、複合体層(例えばバイオセンサー部品の層104)の導電性成分を構成する非貴金属合金中に含まれるニッケル及びクロムの量は、電極、例えばバイオセンサー部品の特定の要件に応じて変化させることができる。第2の態様の種々の実施形態においては、非貴金属合金に少なくとも約5重量%乃至約95重量%までのニッケルを含ませることができる。更に、種々の実施形態においては、非貴金属合金に、少なくとも約5重量%、10重量%、20重量%、20重量%より多く、25重量%より多く、30重量%より多く、40重量%より多く、50重量%より多く、或いは50重量%より多く、60重量%より多く、及び/又は約95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%より多く、50重量%以下、又は40重量%以下のクロムを含ませることができる。より特には、幾つかの態様においては、非貴金属合金に、約5重量%~95重量%、10~90重量%、10~80重量%、10~70重量%、10~60重量、10~50重量%、10~40重量%、20~90重量%、20~80重量%、20~70重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、20重量%より多く90重量%まで、20重量%より多く80重量%まで、20重量%より多く70重量%まで、20重量%より多く60重量%まで、20重量%より多く50重量%まで、20重量%より多く40重量%まで、25~90重量%、25~80重量%、25~70重量%、25~60重量%、25~50重量%、25~40重量%、30~90重量%、30~80重量%、30~70重量%、30~60重量%、30~50重量%、30~40重量%、40~90重量%、40~80重量%、40~70重量%、40~60重量%、40~50重量%、50~90重量%、50~80重量%、50~70重量%、50~60重量%、50重量%より多く95重量%まで、50重量%より多く90重量%まで、50重量%より多く80重量%まで、50重量%より多く70重量%まで、50重量%より多く60重量%まで、60~95重量%、60~90重量%、60~80重量%、60~70重量%、70~95重量%、70~90重量%、70~80重量%、80~95重量%、又は80~90重量%の範囲のクロムを含ませることができる。一実施形態においては、上記に規定した量のクロムに加えて、合金の残りはニッケルである。合金の100重量%の合計量のニッケル及びクロムを含む合金は、少量の他の1種類又は複数の元素を不純物として更に含んでいてよいことを理解すべきである。
【0060】
[0070]幾つかの実施形態においては、電極、例えばバイオセンサー部品の複合体層中の導電性金属成分を構成する非貴金属合金中に含まれるニッケル及びクロムの量は、バイオセンサー部品の具体的な要件に応じて、次:10~95重量%のクロム及び5~90重量%のニッケル;10~90重量%のクロム及び10~90重量%のニッケル;又は10~80重量%のクロム及び20~90重量%のニッケル;又は10~70重量%のクロム及び30~90重量%のニッケル;又は10~60重量%のクロム及び40~90重量%のニッケル;又は10~50重量%のクロム及び50~90重量%のニッケル;又は10~40重量%のクロム及び60~90重量%のニッケル;又は20~90重量%のクロム及び10~80重量%のニッケル;又は20~80重量%のクロム及び20~80重量%のニッケル;又は20~70重量%のクロム及び30~80重量%のニッケル;又は20~60重量%のクロム及び40~80重量%のニッケル;又は20~50重量%のクロム及び50~80重量%のニッケル;又は20~40重量%のクロム及び60~80重量%のニッケル;又は20重量%より多く90重量%までのクロム及び10重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く80重量%までのクロム及び20重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く70重量%までのクロム及び30重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く60重量%までのクロム及び40重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く50重量%までのクロム及び50重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く40重量%までのクロム及び60重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は25~90重量%のクロム及び10~75重量%のニッケル;又は25~80重量%のクロム及び20~75重量%のニッケル;又は25~70重量%のクロム及び30~75重量%のニッケル;又は25~60重量%のクロム及び40~75重量%のニッケル;又は25~50重量%のクロム及び50~75重量%のニッケル;又は25~40重量%のクロム及び60~75重量%のニッケル;又は30~90重量%のクロム及び10~70重量%のニッケル;又は30~80重量%のクロム及び20~70重量%のニッケル;又は30~70重量%のクロム及び30~70重量%のニッケル;又は30~60重量%のクロム及び40~70重量%のニッケル;又は30~50重量%のクロム及び50~70重量%のニッケル;又は30~40重量%のクロム及び60~70重量%のニッケル;又は40~90重量%のクロム及び10~60重量%のニッケル;又は40~80重量%のクロム及び20~60重量%のニッケル;又は40~70重量%のクロム及び30~60重量%のニッケル;又は40~60重量%のクロム及び40~60重量%のニッケル;又は40~50重量%のクロム及び50~60重量%のニッケル;又は50~95重量%のクロム及び5~50重量%のニッケル;50~90重量%のクロム及び10~50重量%のニッケル;又は50~80重量%のクロム及び20~50重量%のニッケル;又は50~70重量%のクロム及び30~50重量%のニッケル;又は50~60重量%のクロム及び40~50重量%のニッケル;又は50重量%より多く95重量%までのクロム及び5重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く90重量%までのクロム及び10重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く80重量%までのクロム及び20重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く70重量%までのクロム及び30重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く60重量%までのクロム及び40重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は60~95重量%のクロム及び5~40重量%のニッケル;又は60~90重量%のクロム及び10~40重量%のニッケル;又は60~80重量%のクロム及び20~40重量%のニッケル;又は60~70重量%のクロム及び30~40重量%のニッケル;又は70~95重量%のクロム及び5~30重量%のニッケル;又は70~90重量%のクロム及び10~30重量%のニッケル;又は70~80重量%のクロム及び20~30重量%のニッケル;又は80~95重量%のクロム及び5~20重量%のニッケル;又は80~90重量%のクロム及び10~20重量%のニッケル;のように変化させることができ、これらの重量%は全て導電性金属成分の総重量%(100重量%に等しい)を基準とする。
【0061】
[0071]第2の態様の複数の実施形態においては、抵抗材料成分は炭素を含み、導電性金属成分中のクロムの重量%は約25~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。
【0062】
[0072]第2の態様の複数の実施形態においては、抵抗材料成分は炭素を含み、導電性金属成分中のクロムの重量%は50重量%より多く約95重量%までの範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。
【0063】
[0073]第2の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%であってよく、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として20重量%より多いクロムを含む。第2の態様の複数の実施形態においては、基材は25~500μmの厚さを有し、複合体層は15~400nm、又は15~200nmの厚さを有する。
【0064】
[0074]第2の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、80重量%未満、又は75重量%未満の範囲のニッケル、及び20重量%より多く、又は25重量%より多い範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は90~100重量%、又は95~100重量%の範囲である。
【0065】
[0075]第2の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分中のクロムの重量%は約25~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。第2の態様の他の実施形態においては、導電性金属成分中のクロムの重量%は約30~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。第2の態様の更なる実施形態においては、導電性金属成分中のクロムの重量%は約40~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。第2の態様の更に他の実施形態においては、導電性金属成分中のクロムの重量%は約50~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。第2の態様の別の実施形態においては、導電性金属成分中のクロムの重量%は50重量%より多く約95重量%までの範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。
【0066】
[0076]第2の態様の複数の実施形態においては、抵抗材料成分は炭素である。第2の態様の複数の実施形態においては、抵抗材料成分は炭素であり、導電性金属成分中のクロムの重量%は約25~約95重量%の範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。第2の態様の別の実施形態においては、抵抗材料成分は炭素であり、導電性金属成分中のクロムの重量%は50重量%より多く約95重量%までの範囲であり、導電性金属成分の残りは実質的にニッケルである。
【0067】
[0077]第2の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、存在する場合には導電性金属成分の総重量を基準として0~2重量%、又は0~1重量%の量のモリブデンを含む。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、存在する場合には導電性金属成分の総重量を基準として1重量%未満、又は0.8重量%未満、又は0.6重量%未満、又は0.4重量%未満、又は0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の量のモリブデンを含む。複数の実施形態においては、導電性金属成分(及び結果として複合体層)は、実質的にモリブデンを含まない。複数の実施形態においては、導電性金属成分(及び複合体層)は、モリブデンを含まない。
【0068】
[0078]第2の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、1.0重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満の次の元素種:鉄、炭素、硫黄、リン、モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素のそれぞれを含む。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:炭素、硫黄、リン、モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分はニッケル及びクロムを含み、1.0重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満の任意の他の元素種を含む。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分はニッケル及びクロムを含み、合計で2.0重量%未満、又は1.0重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満の全ての他の元素種を含む。
【0069】
[0079]第2の態様の幾つかの実施形態においては、電極、例えばバイオセンサー部品の複合体層中の導電性金属成分を構成する非貴金属合金中に含まれるニッケル及びクロムの量は、バイオセンサー部品の特定の要件に応じて、次:10~95重量%のクロム及び5~90重量%のニッケル;10~90重量%のクロム及び10~90重量%のニッケル、又は10~80重量%のクロム及び20~90重量%のニッケル;又は10~70重量%のクロム及び30~90重量%のニッケル;又は10~60重量%のクロム及び40~90重量%のニッケル;又は10~50重量%のクロム及び50~90重量%のニッケル、又は10~40重量%のクロム及び60~90重量%のニッケル;又は20~90重量%のクロム及び10~80重量%のニッケル;又は20~80重量%のクロム及び20~80重量%のニッケル;又は20~70重量%のクロム及び30~80重量%のニッケル;又は20~60重量%のクロム及び40~80重量%のニッケル;又は20~50重量%のクロム及び50~80重量%のニッケル;又は20~40重量%のクロム及び60~80重量%のニッケル;又は20重量%より多く90重量%までのクロム及び10重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く80重量%までのクロム及び20重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く70重量%までのクロム及び30重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く60重量%までのクロム及び40重量%乃至80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く50重量%までのクロム及び50重量%より多く80重量%未満のニッケル;又は20重量%より多く40重量%までのクロム及び60重量%乃至80重量%未満のニッケル;、又は25~90重量%のクロム及び10~75重量%のニッケル;又は25~80重量%のクロム及び20~75重量%のニッケル;又は25~70重量%のクロム及び30~75重量%のニッケル;又は25~60重量%のクロム及び40~75重量%のニッケル;又は25~50重量%のクロム及び50~75重量%のニッケル;又は25~40重量%のクロム及び60~75重量%のニッケル;又は30~90重量%のクロム及び10~70重量%のニッケル;又は30~80重量%のクロム及び20~70重量%のニッケル;又は30~70重量%のクロム及び30~70重量%のニッケル;又は30~60重量%のクロム及び40~70重量%のニッケル;又は30~50重量%のクロム及び50~70重量%のニッケル;又は30~40重量%のクロム及び60~70重量%のニッケル;又は40~90重量%のクロム及び10~60重量%のニッケル;又は40~80重量%のクロム及び20~60重量%のニッケル;又は40~70重量%のクロム及び30~60重量%のニッケル;又は40~70重量%のクロム及び30~60重量%のニッケル;又は40~60重量%のクロム及び40~60重量%のニッケル;又は40~50重量%のクロム及び50~60重量%のニッケル;又は50~95重量%のクロム及び5~50重量%のニッケル;又は50~90重量%のクロム及び10~50重量%のニッケル;又は50~80重量%のクロム及び20~50重量%のニッケル;又は50~70重量%のクロム及び30~50重量%のニッケル;又は50~60重量%のクロム及び40~50重量%のニッケル;又は50重量%より多く95重量%までのクロム及び5重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く90重量%までのクロム及び10重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く80重量%までのクロム及び20重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く70重量%までのクロム及び30重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は50重量%より多く60重量%までのクロム及び40重量%乃至50重量%未満のニッケル;又は60~95重量%のクロム及び5~40重量%のニッケル;又は60~90重量%のクロム及び10~40重量%のニッケル;又は60~80重量%のクロム及び20~40重量%のニッケル;又は60~70重量%のクロム及び30~40重量%のニッケル;又は70~95重量%のクロム及び5~30重量%のニッケル;又は70~90重量%のクロム及び10~30重量%のニッケル;又は70~80重量%のクロム及び20~30重量%のニッケル;又は80~95重量%のクロム及び5~20重量%のニッケル;又は80~90重量%のクロム及び10~20重量%のニッケル;のように変化させることができ、これらの重量%は全て導電層の全重量%(100重量%に等しい)を基準とし;導電性金属成分はニッケル及びクロムを含み、1.0重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満の任意の他の元素種を含み、又は他の元素種を実質的に含まず、又は他の元素種を全く含まない。
【0070】
[0080]第3の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分の総重量を基準として、ニッケルは少なくとも4重量%、又は5重量%、又は6重量%、又は8重量%の量で存在し、クロムは少なくとも10重量%の量で存在する。
【0071】
[0081]第3の態様の一実施形態においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量を基準として、24又は25重量%乃至95重量%未満、少なくとも10重量%のクロム、及び少なくとも4重量%、又は5重量%、又は6重量%、又は8重量%のニッケルの範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、第3の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、鉄は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する。第3の態様の複数の実施形態において、導電性金属成分に、0重量%乃至20重量%未満、又は0~17重量%、又は0~13重量%、又は0~10重量%、又は0~9重量%、又は0~8重量%、又は0~7重量%、又は0~6重量%、又は0~5重量%、又は0~4重量%、又は0~3重量%、又は0~2重量%、又は0~1重量%、又は0~0.5重量%、又は0~0.1重量%のモリブデンを含ませることができる。
【0072】
[0082]第4の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24~95重量%、又は25~90重量%、又は26~89重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、導電性金属成分中の鉄の重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く75重量%未満、又は約6~約74重量%の範囲であってよい。
【0073】
[0083]第4の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、7重量%より多い範囲のニッケル、及び13重量%より多く21重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24~95重量%、又は25重量%より多く90重量%未満、又は26~89重量%の範囲である。
【0074】
[0084]第4の態様の更なる実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、8~72重量%の範囲のニッケル、約14~約20重量%の範囲のクロム、及び約6~約74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、約25~約90重量%、又は26~89重量%の範囲である。
【0075】
[0085]第4の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~20重量%の範囲のクロム、及び6~74重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0076】
[0086]第4の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~20重量%の範囲のクロム、及び6~74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガンを更に含み、1.0重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0077】
[0087]第4の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~72重量%の範囲のニッケル、14~20重量%の範囲のクロム、及び6~74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガン、0.01~1.0重量%の範囲のケイ素、0~0.5重量%の範囲の銅を更に含む。一実施形態においては、導電性金属成分は、0.2重量%未満の次の元素種:炭素、硫黄、リン、モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素のそれぞれを含む。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、又はホウ素を全く含まない。
【0078】
[0088]第5の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、80重量%乃至95重量%未満、又は81~94重量%、又は82~94重量%、又は83~94重量%、又は85~94重量%、又は86~94重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電性金属成分にはまた鉄を含ませることもでき、導電性金属成分中の鉄の重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く12重量%未満、又は約6~約11重量%、又は6~11重量%、又は6~10重量%、又は6~9重量%、又は7~10重量%、又は7~9重量%の範囲、又は約9重量%であってよい。。
【0079】
[0089]第5の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分の合計重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、70重量%より多い範囲のニッケル、及び13重量%より多く20重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、80重量%より多く95重量%未満、又は81~94重量%、又は82~94重量%、又は83~94重量%、又は85~94重量%、又は86~94重量%の範囲である。
【0080】
[0090]第5の態様の更なる実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、70~81重量%の範囲のニッケル、約14~約19重量%の範囲のクロム、及び約6~約11重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は約84~約94重量%、又は85~94重量%、又は86~94重量%の範囲である。
【0081】
[0091]第5の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、70~81重量%の範囲のニッケル、14~17重量%の範囲のクロム、及び6~11重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0082】
[0092]第5の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、72~81重量%の範囲のニッケル、14~17重量%の範囲のクロム、及び6~11重量%又は6~10重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として1重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~1.0重量%の範囲のマンガンを更に含み、0.5重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0083】
[0093]第5の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、72~81重量%の範囲のニッケル、14~17重量%の範囲のクロム、及び6~11重量%又は6~10重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~1.0重量%の範囲のマンガン、0.01~0.5重量%の範囲の銅、及び0.01~0.5重量%の範囲のケイ素を更に含む。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、リン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まないか、或いはいずれかの種が存在する場合には、かかる種は、0.25重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は微量以下の量である。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、リン、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。
【0084】
[0094]第6の態様においては、導電層にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電層中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24又は25~90重量%、又は26~89重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電層には鉄を含ませることもでき、導電層中の鉄の重量%は、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、5重量%より多く75重量%未満、又は約6~約74重量%の範囲であってよい。
【0085】
[0095]第7の態様においては、導電性金属成分にニッケル及びクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、24~55重量%、又は25重量%乃至33重量%未満、又は26~32重量%、又は25重量%乃至32重量%未満、又は26~31重量%、又は26~30.5重量%の範囲であってよい。ニッケル及びクロムに加えて、導電性金属成分には鉄を含ませることもでき、導電性金属成分中の鉄の重量%は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、少なくとも35重量%乃至75重量%未満、又は少なくとも61重量%乃至75重量%未満、少なくとも65重量%乃至75重量%未満、又は65重量%より多く75重量%未満、又は約66重量%~約74重量%、又は66重量%~74重量%の範囲であってよい。
【0086】
[0096]第7の態様の複数の実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、7重量%乃至12重量%未満の範囲のニッケル、及び16重量%より多く22重量%未満の範囲のクロムを含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、25重量%乃至32重量%未満、又は26~31重量%、又は26~30.5重量%の範囲である。
【0087】
[0097]第7の態様の更なる実施形態においては、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、導電性金属成分に、8~11重量%の範囲のニッケル、約18~約20重量%の範囲のクロム、及び約66~約74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計の総重量%は、約26~約31重量%、又は26~30.5重量%の範囲である。
【0088】
[0098]第7の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~10.5重量%の範囲のニッケル、18~20重量%の範囲のクロム、及び66~74重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0089】
[0099]第7の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~10.5重量%の範囲のニッケル、18~20重量%の範囲のクロム、及び66~74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として1重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。一実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~1.0重量%の範囲のマンガン、及び0.01~1.0重量%の範囲のケイ素を更に含み、0.2又は0.1重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0090】
[00100]第7の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分に、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、8~10.5重量%の範囲のニッケル、18~20重量%の範囲のクロム、及び66~74重量%の範囲の鉄を含ませることができ、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~1.0重量%の範囲のマンガン、0.01~1.0重量%の範囲のケイ素を更に含み、それぞれ0.1重量%未満の量の炭素、硫黄、及びリンを更に含む。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、銅、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まないか、或いはいずれかの種が存在する場合には、かかる種は、0.25重量%未満、又は0.2重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は微量以下の量である。一実施形態においては、導電性金属成分は、次の元素種:モリブデン、ニオブ、コバルト、アルミニウム、チタン、銅、又はホウ素を全く含まないか、又は実質的に含まない。
【0091】
[00101]第8の態様の複数の実施形態においては、導電層に、導電層の総重量(100重量%に等しい)を基準として、10~30重量%、又は10重量%より多く30重量%未満、又は11~29重量%未満の範囲のニッケル;17~26重量%、又は17重量%より多く26重量%未満、又は18~25重量%の範囲のクロム;2~8重量%、又は2重量%より多く8重量%未満、又は2.5~7重量%の範囲のモリブデン;及び35~75重量%、又は40~74重量%、又は41~70重量%の範囲の鉄を含ませることができる。
【0092】
[00102]第8の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として2重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0093】
[00103]第8の態様の幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.01~2.0重量%の範囲のマンガン、0.01~1.0重量%の範囲のケイ素を更に含み、それぞれ0.1重量%未満の量の炭素、硫黄、及びリンを更に含む。幾つかの実施形態においては、導電性金属成分は、導電性金属成分の総重量(100重量%に等しい)を基準として、0.1重量%より多く、又は0.05重量%より多く、又は0.025重量%より多い量で存在する他の元素種を含まない。
【0094】
[00104]本発明の種々の実施形態においては、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、抵抗材料成分は、複合体層中に存在する全元素を基準として、少なくとも20原子%、又は少なくとも30原子%、又は少なくとも40原子%、又は少なくとも50原子%、又は50原子%より多く、又は少なくとも60原子%、又は少なくとも65原子%、又は少なくとも70原子%の量で存在する。複数の実施形態においては、複合体層は、導電性金属成分、抵抗材料成分、及び金属と抵抗材料種の組合せの成分を含み、抵抗材料、及び金属と抵抗種の組合せ材料の合計量は、複合体層中に存在する全元素を基準として、少なくとも20原子%、又は少なくとも30原子%、又は少なくとも40原子%、又は少なくとも50原子%、又は50原子%より多く、又は少なくとも60原子%、又は少なくとも65原子%、又は少なくとも70%原子の量で存在する。
【0095】
[00105]本発明の種々の実施形態においては、複合体層は導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、導電性金属成分は、本発明の種々の態様において上記に記載した金属又は合金のいずれかから選択され、抵抗材料成分は炭素であり、炭素は、複合体層中に存在する全元素を基準として、少なくとも20原子%、又は少なくとも30原子%、又は少なくとも40原子%、又は少なくとも50原子%、又は50原子%より多く、又は少なくとも60原子%、又は少なくとも65原子%、又は少なくとも70原子%の量で存在する。導電性金属成分は、抵抗材料成分中の炭素に加えて、少量の炭素を含む金属合金であってよいことを理解すべきである。例えば、スパッタリング源は、金属合金(若干量の炭素を含む)、及び複合ソースを形成するために(その合金に)別に加えた炭素から形成される複合材料ソースであってよく、又は、複合体層を、金属合金源(若干量の炭素を含む)及び別の炭素源から同時スパッタリングすることができる。
【0096】
[00106]本発明における複合体層は、本出願において開示される任意の複合体組成物を含む単一層から構成することができる。幾つかの実施形態においては、複合体組成物は、金属又は金属合金、及び抵抗材料、例えばCを、複数の元素の固溶体(単一相)、金属相及び抵抗材料元素相の混合物(2以上の溶体)、又は相の間に明確な境界を有しない金属間/抵抗材料化合物の形態で含む。幾つかの実施形態においては、複合体層に、金属材料と抵抗材料の組み合わされた元素の種、例えばCrC又はNiCのような化学的に反応した組み合わされた種を含ませることができる。
【0097】
[00107]当業者が容易に認識するように、非貴金属又は金属合金、及び抵抗材料の元素は、不可避的不純物を含み得る。本明細書において使用する「不可避的不純物」とは、非貴金属合金又は抵抗材料の源物質を製造するために使用する鉱石中に天然に存在しているか、又は製造プロセス中に非意図的に加えられる任意の不純物を指す。非貴金属又は金属合金、及び抵抗材料は、それぞれ約0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.001重量%未満の不可避的不純物を含み得る。
【0098】
[00108]ここに記載する非貴金属合金にはまた、上記に記載した元素に加えて1種類以上の更なる合金化元素を含ませることもできる。しかしながら、種々の実施形態においては、非貴金属合金はかかる更なる合金化元素を実質的に含まなくてよい。本明細書において使用する「事実上含まない」及び「実質的に含まない」という用語は、非貴金属合金が0.001重量%未満のかかる更なる合金化成分を含むことを意味する。更に、「事実上含まない」及び「実質的に含まない」という用語は互換的に使用することができる。
【0099】
[00109]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸及びイソフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートのようなそのエステルの残基を含む酸成分、及びエチレングリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つのグリコールの残基を含むグリコール成分を含む少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0100】
[00110]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸残基、又はそのエステル、又はそれらの混合物、及び1、4-シクロヘキサンジメタノール残基を含む少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0101】
[00111]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸残基、又はそのエステル、又はそれらの混合物、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール残基及び/又は2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基から形成される少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0102】
[00112]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸残基、又はそのエステル、又はそれらの混合物、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール残基、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール残基から形成される少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0103】
[00113]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸残基、又はそのエステル、又はそれらの混合物、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基、及びエチレングリコール残基から形成される少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0104】
[00114]一実施形態においては、基材は、テレフタル酸残基、又はそのエステル、又はそれらの混合物、エチレングリコール残基、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール残基を含む少なくとも1種類のポリエステルから構成することができる。
【0105】
[00115]本発明の幾つかの実施形態においては、本明細書に記載のバイオセンサー部品は、
(a)基材を用意する工程;
(b)複合体層ターゲットを用意する工程;
(c)基材の少なくとも一部にターゲットからの材料を物理蒸着して、それによって基材上に複合体層を形成する工程;
を実施することによって製造することができる。
【0106】
[00116]工程(a)の基材を用意することには、上記に記載したように、PETのような任意のタイプの基材材料を用意することを含ませることができる。幾つかの実施形態においては、基材は、高真空チャンバー内で操作することができる基材材料のシートを含む。基材材料のシートには、正方形のシートのような単断面の材料を含ませることができる。幾つかの他の実施形態においては、基材材料のシートには、下記により詳細に記載するように、ロールツーロール機構によって高真空チャンバーに通される材料のロールを含ませることができる。他の実施形態においては、基材は、これも下記において記載するように、堆積中において固定して保持することができ、或いは回転させることができる。
【0107】
[00117]工程(b)のターゲットを用意することには、上記に記載した任意の非貴金属又は金属合金及び抵抗材料から構成される物理蒸着ターゲットを用意することを含ませることができる。例えば幾つかの実施形態においては、ここで議論したように、ニッケル及びクロムの合金を含む物理蒸着ターゲットを炭素と組み合わせて、薄膜複合体層を作成するのに使用することができる複合体ターゲットを与えることができる。かかる複合体ターゲットは、約0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.001重量%未満の不可避的不純物を含み得る。幾つかの実施形態においては、物理蒸着ターゲットは、物理蒸着プロセス中において、スパッタカソードのような電極内に収容され、及び/又はそれを構成する。幾つかの実施形態においては、物理蒸着ターゲットは、少なくとも2cm、4cm、8cm、12cm、16cm、又は20cmの直径を有する円形であってよい。他の実施形態においては、物理蒸着ターゲットは、少なくとも2cm、4cm、8cm、又は16cmの内径、及び20cm、24cm、28cm、又は32cmの外径を有する管状ターゲットであってよい。更に他の実施形態においては、物理蒸着ターゲットは、5~25cmの間の幅、25~75cmの間の長さ、及び0.3~5cmの間の厚さの寸法を有する方形体であってよい。しかしながら、本発明の複数の実施形態は他の形状及び寸法のターゲットを使用することを意図することを理解すべきである。
【0108】
[00118]工程(c)の物理蒸着は、概して基材を非貴金属及び抵抗材料の複合体ターゲットからの材料で被覆して複合体層を形成することを含む。本明細書において使用する「物理蒸着」という用語は、基材上に気化した材料を凝縮させることによって薄膜を堆積させることを意味する。物理蒸着被覆は、上記に記載した任意のタイプの物理蒸着プロセス、即ち、スパッタ被覆、熱蒸着、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション、アーク蒸着、共蒸着、イオンプレーティングなどによって行うことができる。例えば幾つかの実施形態においては、物理蒸着工程は、スパッタリング装置によって非貴金属及び抵抗材料の複合体ターゲットをスパッタリングすることによって基材を複合体層で被覆するスパッタリングプロセスによって行う。かかるスパッタリングタイプの物理蒸着の具体例は下記においてより詳細に記載する。その上に複合体層が被覆されている得られる基材は、電極のようなバイオセンサー部品として使用することができる。かかる電極としては、作用電極、参照電極、及び/又は対電極を挙げることができる。基材材料のロールに、ロールツーロール物理蒸着プロセスによって複合体層を真空被覆する場合のような幾つかの実施形態においては、得られる薄膜シートを適当な寸法に切断して、バイオセンサー部品に特異的な寸法の薄膜電極を形成することができる。他の実施形態においては、バイオセンサー部品は、化学エッチング又はレーザーエッチングのようなエッチングによって薄膜シートから形成することができる。更に他の実施形態においては、バイオセンサー部品はパターン化マスクを使用して形成することができ、これを基材上に載置し、その上に複合体層を物理蒸着してバイオセンサー部品の複合体層を形成する。
【0109】
[00119]工程(b)の代替法は、別個の導電性金属ターゲット及び抵抗材料ターゲットを用意することであってよく、ここで、導電性金属ターゲットは、複合体層の導電性金属成分に関して本明細書に記載した非貴金属又は金属合金のいずれかから構成することができ、抵抗材料ターゲットは、複合体層の抵抗材料成分に関して本明細書に記載した抵抗材料のいずれかから構成することができる。
【0110】
[00120]工程(c)の代替法は、導電性金属ターゲット及び抵抗材料ターゲットの両方からの材料によって基材を同時に被覆すること、例えば、(導電性金属及び抵抗材料)の両方のソースターゲットを使用する同時スパッタリングによって複合体層を形成することであってよい。
【0111】
[00121]基材材料のロールをロールツーロール物理蒸着プロセスによって複合体層で真空被覆する場合のような幾つかの実施形態においては、得られる薄膜シートを適当な寸法に切断して、バイオセンサー部品に特異的な寸法の薄膜電極を形成することができる。かかる電極としては、作用電極、参照電極、及び/又は対電極を挙げることができる。電極としてはまた、試料の導電度、試料がバイオセンサー部品に施されたかどうか、又は試料の他の電気特性、或いはバイオセンサーのために有用な試料環境を検出するためのものも挙げることができる。他の実施形態においては、バイオセンサー部品は、化学エッチング又はレーザーエッチングのようなエッチングによって薄膜シートから形成することができる。更に他の実施形態においては、バイオセンサー部品はパターン化マスクを使用して形成することができ、これを基材の上に載置し、その上に複合体層を物理蒸着してバイオセンサー部品を形成する。
【0112】
[00122]幾つかの特定の実施形態においては、バイオセンサー部品は、ロールツーロール物理蒸着プロセス(ロールツーロールマグネトロンスパッタリングを含む)によって生成させることができる。例えば、25μm~250μmの範囲の厚さ及び33.02cmの幅を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)製のポリマーフィルムを含む基材シートを、Applied Materials, Inc.によって提供されるSmartwebコーター、又はCHA Industries, Inc.によって提供されるMark 80のような幅77.50cmのウエブロールツーロールマグネトロンスパッタコーターを使用してスパッタリングすることができる。シングル又はデュアルターゲット構造を使用して複合体層を堆積させることができる。(例えば非貴金属合金及び炭素の)複合体プレートから構成されるターゲットを使用することができる。スパッタコーターの真空チャンバーは、拡散及び機械式ポンプの組合せを使用して少なくとも10-5Torrの到達圧力(base pressure)までポンプで減圧することができる。他の実施形態においては、機械式ポンプ、ターボポンプ、クライオポンプ、及び/又は油拡散ポンプの組合せを使用することができる。概して長方形の形状を有する1つ又は複数の複合体ターゲットを収容しているマグネトロンスパッタリングカソードに、2KWの電源(例えばAdvanced Energy Inc.から提供されるもの)を使用して電圧印加することができる。(例えばMKSモデル1179A流量制御装置を使用して)真空チャンバー中へのアルゴンガスの流量を制御して、スパッタリングプロセス中において使用するための3~10mTorrの間のスパッタリング圧力を設定することができる。
【0113】
[00123]スパッタ複合体層の厚さ及びシート抵抗は、特定のプロセスパラメーターを制御することによってその場で効率的に制御することができる。プロセスパラメーターの例としては、ロールツーロールウエブ速度(即ち、基材シートがスパッタリング中に真空チャンバーを通って進む速度を制御すること)、スパッタリングターゲットに供給する電力(即ち、ターゲット表面付近で形成されるプラズマへの印加電圧と電流の積)、スパッタリングチャンバー内のガス圧力、及びチャンバー内に存在するターゲットの数が挙げられる。例えば、与えられた合金の複合体層のスパッタリングに関しては、ウエブ速度を0.1~3.5メートル/分の間、スパッタリング出力密度を1~8ワット/cm2の間に設定することができる。幾つかの実施形態においては、約15~250nmの厚さ測定値及び約8~4,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するスパッタ複合体層を形成することができる。
【0114】
[00124]上記に記載したロールツーロールプロセスに加えて、バイオセンサー部品は、同じ構成の拡大型を使用し、大型のロールツーロールプロセスを使用して製造することができる。かかる大型のロールツーロールプロセスにおいては、最大ウエブ速度は、0.1~10メートル/分、3~7メートル/分の間、又は10メートル/分より高くすることができる。大型のロールツーロールプロセスは、0.1~13ワット/cm2、2~10ワット/cm2、又は5~8ワット/cm2の間のスパッタリング出力密度を与えることができる。更に、ターゲットの数としては、2、4、6、又はそれ以上の間を挙げることができ、基材シートのウエブ幅は75cm又はそれ以上であってよい。
【0115】
[00125]幾つかの実施形態は、更に、基材シートを真空チャンバー内で固定して保持する物理蒸着プロセスを使用することができることを意図する。かかる実施形態の幾つかを、下記の実施例のセクションで詳細に記載する。基材シートを固定して保持する幾つかの実施形態においては、基材シート上に複合体層を堆積させる堆積時間は、5分、10分、15分、30分、又はそれ以上であってよい。
【0116】
[00126]上記に記載したように、ここに記載するような非貴金属又は合金及び抵抗材料から形成される複合体層を含むバイオセンサー部品は、それらをパラジウム及び/又は金のような貴金属を含むバイオセンサー部品に対する代替物として特に良く適したものにする望ましい電気化学的特性を示すことができる。例えば、本発明の複数の実施形態のバイオセンサー部品は、クロノアンペロメトリー試験にかけた際に望ましい用量応答特性を示す複合体層を有して形成される薄膜電極を構成することができる。
【0117】
[00127]種々の実施形態においては、複合体層には、(上記で議論した量の)クロム及び炭素を含ませることができ、複合体層は、(実施例セクションにおいて議論するように)タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験において求めて、400ミリボルト(mV)未満、又は390mV未満、又は380mV未満、又は375mV未満、又は360mV未満、又は350mV未満、又は340mV未満、又は330mV未満、又は325mV未満、又は320mV未満、又は310mV未満、又は300mV未満、又は290mV未満、又は280mV未満、又は275mV未満、又は270mV未満、或いは260mV未満のFe(II)[CN]6メディエーターに関する酸化波電圧(以下においてEpeak,anodicと規定する)を有することができる。
【0118】
[00128]本発明はその複数の態様の下記の実施例によって更に示すことができるが、これらの実施例は単に例示の目的のために含めるものであり、他に具体的に示していない限りにおいて発明の範囲を限定することは意図しないことが理解される。
【実施例】
【0119】
薄膜電極の製造:
[00129]下記に記載する実施例(及び比較例)のそれぞれに関し、下記に記載する物理蒸着プロセスによって薄膜電極の形態のバイオセンサー部品を形成した。下記のプロセスを使用して、表1に示す非貴組成物(non-noble compositions)のような複数の異なるタイプの元素及び元素合金と抵抗材料との複合体層を含ませた薄膜電極を形成することができると理解される。本実施例においては、クロム、モリブデン、及び種々の比のクロム及び炭素、又は種々の比のモリブデン及び炭素を含む複合体を基材層の上に堆積させて薄膜電極を製造した。このプロセスは、
(a)高真空チャンバー内において、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを使用し、Denton Vacuum Desktop Proスパッタリング装置を使用してスパッタリングを実施して、10.16cm×10.16cmの正方形のPET基材シートの上に金属又は金属/炭素複合体を堆積させ;
(b)真空チャンバーを約10-5Torrの初期到達圧力まで排気し;
(c)10sccmのアルゴンガスを高真空チャンバー中に導入して、2.8mTorrの堆積圧力を生成させ;
(d)基材シートを、真空チャンバー内において約2回転/分で回転させ;
(e)直径5.08cmの金属又は金属/炭素複合体のターゲットを、DCマグネトロンスパッタリング装置下において40ワットの一定の出力に15~120分間の堆積時間の間保持して、基材シートの少なくとも一部を金属又は複合体層で被覆し(ターゲットを初期化するために、基材を真空チャンバー中に導入する前に、ターゲットをDCマグネトロンスパッタリング装置下において40ワットの一定の出力に5分間の予備スパッタリング時間の間保持し);
(f)全ての堆積を室温において行う;
ことによって薄膜電極を形成することを含んでいた。
【0120】
[00130]上記に規定した物理蒸着によって形成された薄膜電極フィルムから、5.08cm×7.62cmの寸法を有する個々の薄膜電極を切り出した。Gamry Instruments VistaShieldファラデー箱の内部に配置された薄膜電極フィルムを含む電気化学セルを有する3電極構成のGamry Instruments Reference 600ポテンショスタットを使用して、電気化学実験を行った。その中にダイカットされた単一の直径3mmの開口を有する電気メッキテープで薄膜電極を部分的にマスクすることによって、薄膜電極のそれぞれを作用電極として形成した。これにより、薄膜電極のダイカット開口によって形成された非マスク部分は、0.0707cm2の幾何学的作用電極表面積を与えた。薄膜電極の非マスク部分の他の異なる領域は、ポテンショスタットの作用電極リードへの電気的接続点として機能させた。薄膜電極のマスク部分は、プラスチックのような非導電性材料の平坦な支持ブロック上に配置した。その後、薄膜電極をガラス電気化学セルの作用電極ポート中に配置した。薄膜電極の露出した直径3mmの部分を、電気化学セルの作用電極ポートの底部開口の中心付近に配置した。電気化学セルの作用電極ポートを、クランプ及びOリングでシールした。電気化学セルにはまた、飽和カロメル参照電極を含む参照電極、及び炭素補助電極も含めた。参照電極及び補助電極は、それぞれ参照電極ポート及び補助電極ポート内に配置した。更に、参照電極及び補助電極は、それぞれポテンショスタットの参照リード及び補助リードに接続した。電気化学セルにはまた、それによって試験溶液を脱気し、及び窒素のような不活性ガスで覆う気体流ポートも含めた。
【0121】
[00131]上記で議論した手順にしたがって、クロム、並びに100:0、80:20、70:30、50:50、及び30:70のCr:C比(原子パーセント)を有するクロムと炭素の複合体から薄膜電極を製造した。また、上記で議論した手順にしたがって、モリブデン、100:0、70:30、50:50、及び30:70のMo:C比(原子パーセント)を有するモリブデンと炭素の複合体からも薄膜電極を製造した。導電性金属又は複合体層の厚さは、輪切りにした電極のTEMイメージングによって求めて約15~250nmであった。
【0122】
タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験の説明:
[00132]タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験を使用して、薄膜電極の電気化学的応答を試験することができる。タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験は次の工程を含む:pH7.1の145mMの塩化ナトリウムを含む10mMのリン酸カリウム緩衝液50mLを電気化学セル中に配置し、電気化学セルをストッパーでシールした。気体流ポートに接続した気体入口及び出口取付具によって、中多孔質フィルタースティックを使用して窒素の気体流によって緩衝液の不活性ガス散布(即ち脱気)が可能であった。気体流ポートによって更に、気体流をフィルタースティックからヘッドスペースを覆う配置に切り替えることができた。気体出口をオイルバブラーに接続して、外部気体(例えば空気)が電気化学セル中に逆拡散するのを阻止した。気体流をブランケット構成に切り替える前に、同時に窒素を散布しながら磁気スターラーバーを使用して緩衝液を少なくとも5分間撹拌した。タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験によって行った電気化学実験中においては、噴霧又は他の形態による緩衝液の撹拌は行わなかった(即ち、電気化学試験中においては溶液は静止させた)。
【0123】
[00133]電気化学セル内の作用電極を構成した薄膜電極に関してリニアスイープボルタンメトリー試験を行った。リニアスイープボルタンメトリーに関する開始電圧電位は、作用電極と参照電極(即ち飽和カロメル参照電極)の間で測定して、開路電位(自然電位(rest potential)としても知られる)に対して0Vであり、ボルタンメトリー実験の前の少なくとも10秒の静止時間の後において、少なくとも50μAの電流が観察されるまで、25mV/秒で電圧電位をアノード掃引した。Fe(II)[CN]6メディエーターを含ませた溶液に関しては、メディエーターは1mMの濃度で存在させ、リニアスイープボルタンメトリー条件は、他の点に関してはメディエーターを含まない溶液と同一であった。
【0124】
[00134]酸化波のピーク電圧(E
peak,anodic)を求める。かかるE
peak,anodicは、作用電極及び対電極と参照電極の間で測定して、溶液中の電気活性種の酸化の結果として電流の局所最大値が観察される電圧として規定される。タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験を使用して薄膜電極から得られる酸化波のグラフ及びそれに関するE
peak,anodicを
図3に示す。
図3から分かるように、測定されたE
peak,anodicは(又はE-ピーク)の値は参照電極に対して測定して約-76mVであった。
【0125】
タイプ1のサイクリックボルタンメトリー試験の説明:
[00135]タイプ1のサイクリックボルタンメトリー試験を使用して、薄膜電極の電気化学的応答を試験することができる。タイプ1のサイクリックボルタンメトリー試験は、次の工程を含む:pH7.1の145mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液50mLを電気化学セル中に配置し、電気化学セルをストッパーでシールした。気体流ポートに接続した気体入口及び出口取付具によって、中多孔質フィルタースティックを使用して窒素の気体流によって緩衝液の不活性ガス散布(即ち脱気)が可能であった。気体流ポートによって更に、気体流をフィルタースティックからヘッドスペースを覆う配置に切り替えることができた。気体出口をオイルバブラーに接続して、外部気体(例えば空気)が電気化学セル中に逆拡散するのを阻止した。気体流をブランケット構成に切り替える前に、同時に窒素を散布しながら磁気スターラーバーを使用して溶液を少なくとも5分間撹拌した。タイプ1のサイクリックボルタンメトリー試験によって行った電気化学実験中においては、噴霧又は他の形態による緩衝液の撹拌は行わなかった(即ち、電気化学試験中においては溶液は静止させた)。
【0126】
[00136]電気化学セル内の作用電極を構成した薄膜電極について、サイクリックボルタンメトリーを実施した。リニアスイープボルタンメトリーに関する開始電圧電位は、作用電極と参照電極(すなわち飽和カロメル参照電極)との間で測定して開回路電位(休止電位としても知られる)に対して0Vであり、ボルタンメトリー実験の前の少なくとも10秒の休止期間の後に、電圧電位を25mV/秒の走査速度で掃引し、当初はカソード、続いてアノード電位掃引した。Fe(II)[CN]6メディエーターを含ませた溶液については、メディエーターを1mMの濃度で存在させ、リニアスイープボルタンメトリー条件はその他の点ではメディエーターを含まない溶液と同一であった。[RuIII(NH3)6]Cl3メディエーターを含ませた溶液については、メディエーターを1又は2mMの濃度で存在させ、サイクリックスイープボルタンメトリー条件は、その他の点ではメディエーターを含まない溶液と同一であった。
【0127】
実施例1:タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験の薄膜電極への適用:
[00137]タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験を使用して、複数の異なる薄膜電極を試験した。より詳細には、100:0のCr:C(又は純Cr)、80:20のCr:C、70:30のCr:C、50:50のCr:C、及び30:70のCr:Cを使用して形成された薄膜電極を試験した。
【0128】
[00138]100原子%のCr~30原子%のCrの範囲のCrとCの複合体についてのかかる試験の結果を、
図4にグラフで示す。バイオセンサーにおいて使用される薄膜電極は、できるだけ低い電圧において生じるFe(II)[CN]
6に関するピークアノード電流を示すことが一般に望ましい場合がある。また、一般に、バイオセンサーにおいて使用される薄膜電極は、特定の電極電位の影響下で最小の電流及び/又は低減された電流を示すことが望ましい場合もある。
図4は、メディエーターを含まないリン酸緩衝溶液を使用してCr及びCrとCの複合体のフィルムについて行ったタイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験のプロットであり、炭素含量の関数としての膜のバックグラウンド電流又はアノード安定性を示す。
図4に示すように、薄膜電極は、炭素含量が増加することにつれてアノード破壊が改良され続けることを示す。
図4を検討すると、試験した複合体の炭素含量を20原子%から70原子%に増加させると、より大きなアノード安定性が得られることが明らかである。一般に、電極自体の酸化がグルコース計によって測定される電流に有意に寄与しないように十分なアノード安定性を有することは電極フィルムの望ましい特性である場合があり、これ(電極の酸化)は正のバイアスをもたらし、報告されるグルコース結果の精度を低下させる。
【0129】
[00139]タイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験を使用して、更なる薄膜電極を試験した。より詳細には、100:0のCr:C(Cr源のみを使用)、70:30のCr:C、及び50:50のCr:Cを使用して形成した薄膜電極を試験し、ここでは薄膜電極はロールツーロールスパッタコーターにおいて製造した。
【0130】
[00140]100、70、及び50原子%のCrを有するCrとCの複合体についてのかかる試験の結果を
図5にグラフで示す。
図4と同様に、
図5はメディエーターを含まないリン酸緩衝溶液を使用してCr及びCrとCの複合体のフィルムについて行ったタイプ1のリニアスイープボルタンメトリー試験のプロットであり、炭素含量の関数としての膜のバックグラウンド電流又はアノード安定性を示す。
図5に示すように、薄膜電極は、炭素含量が増加するにつれてアノード破壊が改良され続けることを示している。
【0131】
実施例2:タイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験の薄膜電極への適用:
実施例2A:CrとCの複合体のフィルム:
[00141]タイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験を使用して、複数の異なる薄膜電極を試験した。より詳細には、100:0のCr:C(又は純Cr)、80:20のCr:C、70:30のCr:C、50:50のCr:C、及び30:70のCr:Cを使用して形成された薄膜電極を試験した。ここで、薄膜電極は上記のバッチ堆積プロセスを使用して製造した。
【0132】
[00142]飽和カロメル(SCE)参照電極、並びに作用電極としてCr又はCrとCの複合体電極のそれぞれを使用し、25mV/秒において、1mMのFe(II)[CN]
6メディエーターを含むPBS中のサイクリックボルタモグラムを行った。結果を
図6にグラフで示す。
図6を検討すると、複合体の炭素含量が増加するにつれて、メディエーターと電極との間の電子移動速度が増加したことが明らかである。
【0133】
[00143]タイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験を使用して、更なる薄膜電極を試験した。より詳細には、100:0のCr:C(Crソースのみを使用)、70:30のCr:C、及び50:50のCr:Cを使用して形成した薄膜電極を試験し、ここで薄膜電極はロールツーロールスパッタコーターにおいて製造した。
【0134】
[00144]100、70、及び50原子%のCrを有するCrとCの複合体についてのかかる試験の結果を
図7にグラフで示す。
図6と同様に、
図7は、飽和カロメル(SCE)参照電極を使用し、25mV/秒において、1mMのFe(II)[CN]
6メディエーターを含むPBSを使用して、Cr、及びCrとCの複合体のフィルムについて行ったタイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験のプロットであり、複合体の炭素含量が増加するにつれてメディエーターと電極との間の電子移動速度が増加したことを示す。また、アノード波とカソード波のピーク電流の電位差の減少があり、これは電子移動速度の増加があったことを示している。
【0135】
実施例2B:MoとCの複合体のフィルム:
[00145]タイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験を使用して、複数の異なる薄膜電極を試験した。より詳細には、100:0のMo:C(Mo源のみを使用)、70:30のMo:C、50:50のMo:C、及び30:70のMo:Cを使用して形成された薄膜電極を試験し、ここで薄膜電極は上記記載のバッチ堆積プロセスを使用して製造した。
【0136】
[00146]飽和カロメル(SCE)参照電極、並びに作用電極としてMo又はMoとCの複合体の電極のそれぞれを使用し、25mV/秒において、2mMの[RuIII(NH
3)
6]Cl
3メディエーターを含むPBS中のサイクリックボルタモグラムを行った。結果を
図8にグラフで示す。
図8を検討すると、複合体の炭素含量が増加するにつれて、アノード安定性が改良されたことが明らかである。
【0137】
実施例2C:CrとSiの複合体のフィルム:
[00147]Crを使用して形成された薄膜電極、及びCr:Si(50:50原子%)の複合体を使用して形成された薄膜電極を使用し、タイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験を使用して薄膜電極を試験し、ここで、薄膜電極は上記記載のバッチ堆積プロセスを使用し製造した。
【0138】
[00148]飽和カロメル(SCE)参照電極、並びに作用電極としてCr又はCrとSiの複合体の電極のそれぞれを使用し、25mV/秒において、メディエーターを含まないPBS中のサイクリックボルタモグラムを行った。結果を
図9にグラフで示す。
図9を検討すると、CrSi複合体フィルムにおいて観察された抑制されたバックグラウンド電流のために、データはCr膜のみと比較してアノード安定性が増加していることを示している。
【0139】
[00149][RuIII(NH3)6]Cl3メディエーターを使用したタイプ1のサイクリックスイープボルタンメトリー試験を使用して、薄膜Cr及びCrSi複合体電極を試験した。
【0140】
[00150]飽和カロメル(SCE)参照電極、並びに作用電極としてCr又はCrSi複合体の電極のそれぞれを使用し、25mV/秒において、2mMの[RuIII(NH
3)
6]Cl
3メディエーターを含むPBS中のサイクリックボルタモグラムを行った。結果を
図10にグラフで示す。
図10を検討すると、CrSi複合体フィルムに関しては、Crフィルムのみと比較してメディエーターと電極との間の電子移動速度が増加したことを示している。
【0141】
[00151]本発明の複数の態様の上記の詳細な記載は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分に詳細に本発明の種々の形態を記載することを意図している。発明の範囲から逸脱することなく、他の態様を使用することができ、変更を行うことができる。したがって、上記の詳細な記載は限定の意味で解釈すべきではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲が権利を保有する均等物の全範囲と共に、続く正規の実用新案出願において示されている特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0142】
[00152]本明細書において、「一態様」、「態様」、又は「複数の態様」という記載は、関連する1つ又は複数の特徴が本技術の少なくとも1つの態様の中に含まれることを意味する。本明細書における「一態様」、「態様」、又は「複数の態様」という別々の記載は、必ずしも同じ態様を指すものではなく、また、そのように言及されているか及び/又はその記載から当業者に明白である場合を除いて互いに排他的でない。例えば、一態様において記載されている特徴、工程等はまた他の態様においても含まれる可能性があるが、必ずしも含まれない。而して、本発明は、ここに記載する複数の態様の種々の組合せ及び/又は統合を包含することができる。
【0143】
[00153]ここに本発明者らは、本発明は、以下の特許請求の範囲において示す発明の文理範囲から実質的に逸脱しないが、その外側である任意の装置に関しているので、本発明の合理的に正しい範囲を決定及び利用するために均等論に依拠する本発明者らの意図を主張する。
【0144】
定義:
[00154]下記は定義されている用語の排他的なリストであるとは意図しないことを理解すべきである。例えば文脈において規定されている用語を使用することを伴う際などにおいて、上記の記載において他の規定が与えられる可能性がある。
【0145】
[00155]本明細書において使用する「a」、「an」、及び「the」の用語は1以上を意味する。
[00156]本明細書において使用する「及び/又は」の用語は、2以上の事項のリストにおいて使用する場合には、リストされている事項の任意の1つを単独で使用することができ、或いはリストされている事項の2以上の任意の組合せを使用することができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含むと記載されている場合には、この組成物は、A単独;B単独;C単独;A及びBの組合せ;A及びCの組合せ;B及びCの組合せ;或いはA、B、及びCの組合せ;を含む可能性がある。
【0146】
[00157]本明細書において使用する「含む」、「含み」、及び「含んでいる」という用語は、その用語の前に示されている主語から、その用語の後に示されている1以上の要素へ移行するのに使用される非限定的な移行語であり、この移行語の後にリストされている1つ又は複数の構成要素は、必ずしも主語を構成する唯一の構成要素ではない。
【0147】
[00158]本明細書において使用する「有する」、「有し」、及び「有している」という用語は、上記に定義した「含む」、「含み」、及び「含んでいる」と同じ非限定的な意味を有する。
【0148】
[00159]本明細書において使用する「包含する」、「包含し」、及び「包含している」という用語は、上記に規定した「含む」、「含み」、及び「含んでいる」と同じ非限定的な意味を有する。
【0149】
数値範囲:
[00160]本明細書においては、本発明に関連する幾つかのパラメーターの量を定めるために数値範囲を使用する。数値範囲が与えられている場合には、かかる範囲は、その範囲のより低い値のみを示すクレームの限定、並びにその範囲のより高い値のみを示すクレームの限定に対する文言上のサポートを与えるものと解釈されることを理解すべきである。例えば、10~100の開示されている数値範囲は、「10よりも大きい」(上限なし)を示すクレーム、並びに「100未満」(下限なし)を示すクレームに対する文言上のサポートを与える。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]生物学的試料の分析において使用するためのバイオセンサー部品であって、
前記バイオセンサー部品は、
基材;
前記基材上に堆積された複合体層;及び
前記生物学的試料と電気化学的に反応させるための生物学的反応物質;
を含み;
前記複合体層は、導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み;
前記導電性金属成分は1種類以上の非貴金属を含み;
前記複合体層中の抵抗材料成分の重量%は20原子%より多い、上記バイオセンサー部品。
[2]前記バイオセンサー部品が、作用電極、又は参照電極、或いは対電極から選択される電極を含む、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[3]前記バイオセンサーが血糖センサーであり、前記バイオセンサー部品が試験片を含む、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[4]前記導電性金属成分がクロムである、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[5]前記導電性金属成分がニッケルを含む、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[6]前記導電性金属成分がNiCr合金を含む、[10]に記載のバイオセンサー部品。
[7]前記導電性金属成分がNiCr合金を含み;クロムの重量%が、前記導電性金属成分の総重量を基準として約25~約95重量%の範囲である、[6]に記載のバイオセンサー部品。
[8]前記導電性金属成分中のクロムの重量%が50重量%より多く約95重量%までの範囲であり;前記導電性金属成分の残りが実質的にニッケルである、[7]に記載のバイオセンサー部品。
[9]前記導電性金属成分が鉄を更に含み;前記導電性金属成分中のクロムの重量%が10重量%より多く、前記導電性金属成分中のニッケルの重量%が4重量%より多く、前記導電性金属成分中の鉄の重量%が2重量%より多い、[7]に記載のバイオセンサー部品。
[10]前記導電性金属成分がニッケル、クロム、及び鉄を含み;前記導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として24~95重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として2重量%より多い範囲である、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[11]前記導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%が24~95重量%の範囲であり、前記導電性金属成分中のニッケルの重量%が7重量%乃至12重量%未満の範囲であり、前記導電性金属成分中のクロムの重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として13重量%より多く22重量%未満の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として5重量%乃至75重量%未満の範囲である、[10]に記載のバイオセンサー部品。
[12]前記導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として80重量%乃至95重量%未満の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として5重量%より多く12重量%未満の範囲である、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[13]100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として、前記導電性金属成分中のニッケルの重量%が70重量%より多く、前記導電性金属成分中のクロムの重量%が13重量%より多く20重量%未満の範囲である、[12]に記載のバイオセンサー部品。
[14]前記導電性金属成分がニッケル、クロム、及び鉄を含み;前記導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として24~90重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として5重量%より多く75重量%未満の範囲である、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[15]100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として、前記導電性金属成分中のニッケルの重量%が8~72重量%の範囲であり、前記導電性金属成分中のクロムの重量%が13~25重量%の範囲であり、前記導電性金属成分中の鉄の重量%が6~74重量%の範囲であり、前記導電性金属成分中のモリブデンの重量%が0~10重量%の範囲である、[14]に記載のバイオセンサー部品。
[16]前記導電性金属成分がニッケル、クロム及び鉄を含み;前記導電性金属成分中のニッケル及びクロムの合計重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として24~55重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が、100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として35重量%より多く75重量%未満の範囲である、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[17]前記導電性金属成分がニッケル、クロム、鉄、及びモリブデンを含み;100重量%に等しい前記導電性金属成分の総重量を基準として、前記導電性金属成分中のニッケルの重量%が10~30重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中のクロムの重量%が16~26重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中の鉄の重量%が35~75重量%の範囲であり;前記導電性金属成分中のモリブデンの重量%が2~8重量%の範囲である、[1]に記載のバイオセンサー部品。
[18]前記抵抗材料成分が炭素を含み、前記基材が可撓性の非導電性フィルムを含み、前記バイオセンサー部品が20%以下の可視光透過率を有する、[1]~[17]のいずれかに記載のバイオセンサー部品。
[19](a)基材を用意すること;
(b)複合体材料ターゲットを用意すること、ここで、前記複合体材料ターゲットは導電性金属成分及び抵抗材料成分を含み、前記導電性金属成分は1種類以上の非貴金属を含み、前記複合体材料ターゲット中の抵抗材料成分の重量%は20原子パーセントより多く;
(c)前記基材の少なくとも一部に、前記複合材料ターゲットからの材料を物理蒸着して、それによって前記基材上に複合体層を形成すること;
を含む、バイオセンサーのための電極を形成する方法。
[20]前記基材がポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記基材が25~500μmの範囲の厚さを有し、前記複合体層が15~400nmの範囲の厚さを有し、前記電極が20%以下の可視光透過率を有し、前記バイオセンサーが血糖センサーを含み、前記抵抗材料が炭素を含む、[19]に記載の方法。